日々の診療では獣肉(鶏肉、豚肉、牛肉など)アレルギーはあまり多く相談を受けません。
学会で時々耳にする程度ですが、調べてみるとその病態は単一項目選択ではなく、いくつかの違うメカニズムが背景にあり、興味深い病気です。
例えば「pork-cat syndrome」は飼い猫で感作された後、豚肉成分に交差反応して発症します。
ここでは、「マダニ咬傷後に発症する獣肉アレルギー」(α-Gal syndrome)について説明します。この病気はなんと、血液型がB型の人は発症しにくいと言われています。
ダニと獣肉がどんなふうに関係してアレルギーになるのか?
なぜB型はなりにくいのか?
・・・興味が尽きません。
■ どんな病気?
・マダニ咬傷を介してその唾液成分に感作され、同じ成分を含む食物(主に牛肉や豚肉)や薬剤によりアレルギー症状が発症する病気で、すぐにではなく遅れて症状が出ます。
・(ちょっと詳しく)マダニ唾液や消化管内に存在する糖鎖の一種 α-1,3-galactose(α-Gal)に感作され、α-Galを含む食物や薬剤によりアレルギー症状が誘発される(α-Gal syndrome)。
■ 疫学
・はじめて報告されたのは2009年(アメリカとオーストラリア)、日本では2012年に報告された、新しい病気です。
・山野での活動中にマダニ咬傷を受けた例が多く、報告例のほとんどが成人です。
・日本ではフタトゲチマダニ(※)やタカサゴキララマダニが多く、欧米では別の種類が原因になると報告されています。
※ フタトゲチマダニはSFTS(重症熱性血小板減少症候群)を媒介することで有名です。
・獣肉アレルギーの多く(97%)は血液型がB型以外との報告があります。ABO式血液型は糖鎖で決定され、B型の糖鎖はα-Galと似た構造を有するため、自己抗原に対しての抗体を産生しにくく、本症ではB型の患者が少ないと考えられています。
■ 症状
<獣肉>
・ふつう、食物アレルギーは食べてすぐ症状が出る(即時型)が多いのですが、この α-Gal syndrome は遅れて出る(遅発型)(※ 1)のが特徴です。
・非霊長類ほ乳動物(ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、シカなどの四つ足動物)の肉が主な原因になります。鶏肉では誘発されません。
・獣肉を食べてから2〜6時間後に、
(皮膚症状)じんま疹や血管性浮腫など
(消化器症状)下痢など
が現れます。
・時にアナフィラキシー(※ 2)に至ることがあり、遅れて出るアナフィラキシーのため「遅発型アナフィラキシー」(late-onset anaphylaxis)と呼ばれます。
・約16%は2時間以内に発症したとの報告があります。ヨーロッパの一部で好んで食べられるブタの腎臓では、即時型症状が出現する傾向があります。
・症状の再現性は一定せず、同じ患者さんでも運動、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)内服、飲酒などの二次的要因の関与により、症状の出現や増悪が認められます。
※ 1:遅発型になる理由:α-Galは獣肉として食べた場合、糖脂質や糖タンパクとして吸収されます。糖脂質として吸収された場合、脂質の吸収や低分子化に時間を要し、肥満細胞への到達が遅れるために遅発型になると推察されてい明日。
※ 2:アナフィラキシー:皮膚症状や消化器症状などが一度に現れるアレルギーの重症型。
<薬剤>
・抗がん剤である抗ヒトEGF受容体モノクローナル抗体製剤セツキシマブ(商品名:
・点滴製剤(例:セツキシマブなど)では投与後速やかに症状が出現します。
■ 診断・検査
<問診>
・獣肉を食べてから2〜6時間後にじんま疹やアナフィラキシーなどのアレルギー症状が出た場合に疑います。
・マダニ咬傷歴は必須ではありません。
<検査>
・症状の出た獣肉(牛肉や豚肉)に対する特異的IgE抗体測定を行います。
・α-Galを直接測定することは現時点(2022年7月)ではできません。抗ウシサイログロブリン(α-Galを含む)に対する特異的IgE抗体を用いた評価方法も提案されています。
・研究レベルですが、α-Gal特異的IgE抗体保有者において、好塩基球活性化試験陽性が症状と強く相関し、セツキシマブが誘発するアナフィラキシー予測に有用との報告があります。
■ 治療・管理
<食事指導>
・基本的に、獣肉や内臓(腎臓、肝臓、心臓、腸管)を食べることを避けます。
・加熱により抗原性が低下する可能性が示唆されていますが、ブタの腎臓は加熱(95℃10分間)による抗原性低下はないという報告もあります。
・牛乳は抗体価が陽性になっても、乳製品中のα-Gal含有量はわずかのため、ほとんどの患者さんは食べても無症状であり、原則として牛乳やチーズは除去対象になりません。しかし、獣肉回避でも十分なコントロールができない牛乳特異的IgE抗体陽性者では、牛乳や乳製品を避けるよう指導します。
・日本では子持ちカレイとの交差反応が報告されています。
■ 予後
・感作源であるマダニ咬傷を避け続けると牛肉特異的IgE抗体が低下することが報告されており、マダニ咬傷予防により本症の寛解につながる可能性が期待されています。
★ 獣肉アレルギー一覧表

<参考>
・マダニ対策、今できること(国立感染症研究所)
学会で時々耳にする程度ですが、調べてみるとその病態は単一項目選択ではなく、いくつかの違うメカニズムが背景にあり、興味深い病気です。
例えば「pork-cat syndrome」は飼い猫で感作された後、豚肉成分に交差反応して発症します。
ここでは、「マダニ咬傷後に発症する獣肉アレルギー」(α-Gal syndrome)について説明します。この病気はなんと、血液型がB型の人は発症しにくいと言われています。
ダニと獣肉がどんなふうに関係してアレルギーになるのか?
なぜB型はなりにくいのか?
・・・興味が尽きません。
■ どんな病気?
・マダニ咬傷を介してその唾液成分に感作され、同じ成分を含む食物(主に牛肉や豚肉)や薬剤によりアレルギー症状が発症する病気で、すぐにではなく遅れて症状が出ます。
・(ちょっと詳しく)マダニ唾液や消化管内に存在する糖鎖の一種 α-1,3-galactose(α-Gal)に感作され、α-Galを含む食物や薬剤によりアレルギー症状が誘発される(α-Gal syndrome)。
■ 疫学
・はじめて報告されたのは2009年(アメリカとオーストラリア)、日本では2012年に報告された、新しい病気です。
・山野での活動中にマダニ咬傷を受けた例が多く、報告例のほとんどが成人です。
・日本ではフタトゲチマダニ(※)やタカサゴキララマダニが多く、欧米では別の種類が原因になると報告されています。
※ フタトゲチマダニはSFTS(重症熱性血小板減少症候群)を媒介することで有名です。
・獣肉アレルギーの多く(97%)は血液型がB型以外との報告があります。ABO式血液型は糖鎖で決定され、B型の糖鎖はα-Galと似た構造を有するため、自己抗原に対しての抗体を産生しにくく、本症ではB型の患者が少ないと考えられています。
■ 症状
<獣肉>
・ふつう、食物アレルギーは食べてすぐ症状が出る(即時型)が多いのですが、この α-Gal syndrome は遅れて出る(遅発型)(※ 1)のが特徴です。
・非霊長類ほ乳動物(ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、シカなどの四つ足動物)の肉が主な原因になります。鶏肉では誘発されません。
・獣肉を食べてから2〜6時間後に、
(皮膚症状)じんま疹や血管性浮腫など
(消化器症状)下痢など
が現れます。
・時にアナフィラキシー(※ 2)に至ることがあり、遅れて出るアナフィラキシーのため「遅発型アナフィラキシー」(late-onset anaphylaxis)と呼ばれます。
・約16%は2時間以内に発症したとの報告があります。ヨーロッパの一部で好んで食べられるブタの腎臓では、即時型症状が出現する傾向があります。
・症状の再現性は一定せず、同じ患者さんでも運動、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)内服、飲酒などの二次的要因の関与により、症状の出現や増悪が認められます。
※ 1:遅発型になる理由:α-Galは獣肉として食べた場合、糖脂質や糖タンパクとして吸収されます。糖脂質として吸収された場合、脂質の吸収や低分子化に時間を要し、肥満細胞への到達が遅れるために遅発型になると推察されてい明日。
※ 2:アナフィラキシー:皮膚症状や消化器症状などが一度に現れるアレルギーの重症型。
<薬剤>
・抗がん剤である抗ヒトEGF受容体モノクローナル抗体製剤セツキシマブ(商品名:
アービタックス
®)やゼラチン含有コロイドもα-Galを含むため、α-Gal感作例ではアナフィラキシーが起こる可能性があります。・点滴製剤(例:セツキシマブなど)では投与後速やかに症状が出現します。
■ 診断・検査
<問診>
・獣肉を食べてから2〜6時間後にじんま疹やアナフィラキシーなどのアレルギー症状が出た場合に疑います。
・マダニ咬傷歴は必須ではありません。
<検査>
・症状の出た獣肉(牛肉や豚肉)に対する特異的IgE抗体測定を行います。
・α-Galを直接測定することは現時点(2022年7月)ではできません。抗ウシサイログロブリン(α-Galを含む)に対する特異的IgE抗体を用いた評価方法も提案されています。
・研究レベルですが、α-Gal特異的IgE抗体保有者において、好塩基球活性化試験陽性が症状と強く相関し、セツキシマブが誘発するアナフィラキシー予測に有用との報告があります。
■ 治療・管理
<食事指導>
・基本的に、獣肉や内臓(腎臓、肝臓、心臓、腸管)を食べることを避けます。
・加熱により抗原性が低下する可能性が示唆されていますが、ブタの腎臓は加熱(95℃10分間)による抗原性低下はないという報告もあります。
・牛乳は抗体価が陽性になっても、乳製品中のα-Gal含有量はわずかのため、ほとんどの患者さんは食べても無症状であり、原則として牛乳やチーズは除去対象になりません。しかし、獣肉回避でも十分なコントロールができない牛乳特異的IgE抗体陽性者では、牛乳や乳製品を避けるよう指導します。
・日本では子持ちカレイとの交差反応が報告されています。
■ 予後
・感作源であるマダニ咬傷を避け続けると牛肉特異的IgE抗体が低下することが報告されており、マダニ咬傷予防により本症の寛解につながる可能性が期待されています。
★ 獣肉アレルギー一覧表

<参考>
・マダニ対策、今できること(国立感染症研究所)
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