2025年06月

▶ 発達障害早期発見を目的とした乳幼児健診の意義

乳児検診(1・4・10ヶ月)
→ 先天性疾患、脳性まひ、運動遅滞を伴う精神遅滞

1歳6ヶ月健診
→ 重度精神遅滞、ASD(自閉スペクトラム症)

3歳児健診
→ 中等度精神遅滞、ASD

5歳児健診
 → 軽度精神遅滞、ADHD、限局性学習障害、ASD

▶ 4ヶ月児の発達チェック項目
・首がすわっている
・あやすとよく笑う
・追視をする
・ガラガラを振ったり舐めたりして遊ぶ
・母親が呼びかけると顔を向ける
・仰向けで中央で手を合わせる

▶ 6ヶ月児の発達チェック項目
・寝返りをする
・少しの時間お座りをする
・手を伸ばしてほしいものをつかむ
・あやすと声を出して笑う、遊んで相手にしてもらいたがる
・母親がいらっしゃいをすると、喜んでからだを乗り出す


▶ 10ヶ月児の発達チェック項目
・ハイハイをする
・つかまり立ちをする
・指先で小さい物をつかむ
・バイバイ、チョチチョチなど、簡単な身振りのまねをする
・人見知りをする
・指さしして教えるとそちらを見る

★ 1歳前後までの発達障害児を診るポイント
(生後0ヶ月〜)視線は合うか?
・後頭葉の発達
・2者間の基本的コミュニケーション
(生後2ヶ月〜)社会的微笑はあるか?
・後頭葉・前頭葉の発達
・新生児期の反射的微笑と異なり、対人交流の能動的要求
(生後7ヶ月〜)愛着行動は形成されているか?
・前頭葉の発達
・人見知りをしない、1人でも平気(愛着行動の欠如)
・逆に人見知りがひどい、父親になつかない(愛着行動の異常)
(生後10ヶ月〜)感覚異常(特に偏食)
・聴覚・触覚などの刺激に対する過敏反応、異常なこだわり

▶ 1歳6ヶ月児の発達チェック項目
・しっかり1人で歩ける
・手を引くと階段を上る
・積み木を積む
・なぐり書きをする
・絵本を見せて知っているものを聞くと指さしをする
・名前を呼ぶと振り向く
・意味のある単語を言う
・お母さんの言っていることがわかる

▶ 3歳児の発達チェック項目
・つかまらないで片足立ちができる
・低いところから飛び降りる
・「どちらが大きい?」と聞かれて大きい方を指さす
・2語分が言える
・友達と遊びたがる
・1人で自分の靴が履ける
・1人でスプーンやフォークを使って食べる

★ 1歳半から3歳までの発達障害児を診るポイント
1)言語発達の遅れの有無(前頭葉)
・発語がない、既に出ていた言語が消失(退行)
2)アイコンタクト・共同注視ができる(前頭葉)
・相手と自分とが共通の事象に注目できること
3)落ち着きのなさ・多動傾向の有無(前頭葉・辺縁系)
・母親の指示を聞いているか?診察室などでの子どもの行動に注目
4)自傷行為・多少行為の有無(前頭葉・辺縁系)
・かんしゃく・パニックを起こした時に多い





<参考>
子どもの発達と発達障害のチェックポイント
(今村淳」岐阜県総合医療センター小児科)


<発達>

▢ 跳んだり、階段を1人で上がることができる。
▢ 閉じた丸を描ける
▢ 大小、長短、色がわかる
▢ 3語文以上を話し、自分の姓名・年齢を答えられる
▢ 同年齢の子どもたちと遊ぶことができる。


<概要>

・3歳は運動や社会性の発達の節目。
・発育面・発達面ともに個人差が大きくなる時期。
・食事・排泄などの基本的な生活習慣がほぼ自立する。
・単純なひとり遊びから複雑な小グループの遊びへ。
・自我が芽生えて「イヤ!」「自分でする!」といった自己主張をするようになる。
・身長は90cm越え。80cmで-2SD、100cmで+2SD。
粗大運動:走ったり跳んだり。片足立ちやケンケンといった平行感覚が身についてくる。
(他の例)三輪車をこげる。止まっているボールを蹴ることができる。
・微細運動:クレヨンを持って閉じた丸を書いたり、スプーンを上手に使ったり、ハサミを使うことができるようになる。
(他の例)衣服の着脱が自分でできる、紙を二つに折ることができる、箸が使える(子もいる)、こぼさずに食事ができる
・言語能力:物の名前や動作に関する言葉以外にも、大小や色などの抽象的な言葉の理解も進み、多語文による会話が可能となる。
・認知能力:ままごとでお母さんのふりをしたり、積み木を車に見立てて押したりといったことが可能となる。


<チェックポイント>

▢ 母子手帳の確認
・胎児・新生児期の異常の有無
・成長曲線
・これまでの健診の問題点の有無
・予防接種歴

▢ 診察室での観察・反応
・姿勢:直立の姿勢
・運動機能:走行、両足跳び、手を使わずに階段上り
・あいさつ(言葉と動作)・・・親より先に子どもに声がけ
・会話(名前と年齢を聞く)
・体の部位(指さし)
・指示動作可能(お口を開けて)
・診療拒否、多動、親が制止不能、視線が合わない、奇声を出すなどに注目
→ ★ 問題行動の分類へ

▢ 一般診察
・顔面:顔貌(表情・反応)、眼(斜視、眼振、視線の合い方)、口腔(扁桃、歯の数、う蝕→ ★ う蝕へ)
・頚部:リンパ節、腫瘤、甲状腺
・胸部:胸部変形、心音(心雑音、不整脈)、呼吸音
・腹部:肝脾腫、腫瘤、ヘルニア
・皮膚:血色、緊張度、発疹、色素異常
・泌尿生殖器:ヘルニア、停留精巣
・四肢:O脚、X脚、反跳膝


★ 問題行動の分類
・正常な発達過程にみられる問題行動:攻撃性、反抗的行動、トイレトレーニング
・生活の尋常でないストレスによる問題行動:暴力行為の目撃、絶えず夫婦仲が悪い、自分の兄弟が慢性疾患を持っている、望まれずに生まれてきた子ども、悲劇的な出来事を経験したコミュニティの一員など
・生来の疾病により問題行動:注意欠陥・多動症、行為障害、うつ病、広汎性発達障害など

★ う蝕
・3歳は乳歯列が完成、安定していく時期であり、食事が多彩になる時期でもあるため、う蝕が発生しやすい。
・虐待や発達障害の発見の端緒となることがある。

★ 虐待
・複数あるいは不自然な傷やアザの有無について観察する。大きな傷にもかかわらず兄弟にされたというのは虐待を隠蔽する方便のことがある。
・行動の異常をきっかけとして虐待が見つかることがある(発達障害が原因のこともある)。

★ 発達障害
・強いこだわりや落ち着きのなさだけでなく、言葉の遅れや認知の発達の遅れを伴うなど、複数の逸脱が見られる場合に注意する。
・発達障害を1度の診察で確実に診断することは困難である。


<よくある質問>

Q. トイレトレーニングが思うように進まない
A. 個人差があること、失敗を怒らず成功を誉める対応の原則を説明する。

Q. 言葉の遅れ
A. 「言語理解の遅れ」「有意語が少なく2語文が出ない」「対人関係や行動面に異常がある」場合は専門家に紹介する。それらができているようなら次第に言葉が出てくることが多い。絵本の読み聞かせをする、子どもの目を見て優しくゆっくりと話しかけるようにするなどをアドバイスする。

Q. 落ち着きがない
A. 言葉の遅れがなく遊びに集中でき、指示を理解して完遂できる場合、特定の場面でのみ落ち着きがない場合は問題がない。それ以外は慎重に経過観察する。

Q. かんしゃく持ち
A. 発達過程で一過性にみられるものである。
 かんしゃくの程度が強く、特異なこだわりやささいな出来事で手のつけられないパニックを起こす場合は広汎性発達障害の可能性を疑う。


<参考>
原朋邦:編集(南山堂、2018年発行)
(Youtube動画)けんたろう 




▢ 発達障害への対応
・発達障害は単独の診断名ではなく一つ以上の特性を示すことが多い(ASD+ADHD+DSD・・・)
・発達障害の大多数に併存精神障害を認める→ 支援は一律ではなく個別の特性に応じて行うべき
・発達障害の症状/特性は早期に始まり、ライフコースに渡る。
・対応はまず、養育者の理解を促すこと(育児支援、心理教育)
・そして自己理解へ(上手につき合う)

本来「病名」とは、それをつけることにより治療や生活指導に役立つもの。
いくつも病名がつくような病態なら、その付け方が適切ではないのでは?と思ってしまいます。

現在の精神疾患は「DSM-5」に基づいて分類・診断されていますが、
これは症状を集めて診断するアナログ的手法です。

その背景として、遺伝子診断が日進月歩の現代医学を以てしても、
精神疾患は分類しきれない・整理できないのが現状、と耳にしたことがあります。

いずれにしても、発達障害を含めて精神疾患の病名は、
遺伝子異常による分類が確立するまでは、
これからもコロコロ変わることが予想されます。

▢ ASD早期療育の中長期的なメリット
・一部(25%)にASD症状の著明な改善を認めた(改善群)。
・改善群全員が3歳までに療育を受けていた。
・一般的に開始が早いほうが効果が大きい。
・複雑化してからだと回復に時間がかかる。
・良好なメンタルヘルス(併存障害なし、服薬治療なし)。
・良好なQOL。

早期発見・早期療育が有効であることを強調されていました。
「早期薬物治療開始」ではありません。

▢ ASDはいつからわかるか?
・1歳前ではまだわからない。
・0歳からよく知っているからといって後の発達障害診断を否定できない。
・1歳6ヶ月〜2歳で十分な情報があればわかる。
・全般的な発達の遅れがあればわかりやすい。
・わかりにくい子どももいる(女児、こわがり、発達の良好な子)
・家族歴があればハイリスク。

最近、1歳半検診と3歳児健診を担当するようになったので、
発達障害について基本的なことを勉強中の私です。

1歳半検診でグレーゾーンの子どもを拾い上げ、
保険相談〜療育につなげることの重要性を再認識させていただきました。 

▢ 幼児期の主なASD症状

A. 社会的コミュニケーションおよび対人的相互交流の障害
・“共同注意”が少ない。
・非言語的コミュニケーション(アイコンタクト、身振り、表情)が少ない。
・言葉の後れ、会話にならない、同じ言葉を繰り返す。
・ともだちをつくれない、ごっこ遊びをしない、ひとり遊び。

B. パターン化した行動、興味の限局、感覚過敏
・行動の切り替えの困難、初めての場所、ものへの不安、抵抗。
・新しいことを嫌がる、特定のもの、話題への没頭、興味
・聴覚、触覚などの感覚過敏

今まではなんとなくチェックしていた“指差し”が、
これほど重要であるとは・・・。
 
▢ 1歳時のASDスクリーニング
〜社会性をチェックし「出現しているはずの行動が出現していないこと」を問題視する。

(通常は1歳になるまでに出現している行動)
・アイコンタクト
・他児(兄弟以外)への関心
・微笑み返し
・呼名反応
・人見知り

(通常は1歳6ヶ月までに出現している行動)
・共同注意行動
・身近な大人の動作や言語の模倣

(あればASDを疑うべき行動)
・感覚的な遊びに没頭する
・音や触覚に過敏

▢ “共同注意”の概念
・他者とモノ・コトに向ける注意をシェアすること。
・自分の気持ちを他者の気持ちに重ねることの始まり。
・生後10ヶ月頃からみられるようになる。
 10ヶ月児の通過率:約50%
 1歳6ヶ月児の通過率:100%

▢ 実際の共同注意に関する質問項目

(質問)あなたが部屋の中の離れたところにあるおもちゃを指さすと、お子さんはその方向を見ますか?
★ 質問の意図:指差し追従(他人の指差しに応答する)できるかどうか

(PASS例)お母さんがモノを指さすと、
・指でさされたモノを見る。
・自分もそれを指でさす。
・それを見て、何かそれについて言う。
・もしお母さんがそれを指さして「ほら!」と言えば見る。

(FAIL例)お母さんがモノを指さしても、
・無視する。
・部屋中をキョロキョロ見回す。
・(モノではなく)お母さんの指を見る。

(質問)◯◯ちゃんは、興味を持ったモノを指をさして伝えますか?
★ 質問の意図:興味の指差し:要求の指差しではなく、興味を持っていることを表現するために指差しをするかどうか。1歳6ヶ月児の通過率100%。応答の指差しと区別する必要あり。

(PASS例)
・自分にとって面白いモノを指さして教える。
・お母さんの注意を興味あるモノに引くために指差しする。
例)空を飛んでいる飛行機、道路を通っている大きなトラック、地面の上を這っている虫など

(FAIL例)
・指差ししない、または、時々しか指差ししない。
・要求の指差しはするが、興味を指し示す指差しはしない。

(質問)◯◯ちゃんは、お母さんに何かを見てもらおうとして、モノを見せに持ってきますか?
質問の意図:要求ではなく、共有目的でモノを見せに持ってくるかどうか。1歳6ヶ月児の通過率:92.9%。

(PASS例)◯◯ちゃんはお母さんに見せようとして、
・**を持ってくる。
例)絵やオモチャ、自分が描いた絵、自分が摘んだ花、自分が見つけた虫など

(FAIL例)
・・・モノを持ってくるが、見せるためかどうかは分からない。
例)本(読んでもらうため)、オモチャ(動かす、修復のため)、お菓子(袋を開けて欲しいなど)

“共同注意”の概念は、
「興味のあること・モノを他人と共有することが楽しい、うれしい」
という「人間関係を気づく基本となる感情」なのですね。
 
▢ 日本語版「M-CHAT
・乳幼児期自閉症チェックリスト修正版。
・H30年度診療報酬改定により、検査D283:発達及び知能検査の「操作が容易なもの」(80点)として保険収載。
・対象年齢:16〜30ヶ月
・23項目 親記入式質問紙(はい・いいえ)
・日本語版の特徴:イラストの説明あり
・国内外の大規模研究で、健診場面での有用性が実証済み
 2段階(質問紙→ フォローアップ面接)>質問紙のみ・・・擬陽性例が減る
 2段階 陽性的中率 43〜46%(日本)、54%(アメリカ)
・海外の主要なガイドラインで推奨されている。

▢ A. 社会的障害(M-CHAT)
(園での友達関係)
・ひとり遊びを好む(周囲に子どもがいてもお構いなし、あるいは、周囲に子どもがいる場を避ける)
・自分からは仲間に入らないが、誘われると受け身的に参加する。おとなしい子や年下の子となら遊べる。
・自分から仲間に参加するが、自分のやり方を強要するのでケンカとなり、嫌がられる。
(情緒的反応性)
・他者に無頓着(マイペース)
・他者の気持ちに敏感だが(こわがり?)、意図は分からない。
(言葉の理解)
・言語理解は言語表出と比べて悪い(しゃべるけれども言われたことは理解できない)
・自分の関心のあることしか話さない。
・要求と関連して話しかける(質問に答えることもある)
・言語理解はしているが、答えられない。
・やりとりが目的の会話はできない。

▢ B. 限局・反復的様式と感覚反応(M-CHAT)
・苦手な感覚(聴覚・触覚・視覚・味覚・嗅覚)のために苦手な場面、活動がある。
・今している活動を止めることの抵抗、あるいは新しい活動への切り替えの困難・不安のために、集団生活がストレスになる。 


<まとめ>
・発達障害は一つの診断名ですむことは少なく、いくつかの要素を持っていることが多い。
・療育開始が早いほど予後がよい。
・1歳半頃に徴候が現れるので、1歳半検診は重要。
・“共同注意”という概念を理解しチェックの際に用いるべし。

 


<チェックポイント>

▢ 一般診察
・大泉門:閉鎖していることを確認
・皮膚:母斑、白斑、カフェオレ斑、血管腫、毛巣洞
・体型:脊柱側弯、胸郭の異常
・胸部聴診:心雑音
・腹部:腹部腫瘤、鼠径ヘルニア、臍ヘルニア、停留精巣、外陰部異常
・眼:対光反射と眼球運動(斜視、網膜芽細胞腫など)

▢ 体格:成長曲線に沿って伸びている
・絶対値より伸び方が重要。

▢ 粗大運動:一人で上手に歩ける
・90%が一人で歩けるようになる時期(歩行できない子どもは全体の2%とも)。
・“上手に歩ける”とは10m以上転ばずに安定して歩けるという意味。
・1歳頃の “high guard” 歩行から “low guard” 歩行へ。
・shuffling baby(いざりっこ):お座り→ ハイハイ→ つかまり立ち→ つたい歩き→ 歩行がふつうの発達だが、ハイハイをせずにいざり移動(座位のまま移動)から歩行にいたる場合は歩行開始が遅れることがある(1歳半で歩行不能でも2歳頃までに可能となる)。日本における頻度は約3%。
・環境因子により歩行が遅れる事例もある。
(例)歩くのが遅いと心配した保護者が歩行器を使用して無理に歩かせようとしている。
(例)自宅に捕まれる場所がなくつたい歩きがしっかりできていないため歩行ができない。
・1歳6ヶ月で上手に歩けない児は専門機関へ紹介。high guard 歩行の場合は経過観察。

▢ 微細運動:小さいものを指でつまめる。積み木を2-3個積める。鉛筆で殴り書きをする。
・微細運動のチェックは軽度の脳障害の判定に有用である。

▢ 言語:意味のある言葉をいくつか話せる。簡単な指示を理解できる。
・「ママ」「ブーブー」など5つ程度の単語を話せるようになる。意味のある単語が出ない場合は、聴力障害、言語理解ができているかどうかについて評価する。
(例)「ポンポンどこ?」と聞いて腹部を指さしできれば、聴覚・言語理解・指示の理解ができていることがわかる。
(例)診察の終わりにこちらの「バイバイ」に「バイバイ」で返してくれば、身振りや動作の意味を理解し模倣する能力が確認できる。
・全く反応がない場合は、知的発達や聴覚の異常などの可能性を疑い、保護者の手に負えないほど無秩序に動き回って拒絶的だったり、験者と視線がほとんど合わないときなどは発達障害(自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症など)を考慮する。
・言葉は模倣により覚えるので、保護者がハッキリした大きな声でゆっくり話すようにする。

▢ 社会性:周囲への関心を持つ。興味のあるものを指さして示す。模倣ができる。
・要求の指さしや模倣は、ASD(autism spectrum disorder, 自閉症スペクトラム障害)の識別度が高い項目である(M-CHAT:modified checklist for autism in toddlers, 乳幼児期自閉症チェックリスト)。

▢ 事故予防:
・行動範囲が広くなるので事故が多くなる。
・喫煙者がいる場合、タバコ誤飲にリスク、受動喫煙の有害性を指導し、保護者の禁煙支援を提案。

▢ 予防接種:
・接種漏れの有無を確認し、有る場合は背景に有る保護者の事情に耳を傾ける。

▢ 虐待のサイン:
・複数の外傷の有無
・痩せ、無表情
・親の無関心、児への高圧的な態度
・親子の様子に違和感

▢ 「ちょっと気になる子」
・周産期既往歴:極低出生体重児、重症仮死、新生児けいれん、無呼吸
・粗大運動:歩行の遅れ、歩き方がおかしい、high guard歩行
・微細運動:スプーンを使おうとしない。積木で遊べない。
・言語発達:単語が出ない。
・診察所見:全体的に筋肉が柔らかい・硬い、頭が大きい・小さい(あらゆる年齢で頭囲の2SDは3cm)。
・社会性:応答の指さしが十分にできない。視線が合わない、落ち着きがない、周囲に無関心、など。
・生活習慣:離乳が未完了、摂食行動(噛む、飲み込む、吸うなど)が下手、偏食が著しい。

→ 上記が気になる場合は「経過観察健診」が必要となる。症状や所見によるが、2〜3ヶ月後、遅くとも6ヶ月後(2歳頃)に。


<健診結果と事後措置>

▢ 運動発達の遅れ → 保健機関や療育機関、病院に紹介
・言語理解の遅れに加え、運動発達の遅れ(歩行未開始)、微細運動の遅れ(積み木が積めない)、遊びや基本的な生活行動の発達の遅れ(おもちゃを用いて遊ぶことができない、スプーンを使って食べる・簡単なお手伝いをするなどの行動が見られない) があれば全般的な精神運動発達遅滞が疑われるので医療機関を紹介する。
・歩行開始の遅れのみで、言語理解が良く知的発達が良好である場合は追跡観察で粗大運動の発達を再評価する。

▢ 指示が入らない → 保健機関や療育機関、病院に紹介
・応答の指差しがみられない(絵を指差すことができない)
→ 以下の可能性を考慮(1回の評価では不正確なこともあるので追跡観察を行い、言語発達の遅れが続く場 合は療育機関や医療機関を紹介する)
① 聴力障害
② 精神発達遅滞
③ コミュニケーションの発達の遅れ(自閉スペクトラム症)
④ 養育環境の問題

(アドバイス)
・やり取り遊びや関わり遊びを増やして「もっと」「もう1回」という要求を引き出す。
・生活リズムを一定にして生活の見通しを持たせ、要求を引き出す。
・「どっち?」と二者選択をさせ、手差しから指差しを教える。

▢ 指示は入るが言葉が少ない → 2歳児健診あるいは2歳時に電話でフォロー
・有意語が2語以下
→ 有意語がないあるいは 2 語以下であっても、言語理解が良く、社会性の発達が良好である(言葉は話さないが、応答の指差しが可能で、 視線がよく合い、言語のみの指示に的確に従うことができる)は表出性言語遅滞の可能性が高い。家族歴があればさらに可能性は高まる。通常3歳までに言葉表出が伸びることが多く、無理に言語表出を促す必要はないが、2歳時にフォローアップを行い、 ことばの発達を確認することが望ましい。

(アドバイス)
・動作に言葉を添える。「くっく、履こうね」など
・「〜とって」などお手伝いをさせながら単語のチェックを氏、指差しして教える。

▢ 視聴覚などの理学的異常所見あり → 他機関紹介

▢ 社会性・行動の異常所見あり → 要再評価&保健機関や療育機関、病院に紹介
・名前をよんであいさつをしても視線が合わない、物のみに注意が向き相手に注意を向ける様子(共同注意)が見られない、 言語指示のみでなくジェスチャーを交えたやりとりも全く成立しない場合は、コミュニケーションの発達の遅れ(自閉スペクトラム症)が疑われる。
・この年齢の子どもは緊張してやりとりに応じられないことが良くあるが、これらの様子が目立つ場合は再評価が必要である。フォローアップを行い、医療機関や療育機関へ紹介する。
・子どもが親の膝上でじっとしていることができず再々降りようとしたり、好き勝手に遊び回ったりする場合は多動と判定する。この時期の多くの子どもは多動であるが、明らかに場面に応じた行動抑制ができない場合、多動的行動特性の他に、知的発達のおくれ(状況判断ができていない)や自閉スペクトラム症(自己中心性、新規場面への不慣れ)の可能性を考慮する必要がある。

▢ 運動機能異常
<判定基準>
・歩容の異常:動揺歩行、墜下性歩行、尖足歩行など
・O脚:両足内踝をつけて膝部離開4横指以上(O脚)→ 生理的なO脚が見られる時期であるが、両足内踝をつけて立位をとったときに膝部に3横指の離開がみられた例は、家庭で経過観察し増悪したら医療機関で精査するように指導する。膝部離開が 4 横指以上の例は二次健康診査へ紹介する。
・胸郭・脊柱の変形:強度の胸郭変形、明らかな側弯


<この時期に発見されやすい異常と疾病>

・知的能力障害
・自閉スペクトラム症
・言語発達遅滞
・構音障害
・斜視
・う蝕
・養育環境の不良に伴う発達の異常


<よくある質問>

Q. 食事に関する問題:手づかみ食べ、少食、偏食
A. 
・“手づかみ食べ”は感触を楽しんでいる状態と割り切る。いつまでも遊んでばかりで食べないときは無理強いせずに一旦食事を片付ける。
・少食・偏食対策:食材を細かく刻む、すりおろす、混ぜ込むなどの工夫で食べやすく調理する、新しい食材を食べられたときはしっかりほめる。

Q. かんしゃく、夜なきがひどい。
A. 自我が芽生えて自分の思い通りにならないために癇癪を起こすことは、順調に発達している証拠。不快な事の有無を確認し、いろいろ手を尽くしても泣き止まないときは忍耐強く見守る(いつかは泣き止む)。
★ 肌と肌が触れあうように抱くと泣き止むことが多い(アフリカのお母さんのつぶやき)。


<まとめ>

・1歳6ヶ月は“key age”「発達が質的に変化する時期」「赤ちゃんから人間へのダイナミックな変化を遂げる時期」「間脳支配から大脳皮質優位の支配へ」
・成長曲線がなだらかになり(体重増加は月に100〜200gあればOK)、身長約75cm、体重約10kg、体格はやや細身。
・乳歯が平均15本。
・一人で上手に歩けるようになる。
・指を使って小さいものをつまんだり、スプーンで食べたりすることができる。
・意味のある言葉「マンマ」「ブーブー」などを3語以上使えるようになり、指さしで周囲の人に要求をしたり周囲の人の指示を聞いたりという相互交流ができるようになってくる。
・早産児・低出生体重児では1歳6ヶ月までは修正月齢を考慮して身体発達や発達評価をすることが望ましい(平岩幹男Dr.)。

<参考>

原朋邦:編集(南山堂、2018年発行

▢ 乳幼児検診マニュアル第6版
福岡地区小児科医会乳幼児保健委員会:編集(医学書院、2019年

▢ 1歳6ヶ月検診:秋山千枝子(あきやま子どもクリニック)
(日本小児科学会)

(厚生労働省)

平岩幹男(国立研究開発法人国立成育医療研究センター)
小児保健研究 第76巻第6号、2017(527-531)

思春期の子どもで時々相談を受けます。
起立性調節障害は以下の診断基準のうち3つ当てはまり、
貧血など他の病気が除外できると診断されます。 


1

立ちくらみ、あるいはめまいを起こしやすい

2

立っていると気分が悪くなる。ひどくなると倒れる

3

入浴時あるいは嫌なことを見聞きすると気持ちが悪くなる

4

少し動くと動機あるいは息切れがする

5

朝なかなか起きられず午前中調子が悪い

6

顔色が青白い

7

食欲不振

8

臍疝痛をときどき訴える

9

倦怠あるいは疲れやすい

10

頭痛

11

乗り物に酔いやすい


欧米では純粋に「循環器疾患」という位置づけで、
主に血圧に作用する薬を使用します。
日本もそれに準じる一方で、
なかなか薬が効かない患者さんも少なからず存在します。

その理由として、日本の診断基準に、

3

入浴時あるいは嫌なことを見聞きすると気持ちが悪くなる

5

朝なかなか起きられず午前中調子が悪い

 
という「ココロの影響を受けるような項目」を入れてしまったから、
という意見もあります。
「嫌なことを見聞きすると気持ちが悪くなる」って誰でもそうですよね。
 
ですから、起立性調節障害と診断され、
西洋薬を処方されても 効果が今ひとつの場合は、
ココロの問題も関与している可能性を考え、
スクールカウンセラーに相談することと、
漢方薬の使用を提案しています。

起立性調節障害の症状を漢方医学用語に置き換えてみると、

(立ちくらみ、めまい、乗り物酔い、朝起きられない、頭痛)
 → 水バランスをうまく取れない体質(水毒・水滞

(腹痛、嫌なことを聞くと気分不快)
 → ストレスに過敏に反応しやすい体質(気うつ・肝鬱

という体質をベースに、

(怠い、疲れやすい、朝起きられない)
 → 人間関係で気力を使い果たして疲れている状態(気虚

(顔色が悪い)
 → それが長く続き身も心も疲れている状態(血虚

などが加わった病態と考えられます(諸説あり)。

上記を参考に、その人の体質・体調に合った薬を選択します。
体に合う漢方に出会うと、身も心も少し楽になることが期待できます。 
 

▶ 起立性調節障害に効く漢方薬


<基礎編>

倦怠感がメイン
・朝起きられない、めまい/たちくらみ、車酔い 苓桂朮甘湯39)(

        +胃腸虚弱・頭痛・めまい   半夏白朮天麻湯(37)

・朝起きられない、だるい・しんどい  補中益気湯41
※ 苓桂朮甘湯の効果が今ひとつ  苓桂朮甘湯(39)四物湯71)(連珠飲の方意) 


痛みがメイン
・おなかが痛い、虚弱        小建中湯99

・おなかが痛い・頭が痛い・ストレス 柴胡桂枝湯10

・心身症(ストレスによる体の症状)
 → 抑肝散54)、抑肝散加陳皮半夏83)、柴胡加竜骨牡蛎湯12


月経の影響あり
・生理中に悪化 → 当帰芍薬散(23)、加味逍遥散(24)、桂枝茯苓丸(25


<応用編>
〜上記薬剤でも手応えが今ひとつの場合に考慮

● 倦怠感(+α) に効く漢方薬
〜とにかく怠くてつらい、動けない、朝起きられないときに。
・倦怠感(とにかくだるい) → 補中益気湯(41)
・倦怠感 + 貧血・皮膚乾燥  → 十全大補湯(48)
・倦怠感 + めまい・頭痛   → 半夏白朮天麻湯(37)
・倦怠感 + 不安・落ち込み  → 加味帰脾湯(137)

・倦怠感 + 胃もたれ・冷え  → 六君子湯(43) 


● 
不安感(+α)に効く漢方薬

〜漢方には思春期の不安に寄り添う薬も用意されています。
・悲しみ・パニック・感情失禁  → 甘麦大棗湯(72)
  単剤で効果不十分なら   → 苓桂甘棗湯:甘麦大棗湯(72)+苓桂朮甘湯(39)
  慢性期には        → 苓桂朮甘湯(39)+桂枝加竜骨牡蛎湯(26)
・喉のつまり          → 半夏厚朴湯(16)
・不安で心配でたまらない、体力なし、無気力 → 加味帰脾湯(137)

・ストレス、動悸、体力あり → 柴胡加竜骨牡蛎湯(12) 

さらに、不安・緊張・怒りに効く漢方について知りたい方は、
こちらもご参照ください。
 

苦い漢方薬を子どもが飲めるわけがない!と思いがちですが、
それはあなたの思い込みです。

いろいろ試してみると、活路が見いだせます。
以下の内容は、当院スタッフが実際に味見をして作成したモノです。
ぜひお試しください。

(乳児期)

口内なすりつけ法
 漢方薬を少量のお湯で練ってペースト状にして、
 授乳前にほっぺの内側になすりつけます。
 残りは冷蔵庫保存し、授乳のたびに繰り返し。
 一日が終わったら破棄し、翌日また新しく作成。
 

ヨーグルトで食べさせる:生後6ヶ月以降
 混ぜるのではなくサンドして隠すイメージで。
 子どもが気づいたらヨーグルトだけの部分を食べさせて、
 ごまかしごまかし飲ませましょう。


(幼児期以降) 
液体・半固形物に溶かして味をわからなくする方法を伝授します。
   


小青竜湯

葛根湯加川芎辛夷

辛夷清肺湯

小柴胡湯加桔梗石膏

五虎湯

麦門冬湯

五苓散

半夏瀉心湯

小建中湯

黄耆建中湯

桂枝加黄耆湯

温清飲

甘麦大棗湯

抑肝散

柴胡加竜骨牡蛎湯

オレンジJ

× 

× 

× 

× 

× 

× 

× 

リンゴJ

× 

× 

× 

× 

牛乳

× 

× 

× 

× 

コーヒー牛乳

× 

× 

× 

カルピス

× 

× 

× 

× 

× 

× 

マミー



× 








× 

× 


ココア/ミロ

野菜ジュース(黄)

× 

× 

チョコアイス

× 

× 

バニラアイス

× 

× 

クッキー&クリーム

× 

× 

 


現在、日本では子どもの3人に1人が睡眠関連の悩みを抱えている、
というデータがあります。
もう、他人事ではありません。
眠れないお子さんへの日常生活に関するアドバイスを以下に記載しました:


■ 睡眠のスケジュール

・ふとんに入る時間・起きる時間は、
 毎日ほぼ同じ時間になるようにしましょう。

・睡眠時間に週末と平日の差があっても、
 1時間以内になるようにしましょう。

・人間の体は“寝だめ”はできないしくみになっています。
 週末寝だめをして、睡眠不足を解消するのはやめましょう。

 

■ 日光を浴びる

・朝、日光を浴びることは、
 正常な睡眠覚醒の体内時計(サーカディアン・リズム)を
 維持することに役立ちます。

  

■ 定期的な運動

・毎日、日中は外で活動する時間を作りましょう。 

 

■ 昼寝の可否

・低年齢(3歳未満)の子どもには
 昼寝は必要であり、問題ありません。

・高年齢(5歳以降)の子どもでは、
 昼寝をすると夜の寝付きが悪くなるので長時間の昼寝は避けましょう。
 ただし個人差があります。

 

■ 電子メディア

・テレビ、パソコン、スマホなどによる強い視覚刺激は、
 寝付きの妨げになるので、寝室には置かないようにしましょう。 

 

■ 夕方の活動

・ふとんに入るまでの時間は穏やかに静かに過ごすようにつとめ、
 テレビゲーム(スマホゲーム)のような興奮する活動は避けましょう。

 

■ カフェイン

・カフェインはふとんに入る前の3~4時間は避けましょう。
・カフェインは炭酸飲料、コーヒー、アイスティーなどに入ってます。
★ 麦茶、ルイボスティー、十六茶には入っていません。 


■ 規則正しい食事

・毎日決まった時間の食生活を心がけましょう。 

・ふとんに入る1~2時間前の食事は睡眠の妨げになります。

・お腹が空いたままでは眠れない、途中で目が覚めるため、
 その時間帯に食べることも仕方ない場合があります。
 ミルクやクッキーのような軽食ならよいでしょう。 

 

■ ふとんに入るときの習慣

・ふとんに入るときの20~30分間の習慣を作りましょう。

・本を読む、その日のことを話すなど、
 静かで楽しい活動を寝室で行いましょう。

 

■ 寝室の環境 

・暗くして、気持ちがよく快適な静かな環境にしましょう。

・部屋の温度は23~24℃以下で涼しめにしましょう。

・ふとんに入ったら、睡眠に関係のない勉強、電話などは控えましょう。 


・・・以上のことを試してみても、
やはり眠れなくて昼間の生活に支障が出る場合、
子どもには成人用の睡眠薬は使えないため、
当院では漢方薬を提案しています。

体質に合う漢方薬が見つかると、悩み軽減が期待できます。

▶ 睡眠の悩みに効く漢方薬 


(乳児期)夜泣き

 + 泣き虫、シクシク泣く、不安 → 甘麦大棗湯(72)

 + 怒りんぼ、ギャーギャー泣く、かんしゃくもち → 抑肝散(54)

 

(幼児期・学童期)眠らない・眠れない

 + 不安・泣き虫・あくび → 甘麦大棗湯(72)

 + 神経質・イライラ・多動 → 抑肝散(54)

 + 反復性腹痛・虚弱 → 小建中湯(99)

 + 鼻閉・口を開けて寝ている → 葛根湯加川芎辛夷(2)


(思春期)眠れない・朝起きられない

 + 不安 → 甘麦大棗湯(72)

 + イライラ・興奮 → 抑肝散(54)

 + 動悸・ストレス・恐怖 → 柴胡加竜骨牡蛎湯(12)

 + うつうつ、不安・心配だらけ → 加味帰脾湯(137)

+ 心身ともに疲れて眠れない → 酸棗仁湯(103)


・・・乳児期〜幼児期〜学童期〜思春期に共通して登場する、
抑肝散は「自律神経の日内リズムの狂い」、つまり、
「昼間の交感神経優位 → 夜間の副交感神経優位」への移行
がうまくいかない状態を改善してくれます。
交感神経亢進状態をやわらげることにより、
緊張から解放されて眠りにつける、とされています。
 
現代社会では大人も子どもも交感神経亢進状態を強いられ、
それによる健康障害が発生しがちです。
自律神経失調によるカラダの不調は“現代病” と言えるかもしれません。
 

乳幼児健診では「偏食」の悩みも多い相談事です。

ひとくちに「偏食」と言っても、
程度により2つに分けられると思います。

 

1.好き嫌い:嫌いなモノは数種類以内で、成長・発育に問題なし

2.偏食:嫌いなモノがたくさんあり、成長・発育が心配

  

1の「好き嫌い」のレベルであれば、

日々の食事の工夫で乗り切れることが多いです。

2の「偏食」の場合は程度により、

専門的な介入が必要になることがあります。

解説サイトを用意したのでご参照ください。   


子どもの好き嫌い・偏食
 

偏食にダイレクトに効く薬はありませんが、
漢方はお腹を温めて腸内細菌の善玉菌を増やし、
元気を底上げして食欲増加&偏食軽減が期待できます。

 

● 基本薬は小建中湯(99)。
オリゴ糖入り(※)でほんのり甘くて飲みやすい薬です。

小建中湯で効果が得られない場合は、
他の症状も考慮して数種類を使い分けます。

 

● 偏食+便秘  → 桂枝加芍薬大黄湯(134)

● 偏食+冷え  → 人参湯(32)

● 偏食+緊張  → 柴胡桂枝湯(10)

● 偏食+腹痛  → 安中散(5)

 

もしお子さんに睡眠の問題があれば、
そちらを先に解決することをお勧めします。

子どもの睡眠の悩みに漢方を
 

良質な睡眠 → 昼間の活動量増加 →
 → お腹が空いて食事量増加 → 偏食・便秘解消

というよい循環が作られます。



※ オリゴ糖入りの小建中湯;
小建中湯には「膠飴」という水飴成分がたくさん入っています。
これはほぼ麦芽糖であり、現代医学ではオリゴ糖に分類されています。 
小建中湯が漢方医学のテキストである『傷寒論』 に記載されたのは、
なんと今から1800年前の昔です。
つまり、1800年前の中国の医師達は、
子どもにオリゴ糖を飲ませ続けると体調がよくなることをすでに発見していた、
ということになります。
逆に言うと、子どもの健康を底上げしてくれる漢方薬の薬効の一つは、
オリゴ糖であったと現代医学が解明したということ。
この事実を知ったとき、私は感動して体が震えました。 
これからも漢方薬の薬効を現代医学が解明していくことでしょう。
 

ともに乳児健診で多い相談事です。
1歳半健診や3歳児健診では毎回、耳にします。

残念ながら西洋医学では、
「環境を整えて様子を見ましょう」
という指導しかできません。

しかし漢方では対応可能です。
漢方薬にはカラダに効く生薬だけでなく、
ココロに効く生薬が必ずと言っていいほど入ってます。

そのお子さんの症状、性格、体調などを考慮し、
体に合う漢方薬が見つかると悩み軽減が期待できます。


<基礎編> 

かんしゃく・夜泣きなどの “乳幼児のココロの問題” を、
不安緊張怒りというキーワードを用いて分類し、
以下のように漢方薬を使い分けます。

1.
不安

性格:心配性、不安、怯え、怖がり、泣き虫
症状:夜なき、不安~パニック発作、こだわり、言葉の遅れ、
   コミュニケーション障害、感覚過敏、自信のなさ
睡眠:不安で目が覚める、目覚めると母を探す、心配で眠れない
漢方:甘麦大棗湯(72)、酸棗仁湯(103)、加味帰脾湯(137)


2.
緊張

性格:イライラ、ドキドキ、憂うつ、ヒステリック
症状:かんしゃく、不注意、落ち着きのなさ、緊張しやすい
睡眠:歯ぎしり、夜驚症、夢が多い
漢方:四逆散(35)、柴朴湯(96)、加味逍遥散(24)、香蘇散(70)


3.
怒り・興奮

性格:怒りんぼ、落ち着きがない
症状:夜なき、強いかんしゃく、焦燥感、易刺激性、多動
睡眠:寝付きに時間がかかる(入眠困難)、激しく泣く、完全に覚醒して遊ぶ
漢方:黄連解毒湯(15)

 

<応用編>
上記の漢方薬で効果が今ひとつの時は、
子どもの様子をよく観察し、以下の漢方薬も考慮します。

 

1+2(不安+緊張柴胡加竜骨牡蛎湯(12)

2+3(緊張>怒り大柴胡湯(8)/大柴胡湯去大黄

3+2(怒り>緊張抑肝散(54)/抑肝散加陳皮半夏(83)


「不安と緊張」「緊張と怒り」を明確に分離することは難しく、
現実には混在することが多いと感じます。
外来ではこれらの漢方薬を処方する機会が多いですね。
 
余談ですが、「不安」と「緊張」は分けられるのか?とAIに訊いてみました。
すると明確な答えが返ってきました。

・心理学において「不安」と「緊張」は異なる感情として考えられています。

不安は、漠然とした心配や恐れを伴う感情であり、
 特定の原因が明確でない場合もあります。
 これは、未来に対する予期不安や、
 何か悪いことが起こるのではないかという感覚から生じます

緊張は、特定の出来事や状況に対する反応として現れます。
 例えば、試験やプレゼンテーションの際に感じる緊張は、
 具体的な状況に対する身構えた状態を指します。
 緊張は、身体的な緊張感や心の高まりを伴うことが多いです

・このように、不安は一般的で漠然とした感情であり、
 緊張は特定の状況に対する反応であるため、
 心理学ではこれらを分けて考えます。
 また、不安が続くことで緊張状態になることもあれば、
 緊張から不安が生じることもあります。
 したがって、両者は関連しつつも異なる感情として理解されるべきです。


・・・なるほど。 

 〜繰り返す、治りにくい、鼻づまりがつらい〜

乳幼児に集団生活が始まると風邪の洗礼を受けます。

中には「治る&もらう」を繰り返し、
「うちの子、免疫力が弱いのかしら」
と家族が不安になるケースも。
基本的に風邪を引いても、治って一旦元気になって、
またもらうパターンは心配ありません。
ただ、風邪の原因ウイルスは200種類もあるのでエンドレスです。

日々の診療では、

 「入園してからずっと風邪を引いてます」

 「かぜ薬を飲んでいるけどなかなか治りません」

 「鼻水・鼻づまりがつらそうで、夜眠れません」

 「咳止めを使っているのに夜中に咳き込んで目が覚めます」

等の悩みを、保護者の方からよく聞きます。
 

西洋薬で解決できないこのような悩みを、
漢方薬が改善・解決してくれる可能性があり、
当院では漢方薬の併用をオススメしています。


お役立ちケースを紹介します;

▶ 風邪を繰り返す、ずっと風邪を引いている

 → 漢方薬で風邪の回数と程度が軽くなることが期待できます。
 体力を底上げして健康になる薬、
 風邪を予防する薬、
 慢性の炎症を抑える薬、
 などがあります。

(例)小建中湯(99)、黄耆建中湯(98)、補中益気湯(41)

  柴胡清肝湯(80)、柴胡桂枝湯(10)

▶ 鼻水・鼻づまりが治りきらない、夜がつらそう

 → 鼻汁・鼻づまりは漢方の得意分野、西洋薬よりも効きます。
 透明な水様鼻汁、にごった白色鼻汁、青っぱなが止まらない・・・
 など、鼻水の様子で使い分けます。

 (例)小青竜湯(19)、葛根湯加川芎辛夷(2)、辛夷清肺湯(104)

  上記薬剤に小柴胡湯(9)/小柴胡湯加桔梗石膏(109)併用で効果アップ


▶ 薬を飲んでいるのに咳が止まらない

 → 乾いた咳、湿った咳、エヘン虫の咳、後鼻漏による咳、
 などで使い分けます。
 西洋薬で改善しない咳や、咳払いのクセにも効果が期待できます。

(例)麦門冬湯(29)、五虎湯(95)、半夏厚朴湯(16)、柴朴湯(96)、

   葛根湯加川芎辛夷(2)、辛夷清肺湯(104)


↑このページのトップヘ