2024年09月

▶ インフルエンザワクチン 2024 

当院では日本の接種回数を基本としつつ、WHOや米国の方法を取り入れて、接種回数を少なくする方法を提案しています。
効果が変わらなければ、痛い思いは少ない方がよいですよね。

また、2024年から「痛くないワクチン」(経鼻生ワクチン、商品名「フルミスト」)を導入します。注射ではなく鼻の穴にスプレーする方法です。
注射が恐くてインフルエンザワクチンを接種できなかったお子さんは、是非ご検討ください。

■ 日本・WHO・アメリカの接種回数を比較してみると?

 実は、日本と外国では小児への接種回数が異なります。例として下表にWHOとアメリカにおける接種回数を示しました。
日本では12歳までは2回接種ですが、WHO/アメリカ方式では、より低年齢の9歳以上で1回接種、それ以下の年齢でも過去の接種をカウントして回数を減らしています。

 つまり、「乳幼児にも1回接種が導入されているのが世界標準」です。



6ヶ月~2

3歳~8

9歳~12

13歳~

日本

2回

1回

WHO

1~2回(注1)

1回

米国

1~2回(注2)

1回

(注1)過去に接種歴があれば1回 (注2)過去に2回接種歴があれば1回


 その理由は、乳幼児でも1回接種でも抗体がつくことがわかっているからです(裏面を参照)。

 当院では2015年からWHOやアメリカ方式を参考に3歳以上9歳未満は、過去に2回接種してあれば1回でも可という方針にしています。


 2024/25シーズンの当院の方針 


6ヶ月~2

3歳~8

9歳~12

13歳~

当院

2回

 1~2回()

1回

※ 過去に2回接種歴があれば1回

 

 当院の方針は強制するものではありませんので、「1回でホントに大丈夫?」と悩んで決められない方は、従来通りの日本方式をお勧めします。

 

▶ 3歳以上は1回接種でもよい理由


1回接種と2回接種の抗体陽転率(=有効率)を調べてみると、3歳以上13歳未満ではその差があまりないことがわかります。 
スクリーンショット 2024-09-05 10.25.21

上の表はインフルエンザワクチン(ビケンHA)添付文書にある表です。ワクチンの効果は「HI抗体価」の「抗体陽転率」で判定し、ヨーロッパのワクチン認可基準は70%以上です。さて、A型株の抗体陽転率赤下線部)を見てみると・・・


<6ヶ月以上 3歳未満>

 1回接種後は40%に達せず、2回目の上乗せ効果は30%以上。


<3歳以上 13歳未満>

 1回接種後に70%以上、2回目の上乗せ効果は10%以内。


以上より;

 6ヶ月~3歳  :2回必要

 3~13歳未満:1回でも十分

と判断しました。

ただし、3~13歳未満でも2回接種後の上乗せ効果が少しあり「有効率を1%でも上げたい」と思う人は日本方式をお勧めします。

※ 残念ながら、B型は2回接種でも60%未満にとどまります。


!!!注意!!!

インフルエンザワクチンの重症化予防効果は約70%であり、決して100%ではありません。


注射嫌いのお子さんに朗報です。

以前から米国で使用(2003年認可)されてきた「鼻に噴霧するインフルエンザワクチン」が、2024/25年シーズンからようやく日本でも使えるようになりました。
その名は「フルミスト®」。

最大の特徴は鼻にスプレー噴霧するだけなので、痛くありません!
これまでインフルエンザが心配だけど、とにかく注射が恐くてワクチン接種を避けてきたお子さんにピッタリ。

ただし、鼻に噴霧するという性質からの注意点もあります。
・鼻炎で鼻水・鼻づまりがあるお子さん
・鼻に噴霧した後に大泣きするお子さん
・「フン!」と鼻をかむように出してしまうお子さん
は効果が落ちますのでオススメできません。

同じ理由から以下のタイプのお子さんも無理だと思います。
・医院内、診察室に入るだけでギャン泣き幼児
・「予防接種」と聞いただけで拒否る子ども

その際に一つ気になるのが、ワクチンが入っている容器の形です。
「注射器そのもの」なのですよね。
もちろん注射針はついていませんが、
「注射器 → 恐い!」という先入観があると、
それを鼻に差し込むことに抵抗する子どもが出てきてもおかしくありません。
もっと子どもが受け入れやすいかわいい形にすればよかったのに…残念。

@DIMEより)

それから皮下注射インフルエンザワクチンは“不活化ワクチン”ですが、
経鼻ワクチンは“生ワクチン”です。
これは、弱毒化したウイルスをあえて鼻粘膜にくっつけることにより、
症状が出ない程度に感染させ、免疫だけつけるというシステム。
なので中には副反応として軽い風邪症状が出るお子さんがいます。

では、フルミストのポイントを概説します。

名称】フルミスト
性質】経鼻生ワクチン
接種方法】両鼻に0.1mLずつ噴射
接種回数】(全年齢)1回
効果持続】1年間
接種対象】2歳〜18歳
※ 鼻水等の症状のある方、泣いてしまって鼻汁でワクチンが流れ出てしまう可能性のあるお子様は接種をお勧めできません(噴霧しても十分な効果が期待できません)。
接種できない方
・2歳未満、19歳以上。
・5歳未満の方で喘鳴(ゼーゼー)の歴があった方や、1年以内に喘息発作のあった方。
・免疫不全患者(抗がん剤治療を受けている人)や、免疫不全患者様をケアする立場にいる介護者の方。
・心疾患、肺疾患・喘息、肝疾患、糖尿病、貧血、神経系疾患などの慢性疾患を持つ場合。
・アスピリンを服用中の方。
・妊婦の方。
・重度の卵白アレルギーやゼラチンアレルギー、ゲンタマイシン、アルギニンアレルギーの方。
・今風邪をひいていたり、鼻炎のひどい人。
有効率】発症予防効果は3〜7割(注射ワクチンと同等)、効果発現は接種2週間後から。
副反応
・小児:鼻水、喘鳴、頭痛、嘔吐、筋肉痛、発熱、喉の痛み。
その他の副反応についてはこちらでご確認ください。



★ 追加)実際に接種してみて、以下の問題を経験しました。

フルミスト接種後2〜4週間はインフルエンザ迅速診断で陽性になることがあります。つまり、フルミスト接種後1ヶ月間は、検査で陽性に出ても、それが実際に感染したものなのか、フルミストの影響によるものなのか、判断が難しい、ということです。

フルミスト接種後2週間以内に抗インフルエンザ薬を使用すると、フルミストの効果が弱くなる可能性があります。
 

<参考>

 

フルミストを希望されても、以下の項目(添付文書から引用)に当てはまる場合は接種できないことがあります。あらかじめご確認ください。

<フルミストを接種できない方>
1)明らかに発熱している方(通常は37.5°Cを超える場合)
2)重い急性疾患にかかっていることが明らかな方
3)過去に本ワクチンに含まれている成分で、アナフィラキシー(通常接種後30分以内に出現する呼吸困難や全身性のひどいじんましんなどを伴う重いアレルギー反応のこと)を起こしたことがある方
4)明らかに免疫機能に異常のある疾患をお持ちの方、免疫抑制をきたす治療を受けている方
5)経口または注射の副腎皮質ホルモン剤を使用している方
6)妊娠していることが明らかな方
7)その他、医師が予防接種を受けることが不適当と判断した方

<フルミストを接種する際に医師と相談が必要な方>
1)ゼラチン含有製剤またはゼラチン含有の食品に対して、ショック、アナフィラキシー(じんましん、呼吸困難、血管性浮腫など)などの過敏症を起こしたことがある方
2)心臓血管系疾患、腎臓疾患、肝臓疾患、血液疾患などの基礎疾患のある方
3)過去に予防接種で接種後2日以内に発熱、全身性の発疹などのアレルギーを疑う症状がみられた方
4)過去にけいれん(ひきつけ)を起こしたことがある方
5)過去に免疫状態の異常を指摘されたことのある方、または近親者に先天性免疫不全症の方がいる方
6)重い喘息のある方または喘鳴の症状のある方
7)薬の服用または食事(鶏卵、鶏肉、その他鶏由来のもの)で発疹が出たり、体に異常をきたしたことのある方
8)発育が遅く、医師、保健師の指導を受けている方
9)妊娠中または妊娠の可能性のある方(接種前1か月間避妊していない方)、授乳中の方
10)サリチル酸系医薬品(アスピリンなど)、ジクロフェナクナトリウム、メフェナム酸を服用している方

★ 上記では「相談が必要な方」扱いですが、諸般の事情を考慮し、2024/25シーズンの当院方針として、
✓ 4歳以下の喘息児(5歳以上で調子がよければ可)
✓ 4歳以下でゼーゼーしたことがある(5歳以上は可)
卵アレルギー、ゼラチンアレルギー
アスピリン内服中
接種不可とします。

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