2025年12月

小児とは無縁というイメージのある「ドーピング」。でもスポーツが盛んな昨今、無視もできないようです。
子どものドーピングと注意すべきサプリメントについての解説を読んでみましたので、ポイントと思われる箇所を抜粋して紹介します。

▶ サプリメントとは?
サプリメントについての法律上の定義はなく,一般に「特定成分が濃縮された錠剤やカプセル形態の製品」が該当し,いわゆる「健康食品」として位置づけられている。そして,サプリメントを含む, 栄養補助食品,健康補助食品,栄養調整食品は,販売業者等が独自の判断で販売,そして機能性の表示をで きないことになっている。このように,明確な定義 がないためにサプリメントの種類は多岐にわたっており,健康被害の報告も後を絶たないのである。

▶ 子どもにサプリメントは必要?

サプリメントは,食事では不足する栄養素を補充する目的で用いられることが多いが,健康な子どもは必要な栄養素を食事から十分に補うことができるので,特殊な状況を除いてはサプリメントを利用する必要性はほとんどない。

▶ スポーツとサプリメントとドーピング

国内外で多数の健康食品やサプリメントが入手できるが,世界アンチ・ドーピング機構(WADA)は, スポーツでのサプリメントの使用を推奨していない。

アスリートは,身体活動量,つまりエネルギー消費量が多くなるので,それに見合った食事をすることが難しい場合がある。その場合は,必要量を満たすことができいビタミンやミネラルを補充するためにサプリメントを使用することになる。しかし,サプリメントは含 有成分がすべて明らかではないため,ドーピング禁止 薬物が混入している可能性もあり,製造工程などで禁止物質が意図せず混入してしまっているコンタミネー ション(通称 コンタミ)の可能性もある。コンタミはドーピング違反の事例として頻発している。
2019年 4月に「スポーツにおけるサプリメントの製品情報公 開の枠組みに関するガイドライン」が公表された。 今後,日本のサプリメントによるアンチ・ドーピング は,このガイドラインに沿って進んでいくことになっており,安全性の高い商品を選択するための情報として,第三者機関による認証プログラムがある。こ のガイドラインに合致していると思われるアンチ・ ドーピング認証プログラムは,インフォームドスポー ツ,インフォームドチョイス,BSCG の3つとされ ている。なお,日本スポーツ栄養協会公式情報サイトで,認証マークのついた商品リストを調べることができるようになっている。本来は,食事からエネルギーや必要な栄養素をとることが基本である。 ジュニアアスリートを含め,成長期の子どもについて は,バランスよく食事をとることが重要で,サプリメントが必要なほど身体活動をさせてはいけないと考える。


▶ ドーピングとは?

ドーピングとは,「スポーツにおいて禁止されている物質や方法によって競技能力を高め,意図的に自分 だけが優位に立ち,勝利を得ようとする行為」のことで,禁止薬物を意図的に使用することだけをドーピングと呼びがちであるが,それだけではない。意図的であるかどうかにかかわらず,ルールに反するさまざまな競技能力を高める「方法」や,それらの行為を「隠すこと」も含めて,ドーピングと呼ばれる
わが国でのドーピング違反は諸外国に比べ極めて低いが,その違反例の多くは,ドーピングによる競技向上を意図しない「うっかりドーピング」であると言われている。「うっかりドーピング」に処方薬や市販薬などの医薬品の服用が該当することもある。子どもを含め,保護者や指導者に対して,ドーピングに関する十分な知識の教育が必要である。

アンチ・ドーピングとは,ドーピング行為に反対し,スポーツがスポーツとして成り立つための教育・啓発や検査といったさまざまな活動のことである。スポーツは,そもそも,その参加者がフェアで なければ成り立たない。日本アンチ・ドーピング機 構(JADA)は,アンチ・ドーピング活動によって, すべての人がフェアであることを支え,アスリートの健康を保護するために,ドーピングの撲滅を目指している。アスリート対象だけでなく,アスリートがドーピングのリスクを理解し,そのうえで自分自身,自分の取り組む競技,スポーツ全体を守るために具体的な行動を行うことや,その教育活動を推進することもアンチ・ドーピングである。なお,日本では2018年10月1日に「スポーツにおけるドーピングの防止活動の推進に関する法律」が施行されている。 

★ 処方薬でドーピングに抵触する例

1) 糖尿病 治療薬のインスリン
2) ぜん息治療薬のベータ 2 作用薬
3) 痛風 治療薬のプロベネシド
4) 高血圧治療薬の利尿薬・ベータ遮断薬(特定競技のみ)など
 → 具体的には主治医に相談するか、以下の検索・相談サイトを利用


★ あなたに処方されている薬剤が禁止されているかどうか調べる検索サイト
grobal DRO

★ 薬剤師への相談窓口
薬剤師会アンチ・ドーピングホットライン
 → 電話で問い合わせ、メールやFAXでやり取りをするようです。


<参考>
・ 子どもの運動スポーツとサプリメント・ドーピング(小児保健研究、第80巻 第6号,2021)
アンチ・ドーピングQ&A(日本スポーツ協会)
アンチ・ドーピング使用可能薬リスト(2025年版)
・薬剤師のための「アンチ・ドーピングガイドブック2025」(日本薬剤師会、日本スポーツ協会)

「赤ちゃんの便に血が混じっている!」と驚いて受診される方が時々います。
ほかの病気を除外することが優先されますが、元気で食欲・機嫌共に良好な場合は「リンパ濾胞増殖症」のことが多いです。
ちょっと聞き慣れない病名ですよね・・・。

生後6ヶ月までの赤ちゃんに認められ、便の中に線状または点状の新鮮血(赤い血)が混じり、その多くは直腸から出血する良性のものです。
出血量は少なく、貧血になることはありません。

赤ちゃんは基本的に元気(哺乳良好、体重増加良好、腹痛なし)です。
もし、哺乳量低下、体重増加不良、グズりがちの場合は、病気が隠れていないかどうか、検討が必要です。

母乳栄養の赤ちゃんに多いことから、以前は「母乳性血便」と呼ばれていました。
近年は病態解明が進み「リンパ濾胞増殖症」による直腸粘膜からの出血と考えられるようになりました。
しかし詳細なメカニズムはまだ不明であり、消化管アレルギーとの関連も議論されています(※)。
ただし、食物除去などの治療は必要なく、自然経過で数ヶ月以内に軽快します。

頻度は低いものの、鑑別が必要な病気として以下のものが挙げられます。
・メッケル憩室
・若年性ポリープ
・家族性大腸ポリポージス
・腸回転異常
・消化管穿孔
・腸重積症
・ヒルシュスプルング病
・壊死性腸炎
など。

新生児-乳児消化管アレルギー(新生児-乳児食物たんぱく誘発胃腸炎、FPIES)
・食物抗原が原因で消化器症状を認める疾患
・嘔吐、下痢、下血、腹部膨満、哺乳力減少、不活発、体重増加不良、イレウス、発育障害
・特異的IgE交代は必ずしも上昇しない。
・診断;
 治療乳への変更による症状消失
 食物負荷試験による症状誘発
 消化管組織検査、便粘膜細胞診、リンパ球刺激試験


<参考>
乳児にみられる血便(小林茂俊Dr.、帝京大学教授)小児科診療 UP-to DATE、2017年
赤ちゃんの血便とリンパ濾胞増殖症(御前崎総合病院) 

漢方を勉強する医師は誰でも知っている「寺澤の気血水スコア」。
千葉大学の寺澤捷年先生が作成したもので、「絵で見る和漢診療学」という書籍に収められています。
これは膨大なデータから抽出した症状・所見と気血水証の関連を数字化したものです。
いつでも見やすいように備忘録として残しておきます。



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(応用例)
思春期に問題になる「起立性調節障害」の診断基準の各項目に当てはまる気血水の病態を考えてみると、以下のようになります;

1.たちくらみ・めまい    → 水毒
2.立位が長いと気分不快、転倒 → 水毒
3.湯あたりしやすい(短い入浴) → 水毒
嫌なことを見聞きすると気分不快
4.動悸・息切れしやすい   → 気逆・血虚
5.朝起き不良、午前中調子が悪い → 気うつ
6.顔色が悪い        → 血虚
7.食欲不振         → 気虚・脾虚
8.腹痛を反復        → 脾虚
9.だるい・疲れやすい    → 気虚・脾虚
10.頭痛を反復        → 水毒
11.乗り物酔い        → 水毒

以上より、起立性調節障害を漢方医学的に考察・解析すると、
①(水毒+脾虚)体質の子どもが、
② 思春期に強いストレスにさらされて、
③ 気の異常(気逆・気うつ・気虚)をきたす
という病態が見えてきます。
3の
嫌なことを見聞きすると気分不快)は誰でもありそうですが、あえて漢方概念に当てはめれば、気うつ〜気虚でしょうか。
各用語の意味は、

水毒:水分バランスがうまく取れない
脾虚:胃腸虚弱
ストレス反応の経過
 最初はあらがう → 気逆
 ガップリよつで対峙 → 気うつ
 気力を消耗 → 気虚

・・・そして各病態に対応する薬が、漢方には用意されています。

水毒:苓桂朮甘湯(39)
脾虚:小建中湯(99)
気逆:苓桂朮甘湯(39)、柴胡桂枝湯(10)、柴胡加竜骨牡蛎湯(12)
気うつ:半夏厚朴湯(16)
気虚:補中益気湯(41)

これらを組み合わせて処方しています。



■ 治癒後4週間以上開けるもの
・麻疹
・風疹
・流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)
・水痘(水ぼうそう)
・帯状疱疹
・マイコプラズマ肺炎
・ノロウイルス胃腸炎

■ 治癒後2週間以上開けるもの
・突発性発疹
・百日咳
・伝染性紅斑(りんご病)
・ヘルパンギーナ
・咽頭結膜熱(プール熱)
・手足口病
・アデノウイルス
・流行性角結膜炎
・単純ヘルペス
・インフルエンザ
・RSウイルス
・ヒトニューモメタウイルス
・溶連菌 

■ 治癒していれば接種可能
・伝染性膿痂疹(とびひ)
 
感染症後の予防接種間隔(するがCC)
 

★ 12歳未満の小児に処方できる内服薬は、2025年12月現在、存在しない。

(凡例)
 ① 投与対象
 ② ワクチン未接種者への有効性
 ③ ワクチン接種者への有効性
 ④ 一緒に服用してはいけない薬
 ⑤ 妊婦への投与

ラゲブリオ
① 重症化リスクのある軽症〜中等症Iの18歳以上
② 入院・死亡リスク30%減
③ (未評価)
④ なし
⑤ 禁忌

パキロビッド
① 重症化リスクのある軽症〜中等症Iの12歳以上・40kg以上
② 入院・死亡リスク89%減
③ 救急受診・入院。重症化・死亡リスク約50%減
④ 39種類
⑤ 禁忌ではない
 
ゾコーバ
① 重症化リスクのない軽症〜中等症Iの12歳以上
② (未評価)
③ 症状回復期間を24時間短縮
④ 36種類
⑤  禁忌

私は西洋医学を学んだ小児科医ですが、医師になって15年目くらいに漢方に出会い、漢方沼にはまってしまいました。
西洋医学的には病気と考えない不定愁訴(検査で異常が見つからない体の不調)に対応する薬がたくさん用意されているのです。
これはひとえに、ココロとカラダはリンクして症状を作るという「心身一如」という基本概念が漢方にはあるからです。
一方の西洋医学はいつの頃からかココロとカラダを切り離して考えるようになり、不定愁訴に対応できなくなりました。ようやく近年、「心身相関」として介入し始めたところ。

さて、思春期の子どもたちが悩まされる起立性調節障害。
私は元々虚弱系の子どもたち(漢方医学で言う脾虚)が、ストレスにさらされて辛い状態になると捉えています。
漢方的には、色々な専門家たちが様々な視点から治療法を提案しています。
それらの耳学問から私がまとめた表を提示します。

基本処方

めまい立ちくらみ型

 

立ちくらみ、めまい、動悸、息切れ、乗り物酔い

苓桂朮甘湯(39)


立ちくらみ、めまい+胃腸虚弱・冷え

半夏白朮天麻湯(37)

循環虚弱型

めまい、脳貧血、動悸など

半夏白朮天麻湯(37)

低血圧型

立っていると気持ちが悪い、

とにかく怠い

朝起き不良、易疲労、顔色蒼白

補中益気湯(41)

―他剤無効

虚弱、易疲労、(頭痛がない)

補中益気湯(41)

疼痛型:
 頭痛・腹痛

立ちくらみ、食欲不振、習慣性頭痛、乗り物酔い

半夏白朮天麻湯(37)

五苓散(17)


頭痛・腹痛・ストレス

柴胡桂枝湯(10)


虚弱体質、腹痛

小建中湯(99)


動悸、腹痛、頭痛、食欲不振

小建中湯(99)

柴胡桂枝湯(10)

ー胃腸虚弱型

食欲不振、腹痛など

小建中湯(99)

六君子湯(43)

ー精神身体型

精神的ストレスが強く、不安障害、頭痛、腹痛など

柴胡桂枝湯(10)

抑肝散(54)

心身症としてのOD

腹痛、頭痛、緊張

柴胡桂枝湯(10)

 

イライラ、神経質、怒り

抑肝散(54)


不安が強い、パニック

甘麦大棗湯(72)


不安、神経過敏、睡眠随伴症(悪夢)、動悸

柴胡加竜骨牡蛎湯(12)


喉の詰まり

半夏厚朴湯(16)


苓桂朮甘湯(39)+α

頭痛・水毒(2+)

+五苓散(17)


倦怠感

+補中益気湯(41)


頭痛・腹痛

+柴胡桂枝湯(10)


パニック・過換気、奔豚気

+甘麦大棗湯(72)

苓桂甘棗湯の方意

集中力低下など、血虚

+四物湯(71)

連珠飲の方意

大症状型:大症状>小症状

+補中益気湯(41)


小症状型:小症状>大症状

+小建中湯(99)あるいは柴胡桂枝湯(10)



起立性調節障害(ODと略します)の諸症状を漢方的に分析した病態と、ODに用いられる漢方薬の方意を表にまとめてみました。
日々の診療では、患者さんの訴えを聞き、この表を睨んで薬を選択しています。

OD症状と漢方的病態

OD診断基準

漢方病態

寺澤のスコア

1

立ちくらみ、めまい

水毒


2

立っていると気分悪化、ひどくなると倒れる

水毒


3

入浴が長いと気分悪化、嫌なことを見聞きすると気分不良

水毒


4

少し動くと動悸、あるいは息切れ

気逆・血虚

気逆8

5

朝起き不良、午前中調子が悪い

気うつ

気鬱8

6

顔色蒼白

血虚


7

食欲不振

気虚・脾虚

気虚4

8

臍疝痛

脾虚


9

倦怠感、易疲労

気虚・脾虚

気虚10

10

頭痛

水毒


11

乗り物酔い

水毒



ODに用いられる漢方薬と証

方剤名

虚実寒熱

水毒

脾虚

血虚

気虚

気うつ

気逆

安中散(5)

虚・温






柴胡桂枝湯(10)

虚・温





肝鬱

柴胡加竜骨牡蛎湯(12)

虚・温




肝鬱

半夏厚朴湯(16)

中・中





五苓散(17)

虚・温





当帰芍薬散(23)

虚・温


瘀血




半夏白朮天麻湯(37)

虚・温




苓桂朮甘湯(39)

虚・温





補中益気湯(41)

虚・温


瘀血



六君子湯(43)

虚・温




抑肝散(54)

虚・温


瘀血



甘麦大棗湯(72)

中・中







抑肝散加陳皮半夏(83)

虚・温




肝鬱

小建中湯(99)

虚・温







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