体の不調については小児科あるいは内科を受診すればよいのですが、こころ(メンタル)の不調はどこに相談してよいのか迷います。
心療内科や精神科は敷居が高いし・・・。
小児科開業医にいきなりメンタルの不調を訴えて受診される方は少ないのですが、思春期の体の不調の相談の中でメンタルの不調が併存していることも多く、私は漢方薬を提案し、希望される患者さんに処方しています。
ただし、症状の程度問題があります。
日常生活はできているけどつらいレベルなら漢方薬を試す価値がありますが、不登校や引きこもりが完成していて日常生活が破綻しているレベルでは、西洋医学の治療を優先してください。
ここでは、私(小児科開業医)が行っているメンタルの不調に対する漢方治療を、専門家の解説を引用しながら紹介します。
と、その前に、メンタルを整えるリ枠ゼーション体操を紹介しておきます;
▶ (動画)
・・・さて皆さん、“不安”と“緊張”って分けられると思いますか?
患者さんの話を聞いていると、
「不安になってドキドキして大変」
と両方混在することが多く、この二つは分けられないのではないかと常々感じています。
メンタルの不調を考える際、不安と緊張の捉え方が専門家の間でも微妙に異なります。
なかなかスッキリ納得できないものが多かったのですが、大澤稔先生の解説はシンプルで明瞭でした。
ベースにドキドキ(不安)があり、
それにウツウツ(うつ状態)
あるいはイライラ(緊張)
が加わっていく、という考え方。
つまり、“メンタルの不調”を単純化すると、
ドキドキ(不安)
ドキドキ+イライラ(不安+緊張)
ドキドキ+ウツウツ(不安+うつ状態)
の三つに集約するのです。
ほかにも小児漢方界の重鎮である山口英明先生の解説も紹介します。
この項目を読んで試してみたい方はご相談ください。
(大澤稔先生)
▢ 急にドキドキする(不安症・パニック発作・過呼吸)
→ 甘麦大棗湯(72)が第一選択
ドキドキ+立ちくらみやふらつき → +苓桂朮甘湯(39)
ドキドキ+気分の落ち込み → +桂枝加竜骨牡蛎湯(26)
<方剤解説>
【甘麦大棗湯】
こんな方へ:興奮しやすく、急にドキドキして過呼吸になりやすいヒト向き。
神経症、不眠症、更年期障害に適応。
服用方法:1回1包、1日3回内服
効果発現:数日で効果実感
【甘麦大棗湯】+【苓桂朮甘湯】
こんな方へ:パニック発作が起こったとき、ふらつきや立ちくらみが起こりやすい、というヒト向き。
服用方法:2剤を1日1包ずつ、1日3回服用
効果発現:数日でふらつきや立ちくらみが起こりにくくなり、パニック発作の予防にも役立つ。
【甘麦大棗湯】+【桂枝加竜骨牡蛎湯】
こんな方へ:パニック発作・過呼吸などの症状と共に、抑うつ傾向があって精神的に落ちているヒト向き。
服用方法:甘麦大棗湯+桂枝加竜骨牡蛎湯を1回1包ずつ、1日3回服用
効果発現:数日でこころの落ち込みが少しずつ持ち上がってきて、発作も出にくくなる。
▢ イライラ・怒りっぽい
→ 冷えのぼせ
→ あり(イライラ+冷えのぼせ):
柴胡桂枝乾姜湯(11)、桃核承気湯(61)、加味逍遥散(24)
→ なし → 動悸
→ なし → 全般的な不調 → あり(イライラ+全般的不調):
加味逍遥散(24)
→ なし:抑肝散(54)
→ あり(イライラ+動悸):柴胡加竜骨牡蛎湯(12)
<方剤解説>
【柴胡桂枝乾姜湯】
こんな方へ:冷えのぼせ(下半身は冷えているのに顔はのぼせている)、
頭皮の多汗、倦怠感などがあるヒト向き。
更年期障害、神経症、不眠症に適応。
服用方法:1回1包、1日3回内服。
効果発現:数日で効果実感
【桃核承気湯】
こんな方へ:冷えのぼせ、頑固な便秘、月経痛の強いヒト向き。
月経不順、月経痛、月経時や産後の精神不安に適応。
服用方法:1回1包、1日1回からはじめて、
便の状態を見ながら増量(はじめから1日3回服用すると下痢しやすい)
効果発現:数日で効果実感
【加味逍遥散】
こんな方へ:体調不良に対する不安など、
こころの症状がメインのイライラと、
それに伴う諸症状で悩んでいるヒト向き。
更年期障害、冷え症、月経不順などに適応。
服用方法:1回1包、1日3回服用
効果発現:数日で効果実感
【抑肝散】
こんな方へ:いつもガマンをして怒りをため込み、
原因不明の身体症状(まぶたのけいれんなど)に悩んでいるヒト向き。
胃腸が弱いヒトには抑肝散加陳皮半夏(83)の方がよい。
服用方法:1回1包、1日3回服用
効果発現:数日で効果実感
【柴胡加竜骨牡蛎湯】
こんな方へ:音や光に敏感で、
気になるとドキドキして眠れなくなるような神経性心悸亢進タイプで、
不眠に悩んでいるヒト向き。
服用方法:1回1包、1日3回内服
効果発現:数日で効果実感
▢ 気分の落ち込み・うつうつ(うつ状態)
→ 桂枝加竜骨牡蛎湯(26)が第一選択
うつうつ+のどがつまった感じ → +半夏厚朴湯(16)
うつうつ+みぞおちが苦しい → +香蘇散(70)
うつうつ+食欲不振・胃もたれ → +六君子湯(43)
うつうつ+月経不順・冷え症・口唇乾燥 → +温経湯(106)
<方剤解説>
【桂枝加竜骨牡蛎湯】
こんな方へ:神経過敏で自信喪失、疲れやすいなどの精神症状のほか、
頭痛・腹痛といった身体症状の出ているヒト向き。
服用方法:1回1包、1日3回
効果発現:1〜2週間くらいでこころの落ち込みが少しずつ持ち上がってくる。
【桂枝加竜骨牡蛎湯】+【半夏厚朴湯】
こんな方へ:ウツウツしているヒトで、
喉につまり感のあるヒト向き。
軽い抗うつ作用あり。
服用方法:2剤を1回1包ずつ、1日3回
効果発現:数日で効果実感
【桂枝加竜骨牡蛎湯】+【香蘇散】
こんな方へ:ウツウツしているヒトで、
みぞおちにつまり感があるヒト向き。
軽い抗うつ作用あり。
服用方法:2剤を1回1包ずつ、1日3回
効果発現:数日で効果実感
【桂枝加竜骨牡蛎湯】+【六君子湯】
こんな方へ:ウツウツに加えて、食欲がないヒト向き。
服用方法:2剤を1回1包ずつ、1日3回
効果発現:食欲は数日中に回復し、食べることで気力も少しずつ涌いてくる。
【桂枝加竜骨牡蛎湯】+【温経湯】
こんな方へ:ウツウツに加えて、月経不順、冷え、唇の乾き
などが見られるヒト向き。
服用方法:2剤を1回1包ずつ、1日3回
効果発現:数日で効果実感(更年期や月経に関連する女性のウツウツの場合)
(ここからは山口英明先生のレクチャーより)
山口先生は、不安・緊張・怒りを並列で捉え、
各々が重なることもある、という考え方です。
1.悲哀・怯え・不安
2.緊張・不安定変動
3.興奮・怒り・多動
ただ、この分類法は私にはしっくりきません。
「悲哀」と「不安」って同じ?
「不安定変動」って何?
「怒り」と「多動」って同じ?
という素朴な疑問があるからです。
という疑問を抱えつつ、
山口先生のお勧めする“こころに効く漢方薬”を提示します。
1.悲哀・怯え・不安:
甘麦大棗湯(72)
帰脾湯(65)、加味帰脾湯(137)
酸棗仁湯(103)
桂枝加竜骨牡蛎湯(26)
2.緊張・不安定変動:
四逆散(35)
香蘇散(70)
加味逍遥散(24)
柴朴湯(96)
3.興奮・怒り・多動:
黄連解毒湯(15)
三黄瀉心湯(113)
桃核承気湯(61)
竜胆瀉肝湯(76)
1+2:柴胡加竜骨牡蛎湯(12)など
2+3:大柴胡湯(去大黄)(8)など
3+2:抑肝散(54)・抑肝散加陳皮半夏(83)
この内容を某学会の講演会で聴講して知ったのですが、
どうも使いこなせなくて・・・もっと単純に、
1 不安 → 甘麦大棗湯(72)
2 緊張 → 柴胡加竜骨牡蛎湯(12)
3 怒り → 抑肝散(54)・抑肝散加陳皮半夏(83)
とした方がわかりやすいのではないかと感じていました。
そこに大澤先生のレクチャーに出会い、合点したわけです。
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