2025年03月

食べる・食べないを巡って、食事時間は子どもと保護者のバトルが発生しがちです。
 ✓ 食卓で遊び出す
 ✓ 食べ物を投げる
 ✓ 食卓から逃げ出す
 ✓ 食べるのに時間がかかる
等々。
それをどううまく乗り切るか、専門家のアドバイスを聞いてみましょう。

基本は、
・子どもの行動の背景を理解する
・子どもの気持ちに共感し、望ましい行動を肯定文で提案する
・評価する言葉、質問形は使わない 
・大人がユーモア、遊び心のある態度を取る
等々。

そして、好ましくない行動が発生したとき、
保護者が取るべき行動にはポイントがあります。
それは「完全無視」。

★ 好ましくない行動(食べようとしない、食事中に立ち上がる、さわぐ・泣きわめく、食器で遊ぶ、食べ物で遊ぶ、食べ物を投げる)は完全無視
・好ましくない行動に、保護者が「ダメ!」と反応すると、
 注目されたと勘違いしてその行動を繰り返す。
(具体例)
✓ 「こら、またやってる!」
✓ 「いいかげんにしなさい!」
✓ 「お願いだからやめて!」
✓ 「もう、ちゃんとしなさい!」
・好ましくない行動が始まったら注目せずに完全に無視する。
(具体例)
✓ 好ましくない行動が始まったら「注目しない」を開始する。
 少しでも相手をすると子どもは「認められている」と感じる。
✓ 体の向きを変え、子どもと視線を合わせない。
 親が怒っている様子も見せない。
✓ 好ましくない行動がおさまるまで注目しないでおく。
 反応すると好ましくない行動がエスカレートする。
✓ 好ましい行動が出たらすぐにほめる。
 すると、好ましくない行動が自然に減っていく。

そして逆に、子どもが好ましい行動をしたときも、
保護者が取るべき行動のポイントがあります。

★ 子どもの好ましい行動は「まねる」「言語化する・実況中継する」
・口に入れるだけで大げさに「上手上手〜」とほめがちだが、
 何度も使っているうちに効果が薄れ、
 何をほめられているのかよくわからなくなり、
 うれしくなってそれ以上食べなくなることもあるのでお勧めできない。
・して欲しい行動が始まったらすぐに、
 その行動を(スポーツの実況中継のように)言葉にすると、
 子どもはその行動をさらにしたくなる。 

以上のことは、子育て本を読むと「応用行動分析」という心理学として説明されていることが多いですね。
私はこの手の本を読むといつも、
「動物の調教に似ている」
と感じてしまいます。
・・・では実例を見ていきましょう。


▶ 離乳食 → 取り分け食の頃から好き嫌い・偏食が目立ってきた
・されるがままであった乳児期を過ぎ、不快なことを拒絶するまで発達が進んだ証拠。
・まだ言葉で表現できないので行動(顔を背ける、払いのける、怒る、泣く、逃げ出す)に出る。

▶ 「食べる」という言葉を嫌がる
・「ご飯だよ」「食べよう」の代わりに、
 「手を洗う人!」「座る人!」「座る時間だよ」と声をかける。

▶ 食べることに興味がない(乳児型食思不振症)
・特徴;
 ✓ 食べる品数は少なくない(ふつう20以上)
 ✓ 食べる量が少ない
 ✓ その日により食べる・食べないが予測できない
 ✓ 体格はほっそり・線が細い
 ✓ 一人っ子のことが多い
 ✓ 両親ともとても心配して子どもに干渉している
 ✓ 乳児期の哺乳もチビチビ飲み、眠いときに意識して飲ませていた
・食べるより遊びが好きな子ども。
・起きている限り動き回っている。
・遊びが大好きで常に交感神経緊張状態。
・副交感優位になる状況を退屈と感じ、遊び食べがなかなか治らない。

▶ 椅子に座りたがらない
・その椅子が子どもの年齢・発達にあったものか再確認する。
・あらかじめ、食事時間を予告する。
・時間が来たら家族が食卓に座って楽しそうに食事をはじめ、
 本人がやってくるのを待つ(無理強いはしない)。
・時間が来て家族が食べ終わったら、本人不参加でも食べ物を片付ける。

▶ 食べ物を食べる前に拒否る
・2〜3歳の頃は、食べ物を色と形で判断する。
・5〜7歳までは、味よりも手触りと見た目で判断する。
 → つまり、見ただけで食べないという行動は“あるある”。 

▶ 新しい食べ物(味や形)を拒否る
・新しい食べ物はモンスターに見える。
・新しい食べ物は(ストレスにならないように)2〜3日以上の間隔で最低10回以上出すべし。
 ✓ 5回くらいであきらめない!
・何回も出しているうちに慣れてきてお友達になれる可能性アップ。

▶ 母乳ばかり飲んで離乳食が進まない
・「おっぱいをいつまでも飲んでいるから離乳食が進まない」
 と考えがちであるが、これは正しくない。
● 対応
・生活リズムを年齢相当に整える。
・強制のない状態で食卓につく。
・保護者や家族が楽しく食べる様子を見せる。
・1歳を超えているなら、
 ✓ 1日3回は食卓につく。
 ✓ 母乳は食卓では与えない(寝室など、別の場所に決める)。
● ポイント
・母乳育児でも固形食の食べる能力の発達に差はない。
・食べない理由は母乳のせいではない。

▶ 好きなものがないと「〇〇が食べたい」とごねる、グズる
・ぐずっても希望通りのものは出さない。
・出してしまうと「ごねり勝ち」を学習して繰り返すことになる。
・結果的に、食べる品数が増えない、減っていく。
・食事のメニューを決めるのは「親の仕事」であり、
 子どもに主導権を渡すと問題が発生するパターン。 
(対応)
・子どもが食卓にない「〇〇が食べたい!」と言い出したら、
「ふ〜ん、〇〇が食べたいんだね」
「そうか、じゃあ〇〇は今度出すね」
・食事の時に遊んでいてあまり食べなかった子どもが1時間後に、
「お腹空いた、〇〇を食べたい!」と言い出しても出さない、
「さっき食べなかったからでしょ!」と叱るのもNG、
「ふ〜ん、〇〇を食べたいんだ」
「今度、✖️✖️の時に出すよ」と次の食事時間を知らせる。

▶ 手づかみ食べをさせると、グチャグチャにしたり投げたりする
・3歳までの子どもにとって、食べることと遊ぶことに違いはない。 
・この年齢の子どもに「食べ物を粗末にしてはいけません」は通用しない。
・初めてのものはモンスターに見える・・・見て、触って、ニオイを嗅ぎ、周りの大人がどう扱っているか観察し、大丈夫と判断した時点で始めて口にする。 

▶ 食べさせようとすると大人の口に入れてくる
・1歳台はものまねが大好き。大人が食べさせようとする動作をまねる行動。 
(対策)
・1回目は「ありがとう」と言って食べる。
・2回目も「ありがとう」と言ってひとくち食べ、食べ物を手に持つ。
・3回目は「ありがとう、今あるよ、はいどうぞ」と子どもに返す。
・4回目以降も「ありがとう、今あるよ、はいどうぞ」を繰り返す。
・繰り返すうちに子どもは飽きてゲームオーバー。

▶ 他人のお皿のものを取りに来る
・9歳までは、自分のお皿のものも隣のお皿のものも、違いがないと思っている。
・他人のお皿のものを取ることを「行儀が悪い」と遮っても子どもには理解できない。
(対策)
・大皿から小皿に取り分ける方法を選択する。

▶ 手づかみ品を出すと、一瞬で投げてしまう
・新しい食べ物はモンスターに見える。
・反射的に視線から外したくなり投げることが多い。
・3歳までは食べることと遊ぶことの違いがわからない。
・「投げちゃダメ!」と言い聞かせても理解できないので、怒るか泣くか。
・感覚遊びを取り入れながら、馴染みのない食べ物をモンスターから友だちにする。
(対策)
・問題行動(投げること)には注目しない:1歳前半の子どもの場合、親が注目をやめると比較的早期に飽きてやめる。
・子どもの気持ちにネーミングして対処する、約束を述べる:「食べ物さんはテーブルにいるよ、心配ならここに片付けてもいいよ」
・「〜してもいいね」フレーズで適応行動を提案する。
 ✓ 「ボールに入れてもいいね」
 ✓ 「テーブルの向こうに押してもいいね」
・食卓への出し方を変えてみる。
 ✓ 大人が美味しそうに食べているところ繰り返し見せ、興味を示したら、ちょっともったいぶって、ほんの少しだけ出す。
 
▶ 食べさせてもらいたがる(自分で食べられるけど)
・「スプーンにのせるところまでママね」「一回だけね」

▶ えずく、吐き出す(スプーン食べの場合)
・食べ物がのどの粘膜に当たりオエッとなったり、
 吐き出しそうになったりするのは生理的な防御反応(咽頭反射)。
・スプーン食べでは子どもが自ら食べ物を触って確認するステップがない。
・いきなり食形態の違うもの (ドロドロ〜固形物)が敏感な口の中に入ると、
 パニックになることがある。
・食形態を変える場合は少量から試し、唇に触れさせ、
 舌先で確認して慣れるようサポート。

▶ えずく、吐き出す(手づかみ食べの場合)
・手づかみ食べを始める際に、えずいたり、吐き出したりするのも生理的な防御反応。
・食べ物を見て、自分で触って、確認しても、
 口に入れたら「思うような味・食感ではなかった、処理できない」
 様な場合にえずいたり吐いたりすることがある。
・食べ物を細かくしないで手づかみサイズを長さ7〜8cmのスティック状にするとよい。
 これは万が一のとき、保護者が口から取り出しやすいサイズでもある。
・手づかみ品を自分から食べる方が、ドロドロやペーストで与えられるよりもえずき・嘔吐は少ない。
・手づかみ食べよりスプーンで与える方が、のどに詰まらせる頻度は高い。

★ 食べ物を吐き出した時の対応こちらも参照)
・呼吸をしておらず、顔色が悪いときは「窒息」 → 救急対応(日本小児科学会) 
・その時、呼吸をしていて顔色が悪くなければ問題ない。
・保護者があわてると、子どもはビックリしてパニックになるかもしれない。
・保護者は落ちついて笑顔で「オエッとなっちゃったんだね、出してごらん」と、
 前屈みになって吐き出す様子を見せてまねをさせる。
・吐き出せないようなら「お手伝いするね」と言ってから、
 口にあるものを取り出してあげる。

▶ 食べさせると口の中にため込む、丸呑みをする
・食べる機能(口腔機能)と食事形態のミスマッチがあると、
 飲み込めずに口の中にためたり、困って丸呑みすることがある。
 → こちらを参照

▶ 食事中に椅子から降りてリビングへ行こうとする
(対応)
・知らんぷりして保護者は食事を楽しそうに続ける。
・誰も相手をしないと大抵子どもは戻ってくる。
・戻ってきたらニコニコ笑顔で迎える。
 
▶ 母乳・ミルク以外は拒否るので保育園で預かってもらえない
・発達段階をチェック(小児科受診)
・強制(スプーンを含めすべての食べさせる行為)をやめる。
・同じ食卓で保護者・家族が楽しそうに食べる様子を見せて安心させる。
・手づかみ食べを導入。
  ✓ 家族が食べているものから一つ、トレイに出す
 ✓ それを見て、触り、ニオイを嗅ぎ、つかむ(投げる?)、
 などの過程を経て安心すれば、口につけるようになる可能性あり

▶ 園で水分を摂取したがらない(自宅では飲める)
● 対応
・容器を馴染みのもの(いつものコップ、あるいは水筒)にして、
 他の子どもたちと一緒の時間、一定の時間にそれを渡す。
・自宅でのタイムテーブルを園に合わせる。
(例)「〇〇で遊んだら次は水筒でゴクゴク」
(例)「〇〇のあとは水筒でゴクゴク」
・飲み物の味を徐々に変えて水に慣れさせる。
(例)自宅でジュースばかり飲んでいる場合、
 気づかれないくらい少しずつ水で薄めていって最後に水でも飲めるようにする。
・園全体の取り組みとして:
✓ 児童全員に対してあらかじめ設定した「水分摂取タイム」を見える化する。
✓ 「ゴクゴクの時間だよ」「まわりの友だちがゴクゴクしているよ」と知らせる。


・・・さて、上記の問題と対応をルール化できないものでしょうか。
大山牧子医師が上手にまとめていますので紹介します。
始めにこの文章を読んだときはピンときませんでしたが、
偏食について調べれば調べるほど、
このルールが正しいことがわかってきます。

<食卓での親子の役割分担>

● 保護者の役割は「いつ」「どこで」「なにを」食べるか決めること

(いつ) → 規則正しい食事とおやつを提供する
⭕️ 2歳まで:3食+軽食2回(朝食・午前軽食・昼食・午後軽食・夕食)
⭕️ 2歳以降:3食+軽食1回(朝食・昼食・午後軽食・夕食)
⭕️ 食事間隔を2.5〜3時間開ける
⭕️ 1回の食事時間を15〜30分
❌️ 1日3食
❌️ 食事と食事の間に欲しがったら与える(ダラダラ食べ)
❌️ 1回の食事時間が40分以上

(どこで) → 家族が食べる食卓で一緒に
⭕️ 座位保持から独步まで(6ヶ月〜1歳):ハイチェア
⭕️ 小走りし始めたら(1歳半〜2歳以降):ステップチェア
⭕️ 座卓の場合は豆椅子
 ✓ 1〜2歳:背もたれつき
 ✓ 3歳以降:円座(硬めの正座用クッション)
⭕️ 外出時は親が決めた場所
❌️ 親が食事の途中に離席する
 ✓ 離席した子どもの相手をするため
 ✓ 食卓にないものを取りに何度も立ち上がる
❌️ テレビやビデオ、YouTube、スマホ、タブレットを見せる
❌️ 親が食事中に食卓で授乳する

(なにを)
⭕️ 栄養バランスの取れたメニューを決めて出す
❌️ 何を食べたいか子どもに聞く
❌️ 出すつもりではなかった食べ物を出す
❌️ 食べる順番を決めて守らせる
❌️ 食べ物をごほうびにする

● 子どもの役割は「食べるかどうか」「どのくらい食べるか」を決めること
〜そのためには保護者は子どもを信頼する必要がある、すると・・・
⭕️ 食べる・食べない・食べ残すを決める
⭕️ 好きなものだけ食べる、嫌いなものは食べない
⭕️ その食卓のメニューのおかわりをする
❌️ その食卓のメニュー以外のものを要求する

● 上記の役割分担の境界線を越えると、摂食の問題が発生する
(例)子どもが何をどれだけ食べるかを保護者が決める・コントロールする
(例)子どもに献立を決めさせる
● 上記の役割分担を守ると子どもたちは食べることを楽しいと感じるようになる




<参考書籍>
食べない子が変わる魔法の言葉(山口健太著、辰巳出版、2020年発行) 
子どもの偏食外来(大山牧子著、診断と治療社、2023年発行)
子どもの偏食Q&A(大山牧子著、中外医学社、2024年発行)
子どもの偏食相談スキルアップ(大山牧子著、診断と治療社、2025年発行)
発達障害児の偏食改善マニュアル(山根希代子監修、藤井葉子著/編集、中央法規出版、2019年発行)

<参考サイト>
きゅうけん(月刊給食指導研究資料)
・(動画)食べない子ども・偏食への対処法(大山牧子)
・(動画)小児摂食障害(食物アレルギーを持つ子どもの場合を含む)(大山牧子)
発達障害の方の偏食・摂食のご相談(藤井葉子)
 
  

偏食について調べていると、
「この対応は〇〇の点でNG」
という表現に何回も出会いました。

どうやら、偏食になりにくい「理想の食習慣」「望ましい食事習慣」が存在するようなのです。
いくつかの書物から抜粋して要約しました。


▢ 子どもが楽しく食事するために必要なこと
● 適切な生活リズム
 ✓ 睡眠
 ✓ 便秘
● 適切な食事環境
● 適切な保護者のスタンス
● 適切な親子の役割分担

▶ 適切な生活リズム:睡眠
・眠る時間と起きる時間を決める。
・起きている間は、2.5〜3時間ごとに食事を取る。
・食事時間は15〜30分とする。
・夕食と風呂は眠る1時間前までに済ませる。
・眠る1時間前には激しい遊びをしない。
・眠る1時間前から部屋を暗くし、ブルーライトはオフにする。

▶ 適切な生活リズム:食事の時間枠
・2歳以降は3回食と1回の軽食で合計4回。
・保護者が食卓に座り一緒に食べる。
・食事の開始と終了を予告する。
・子どもが食卓に来なくても大人は食べはじめ、時間が来たら予告して終了する。
・片付けたら次の食事時間まで食べ物は出さない。
・食べる時間を子どもに合わせると時間の枠組みが作れない。
・いつ食べ物を出すかは保護者の仕事。
・大人によって態度が違う、同じ保護者でも気分によって態度が違う、はタブー。
・1回でも要求が通ると、子どもは「自分が欲しがったらいつでも食べ物が出てくる」と学習する。
・食事の場所と時間の枠組みを作るのは“しつけ”ではなく保護者の仕事。
・保護者の仕事を子どもにさせるとバトルが発生する。
・子どもの仕事は「決まった時間と場所で出されたものを、食べるか食べないか決める、食べる量を決める」こと。

▶ 適切な食事環境ー椅子と食卓の高さを調整
・子どもは少し姿勢が崩れたり、テーブルや椅子が体に合わないだけで食べられなくなる。
・食べるという微細運動を効率よく行うためには、粗大運動である座位を安定されることが重要。
・座位の安定のためには、足底で踏ん張って下腹部のコアマッスルに力が入ることが必要。 
・理想の姿勢(椅子とテーブル)のポイント:
(1歳まで)
 ✓ ハイチェア(座卓ではローチェア)では足がブラブラしないように、
 ✓ トレイの高さが子どもの乳頭とヘソの真ん中に来るように、
 ✓ 食卓に前腕をつけたとき、肘関節が90°になるくらいに、
  ・・・硬めのクッションやバスタオル、雑誌などで調整する
 ✓ 背当ては肩甲骨まで支える高さを
 ✓ 食卓と椅子に座った子どもとの間に子どものこぶし一つ分くらいのすき間があるように
(1歳以降)
 ✓ 足・膝・股関節が90°になるように調整
 ✓ 足底全体が床・足台に乗っているかを確認 
 ✓ 椅子の座面が広すぎず、子どもの横幅に合っている
・NGな椅子たち
 ✓ 簡易椅子(折りたたみ式で机にガチャンとはめ込むタイプ)
  → 子どもの足がブラブラする、座面が布で沈みやすく座位が安定しない
 ✓ バンボ®、バウンサー
  → 足が安定しない

神奈川県立こども医療センター偏食外来パンフレットより)
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▶ 座卓の場合の調整法
・体幹を安定させるため、座卓の高さが子どものおへそと乳頭の真ん中くらいになるような座面の椅子を用意する。
・股関節・膝関節・足関節が90°になるように調節する。
・足底が床につかない場合は足台を使う。
・背当ては必須で肩甲骨まで支えられるようにする。
・3〜4歳以降になると、座卓によっては子どもの太ももが座卓の下面にあたり窮屈になる。その場合は正座やあぐら姿勢をとり、硬めの座卓用クッション当てるなどの工夫をする。
・座卓の場合、子どもと大人で座り方が異なるので、大人のまねをしたい子どもは落ちつかず大人の膝に乗りたがることがある。思い切って高い食卓にして、家族みんな椅子に座るよう切り替えることも検討すべし。

▶ 適切な食事環境ー気が散らない環境を提供
● 食べることに関係のないものを子どもの視野に入れないようにする
・乳幼児(就学前まで)は二つのことを同時に行うことができない。
・子どもは大人より視覚による情報をたくさん得る傾向がある。
・気が散るものが食卓にあると食べ物に集中できない。
・食事の時は、食べ物と食器・食具以外のものは食卓から片付ける。
● “ながら食べ”ではいつまで経っても食べるようにならない。
・食事中にテレビ、ビデオ、YouTubeを見せたり、おもちゃで遊ばせたりすると、
 強制栄養されるだけで食べることを学習できない。
・おもちゃにこだわる場合は、
「食事が終わったら一緒に〇〇しようね、〇〇を見ようね」
と肯定文・提案型で言う(どうしてもグズったら、小さなおもちゃを一つだけ食卓において食事中は触らない約束をする)。
● 空腹過ぎると食卓に座らない傾向がある
・授乳から1〜2時間後に食事時間となるよう調整する。
・1歳以降は食卓では授乳はしない(「授乳は寝室で」などと決めておく)。

▶ 保護者のスタンス
● 楽しい食事の基本はストレスなく食卓に座っていられること
・家族がゆったりと落ちついて座って美味しそうに食べていること、
 その様子を子どもが座って見ていられることから始まる。
・保護者は無意識のうちに「早く座って」「急いで食べなさい」と指示しがち。
 ✓ 「座る」「食べる」は子どもの役割で、保護者の仕事ではない。
 ✓ 保護者は「座ろう」「食べよう」という気持ちになるよう促す係。
 ✓ 相撲の土俵入りをイメージしてゆっくりと。
・子どもが眠いときや体調不良の時以外は、
 一切の強制をやめることで食事に向き合えることが多い。
● 食卓でのしつけや強制圧があると食が進まない
・食べることを強制しない。
・「なんとか食べさせなければ」という保護者の行動には“強制”圧が発生しやすい。
・ストレス下、交感神経緊張状態では食欲が低下する。
・して欲しくない行動には「知らんぷり」して完全無視、
 して欲しい行動にはただちに「ニコ」「いいね」、しかし大げさにはほめない。
・評価する言葉を避ける。
・叱るとかえって注目を浴びたと勘違いして、その行動を助長しがち。
● 強制をやめると・・・
・強制をやめると、親子が一緒に食卓について同じものを食べる余裕が生まれる。
・強制されない安心・安全を感じる食卓で、子どもは初めて新しい食べ物に挑戦できる。
 → 「偏食に一番効果があるのは“強制”をやめること!」

★ “負のスパイラル”と“正のスパイラル”

(負のスパイラル)
 子どもが食べない
  ⇩
 強制する  →  食卓に座らない(家族の食べ方を学ぶチャンスがない)
  ⇩                  ⇩
 泣く・顔をそむける       食べる機能が発達しない
  ⇩
 テレビを見せながら食べさせる(ながら食べ)
  ⇩
 テレビがないと食べない
  ⇩
 食べる機能が発達しない
  ⇩
 食べさせるのに時間がかかる
  ⇩
 親子ともイライラ・疲れる

(正のスパイラル)
 子どもが食べない
  ⇩
 強制しない  → 食卓に座る(家族の食べ方を学ぶチャンス)
  ⇩            ⇩
 親が美味しそうに食べる   ⇩
  ⇩            ⇩
 食べ物に興味を示す・まねをして食べる
  ⇩
 食べる機能が発達する
  ⇩
 家族と同じくらいに食べ終わる
  ⇩
 楽しく食べる

● 保護者は無意識のうちに強制していることに気づいていない
・保護者は子どもに食べさせる際の行動に“強制”の要素があることに気づいていない。
・具体例;
(スプーンの使用)
 ✓ 顔を背ける
 ✓ 手で払いのける
(言葉や態度)
 ✓ ひとくちだけ食べよう
 ✓ おいしいよ〜
 ✓ せっかく作ったのに〜
 ✓ なんで食べないの?
 ✓ お腹が空いているはずだよね?
 ✓ 食べるかどうかみんな見てる
(食べ物で)
 ✓ 食べないものを必ず置く
 ✓ 食べきれないくらいの量を置く

▶ 何を食べるか
・基本は“家族と同じもの”
・2歳未満では生もの以外はOK
・塩分濃度6〜7g/日(WHO基準)で家族全員の食事を用意する。
・月齢6ヶ月以降は取り分け食を手づかみで食べる練習を始められる。


<食卓での親子の役割分担>

● 保護者の役割は「いつ」「どこで」「なにを」食べるか決めること

(いつ) → 規則正しい食事とおやつを提供する
⭕️ 2歳まで:3食+軽食2回(朝食・午前軽食・昼食・午後軽食・夕食)
⭕️ 2歳以降:3食+軽食1回(朝食・昼食・午後軽食・夕食)
⭕️ 食事間隔を2.5〜3時間開ける
⭕️ 1回の食事時間を15〜30分
⭕️ 家族の食事が終わる5分前に「あと5分だよ」と予告する
⭕️ 終了時に「さあ片付けする人」と声がけして一緒に片付ける
❌️ 1日3食
❌️ 食事と食事の間に欲しがったら与える(ダラダラ食べ)
❌️ 1回の食事時間が40分以上

(どこで) → 家族が食べる食卓で一緒に
⭕️ 座位保持から独步まで(6ヶ月〜1歳):ハイチェア
⭕️ 小走りし始めたら(1歳半〜2歳以降):ステップチェア
⭕️ 座卓の場合は豆椅子
 ✓ 1〜2歳:背もたれつき
 ✓ 3歳以降:円座(硬めの正座用クッション)
⭕️ 外出時は親が決めた場所
❌️ 親が食事の途中に離席する
 ✓ 離席した子どもの相手をするため
 ✓ 食卓にないものを取りに何度も立ち上がる
❌️ テレビやビデオ、YouTube、スマホ、タブレットを見せる
❌️ 親が食事中に食卓で授乳する

(なにを)
⭕️ 栄養バランスの取れたメニューを決めて出す
❌️ 何を食べたいか子どもに聞く
❌️ 出すつもりではなかった食べ物を出す
❌️ 食べる順番を決めて守らせる
❌️ 食べ物をごほうびにする

● 子どもの役割は「食べる・食べない」「どのくらい食べるか」を決めること
・子どもは家族の食べる様子を見て、
 自分が食べるべきもの、食べる量を、
 だんだん調節できるようになる能力を持っている。
・家族がバランス良く健康的な食べ物を心から楽しんでいる様子を見せる。
・あとは、保護者は腹をくくって子どもを信頼する。
⭕️ 食べる・食べない・食べ残すを決める
⭕️ 好きなものだけ食べる、嫌いなものは食べない
⭕️ その食卓のメニューのおかわりをする
❌️ その食卓のメニュー以外のものを要求する

● 上記の役割分担の境界線を越えると、摂食の問題が発生する
(例)子どもが何をどれだけ食べるかを保護者が決める・コントロールする
(例)子どもに献立を決めさせる
● 上記の役割分担を守ると子どもたちは食べることを楽しいと感じるようになる

 


<参考書籍>
食べない子が変わる魔法の言葉(山口健太著、辰巳出版、2020年発行) 
子どもの偏食外来(大山牧子著、診断と治療社、2023年発行)
子どもの偏食Q&A(大山牧子著、中外医学社、2024年発行)
子どもの偏食相談スキルアップ(大山牧子著、診断と治療社、2025年発行)
発達障害児の偏食改善マニュアル(山根希代子監修、藤井葉子著/編集、中央法規出版、2019年発行)

<参考サイト>
きゅうけん(月刊給食指導研究資料)
・(動画)食べない子ども・偏食への対処法(大山牧子)
・(動画)小児摂食障害(食物アレルギーを持つ子どもの場合を含む)(大山牧子)
発達障害の方の偏食・摂食のご相談(藤井葉子)
 
 

自閉症スペクトラム(以下ASD)児はこだわりが強い傾向があり、
その6〜9割に偏食があるといわれています。

その特性を理解し、対応を考えましょう。
偏食の解説でも「感覚の問題」として取りあげていますが、
この項目ではASD児の特性という視点から説明します。

子どもの特性は変化しません。
感覚過敏、こだわりは特性・性格の一部なので消えることはありません。
またこの特性は、本人がストレスを感じる場面(まさに食事場面)で出やすい傾向があります。
でも工夫により、少しずつ食を拡げることは可能です。
ポイントは、

 ❌️ 苦手なものに慣れる
 ⇩
 ⭕️ 好きなものから拡げる

に尽きます。
「今、食べられているもの」の特徴(色、形、食感)をつかみ、
その感覚的特徴をもとに、よく似た食材・料理へ拡げていくのです。
ただ、少しの変化にも敏感なので、
本人がわからないレベルでの「顕微鏡的変化」を、
粘り強く、繰り返し試していく忍耐力が必要です。

さらにそれを実行していくベースに、
ストレスなく座れる食卓環境を整えることが必要です。
安心・安全な食事環境ではリラックスできるので、
感覚過敏やこだわりが軽減していくことが期待できます。


▶ 食に関する特徴
・食事拒否が多く食事のレパートリーが少ない
・各栄養素の摂取が少ない
 ✓ ビタミン類(A、C、D)
 ✓ 亜鉛、カルシウム
 ✓ 食物線維
・便通異常が多い:慢性便秘(80%)、慢性下痢(56%) 
・食事不耐症、食物アレルギーが多い

▶ ASD児が抱える様々な問題・課題

● 摂食スキルの課題

・口腔運動の遅れを含む発達遅滞が多い(64%)
 ✓ 食品のタイプまたは食感によるえり好み(94%)
 ✓ 口腔運動の遅れ(15%)
 ✓ 嚥下障害(12%)

● 感覚の課題(姿勢の不安定さを含む運動関連の感覚)
・手の複雑な触覚を使う作業が苦手、複雑な触覚刺激を嫌う
・体の認知能力が低い
・跳躍や飛びつきを好み、自己調整能力が低い
・聴覚過敏
・回る、駆け上がるなどの迷路刺激を好む
・特定の食品の食感やにおいを避ける
・味覚の特性
 ✓ 甘味と塩味はふつう
 ✓ 酸味に鈍い
 ✓ 苦味に鈍い
・乾いた食感(カリカリ、サクサクなど)を好む
・ASD児の食事選択と栄養の適切さの研究からわかったこと:
 ✓ 触感、温度、見た目に対する許容度が狭い
 ✓ ピューレ状のような食感の低い食べ物を受け入れやすい
 ✓ 食感の問題は0歳から始まる
 ✓ 口腔過敏は進行する

● 食事に関連した学習の特徴
・顕微鏡的学習:対象の細かい部分を詳しく見てわずかな違いも新しいものと捉える
 → 確実に同じものでないと同じ食品と思えない、食べ物そのものと容器・パッケージとの分別がつかず、パッケージがわずかでも違うとまったく違う食べ物と思ってしまう
・グループ化が苦手:食べ物の詳細な部分に注目し、全体として捉えられない
 → パッケージを食品の一部として捉えられない

● 行動の特徴
・ほとんどの適応できない特徴は感覚の問題に根ざしている
・コミュニケーションの90%は視覚、10%は聴覚が担当する 
・情報を解読するまで時間がかかる
  → メッセージを受け取れるまで長時間出し続ける必要がある

▶ ASD児の感覚・行動特性を踏まえた食事対応
・感覚過敏だけに注目してもうまくいかない。
・多方面から評価をして理由を探る。
・強制をやめ、ストレスなく座れる食卓にする。
・食事時間に「安心・安全」を感じられるように。
・ASD児にとって、食べることは最も困難な行動の一つ。
 ✓ 不安が強い:食卓についていられない、集中できない。
 ✓ 新しい食べ物はモンスターに見える。
 → 極めて細かいスモールステップ根気よく反復する。
・ユーモアを持って根気強く寄り添って支援する(行動実況放送賞賛法など)、遊び感覚で子どもが食べ物と友だちになるチャンスを与える。
・治療可能な病態(上気道閉塞、便秘、睡眠障害、栄養評価)を見落とさない。

★ 感覚的な課題と口腔運動機能を促進する目的で食卓で食べ物を使った遊びをする方法 (SOS aproach to feeding
<参考サイト>
・子ども偏食少食ネットワーク:摂食のためのSOSアプローチの基本原則
・子ども偏食少食ネットワーク:MISSIONとCONCEPT



<ASD児への食事対策> 

● 保護者の基本姿勢
・多方面から評価をして理由を探る
・強制をやめる
・食卓でのストレスを極力減らす
 ✓ 子どもの気持ちに共感する
 ✓ 望ましい行動を肯定文で提案する
 ✓ 評価する言葉、質問形は使わない
 ✓ ユーモア、遊び心のある態度を取る

● 誰が、どこで、何をするかを視覚化
 → 安心と安定が与えられる
・食事時間のスケジュールを一定にする
・食事開始を一定の行動に:手洗い、行進、着席 
・座っている時間を見える化する:タイマー、イラスト、表など
・食事終了を一定の行動に:あと〇分だよ、一緒に片付け開始、食卓を拭く、ごちそうさま、手洗い
・食事の環境を整備:決まった場所、気が散るものを排除、視覚的に食べ物に集中できるようにする
・食事中の環境を整備:食べ物以外の視覚・聴覚の妨害を最小限にする(ビデオ、テレビ、おもちゃで気をそらさない)
 ✓ ランチョンマットで子どものエリアを見える化
 ✓ 食器を置く位置を固定
 ✓ キャラクターのない無地の食器を使用
 ✓ 子どもの視野に食べ物以外の気になるものが入らないように
 ✓ おもちゃは持ち込まない約束を
 ✓ 食品をパッケージから出して提供する(パッケージではなく食べ物に注目するために)
・一度決めた食事環境は変えない 

● 段階的に食事のバラエティを増やしていく 
・子どもが新しい食べ物を、見る、ニオイを嗅ぐ、触る、味わう、という一つ一つの感覚ステップを踏めるよう、急がせず、穏やかな状況で提供する。
・口に入れることを決して強要せず、 家族自ら楽しく食べている様子を何度もゆっくりやってみせる。
・子どもをばっかり食べ(まったく同じ食品のみを毎食食べ続けること)に陥らせないように、子どもの好きな食品にごくわずかな変化(顕微鏡的変化)をつける。
・1日1回、好きな食品と家族のお皿にある新しい食品を一緒に与え、新しい食品になじむようにする。
・新しい食品を与えるときは、以前は好きで食べていたけれど今は食べない食品と混ぜ、好きな食品からわずかに感覚特性をシフトさせる。混ぜ合わせがうまくいかなかったら、好きな食べ物をほんの少し変える。
・子どもが自ら変化をつけることを促す。
・子どもが食べている最中に食品の違いについて話し合う。
・子どもが親に食品を手渡すことで、食品に触れたり関係を持ったりすることになる。
・食べ物、特に甘いものをご褒美にしない。

なぎさ園給食の食形態の作り方(動画「カリカリ食の作り方」)

▶ 苦手な食材をわからないように混ぜるのはタブー
・食材を混ぜても食べるようにはならない。ごまかしは効かない。
・3歳以降はごまかすとかえって信頼関係が失われ、疑心暗鬼になる。
・苦手な食材はルーに混ぜたり刻み込んだりしない。
(例)カレーはルーとは別に小皿に素材別に置き、
   食べるかどうかは本人に決めさせる。

▶ 栄養素別メニューリスト作成のススメ
・現在食べたり飲んだりできるものをすべて書き出す。
・子どもが自分から少なくとも2〜3口を3回以上食べられる食べ物または飲み物を、主な栄養に分けて具体的にメニューで書く。
・メニューリストから毎食、それぞれの栄養素別に1品目だけ出すようにする。
・丸3日、違うメニューが望ましいが、最低でも2日間はわずかでも(顕微鏡的にでも)違うメニューを出す。
・家族の食事に興味を示したら、「単独の食材で作ったもの」を「小さすぎず、かじったり噛んだりできるサイズ」で「少量」ずつ出す。



<参考書籍>
食べない子が変わる魔法の言葉(山口健太著、辰巳出版、2020年発行) 
子どもの偏食外来(大山牧子著、診断と治療社、2023年発行)
子どもの偏食Q&A(大山牧子著、中外医学社、2024年発行)
子どもの偏食相談スキルアップ(大山牧子著、診断と治療社、2025年発行)
発達障害児の偏食改善マニュアル(山根希代子監修、藤井葉子著/編集、中央法規出版、2019年発行)

<参考サイト>
自閉症の偏食対応レシピ(広島市西部こども療育センター給食研究部)
発達障害の方の偏食・摂食のご相談(藤井葉子)
発達障害児の偏食改善(藤井葉子)きゅうけん(月刊給食指導研究資料)
・(動画)食べない子ども・偏食への対処法(大山牧子)
・(動画)小児摂食障害(食物アレルギーを持つ子どもの場合を含む)(大山牧子)
 

入学前の説明会や面談で「好き嫌いをなるべくなくしてきてくださいね」と言われると、とても不安になります。

私自身、幼少期は肉が苦手だったので、
学校給食があまり好きではありませんでした。

その頃はまだ「完食主義」があり、
「残さず食べなさい」という指導があったのです。 
私はイヤイヤながらも食べられましたが、
友だちの中には吐いてしまった人もいました。
その人にとってトラウマになりそうです。 

保護者・子ども自身・学校(担任の先生)が対立していがみ合うのではなく、
三者が同じ方向を目指して解決していける雰囲気が作れるとよい結果が期待できます。

大切な我が子のことで保護者は胸を痛めて心配しますが、
担任の先生にとっては数十人の生徒のうちの一人であり、
十分な時間とエネルギーをかけて対応するの困難であることを認識しましょう。

ですから「うちの子は偏食なので、こうしてください」と依頼するのではなく、
「うちの子は偏食があります、
 自宅ではこんな風にしていて、
 少しずつ食べられるようになっています」
という状況報告、提案レベルがうまくいくようです。

まず、保護者ができることや担当する役割を紹介します。


▶ 近年は「完食主義」は減少
・昔あった「居残り給食」で子どもが苦痛を感じることは体罰に相当する、という考え方もある。 
・とくに小学校の給食で「無理に食べさせないこと」が大切にされつつある。
・苦手な食べ物は事前に減らせるようになっている学校が多い。 

▶ 学校の先生に「食べられない理由と対応」を求めるのは難しい
・一人一人の生徒に対して「食べられない理由は何?」と把握するのは困難。
・自分の子どもが食べられない理由を各保護者が担任の先生に伝えて根回しすることが必要。

▶ 担任の先生に伝えること5つ
1.食べられない理由 
2.家庭でしている工夫 
3.本人の気持ち
4.これまでの経験や体験
5.(お願いではなく)お助け情報として
ーなどを伝える 。

▶ 「食べられない理由」を伝える 
・食べないことが“子どものワガママ”と誤認されないように理由をしっかり伝える。
(例)
✓ 少食:元々からだが小さくて、食べられる量が少ない。
✓ 食べる機能(口腔機能)が未発達:咀しゃく・嚥下が難しく、苦手な食材がある。
✓ 感覚過敏:受けつけられない感覚が多い。 

▶ 「家庭でしている工夫」を伝える
・具体的に話し、工夫した結果、少しずつ食が広がっている現状を伝える。
(例)
✓ 苦手なものでも食卓に並べるようにしている。
✓ 間食の食べ過ぎに注意している。
✓ 食べるために、調理を工夫している。
 
▶ 「本人の気持ち」を伝える
(例)
・「食べなさい!」と言われると気持ちが萎縮して食欲がなくなる。

▶ 「これまでの経験・体験」を伝える
(例)
・「食べなくても大丈夫」という雰囲気なら食べられる。

▶ 「依頼」ではなく「お助け情報として」伝える
・“依頼” は担任の先生にとって肩の荷が重くなりがち。
・「こうすると指導の助けになると思い伝えました」というスタンスがベター。
・先生 vs. 家族、という構図になるのではなく、 同じゴールを目指すチームをイメージ。

▶ 食べられるものを持参してよいかを確認する
・食べられるものが少なくて体力面が心配なレベル、
 あるいは先生が不安を持っている場合は、
 子どもが食べられるものを持参してよいかどうかを相談すべし。 

▶ 担任の先生と上手くいかない場合は?
・担任以外の先生(養護教諭、園長、教頭・校長先生など) に相談し、
 間接的に担任の先生に伝えてもらう。
・資料を提供する。 
(例)「食に関する指導の手引きー第二次改訂版ー」(文部科学省)
    第6章第1節第3項「指導上の留意点」


3 指導上の留意点

個別的な相談指導を行うに当たって、次の点に注意が必要です。

① 対象児童生徒の過大な重荷にならないようにすること。

② 対象児童生徒以外からのいじめのきっかけになったりしないように、対象児童生徒の周囲の実態を踏まえた指導を行うこと。

③ 指導者として、高い倫理観とスキルをもって指導を行うこと。

④ 指導上得られた個人情報の保護を徹底すること。

⑤ 指導者側のプライバシーや個人情報の提供についても、十分注意して指導を行うこと。

⑥ 保護者を始め関係者の理解を得て、密に連携を取りながら指導を進めること。

⑦ 成果にとらわれ、対象児童生徒に過度なプレッシャーをかけないこと。

⑧ 確実に行動変容を促すことができるよう計画的に指導すること。

⑨ 安易な計画での指導は、心身の発育に支障をきたす重大な事態になる可能性があることを認識すること。 


次に、子ども自身ができることの提案です。

▶ 友だちから「どうして食べないの?」と聞かれたら
・いろいろ言われるのが嫌だから、みんなと一緒に給食を食べたくない
  → 給食が嫌
  → 給食の時間がつらいから学校へ行きたくない、
 というパターンもある。
・「食べられない理由」を子ども自身が友だちに伝えることができると、
 ほとんどのケースでそれ以上何も言われなくなることが多い。
・言いにくい場合は、家庭で練習する(ロールプレイング)。
 (例)お父さん・お母さんが友だち役になり「どうして食べないの?」と子どもに聞く、
 そして子どもが答える、という練習。返答の例として、
 「給食だと緊張して一杯食べられないんだ、心配してくれてありがとう」
 「上手に噛む練習中で、早く食べられないんだよね」
 「苦手なものが多くて、食べられないんだよね」

▶  “食べられたもの”を給食の献立表に⭕️を付ける
・少しずつ増えていくと励み・自信になる。 


最後に、担任の先生ができることを提案します。
 
▶ 給食で対応できることには限界があることを認識
・偏食改善には「その子に合わせた個別対応」が必要であり、給食では個別対応は難しい。
・個別対応にこだわる前に「楽しい給食時間」の演出を心がける。
 
▶ 給食が食べられない子、の理由を把握する
・機能的なものか、感覚的なものか、知らないから・見慣れていないからなのか・・・
・第四の視点として「精神的に給食が嫌になっている」ことをチェック(⇩)。

▶ 「精神的に給食が嫌」になっているサイン 
食べることに対する不安や緊張感が強いと嚥下ができなくなり、あるいは無意識に空気を吸い込む量が増えるため、以下の行動が観察される。
✓ 口にため込む:ずっとモグモグしている状態。
✓ 水分をよく取る:食べ物を流しこもうとして水分を取る回数が増える。
✓ ゲップやオナラをする:呑気症(空気嚥下症)緊張のため空気を吸い込む・飲み込む量が増える
✓ 口数が減る:緊張のため
✓ 無表情になる:緊張のため
 
▶ 「精神的に給食が嫌」な子どもへの対応
1.子どもの気持ちを認める
2.食べられない理由を聞く
3.どうしたいかを本人に聞いて、一緒に対応する
(例)
「保育園・学校には来たい?」 
「教室ではなく、別室だったら食べられる?」
「給食ではなく、お弁当だったら食べられる?」
「教室で食べないことをクラスメートにどう伝える?」
「自分で伝える?それとも先生が伝える?」
 
▶ 保護者と担任の先生とのすれ違いへの対応
1.なぜ給食への要望が出ているのか、背景を考える 
・完食主義が問題になっていることが多い。
2.園や学校でできることと家庭でできることを分ける
・「ここまでは園・学校でできるが、ここからは家庭でしかできない」線引きを保護者に伝える。



<参考書籍>
食べない子が変わる魔法の言葉(山口健太著、辰巳出版、2020年発行) 
子どもの偏食外来(大山牧子著、診断と治療社、2023年発行)
子どもの偏食Q&A(大山牧子著、中外医学社、2024年発行)
子どもの偏食相談スキルアップ(大山牧子著、診断と治療社、2024年発行)
発達障害児の偏食改善マニュアル(山根希代子監修、藤井葉子著/編集、中央法規出版、2019年発行)

<参考サイト>
きゅうけん(月刊給食指導研究資料)
・(動画)食べない子ども・偏食への対処法(大山牧子)
・(動画)小児摂食障害(食物アレルギーを持つ子どもの場合を含む)(大山牧子)
発達障害の方の偏食・摂食のご相談(藤井葉子)
  

よくある偏食相談例と対応方法を提示します。
ポイントは、
食べられるものから拡げる>食べられないものに慣れる
です。
食べられる食材・料理の特徴(形・味・食感・温感)を捉え、
それに似せるよう苦手な食材の調理方法を工夫し、
少しずつ、少しずつ、進めましょう。
半年〜数年先に達成できればよい、くらいのスタンスで。

それから「食べる以前の生活・環境整備」も大切です。
・十分な睡眠は取れているか?
・便秘はないか?
・食卓の設定(椅子など)は適切か?
・食事環境(気が散るものがたくさんある?)は適切か?
・しつけや強制圧がないか?
等々、心当たりがあれば改善してください。

そして、これは偏食外来の書籍を読んで、
家族が楽しく健康的な食事をするためには、
食卓での親子の役割分担
という視点を持つとよいことを知り、目からうろこが落ちました。
具体的には以下の通り(Satterの「摂食における役割分担」より);

● 保護者の役割は「いつ」「どこで」「なにを」食べるか決めること

(いつ) → 規則正しい食事とおやつを提供する
⭕️ 2歳まで:3食+軽食2回(朝食・午前軽食・昼食・午後軽食・夕食)
⭕️ 2歳以降:3食+軽食1回(朝食・昼食・午後軽食・夕食)
⭕️ 食事間隔を2.5〜3時間開ける
⭕️ 1回の食事時間を15〜30分
❌️ 1日3食
❌️ 食事と食事の間に欲しがったら与える(ダラダラ食べ)
❌️ 1回の食事時間が40分以上

(どこで) → 家族が食べる食卓で一緒に
⭕️ 座位保持から独步まで(6ヶ月〜1歳):ハイチェア
⭕️ 小走りし始めたら(1歳半〜2歳以降):ステップチェア
⭕️ 座卓の場合は豆椅子
 ✓ 1〜2歳:背もたれつき
 ✓ 3歳以降:円座(硬めの正座用クッション)
⭕️ 外出時は親が決めた場所
❌️ 親が食事の途中に離席する
 ✓ 離席した子どもの相手をするため
 ✓ 食卓にないものを取りに何度も立ち上がる
❌️ テレビやビデオ、YouTube、スマホ、タブレットを見せる
❌️ 親が食事中に食卓で授乳する

(なにを)
⭕️ 栄養バランスの取れたメニューを決めて出す
❌️ 何を食べたいか子どもに聞く
❌️ 出すつもりではなかった食べ物を出す
❌️ 食べる順番を決めて守らせる
❌️ 食べ物をごほうびにする

● 子どもの役割は「食べるかどうか」「どのくらい食べるか」を決めること
〜そのためには保護者は子どもを信頼する必要がある、すると・・・
⭕️ 食べる・食べない・食べ残すを決める
⭕️ 好きなものだけ食べる、嫌いなものは食べない
⭕️ その食卓のメニューのおかわりをする
❌️ その食卓のメニュー以外のものを要求する

● 上記の役割分担の境界線を越えると、摂食の問題が発生する
(例)子どもが何をどれだけ食べるかを保護者が決める・コントロールする
(例)子どもに献立を決めさせる

● 上記の役割分担を守ると子どもたちは食べることを楽しいと感じるようになる


では、具体的な相談を例示します。


▶ 離乳食に興味を示さない
● 対応
・発達段階にあった椅子を用意する(歩き始めるまではローチェア)。
・保護者が一緒に食事をしてお手本を示す。
・食べさせない、食べることを強制しない。
・子どもが興味を示したら、その食べ物を自分から食べるよう支援する、手づかみでもOK。
・飽きたら次の食べ物を出す。
・飽きていやがる前に椅子から下ろす。
● ポイント
・「乳児型食思不振症」タイプで、哺乳時期から始まることが多い。
・哺乳歴を聞くと「母乳でもミルクでもチビチビ飲みで、眠いときに意識して飲ませていた」というのが典型例(覚醒レベルの調節不全)。
・このタイプの子どもは、起きている限り動き回り、遊びが大好きで交感神経優位。
・座って食べるという副交感神経優位にする状況を退屈と感じ、遊び食べがなかなか治らない。

▶ 離乳食が思うように進まない、食事中も母乳をせがむ子ども
・生後6ヶ月〜1歳までは成長曲線に沿って健康であれば、
 食べる量が少なくても気にせず、欲しがるままに母乳を与えて良い。
・1歳以降になっても食べる量が少なく、すぐに授乳をせがむ場合の対処法は以下の通り:
● 対応
・空腹過ぎるときは食卓に座らないことが多いので、
 授乳時間と食事時間を調整し、
 授乳から1〜2時間後に食事時間を設定する。
・1歳以降は嘱託で子どもが授乳をせがんでも、
「ママは今、食べているよう」「ママが食べ終わってからね」
 と言って相手にしない。
・1歳以降は「授乳は寝室で」などと決めて、昼間はできるだけその場所に行かないようにする。
・朝起きてすぐ、昼寝前、夜寝る前はたっぷり授乳、また、疲れた時は安心のための授乳を。
● ポイント
・食事量が少ないことを心配して母乳の量を減らしたりやめたりしても、
 食べるようにはならないため、母乳はそのまま続けるべし。
・食卓に座ることがストレスになっていると、子どもは授乳をせがむ傾向がある。
・空腹すぎるとき、眠いとき、体調が悪いときは食卓に座っているのは難しいので、
 無理に食べさせずに寝かせる。

▶ ベビーフードばかり食べる
・ベビーフードばかり食べて、家族の食べるものに興味を示さない。
● 対応
・家族と一緒に食卓を囲み、家族が一緒に楽しそうに美味しそうに食べる様子を見せる。
(もしかしたら食べさせることに注力しすぎて保護者は食べていないかもしれない)
・すると子どもは興味を示して自分から手を出してくるかもしれない。
● ポイント
・ベビーフード自体は悪くない。
・ただ、家族と同じものを食べていないという点で、食が広がりにくいデメリットがある。
 
▶ 牛乳を飲めない(牛乳アレルギーと乳糖不耐症を除く)
● 対応
・好きな感覚を手がかりに少しずつ飲めるよう工夫していく。
・ 牛乳と親和性のある飲み物(お茶、飲むヨーグルト、カルピス、ココアなど)はキーアイテム。
・上記のうち今、子どもが飲めるものに、牛乳を少しだけ追加して飲ませることから始める。飲めたら牛乳を入れる量を少しずつ増やし、徐々に100%の牛乳に近づけていく。急ぐと失敗する。
● ポイント(こちらも参考に)
・ 上記の方法で牛乳をある程度飲めるようになったら、100%牛乳にトライする前に、「牛乳パックから牛乳をコップに注ぐ様子を子どもに見せる」ことが重要。これをやらないと、コップに入った牛乳は飲めるけど、パックから出てきた液体は別のものだから飲めない、という事態になりかねません。

▶「吸い食べ」のクセがある
・決まったものしか食べない、チューチュー吸うような食べ方をする子ども。
・食事の形態が広がりにくい。
● 対応
・スプーンで与えることを嫌がらず、食べ物が口に入った後に唇を閉じて横に引き延ばす動きがあれば、以下のことを試す。
✓ 食事の形態を変えるときは、好みの味のペーストの中にやわらかいつぶがほんの少し混じるようにする。
✓ ペーストで食べていた量より少な目のひとくち量を、スプーンの先端で下唇にのせるように置く。
✓ 「〇〇のつぶつぶさんだよ、モグモグね」などと言いながら、子どもの表情を見る。
✓ 子どもが嫌がらず上顎と舌でモグモグし始めたら大丈夫、少しずつ粒の量を増やしていく。
・スプーンで与えられることを嫌がり、かつ走れるようになっても吸い食べをするようなら、好きなフレーバーの下腿ものを噛む練習を保護者が一緒にしながら、前歯で噛んで歯ぐきに持っていく遊びを提案する。
● ポイント
・スプーンで粒のあるものを与え始めた頃に舌を左右に動かして食べ物を左右の歯ぐきに持っていって噛むことを学んでいない可能性がある。
・椅子とテーブルのセッティングが適切でないことがある。
・いろいろ試しても改善がないなら、口腔機能を評価できる歯科医の受診を提案する。

▶ 野菜嫌い
・就学前〜小学校低学年までは「野菜は体にいいから食べなさい」を理解して食べることは難しい。
・食物線維が取れないことを心配している保護者には、キノコ類、海藻(ワカメ、海苔)などを提案する。
・「苦手な野菜を食べさせる」から「野菜と友だちになる」という発想への転換が必要。
● 対応
・親子の役割分担を再確認する。
✓ 食べる・食べないは子どもが決める → 食卓で強制することをやめる。 
✓ 食卓で大人が美味しそうに食べる要する見せる。

 ▶ 野菜嫌い&フライドポテトが好き
〜毎日の食事が数種類に固定化され、肉・魚・野菜類をほとんど食べない幼児

● 対応
・まず保護者が楽しく食事し、それを子どもに見せること。
・ファストフードのフライドポテトが食べられることに注目し、そこから食を拡げていく。
・食べられない食材の「ささみ」「ほうれん草」をフライドポテト の形状・味に近づけて調理。それぞれ細長い形に切って小麦粉をつけて揚げ、濃いめの塩味に仕立てる。
・空腹は最高の調味料・・・ 間食を減らしてお腹を空かせたり、好きなものを出し過ぎないよう食事全体の量の調整を並行して行う。
・食べてくれたら、以下のことを少しずつ進めて食を拡げる;
 ✓ 形を大きくしていく:千切り → 細切り → 短冊切り →  → 一口大
 ✓ 衣の量を減らしていく:最初は多め → 次第に素揚げに近い形へ
 ✓ 塩味を薄くしていく:少しずつ気づかない程度に
・揚げたものをある程度食べられるようになったら他の調理法にも挑戦;
 ✓ カリカリ感を減らしていく:揚げたもの → しっかりと硬く焼いたもの
  → 柔らかな食感に焼いたもの → 煮物
・食べられるものが増えてきたら、見た目・形状もアレンジしていく。
・食材に慣れてきたら、「調理を工夫したもの」と「同じ食材を少量、ふつうに料理したもの」を並べて「同じ食べ物なんだよ」を伝える。
 ● ポイント(こちらも参考に)
・子どもに人気の「フライドポテト」・・・小麦粉をつけて揚げる調理法は比較的子どもが口にしやすい。カリカリした食感が好きな子どもの場合、厚切りより千切りの方がお勧め。 
・食を拡げていく際に、見た目・形状はできるだけ変化させないことがコツ。
 
▶ 手作りのものを食べない(スーパーの惣菜、特定のメーカー・お店の食品は食べる)
● 対応
・手作りコロッケは食べないけど、スーパーの惣菜コロッケは食べられる子の場合、食感の違いがあるなら、惣菜の食感に似せる工夫をする。味の濃さ、温度、油っぽさ・・・を意識して調理する。
・食べられたら徐々に受け入れられる間隔を広げていく。濃い味 → 少しずつ薄味へ。
● ポイント(こちらも参考に)
・大人にとっては同じ食品・料理でも、子どもにとっては「見た目・味・食感・風味」から別物に見えていることがある。特に感覚が過敏な子は、本当に小さな違いも察知する。
・スーパーの惣菜やインスタント食品は、家庭料理より塩味が強く、味が常に一定という特徴がある。子どもは安心して口にすることができる。
・感覚過敏系の子どもには、今の感覚に合うものを提供しながら、少しずつグラデーション状に 食べられるものを拡げていく。
・ 子どもの偏食改善には、
①「見た目」
②「味や食感」
の2つを両立するのが大切で、
「口すらつけてくれない」 → ① がクリアできていない、
「ひとくち食べても、ふたくち目は食べてくれない」 → ① はクリア、② がクリアできていない
と考えて対応する。

▶ ふりかけ類がないとお米が食べられない
● 対応
・ ご飯にかけるふりかけ類の量を大人が調整し、半年〜年単位で少しずつ減らしていく。
・すると少しずつふりかけ以外のおかずに手を伸ばすことが増えるはず。

▶ 鮭フレークは食べられても焼き魚の鮭の切り身は食べられない
● 対応
・少なめの① 鮭フレークと② 焼き鮭の切り身をフレーク状にほぐしたものを用意する。
・① を食べた子どもが「もっと欲しい!」と言い出したときに ② を与えると、口をつける可能性がある。
・② が食べられるようになったら、子どもの目の前で「焼き鮭の切り身をほぐす様子」を見せ、「これとこれが一緒なら切り身も食べられるかもしれない」ことを覚えてもらう。これを繰り返す。

▶ 調理方法が変わると食べられない
● 対応
・調理方法が変わると、それらを同じ食材だと認識できない子どもは少なくない。
(例)フライドポテトとジャガイモは同じもの?
・形が変わる様子や、容器へうつす様子を繰り返し見せて「同じもの」という事実を子どもにインプットする作業が必要。
・いつも食べているものと「同じ」ということがわかれば、それが「安心」につながり、
次第に違う料理法のものでも口をつけられるようになっていく。

<参考>
・「はじめてのずかん たべもの」(高橋書店、2022年発行) 


▶ 苦手なものを食卓に出すと怒る
● 対応1:感覚過敏系
・基本的には(食べなくても)苦手なものも食卓に並べた方が食が広がりやすい。
・しかし程度が強いときは、子どもに感覚過敏(ニオイに敏感、など)があるかもしれない。そのような例では「安心できて楽しい食卓」を優先して並べるのを控える。
・対策としては、子どもの好きなものに似ていて、かつ、ニオイの薄いもの・弱いものから食卓に並べていくことも選択枝。
● 対応2:完食圧系
・「食卓に並んでいるものは食べなければいけない」と叱られた経験や、苦手なものを毎食「ひとくち食べてみたら?」と言われた経験がある、つまり嫌な記憶があると拒否することがある。 

 苦手なものは食べたくない
  ⇩
 食卓に並んでいるものは食べなくてはいけない
  ⇩
 最初から並べないで欲しい
  ⇩
 拒否!

・子どもから離れた場所に苦手な食べ物を置き、食べることを勧めない。
・食卓に並んでいても無理に食べされられないことがわかるとだんだん怒らなくなっていく。

▶ 食材が混ざると食べられない
(例1)焼きそばは食べられないけど、麺・人参・モヤシを単独で焼いたものなら食べられる
(例2)牛丼は食べられないけど、白いご飯と牛肉の煮込みなら食べられる
● 対応 
・感覚の問題が多い。 
① 視覚:混ざっている状態が(子ども本人には)グロテスクに見えたり、まずそうに見えたり、食材がなんなのかよくわからず手をつけにくかったり。
② 食感や味覚:牛丼の汁でご飯が軟らかく湿った状態が気持ち悪く感じたり。
・好きな感覚からはじめて拡げていく・・・混ざったものを分ける。
・分けた状態で、好きなものは食べるけど、苦手なものを食べないときは、
「苦手なもの“ひとかけら”を好きなものと一緒に食べてみることを提案し、
 もし食べられたら「〇〇(苦手なもの)を食べられたね」と認める言葉をかける。
 
▶ お弁当に何を入れたらいいのか(苦手なものを入れるべきか)わからない
● 対応
・お弁当では食を拡げるよりも、子どもがお弁当を楽しめることを優先すべし。
・お弁当の中身は「好きなもの多めの法則(⇩)」を守らなくてよい、
好きなもの:ふつう(食べたことがある):嫌い(苦手・はじめて)=3:5:2
 “好きなもの多め”、“チャレンジメニューは少な目”でいこう。
・お弁当はできたてで食べられないので、味・食感・温感・においを再現できないため、感覚が敏感の子には難しい。
・もし苦手メニューも少し入れたいときは、メインの弁当箱と別の小さな箱に入れて持たせるとよい。
・お弁当箱の中で、おかず同士が混ざらないよう注意して詰め、さらに汁漏れがないよう工夫することが大切。一つのお弁当箱ではなく、小さいタッパーにおかずを分けて持たせるのもよい。
・園や学校の先生に根回しをしておく;
✓「おかずが残っていても、無理に食べさせようとしなくて大丈夫です」
✓「家ではひとくち食べてみたら?ではなくペロッとなめてみたら?というと口をつけることが多いので、そのように声かけしていただけると助かります」

▶ 食べられるものが少なく、栄養面が心配
● 対応 
・偏食の子どもは炭水化物を好んで食べることが多く、他の栄養素(とくにミネラル、ビタミン)を補うことを考える。
・栄養補助食品やサプリを使用してもよいが、それに頼りすぎないようにする。特定の栄養素だけ摂取できるものより、いろいろなビタミン・ミネラル類が入ったのものがベター。
(例)ゼリーやプロテインばかり飲み続け、噛むものを食べなくなった。
(例)ある栄養素だけを強化したものを毎日摂取すると、その栄養素の過剰摂取になり好ましくない。
・子どもの栄養素が心配なら「食事管理アプリ」を利用する方法もある。中には食事の写真をスマホde撮影するだけでAIが解析してくれるタイプもある。
● ポイント;
・子どもに与える栄養素の優先順位は、
① 炭水化物・脂質・一部のタンパク質:筋肉・骨・血液・内臓などを作り、体の熱やエネルギーになるもの 
② タンパク質・ミネラル(カルシウムなど):筋肉や神経の伝達に関わり、骨や歯を作るもの
③ ミネラル・ビタミン:体の調子を整えるもの

▶ なかなか「卒乳」できない
・卒乳の前提は「成長に十分な栄養を固形食から取れていること」。
・卒乳すれば栄養状態が改善するわけではない。食べる技能・スキルを獲得していないと、母乳をやめても食べるようにはならない。 
● 対応
・食べる技能・スキルを獲得するためのヒント;
✓ 子どもと大人の仕事を分けて考える:「食べる・食べない・食べる量」は子どもが決める、大人は「いつ、何を、どこで出すか」だけを決める。
✓ 3食と哺乳をセットにしない。哺乳・授乳は食卓以外の場所(寝室など)で行う。
● ポイント
・全体の摂取カロリーに占める、乳汁からの栄養は、1歳で約半分、2歳で約1/4。

▶ 3歳でバナナしか食べない
・栄養評価と発達の問題の有無の確認目的で小児科受診が必要。
● 対応
・発達段階は年齢相当か。
・家庭で食卓での様子を動画撮影してもらう。
✓ 食べることを強制していないか( → ほぼ全例で強制の要素が見られる)
✓ 摂食機能の確認
✓ 本人の表情(他人が食べているものに興味を持っているか)
・一切の強制をやめる。
・子どもが食卓に楽しく座ることから始める。
・食卓での親子の役割分担を徹底する。
・子どもが食べられるもの、自分から喜んで食べるものから、
 わずかに色・におい・形を変えたものに移行していく(顕微鏡的変化)

▶ 5歳になっても決まったものしか食べない
● 対応
・まずは状態把握を
 ✓ 認知機能・発達は年齢相当か
 ✓ 摂食スキルが年齢相当か
・食べられるもので一番固いものは何か、そこから摂食スキルが未熟かどうかがわかる
(例)唐揚げはそのままかじる、ピザやフランスパンはかじる → 年齢相当
(例)肉はひき肉料理だけ → 1歳過ぎ相当の摂食スキル
● 対策
・子ども自身が納得して、自分から取り組めるような対応を心がける。
・この年齢では「食べなくても食卓に出しましょう」は意味がない。食卓の雰囲気が悪くなるだけ。
・摂食スキルが未熟な場合、好きな味のもので少しずつ硬さのあるものを家族でゲーム的にチャレンジする。
・今食べているもので、好きな色や食感・ニオイがほんの少し違う食品を試す。
・食べられるものが限られる場合、食べ物に顕微鏡的変化(本人が気づかない程度の変化:メーカー、買う店、形など)をつけて食べ飽きないようにしていく。
・身長体重が成長曲線に沿っていても、微量元素欠乏のリスクがあるため小児科でスクリーニング検査を。
● ポイント:
・年齢相当の発達を理解する。
・3〜4歳以降の子どもは食べない理由を言葉で表現し始める。
 → 食卓で親子バトルが発生する。
・質問しない、できそうにない目標を作らないことがポイント。
・人は圧・報酬より、自分の興味・関心に基づいて行動する。
・保護者は子どもの応援団!
・食卓における親子の役割分担を守る。



<参考書籍>
食べない子が変わる魔法の言葉(山口健太著、辰巳出版、2020年発行) 
子どもの偏食外来(大山牧子著、診断と治療社、2023年発行)
子どもの偏食Q&A(大山牧子著、中外医学社、2024年発行)
子どもの偏食相談スキルアップ(大山牧子著、診断と治療社、2025年発行)
発達障害児の偏食改善マニュアル(山根希代子監修、藤井葉子著/編集、中央法規出版、2019年発行)

<参考サイト>
きゅうけん(月刊給食指導研究資料)
・(動画)食べない子ども・偏食への対処法(大山牧子)
・(動画)小児摂食障害(食物アレルギーを持つ子どもの場合を含む)(大山牧子)
発達障害の方の偏食・摂食のご相談(藤井葉子)
  

よかれと思ってやったことが逆効果、なNG集。
NGが存在するということは、“正しい食生活”が存在するということ。

では“正しい食生活”って何?

・・・偏食外来の書籍に答えが書いてありました。
子どもが楽しく食事するために必要なことは、
・適切な生活リズム
・適切な食事環境
・適切な保護者のスタンス
・適切な親子の役割分担
などが揃って初めて実現できることなんですね。

****************************

食べる以前の生活・環境整備」が大切です。

・生活リズムを整える
 ✓ 十分な睡眠は取れているか?
 ✓ 便秘はないか?
・食卓の設定(椅子など)は適切か?
・食事環境は適切か?
 ✓ 気が散るものがたくさんある?
・食卓でのしつけや強制圧がないか?
 → ストレス下、交感神経緊張状態では食欲が低下する

また、家族が楽しく健康的な食事をするためには、
食卓での親子の役割分担」が大切です。

● 保護者の役割は「いつ」「どこで」「なにを」食べるか決めること

(いつ) → 規則正しい食事とおやつを提供する
⭕️ 2歳まで:3食+軽食2回(朝食・午前軽食・昼食・午後軽食・夕食)
⭕️ 2歳以降:3食+軽食1回(朝食・昼食・午後軽食・夕食)
⭕️ 食事間隔を2.5〜3時間開ける
⭕️ 1回の食事時間を15〜30分
❌️ 1日3食
❌️ 食事と食事の間に欲しがったら与える(ダラダラ食べ)
❌️ 1回の食事時間が40分以上

(どこで) → 家族が食べる食卓で一緒に
⭕️ 座位保持から独步まで(6ヶ月〜1歳):ハイチェア
⭕️ 小走りし始めたら(1歳半〜2歳以降):ステップチェア
⭕️ 座卓の場合は豆椅子
 ✓ 1〜2歳:背もたれつき
 ✓ 3歳以降:円座(硬めの正座用クッション)
⭕️ 外出時は親が決めた場所
❌️ 親が食事の途中に離席する
 ✓ 離席した子どもの相手をするため
 ✓ 食卓にないものを取りに何度も立ち上がる
❌️ テレビやビデオ、YouTube、スマホ、タブレットを見せる
❌️ 親が食事中に食卓で授乳する

(なにを)
⭕️ 栄養バランスの取れたメニューを決めて出す
❌️ 何を食べたいか子どもに聞く
❌️ 出すつもりではなかった食べ物を出す
❌️ 食べる順番を決めて守らせる
❌️ 食べ物をごほうびにする

● 子どもの役割は「食べるかどうか」「どのくらい食べるか」を決めること
〜そのためには保護者は子どもを信頼する必要がある、すると・・・
⭕️ 食べる・食べない・食べ残すを決める
⭕️ 好きなものだけ食べる、嫌いなものは食べない
⭕️ その食卓のメニューのおかわりをする
❌️ その食卓のメニュー以外のものを要求する

● 上記の役割分担の境界線を越えると、摂食の問題が発生する
(例)子どもが何をどれだけ食べるかを保護者が決める・コントロールする
(例)子どもに献立を決めさせる
● 上記の役割分担を守ると子どもたちは食べることを楽しいと感じるようになる


*****************************

対応に悩んだら、どうすべきか迷ったら、
上記の基本に立ち戻って組み立てるとよさそうです。


▶ 「子ども主体」はNG
・子どもの要求通りに食事を用意することを続ける(奴隷化)と、保護者は疲れていく。
・最終的に食べる・食べないは子どもが決めること、しかし食事のメニュー決めなどの主導権は保護者が握るべきである。 
・食べられるものだけを食卓に並べ続けると、子どもの食は広がらない。
・子どもが食べられないものでも、同じ食卓で保護者が好きなものを美味しそうに食べているのを見ていると、子どもはその食べ物に興味を持ち前向きになれる。

▶ 「食べてみたら?」という圧はNG
・毎食のように苦手な食べ物を「食べてみたら?」と誘うと子どもは疲れてくる。
・「言われて食べる」より「自分から食べる」ことを目標にすべし。

▶ 連日同じものを出すのはNG
・「工夫をしたら苦手なものを食べてくれた!」とうれしくても、それを連日出すのはNG。
・同じメニューが何日も続くと、さすがに食べる意欲は落ちてくる。
・同じものを出す場合、最短でも3日、できれば1週間くらいはあけるべし。
・飽きてしまって食べなくなったものでも、1か月くらいあけると秋が解消されてまた食べるようになる。

▶ 子どもの口に食べ物を運ぶことはNG
・保護者はスプーンで「はい、ア〜ン」と食べ物を子どもの口元に運びがち。
・よかれと思ってやる対応だが、すでに自分で食べられる年齢の子であれば、この対応はお勧めできない。
・これが集感づくと保育園など家庭以外の場面でも自分から食べなくなることがある。
・「口の近くにあるから食べる」ではなく「自分でどんな物か認識した上で食べる」方が食が広がりやすい。

▶ 後出し(食べなかったら好きなものが出てくる)はNG
・食卓に出したものを食べなかったら、別の食べ物を出しても良いか?
・「何を出すか決めるのは保護者の役割」だから「これは嫌だからアレが食べたい」はNG。
・もし子どもの言いなりになり出してしまうと、子どもは「ごねれば自分の好きなものが出てくる」ことを学習する。
・これを繰り返すと、ばっかり食べ → 食べ飽きる → 品が図がさらに減る → 栄養失調、につながる



<参考書籍>
食べない子が変わる魔法の言葉(山口健太著、辰巳出版、2020年発行) 
子どもの偏食外来(大山牧子著、診断と治療社、2023年発行)
子どもの偏食Q&A(大山牧子著、中外医学社、2024年発行)
子どもの偏食相談スキルアップ(大山牧子著、診断と治療社、2024年発行)
発達障害児の偏食改善マニュアル(山根希代子監修、藤井葉子著/編集、中央法規出版、2019年発行)

<参考サイト>
きゅうけん(月刊給食指導研究資料)
・(動画)食べない子ども・偏食への対処法(大山牧子)
・(動画)小児摂食障害(食物アレルギーを持つ子どもの場合を含む)(大山牧子)
発達障害の方の偏食・摂食のご相談(藤井葉子)
 

子どもの偏食、「食べないのには理由があります」の解説編です。

▢ 食べない理由4つ
1.食べる機能の問題:噛む・飲み込む動作の発達には個人差がある
2.時間と量の問題:食事の時間設定、食卓に並べる量が適切かどうか
3.感覚の問題:こだわりが強いと偏食につながる
4.知らない(未知)という問題:はじめての食品・食材・料理は“知らないから恐い”と拒否るかも

の中の「4」を説明します。 

【知らないという問題】
 
・子どもが初めての食材を食べるまでには次の5つのステップがあり、いずれのステップも省略することができない。
 ① 知らない
 ② 知る
 ③ 興味を持つ
 ④ 触れる
 ⑤ 食べる
・手の込んだ料理、珍しい料理を子どもが食べたがらない理由も「はじめてだから不安、知らないから心配」という気持ちが原因で、お母さんが新しいレシピに挑戦しても苦労が報われない。 
・大人でも海外旅行へ行って見たことのない料理が出てくると警戒するはず、子どもは日々それと同じ気持ちを経験していることを イメージすべし。
 
【知らない問題への具体的対応】

▶ 「興味を持つ」きっかけ作り
・一緒に買い物をして料理に使う食材を見て触って選んでもらい、購入する
・一緒に料理をして新たな食材(苦手な食材)に触れる
・食べ物の話を親子でしてみる(どんな栄養があるか、どんな食べ物か、など)
・食べなかったとしても、食卓に並べてみせる
※ 「はじめての食材」だけでなく「一度食べられたけど苦手になっている食材」にも役立つ方法。

▶ 食の広がりには時間がかかり、波があることを知っておく
・適切な対応をしていたとしても、苦手な食材を食べられるようになるまでに半年〜数年かかる場合もある。
・食べられたり食べられなかったり・・・食の広がりには波があるので粘り強く。 



<参考書籍>
食べない子が変わる魔法の言葉(山口健太著、辰巳出版、2020年発行) 
子どもの偏食外来(大山牧子著、診断と治療社、2023年発行)
子どもの偏食Q&A(大山牧子著、中外医学社、2024年発行)
子どもの偏食相談スキルアップ(大山牧子著、診断と治療社、2024年発行)
発達障害児の偏食改善マニュアル(山根希代子監修、藤井葉子著/編集、中央法規出版、2019年発行)

<参考サイト>
きゅうけん(月刊給食指導研究資料)
・(動画)食べない子ども・偏食への対処法(大山牧子)
・(動画)小児摂食障害(食物アレルギーを持つ子どもの場合を含む)(大山牧子)
発達障害の方の偏食・摂食のご相談(藤井葉子)
 

子どもの偏食、「食べないのには理由があります」の解説編です。

▢ 食べない理由4つ
1.食べる機能の問題:噛む・飲み込む動作の発達には個人差がある
2.時間と量の問題:食事の時間設定、食卓に並べる量が適切かどうか
3.感覚の問題:こだわりが強いと偏食につながる
4.知らないという問題:はじめての食品・食材・料理は“知らないから恐い”と拒否るかも

の中の「3」を説明します。

【感覚の問題】
・極端に食べられるものが少なかったり、本当に“これしか食べない”とか、食へのこだわりが強くある場合は感覚の問題が大きいことが多い。
・感覚の問題の例;
 ✓ 味を強く感じる
 ✓ 味を薄く感じる
 ✓ 衣が口の中で刺さる感じがして痛い
 ✓ もっちりした食感が気持ち悪い
 ✓ 料理の見た目がグロテスクに見える
 ✓ 少しの音が気になって集中して食べられない
 ✓ 哺乳瓶、スプーンなど、食器類の触った感じが気持ち悪い
 ✓ 口周りを触られると強い嫌悪感がある
 ✓ 内臓の感覚が鈍麻で空腹を感じない
・感覚の問題は神経発達症の一つである自閉症スペクトラム(ASD)傾向のある子に多く見られ、偏食につながることがある。
・たとえ神経発達症と診断されていなくても、感覚の鋭さには個人差があるので偏食になる可能性は誰にでもある。
・偏食で悩む子は、受け入れられる感覚が他の子と比べて狭い傾向にある。  
感覚の問題による偏食対策のポイントは「好きな感覚」から拡げること。しかし多くの人がやりがちなのがその反対で「苦手な感覚」に慣れさせようとすること(「ひとくち食べてみる?」など)。 

▶ 感覚特性の経過(改善が期待できるもの)
● 色
・1〜2歳は、乳汁に近い白・薄黄色・薄茶色の食べ物に親しみを感じやすい。
・色からいろいろな食感、食べ物の幅が広がる可能性がある。
(例)白いご飯、豆腐
● 形
・丸いもの、小さいものの方が友だちになりやすい。


【感覚の問題への具体的対応】参考サイト

▶ 好きな感覚から拡げる
・・・がんばって苦手な感覚になれさせようとすると、嫌な記憶を重ねるだけで、偏食の改善にはつながらない。
1)今、食べられるものを把握する
2)5つの視点で「好きな感覚」を見つける
3)好きな感覚を軸に調理の工夫をする

1)今、食べられるものを把握する
・食べられるものを分類項目別(※)にリストアップする
※ ご飯類、麺類、パン類、魚類、肉類、卵類、野菜類、イモ類、その他・・・
・食材だけでなく、どんな調理法なら食べられるかも記載する
・苦手な食材や苦手な調理法などもリストアップする

2)5つの視点で「好きな感覚」を見つける
・・・以下の子どもが好きな感覚は?
ア)どんな形?
イ)どんな色?
ウ)どんな調理方法?
エ)どんな温感?
オ)どんな食感?

(例)好きな(よく食べる)感覚
 ア)薄切り、千切り
 イ)白色、黄色、茶色
 ウ)揚げたもの
 エ)温かいもの
 オ)カリッ、サクッとした食感

(例)嫌いな(食べられない)感覚
 ア)厚切り
 イ)赤、緑
 ウ)煮たもの
 エ)冷たいもの
 オ)もちっとしたもの、ぐにゃっとしたもの

▶ 好きな感覚を軸に調理の工夫をする
好きな感覚 → 苦手な感覚に少しずつ近づけるイメージで。
・1〜2週間で改善するのは無理、半年〜2年をかけて焦らずゆっくりと食べるものを増やしていく。
・濃いめの塩味(ファストフード店のフライドポテトのような)が食べはじめるキッカケになることも多い。その後、大人が塩分量をコントロールして時間をかけて味を薄くしていけば問題ない。

(例)フライドポテトが好きな子どもに、苦手なほうれん草を食べさせたい
 a)フライドポテトみたいに細長く切って揚げたほうれん草
 ⇩
 b)細切りにし、好きな調味料で味付けして炒めたほうれん草
 ⇩
 c)ほうれん草の炒め物の料理
 ⇩
 d)煮たほうれん草

▶ 感覚過敏・こだわり特性のある子どもへの支援
・発達段階は年齢相当か、影響状態の評価を(医療機関受診)。
・家庭で食卓での様子を動画撮影してもらう。
✓ 食べることを強制していないか( → ほぼ全例で強制の要素が見られる)
✓ 摂食機能の確認
✓ 本人の表情(他人が食べているものに興味を持っているか)
・一切の強制をやめる。
・子どもが食卓に楽しく座ることから始める。
・食卓での親子の役割分担を徹底する。
・子どもが食べられるもの、自分から喜んで食べるものから、
 わずかに色・におい・形を変えたものに移行していく(顕微鏡的変化)

▶ 感覚過敏・こだわり特性のある子どもへの対応の実践
・「さあ、お椅子タイムだよ、座ろう」と声をかける。
 ✓ 食卓では他の場面より認知・情緒が幼くなる傾向がある。
 ✓ 本人が安心安全に感じる食卓を心がける。
・「座ったね」と笑顔を見せる。
 ✓ 子どもに食べるよう促さない。
・保護者が機嫌良く自分の食事を楽しむ。
 ✓ 強制のない環境でリラックスして座れると、
  家族が楽しく食事をしている様子を見るチャンスが生まれる。
・食べられるものは一品を少量ずつ出す。
 ✓ その子なりのステップでモンスターであった食べ物がお友達になっていく。


 
<参考書籍>
食べない子が変わる魔法の言葉(山口健太著、辰巳出版、2020年発行) 
子どもの偏食外来(大山牧子著、診断と治療社、2023年発行)
子どもの偏食Q&A(大山牧子著、中外医学社、2024年発行)
子どもの偏食相談スキルアップ(大山牧子著、診断と治療社、2024年発行)
発達障害児の偏食改善マニュアル(山根希代子監修、藤井葉子著/編集、中央法規出版、2019年発行)

<参考サイト>
きゅうけん(月刊給食指導研究資料)
・(動画)食べない子ども・偏食への対処法(大山牧子)
・(動画)小児摂食障害(食物アレルギーを持つ子どもの場合を含む)(大山牧子)
発達障害の方の偏食・摂食のご相談(藤井葉子)
 

子どもの偏食「食べないのには理由があります」の解説編です。

▢ 食べない理由4つ
1.食べる機能の問題:噛む・飲み込む動作の発達には個人差がある
2.時間と量の問題:食事の時間設定、食卓に並べる量が適切かどうか
3.感覚の問題:こだわりが強いと偏食につながる
4.知らないという問題:はじめての食品・食材・料理は“知らないから恐い”と拒否るかも

の中の「2」を説明します。 


▢ 時間の問題
・「いつでも食べられる」のはよい習慣とは言えない。
・「いつでも好きなときに食べられる」という環境にいる子どもは「朝・昼・晩ご飯」に食事をしっかり食べなくなる。
・食べる時間と食べない時間を明確に設定すべし。
 
▢ 量の問題
・偏食改善のポイントは “引き算”。「好きなもの」でお腹が満たされている子どもは「それ以外のものを食べる理由」がない。
・今食べられるものの提供量を減らした上で、食べてほしいものを与えなければいけない。 


【具体的な対応方法】

▢ 時間の問題

▶ 「食べる時間」と「食べない時間」を明確に区別する
・食べたい気持ちを引き出すには「時間設定」が効果的。
・「いつでも食べられる状況」「今食べなくても、あとでいくらでも食べられる状況」では食事の時間に食べる必要がなくなる。
・園や学校では給食・おやつの時間が決まっていて、それ以外の時間には食べられないから子どもは食べる。
・家庭でも食事の時間を明確に決める。「一定の時間」より「明確であること」が重要

▶ 「食べ終わる時間」もはっきり決める
・保護者の悩みの一つに「ダラダラ食べる子どもにつき合うのが苦痛」がある。
食事時間を30分に設定すべし。終わりの時間が明確であると、子どももそれを意識する。
・子どもが食べきっていないのに食事を切り上げることに抵抗がある方は、子どもに「まだたべたいか?」と聞いて確認すべし。「まだ食べたい」と言う場合は10分追加するのはOK、しかし延長は1回だけ
・時間を延ばしてまで何とか食べさせようとしてもよいことはない。時間をかけて食べることが習慣になってしまうだけ。
・毎回食べるのに極端に時間がかかる場合は食べる機能に問題がある可能性がある。チェックリストを利用して確認すべし。

▶ お菓子やジュースをいつでも好きなだけ食べられるという習慣はやめる
・子ども時代は大人が間食・おやつをしっかりコントロールすべし。
・まず「おやつの時間」を決める。
 → 時間が明確であることがおやつの欲求を抑えることにつながっている。
・お菓子の“袋出し”は避け、お皿に出すことで食べ過ぎを避けられる。
・お菓子は子どもの手に届かない場所に保管する、必要以上に買い置きをしない。
・子どもがある程度大きくなったら「お菓子の食べ過ぎが体の成長にはよくない」ことを伝える。
・おやつ以外の方法で「楽しい」と感じる時間を増やす。

▢ 量の問題
 
▶ 偏食の“悪循環”を知る
・好きなもの(大抵甘いもの)はお腹がいっぱいでも食べられてしまう(デザートは別腹?)が、それ以外は、ある程度お腹が空いていないと食べたくならない。
・子どもが食べてくれないと保護者はつい子どもの要求をかなえて“好きなもの”を与えがち。
・好きなものでお腹がいっぱいなら、それ以外のものは食べない。
・「ごねれば好きなものが食べられる」ことを学習すると偏食が固定化していく。

▶ 偏食の悪循環を「好きな食べ物の量を減らす」で断ち切る
・食べられるものを増やすためには「好きなものを減らす」ことが必要。
・偏食児は炭水化物類(ご飯、パン、イモなど)や高カロリーのもの(お菓子、ジュースなど)を好む傾向にあり、このような食品を食べると脳では報酬系のホルモン(ドーパミンやセロトニン)が生まれて満足感が得られるため、他のものを食べる気持ちが起きにくくなる。

▶ “減らすと心配”な保護者のためのチェックリスト
・・・仮に少食だとしても、以下の項目に一つも該当しなければ大丈夫。
✓ 成長曲線(母子手帳にあります)をプロットすると、ここ数ヵ月間の身長と体重の伸びが極端に悪い。
✓ 成長曲線の平均値と比べて、身長に比べて体重の値が極端に低い。
✓ 食べ物をのどに詰まらせたり、吐いてしまったりしたことで、一時的に食べることが恐い状態になってしまっている。

▶ 「お腹がすく」とは?
・消費エネルギーが摂取エネルギーを上回り続け、体内のエネルギー貯金が減れば、お腹が空く。
・お腹が空いているタイミングで苦手なものを食べると“おいしい”と認識が改まることがあり、偏食が改善することがある。
・食べない子どもは空腹や満腹という臓器感覚が鈍いという意見もある。 

▶ 食卓に着いた子どもの頭の中の“食べる順番”を覗いてみると・・・
① 好きなものから食べる
 ⇩ まだ満足しない
② 「これなら食べられそう」と感じるものを食べる
 ⇩ まだ満足しない
③ それ以外(嫌い・はじめて・食べ馴染みがない)気になるものに触れる
 ⇩
④ 気になるものを口に入れる
 ⇩ それで満足すると
⑤ 触っても口をつけず、遊んだり、立ち歩いたりする(※)
 
※ 幼児期くらいまでは食べることと遊ぶことはあまり区別していないと言われている。

▶ “食べる順番”を想定した偏食対策の食卓
・好きでないものを食べるタイミングは上記の②以降であり、①で満足してしまうと進まない。
・まず “好きなもの” の量を減らして「好きなものは食卓にあるけど多すぎない」ようにする。
・子どもの食卓に並べるものは、
好きなもの:ふつう(食べたことがある):嫌い(苦手・はじめて)=3:5:2
ーくらいをイメージ。
・「どうせ食卓に並べても食べないだろう・・・」と好きなものだけ出すと、食べる以前の「触れる」機会すらなくなるので、食べなくても並べた方がよい。




<参考書籍>
食べない子が変わる魔法の言葉(山口健太著、辰巳出版、2020年発行) 
子どもの偏食外来(大山牧子著、診断と治療社、2023年発行)
子どもの偏食Q&A(大山牧子著、中外医学社、2024年発行)
子どもの偏食相談スキルアップ(大山牧子著、診断と治療社、2025年発行)
発達障害児の偏食改善マニュアル(山根希代子監修、藤井葉子著/編集、中央法規出版、2019年発行)

<参考サイト>
きゅうけん(月刊給食指導研究資料)
・(動画)食べない子ども・偏食への対処法(大山牧子)
・(動画)小児摂食障害(食物アレルギーを持つ子どもの場合を含む)(大山牧子)
発達障害の方の偏食・摂食のご相談(藤井葉子) 

子どもの偏食「食べないのには理由があります」の解説編です。
総論で出てきた食べない理由4つを再度提示します;

▢ 食べない理由4つ
1.食べる機能の問題:噛む・飲み込む動作の発達には個人差がある
2.時間と量の問題:食事の時間設定、食卓に並べる量が適切かどうか
3.感覚の問題:こだわりが強いと偏食につながる
4.知らないという問題:はじめての食品・食材・料理は“知らないから恐い”と拒否るかも

のうちの「1」を説明します。
食べる機能は成長過程で獲得していくスキルで個人差があります。
子どもが「〇〇を食べられない」場合、
それが今の子どもの食べる機能の発達段階に合っているかチェックしましょう。

合っていないと吐き出してしまうこともあります。
吐くことは当たり前」と考えて対応しましょう。

「まだ〇〇は早かった」と判断できたら、
子どもの発達段階に合う食事を用意しましょう。
 
 
【食べる機能の問題】
・「食べる機能」とは「歯や歯周囲の組織、舌、くちびるなどの口腔の機能」のこと(口腔機能とも呼ぶ)。
・咀嚼(かむこと)や嚥下(飲み込むこと)に関わる食べる機能に問題があり、食べ物を上手く噛めなかったり、上手く飲み込めなかったりすると、食べられないものがある。
・子どもの「今現在の食べる機能」で食べられないものを無理に食べさせると、子どもはその食べ物を上手く処理できず、口から外に食べ物を吐き出してしまう。
・吐き出すと大人に叱られる → 「食べられないと、吐き出すとまた叱られる」と思うと、食べ物を口に入れること自体に消極的になってしまう。
・「姿勢」も大切で、椅子やテーブルが体に合わないと姿勢が安定せず、食が進まない。

▶ 食べる機能のチェックポイント:唇の動きに注目!
(Step1)唇を閉じることができる
 → 「ゴックン期」嚥下ができるようになる。
(Step2)口角が左右に動いている
 → 「モグモグ期」舌が上下に動く証拠で、舌と上顎で食べ物を押しつぶすことができる。
(Step3)口角の片方がねじれるように動く
 → 「カミカミ期」舌を左右に動かしている証拠、奥歯での咀しゃくができる。 

▶ 食べる機能獲得のステップと適切な食事形態
 
(Step1:ゴックン期)
:口を閉じて飲む、口角は動かない
:前後に動く
できること:ミルクやペースト状の食べ物などを飲み込むこと
できないこと:舌と上顎で食べ物を押しつぶすこと、下顎を動かして噛むこと
適切な食事形態:なめらかにすりつぶした状態のもの(はじめての食材は、舐めるくらいから少しずつ増やし、無理なく進める)
食事のポイント
・汁気が多いメニュー(煮物、具だくさんのスープなど)をすり鉢ですってみる、ミキサー・フードプロセッサーなどでペースト状にするなど、できるだけペースト状に近い形の食べ物を。
・トロトロしたヨーグルト、パン粥、おかゆ、すりつぶした果物など、噛まずに飲み込める状態の食べ物がベスト。
・家族の食事の一部をペースト状にする・すりつぶすことができれば、手間や負担を抑えることができる。はじめて口にする食品は、アレルギーがないか確認する意味で、少量から始める。
食べ物の例:トロッとしたヨーグルト、パン粥、おかゆ、すりつぶした・ペースト状にした野菜料理・魚料理・肉料理など

(Step2:モグモグ期)
:口角が左右に引かれる、下顎が下がる
:上下に動く
できること:舌と上顎で食べ物を押しつぶすこと
できないこと:舌で食べ物を歯の方に寄せて噛むこと
適切な食事形態:舌で押しつぶせる硬さのもの、舌で送り込んで飲み込めるまとまったもの
食事のポイント
・舌で潰せるくらいのやわらかさに食材を煮たり、蒸したりして提供する。その際、野菜はできるだけ線維芽少ない物を選び、圧力鍋を使って調理すると短時間でつくることができる。多めに作って冷凍保存することもできる。
・家族の食事の一部をすり鉢などで、少しつぶが残るくらいすりつぶして提供してもよい。
食べ物の例:湯豆腐、茶碗蒸し、少し硬めにしたパン粥・おかゆ、すりつぶした野菜料理、肉料理、舌で潰せる程度に煮た根菜類、等

(Step3:カミカミ期)
:咀嚼している側の口角が引かれる
:左右に動く
できること:舌で食べ物を歯に寄せて歯で噛みつぶして食べ物を細かくすること
できないこと:パサついたものや繊維の強い物をすりつぶして噛むこと
適切な食事形態:歯ぐきで潰せるくらいの硬さのもの → 子どもの様子を見ながら徐々に硬いものを増やしていく
食事のポイント
・はじめは箸で切れるくらいの硬さのものから、徐々に食べ物を硬くし、繊維が多い野菜なども子どもの様子を見ながら取り入れる。
・家族の食事の一部を細かく切って提供することも可能。ただし細かすぎる野菜・ひき肉などは、気管に入ってしまうこともあるので要注意。
・この段階に口腔機能は移行しているのに、噛まなくても飲み込めるものばかり提供していると口腔機能発達にとってよくないので要注意。
食べ物の例:状況に応じて、少しずつ「やわらかい食べ物」から「硬めの食べ物」への移行にトライ。


【対応方法】
・現在の子どもの「食べる機能の発達段階」を確認する(チェックリスト対応方法)。
・食べる機能には、
 ✓ 唇を閉じる
 ✓ 舌を上下左右前後に自在に動かす
 ✓ 奥歯を使ってすりつぶす
ーなど、様々な動きがある。
・食べる機能は段階的に獲得していくものであり、飛び級はできない。
・ふだんの献立における食事の形状、硬さ、触感などがその子の食べる機能の発達段階に合っているかどうかを確認する → 合っていなければ食べられない。
・食べる機能の未獲得は、窒息などの事故を招くことがある。
・基本的には「今の食べる機能の発達段階」を考えて、無理はさせず、
 ✓ 今食べられる食事形態のものを8-9割
 ✓ 今よりほんの少しステップアップした食事形態のものを1-2割
ーなど、食べられなくてもいいという前提で、食卓に並べていく。  

▶ 食べる機能を獲得する工夫
・口を閉じることができない
 → ストローを使って、好きな形に切った折り紙を吸い上げる、おもちゃの笛を思いっきり吹く、等
・舌を上手く動かせない
 → 唇にジャムなどを塗り、それを舐め取る

▶ 食事の形態、5つのポイント
・子どもの今の食べる機能に対して、食事の形態が合っていないと「食べられない」事態が発生する。
・以下の5つが“極端に”偏っている場合は、食べにくさや偏食につながる。

1)大きさ:大きすぎる、小さすぎる(細かすぎる)
(細かすぎる例)みじん切りの野菜、ひき肉

2)硬さ:硬すぎる、柔らかすぎる
(硬すぎの例)繊維質の野菜、肉、キノコ、魚介(タコ、イカなど)

3)粘り
(強い粘り例)餅、団子、イモ類

4)繊維

5)水分:少なすぎてパサパサ、多すぎて口の中でばらける
(水分少の例)パン、カステラ、焼き魚
(水分多の例)かまぼこ、こんにゃく、リンゴなどの果物、等

▶ 「吐き出しても大丈夫だよ」という環境作り参考サイト
・子どもは口に入れたものが食べられないときは吐き出してしまう。それをしにくい環境(責められる、叱られる)は不安が強くなり、食べなくなることがある。
・舐めるだけでもOK、吐き出してしまっても「口に入れられたね」と言える雰囲気が必要。
・吐き出してもいい容器(ボウル、お皿など)を用意して「食べられそうになかったら、ここに出してね」と声をかける。
・子どもは「吐き出しても大丈夫」という前提があれば、安心して食べ物を口に入れらる。

▶ よい姿勢が食べる力を高める参考サイト
・子どもは少し姿勢が崩れたり、テーブルや椅子が体に合わないだけで食べられなくなる。
・理想の姿勢(椅子とテーブル)のポイント:
 ✓ テーブルの上に肘・手をおける
 ✓ 猫背にならない
 ✓ 膝が90度に曲がる
 ✓ 椅子の座面が広すぎず、子どもの横幅に合っている
 ✓ 足が床板に着く 

(神奈川県立こども医療センター偏食外来パンフレットより)
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<参考書籍>
食べない子が変わる魔法の言葉(山口健太著、辰巳出版、2020年発行) 
子どもの偏食外来(大山牧子著、診断と治療社、2023年発行)
子どもの偏食Q&A(大山牧子著、中外医学社、2024年発行)
子どもの偏食相談スキルアップ(大山牧子著、診断と治療社、2024年発行)
発達障害児の偏食改善マニュアル(山根希代子監修、藤井葉子著/編集、中央法規出版、2019年発行)

<参考サイト>
きゅうけん(月刊給食指導研究資料)
・(動画)食べない子ども・偏食への対処法(大山牧子)
・(動画)小児摂食障害(食物アレルギーを持つ子どもの場合を含む)(大山牧子)
発達障害の方の偏食・摂食のご相談(藤井葉子)
 

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