2025年05月

当院では、「オンライン診療の適切な実施に関わる指針」を遵守し、オンライン診療を実施しております。 ただし、初診からオンライン診療を受ける場合には、以下の処方については実施できませんのでご注意ください。

・麻薬及び向精神薬の処方
・基礎疾患等の情報が把握できていない患者様に対する、特に安全管理が必要な薬剤 (診療報酬における薬剤管理指導料1の対象となる薬剤★)
・基礎疾患等の情報が把握できていない患者様に対する、8日以上の処方

これらの規定は患者様の安全を確保するために設けられており、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。
★ 抗悪性腫瘍剤、免疫抑制剤、不整脈用剤、抗てんかん剤、血液凝固阻止剤(内服薬に限る)、ジギタリス製剤、テオフィリン製剤、カリウム製剤(注射薬に限る)、精神神経用剤、糖尿病用剤、膵臓ホルモン剤又は抗HIV薬など。なお、具体的な対象薬剤については、その一覧を厚生労働省のホームページに掲載してあります。 

当院ではオンライン資格確認システムを活用し患者様の診療情報等を取得・活用することにより、質の高い医療の提供に努めております。 以下のとおり医療情報取得加算を算定しています。

初診時 ・・・1点
再診時(3カ月に1回に限り算定) ・・・1点

当院では、当院を定期的に通院している、同意された小児の患者さんに、小児科の「かかりつけ医」として、診療を行っております。

(小児かかりつけ診療料に含まれる内容)
・定期健康診断・予防接種の実施:定期的な健康診断や予防接種を行い、子どもたちの健康を守ります。

・成長発達に関する相談対応 体調や発育、発達についての不安や相談に対し、適切なアドバイスを行います。
・病気予防と早期発見 日常的な健康管理により、病気の予防と早期発見を目指します。
・病気や怪我の治療とフォローアップ 子どもが病気や怪我をした際の治療と、その後の経過観察を行います。
・家庭での健康管理のサポート 食事や生活習慣など、家庭での健康管理についても指導します。 

当院では、「かかりつけ医」としての機能を有する医療機関として、機能強化加算を算定し、以下のような取り組みを行っております。

・他の医療機関での受診状況や処方されているお薬の内容を把握するために、お薬手帳のご提示やお伺いをさせていただく場合がございます。
・必要に応じて、専門の医師や医療機関へのご紹介を行っております。
・健康診断の結果を含む、健康管理に関するご相談に対応いたします。

・介護・福祉・保健サービスに関するご相談にも応じております。
・診療時間外を含めた緊急時の対応方法などについての情報提供を行っております。 

当院では、後発医薬品(ジェネリック医薬品)の使用促進を図るとともに、医薬品の安定供給に向けた取り組みを行っております。 その一環として、後発医薬品が存在する医薬品については、特定の医薬品名を指定せず、薬剤の成分に基づいた「一般名処方」(★)を行う場合があります。 一般名処方を行うことで、特定の医薬品の供給が不足した場合でも、有効成分が同じ他の医薬品を選択しやすくなり、患者様に必要な医薬品を安定的に提供しやすくなります。
★ 一般名処方とは 医薬品の「商品名」ではなく、「有効成分名」を処方箋に記載する方法です。これにより、供給が一時的に不足している医薬品があっても、同じ成分を含む複数の後発医薬品の中から代替薬を選ぶことができ、患者様に必要なお薬をより確実に提供できるようになります。 

当院では、医療の透明性の向上および患者様への積極的な情報提供を目的として、領収書発行時に診療報酬の算定項目が記載された明細書を無料で発行しております。また、公費負担医療の受給者で自己負担のない方にも、同様に明細書を無料で発行しております。なお、明細書には、使用された薬剤の名称や実施された検査の名称などが記載されます。
★ 明細書の発行を希望されない場合は、会計窓口にてその旨をお申し出ください。 

当院では、医療DXの推進に積極的に取り組んでおり、医療DX推進体制整備加算を算定しております。具体的には、以下の体制を整えております。

・オンライン請求を実施しております。
・オンライン資格確認を行う体制を整備しております。
・オンライン資格確認システムを活用し、患者様の診療情報等を取得のうえ、診察室または処置室で閲覧・活用できる体制を有しております。
・マイナンバーカードを健康保険証(マイナ保険証)として利用することを促進し、医療DXを通じて質の高い医療の提供に努めております。
・電子処方箋や電子カルテ情報共有サービスの活用など、医療DXに関する様々な取組を実施しています。
・医療DX推進の体制および、質の高い診療の実施に必要な情報の取得・活用について、院内の見やすい場所とホームページ上に掲示しております。 

ここではめまい・立ちくらみ(水毒)に使用される3方剤を比較してみます。

「めまい・立ちくらみ」を訴えて受診された患者さんには、
まず西洋医学的検査を優先します。

諸検査に異常なく、
しかし症状がつらい場合は漢方の出番です。

「めまい・立ちくらみ」には以下の漢方薬が頻用されます。

五苓散(17)
苓桂朮甘湯(39)
半夏白朮天麻湯(37)

これらの構成生薬の概要をまとめた表を紹介します;
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すべて「水毒」対応の生薬が中心ですが、
ほかに「気逆」や「気虚」に対する生薬も含まれています。
それらを考慮して使い分けるのです。

漢方の世界では、
立てば苓桂、回れば沢瀉、歩くめまいは真武湯」という言い伝え(口訣)
が存在します。
このうち、「立てば苓桂」は「起立性低血圧には苓桂朮甘湯」という意味です。

苓桂朮甘湯には甘草という生薬が含まれています。
甘草は「急迫(急激な症状)を治す」とされています。
つまり、起き上がったときなど発症時点が比較的明確な症状に効果を発揮しやすいのです。
桂皮は気逆を治します。五苓散でも起立時のめまいにある程度効果があるかもしれないのですが、苓桂朮甘湯の方が桂皮を多く含んでいる分だけ、よりめまいに特化しているという違いがあります。
一方で、五苓散とは異なり、沢瀉や猪苓が入っていない分、水毒に対する効果が少し弱まり、嘔吐や排尿障害といった水の出入りに対する効果は五苓散よりも弱いと思われます。

半夏白朮天麻湯(37)は参耆剤(人参と黄耆を含む)の仲間で、気虚(倦怠感・無気力)に対して効果を発揮する特徴があります。

五苓散は水毒に対応する生薬を詰め込んだ薬であり、乏尿や口渇など水毒徴候が目立つ例に効果が期待あれ、浮腫や下痢をある程度治すことが可能です。
五苓散に含まれる桂皮(気逆を治す作用)の存在を考慮すると、吐き気や嘔吐、頭痛、めまいといった症状と相性がよいことも類推できます。水毒に気逆が少し付随している症状となると、例えば、雨天時に増悪する片頭痛やめまい
、急性胃腸炎に伴う嘔吐などが挙げられます

なお、3つすべてに茯苓と朮が含まれています。
ともに水毒に対する生薬ですが、
ともに「気虚」に有効な生薬でもあります。

茯苓には「安神作用」といって、動悸やまぶたのぴくつきといった神経症的な症状に対して精神を和らげて治す薬能も付随します。

ここが大きなポイントです。
「めまい・立ちくらみ」とともに、
「倦怠感・無気力」をもカバーする薬なのです。

起立性調節障害にピッタリですね。


<参考>
立った時? 歩いた時? めまいの起こり方で異なる漢方処方(2025年5月:日経メディカル)
 伊東 完(東京医科大学茨城医療センター総合診療科)
これだけは覚えたい!水毒を治す4つの代表的生薬とは(2025年2月:日経メディカル)
 伊東 完(東京医科大学茨城医療センター総合診療科)

近年、子どもの不登校が増えてきています。
昔は人間関係が原因のことが多く、
カウンセリングで紐解いていく作業が必須でした。
近年は「漠然とした不安」が原因の第一位となりました。 

しかし専門家の話を聞くと、
・子ども自身が不安を言語化できない
・さらには子ども自身が不安を自覚できていない
ーことが多いと聞きます。 

不安を言語化できないので、体調不良で訴えるわけですね。
症状は心のSOSのサインかもしれません。

このグレーゾーンに漢方薬が役立つと思います。 
漢方医学では、症状を訴える人の病態を「気・血・水」というものさしで評価します。 
このうち「気」は元気の気、やる気の気、弱気の気・・・
日常的に使用している単語の語源です。

漢方医学では心と体は走後に影響し合うという「心身一如」という概念があります。
そして漢方薬は「心と体」の両方に効くようにつくられているのです。

具合が悪くてどうにもならず病院を受診し検査を受け、その結果異常なし、
すると医師からは、
「気のせいでしょう」
と言われてガッカリする話を時々耳にします。

漢方では「気のせい=気の異常」と捉えます。
ですから「気のせい」と言われたら、すなわち漢方の出番なのです。

気の異常はさらに以下のように分類され、
その病態に対応する生薬や薬がいくつも用意されています。

【気虚】
・気が消耗した状態
・心が疲れた状態
・無気力
【気うつ】
・悩みやストレスをため込んで発散できない状態
【気逆】
・不安や怒りが逆上して湧き上がってくる状態

では子どもの不安に対して、漢方でどう対処するのかを見ていきましょう。 

▶ 気虚

補中益気湯(41) 
● 適応
・無気力症状(気が空になった、やる気が起きない、ゴロゴロしていたい)+身体症状(倦怠感、食欲低下)

加味帰脾湯(137)
● 適応 
・貧血傾向の疲労感を伴う抑うつ状態
・疲れ切っているのに思考は活性化してしまう(思考がぐるぐるとまとまらない)
● 症状
・集中力低下、健忘症状、不眠
・COVID-19の罹患後精神症状(ブレインフォグ)

小建中湯(99)
● 適応
・虚弱でやせ型、くすぐったがり屋
・性格的には過敏で、対人関係ではビクビクしていることが多い。
● 症状
・疲労倦怠感が強く、腹痛や頻尿・夜尿など
・動悸が息苦しさなどの不安症状
・不安感は特定の「場所」だけではなく「空気感」にも感じることが多く、怒るかもしれないことに対して強い不安感(予期不安)を感じる。
・身体症状としては過敏性腸症候群による腹痛や、頻尿を伴うことが多く、学校で「トイレに閉じこもる」 傾向が観察される。
 
▶ 気うつ

半夏厚朴湯(16) 
● 適応
・真面目な性格で対人関係を思い悩み不安を感じることが多い。
・ストレスを強く主張することができず、胸の中にため込み、
「のどが詰まる」「胸がモヤモヤする」と表現する。
● 症状
・咽喉頭異常感:のどがつまる
・のどから胸にかけての不快感 
・声が出しにくい
・息苦しい
・過呼吸発作
・考え込んで眠れない

▶ 気逆

柴胡加竜骨牡蛎湯(12)
● 適応
・不安の対象が「人」ではなく「場所」「空気感」「物音」の場合
・過敏性の高い状態からパニック障害や過呼吸症候群を呈する 
● 症状
・教室に入ることができない
・人混みが苦手 → 外出を避けて引きこもりがち
・(教室や人混みに行くと)動悸や息苦しさを感じて過呼吸発作
・少しの物音にも敏感で驚きやすく不安を感じやすい(煩驚)

抑肝散(54)
● 適応
・ポイントは「怒り」
・かんしゃくを起こして怒り出す子ども
・思い通りにならないとイライラしたり、怒鳴ったり手を出したりする子ども 
● 症状
・かんしゃく
・不眠 

▶ 効果不十分の時の次の一手
● 気の異常+水毒
・上記薬剤+五苓散(17)
・苓桂朮甘湯(39)・・・不安感+(天気の影響を受けるふらつき・朝の倦怠感・めまい) 
● その他
茯苓飲合半夏厚朴湯(116)・・・気持ちの落ち込み・不安感+吐き気
抑肝散加陳皮半夏(83)・・・怒り+消化器症状

▶ 抗不安作用を増強する方法5つ(千福Dr)
● 桂皮を増量:腹症に特徴なし
(例)苓桂朮甘湯(39)+甘麦大棗湯(72)
   苓桂朮甘湯(39)+桂枝加竜骨牡蛎湯(26)
● 芍薬を加える:腹直筋緊張(精神的に過緊張)
(例)苓桂朮甘湯(39)+甘麦大棗湯(72)
   苓桂朮甘湯(39)+桂枝加竜骨牡蛎湯(26)
   桂枝加芍薬湯(60)+四物湯(71)
● 四物湯を加える:貧血・冷え症・クヨクヨ
(例)苓桂朮甘湯(39)+四物湯(71)(→ 連珠飲
   桂枝加芍薬湯(60)+四物湯(71)(→ 神田橋処方
● 竜骨・牡蛎を加える:臍上悸・イライラ
● 柴胡を加える:胸脇苦満(ストレスまみれ)
(例)柴胡桂枝乾姜湯(11)…抗不安(桂皮配合)
   補中益気湯(41)…抗うつ(人参配合)

漢方医学では「フクロウ型体質」と呼ばれる病態があります。
山本巌という先生が提唱した概念で、ほぼ起立性調節障害とイコールです。
そしてその病態には苓桂朮甘湯と補中益気湯という薬が適用されます。

つまり、漢方医学では起立性調節障害の治療法が以前から存在していたのです。

現在、久留米大学の惠紙英昭先生が「フクロウ外来」を開いて、
上記体質でつらい思いをしている患者さんを漢方薬で治療しています。
その講演メモを備忘録として残しておきます。

▶ フクロウ型体質の症状
・「朝寝の宵っ張り」で寝ていたい。日曜日は昼頃まで寝ている。
・朝は頭がボーっとしているが、夕方から夜にかけて最も元気。
・朝食は欲しくない。夕食が美味しいし、よく食べる。
・カラダがしんどい、疲れやすい、体力がない、頭が痛む、肩がこる、胃が痞える、重ぐるしい、吐き気がある、胃が痛む、めまいがする、手足が冷える、など多愁訴。
・体力がなく、粘りが効かず、力仕事に向かない。
・内科や小児科を受診しても異常がなく(起立性調節障害±)、治療に難渋。
・世の中に2~3割。

▶ フクロウ型体質の特徴・問題点
・不定愁訴だらけなので、怠け・気分障害などと診断されかねない。
・弱虫?のび太?
・副交感神経優位タイプ。
・漢方的には虚証が多い。
・朝起き苦手、体が重い(浮腫)、めまい、頭痛、立ちくらみ、倦怠感、冷え、神経質…漢方医学的には水滞。

▶ 苓桂朮甘湯(傷寒論・金匱要略)
● 構成生薬
 茯苓・蒼朮・桂皮…利水
 桂皮      …血行を良くする、軽度強心作用、抗不安作用
 茯苓・桂皮・甘草…動悸(心悸亢進)を鎮める
● 効能効果(保険病名)
  神経質、ノイローゼ、めまい、動悸、息切れ、頭痛
● 古典の記載(金匱要略)
・「心下に痰飲ありて胸脇支満し、目眩するは苓桂朮甘湯之を主る」
・(現代語訳)胃内停水があり、その量が多いと胸部につっかえ棒が入っているような感じがして目眩がし、その時には苓桂朮甘湯を用いる。

▶ 苓桂朮甘湯に併用する漢方薬
・五苓散
・補中益気湯、十全大補湯
・半夏厚朴湯
・当帰芍薬散
・桂枝茯苓丸
・葛根加朮附湯
・加味逍遥散
・抑肝散・抑肝散化陳皮半夏
・桂枝加芍薬湯・小建中湯
・柴胡清肝湯・荊芥連翹湯
・八味地黄丸・六味丸
・真武湯
・治打撲一方
・四物湯(連珠飲)

★ 治打撲一方
● 生薬構成
 川骨・センキュウ・ぼくそく・大黄…駆お血作用(打撲の内出血による腫脹を除く)
 センキュウ・桂皮・ちょうし…駆お血剤の働きを助ける(活血)
 ぼくそく…抗炎症、鎮痛作用
 大黄  …しゃげ作用によりお血の排出を助ける
● 保険適応
・打撲による腫れおよび痛み
・打撲・ねん挫などで患部が腫脹・疼痛する場合

▶ 苓桂朮甘湯に併用する西洋薬
・アリピプラゾール(エビリファイ)
・スルピリド(ドグマチール)
・アトモキセチン(ストラテラ)
・SSRI、SNRI
・睡眠導入剤
 ✓ レンボレキサント(デエビゴ)
 ✓ ラメルテオン(ロゼレム)
 ✓ メラトニン(メラトベル)
・ミドドリン

▶ 現代のフクロウ型体質(症候群)と要因・誘因
・起立性調節障害:人間関係・血管運動神経失調
・メニエール症候群:人間関係、食生活のアンバランス(コンビニ弁当、甘いもの等)
・不登校:人間関係
・睡眠障害(睡眠相後退症候群):人間関係
・自律神経失調症・不定愁訴:人間関係
・気分障害・適応障害:人間関係
・頚椎・脊椎異常:姿勢・ランドセル・机に向かう時間・ゲームの長さ等、外傷(打撲や骨折)、出産時、
…全体に関与するのが神経発達症、統合失調症圏、椎骨脳底動脈循環動態、脳リンパ流

▶ フクロウ型体質のまとめ
・詳細な病歴聴取が基本:生育歴・生活歴・既往歴
・起立性調節障害を含む広い概念
・子どもだけでなく幅広い年齢に存在(知らずに成長)
・心身両面の西洋医学的診断(複数の診療科的視点)
 ① 脊椎異常も考慮すべし
 ② 古い外傷(打撲や骨折)も含めた病歴聴取
 ③ 不定愁訴を理解し受け入れる
・東洋医学的診断治療
 ✓ 気血水・腹診・脈診・舌診・望診など
 ✓ 漢方治療の再現性が必要
・こころのケア
 ✓ ダメだしされて自信喪失
 ✓ 自分のすべてを受け入れてくれる安心感と安全な場
 ✓ 寄り添う、一緒に楽しむ
・生活習慣(食事・睡眠衛生教育など)
・ストレッチ、運動、鍼灸
・内服後の心身の変化、薬の味をどのように感じるかなどをすべて受け入れる(たくさんの情報、ヒント、関係性を築く)

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