子どもが体調不良を訴え病院を受診、しかし検査で異常は見つからず、
「気のせいでしょう」
と言われたり、ストレスの原因が判明した場合は、
「ストレスを減らして回復を待ちましょう」
などと言われることがあります。
これが西洋医学の限界です。
しかし漢方医学では「心身一如」と言って、
「カラダの問題はココロの問題、ココロの問題はカラダの問題」
とリンクして考え、それに対応する薬がたくさん用意されています。
ココロの負担をやわらげて、健康を底上げすることができるのです。
人がストレスにさらされたときの生体反応には一定の法則があります(セリエのストレス学説)。
それに沿って漢方薬適用を説明すると理解しやすいです。
最初に「まとめ」を提示しておきます;
▶ ストレス反応の経過図(Direct Communication より)

▶ 第一段階(警告反応期)→ 気逆
適応方剤;
● 苓桂甘棗湯:苓桂朮甘湯(39)+甘麦大棗湯(72)
・驚きやすく動悸がする
● 苓桂朮甘湯(39)
・立ちくらみ、めまい、動悸、頭冒感
● 黄連湯(120)
・胃停滞・重圧感、胃痛、冷えのぼせ
▶ 第二段階(抵抗期)→ 気滞・気うつ
適応方剤;
(厚朴+杏仁)→ 桂枝加厚朴杏仁湯
・気逆による咳
(厚朴+蘇葉)→ 半夏厚朴湯、柴朴湯、茯苓飲合半夏厚朴湯
・梅核気、気逆・気滞を治す
(厚朴+蒼朮)→ 平胃散
・上腹部の膨満
(厚朴+枳実)→ 大承気湯、小承気湯、潤腸湯、通導散、麻子仁丸、茯苓飲合半夏厚朴湯
・下腹部・腹部全体の膨満
▶ 第三段階(疲憊期)→ 気虚
適応方剤;
● 四君子湯(補気)…無気力、疲労感
● 六君子湯(補気+行気)…痰、胃もたれ、食欲不振
● 補中益気湯(補気+升堤)…胃腸虚弱、皮膚虚弱、微熱を伴う疲労
● 十全大補湯(補気+補血)…胃腸虚弱、皮膚虚弱、貧血、(硬便)
● 人参養栄湯(補気+補血+不安鎮静)…胃腸虚弱、肺虚弱、ストレス性不眠
子どもでも日々の生活の中でストレスがたまります。
ただ、その解消法はどうでしょうか。
大人では運動したり、趣味に走ったり、瞑想したり、好きな物を食べたり・・・いろいろ思いつきますが、子どもにはあまり用意されていません。
子どもが大きなストレスを経験して受け止めきれず、逃れられなくなると、自罰的に受け入れて不安や恐怖を抱いて緊張する傾向があります。
それらの感情を言語化する能力も未発達のため、泣いたり怒りやすくなったりして感情が不安定になり、それがいろいろな症状として現れることがあります。
例えば・・・
食欲不振、嘔気・嘔吐、腹痛、下痢、便秘、
頭痛、めまい、失神、全身の振戦
口渇、手掌・足底・腋窩の発汗、
頻尿、頻脈・動悸、過呼吸発作
等々。
周囲の大人は、これらの症状を「ストレスかも?」と周囲が気付くことが大切です。
さて、人がストレスにさらされたとき、どう反応するのでしょう。
人それぞれではありますが、そこに一定の法則を見いだせます。
以下に紹介するのは「セリエのストレス学説」として知られているものです。
これを漢方に応用することが以前から試みられてきました。
▶ ストレス症状の病態理解と漢方
● 第一段階(警告反応期)→ 気逆
・ストレッサーに襲われた時期
・カラダに不調が現れる
(体内変化)
・交感神経活性化
● 第二段階(抵抗期)→ 気滞・気うつ
・ストレスに抵抗している時期
・体の不調がなくなる
(体内変化)
・コルチゾール分泌亢進
・抗ストレス作用増強
・甘草がコルチゾール分解抑制
● 第三段階(疲憊期)→ 気虚
・ストレスに抵抗する力がなくなる
・このままストレッサーにさらされると病気などになってしまう
(体内変化)
・胸腺萎縮、リンパ球減少、易感染性
・脳神経細胞萎縮
・無気力、感情鈍麻、抑うつ状態
つまり、人がストレスにさらされた時の反応過程は、
気逆 → 気滞・気鬱 → 気虚
という経過を辿ると漢方学的に考えることができます。
では、それぞれに対する漢方治療を考えてみましょう。
気逆を評価をする際、その症状を点数化した「寺澤のスコア」が役に立ちます。
▶ 気逆スコア(寺澤捷年)
14:冷えのぼせ
14:臍上悸
10:努責を伴う咳嗽
10:顔面紅潮(足の冷えはない)
8:動悸発作
8:発作性の頭痛
8:嘔吐(悪心は少ない)
8:焦燥感に襲われる
6:腹痛発作
6:物事に驚きやすい
4:下肢・四肢の冷え
4:手掌・足蹠の発汗
…合計30点以上は「気逆」
主に上半身の症状が多いですね。
健康な状態では「気」は上から下へ流れるとされますが、それが下から上へ逆行する病態が「気逆」のイメージです。
そしてそれを解消するためには、気の逆流を下向きにする方剤が使われます。
キーとなる生薬は「桂皮+甘草」です。
▶ 警告反応期(気逆)の漢方薬
● 原則:桂枝+甘草で気の逆流を下向きに
● 生薬:桂枝、紫蘇葉、半夏、黄連
● 方剤:
(苓桂甘棗湯)
・驚きやすく動悸がする
・苓桂朮甘湯+甘麦大棗湯
(苓桂朮甘湯)
・立ちくらみ、めまい、動悸、頭冒感
(黄連湯)
・胃停滞・重圧感、胃痛、冷えのぼせ
気逆の症状の一つ「頭痛」に頻用される漢方薬に五苓散がありますが、ストレス性頭痛には苓桂朮甘湯(39)の方が有効であるという意見もあります。
二剤の使い分けは以下の通り:
・五苓散の使用目標:目眩と口渇を伴う頭痛(二日酔い)、ときに嘔吐
・苓桂朮甘湯の使用目標:動悸と不安を伴う頭痛(頭冒感)
また、不安・緊張に焦点を当てると、
「芍薬+甘草」
の組み合わせが重要です。この組み合わせにより、
・脊髄神経のアドレナリン抑制系の選択的活性化
が起こります。その結果、
・眠気をきたさずに、不安緊張、動悸、発汗などのストレス症状を改善することができます。
代表的な方剤は四逆散です。「手汗」が使用目標です。
▶ 四逆散…漢方の交感神経抑制の特効薬
● 生薬構成:柴胡2-5;芍薬2-4;枳実2;甘草1-2
● 特徴
・日頃から不安緊張しやすいタイプに
・日中に眠気が出ず、夜に安眠できる自律神経調整薬
● 適応症状・所見:
胸脇苦満、肩背拘急、側胸部痛、心下痞硬
手足厥冷、掌蹠自汗、入眠不良、神経過敏
腹中痛、残便感、腹満、硬便傾向
● 鑑別処方
実証(緊張)→ 大柴胡湯
虚証(不安)→ 香蘇散
(不安+緊張)→ 柴胡疎肝散 ≒ 香蘇散+四逆散
次に、抵抗期(気滞・気鬱)相について考えてみます。
まさにストレスと闘っている真っ最中であり、セリエのストレス学説では「症状がない」ことになっています。
でも漢方では「戦う体力はあり負けてはいないが、勝てなくて苦しい戦いが続く」状態に薬が用意されています。
「気」が動かないため、痞えている・張っている、というイメージであり、具体的には「のどの痞え」「お腹の張り」と意識されます。
キーとなる生薬は「厚朴」です。
▶ 抵抗期(気滞・気うつ)の漢方薬
● 代表生薬:厚朴(ホウノキ樹皮)…胃腸代謝改善、下気、除湿、鎮咳去痰
● 応用
厚朴 + 杏仁 → 気逆による咳
(例)桂枝加厚朴杏仁湯
厚朴 + 蘇葉 → 梅核気、気逆・気滞を治す
(例)半夏厚朴湯、柴朴湯、茯苓飲合半夏厚朴湯
厚朴 + 蒼朮 → 上腹部の膨満
(例)平胃散
厚朴 + 枳実 → 下腹部・腹部全体の膨満
(例)大承気湯、小承気湯、潤腸湯、通導散、麻子仁丸、
茯苓飲合半夏厚朴湯
最後に気虚(ストレスと闘い気力を使い果たした状態)相です。
カラダに力が入らない、だるい、と疲れ果てたイメージですね。
キーとなる生薬は「人参+甘草」です。
▶ 気虚スコア(寺澤捷年)
…合計30点以上は「気虚」
10:体がだるい
10:気力がない
10:疲れやすい
10:内臓のアトニー症状
8:かぜをひきやすい
8:舌が淡白紅、腫大
8:脈が弱い
8:腹力が軟弱
6:日中の眠気
6:眼光、音声に力がない
6:小腹不仁(下腹に力がなく感覚低下)
4:食欲不振
4:物事に驚きやすい
4:下痢傾向
▶ 疲憊期(気虚)の漢方薬
● 原則:人参+甘草で補気、抗うつ作用
● 生薬:人参、黄耆、白朮、甘草、大棗
● 方剤
(四君子湯)胃腸虚弱、慢性胃炎、胃もたれ
(六君子湯)胃炎、胃アトニー、胃下垂、食欲不振
(補中益気湯)虚弱、疲労、食欲低下、胃下垂、寝汗
(人参湯)
● 気虚に対する漢方の使い分け
・四君子湯(補気)…無気力、疲労感
・六君子湯(補気+行気)…痰、胃もたれ、食欲不振
・補中益気湯(補気+升堤)…胃腸虚弱、皮膚虚弱、微熱を伴う疲労
・十全大補湯(補気+補血)…胃腸虚弱、皮膚虚弱、貧血、(硬便)
・人参養栄湯(補気+補血+不安鎮静)…胃腸虚弱、肺虚弱、ストレス性不眠
子ども体調不良の原因が、どうやらストレスによるものらしいと判明した際、どうしても「ストレス除去」に重きを置きがちです。
しかしそのストレスが除去しにくい環境である場合、周囲がまごまごしている間、子どもはストレスにさらされ続け、体調不良が継続・悪化する可能性があるという視点も必要です。
西洋医学の薬は、臓器や症状をピンポイントでターゲットにしており、その背景にあるストレスをカバーできません。
その点、漢方薬はココロに効く生薬が含まれているので、その子どもの状態に合う漢方が見つかれば手応えがあります。
▶ ストレス除去ばかりが優先されて気虚が放置され疲憊期が続くと生じる体の不調
・睡眠薬の効かない不眠症 → 不安の解消
(処方)鎮静生薬:竜骨牡蛎、柴胡芍薬、大棗甘草
・消化器薬が効かない消化器症状 → 参耆剤で捕脾
(処方)六君子湯、半夏厚朴湯など
・抗炎症薬の効かない微熱 → 補気免疫調整
(処方)補中益気湯、柴胡剤など
・いつも風邪気味で治りが悪い → 補陽、滋陰
(処方)建中湯類、柴胡桂枝湯、麦門冬湯、滋陰至宝湯
・鎮痛剤の効かない痛み → 補血、行血薬、抗不安
(処方)芍薬製剤、四物湯製剤、十全大補湯など
・休養しても疲れが取れない慢性疲労
(処方)参耆剤、去痰飲剤、抗不安剤など
「セリエのストレス学説」には「気」の異常が当てはめると説明しやすいですが、漢方医学にはその先の病態も想定されています。「気虚」が長引くと「血虚」に陥るのです。
つまり、
「気力を使い果たした」 → 「身も心も疲れ果てた」
という phase です。
また、子どもは気虚 → 血虚に進行しやすいことも指摘されています。
▶ 小児は容易に気虚から血虚(腎虚)になりやすい
・先天的な不足(成長障害)
・後天的な不足(栄養不良、吸収不良)…胃腸虚弱、強い偏食
・寒冷食品・飲料の食べ過ぎ、飲みすぎ
・長期の寒冷環境、冷房…寒冷ストレス
・深夜の不眠状態(夜遊び、徹夜)…睡眠(腎気補充)不足、メラトニン作用不足
・不安・恐怖、精神的ストレスの持続…疲弊期:脳萎縮
・気力、活力、精力、志が萎える…疲弊期:うつ状態
「気のせいでしょう」
と言われたり、ストレスの原因が判明した場合は、
「ストレスを減らして回復を待ちましょう」
などと言われることがあります。
これが西洋医学の限界です。
しかし漢方医学では「心身一如」と言って、
「カラダの問題はココロの問題、ココロの問題はカラダの問題」
とリンクして考え、それに対応する薬がたくさん用意されています。
ココロの負担をやわらげて、健康を底上げすることができるのです。
人がストレスにさらされたときの生体反応には一定の法則があります(セリエのストレス学説)。
それに沿って漢方薬適用を説明すると理解しやすいです。
最初に「まとめ」を提示しておきます;
▶ ストレス反応の経過図(Direct Communication より)

▶ 第一段階(警告反応期)→ 気逆
適応方剤;
● 苓桂甘棗湯:苓桂朮甘湯(39)+甘麦大棗湯(72)
・驚きやすく動悸がする
● 苓桂朮甘湯(39)
・立ちくらみ、めまい、動悸、頭冒感
● 黄連湯(120)
・胃停滞・重圧感、胃痛、冷えのぼせ
▶ 第二段階(抵抗期)→ 気滞・気うつ
適応方剤;
(厚朴+杏仁)→ 桂枝加厚朴杏仁湯
・気逆による咳
(厚朴+蘇葉)→ 半夏厚朴湯、柴朴湯、茯苓飲合半夏厚朴湯
・梅核気、気逆・気滞を治す
(厚朴+蒼朮)→ 平胃散
・上腹部の膨満
(厚朴+枳実)→ 大承気湯、小承気湯、潤腸湯、通導散、麻子仁丸、茯苓飲合半夏厚朴湯
・下腹部・腹部全体の膨満
▶ 第三段階(疲憊期)→ 気虚
適応方剤;
● 四君子湯(補気)…無気力、疲労感
● 六君子湯(補気+行気)…痰、胃もたれ、食欲不振
● 補中益気湯(補気+升堤)…胃腸虚弱、皮膚虚弱、微熱を伴う疲労
● 十全大補湯(補気+補血)…胃腸虚弱、皮膚虚弱、貧血、(硬便)
● 人参養栄湯(補気+補血+不安鎮静)…胃腸虚弱、肺虚弱、ストレス性不眠
子どもでも日々の生活の中でストレスがたまります。
ただ、その解消法はどうでしょうか。
大人では運動したり、趣味に走ったり、瞑想したり、好きな物を食べたり・・・いろいろ思いつきますが、子どもにはあまり用意されていません。
子どもが大きなストレスを経験して受け止めきれず、逃れられなくなると、自罰的に受け入れて不安や恐怖を抱いて緊張する傾向があります。
それらの感情を言語化する能力も未発達のため、泣いたり怒りやすくなったりして感情が不安定になり、それがいろいろな症状として現れることがあります。
例えば・・・
食欲不振、嘔気・嘔吐、腹痛、下痢、便秘、
頭痛、めまい、失神、全身の振戦
口渇、手掌・足底・腋窩の発汗、
頻尿、頻脈・動悸、過呼吸発作
等々。
周囲の大人は、これらの症状を「ストレスかも?」と周囲が気付くことが大切です。
さて、人がストレスにさらされたとき、どう反応するのでしょう。
人それぞれではありますが、そこに一定の法則を見いだせます。
以下に紹介するのは「セリエのストレス学説」として知られているものです。
これを漢方に応用することが以前から試みられてきました。
▶ ストレス症状の病態理解と漢方
● 第一段階(警告反応期)→ 気逆
・ストレッサーに襲われた時期
・カラダに不調が現れる
(体内変化)
・交感神経活性化
● 第二段階(抵抗期)→ 気滞・気うつ
・ストレスに抵抗している時期
・体の不調がなくなる
(体内変化)
・コルチゾール分泌亢進
・抗ストレス作用増強
・甘草がコルチゾール分解抑制
● 第三段階(疲憊期)→ 気虚
・ストレスに抵抗する力がなくなる
・このままストレッサーにさらされると病気などになってしまう
(体内変化)
・胸腺萎縮、リンパ球減少、易感染性
・脳神経細胞萎縮
・無気力、感情鈍麻、抑うつ状態
つまり、人がストレスにさらされた時の反応過程は、
気逆 → 気滞・気鬱 → 気虚
という経過を辿ると漢方学的に考えることができます。
では、それぞれに対する漢方治療を考えてみましょう。
気逆を評価をする際、その症状を点数化した「寺澤のスコア」が役に立ちます。
▶ 気逆スコア(寺澤捷年)
14:冷えのぼせ
14:臍上悸
10:努責を伴う咳嗽
10:顔面紅潮(足の冷えはない)
8:動悸発作
8:発作性の頭痛
8:嘔吐(悪心は少ない)
8:焦燥感に襲われる
6:腹痛発作
6:物事に驚きやすい
4:下肢・四肢の冷え
4:手掌・足蹠の発汗
…合計30点以上は「気逆」
主に上半身の症状が多いですね。
健康な状態では「気」は上から下へ流れるとされますが、それが下から上へ逆行する病態が「気逆」のイメージです。
そしてそれを解消するためには、気の逆流を下向きにする方剤が使われます。
キーとなる生薬は「桂皮+甘草」です。
▶ 警告反応期(気逆)の漢方薬
● 原則:桂枝+甘草で気の逆流を下向きに
● 生薬:桂枝、紫蘇葉、半夏、黄連
● 方剤:
(苓桂甘棗湯)
・驚きやすく動悸がする
・苓桂朮甘湯+甘麦大棗湯
(苓桂朮甘湯)
・立ちくらみ、めまい、動悸、頭冒感
(黄連湯)
・胃停滞・重圧感、胃痛、冷えのぼせ
気逆の症状の一つ「頭痛」に頻用される漢方薬に五苓散がありますが、ストレス性頭痛には苓桂朮甘湯(39)の方が有効であるという意見もあります。
二剤の使い分けは以下の通り:
・五苓散の使用目標:目眩と口渇を伴う頭痛(二日酔い)、ときに嘔吐
・苓桂朮甘湯の使用目標:動悸と不安を伴う頭痛(頭冒感)
また、不安・緊張に焦点を当てると、
「芍薬+甘草」
の組み合わせが重要です。この組み合わせにより、
・脊髄神経のアドレナリン抑制系の選択的活性化
が起こります。その結果、
・眠気をきたさずに、不安緊張、動悸、発汗などのストレス症状を改善することができます。
代表的な方剤は四逆散です。「手汗」が使用目標です。
▶ 四逆散…漢方の交感神経抑制の特効薬
● 生薬構成:柴胡2-5;芍薬2-4;枳実2;甘草1-2
● 特徴
・日頃から不安緊張しやすいタイプに
・日中に眠気が出ず、夜に安眠できる自律神経調整薬
● 適応症状・所見:
胸脇苦満、肩背拘急、側胸部痛、心下痞硬
手足厥冷、掌蹠自汗、入眠不良、神経過敏
腹中痛、残便感、腹満、硬便傾向
● 鑑別処方
実証(緊張)→ 大柴胡湯
虚証(不安)→ 香蘇散
(不安+緊張)→ 柴胡疎肝散 ≒ 香蘇散+四逆散
次に、抵抗期(気滞・気鬱)相について考えてみます。
まさにストレスと闘っている真っ最中であり、セリエのストレス学説では「症状がない」ことになっています。
でも漢方では「戦う体力はあり負けてはいないが、勝てなくて苦しい戦いが続く」状態に薬が用意されています。
「気」が動かないため、痞えている・張っている、というイメージであり、具体的には「のどの痞え」「お腹の張り」と意識されます。
キーとなる生薬は「厚朴」です。
▶ 抵抗期(気滞・気うつ)の漢方薬
● 代表生薬:厚朴(ホウノキ樹皮)…胃腸代謝改善、下気、除湿、鎮咳去痰
● 応用
厚朴 + 杏仁 → 気逆による咳
(例)桂枝加厚朴杏仁湯
厚朴 + 蘇葉 → 梅核気、気逆・気滞を治す
(例)半夏厚朴湯、柴朴湯、茯苓飲合半夏厚朴湯
厚朴 + 蒼朮 → 上腹部の膨満
(例)平胃散
厚朴 + 枳実 → 下腹部・腹部全体の膨満
(例)大承気湯、小承気湯、潤腸湯、通導散、麻子仁丸、
茯苓飲合半夏厚朴湯
最後に気虚(ストレスと闘い気力を使い果たした状態)相です。
カラダに力が入らない、だるい、と疲れ果てたイメージですね。
キーとなる生薬は「人参+甘草」です。
▶ 気虚スコア(寺澤捷年)
…合計30点以上は「気虚」
10:体がだるい
10:気力がない
10:疲れやすい
10:内臓のアトニー症状
8:かぜをひきやすい
8:舌が淡白紅、腫大
8:脈が弱い
8:腹力が軟弱
6:日中の眠気
6:眼光、音声に力がない
6:小腹不仁(下腹に力がなく感覚低下)
4:食欲不振
4:物事に驚きやすい
4:下痢傾向
▶ 疲憊期(気虚)の漢方薬
● 原則:人参+甘草で補気、抗うつ作用
● 生薬:人参、黄耆、白朮、甘草、大棗
● 方剤
(四君子湯)胃腸虚弱、慢性胃炎、胃もたれ
(六君子湯)胃炎、胃アトニー、胃下垂、食欲不振
(補中益気湯)虚弱、疲労、食欲低下、胃下垂、寝汗
(人参湯)
● 気虚に対する漢方の使い分け
・四君子湯(補気)…無気力、疲労感
・六君子湯(補気+行気)…痰、胃もたれ、食欲不振
・補中益気湯(補気+升堤)…胃腸虚弱、皮膚虚弱、微熱を伴う疲労
・十全大補湯(補気+補血)…胃腸虚弱、皮膚虚弱、貧血、(硬便)
・人参養栄湯(補気+補血+不安鎮静)…胃腸虚弱、肺虚弱、ストレス性不眠
子ども体調不良の原因が、どうやらストレスによるものらしいと判明した際、どうしても「ストレス除去」に重きを置きがちです。
しかしそのストレスが除去しにくい環境である場合、周囲がまごまごしている間、子どもはストレスにさらされ続け、体調不良が継続・悪化する可能性があるという視点も必要です。
西洋医学の薬は、臓器や症状をピンポイントでターゲットにしており、その背景にあるストレスをカバーできません。
その点、漢方薬はココロに効く生薬が含まれているので、その子どもの状態に合う漢方が見つかれば手応えがあります。
▶ ストレス除去ばかりが優先されて気虚が放置され疲憊期が続くと生じる体の不調
・睡眠薬の効かない不眠症 → 不安の解消
(処方)鎮静生薬:竜骨牡蛎、柴胡芍薬、大棗甘草
・消化器薬が効かない消化器症状 → 参耆剤で捕脾
(処方)六君子湯、半夏厚朴湯など
・抗炎症薬の効かない微熱 → 補気免疫調整
(処方)補中益気湯、柴胡剤など
・いつも風邪気味で治りが悪い → 補陽、滋陰
(処方)建中湯類、柴胡桂枝湯、麦門冬湯、滋陰至宝湯
・鎮痛剤の効かない痛み → 補血、行血薬、抗不安
(処方)芍薬製剤、四物湯製剤、十全大補湯など
・休養しても疲れが取れない慢性疲労
(処方)参耆剤、去痰飲剤、抗不安剤など
「セリエのストレス学説」には「気」の異常が当てはめると説明しやすいですが、漢方医学にはその先の病態も想定されています。「気虚」が長引くと「血虚」に陥るのです。
つまり、
「気力を使い果たした」 → 「身も心も疲れ果てた」
という phase です。
また、子どもは気虚 → 血虚に進行しやすいことも指摘されています。
▶ 小児は容易に気虚から血虚(腎虚)になりやすい
・先天的な不足(成長障害)
・後天的な不足(栄養不良、吸収不良)…胃腸虚弱、強い偏食
・寒冷食品・飲料の食べ過ぎ、飲みすぎ
・長期の寒冷環境、冷房…寒冷ストレス
・深夜の不眠状態(夜遊び、徹夜)…睡眠(腎気補充)不足、メラトニン作用不足
・不安・恐怖、精神的ストレスの持続…疲弊期:脳萎縮
・気力、活力、精力、志が萎える…疲弊期:うつ状態