2026年04月

花粉症で病院・医院を受診すると、アレルギー性結膜炎に対する点眼薬が処方されます。しかし、正しく使用できている方は(私を含めて)少ないようです。
アレルギー学会主催の眼科専門医のレクチャー内容を伝授します。

▶ 正しい目薬の使い方
① 1滴だけでOK
② まばたきしない
③ 2つ以上使う場合は5分以上間隔を開ける
④ 処方箋の回数を守る

<解説>
① 1滴だけ
・点眼1滴は40μL、結膜嚢容量(目全体に行き渡る量)は30μL
② まばたきしない
・まばたきをすると鼻涙管への排出が増えてなくなってしまう
③ 2つ以上使う場合は5分以上間隔を開ける
④ 処方箋の回数を守る(プロアクティブ点眼)
・1日2回(あるいは4回)使用して最大効果を発揮するように作られている。
・「かゆくなったら点眼」では十分な効果が得られない。


▶ チェックすべき点眼薬の性質
(点眼回数)
・1日1回・・・軟膏製剤のみ
・1日2回
・1日4回・・・標準
(刺激感)
・涙液の pH は7.4(中性)
・涙液よりも酸性・アルカリ性に傾くと刺激感あり
(防腐剤)
・BAK-free(Benzalkonium chloride):コンタクト・レンズ使用者、BAKアレルギー患者に
・防腐剤 free:角膜上皮障害患者、防腐剤アレルギー患者

※ 防腐剤無添加の点眼液「PF(Preservative Free)デラミ容器®」
PFマークが目印
<参考>
PF点眼薬の正しい使い方(ロート製薬)

▶ 刺激感が少ない点眼液例
・塩酸レボガドスチン(リボスチン®点眼液):中性
・塩酸オロパタジン(パタノール®点眼液):中性
・エピナスチン塩酸塩(アレジオン®点眼液、アレジオンLX®点眼液):中性

▶ BAK free の点眼液
・エピナスチン塩酸塩:アレジオン®点眼液(中性)、アレジオンLX®点眼液(中性)
・クロモグリク酸ナトリウム:クロモグリク酸Na®・PF点眼液(酸性)
・トラニラスト:トラメラス®PF点眼液(中性)
・ケトチフェンフマル酸:ケトチフェン®PF点眼液(酸性)
・アシタザノラスト水和物:ゼペリン®点眼液(酸性)

▶ アレジオン®眼瞼クリームの登場(2025年)
・上下眼瞼に1日1回塗布
・子ども、多剤点眼使用者、アドヒアランスが低い患者などへ有用な選択肢
・眼瞼炎への使用は推奨されない

・・・成人女性にも評判が良いようです。1日1回でよいので、夜メイクを落としたあとに塗ると1日効果が持続するのがポイントらしい。

▶ ステロイド点眼の種類
(弱)フルオロメトロン0.02%点眼液
(中)フルオロメトロン0.1%点眼液
(強)ベタメタゾン0.1%点眼液、デキサメタゾン0.1%点眼液

▶ ステロイド点眼の副作用
・眼圧上昇に注意:ピークに至るまでの期間は;
✓ デキサメタゾン0.1%では平均8日
✓ フルオロメトロン0.1%では平均14日
 → 安全に使うには1週間以内にとどめるべし
・眼圧が上昇して緑内障を発症しても、末期にならないと自覚しない、一度欠けた視野は治らない。

▶ 非薬物療法も大切
・洗眼液や人工涙液を用いた洗眼 → 抗原の除去
(例)ウェルウォッシュ®(Santen)
・防護カバー付きのメガネの装用 → 抗原曝露の回避
・冷却圧迫の併用 → 搔痒感の改善

▶ 花粉症期間中もコンタクト・レンズを使う場合の注意点
・半数以上が花粉症時期もコンタクトを使い続けているというデータあり。
・コンタクト・レンズに花粉が付着すると、巨大乳頭結膜炎の合併リスクがある。
・花粉時期は使用をできる限り中止すべし。あるいは1dayソフト・コンタクトレンズに変更する。
・点眼薬はBAKフリーのものを使用する。

花粉性眼瞼炎
・I&IV型アレルギー
✓ 花粉症時期に目の周りの皮膚が荒れる症状。
✓ 境界明瞭な紅斑(赤い斑点)と浮腫(むくみ)
✓ 女性に多い(クレンジング使用など皮膚バリア機能低下)
✓ 花粉パッチテスト陽性
・接触眼瞼皮膚炎も合併しやすい
✓ 抗アレルギー点眼薬(例:ケトチフェン)
✓ 防腐剤(BAK)
✓ アミノグリコシド系抗菌薬
✓ 植物

「正しい点眼法」を検索していたら製薬会社HPに「親が子どもに点眼するときのポイント」という記述を見つけましたので、引用・抜粋させていただきます。

▶ 親が子どもに目薬を点すとき

① ひざ枕で仰向けに寝かせる

まず手を清潔にします。ひざ枕をして、足の間に子どもの頭をのせて、仰向けに寝かせます。この時、子どもが泣いていると目薬を点しても流れ出てしまうので、子どもが落ち着いて点せる状態で行ってください。

② 下まぶたに目薬を点す

子どもの下まぶたをそっと引っぱって「あかんべえ」の状態にし、下まぶたの上に目薬を点します。その後目を閉じると、目薬が目の中に入っていきます。
ここで注意したいのは、目薬を直接目に着けないようにすることです。感染症予防のため、また、目薬の中に目やにやゴミなどの異物が入ることを防ぐためです。
どうしても目を閉じてしまう子どもは、目の周りを清潔にしてから、目頭あたりに目に触れないように注意して点してください。点したあとにまばたきをすることで、目薬が目の中に入っていきます。

③ 目のまわりにこぼれた目薬を拭きとる

目薬を差した後は、目からあふれた分は清潔なガーゼ、ハンカチ、ティッシュなどで拭きとります。拭き取らずに皮膚についたままにしていると、かぶれてしまう可能性もあるので、忘れずに拭いてあげましょう。


<参考>
・木村芽以子先生講演記録(第12回総合アレルギー講習会2026)
目薬の点し方~自分にも、子どもにも、年を重ねても~(ロート製薬)

かぜを引いて小児科・耳鼻科を受診すると当たり前のように処方されるかぜ薬・・・果たして、どれくらい有効なのでしょう。
考えてみると、かぜの症状は「侵入してきた病原体(主にウイルス)を追い出す行動」であることがわかります。咳は気道に侵入した病原体を、鼻水は鼻腔に浸入してきた病原体を追い出す防衛反応。胃腸炎でも、嘔吐・下痢ともに消化管から病原体を追い出す行動ですね。発熱についても、ウイルスは38℃以上では失活することがわかっており、病原体にやられたダメージではなく、本来はウイルスをやっつける生体反応です。
すると、かぜ症状を完全に抑え込むことはいいことなの?という素朴な疑問が生まれてきます。そうです、過剰に押さえ込むと病原体を追い出せなくなるので、かえって病気が長引くことが報告されています。
ではかぜ薬の役割は?
防衛反応(=風邪症状)が激しいと本人もつらいため、それをやわらげるのが目的です。あとは自分の免疫力頼み。
しかし、かぜ薬の歴史を紐解くと、日本では西洋医学が入ってくる以前は(今で言う)漢方薬を使用していました。実は漢方薬、すごいことをやっていて、体の免疫力を高めて病原体を追い出すという働きを強化するのです。こちらの方が本来の“かぜ薬”かもしれません。しかし西洋医学に偏った現在、ただ症状を押さえ込む薬が中心となってしまいました。残念ですね。

耳鼻科の元大学教授の講演で「現在のかぜ薬がいかに効かないか」を解説していました。処方される咳止めも鼻水止めもどれも効かない・・・効くのは解熱鎮痛剤(アセトアミノフェン)と去痰薬のみ、という内容です。備忘録として講義メモをここに残しておきます。

▶ かぜ薬
・古くから葛根湯などの漢方薬が用いられてきた。漢方薬は生体の防衛反応を高める方向に作用する。
・大正時代から生薬(漢方の原料)と西洋薬との配合剤に移行。西洋薬は症状を抑える対症療法にすぎない
・1950年代から西洋薬を配合した総合感冒薬へ移行。対症療法としては優れるものの、治癒期間を遅らせ、場合によると副作用も生じるといった問題点も抱えた。
・小児用製剤では安全面から解熱成分としてアセトアミノフェンのみを含む製剤がほとんど。それ以外に、抗ヒスタミン薬、鎮咳薬、カフェイン、ビタミン、生薬などを含有。

▶ 小児の鼻汁・咳嗽への処方の現実
・抗ヒスタミン薬、鎮咳薬、粘液融解薬/粘膜繊毛機能改善薬(去痰薬)などをセットにして処方しているケースは少なくない。

▶ 感冒に対する治療法の推奨(EPOS, European Position Paper on Rhinosinusitis and Nasal Polyps, 2020)
・抗菌薬(1a) → 推奨しない(有用性、副作用ともになし)
・ステロイド鼻噴霧(1a) → 推奨しない
抗ヒスタミン薬(1a) → 推奨しない(有用性なし
・血管収縮薬(1a) → (小児には使用しない)
アセトアミノフェン(1a) → 鼻閉鼻漏に有効
NSAIDs(1a) → 疼痛と倦怠感に有効
生食洗浄(1b) → 症状を抑制

▶ 子どもの風邪に抗ヒスタミン薬は有効か?
・Cochrane review での2つのランダム化比較試験では抗ヒスタミン薬のプラセボに対する咳嗽への効果に有意差は出ていない。
・抗ヒスタミン薬はヒスタミン由来の腺分泌に有効。
古典的な鎮静性抗ヒスタミン薬は併せ持つ抗コリン効果でウイルス感染による鼻汁分泌を25-30%抑制(Turner, Heyden)。
・脳内ヒスタミン神経系がH1受容体を介してけいれん抑制系として作動しているため、抗ヒスタミン薬により作用が阻害されて痙攣が誘発される。
・EPOSでは有用性な市としてガイドラインでは推奨されていない。

▶ 抗ヒスタミン薬の痙攣誘発効果
・ヒスタミンの作用 
 ✓ 覚醒
 ✓ 認知機能増加
 ✓ 自発運動量増加
 ✓ 摂食行動抑制
 ✓ けいれん抑制
 ✓ ストレスによる興奮抑制
・抗ヒスタミン薬により「けいれん抑制」系のヒスタミン作用が阻害されてけいれんを誘発する。
・特に小児ではGABAによる中枢神経の抑制系が発達していないため、けいれん誘発の可能性が高くなる。
・要注意:2歳以下、けいれんの既往
・使用する場合は非鎮静性抗ヒスタミン薬を。ただし、非鎮静性抗ヒスタミン薬の中ではセチリジンとロラタジンにはけいれんの記載あり。

▶ 子どものかぜに鎮咳薬は有効か
・2007年3月に Baltimore市が「6歳未満の小児へのOTC鎮咳薬やかぜ薬の使用は安全性と有効性に懸念がある」とする誓願書を提出した。FDAは2007年10月に6歳未満にかぜ薬を、2008年1月に2歳未満の乳児にOTD咳止め・かぜ薬を使用しないよう勧告した。
・2008年秋に製薬会社が自主的に「4歳未満の小児には使用しないこと」と変更した。これを受けて、同年中にイギリス、オーストラリア、カナダでは6歳未満のOTC咳止め・かぜ薬は使用すべきではないと勧告した。
・Dextromethorphan(メジコン®)を用いた cohort 研究では、夜間の咳やQOLにおいてプラセボと有意差がなかったと結論づけられている。
感冒時の咳嗽はむしろ後鼻漏の影響が大きく、鎮咳薬使用は勧められない

▶ 感冒に対する処方の是非
(抗ヒスタミン薬)
鎮静性のものは鼻汁を減らすがけいれんや眠気を誘発し、分泌物を粘稠化する
非鎮静性のものは副作用は少ないが、鼻水・鼻閉には無効
(鎮咳薬)
・感冒の咳嗽の軽減効果なし。
・呼吸抑制や咳嗽の遷延化もある。
(去痰薬)
・湿性咳嗽に有効、副作用もない。

今から20年以上前にも、かぜ薬について調べたことがありました。当時はアメリカをはじめ諸外国で「市販のかぜ薬(OTC薬)を乳幼児に使わないように」というムーブが起きてきた頃です。アメリカでは大瓶で販売されているため、一度に大量を飲んで中毒症状で医療機関に運ばれる、という事情もあったようです。

そして現在、私はかぜ症状にふつうの西洋医学の薬が今ひとつ効かない場合は漢方薬をお勧めしています。明らかに手応えがあるため、「苦い薬を飲む」というハードルを越えた患者さんはリピーターになりますね。

小児科医は鼻汁・鼻閉を「風邪症状の一部」として捉える傾向があります。一方、耳鼻科医は「鼻という臓器が炎症を起こしている」という視点で捉えます。
数年前に元大学教授の耳鼻科医(東京みみ・はな・のどサージクリニック、市村恵一先生)による講演を聴いたことがあり、その際に目からうろこが落ちた記憶があります。その講義メモが残っていましたので、ポイントと感じた箇所を引用・抜粋し、備忘録としてここに残しておきます。

近隣の耳鼻科では、鼻汁・鼻閉遷延例、反復例を抗生物質漬けにすることが多くて辟易しているのですが、市村先生のお話は「抗菌薬に有用性なし」「細菌性を疑う場合はまず細菌培養検査を」と現実と大きく異なる内容でしたね。大学教授と開業医の違いでしょうか・・・。ついでに言うと、抗ヒスタミン薬の代わりに抗アレルギー薬を処方している耳鼻科医・小児科医も多いです。抗ヒスタミン薬が効く理由は抗コリン効果のため、抗ヒスタミン効果のみの抗アレルギー薬ははっきり言って風邪の鼻水に効きません。「処方された薬を飲んでいるけどよくならないので・・・」と当院に流れてきます。私はそんな患者さんに漢方薬を提案しています。こちらの方が手応えがあり、乳幼児の夜の鼻づまりが軽くなるので喜ばれます。


▶ 鼻汁を構成するもの
① 鼻副鼻腔からの分泌液
・血液成分や組織液の移行したもの
・水やイオンが能動輸送により移行したもの
・粘膜の胚細胞や鼻腺から分泌された液
② 涙液
③ 呼気から凝結した水

▶ 鼻汁の基本知識
・健常人では粘液は1日に1000ml以上産生される。多くは吸気への加湿に使われ、残りは線毛運動で咽頭に運ばれ無意識に嚥下される。
・鼻分泌液量は刺激が加わると増量する。
・鼻腺の分泌刺激には、炎症により放出されるメディエーターの直接作用と、神経反射を介する間接作用の二通りがある。

▶ 鼻漏とは
・鼻汁の性質が正常と異なったり、多量に存在して外鼻孔や後鼻孔から流れ出る状態を指す。
・水性(漿液性)、粘性、膿性、および粘膿性、血性がある。
① 漿液性鼻漏:鼻腺からの反射性分泌が主体をなし、鼻の過敏状態を伴うことが多い。感冒の初期、アレルギー性鼻炎、特発性鼻炎、鼻性髄液漏など。
② 粘性鼻漏:胚細胞由来のものが主体で、持続的な炎症性刺激が存在する慢性副鼻腔炎が主で、アレルギー性鼻炎の非発作期にも見られる。
③ 膿性鼻漏:細菌感染の関与が考慮される。急性・慢性副鼻腔炎が多く、まれに異物が原因となる。
④ 血性鼻漏:組織の破壊・損傷が何らかの形で関与している。腫瘍、肉芽腫、鼻出血など。

▶ 小児で鼻水を生じる病態
・感冒および急性鼻副鼻腔炎
・アレルギー性鼻炎
・慢性鼻副鼻腔炎
・まれに鼻腔異物

▶ 鼻閉・鼻づまりとは
(定義)
・鼻から上咽頭にかけて空気の通過を妨げる要素が生じて鼻呼吸がうまくいかない状態。
・ふつうに息をしている状態で鼻を通る空気量が不十分と感じる自覚。
・鼻内気流が乱れた場合に生じる不快感。
(鼻閉を生じうる病態)
・鼻腔を構成する要素(粘膜、骨)の腫脹や変形によるもの
分泌物、異物など鼻腔内部の空間を充満するもの。
・鼻腔の外側からの圧迫や密閉。

▶ 小児で鼻閉を生じる病態
(急性)
① 感冒
② アレルギー性鼻炎の発作時
(慢性)
③ アレルギー性鼻炎
④ アデノイド増殖症
(まれ)
⑤ 後鼻孔鼻茸
⑥ 後鼻孔閉鎖
⑦ 異物
※ ①②③は鼻粘膜の血管拡張、浮腫、鼻汁貯留、④⑤は腫瘤による閉塞、⑥⑦は物理的閉塞


▶ 感冒(かぜ症候群)
・風邪症状(発熱・咳嗽・鼻漏)は、それぞれが免疫細胞の働きを活発にしたり、気道を確保したり、病原体の侵入を防御したりといった、生体の風邪病原体に対する防衛反応であり、原則として治療の必要はない
・しかし、諸症状により苦痛や不眠を訴えるときは対症療法を行う。
・小児の症状で親が最も敏感に反応するのは、① 発熱、② 咳嗽や鼻閉による夜間の不眠、である。

▶ 感冒時の鼻汁
・当初、透明で水性であるが、粘性に変化し、数日後には膿性となる。
・そこからは再び粘性、透明となり、乾燥してくる。

▶ 鼻汁の色が意味するもの
・感染(ウイルス感染を含む)が進行すると、鼻汁は透明〜黄色・緑色に変化する。この色調変化には、鼻腔・副鼻腔内への白血球浸潤が関わる。
・好中球や単球は、ミエロペルオキシダーゼの作用により緑色となるアズール親和性顆粒を内包する。
鼻汁は白血球をほとんど含まないと白色か透明で、白血球数が増えるにつれて黄色(淡緑色)、さらには緑色に変化する。
・従って「黄色い鼻水」は細菌感染を意味するものではなく、炎症反応の結果を表す。

▶ 急性鼻副鼻腔炎の定義
(日本)急性鼻副鼻腔炎診療GL, 2010年
・急性に発症し、発症から4週間以内の鼻副鼻腔の感染症で、鼻閉・鼻漏・後鼻漏・咳嗽といった呼吸器症状を呈し、頭痛、頬部痛、顔面圧迫感などを伴う疾患
(欧州)EPOS, European Position Paper on Rhinosinusitis and Nasal Polyps, 2007
・急な発症で以下の症状が2つ以上あり、12週間以内続く状態
 ✓ 鼻閉 
 ✓ 色の付いた鼻漏
 ✓ 咳嗽(日中及び夜間)

10 day mark(ウイルス性と細菌性の線引き)(Ueda&Yoto: Pediatr Inf Dis J 1996)
・急性鼻副鼻腔炎上気道のウイルス感染に続発して発症。急性ウイルス性鼻副鼻腔炎では特別な治療をしなくとも10日以内に治癒する。
・膿性鼻汁が10日間以上持続する場合、あるいは5-7日後に悪化する場合は細菌の二次感染による急性細菌性鼻副鼻腔炎と診断する。
・症状が10〜30日間持続した症例は、X-rayで80%の患者に副鼻腔陰影を認め、上顎洞穿刺、細菌培養では70%で細菌を検出する(Wald)。

▶ 急性鼻副鼻腔炎の分類(欧州)
(10日以内)急性ウイルス性鼻副鼻腔炎
(12週以内)
1.急性ウイルス感染後鼻副鼻腔炎
2.急性細菌性鼻副鼻腔炎(先行する感冒症状+下記のうち少なくとも3項目該当)
 ✓ 38℃以上の発熱
 ✓ 二相性症状(経過観察中に症状増悪)
 ✓ 片側罹患
 ✓ 激痛
 ✓ 血沈やCRP上昇
※ 感冒から急性細菌性鼻副鼻腔炎に移行する率は、小児:6-13%、成人:0.5-2%。

▶ 感冒に対する治療法の推奨(EPOS, 2020)
・抗菌薬(1a) → 推奨しない(有用性、副作用ともになし)
・ステロイド鼻噴霧(1a) → 推奨しない
抗ヒスタミン薬(1a) → 推奨しない(有用性なし
・血管収縮薬(1a) → (小児には使用しない)
アセトアミノフェン(1a) → 鼻閉鼻漏に有効
NSAIDs(1a) → 疼痛と倦怠感に有効
生食洗浄(1b) → 症状を抑制

▶ 急性ウイルス感染後鼻副鼻腔炎治療法の推奨(EPOS, 2020)
・抗菌薬(1a) → 有効性なし
・ステロイド鼻噴霧(1a) → 全体症状スコアは改善するがエビデンスの質は低く推奨しない
抗ヒスタミン薬(1b) → 有効性なし
・菌体由来成分(1b) → 優勝期間を短縮するという1報告のみ

▶ 急性細菌性鼻副鼻腔炎治療の推奨(EPOS, 2000)
・抗菌薬(1a-) → 非常に限定されたデータのみ。2県の研究のみでプラセボとの効果の差がない上に有害事象は有意に高い。成人でみられた有用性とは異なることを証明する大規模研究が望まれる。
・粘液融解薬(1b-) → Erdostein を抗菌薬に付与してもプラセボと差はない。

▶ 急性鼻副鼻腔炎の臨床診断基準
① 膿性鼻汁または後鼻漏
② 湿性咳嗽
③ 細菌検査:発熱+膿性鼻汁が少なくとも3-4日連続する場合には急性細菌性鼻副鼻腔炎を疑い細菌検査を考慮することが望ましい(画像診断は有効でない)。

▶ 小児急性鼻副鼻腔炎の検出病原体
・15歳以下の小児41例から検出された病原体(工藤、2008)
(細菌のみ)85.4%
(ウイルス+細菌)12.2%
・上顎洞貯留液からの分離菌(松原:耳鼻臨床93:283,2000)
(40%)S.pneumoniae
(43%)H.Influenzae
(9%)S.aureus
(4%)M.catarrhalis
(2%)S.pyogenes

▶ 小児急性細菌性鼻副鼻腔炎に対する抗菌薬(急性鼻副鼻腔炎診療GL2010、日本鼻科学会)
(第1選択薬)
・AMPC(ABPC)経口 1回16-30mg/kg・1日3回を5日間
(第2・3選択薬)
・CDTR-PI(メイアクト®)経口 1回3mg/kg(高用量6mg/kg)・1日3回を5日間
・CFPN-PI(フロモックス®)経口 1回3mg/kg(高用量4.5mg/kg)・1日3回を5日間
・CFTM-PI(トミロン®)経口 1回3mg/kg(高用量6mg/kg)・1日3回を5日間
・TBPM-PI(オラペネム®)経口 1回4-6mg/kg・1日2回を5日間

▶ 小児慢性鼻副鼻腔炎
(疫学)
・日本の小児鼻副鼻腔炎罹患頻度:3-10%
・東京都学校健診(2018年)によると、アレルギー性鼻炎を除く鼻副鼻腔疾患の有病率は、小学校低学年:6%、中学生:4%、高校生:2%
(病態)
・年齢経過;
(3-5歳)中鼻道自然口ルート中心の病変
(6-7歳)汎副鼻腔病変
(10歳〜)自然軽快する方向
・自然口は成人と比較して大きい → 換気排泄保持
(症状)
・慢性でも症状変化は急激
(検査)
・急性鼻副鼻腔炎で同定される菌がよく検出される
・画像診断は偽陽性が多い
(合併症)
・アレルギー性鼻炎合併例が多い
・鼻茸形成は少ない
(治療)
・急性増悪時は積極的な治療が有効
(予後)
・10歳までは増加しその後減少(石塚)、10歳までに多くは消退(名越)
・成人の慢性副鼻腔炎への移行は16%
・治療抵抗性の慢性鼻副鼻腔炎小児患者の7年後は自然軽快が95%(多くは7歳までに)

▶ 小児慢性鼻副鼻腔炎治療の推奨
・抗菌薬:1b-:短期及び長期の抗菌薬投与に有効性を支持するレベルの高い研究はない。
・ステロイド鼻噴霧:5:有効性を示す証拠はない。
・ステロイド内服:1b+:抗菌薬への相加効果はない
・生食洗浄:1b+:いくつかの試験がある。安全性もある。
・アデノイド切除術:4:症状のある幼児症例には有効。薬物療法が無効な幼児例への施行を支持。
・内視鏡下鼻副鼻腔手術:4:年齢の高い小児で薬物治療抵抗例や既アデノイド切除例に安全で有効。

▶ 小児慢性鼻副鼻腔炎に対する局所治療
・鼻処置
・副鼻腔自然口開大処置
・ネブライザー治療
・上顎洞穿刺
・鼻腔洗浄
・副鼻腔洗浄
 ✓ 副鼻腔炎治療用カテーテルによる場合(ENT-DIBカテーテル、YAMIK)
 ✓ 副鼻腔炎の吸引処置:Proetz置換法
 ✓ 上顎洞洗浄:自然口洗浄、穿刺洗浄

▶ 慢性鼻副鼻腔炎の薬物療法
・抗菌薬
 ✓ 短期:増悪時
 ✓ 長期:マクロライド少量
・粘液融解薬/粘液線毛系修復薬
・ロイコトリエン拮抗薬
・ステロイド鼻噴霧薬
・漢方薬

▶ 小児のマクロライド療法ガイドライン(試案)
・使用薬剤:14員環マクロライドを半量〜1/4量で
 ✓ EM:8〜12mg/kg
 ✓ CAM:2〜5mg/kg
・投与期間:
 ✓ 症状が消退したら休薬
 ✓ 消退しなければ2ヶ月継続して効果を判定
 ✓ それでも効かないときは、さらに1か月投与 → 無効なら中止し他の治療法を考慮
・急性増悪時:起炎菌を同定し、適切な抗菌薬を投与
・対象:3歳以上で膿性または粘膿性鼻汁あり

▶ 小児慢性鼻副鼻腔炎の漢方治療
標治
・二重盲検比較試験やシステマティック・レビューはない。症例報告では有効な報告が多い。
 ✓ 辛夷清肺湯:マクロライド無効例の73%に有効(渋谷、1995年)
 ✓ 葛根湯加川芎辛夷:4か月投与で75%に有効(伊藤、1984年)
 ✓ 荊芥連翹湯:マクロライド無効例の70%に有効(岡村、2004年)
本治
 ✓ 小建中湯(99)
 ✓ 黄耆建中湯(98)
・小児の基本処方薬で、体力低下時に適するが、特に証にこだわらない
・くすぐったがりの小児でよく効く
・甘くて飲みやすい(膠飴含有)
・黄耆建中湯は小建中湯に黄耆を加え、より気を補う。
・小建中湯は急性副鼻腔炎の反復を減らすという報告あり

▶ 鼻閉に対する漢方薬
・麻黄湯(27):乳児の鼻閉塞・哺乳困難の適応あり
・他の麻黄含有薬剤でも有効
・長期投与は避ける
・乳児なら少量のお湯で泥状にしてよく練り、清潔な手で口蓋や頬粘膜に塗りつける。
・幼児ならパンに塗るチョコクリームに混ぜる。あるいはバニラアイス、チョコアイスに混ぜて飲ませる。
・学童なら薬の意味を理解させて、納得して飲んでもらう。

▶ 生理食塩水による洗浄の効果
(アレルギー性鼻炎)
・成人及び小児アレルギー性鼻炎患者において、行わない場合と比較して、疾患の重症度を最大3ヶ月低下させる可能性がある。しかしエビデンスの質は非常に低い(Cochrane Library 2018)

私がアレルギー専門医資格を取得した頃(1990年代)の食物アレルギー分野の医学は、どちらかというと宗教的なイメージが強く、学会のセクションを覗いても一種異様な雰囲気がありました。
2000年代に、それに穴を開けてサイエンスしたのが昭和大学小児科の故・飯倉洋治教授です。クセのある人物でしたが、食物アレルギーを発展させた功労者だと私は思っています。
その後、食物アレルギーの進歩は目まぐるしく、毎年のように新しいエビデンスが公表されるようになりました。
ここに基礎知識の整理をして残しておきます。

二重抗原曝露仮説:Dual allergen exposure hypothesis
(Lack G. J Allergy Clin Immunol. 2008; 121: 1331-1336)

(皮膚暴露)
 湿疹など荒れた皮膚から抗原が入る
  ⇩
 皮膚からアレルゲンが入ってくる
  ⇩
 経皮感作
  ⇩
 アレルギーを発症

(経口暴露)
 口からアレルゲンを摂取
  ⇩
 腸にアレルゲン
  ⇩
 経口免疫寛容(アレルゲンと反応が起こらないしくみ)
  ⇩
 アレルギーを抑える


▶ 環境中には食物アレルゲンがたくさん存在する
(Kitazawa H,et al. Allergol Int. 2019; 68(3): 391-393)
(Yasudo H,et al. Allergol Int. 2023 Oct; 72(4): 607-609)
(Yasudo H,et al. J Dermatol Sci. 2021 Dec; 104(3): 213-215)

・3歳児の布団のホコリすべてから鶏卵アレルゲンを検出し、ダニの主要アレルゲンより多かった。
・ベッドやリビングのホコリにクルミの蛋白を検出。
・ペットの毛にも食物(鶏卵・ピーナッツ)アレルゲンを検出。

▶ 食物アレルギー発症予防戦略
〜早期に皮膚を正常な状態にする&早期からアレルゲン摂取により食物アレルギー予防
・皮膚暴露対策:早期皮膚介入でアレルギー予防(PACI Study: JACI 2023)
・経口暴露対策:早期経口摂取でアレルギー予防
 ✓ ピーナッツ(LEAP Study: NEJM. 2016)
 ✓ 卵(PETIT Study: Lancet, 2017)
 ✓ 牛乳(SPADE Study: JACI, 2021)

PETIT研究(Natsume,et al. Lancet. 2017; 389: 276-286)
(対象)アトピー性皮膚炎児
(方法)加熱全卵粉末を毎日摂取
 生後5〜6か月から25mg(全卵0.2g相当)
 生後9ヶ月から125mg(全卵1g相当)
(結果)1歳時点でのたまごアレルギー発症
 コントロール群:38%
 鶏卵早期摂取群:4%
(結論)
 生後5〜6か月から微量加熱全卵(卵黄+卵白)を毎日摂取することで安全に鶏卵アレルギーの発症を抑制できた。
(発展)
 PETIT研究に基づいたタンパク量の加熱全卵粉末が開発された(ミルステップegg®1/2/3 Https://bcase.co.jp/mealstep-egg/)

LEAP研究(Du Toit G,et al. N Engl J Med. 2015 Feb 26; 372(9): 803-813)
〜ピーナッツ早期摂取によるアレルギー予防
(対象)アトピー性皮膚炎児 卵アレルギー
(方法)生後4〜11か月児に1週間でピーナッツ蛋白を6g摂取(ピーナッツとして約24g)
(結果)5歳時点でのピーナッツアレルギー発症
 コントロール群:17.2%
 早期摂取群:3.2%
(結論)
 生後4〜11か月から1週間に24gピーナッツを摂取するとピーナッツアレルギー発症を抑制できた。

▶ マルチアレルゲン早期摂取
(Nishimura,at al. Allergol Int. 2022 Mar 30: S1323-8930(22)00011-9)
(対象)アトピー性皮膚炎児
(方法)6品目パウダー(卵白粉末、ミルク粉末、小麦、大豆、そば、ピーナッツ)を生後3-4か月から摂取開始、2、4週目で増量し合計12週間摂取(食品でそれぞれ2.5mg、7.5mg、20mg)
(結果)1歳半時点での食物アレルギー発症率(コントロール群/摂取群)
・すべての食品:23.8%/8.4%(6.5割の予防効果)
・卵:16.3%/6.0%(6割の予防効果)
・卵以外:13.2%/4.8%(6割の予防効果)

▶ 海外と日本の補完食ガイドラインの状況
(海外)WHO、EAACI、AAAAI、BSACI、DGAなど
・生後4〜6か月からの導入を推奨
・ナッツ類も適切な形状(ペーストやパウダー)で開始
・1歳より遅らせる理由がない
・食物アレルギーハイリスク集団では生後4か月から
・乳は生後1週間は摂取しない
(日本)授乳・離乳の支援ガイド2019
・生後5〜6か月から卵黄・豆腐など
・生後7〜8か月から卵白
・ナッツ類については特に記載なし

▶ アレルゲン早期導入食品の開発
・ミルステップegg®1/2/3(https://bcase.co.jp/mealstep-egg/)
・パクパ(シングルアレルゲン、日本)(https://fufumu.com/pages/paqupa)
・Lil mixins(シングルアレルゲン、アメリカ)(https://www.lilmixins.com/)
・Ready set food!(マルチアレルゲン、アメリカ)(https://readysetfood.com/)
(現況と問題点)
・早期導入製品は利便性がよく実行可能性に有用
・製品後とのばらつきや精度、予防効果に問題が残る(経済的な問題も)
・食品により感作が始まる時期が異なるため、食品ごとの最適な導入時期の検討が必要

▶ Difense Study(2025年現在進行中)
(対象)生後42日から90日までのアトピー性皮膚炎児
(方法)2群に分けて登録16週後の食物アレルゲン(卵白・牛乳・小麦・クルミ・ピーナッツ)感作の割合を比較
A群:モイゼルト塗布群
B群:ヒルドイド塗布群

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