LGBTQ+の e-learning を視聴・修了しました。備忘録として講義メモをここに残しておきます。

1.LGBTQ+の基礎知識
2.LGBTQ+と健康問題
3.LGBTQ+と医療問題
4.LGBTQ+と医療問題:カミングアウトへの対応
5.LGBTQ+と医療問題:医療者側から当事者への質問集
6.LGBTQ+と医療問題:医療者同士のQ&A集

基礎知識の一部を提示します。

▶ LGBTQ+の頻度

・日本国内の調査では3〜10%

 

▶ LGBTQ+とは

L(レズビアン):女性同性愛者(性自認・性的指向がともに女性)

G(ゲイ):男性同性愛者(性自認・性的指向がともに男性)

B(バイセクシャル):両性愛者(男女いずれも恋愛・性愛の対象となる)

T(トランスジェンダー):出生時に割り当てられた性別と性自認が異なる

 ※ シスジェンダー:出生時に割り当てられた性別と性自認が一致している

Q(クィア):性的マイノリティを広く指す言葉として主に当事者に用いられる

Q(クエスチョニング):セクシュアリティを決めたくない、探索中の人

 

▶ LGBTQ+の意義

・その性のあり方を生きる人が声を上げるために、社会に届けるために、自分たちを表すために、連帯するために使い始めた言葉。

・たくさんの性のあり方を表す言葉がある。

(例)パンセクシュアル、A型陽性。セクシュアル、アロマンティック、エックスエンダー、ノンバイナリー、ジェンダーフルイド、etc・・・

・「自分がありのままで自分」と言えるために使う言葉

 

▶ LGBTQ+の内容

・LGBは「性的志向」(Sexual Orientation, SO)に関する話

・Tは「性自認」(Gender Identity, GI)に関する話

・QはSOとGIどちらも含む性の多様性全体を表す。Qに+をつけて、LGBTの他にもある多様な性のあり方を示す。

・セクシュアルマイノリティ(性的マイノリティ、性的少数者)の総称としてLGBTQ+という用語が使われることもある。

 

▶ SOGIという言葉

・SO(性的指向)、GI(性自認)はLGBTQ+かどうかに限らず、すべての人に関わること。

Sexual Orientation:性的指向・・・恋愛や性愛の対象となる性

Gender Identity:性自認・・・自分の性をどう認識しているか

 

▶ セクシュアリティを理解する〜性のあり方を分解して考える

1.性自認:GI(Gender Identity)こころの性

・自分の性をどう思うか

・自分にとってしっくりくる性

2.生物学的性:からだの性

・出生時に指定された性:Sex Assigned at birth

・身体的・生物学的な性:Biological Sex  → トランスジェンダーでは薬物療法(ホルモン療法)や外科的療法で変化がある場合あり

3.性的指向:SO(Sexual Orientation)好きになる性

・恋愛や性愛の対象となる相手の性

4.性表現:Gender Expression  → 見えるのはここだけ

・身なりや言動や素振りなど外見に表現する性

 

▶ 性のグラデーション

上述の性自認(こころの性)、生物学的性(からだの性)、性的指向(好きになる性)、性表現はすべて、男女の二元論だけでは語れないグラデーションである。

 

▶ 医療とLGBTQ+の歴史

・多様な性のあり方を「精神病理」の枠組みで捉えて「治療」しようとしていた過去がある。

 → 性自認・性的指向そのものを変えることは、いかなる場合においても治療対象ではない。強引に進めると、うつ、不安障害、自殺など深刻な被害をもたらす。

・病理化(疾患・傷害として定義)した過去と脱病理化(多様な性のあり方として捉える現在)の歴史。

・医療がLGBTQ+の人々に対するスティグマ・偏見を作り出した歴史があり、現在も影響が残っている。

 

▶ 医療とLGBTQ+の歴史:同性愛(性的指向、Sexual Orientation, SO)

・DSM-IIまでは「同性愛」は精神疾患リスト内に

・1987年:DSM-III-Rで完全に削除 → 脱精神病理化

 WHO「同性愛はいかなる意味でも治療の対象とならない」

 

▶ 医療とLGBTQ+の歴史:トランスジェンダー(性自認、Gender Identity, GI)

(DSM)

1980年:DSM-III  Gender identity disorder(性同一性障害)

2013年:DSM-V  Gender dysphoria(性別違和) → 脱障害化

(ICD)

〜ICD-10までは精神及び行動の障害

2018年:ICD-11  Gender incongruence(性別不合)

 Conditions related to sexual health に → 脱精神病理化 

 

▶ DSD(Disorders of Sex Development、性分化疾患)

・「からだの性」のグラデーション

・DSDs:Differences of Sex Development, からだの性の様々な発達、と呼ばれることもある。

・性分化の過程で、染色体 → 性腺 → 外性器の性が発達するプロセスのどこかが非典型的である状態、と定義される。

・いくつかの疾患を総合した用語

(例)Turner症候群、AIS(アンドロゲン不応症)、CAH(副腎過形成)など数十の疾患群

・DSDを持つ人々にとって「中性」「男性でも女性でもない」と表現されることは重大な心的被害をもたらすことがある。

・DSDの人々の中にも性自認や性的指向の多様性がある場合もあるが、そうでない場合、LGBTQ+の文脈で語られたくないと感じる人もいる。

食物アレルギー患者さんが集団生活に入り、給食が用意される状況では、除去などの対策が必要になります。保護者が園や学校に配慮を希望する場合には生活管理指導表を作成します。

しかし、医師の間でも温度差があり、園や学校側が混乱してしまうケースが後を絶ちません。
(一応)アレルギー専門医である私が、作成の際に気をつけている点を説明します。

▶ 正確な診断
・検査陽性+食べると症状が出る → 確定診断
・検査陽性+食べても症状なし → 食物アレルギーではない
・検査陽性+未摂取 → 食物アレルギーの可能性(負荷試験が必要)
  → 負荷試験未施行の場合は園・学校では除去せざるを得ない。
  → 負荷試験ができる医療機関へ紹介。

▶ 「とりあえず除去」を避けるために
・「心配だから多項目スクリーニング検査」は慎重に。
・スクリーニング検査で陽性でも食べて症状が出なければ除去は不要。
・スクリーニング検査陽性で安易に「とりあえず除去」を指示すると、児・保護者・園/学校の負担増。

▶ ナッツ類はスクリーニング検査を考慮
・ナッツ類のアレルゲンコンポーネント検査(一般のアレルギー検査とは異なる)は感度・特異度が高いため、一つのナッツにで症状が出る場合は考慮すべき。
・アレルゲンコンポーネント例
(例)クルミ → Jug r 1
(例)カシューナッツ → Ana o 3
(例)ピーナッツ → Ara h 2

▶ 学校給食での食物アレルギー対応例
・献立表対応
・除去食対応
・弁当対応
・無提供

▶ 生活管理指導表の「診断根拠」
・症状が出た(エピソードあるいは負荷試験陽性)+検査陽性 → ⭕️ 
・診断根拠無記載 → ❌️ 
・血液検査陽性+症状なしでの除去は❌️ 
・血液検査陽性+未摂取での除去は△ → 「食物アレルギーの可能性」にとどまる。

▶ 生活管理指導表の「除去内容」
・安易に「すべて」にチェックを入れない。
・ナッツ類は個々の食材を記入すべし。
(例)クルミ、カシューナッツ、アーモンド、ヘーゼルナッツ、マカダミアナッツ、ピスタチオ、松の実、クリ、ギンナン、ココナッツ、カカオ、・・・

▶ 安全に解除するために気をつけるべき点
・日常摂取量で無症状になるまでは完全除去対応が基本。
・学校での部分解除指導は行わない。
 → 事故防止の観点から摂取可・完全除去の二者択一が望ましい。
・自宅での摂取状況、負荷試験の結果などの情報提供が望ましい。
・小学生以上は「運動負荷」を考慮
(例)日常摂取量で無症状でも、激しい運動が加わると誘発されることがある


▶ 「より厳しい除去が必要なもの」の考え方
・これらに反応する患児は重症症例のみ。
・実際にこれらの食材での既往がある場合に除去が必要、なければ必要なし。
(例)大豆あるいは小麦でじんま疹が出るが、味噌や醤油では無症状

▶ 花粉・果物アレルギーについて
・近年増えてきた病型で口腔アレルギー症状のみ。
・生の果物野菜には反応するが、加熱や加工したものは症状が出にくい。
・対応は学校と養育者が相談して決めるが、高学年で自分で理解していれば「本人任せ」も。
・「除去」で作成する場合は、「加熱した〇〇は摂取可能」と記載するとよい。

子どものココロのトラブルにどう漢方を適用するか・・・今まで試行錯誤してきました。最近、中高生の起立性調節障害患者さんと話をしていると、気分の浮き沈みとか、気分の不調を訴える人が多いことに気づきました。
そして、気分による漢方薬の使い分けを提唱している大澤稔先生(東北大学産婦人科)のセミナーを思い出しました。講義メモから、役立ちそうなポイントを拾ってみました。

▶ 日常的な「よくある気分の不調」
・ドキドキ:不安症、人前で緊張
・イライラ:苛立ち、落ち着きがない
・ウツウツ:抑うつ、元気がない

▶ 精神的不安定の分類

1.西洋医学の分類
非定型:不安症 → パニック症、予期不安
統合失調症:気分症 → うつ病、双極症

2.東洋医学の分類
急なドキドキがベースにあり、その先にウツウツ・ドキドキが存在する
急なドキドキ+ウツウツ
急なドキドキ+イライラ

▶ 精神的動揺のイメージ
(興奮)
 ↑ 病的興奮状態(イライラ)
   → 向精神薬(メジャートランキライザー)がよく効く
 ↑ 軽い興奮状態(イライラ反応)
   → 向精神薬は効きすぎて副作用の方が目立つ
(正常域)不安発作(急なドキドキ)
 ↓ 軽いうつ状態(抑うつ反応)
   → 抗うつ薬は効きすぎて副作用の方が目立つ
 ↓ 病的うつ状態(ウツウツ)
   → 抗うつ薬がよく効く
(うつ)

▶ 急にドキドキする方(不安症・神経症)への漢方
・すでに安定剤を飲んでいる方へ投与可能
・ひきつけを起こしそうなくらいつらい
・第一選択薬は甘麦大棗湯(72)・・・こみ上げてくる焦燥感(ドキドキ)を抑えてくれる

※ 追加症状には追加処方を;

桂枝加竜骨牡蛎湯(26)
・抑うつ傾向(神経衰弱)あり
・精神的に落ちている

苓桂朮甘湯(39)
・ふらつき(めまい)、立ちくらみ(起立性調節障害)
・自律神経調節障害
・不安で生じる自律神経の変動(ふらつき)を鎮めてくれる
・単独でも不安(ノイローゼ)軽減効果あり

▶ 不安発作のひどい方(不安症・神経症)への漢方
・パニック症・過呼吸などのエピソードのある方へ
 → 甘麦大棗湯苓桂朮甘湯(苓桂甘棗湯の方意)

▶ イライラ(いら立ち)している方への処方
・話の端々に気の高ぶりを感じる、いら立ち、不眠、物音に敏感な人には冷え・のぼせの有無を確認

Q. 冷え・のぼせがありますか?
 No → 動悸が強いですか? 感覚過敏(音・ニオイ・光)がありますか?
 Yes → 柴胡加竜骨牡蛎湯(12)
 No  → 愁訴が多い → 加味逍遥散(24)
    愁訴が多くない → 抑肝散(54)、抑肝散加陳皮半夏(83)
 Yes → 頭汗多く神経過敏柴胡加竜骨牡蛎湯(12)
   → 強いのぼせ・便秘・月経困難 → 桃核承気湯(61)
   → 軽いのぼせ・便秘・月経困難 → 加味逍遥散(24)

※ 柴胡加竜骨牡蛎湯は不眠にも有効
※ 抑肝散加陳皮半夏は「抑圧された怒り」に効く・・・何か我慢をしていることが多く、原因のよく分からない特定の身体症状が出ることがある(心身症・神経症)。

以上を別の視点からまとめると、

イライラ+動悸(+感覚過敏) → 柴胡加竜骨牡蛎湯(12)
イライラ+多愁訴 → 加味逍遥散(24)
イライラ+少愁訴 → 抑肝散(54)、抑肝散加陳皮半夏(83)
イライラ+頭汗多い(+神経過敏) → 柴胡加竜骨牡蛎湯(12)
イライラ+強い(のぼせ・便秘・月経困難) → 桃核承気湯(61)
イライラ+弱い(のぼせ・便秘・月経困難) → 加味逍遥散(24)

▶ ウツウツ(抑うつ)患者さんへの処方
・ウツウツ(神経衰弱)していて、外来に入ってくるときから元気がない。
 → 桂枝加竜骨牡蛎湯(26)
・さらに気分がふさいでのどが苦しい(息がしづらい)。
 → 半夏厚朴湯(16)を併用 

▶ 竜骨牡蛎を含む薬について
・・・ココロの病気は大きく「イライラ」と「ウツウツ」で鑑別可能

柴胡加竜骨牡蛎湯(12)
・キーワードは「イライラ
・神経性心悸亢進、ヒステリーに対応・ココロの高ぶりを抑える
・甘草を含まない

桂枝加竜骨牡蛎湯(26)
・キーワードは「ウツウツ
・性的神経衰弱、陰萎、遺精
・甘草を含む


<参考>
・Rp.+(レシピプラス)2026年冬号 Vol.25 No.1「使える漢方薬ABC

ニキビの治療薬は近年、めざましい発展を遂げています。
昔は赤く炎症を起こしたニキビを治すことしかできなかったのですが、ニキビ肌(ニキビができやすい肌の状態)を改善するぬり薬が次々と登場してきたのです。

最初に登場したのがディフェリン®ゲル(一般名:アダパレン)。
次にベピオ®ゲル(一般名:過酸化ベンゾイル)。
そしてエピディオ(ディフェリン+ベピオ)、デュアック配合ゲル(ベピオ+抗菌薬)とかいろいろ。

ニキビに悩んでいる思春期世代の男子女子たちに対応できるようにと、以前集中して資料を読み込んだ時期がありました。そして分かったことは・・・新薬では副作用が問題になるということ。

ディフェリン®ゲルは塗布開始後1週間頃をピークにほとんどの患者さんで刺激感が出てきます。少し赤くなってヒリヒリするのです。これは、効いている証拠で、1週間を過ぎると徐々に治まってきます。なので、初回に処方する際、このことをあらかじめ説明しておきます。そうしないと、「肌に合わない、副作用だ」と使用をやめてしまうため。
少し赤い&ヒリヒリというレベルを超えて、真っ赤に腫れ上がったときは明らかな副作用ですので、中止します。

次に登場したベピオ®ゲル以降は、この「真っ赤に腫れ上がってしまう副作用」が散見されるようです(100人に1人)。もし、そのような副作用が出た場合、小児科医の私には対応しきれないと考え、今まで手を出さないできました。

最近、ベピオウォッシュゲルという製品が登場しました。
これは、ベピオ®ゲルを塗ってから5〜10分後に洗い流す、という特殊な使用法のぬり薬です。
つまり、製薬会社もベピオ®ゲルの副作用を認識していて、副作用軽減のための使い方を考案したわけですね。

皮膚科系セミナーを視聴すると、現在この薬がベストセラーになっているようです。
そして、塗った後5〜10分を待たずに「ヒリヒリを感じたら3分でも洗い流してもOK」と説明していました。

ベピオウォッシュゲルに私が感じるメリットは、
・副作用回避
・衣服の着色回避
・9歳から使用可能(今までのぬり薬は12歳以上)
・顔以外の部位にも使用可能

等々。当院でもすでに導入済みです。
解説記事が目に留まりましたので、ポイントを抜粋・引用させていただきます。


<ポイント解説>

過酸化ベンゾイル(商品名ベピオ)は、抗菌作用と角質剥離作用を併せ持ち、炎症性および非炎症性の皮疹を改善する薬剤。過酸化ベンゾイル製剤としては、
(2015年)ベピオゲル
(2023年)ベピオローション
がすでに発売されている。
・日本皮膚科学会による「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」では尋常性ざ瘡(にきび)の第一選択薬として推奨されている1)
・使用中の皮膚刺激やそれによる全顔塗布への移行の難しさ、衣類や寝具への付着による脱色リスクなどが、治療継続を妨げる要因となっていた。こうした課題を解消するために開発されたのが、25年6月発売のベピオウォッシュゲル短時間接触療法によりにきびを治療する新たなタイプの過酸化ベンゾイル製剤であり、塗布後5〜10分作用させてから洗い流す(⇩)。過酸化ベンゾイル濃度をゲルおよびローションの2.5%より高い5%に設定することで、短時間の作用でも十分な効果が得られるよう工夫されている。

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・皮膚に薬剤が長時間残らないため、皮膚刺激や脱色への不安を軽減できる。
・炎症性皮疹だけでなく、毛包内に皮脂が貯留した状態である面皰(コメド)にも効果があるので、にきびのない部分も含め顔全体に塗布する。ぬるま湯や水のみで容易に薬剤を除去できる。
・乾燥が気になる場合には、ベピオウォッシュゲルを洗い流した後に保湿ケアを行い、併用薬があればその後に塗布する。顔だけでなく体幹部のにきびに対して使用することも可能
・ベピオウォッシュゲルは開始初期に乾燥や赤みといった皮膚刺激症状が現れやすいが、一般的には1カ月を過ぎると刺激を感じる頻度は減っていく。過酸化ベンゾイルの皮膚刺激性は日光曝露によって増悪する可能性があるため、帽子などで日差しを遮る、日焼け止めを塗る、日焼けランプや紫外線療法を避けるなどの対応が必要。
・痒みや湿疹を症状とする接触皮膚炎を100人に1人程度の頻度で生じることがあり、こうした症状が見られた場合は使用を中止する必要がある。使用開始時は狭い範囲に塗布して徐々に量を増やし、刺激がなければにきび部分だけでなく顔全体に塗布する、脱色を防ぐため髪や眉毛に付かないよう気を付ける

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★ ベピオウォッシュゲルのよる脱色対策(堀内祐紀先生の指導)
・ヌルつきゼロ:洗顔料をしっかり泡立て、ヌルつきが消えるまで洗浄
・境界もしっかりと:顎下、生え際の「すすぎ残し」を徹底チェック
・手洗いもしっかり:手を再度洗い、専用のタオルで水分を完全に拭き取る


参考>
洗い流す」にきび治療薬ベピオウォッシュゲル
島田 真帆=康生会武田病院(京都市)薬局(2025/12/8:日経DI)

長年小児科医として夜尿症診療にたずさわってきましたが、正直に言いまして、薬物療法の手応えがない疾患の一つです。

夜尿症の薬物療法とはデスモプレシン(ミニリンメルト®)を指します。
これは抗利尿ホルモンといって、尿を濃縮させて量を少なくする働きがあります。
誰の体にも存在するホルモン(バゾプレシンあるいはバゾプレッシン)ですが、夜尿症児は相対的にそれが少ない、効きが悪いと考え、内服薬で補充するのですね。
抗利尿ホルモンであるバゾプレシンが欠乏する尿崩症という病気がありますが、この病気にもデスモプレシンが投与されます。不思議なのは、尿崩症に使用する量より、夜尿症に使用する量の方が多いこと。

夜尿症のすべてがデスモプレシン治療の対象になるわけではありません。
尿量を少なくする薬ですから、尿量が多いタイプ(多尿型、小児夜尿症の2/3はこのタイプ)に適応になり、有効率は60〜70%です。

一方、尿量は普通だけと膀胱が小さいために朝までに溢れて夜尿になるタイプ(膀胱型)もあります。
このタイプにデスモプレシンを投与しても、残念ながら効果はあまり期待できません。もともと多尿ではないので尿量減少効果が少ないですから。

膀胱型に有効な治療はアラーム療法で、有効率は70%程度。
こちらにまとめましたので興味のある方はお読みください。

多尿型と膀胱型、両方の要素があるタイプを混合型と呼び、予想される通り難治性です。このタイプにはデスモプレシンとアラームの療法を併用します。

また、有効性は低いものの、抗コリン薬や三環系抗うつ薬を併用することがあります。
今から30年前はこの二つの薬剤が夜尿症治療の中心でした。喘息などの病気と比べて、治療の手応えがなく、患者さんも通院に疲れてドロップアウトすることが多かったですね。

以上が一般論ですが、専門家による「難治性夜尿症」の記事が目に留まりましたので、備忘録としてポイントを引用させていただきます。

ポイントとして、
・多尿型と膀胱型を分けていない。
・国際ガイドラインでは薬物療法とアラーム療法を並列推奨されているが、著者はミニリンメルト®や抗コリン薬などの薬物療法を中心に、アラーム療法を補助として考えている様子。
・漢方(抑肝散)の効果に言及している。
などが挙げられます。

欧米では「とりあえず薬を試してみましょう」とミニリンメルトが処方されると耳にしたことがあります。日本のように、多尿型と膀胱型を分けて考えるという、繊細な作業はスルーしている様子。

さらに近年、難治性夜尿症例に神経発達症の合併が多いことが明らかになってきました。漢方の抑肝散は、私がふだんからかんしゃくの相談を受けると処方している方剤の一つです。ようやくこちらの面にも光が当てられてきた、という印象ですね。
神経発達症の漢方に興味のある方は、こちらをご参照ください。


▶ 排尿機能の発達
・3歳頃までに反射性排尿を抑制する脳の高位中枢が発達するため、誘導すれば排尿が可能になり、それ以前にみられていた反射的排尿が消失し、昼間の遺尿がみられなくなる。
・4歳頃には次第に夜間の不随意排尿も解消し、自律排尿が完成していく。
・5歳を過ぎても月に数回以上、夜間睡眠中に尿を漏らす例を「夜尿症」と定義している。
・日本における夜尿症の頻度は、5〜15歳では約6.4%(約80万人)である。

▶ 夜尿症の分類法は2つ
1.一次性(95%)と二次性(5%)
①一次性:生まれてからずっと夜尿が消えない
②二次性:夜尿が一旦、6ヶ月以上解消していたものが再燃
 → 尿路感染症、便秘症、脊髄疾患(脊髄炎、腫瘍など)を要チェック
2.単一症候性(60〜90%)と非単一症候性(10〜40%)
①夜尿のみ
②夜尿+昼間遺尿
 → 慢性便秘症、泌尿器科的疾患(尿路奇形、反復性尿路感染症など)、代謝・内分泌疾患(糖尿病、尿崩症など)、脊髄疾患(潜在性二分脊椎など)、神経発達症(ADHD児など)などの基礎疾患を有している可能性がある

★ 国際標準のチェック項目:ICCS,International
①昼間遺尿:3歳半以降も続く昼間遺尿の有無
②1日の排尿回数:3回以下、あるいは、8回以上は異常
③切迫性排尿の有無
④排尿をこらえている姿勢の有無
⑤下腹部を圧迫しての排尿の有無
⑥尿線を強く描けるか
⑦便秘の有無
⑧神経発達症(ADHD、ASD)合併の有無
⑨学習障害や発達障害の合併の有無

▶ 難治性夜尿症の治療

1.生活指導の徹底
・適切な水分摂取法:飲水の約2時間後に尿が生成されるので、夕食は就寝2時間前に済ませ、それ以降の飲水は極力控える(10mL/kg未満)
・塩分過剰摂取を控える
・就寝前に必ず排尿する習慣をつける

2.ミニリンメルト®(抗利尿ホルモン製剤、DDAVP)の適応
・多尿型
・60〜70%有効
・国際基準ICCSの推奨治療では第一選択薬
・120μgで開始し、効果不十分の場合は240μgへ増量する。
・OD錠は、従来のスプレー剤と比べて効果発現までのタイムラグを考慮し、就寝直前内服ではなく、就寝30分前に内服する。
・OD錠は、錠剤を口腔内で崩壊させ、口腔粘膜から吸収させることが重要である。口腔内で崩壊させずに嚥下したり、服用時に飲水すると十分な効果が得られない。内服前に歯みがきを済ませ、内服後は飲水を控え、口をゆすぐことを避けるなども重要である。

3.抗コリン薬(副交感神経遮断薬)
・上記DDAVPで効果不十分であった場合、機能的膀胱容量増加を目的として使用する。
・従来のオキシブチニン塩酸塩(ポラキス®)やプロピベリン塩酸塩(バップフォー®)に変わり、新しい世代のイミダフェナシン(ウトリス®、ステーブラ®)やコハク酸ソリフェナシン(ベシケア®)のそれぞれOD錠が汎用されている。
・昼間遺尿や過活動膀胱の症状を合併する児では、ウトリスかステーブラ2錠(0.2mg)を2回に分けて使用、体重35kgを超える児では、効果が不十分な場合は倍量まで増量する。
・夜尿のみで昼間遺尿を認めない児では、ベシケア2.5mgを就寝前に使用し、効果が不十分な場合は5mgに増量する。

4.アラーム療法
・薬物療法と並列した治療のオプション
・有効率:65〜70%、中止後の再発率:30〜60%
・作用機序:覚醒排尿を促すのではなく、膀胱の排尿抑制力を高め、膀胱容量を増加させることにある(詳細不明)。
・アラーム療法を成功させるためには、本人の努力のみならず家族の協力が極めて重要である。
・患児が家族と一緒に就寝し、アラームが作動した際、自力で起きることができなければ、親が起こす。
・開始2週間後に(主治医が)電話を入れるなどして治療継続の応援と技術的な問題を解決する。
・6〜8週間継続しても効果が得られなければ、一時中断する。
・(著者は)10歳以上の患児に対して薬物治療の補助療法としてアラーム療法を導入する。

5.睡眠問題への介入
・近年、夜尿症間寺における終夜脳波の検討から、多くが「浅くてクオリティーの低い睡眠が遷延している」ことが明らかになった。
・治療の一助として睡眠の改善が注目されてきており、欧米ではメラトニンの仕様の検討が行われている。

6.漢方による治療
・(著者ら)抑肝散を用いて良好な結果を得ている。使用量は、体重40kg未満に2.5g(夕食後)、体重40kg以上に2.5gで効果が乏しい場合は5gへ増量。
・抑肝散(54)は、漢方でいう「肝」の高ぶりを押さえ、興奮やイライラ、筋肉の緊張などを鎮める方剤であり、もともと小児の夜なき、疳の虫に使用されてきた。


<参考>
小児の難治性夜尿症への対応
 大友義之、順天堂大学小児科(日本医事新報社、最終更新日は2025.9.20)

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