(最終更新:2021.8.3)
 
子どもは罹っても軽くすむし、ワクチンの副反応は若い人ほど強く多いから接種する必要はないのでは?
と子どもへのワクチン接種を迷われている保護者が多いと思います。

 そんな方々に「ワクチンについてどう向き合うべきか」を考える材料になればと思い、この文章を書いています。

 さて、ひとつ質問させてください。
現在の厳しい感染対策・自粛生活は何のために行っているのでしょう?
 ・・・それは「自分が罹らないため」が基本ですが、同時に「まわりの人にうつさないため」ですよね。

 新型コロナウイルスが世界的に大流行して制圧できない最大の理由は「知らない間にまわりの人にうつしてしまう」から。 これが季節性インフルエンザなどのほかの感染症と違う、新型コロナの賢い生き残り戦略です。

 罹った時点では被害者ですが、しかし同時にその気は無くても加害者になってしまいます。そして自分は軽く済んでも、まわりの人たちが軽く済むとは限りません。

 このために、大人たちは繰り返し緊急事態宣言まん延防止等重点措置の生活を余儀なくされ、子どもたちは窮屈な学校生活を強いられているのです。


 新型コロナが登場後、学校生活は一変しました。運動会や合唱コンクール、修学旅行の思い出のない思春期なんて・・・その時間を将来取り戻すことはできません。
 この感染対策・自粛生活を終わらせて元の生活を取り戻すためにはどうしたらよいでしょう?

 ある集団・地域の人々の「7割」の人が新型コロナに対する免疫を持つと流行が収まる、と専門家は分析しています。
 そして免疫を得る方法は、“自然感染”することと“ワクチン接種”の二択。

 学校単位で考えてみると・・・
① 7割の子どもが自然感染する
② 7割の子どもがワクチンを接種する
 のいずれかで流行しなくなり、感染対策をゆるめることが期待できそうです。

 ①には年単位の長い時間がかかり、その間感染対策をずっと続けることになります。
 一方、②はその気になれば数ヶ月で完了します。
 どちらを選ぶかは自由です。ワクチン接種は強制ではありません。


 以上、ワクチン接種の要否を考えるポイントは、「病気の重症度」と「ワクチンの効果・副反応」だけでなく、感染対策に伴う「子どもの生活スタイル」という要素も大切ではないかと思います。

 最初の質問、
子どもは罹っても軽くすむし、ワクチンの副反応は若い人ほど強く多いから接種する必要はないのでは?
に対する現時点での私の答えとして、
確かにその通りです。でもワクチン接種により現在の生活制限・自粛生活をゆるめることが期待できます。子ども自身の生活スタイルを元に戻していろんな思い出を残すためには、ワクチン接種が役に立ちます。
と記しておきます。


 以下に自然感染とワクチン接種の比較ポイントを書き出してみました。
 これを機会にワクチン接種について子どもと一緒に考え、話し合ってみませんか。 

自然感染

(メリット)
 軽症で終わることが多い。

(デメリット)
 合併症(注1)のリスクあり
 後遺症(
注2)のリスクあり
 軽症・無症状でも10日間の隔離が必要


ワクチン

(メリット)
 感染するリスク激減
 感染させるリスク減少
 感染対策(マスク着用)緩和
 自粛生活・生活制限緩和(運動会・合唱コンクール・修学旅行の再開、旅行・海外渡航制限の解除)

(デメリット)
 接種後数日間、副反応(注3)が出やすい 



注1)小児〜若年者で報告されている合併症;
MIS-C(小児多系統炎症性症候群):0.1%に発生、新型コロナに感染した小児が回復後1ヶ月くらい経ってから発症する
川崎病に似た病気発熱、皮疹、結膜充血、心筋障害、腎障害など全身に強い炎症を起こす)。川崎病より発症年齢が高い(川崎病は2-3歳、MIS-Cは9-10歳がピーク)。

心筋炎:発生頻度は、自然感染:約2%、ワクチン接種後:約0.005%
 (自然感染での発生率はワクチン接種後の400倍) 
★ 2021年
8月25日にイスラエルの研究者が『ニューイングランド医学誌』に発表した研究によれば、コロナワクチンを接種することで心筋炎・心膜炎のリスクは3.24倍上昇するが、コロナに罹患した場合そのリスクは18.3倍増加する。 

 

注2ノルウェーの自然感染自宅待機者(≒軽症者)の6ヶ月後の後遺症データによると、0-15歳の小児では「味覚・嗅覚障害」「胃の異常」以外は報告されていません。 


味覚・嗅覚障害

倦怠感

息切れ

集中力低下

頭痛

記憶障害

めまい

胃の異常

睡眠障害

動悸

0-15歳

13%

6%

16-30歳

6%

21%

13%

13%

11%

11%

7%

5%

5%

3%

 

注3ファイザー社ワクチンの12-15歳の副反応のデータを下表に示します。接種翌日をピークに、1週間ほどで改善します。なお、長期的な副反応は、現在のところ証明されたものはありません。


痛み

発赤

腫れ

発熱

倦怠感

頭痛

筋肉痛

関節痛

下痢

嘔吐

1回目

87%

6%

7%

10%

60%

55%

24%

10%

8%

3%

2回目

79%

5%

5%

20%

66%

65%

32%

16%

6%

3%


また、年齢に関係なく集計された
アナフィラキシーの頻度は、
新型コロナワクチン)100万人あたり5人(ファイザー社)、100万人あたり2.8人(モデルナ社)
季節性インフルエンザワクチン)100万人あたり1.3人
とインフルワクチンよりやや多いデータですが、確率は0.0005%と非常に希です。
一方、他の薬剤と比較すると、
ペニシリン系抗菌薬)100万人あたり100〜500人
と一般臨床で使われている抗生物質の100分の1の頻度と低いことがわかります。
なお、学童期の食物アレルギーによるアナフィラキシーは1000人に1人と報告されていますから、
食物アレルギー)100万人あたり1000人
と、新型コロナワクチンの200倍・・・とても多いことがわかります。


★ 子どもの新型コロナ感染の5-7割は
家庭内感染(学校より家庭の方が危険!)です。子どもを守るためには、まず周囲の大人がワクチン接種をしましょう。
★ ワクチンをめぐる様々なウワサが気になる方は、次項の「新型コロナワクチン、デマに注意!」もお読みください。  



<参考>
12 歳以上の小児への新型コロナウイルスワクチン接種についての提言
日本小児科医会:2021.6.16) 

新型コロナワクチン子どもならびに子どもに接する成人への接種に対する考え方~
日本小児科学会:2021.6.16)

新型コロナウイルスワクチン接種後の急性心筋炎と急性心膜炎に 関する日本循環器学会の声明
(日本循環器学会:2021.7.21)

■ 「
子どもの後遺症、生理中の接種…若い世代とワクチンで知っておきたいこと
(BUSINESS INSIDER:2021.6.22)