初経年齢が低下してきた現在、小学4年生女子で約1割が経験するそうです。
それとともに、生理痛(=月経痛、医学的には月経困難症)とお友達になります。
中高生で薬を使いたくなるレベルの生理痛のある女子は、約5割もいるそうです。
市販の痛み止めでガマンしている、なんとかしのいでいるという人がほとんどだと思われます。

病院へ行くほどじゃないけど、やはりつらい、
産婦人科は敷居が高いし、
行ったことがわかるといろいろうわさされるのが嫌、
ピルという薬があることは知っているけど、
これも副作用とか、周りの反応とかが怖い・・・
という方へ、漢方薬をお勧めします。

漢方薬の特徴として、
痛みが強いときに頓服でのむ薬もありますが、
その場限り・一時しのぎの西洋医学の鎮痛剤と異なり、
生理のない日も含めて毎日服用することにより、
生理痛が軽くなる体質改善効果を期待できる薬もあります。

さらに生理中の痛み以外のつらい症状(冷え、頭痛、便秘など → 月経困難症)を同時に改善でき、
服用を続けているうちに月経困難症そのものが出現しなくなり、
休薬できる場合も多いのです。

漢方医学では、生理痛は“血の巡りが悪い”と捉え、
“瘀血”(おけつ)と表現します。
その瘀血を治す薬を“駆於血剤”と呼び、 
その人の体力・体調により複数の薬剤が用意されているのです。
自分に合った駆於血剤を見つけられると、ハッピーになれますよ。

近年、漢方薬の薬効が科学的に解析されるようになり、
駆瘀血薬は体の組織の血液微小循環を改善させることがわかってきました。
静脈系の微小循環障害に効く薬は西洋医学では乏しいので、貴重な存在です。

ここでは複数の漢方専門家による生理痛の治療を紹介します。
読んでみて、「私にはこの漢方が合いそう」と感じたらぜひご相談ください。

小児科である当院でも処方できます。
あなたに合った漢方薬を一緒に探しましょう。

ただし、日常生活に支障が出るほど重い人は、
ベースに病気が隠れていないかどうか確認する目的で、
まず婦人科受診をお勧めします。


産婦人科医:大澤稔先生

■ 月経痛の種類
1.収縮過剰型:子宮の筋肉が収縮して古い血液を排出するとき、収縮が強すぎて痛みを覚える。
2.病気合併型:子宮筋腫や子宮内膜症などの病気が原因で痛む
3.冷え誘発型 :冷え症(冷えると痛む)、鎮痛剤が体の冷えを助長する悪循環もある。

<月経痛の漢方治療フロー>

(頓服)
急性月経痛の第1選択薬 →
芍薬甘草湯(68)

(定期内服)
冷え症がありますか?  

→ あり → 唇の乾き、足の裏のほてりは?
      → あり:温経湯(106)
      → なし:当帰芍薬散(23)、当帰建中湯(123)

→ なし  → 子宮筋腫・子宮内膜症は? 
      → あり → 便秘 → あり:桃核承気湯(61)
              → なし:桂枝茯苓丸(25) 
      → なし:芍薬甘草湯(68)

■ 飲むタイミング
① 頓服(痛みがひどいときの緊急避難):芍薬甘草湯(68)
② 定期内服(生理中だけではなく毎日服用):桂枝茯苓丸(25)、桃核承気湯(61)、温経湯(106)、当帰芍薬散(23)
③ 生理中のみ内服:当帰建中湯(123)(月経以外の日は当帰芍薬散を毎日服用)

<方剤解説>
芍薬甘草湯(68):5-6分で痛みが和らぐ超即効薬。生理痛がひどいときに1(〜2)包頓服する。鎮痛剤(NSAIDs)と併用可能。
桂枝茯苓丸(25):子宮筋腫・子宮内膜症のヒトの第一選択。 微小循環改善作用あり。1回1包、1日3回継続服用。鎮痛剤(NSAIDs)と併用可能。
桃核承気湯(61):子宮筋腫・子宮内膜症+便秘があるヒト向け。微小循環改善作用あり。1回1包、1日1回からはじめて、便の状態をみながら増やしていく(いきなり1日3回ではじめると下痢するかも)。 鎮痛剤(NSAIDs)と併用可能。
温経湯(106):下半身の冷えが強いのに、手の平・足の裏は火照っていて、唇が乾き、月経不順などに悩んでいるヒト向け。1回1包、1日3回継続内服。鎮痛剤(NSAIDs)と併用可能。
当帰芍薬散(23):冷え・むくみ・頭痛があり、色白で貧血気味のヒト用。 1回1包、1日3回定期内服。
当帰建中湯(123):疲れやすく、血色が悪い、冷え、(生理中の)下痢に悩んでいるヒト向け。 生理中の7日間、1回1包、1日3回服用(月経以外の日は当帰芍薬散を服用)。


小児外科医小川恵子先生) 

■ 月経痛の種類
1.機能性月経困難症:ベースに病気がない・・・90%以上を占める
2.器質的月経困難症:ベースに病気がある

■ 月経困難症における漢方薬の位置づけ
・機能性月経困難症において、鎮痛剤(NSAIDs)や低用量ピルと並ぶ選択枝の一つ。

<生理痛の漢方治療フロー>

月経時に塊が出ますか、月経血が暗赤色ですか?

 → はい →
便秘は? → あり:通導散(105)、桃核承気湯(61)
           → なし:
桂枝茯苓丸(25)、桂枝茯苓丸加薏苡仁(125)

 → いいえ →
むくみやすい? → はい:当帰芍薬散(23)
              → いいえ:
当帰建中湯(123)
  
月経血が多い(
月経過多)→ 芎帰膠艾湯(77)

<方剤解説>
芍薬甘草湯(68):痛みが強いときに頓服(1回1包、1日4回まで可)、あるいは月経中2包分2で使用可能。
当帰建中湯(123):血虚(当帰)+気虚(大棗・甘草・生姜)に対応。 
当帰芍薬散(23):血虚+水毒に対応。
桃核承気湯(61):気逆(+便秘)に対応。 
通導散(105):気うつ(+便秘)に対応。
桂枝茯苓丸(25)、桂枝茯苓丸加薏苡仁(125):臍周囲の圧痛を目標とする。 

月経過多の治療フロー>

月経過多肌荒れ、爪が割れやすい(血虚)?

 → はい → 不眠傾向? → はい:帰脾湯(65)、加味帰脾湯(137)
           → いいえ → 出血が長く続く:芎帰膠艾湯(77)
                 → 手足のほてり、口唇の荒れ:温経湯(106)

 → いいえ → 便秘傾向?
      → はい →
下腹部の圧痛は? → あり:桃核承気湯(61)、通導散(105)
                    → なし:三黄瀉心湯(113)
       → いいえ → 桂枝茯苓丸加薏苡仁(125)、桂枝茯苓丸(25)


産婦人科医:後山尚久先生

・月経困難症、月経前症候群(緊張症)は“瘀血”と“水毒”がその病態の中心をなす。その基盤に“気の異常”(気虚、気うつ)が存在している。

<月経困難症への治療>

月経痛中心(10代女性の軽度の月経困難症)
当帰芍薬散(23)を継続投与 ・・・有効率5〜8割
月経中は鎮痛剤頓服、
芍薬甘草湯(68)頓服可

月経痛+瘀血(肩こり、ほてり、冷えなど)
月経前7日から終了まで:
芍薬甘草湯(68)
月経終了から月経前7日まで:
桂枝茯苓丸(25)、加味逍遥散(24)、当帰芍薬散(23)、桃核承気湯(61)、通導散(105)

月経痛+水毒(めまい、頭痛、嘔吐など)
月経前7日から終了まで:
芍薬甘草湯(68)
月経終了から月経前7日まで:
苓桂朮甘湯(39)、五苓散(17)、半夏白朮天麻湯(37)、当帰芍薬散(23)

<方剤解説>
当帰芍薬散(23):虚証・寒:血虚・水毒
芍薬甘草湯(68):虚証・寒熱
温経湯106):虚証・寒:血虚・瘀血
温清飲(57):虚証・熱:血虚・血熱
加味逍遥散(24):虚〜中間証・熱:気血両虚、胸脇苦満、瘀血
桂枝茯苓丸(25):中間〜実証:瘀血
大黄牡丹皮湯(33):実証・熱:瘀血、便秘
桃核承気湯(61):実証・熱:瘀血、便秘、精神不安定



谷川聖明Dr.)

4つの漢方薬の使い分けは“陰陽”概念を使う。

(陽)
 ↓ 桂枝茯苓丸
 ↓ 加味逍遙散
 ↓ 当帰芍薬散
 ↓ 当帰建中湯
(陰)

【方剤解説】
各方剤に含まれる生薬の担当病態の強さを数字(1~5)で表した:
桂枝茯苓丸)お血5、気逆3、気滞・血虚・水毒2、気虚1
加味逍遙散)お血4、気逆3、血虚・気滞・気虚・水毒2
当帰芍薬散)血虚・水毒4、お血3、気虚・気滞2、気逆1
当帰建中湯)お血3、血虚3、気逆1


以上、4名の漢方専門医による解説を並べてみました。
やはり微妙に異なりますが、共通しているのは、

“瘀血”がベース、
+“水毒”
+“さまざまな気の異常(気虚/気鬱/気逆)”

という捉え方ですね。
水毒や気の異常は各患者さんにより異なるため、
オーダーメイドの治療薬選択が必要になるという流れです。