谷川聖明Dr.によるニキビに対する漢方治療解説から、
ポイントを抜粋・要約しました。

患者さんの“
虚実”により使い分けるスタンスです。
ニキビに使用する漢方は、経過(phase)で語られることが多いのですが、
こういう視点もあり、ということで参考になります。


日本漢方における“虚実”とは、大まかに言うと、
 虚:体力がない
 実:体力がある
です。

また全身の体力ではなく、
 ニキビ局所の勢いがあると実、
 ニキビ局所の勢いがないと虚、
と捉える専門家もいます。


▢ “虚実”による使い分け;

 虚証 荊芥連翹湯

 ⇩  十味敗毒湯

 ⇩  桂枝茯苓丸加薏苡仁

 実証 清上防風湯


▢ ニキビの性質による使い分け;

荊芥連翹湯:どす黒いニキビ(黒ニキビ

十味敗毒湯:化膿したニキビ(黄ニキビ

清上防風湯:思春期ニキビ(赤ニキビ

桂枝茯苓丸加薏苡仁:月経に伴うニキビ


清上防風湯

・比較的体力が充実した人(実証)向け

・顔面頭部の皮疹で発赤が強く化膿しやすい場合に

・炎症を伴い赤く腫れ上がったいわゆる赤ニキビ

思春期ニキビにしばしば用いられる

清上防風湯の解説;
12種類の生薬から構成されています;

(排膿)連翹、枳実

(排膿)桔梗、甘草、川芎

(清熱)黄連、黄岑、山梔子

(祛風解表※)荊芥、防風

 ※ 祛風解表:肌表のトラブルを改善する

・瘀血2、気滞2、気逆2、血虚1、気虚1、水毒1


十味敗毒湯

・体力中等度(虚実間証)の人向け。

・諸種の皮膚疾患で、患部が化膿を伴うか化膿を繰り返す場合に用いる。

散発性の皮疹に適応し、広い範囲に多発するタイプではない

・柴胡剤であり、ストレスなどの肝の高ぶりにより悪化するニキビに用いられる。

十味敗毒湯の解説;
10種類生薬で構成されます;

(排膿)桔梗、甘草、川芎

(祛風解表)荊芥、防風

・・・以上2つは清上防風湯と共通

(清熱・疏肝)柴胡       
(その他)独活、茯苓、生姜、撲樕

※ コタロー漢方のエキス剤では、防風は浜防風、撲樕は桜皮を使用

・気滞3、気虚2、水毒2、瘀血1、血虚1、気逆1


荊芥連翹湯

・青年期の解毒症体質(≒アレルギー体質、下記参照)に用いる。

・皮膚が浅黒く、精神的に敏感であり、手のひらや足の裏に汗をかきやすい人で、とくに炎症が慢性化した場合に用いる。

荊芥連翹湯の解説;
森道伯が創案した一貫堂処方の一つで、「万病回春」にある同名処方の加減方。

・温清飲(黄連解毒湯:黄岑、黄連、黄柏、山梔子と四物湯:地黄、芍薬、川芎、当帰)を含む。

・瘀血3、血虚3、気滞3、気逆2、気虚1、水毒1

解毒症体質とは?

・皮膚の色は浅黒く、皮膚のキメが粗い。

・小児期から中耳炎、鼻炎、蓄膿症、扁桃腺炎など身体上部の炎症性疾患に罹患しやすい。

・筋肉質、やせ型で神経質の人が多い。

・手掌や足の裏は神経性発汗により湿潤しやすい。

・脈は緊で、腹は腹筋の緊張が強く、くすぐったがり屋である。


桂枝茯苓丸加薏苡仁

・実証向け。

月経に伴うニキビに適応。

・のぼせ、頭痛、肩こり、めまい、月経異常など瘀血徴候に加え、肌荒れ、肝斑、ニキビ、疣贅など皮膚症状を伴う場合に用いる。

桂枝茯苓丸加薏苡仁の解説;
・桂枝茯苓丸(桂皮・芍薬・桃仁・茯苓・牡丹皮)+薏苡仁(利水・排膿)からなる。

・瘀血5、水毒3、血虚2、気逆2、気滞1、気虚1

・瘀血に対する代表的治療薬である桂枝茯苓丸に、消炎・排膿作用をもつ薏苡仁を加えた方剤。