2022年03月

赤ちゃんの場合

人工栄養(粉ミルク)児:哺乳直前に20ml程度の湯冷ましに溶いてほ乳瓶の乳首部分に入れて飲ませ、飲みきった後にミルク本体を与えましょう。
母乳栄養児:粉薬は小さい器か手の平にとり、少量の水分を加えてペースト状とし、これをお母さんの人差し指に付け、赤ちゃんの口の中(ほっぺの内側)に塗りつけ、直後に母乳を飲ませましょう。舌の上に乗せると嫌がって吐き出しがち、ポイントは「舌とできるだけ接触させないこと」です。
 シロップの場合は、スポイトで少しずつ流し込んで飲ませましょう。 


幼児の場合

・粉薬はスプーンに乗せてパクリと食べさせ、水を飲ませます(基本はジュースではなく水)。
ストローを使用:薬の味が口に広がりません。
・飲めたらご褒美をあげることがポイント、「ほめる」ことは“無料のご褒美”ですからどんどん使いましょう。「飲めなくても怒らない、飲めたら必ずほめる」が原則です。

・薬を飲んだらシールを貼って、枚数が集まればご褒美をあげるなどの動機づけも有効です。
・薬をなぜ飲むのか繰り返し繰り返し説明しましょう。お母さんの真剣な表情から、いつかはわかってくれます。

Q. 処方された薬の賞味期限(有効期限・使用期限)はどのくらいですか?

A. 一般に薬は製造されてから3年くらいで設定されているそうですが、患者さんの手元に届くまでタイムラグがあります。

 当院では以下のように説明しています;


<処方された薬の使用期限>(原則として飲み残しは破棄すべし
・錠剤は1年(花粉症など、診断・症状が決まっている場合に限る)
・粉薬は半年(ただし湿気で固まったものはダメ)
・風邪薬のシロップはその時の風邪だけ、保存して次の風邪で使用するのはダメ

<参考>
子どもの薬に関する疑問に小児科医が答えます(当院ブログ)

 水ぼうそうやおたふくでは隔離期間が決まっていますが、その他のカゼを引いたとき、いつまで保育園・幼稚園を休ませるべきか迷ってしまいます。基本的には「症状が消えて元気になれば登園可能」、しかし「症状が消えても人にうつす感染力が残るカゼもある」ので注意が必要です。理由は下記の通り;


■ 乳幼児ではウイルス排泄期間が長い ・・・感染力ゼロになるまでに約1ヶ月!?

 乳幼児では感染性胃腸炎(ノロ・ロタなど)や夏風邪(ヘルパンギーナ、手足口病、プール熱)では症状が消えた後も数週間程度、便の中にウイルスが検出されます。

 冬に流行するRSウイルスも症状消失後、数週間感染力が残ります。


■ 潜伏期でもうつる

 水痘・おたふくかぜなど、ウイルス性発疹症は症状が出る前日・前々日から感染力があります。つまり、いつどこでもらったかわからないこともあり得るわけです。

■ 不顕性感染・保菌者 ・・・ 症状がなくても感染力がある!

 感染しても症状が出ない状態を「不顕性感染」と呼びます。本人は平気でも、人にうつす力はあるのです。まことに始末に悪いですね。


以上より、乳幼児が集団生活の場は感染症のるつぼであり、気をつけていても保育園・幼稚園でカゼをもらってしまうことは避けられないと考えてください。 減らすために有効な感染予防対策は手洗いです。ふだんから習慣づけましょう。

※ 2019年末に登場した新型コロナウイルスも「発症前から感染力がある」「不顕性感染がある」ため、感染拡大が止まりません。今まで推奨されてきた手洗いだけでは足りず、症状のあるヒトもないヒトもマスクをする“ユニバーサルマスク”が標準になりました(ただしマスクは2歳以上)。


■ 各感染症の「感染しやすい期間」と「登園の目安

病名

感染しやすい期間

登園のめやす

溶連菌感染症

適切な抗菌薬治療を開始する前と開始後1日間 

抗菌薬内服後24~48時間経過していること 

マイコプラズマ肺炎

適切な抗菌薬治療を開始する前と開始後数日間 

発熱や激しい咳が治まっていること 

手足口病

手足や口腔内に水疱・潰瘍が発症した数日間 

発熱や口腔内の水疱・潰瘍の影響がなく、普段の食事がとれること 

リンゴ病

発しん出現前の1週間 

全身状態が良いこと 

ウイルス性胃腸炎

症状のある間と、症状消失後1週間(量は減少していくが数週間ウイルスを排泄しているので注意が必要) 

嘔吐、下痢等の症状が治まり、普段の食事がとれること 

ヘルパンギーナ

急性期の数日間(便の中に1か月程度ウイルスを排泄しているので注意が必要) 

発熱や口腔内の水疱・潰瘍の影響がなく、普段の食事がとれること 

RSウイルス気管支炎

呼吸器症状のある間 

呼吸器症状が消失し、全身状態が良いこと 

(厚生労働省作成「保育所における感染症対策ガイドライン2018年改訂版」中の「医師の診断を受け、保護者が記入する登園届が必要な感染症 」より)

赤ちゃんの皮膚が黄色っぽい ・・・黄疸

 「黄疸」とは、皮膚の色が黄色くなることです。皮膚だけでなく白目が黄色くなるので目立ちます。強い・弱いの違いはありますが黄疸はすべての赤ちゃん(生後1ヶ月までの新生児)に見られる現象です。これは「生理的黄疸」と呼ばれており、生後3~4日頃から目立ち始め、約2週間で自然に消えていきます。

 また、母乳栄養の赤ちゃんでは生理的黄疸が長引く傾向があります。これを「母乳性黄疸」と呼びます。それも生後6週間には消えていきます。

 これらの黄疸は、機嫌が良く、食欲もあり、生後1週間頃がピークであとは徐々に薄くなっていく印象があれば心配ありません。様子を見て良いでしょう。

 希ながら、黄疸の裏に病気が隠れていることもあります。

 「大人の黄疸=肝臓の病気」というイメージがありますが、赤ちゃんの病的黄疸の原因は実に様々です。

 一番多い原因は生理的黄疸が強めに出た場合です。他に血液型不適合(有名なRh式以外にも、ABO式不適合もあります)、感染症、生まれつきの代謝異常などの病気のこともあります。

 また、産科に入院中は問題なかったけれど、退院してからだんだん黄疸が目立ってくるパターンもあります。

黄疸+元気がない」「黄疸+うんちが白っぽい」場合は重い病気が隠れていることがありますので、早めに小児科を受診して下さい。うんちの色については、現在母子手帳にカラースケールが載っています。

 余談ですが、幼児期に「皮膚が黄色い」と心配されて受診なさる方が時々います。たいてい「柑皮症」(医学名はカロチン血症)といってミカン、カボチャ、にんじんなどの黄色い食べ物をたくさん食べた結果黄色く見える現象です。他に海苔やトマトも原因になります。「黄疸」との違いは、白目が黄色くならないことです。微妙なときは血液検査で確認します。


アザ

 赤ちゃんの皮膚を全身くまなく観察すると、小さなアザ・シミがたいてい見つかります。
 おでこから鼻にかけての淡い赤アザは「サーモン・パッチ」と呼ばれ、病的ではありません。後述の「ウンナ母斑」同様、生理的なものです。

 それ以外の、生まれてから形・色・大きさの変化のないアザは小児科よりは皮膚科へ相談した方が良いと思います。その分野のレーザー治療は日進月歩で治療適応もかわっていくようなので。


だんだん盛り上がってくるブツブツした赤い斑点 ・・・イチゴ状血管腫

 生まれたときはそこに何もないか、少し色素が抜けて白っぽいこともあります。それが生後2週頃から赤みを帯びてきて、生後2~3ヶ月頃には急速に増大し(4ヶ月検診で結構見かけます)、赤くて表面がブツブツしているので「イチゴ状血管腫」という名前が付いています。生後6ヶ月~1歳頃に増大傾向は止まり、1歳以降は消退し始め、6~7歳で自然に消えていきます。

 という経過をたどるので、基本的に治療は必要ありません。

 ただし、何事にも例外はあるもので、大きさが巨大なとき、場所が良くないとき(目の回り、張力のかかる部位)などでは治療対象となる場合があります。皮膚科に相談してください。


うなじに赤い斑点が・・・ウンナ母斑

 前述の「サーモンパッチ」のある赤ちゃんのうなじを見てみると、たいていそこにも赤い斑点がいくつか見られます。

 これを医学用語で「ウンナ母斑」と言います。別名「ストークマーク(stork mark)」とも言い、コウノトリのが赤ちゃんをくわえて運んできた印と欧米では考えられてきました。なんだか、夢のある話ですね。

 赤ちゃんの約30%に見られます。そのまま様子を見ていると徐々に薄くなっていきますがサーモンパッチより消えにくく、大人になっても残っていることがあるようです。まあ、髪の毛で隠れてしまう場所なので審美上問題になることは少ないようですが。


日本人なら誰にもある蒙古斑

 言わずと知れたお尻の青あざ。日本人は誰でも(どんな美人でも、ハンサムでも)乳幼児期に持っていました。意外なことに、白人の1~20%、黒人の80~90%にも認められるそうです。

 4~5歳頃までに自然に消えます。当然、治療は必要ありません。しかし、異所性蒙古斑(お尻、背中以外の場所にある少し青みが濃い蒙古斑)は消えにくく、10歳時に残っているものは生涯残るとのことです。

※ 蒙古斑に対してレーザー治療を行っている医療機関がありますが、治療適応・治療時期に対する考え方は様々で、まだ確立された治療方針はないようです。ですから、受診した医療機関により「治療の必要なし」「いや、治療の必要あり」と異なった説明を受ける可能性があります。


赤ちゃんニキビ(新生児ざ瘡

 生後1ヶ月頃の顔の湿疹で一番多いのは「赤ちゃんニキビ」(医学用語では「新生児ざ瘡」)です。

 生後まもなくから2~3ヶ月頃に、額やほっぺたに多く見られるやや赤いブツブツです。かゆくはなさそう。

 赤ちゃんの肌はみずみずしいイメージがありますが、生後2~3ヶ月くらいまではオイリーで思春期と似た状態であり、「ニキビ」と呼ばれています。

 赤ちゃんニキビを見つけたとき、お母さんに「顔を洗うとき石けんを使ってますか?」と聞くと「No」の返事がほとんど。

 ここまで書けばおわかりかと思いますが、対策は「油を落とすスキンケア」。

 つまり、沐浴の時に顔も石けんを使って洗うことです。高級な香料入の石けんはかえって皮膚に刺激になることがありますので普通のベビー石けんを使ってください。具体的には、石けんをお母さんの手にとりよく泡立たせて、指のお腹の柔らかいところを使って「なでるように」または「マッサージするように」やさしく赤ちゃんの顔を洗い、その後にお湯でよくすすぎます。すすぐときはガーゼなど柔らかい布を使ってもかまいません。

 これを繰り返せば徐々によくなってきます。

 ただし、赤みが強く炎症を起こしているとき、ジクジク液が出てきているときは小児科あるいは皮膚科を受診してください。ぬり薬が処方されることでしょう。

 他に顔のブツブツには「あせも」もありますが、対策は同じく皮膚を清潔に保つスキンケアが基本です。


頭皮のかさぶた(乳児脂漏性湿疹

 前項の「赤ちゃんニキビ」がひどくなってくると、眉毛、頭の前の方、耳などに黄色いカサブタ(油の固まり)ができてきます。これを「乳児脂漏性湿疹」といいます。生後3~4週頃から目立ち始め、3ヶ月を過ぎると軽快へ向かいます。

 対策はやはり油をとるスキンケア。入浴1時間前にオリーブオイル(あるいは白色ワセリン)をカサブタに塗っておいてふやけさせ、入浴時は石けんあるいはシャンプーを使って洗い、その後クシで少しずつ削ると改善してきます。


★ 乳児脂漏性湿疹とアトピー性皮膚炎との違い

 「赤ちゃんの湿疹=アトピー性皮膚炎?」と心配されるお母さんが多いので違いを説明しておきましょう。

 アトピー性皮膚炎では痒みが強いですが、脂漏性湿疹では無いかあっても軽度。3ヶ月を過ぎても湿疹が治らず、痒みを伴って皮膚の引っかき傷のような変化が出てきたらアトピー性皮膚炎を疑います。また、生後1~2ヶ月の赤ちゃんはお母さんの服に顔をこすりつて間接的に掻くことがあります。さらに耳の付け根が赤くなって切れてしまう「耳切れ」はアトピー性皮膚炎に特徴的です。


★ 乳児アトピー性皮膚炎と食物アレルギーの関係

 生後数ヶ月で顔面頭部の湿疹が出てきてかゆがる様子があれば、積極的な治療が必要です。

 現在、食物アレルギーの原因は乳児期のアトピー性皮膚炎であることがわかっています。食物アレルギーの原因は、お母さんがたくさん食べたからではなく、赤ちゃんがたくさん食べたからでもなく、皮膚からアレルゲンが侵入を繰り返すためです(経皮感作)。

 湿疹がある場所は皮膚バリアが破壊されており、そこから目に見えない大きさのアレルゲンが侵入し、それを排除しようと免疫システムが働く・・・これを日々繰り返すことにより食物アレルギー体質が作られるのです。

 それを予防するには皮膚バリアを回復すること、すなわち湿疹をしっかり治療してすべすべの肌を取り戻し、維持することが大切です。

 乳児湿疹は「これくらいは大丈夫かな・・・」と放置せず、当院にご相談ください。

 アレルギー専門医の院長の他に、当院には小児アレルギーエデュケーター(PAE)の看護師も在籍しており、治療と看護の両面からサポートします。

赤ちゃんがいる部屋の冷暖房

 赤ちゃんのいる部屋の適温は以下の通り;

・夏:24~26(本によっては26~28)℃
・冬:20~22(本によっては18~22)℃

 まあ、調べれば調べるほど微妙に数字が異なりきりがありません。言い方を変えると、

・夏は25℃くらいで外気との差が5℃以内に、
・冬は20℃くらいで湿度を40~60%に保つ、


といったところでしょうか。さらに注意点を2つ。

・エアコン・扇風機を使う場合は、吹き出す風が赤ちゃんに直接当たらないように
・室温を考えるときは赤ちゃんの目線で。赤ちゃんのフトンかベッドに寝ており、大人の感じる高さの室温と異なります。



日焼け止めの上手な利用法は?

 日焼け止めは、紫外線吸収剤(塗り心地がよいが皮膚に刺激を与えやすい)と紫外線散乱剤(比較的皮膚への負担が少ない)の2種類に分けられます。 

 赤ちゃん用としては紫外線散乱剤で無香料・無着色・アルコールフリーがお勧め。 生後6ヶ月から使用可能、肌表面が乳白色になるくらい塗ると効果的です。 2~3時間以上経過したら効果が落ちてきますので塗り直しましょう。

 アトピー性皮膚炎などの治療として軟膏・クリームを塗っている場合は、治療薬・保湿剤の上に重ね塗りするのが基本です。 


日焼け止めの強さについては以下をご参照ください。 

SPF)紫外線B波の防止効果を示し、数値が大きいほど効果も大。
PA)紫外線A波の防止効果を示し、+が多いほど効果も大。 

  (SPF)     (PA)    (目安) 

 10前後   +     散歩や買い物などの外出 

 20前後   ++   公園での外遊びなど 

 30前後   +++   海水浴や登山などのアウトドア、スポーツ観戦など


 ご存知のように、おへそはお母さんと赤ちゃんをつないでいた「臍帯」(さいたい)の名残で、太い血管が通っていました。役割を終える過程でいろいろなトラブルに出会います。

 まずは正常なおへその経過を知りましょう。生まれたとき臍帯は1~2cmの太さの管状のものですが、赤ちゃん側に少し残してハサミで切られます。その後乾燥して小さくなっていき、生後7~10日でとれるのが普通です。とれた跡はしばらくジクジクしていますが、その後7~10日で乾いてすっきりします。おへそが乾くまでは自宅でアルコール消毒をするよう指導している産科が多いようです。


 次によくあるおへそのトラブルについて。

・おへそとその周りが赤くなって腫れている

・出血や分泌物がダラダラ続く

・塊が残り、ジクジクしている


・・・こんな時は小児科に相談して下さい。どんな病気があるかというと;


臍炎

 おへそに病原菌が入り、増殖して炎症を起こした状態です。治療は赤いだけならぬり薬を、周囲も腫れている場合はおへそを消毒し、抗生物質(菌をやっつける薬)を飲んでもらいます。それでもよくならず、熱も出てくるようなら入院して治療が必要になることも希ながらあります。


臍出血

 元々血管が通っていた場所ですから少しの出血は必ずしも異常ではありません。量が多く、長引くときは血が止まりにくい病気が隠れていることがあります。小児科に相談して下さい。


臍肉芽腫

 臍帯の脱落後に臍帯の一部が残っていて塊が作られ、いつもジュクジュクしている状態です。生後数週間しても治まる気配が無い場合は受診して下さい。薬で固めたり、大きい塊が残っている場合は病院に紹介して処置してもらいます。

 ただし、処置後もジュクジュクが続くときは希ながら解剖学的異常(卵黄嚢菅遺残尿膜管遺残など)が隠れていることがありますので再度診察を受けて下さい。


★ 赤ちゃんの出べそは病気?

 臍帯がとれたときは普通のおへそだったのに、それから数週間後(つまり生まれて1ヶ月)頃からおへそが膨らんで目立つことがあります。いつも膨らんでいるわけではなく、泣いたときやいきんでお腹に力が入ったときに目立ちます。

 これは「臍ヘルニア」と呼ばれるものです。小児期以降の「いわゆるでべそ」とはちょっと異なりますが、まあ「赤ちゃんのでべそ」と言ってもいいでしょう。

 原因はおへその周りの筋肉の発達が未熟でまだ閉じきっていないことです。腹圧がかかるとそのすき間から皮膚の下に腸が出てきてしまうのです。

 おへそが膨らんでいても赤ちゃんは泣き続けるわけではないので痛くはなさそうです(足の付け根がふくれる鼡径ヘルニアは痛がってずっと泣き続けます)。膨らんだおへそを触ってみると柔らかく、もんでみると“グジュグジュ”した感覚。そのうちに小さくなって無くなってしまうこともあります。これは皮膚の下に出てきていた腸管がお腹の中に戻ったのです。

 予定日より早く小さく産まれた赤ちゃん(早期産児・低出生体重児)に多く見られる傾向があります。満期産の成熟児では数%に頻度です。ほとんどが1歳までに目立たなくなってしまいますが、1歳になっても目立つようなら手術も検討します。ただし、膨らみが2cm以上で大きいときは下記の「綿球圧迫法」で早く治ることが期待できますので、生後3ヶ月くらいまでに小児科あるいは小児外科に一度相談されると良いでしょう。


<臍ヘルニア処置の変遷>

 昔はコインをおへそに当てて、ヒモで固定していた時期があったそうです。しかし、おへそがかぶれて炎症を起こすトラブルが多かったため、私が小児科医になった約30年前は「何もしないで様子観察」する時代でした。

 ところが10年くらい前から、一部の小児科医が「やはり固定した方が早く治る、皮膚のたるみも目立たない」と以前とは少し異なる固定法を採用し始めました。名付けて「綿球圧迫法」。これは綿球を出っ張るおへそにあてがい、テープで固定する方法です。自然経過より早く治り、皮膚のたるみを残さないことがメリットです。固定するテープの質がよくなり、かぶれにくくなったおかげでこの方法が可能になりました。

 当院でもご希望があれば「綿球圧迫法」を行っていますので、ご相談ください。ただし、1週間に一度のペースで数ヶ月通院していただく必要があります。

頭の中の出血、脳へのダメージが心配になります。やること・すべきことの順番は、

1.意識があるかを確認

2.ぶつけ方症状を確認


緊急性がある場合
→ 以下の一つでも当てはまるときは、救急車搬送

意識がない、ボーッとして反応が悪い

けいれんしている

おう吐が止まらない

歩き方が変・うまく話すことができない

・ガマンできないほど頭が痛い

出血が止まらない(傷が大きい、深い)


緊急受診すべきかどうか迷う場合

 → 以下の一つでも当てはまるときは、頭部CT検査可能な病院の救急外来へ

チェックポイント1頭のぶつけ方

高いところ2歳未満は90cm2歳以上は150cm)からの転落

・交通事故などの高速スピードで移動中(あるいは移動する物)に激しく頭をぶつけた

・誰かに突き倒された

チェックポイント2症状・様子

・(一瞬でも、一過性でも)意識消失があった

・強い頭痛乳児では強いグズリ

・おでこ以外のコブ(2歳未満)

・さわってわかる頭蓋骨骨折(凹みや溝)

様子がおかしい(眠りがち、元気がない、変におとなしい、遊ばない)

・パンダのように目の周りが紫色(眼底骨折の可能性)

鼻や耳から血や血液混じりの液体が出ている


緊急性がない場合
→ 小児科開業医を受診(当日あるいは翌日)

・足が地面や床についた状態からの転倒や、歩行中に止まっている物へ頭をぶつけた

・すぐ泣き、その後ふだんと変わりない

・頭をぶつけて4~6時間後も症状らしきものがない


* 頭をぶつけた直後は元気でも、最低48時間は慎重に様子観察してください。まれに、数日後~数ヶ月後に症状が出てくることもあります。 

 赤ちゃんは生後5-6ヶ月から何かを見つけるとまず触って確かめたくなります。さらに口に入れて確かめるクセがあり、時にはそれを飲み込んでしまうことがあります。

 赤ちゃんの口は最大直径4cmまで入ります。4cmはトイレットペーパーの芯とほぼ同じであり、確認の際に利用できます(下図「政府広報オンライン」より引用)。

スクリーンショット 2022-03-21 16.08.53

まわりの大人が赤ちゃんの口に入る大きさのものを手の届くところに置かないよう注意する必要があります。 

では、「子どもの手の届くところ」とは?

これは「手の届く範囲+台の高さ」で考えます。目安は以下の通りです;

1歳:約90cm

2歳:約110cm

3歳:約120cm

(下図も「政府広報オンライン」より)
 

スクリーンショット 2022-03-21 16.09.09


もし飲み込んでしまった場合は、喉につまって窒息する可能性があります。

この場合は、

・のどを気にする仕草

・突然咳込む、ゼーゼー息が苦しそう、

・顔色が悪い

等の症状が出ます。
そして完全に喉を塞いだ場合、

・3-4分で顔色が悪くなり、

・5-6分で呼吸が止まり、

命に関わります。
気づいたら救急車を呼ぶと共に、以下の応急処置
をしましょう。


<子どもが何かをのどにつまらせたときの応急処置>

  

背中を叩く1歳未満         

下図のように赤ちゃんを片腕にのせもう一方の手の平の付け根で背中をしっかり叩く(5-6回を1セット)。   

スクリーンショット 2022-03-21 16.09.24

腹部突き上げ法1歳以上

子どもの背後から腕を回して片方の手を握りこぶしにし、こどものみぞおちの下にあて、もう片方の手をその上に当てて両手で腹部を上に圧迫、これを反復。  

スクリーンショット 2022-03-21 16.09.33
★ 参考:
窒息事故から子どもを守る(政府インターネットテレビ)
気道異物除去の手順(日本医師会)


<飲み込むと危険なもの>

のどや気管ににつまらなくても、飲み込むと有害なものがあります;

(例)ボタン電池・パック型液体洗剤・漂白剤・除光液・灯油・くすり・タバコ・・・

危険かどうかの判断は難しいため、ただちに以下に電話相談してください;

小児救急電話相談#8000

日本中毒情報センター中毒110番(相談は無料ですが通話料がかかります)

 つくば029-852-9999(9~21時対応)

 大阪 072-727-2499(24時間対応)

 

<タバコの誤飲>

気づいた時点で上記「中毒110番」か下記に電話してください;
タバコ専用相談電話」;072-726-9922(24時間対応、テープ情報提供)

口の中のタバコの葉を取り除き吐かせるのが原則(水や牛乳は飲ませないでください)ですが、タバコが浸かった水を飲んだとき、2cm以上飲み込んだとき、症状(吐き気や嘔吐、ぐったりしている、顔色が悪い)等の場合はすぐに救急外来のある病院を受診してください。

 毎年、秋から冬にかけて胃腸炎が流行します。「嘔吐下痢症」「お腹の風邪」「感染性胃腸炎」などの名前で呼ばれますが、ほとんどがウイルスが原因の胃腸炎(ウイルス性胃腸炎)です。

 代表的なウイルスはノロロタ。ロタの方が重症感がありますが症状から区別することはできません。治療・管理も変わりませんので当院では検査をしていません


ノロ

ロタ

流行時期

11~3月

12~4月

罹りやすい年齢

乳幼児~学童~大人

乳幼児

潜伏期

1~2日間

1~2日間

重症度

中等症

重症

症状

嘔吐・下痢、筋肉痛・頭痛

発熱は少ない(20~30%)

嘔吐・下痢(白色~レモンイエロー)、発熱

治るまで

数日

1週間

治療

対症療法(抗生物質は無効

対症療法(抗生物質は無効

感染経路

(糞口感染)

下痢便・吐物 → 口感染

空気感染?  食中毒(カキ生食)

下痢便・吐物 → 口感染

空気感染?

感染期間

数週間は便の中にウイルスが検出される

免疫

一度罹って免疫ができても半年後にはなくなってしまい、毎年罹る可能性あり。

家族全滅」に注意!

乳幼児期に一度罹ってできた免疫は長期間有効。

大人になって罹ることはまれで、罹ってもふつう軽く済む。

予防

おむつ交換(使い捨て手袋)・トイレ後・食事前の手洗い励行

貝の生食を避ける(85℃以上1分間以上の加熱が必要)

おむつ交換(使い捨て手袋)・トイレ後・食事前の手洗い励行


登園再開の目安

 嘔吐・下痢が落ち着いて元気になれば登校・登園可能です(医師の証明書は必要ありません)が、表の通り感染力は残りますので、保育園・幼稚園において感染予防対策を十分行う必要があります。

細菌性胃腸炎

 冬~春以外の胃腸炎では細菌(病原性大腸菌、サルモネラ、キャンピロバクタなど)が原因になることもあります。発熱・血便が特徴で時に集団発生(食中毒)し、重症の場合は抗生物質で治療します。


家庭での嘔吐・下痢のケア


経口補液」で脱水予防

 経口補液とは家庭で行われてきた水分補給を医療レベルに高めた方法。

 用いる経口補水液がポイントで、嘔吐下痢で失われる体液成分(水分・塩分・糖分)が吸収されやすい最適濃度で調整されています。

(病院で処方)ソリタ顆粒( T2、T3 )

(薬店で市販)OS-1、アクアライトORS、アクアサーナORSなど。

自作:湯冷まし1Lに塩:小さじ1/2、砂糖:大さじ1杯、+レモン汁等

イオン飲料・スポーツドリンクは「汗の補充」が目的であり、嘔吐・下痢の治療には不適当(塩分・ミネラルが少なく糖分が多すぎる)です。


経口補液の具体的な方法 ~主治医はお母さん・お父さん~

 嘔気・嘔吐の始まりは水分も受けつけません。数時間は様子を見て、少し落ち着くのを待ちましょう(程度が強ければ吐き気止めを使用)。

 えづくのが落ち着いてきたら経口補液開始です。経口補水液(ソリタ顆粒なら100mlの湯冷ましに溶いて)をスプーンで与えましょう。「口から点滴するつもり」で少量頻回に与え、徐々に増量するのがコツです(添付文書では「初回20ml、30~60分後に20~100ml追加、以降数時間毎に」)。

 飲ませた後、また吐いてしまった時は1時間程待って、再度トライしてください。ウイルスとの「がまん比べ」ですね。 

 なお、投与総量が多すぎて問題になることはまずありません。

 水分がお腹におさまり、吐かなくなったら固形物を再開しましょう。

 経口補液の目安は数日間で、下痢が一日数回程度に減ったら終了です。

 嘔吐・下痢が続いて口の中が渇き、オシッコが半日近く出ていないときは脱水症が疑われ、また他の病気が隠れている可能性もあります。医師の診察を受けてください。


下痢の時、食事で気をつけることは?

 吐き気が治まれば「好物で消化の良さそうなモノ」を選んで少しずつ与えましょう。早期に再開した方が腸の回復がよいと報告されています。

 赤ちゃんの母乳・ミルクはそのまま続けてかまいません。ただし、下痢が1週間以上長引くときはご相談ください(二次性乳糖不耐症を疑い、酵素製剤や乳糖除去ミルクを使用することがあります)。

 インフルエンザを代表とする冬の風邪と比べると、夏の風邪は熱・のどの痛み・発疹が目立ち、咳があまり出ないことが特徴です。

 代表的な病気はヘルパンギーナ・プール熱・手足口病で、犯人はすべてウイルスです。

 まれに重い合併症を起こすことがありますが、普通は自然に治る軽い病気です。ただし、下表の記載より長く熱が続いたり、ぐったりしたときは医師の診察を受けましょう


ヘルパンギーナ

咽頭結膜熱

(プール熱)

手足口病

原因

コクサッキーウイルス

エコーウイルス 等

アデノウイルス3型 他

コクサッキーウイルスA16

エンテロウイルス71 他

潜伏期

2~4日

5~7日

2~7日

症状

発熱(突然の高熱 2-4日)

咽頭痛

食欲低下・嘔吐

からだの痛み

発熱(高熱 4-5日)

咽頭痛

結膜炎(目の充血・眼脂)

時に嘔気・腹痛・下痢

発熱(60%:1-3日)

発疹:手・足・口の粘膜(時に膝・臀部)に水疱性丘疹

治るまで

3~6日

5~7日

2~7日

感染形式

飛沫・接触感染(「プール熱」のみ目やに・プールの水を介して感染

治療

残念ながら特効薬はありません(抗生物質無効)。薬で症状を和らげ治るのを待つのが原則です。解熱剤は38.5℃以上で本人がつらそうなときに頓用で使いましょう。

生活指導

水分補給:麦茶、イオン飲料、牛乳など、あっさりしたものを。

喉が痛い時はのどごしのよい食べ物を

→ プリン、ゼリー、アイスクリーム、おじや、柔らかいうどん、豆腐、グラタンなど。

喉にしみて痛がるモノは避けましょう:体温より熱いもの、味の濃いもの、刺激のあるもの、しょっぱい・酸っぱいもの、オレンジジュースなど柑橘系。

入浴: 高熱でぐったりしているときは控えましょう。 微熱で機嫌が悪くなければ、お風呂で汗を流すくらいはかまいません。体力を消耗させるような長湯は禁物です。

合併症

髄膜炎・熱性けいれん

重症肺炎・髄膜炎・脳炎

髄膜炎・小脳失調症・脳炎

感染対策

トイレ・食事前後の手洗い、吐物処理・おむつ交換者の手洗い励行、タオルの区別。

さらに感染力の強いプール熱では洗濯物を家族と別にすべきでしょう。


<登園・登校基準>

ヘルパンギーナ・手足口病:症状が治まり元気になれば登園は可能です。

プール熱:学校伝染病に指定されています(麻疹や水痘と同じ扱い)。症状消失後2日間は自宅安静とし、集団生活に戻るには医師の治癒証明が必要です。


 毎年寒い季節になると赤ちゃんがゼーゼーする風邪が流行りますが、一番多い原因がRSウイルスです。「RSウイルスの気管支炎で入院した」という話を耳にすると家族は「保育園でうちの子がもらったらどうしよう・・・」と心配になります。

 しかし過剰に怖がる必要はありません。正しい知識を持って対応しましょう。

 実は、RSウイルスは2歳までには誰でも1回は罹るありふれた風邪です。

 乳児期は気管支炎になる頻度が高い傾向(1歳未満では30%)がありますが、全員が重くなるわけではありません。その後も感染を繰り返し、回数を重ねるほど症状は軽くなり、3歳以降では「咳のガンコな風邪」程度で経過することが多くなります。

 乳幼児では咳が治まった後でも人にうつす力が数週間程度残るので、感染予防対策をしても保育園・幼稚園での流行はなかなか止められません。

 大切なのは赤ちゃんの重症化兆候(呼吸が荒い・顔色が悪い・哺乳量減少など)を見逃さず、怪しい場合は早め早めに医療機関を受診することです。


感染径路:痰、唾液の飛まつ・直接接触

潜伏期間:2~8(通常4~6)日間

 感染力を有する(ウイルス排泄)期間:3~8日間(乳幼児では最長3~4週間

症状

 乳児期の初感染の場合、鼻汁・咳・熱で始まり、
 ①~③いずれかの経過をとります;

 ① 軽症(70%):上気道炎症状のみ、数日で軽快・治癒

 ② 中等症(30%):数日後に喘鳴(ゼーゼー)などの下気道炎の症状出現

 ③ 重症(3%):強い喘鳴・呼吸困難・顔色不良・無呼吸発作(生後1ヶ月以内)

 年長児以降はこじれることはまれです。

ハイリスクの子ども(低出生体重児、先天性心疾患、肺の病気、免疫力が低下する病気)は重症化しやすいのでシナジス®注射による予防措置が行われます。


診断迅速検査(鼻腔ぬぐい液)があります。

 治療:特効薬はありません。対症療法(咳止め、痰を切る薬、鼻汁・痰の吸引など)が中心で、重症例(呼吸困難が強く顔色が悪い状態)では入院治療が必要になります。

 RSウイルスに罹ると喘息になる?

 RSウイルスによる細気管支炎にかかった子どもはその後も風邪を引く度にゼーゼーする傾向がありますが、数年の経過で減少します。将来喘息発症の引き金になるかどうかは学会レベルでも議論中で結論は出ていません。最近有力な説は、喘息になりやすい体質の子どもは、ウイルスが気管支の奥まで浸入して増殖しやすい傾向がある、という考え方です。

予防: パリビズマブ(商品名:シナジス®)以外の一般的なワクチンはありません。 感染対策(マスク、うがい、手洗い)で予防しますが、集団生活における流行を完全に止めるのは困難です。 


登園基準:明確な規定はありません。ふつうの風邪と同じように「症状がなくなって元気になったら」を基本とし、園の方針があればその指示に従ってください。

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