近年、社会的に認知され、増えてきた発達症。
残念ながら、それを根本的に治す薬はありません。
症状をやわらげる治療薬も増えてきましたが、
使用できるのは6歳以上です。 

しかし発達症やグレーゾーンの子どもたちは、
乳幼児期から日常生活の中でいろいろ困りごとがあり、
本人と家族を悩ませています。

たとえば、かんしゃく
たとえば、夜なき・夜驚症
たとえば、チック
たとえば、偏食
たとえば、多動
・・・挙げればキリがありません。

年齢別に考えると、以下のようになるでしょうか。

(乳児期)夜なき
(幼児期)睡眠障害、かんしゃく・こだわり、パニック、落ち着きのなさ
(学童期)対人トラブル、不登校
(思春期)不登校、自傷行為、月経前症候群(PMS)

当院は小児科にもかかわらず、漢方薬を多用しています。
漢方は「心身一如」といって、心と体を分けません。
心とからだは独立したものではなく、
互いに影響を受け合いながら存在していると考え、
漢方エキス剤のどれをとっても、
その中には必ずと言ってよいほど「気持ち」「こころ」に作用する生薬が含まれています。

漢方薬の教科書が中国でつくられたのは、今から1800年前の大昔。
当然、その時代は発達障害という病名はありませんでした。
でも、子どもの成長に伴う困りごと・問題行動はありました。
つまり、発達障害があってもなくても、
その子どもに合う漢方薬が見つかれば、一定の効果が期待できます。

では、具体的に困りごととそれに対応する漢方薬を提示します。

<基礎編>

 かんしゃく
 パニック
 不機嫌
 多動
 衝動性
 自傷行為
 他害行為
 易怒

  ⇩ 
 大柴胡湯大柴胡去大黄湯
 黄連解毒湯

 落ち着きのなさ
 不安
 自信のなさ
 怯え

  
 甘麦大棗湯
 柴胡加竜骨牡蛎湯
 酸棗仁湯
 四物湯

 過緊張
 不機嫌
 落ち着きのなさ
 チック

  
 大柴胡湯大柴胡去大黄湯
 抑肝散抑肝散加陳皮半夏


<応用編>

かんしゃく・パニック・睡眠障害などに対して、上記1剤では効果が不十分なときは、

 大柴胡湯甘麦大棗湯
 
それでも効果不十分なときは、

 大柴胡湯抑肝散加陳皮半夏、さらに黄連解毒湯を少量追加

怯え・不安が強いときは、

 甘麦大棗湯柴胡加竜骨牡蛎湯四物湯を追加
 
★ ただし群馬県では、3剤併用は保険診療で認められていません。

<発展編>

お子さんが発達障害と診断された方へ。
基礎薬として、飲んでいただく薬は、

 大柴胡湯あるいは大柴胡去大黄湯

効果が不十分な場合、以下のように2つ目の漢方薬を追加していきます。

✓ 低年齢の自閉症スペクトラムや怯える様子が目立つ → +甘麦大棗湯

不安感怯える症状が強い → +柴胡加竜骨牡蛎湯

かんしゃく易怒性が強い → +抑肝散加陳皮半夏

興奮性が強い → +黄連解毒湯

発達障害をベースとした睡眠障害は、単剤では効きにくい傾向があります。

まずは、甘麦大棗湯あるいは、抑肝散加陳皮半夏
 ⇩
効きが悪いときはこの2剤を併用
 ⇩
それでも効かないときは、甘麦大棗湯大柴胡湯・大柴胡去大黄湯

 副作用チェック
以下の漢方薬(柴胡剤)を長期内服する際は、
投与開始1ヶ月以内とそれ以降も年に1回ペースで、
定期的に血液検査をして副作用をチェックする必要があります。
 抑肝散(54)
 小柴胡湯(9)
 小柴胡湯加桔梗石膏(109)
 大柴胡湯(8)
 大柴胡去大黄湯
 柴胡加竜骨牡蛎湯(12)
・・・注射を嫌がり興奮する小学生以上のお子さんは、
残念ながらお勧めできかねます。
採血が無理な場合は、以下の症状に気をつけて継続する方法もあります。

● 抑肝散(54)
  • 発熱、から咳、息切れ、呼吸困難[間質性肺炎]
  • 尿量が減少する、顔や手足がむくむ、まぶたが重くなる、手がこわばる[偽アルドステロン症]
  • どうき、息切れ、体がだるい、めまい[心不全]
  • 体がだるくて手足に力が入らない、手足がひきつる、手足がしびれる、筋肉痛[ミオパチー、横紋筋融解症]
  • 体がだるい、皮膚や白目が黄色くなる[肝機能障害]

● 大柴胡湯(8)/大柴胡湯去大黄
  • 発熱、から咳、息切れ、呼吸困難[間質性肺炎]
  • 体がだるい、皮膚や白目が黄色くなる[肝機能障害]

● 柴胡加竜骨牡蛎湯(12)
  • 発熱、から咳、息切れ、呼吸困難[間質性肺炎]
  • 体がだるい、皮膚や白目が黄色くなる[肝機能障害]

● 小柴胡湯(9)/小柴胡湯加桔梗石膏(109)
  • 発熱、から咳、息切れ、呼吸困難[間質性肺炎]
  • 尿量が減少する、顔や手足がむくむ、まぶたが重くなる、手がこわばる[偽アルドステロン症]
  • 体がだるくて手足に力が入らない、手足がひきつる、手足がしびれる、筋肉痛[ミオパチー、横紋筋融解症]
  • 体がだるい、皮膚や白目が黄色くなる[肝機能障害]


<参考>

漢方エキス剤のツムラ番号;
 大柴胡湯(8)
 柴胡加竜骨牡蛎湯(12)
 黄連解毒湯(15)
 抑肝散(54)
 四物湯(71)
 甘麦大棗湯(72)
 抑肝散加陳皮半夏(83)
 酸棗仁湯(103)