2026年05月

 この問題を扱ったNHKの番組(ハートネットTV、NHKスペシャル、あさいち、等)や書籍を見つけましたので、ポイントを引用・抜粋させていただきます。とくに「親子の約束を作るコツ」はすべての親に知っておいて欲しい内容だと思いました。
 そして子どもを律するには「親自身が自分を律する覚悟」が必要であることをヒシヒシと感じました。

<基礎知識>

▢ 子どものスマホ所有の実態(2025年)
・スマホ所有率が過半数を超えるのは小学5年生。
・スマホを持ち始める時期は、女子平均9.9歳、男子平均10.4歳、最も多いのは12歳。

▢ ネット依存の実態
・内訳:
(7〜8割)ゲーム
(2〜3割)SNS、掲示板、動画サイト
・ゲーム依存患者は世界の人口の、男性:3%、女性:1%
・日本では100万人以上いると推定される。

▢ オンラインゲームの特徴と依存しやすい要因
・インターネットを通じて、複数の人が同時に参加するゲーム。
・メッセージ・会話機能がある。
・深夜でも誰かがいてつながれる。

▢ ネット依存の徴候
・使用時間がかなり長くなった。
・夜中まで続ける。
・朝起きられない。
・他のことに興味を示さない。
・絶えず気にする。
・注意すると激しく怒る。
・使用時間や内容などについてウソをつく。
・ネットにより成績が下がった。

▢ 脳で何が起きているのか
1.ドーパミン活性異常(覚醒剤などの薬物依存症と同じメカニズム
・ゲームをしていると楽しい
 → ドーパミン(幸福感・やる気の元)が放出される
  ⇩
・長時間ゲームを続ける
 → (線条体にある)ドーパミン受容体活性が低下する
   受容体数も減少し、やがて枯渇する
   ⇩
・幸せ気分が憂うつ気分に変わる
 → 本来のドーパミン効果が得られない状態
2.ブドウ糖代謝が低下する
3.セロトニン受容体機能低下

▢ ゲーム依存は脳の発達にブレーキをかける(川島隆太氏、東北大学)
・ヒトがものを考えたり記憶したり相手とコミュニケーションしたりする働きは脳の前頭葉の前頭前野が担当している。
・前頭前野は0歳〜5歳までの間に急速に発達し、その後穏やかな発達ペースとなり、思春期に再び爆発的に発達する。つまり2回、発達のチャンスがある。
・思春期の子どもを対象にゲームの頻度と前頭前野容積の増加量を3年間追跡調査したところ、ゲームをする頻度が高いと増加量が少ないことが判明した。これは神経細胞間をつなぐネットワークが弱いまま3年間が過ぎてしまったことを意味し、非常に深刻な問題である。

<診療>

▢ ゲーム依存の定義・診断(WHO、2019年)
1.ゲームの使用時間や頻度をコントロールできない。
2.ほかの楽しみよりもゲームが一番。
3.ゲームにより社会生活に著しく支障が出る。
 → 上記3つの項目が12か月続く場合に「ゲーム依存」と診断する。

▢ “社会生活に支障”の内容(アンケート調査)
(76%)朝起床できない
(60%)昼夜逆転
(59%)欠席・欠勤
(51%)物にあたる・壊す
(49%)食事を摂らない
(33%)ひきこもり
(32%)睡眠時間が短い
(27%)家族に対する暴力
(15%)過剰な課金

▢ “やめられない”要因
① ゲームで得られる快感はアルコール・薬物に匹敵する。
② 常にアップデートされ終わりがない。
③ ガチャ(課金システム)
★ ゲーム依存にはADHD(神経発達症の一つ)と伴うケースが存在する。

▢ 治療対象
・ネットの過剰使用+明確な体や心の問題(※1)
・ネットの過剰使用+明確な家族的・社会的問題(※2)

※1)低栄養、体力低下、骨密度低下、睡眠障害、感情をコントロールできない、うつ状態
※2)家族関係の悪化、遅刻、不登校、成績不振、退学

▢ 診療内容
・診察
(身体検査)血液検査、肺機能、骨密度、体力測定、等
(心理検査)ネット依存傾向(※)、精神疾患、等
・カウンセリング
・デイケア
・入院:危機的な状況の時・・・ネットから離れられない、過剰な課金、健康状態の異常、家族関係の極端な悪化、等

※)インターネット依存度テスト(IAT)

▢ 認知行動療法
・問題が発生しているにもかかわらずゲームを続けているのは、考え方に問題があると捉え、その考え方の歪みを補正する手法。
(例)「ゲームのメリットとデメリットを一緒に考えよう」「今までゲームに何時間費やしてきたか、その時間を勉強に費やしたら将来どんなことができるか」

▢ 治療のゴール
・インターネットとうまく付き合えるようになる。
・依存しているコンテンツだけをやめる。
・利用時間を減らす。
★ アルコールや薬物依存では完全にやめ続けることが治療の目標となるが、ゲームの場合はそれは困難なため、「減らす」という現実的なゴールを設定することになる。ゲーム依存患者は子どもが多いので「やめる」という選択は非常に難しく、まずは減らすというソフトランディングを選択する。

▢ 思春期例の問題点・注意点
・ゲームの制限・禁止は回復につながらない。
・ゲーム依存は氷山の一角で、その下には本人が悩んでいる家庭や学校、社会生活の問題が隠れている。
・子どもはゲームをすることにより安らぎを得ている面がある。
・ゲームをしている・していないではなく、ゲーム依存の原因となることに目を向けることが大切。
・思春期の子どもは反抗期でもあり、両価性(アンビバレンツ)状態。ゲームをやりたくて仕方ないけど、やめられない現状に不安を持っていることも多い。本人が困っている要素(睡眠問題・食欲不振など)をきっかけにして相談に乗り受診につなげる。最初は抵抗するかもしれないが、何回も何回もくり返し話していくことが大切。本人が怒っているときは避け、話を聞いてくれそうなときにわかりやすく説明していく。
・治療の結果、ゲーム使用時間が少しでも減れば(例:10時間 → 8時間)、それを評価することが大切。

<対策>

▢ ゲーム・ネットについての教育
・ 現代社会に必要不可欠のものでもあり、禁止するのではなく適切な使い方を教えるべき。
・いつから教えるのが適切か、乳幼児にスマホで動画を見せること、簡単なゲームで遊ばせることが良いのかどうかに関しては、明確な研究結果は存在しない。
・親としては連絡や居場所の確認目的にスマホを考えるが、子ども自身はスマホを持ったらいろいろやりたいことがある。ゲームをやりたい、動画を見たい、友達とLINEでやり取りをしたい、など子どもの要望を聞いた上で、それぞれのアプリの可否や条件など、家庭内ルールを話し合う。
・子どもが社会のルールを覚え始めるのが2歳頃、しかし小学校高学年になると、親に反抗したり、素直に学べなくなる傾向が出てくる。以上を考慮すると、5〜10歳くらいの間に、ゲーム・ネットの適切な使い方を教え始め、約束・ルールを作り、守らせることが望ましい

▢ 機種選定の際の注意点
・親が管理することが難しい場合は、安心機能が搭載されているキッズケータイがお勧め(カメラやメッセージ機能あり)。
・親の古いスマホを渡すことになったら、可能なら初期化して子どものアカウントを作成すべし(親の決済情報などは消しておく)。子どものアカウントなら、年齢に併せたコンテンツが表示される。

▢ スマホを使う時間・時間帯の設定
・時間:小学生では1日30分〜1時間が目安
(例)「平日は30分、休日前は1時間、休日は2時間」
   「30分使ったら10分休む」
・時間帯:
(例)
「夜は21時まで、塾の日は30分延長」
   「寝る1時間前までに終了」
・アプリごとの制限:
(例)「1回30分のゲームなら1日2ゲーム」
   「ゲーム40分、動画20分」
・Wi-Fiルータで端末ごとの時間設定も可能。

▢ スマホを使う場所と保管場所の設定
・自室への持ち込みNG、リビングのみ利用OK。
・寝るときはリビングで充電する。

▢ ペナルティも一緒に決めてリビングに貼っておく
・ルールを破ったときのペナルティ:
(例)「翌日の使用時間を30分減らす」
   「3回破ったら1日使用禁止」
・完成したルールはリビングや冷蔵庫に貼っておき、いつでも確認できるようにする。
・学年が変わるときや習い事の時間が変わるときは見直すタイミング。
・子どもの成長に合わせて「もう自分でコントロールできそう」と感じたら、ルールを弛めてITスキルを上げられるよう誘導する。

▢ 親子の「約束」を作るコツ
1.「約束」についての話し合いは、機器を買う前、サービスを使い始める前がよい。

2.所有権は大人に。
3.上手な「おしまい」を身につける。
(例)子どもが見通しをつけられるように、タイマーを利用したり、上手におしまいできたら報酬を与えたり。
4.「やるべきことをやってからゲーム」はうまくいかないことが多い。
(例)宿題が終わったらゲームしていいよ、とすると、宿題に取りかかってもゲームのことが頭から離れず進まないのでいつまで経っても宿題が終わらない。
5.ゲームができる時間は短すぎる設定にしない。
(例)15分だけ・・・では短すぎてトラブルの素になる。
6.次にいつ使えるのかを明確にする。
(例)「今日はおしまいだけど、明日になればまた〇時間できるよ」と言うと納得しやすい。
7.ゲームの時間を「交換可能財」にする。
(例)お手伝いをしたらゲームの時間が少し増えるなど。
8.機器を取りあげる方法をひと工夫。
・物理的に奪う方法はトラブルの元。
(例)Wi-Fi が時間で自動的に切れるなど。
9.子どもはネットから離れていたいときもある。
(例)LINEのやり取りから離れられず長時間使用してしまう子どもがいる、苦痛でも離れられないタイプもいる。時間を区切るルールを作り、やり取りから離脱するきっかけを作ってあげる。
10.睡眠時間の確保。
・生活リズムを崩すような時間設定はしない。
(例)「ちゃんと寝た方がゲームの能力がアップするよ」などとアドバイス。

▢ ネットのルール作りのポイント
・親が買い、子どもには貸し出す。
・使用する時間・場所・金額を指定する。
(例)午後10時まで、居間でのみ使用し自分の部屋に持ち込まない、等
・決めたら書面にして目につくところに貼る。
・親子が一緒にルールを作る。
親も守る

▢ 他の依存対策のポイント
・子どもだけにルールを押しつけるのではなく、家族みんなでルールを守るべし。
親がゲームに興味を持つと、子どもが教えてくれる。親も子どもの考えを理解しやすくなる。親の方がゲームが上手、ネットに詳しいと、子どもは親を尊敬して言うことを聞きやすくなる。

▢ 具体的な項目
・夫婦で異なる考えだと子どもは混乱するため、家族みんなで話し合い、決める。
・ペアレンタルコントロール機能のフィルタリングなどの設定で時間制限を。
・家庭内のルール作り(時間と場所)や親からの声かけでリテラシーを育てる。
★ 子どもにスマホを与えると、子どもは親のアカウントを探し、誰をフォローしているのか、どんな投稿と返信をしているのかを見る可能性があることを覚悟する。大人はSNSで子どものお手本になるような振る舞いを心がけるべし。

▢ 使いすぎ予防のポイントは「日中活動の充実」
・日中活動が充実していると、前述の約束事のポイントを子どもに守らせることが簡単になる。
ゲームよりリアルワールドが楽しければゲーム依存は発生しないはずだが、現実は逆になりがち。
・日中活動を子ども本人が楽しみにしていたら、子どもは朝起きようと努力する。逆に言えば、日中活動がつらい、怖い、不安、退屈な状況では、生活リズムが崩れやすくなる。

▢ 無駄に見える時間も必要
・ストレスのかかる活動、努力が必要な活動をしたあと、ストレスを発散できる楽しい時間(ゲームに夢中)や、一見無駄に見えるボーッとした時間(スマホをなんとなく眺める)は必要なもの。
・ボーッとした時間もストレス発散に役立っているが、それを理解できない親と葛藤を引き起こしがち。
例)試験前・発表会前などストレスが高まる。熱中して取り組む活動は維持される。
   ⇩
  この無駄に見える時間が長くなる。
   ⇩
  睡眠時間が短くなる。
   ⇩
  昼間眠くて、努力ができなくなる。熱中して取り組めなくなる。
   ⇩
  親がイライラする。

★ ニール・イヤール氏(作家・コンサルタント)のコメント
・スマホやアプリ開発の裏側を知る
✓ 魅力的で習慣性が高いものが「優秀なスマホ製品」とされる。
✓ 習慣的に使用してもらうためにユーザーの不快な感情(退屈、孤独、疲労、不確実性、ストレス、不安、等)に入り込み「気晴らし」を展開させる。
✓ 不確実性で変わりやすいものにヒトは注意深くなり集中する傾向があり、それがあると習慣化しやすい。予測可能なものには誰も興味を示さない。

★ 樋口進氏(久里浜病院名誉院長)のコメント
・ゲームに勝ち続けると依存性はなくなるが、ときどき負けるという不確実性があるため習慣化する。
・仲間とやり取りしていて、自分だけ置いてきぼりになることを皆とても怖がる。イヤだけど見ざるを得ない状況になっていることが多い。
・依存患者に「見るのはいいけど、書き込むのはしばらくやめよう」と提案している。書き込むと必ず反応を見たくなるため。
・依存性のあるゲームやネットは、早い年齢から始めると依存のリスクが高くなることがわかっている。国がガイドラインを作成すべき時に来ている。
・スマホ・ネットを使わない時間を家族で設定・共有することを提案したい。
(例)夜の7〜8時は家族全員で使わない時間を作る( → 会話が増えるかもしれない)。

★ スティーブン・クレイン氏(スタンフォード大学 行動デザインラボ)の提案
・使いやすく便利に作られているスマホを自分で使いにくく楽しめないようにするくする工夫が必要。
・人間は3つの要素「やりたい・できる・きっかけ」がそろったときに行動する。
1.「きっかけ」を減らす:
(例)お休みモードをオンにして通知が来ないようにする。
2.「できる」を減らす:
(例)パスワードは長いものにして保存しない( → 精神的な負担が増える)。指紋認証や顔認証も使わない。
3.「やりたい」を減らす:
(例)画面の色を変える(赤一色にするとずっと画面を見たくなくなる、白黒にすると魅力が半減する)。


<参考>
・「ゲーム・ネットの世界から離れられない子どもたち」(吉川徹著、合同出版)
・「思春期の「つながる気持ち」はどこへ行く?」(関正樹著、日本評論社)
・「子育て支援者応援チャンネル」(YouTube動画 by 木下直俊先生)
・「思春期 心と体の不調 ゲーム依存」(NHK-Eテレ きょう
の健康、2025年)
・「ゲームネット依存」(NHKサイエンスZERO、2022年)
・「
子どものスマホ、いつから持たせる?(AERA Kids+、2026.4.8)

<相談窓口>
エンジェルアイズHP
全国精神保健福祉センター(厚生労働省)
保健所検索(厚生労働省)

 近年、よく耳にするようになった高次脳機能障害。ひとことで言えば、「高次脳機能を主る大脳皮質が障害された病態」ということになります。石原慎太郎元都知事もこの病気を指摘されていました。外見ではわからない障害なので、本人の困り感は大きいと思われます。
 少しでも理解をするため、録画してあったEテレの番組を視聴してみました。備忘録としてポイントを書き残しておきます。

▢ 大脳の働き(高次脳機能)
(前頭葉)話す、モノを作る、感情のコントロールをする、等
(頭頂葉)文字を書く、計算する、等
(側頭葉)人の話を理解する、等

▢ 高次脳機能障害の疫学
・日本国内で約50万人(2008年)

▢ 高次脳機能障害の歴史
〜当初は脳外傷の後遺症という位置づけ、しかし体のリハビリは行われるが脳機能のリハビリはなかった〜
(1997年)名古屋市総合リハビリテーションセンターの万歳登茂子医師らにより、名古屋「脳外傷友の会みずほ」が設立された。
(1998年)脳外傷交流シンポジウム開催、
 神奈川「脳外傷友の会ナナ」代表の東川悦子氏参加。
 北海道「脳外傷友の会コロポックル」の篠原節氏、中野匡子氏参加。
(2000年)「日本脳外傷友の会」設立
(2006年)政府が「高次脳機能障害」の診断基準を公表

▢ 高次脳機能障害の主な原因
・脳卒中(約80%):脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、等
・脳外傷(約10%):交通事故、転倒事故、スポーツ事故、等
・その他(約10%):感染症、低酸素脳症、脳腫瘍、等

▢ 高次脳機能障害の代表的な症状 〜 外見からは気づきにくい障害 〜
・注意障害:注意力が続かない、集中できない
・記憶障害
・失語症
・遂行機能障害:計画的な行動ができない
・社会的行動障害:イライラする、やる気が出ない
・半側空間無視
・地誌的障害:道に迷いやすい
・失行
・失認
・半側身体失認

▢ 高次脳機能障害で一番困っていること(患者さんの生の声)
・見た目がふつうなので「それって言い訳でしょ」と言われることが多い。
・内部障害と説明しても「そんなの言ったらみんなそうだよ」と言われてしまうが(イヤ、そうじゃないんだ)と心の中でつぶやく。
・見た目はふつうなんだけどいろいろ覚えることができなくて仕事に手間取ったりしていると、他のスタッフから「自分で工夫するのは当たり前でしょ」と批判されショックを受け、仕事を辞めようと思った。
・健康な人が考える以上にシビアな忘れ方とか失敗の仕方をするので、ものすごく深刻に考えていることを「言い訳している」と言われてしまい、なかなかそこは気持ちの整理がつかない。

▢ 高次脳機能障害は治るか
・早期診断・治療、適切なリハビリテーションの社会参加によって徐々に回復していく。
・完治ではないが、基本的には回復すると信じていただいてよい。

▢ 高次脳機能障害の支援機関
かけはしプロジェクト:高次脳機能障害のある女性たちが悩みを語り合うオンラインサークル
高次脳機能障害 情報・支援センター(国立障害者リハビリテーションセンターHP内)

▢ 子どもの高次脳機能障害の問題点
・成人では就労移行支援施設などを経て職場復帰をすることが多いが、子どもではそのようなシステムがなくいきなり学校に戻ることになり、学校生活・授業についていけなくて困ってしまう。
・学校・医療・当事者の三者が連携してサポート体制を構築する必要がある。

 片頭痛の治療薬は日進月歩で、近年、新薬が相次いで登場してきています。
 しかしこれは成人領域の話で、小児(特に小学生)への使用が正式に認められている新薬はほとんど存在せず、相変わらずアセトアミノフェンやイブプロフェンの頓服でしのいでいる旧態依然のまま。私は何とかならないかと漢方薬を提案しています。五苓散内服で5割、五苓散と呉茱萸湯を組み合わせると7割の患者さんに効果があると報告されています。
 さて、偏頭痛と群発頭痛を扱う番組を視聴し、わかりやすい説明だったので備忘録としてポイントを書き残しておきます。相変わらず小児には使えない薬の話ですが。

 いくつか記憶すべき数字が登場しました;
・鎮痛剤が有効かどうか → 内服2時間後に楽になっているかどうかで判断
・鎮痛薬は月に10回以内の使用にとどめる。月に10日間以上、それを3か月以上続けると「薬剤の使用過多による頭痛」のリスクが高くなる。
週1回以上鎮痛薬を服用している人は医療機関を受診し予防薬による治療の検討が必要。


<総論>

▢ 三大頭痛(頭痛そのものが病気)
・片頭痛
・緊張型頭痛
・群発頭痛

▢ 片頭痛の診断
(問診)約9割が診断される:頻度、起こり方、痛み方、服薬歴、等
(診察)神経系の診察
(検査)血液検査、MRIなどの画像検査を行うこともある。
・・・以上により二次性頭痛(ほかの病気が原因の頭痛)を除外する。

▢ 二次性頭痛の例
・脳梗塞
・脳出血
・くも膜下出血
・髄膜炎

▢ 危険な頭痛(二次性頭痛)の特徴
・突然の頭痛、今までにない激痛
・麻痺やしびれ、しゃべりにくい
・精神症状(厳格・妄想・幻聴、等)
・意識がぼんやりしている
・発熱
・視力低下を伴う
・50歳以上で新規発症
・頻度や程度が増えている、等

▢ 頭痛治療薬まとめ

1.片頭痛
(発作治療)
・トリプタン製剤(内服薬)
・ラスミジタン(レイボー®、内服薬)
(予防薬:毎日内服)・・・効果がない・副作用が出た場合は注射薬を試す
・カルシウム拮抗薬
・β-遮断薬
・抗てんかん薬
・抗うつ薬
(予防薬:月1回注射)
・CGRP関連抗体薬:少しでも効果があれば1年〜1年半ほど継続(痛み軽減作用もある)
(治療&予防薬)
・リメゲパント(ナルティーク®、2026年9月承認、12月販売):副作用が少ない、血管収縮作用がない。

2.群発頭痛
(発作治療)
・トリプタン製剤(自己注射薬)2007年承認
・在宅酸素療法
(予防薬)
・カルシウム拮抗薬
・ステロイド

<各論>

【片頭痛】

▢ 片頭痛について
・慢性頭痛の代表的な疾患の一つ。
・患者数は1000万人(推計)。
・女性に多く、女性:男性=3:1。
・頭の片側、もしくは両側が痛み、吐き気・嘔吐を伴うことがある。
・日常生活に非常に大きな支障をきたす疾患。

▢ 片頭痛が起きるメカニズム
・脳の視床下部で痛み物質が産生される。
・痛み物質は三叉神経を刺激する。
・三叉神経は脳の血管を拡張させるとともに炎症を起こす。
・血管拡張と炎症が痛みを発生させる。
・嘔吐中枢も活性化され、吐き気を催す。

▢ 片頭痛の特徴(セルフチェック)
① 動くと悪化する。
② 吐き気がある。
③ 光・音・においに過敏になる。
①②③の2つ以上該当する → 片頭痛の可能性あり

▢ 片頭痛の誘因(きっかけ)
(自己調節可能な誘因)
・まぶしい光
・強いニオイ
・飲酒
・睡眠不足
・寝過ぎ
・人混み
・騒音
(対人関係)
・ストレス
・ストレスからの解放
(自然現症)
・天候の変化
・温度の変化
・高い湿度
・月経
・更年期

▢ 市販の鎮痛薬の効果
・市販薬で痛みが改善し、支障なく過ごせているのであれば問題ない。
服用して2時間後に楽になっているかを確認すべし(本当に効いている?)。

▢ トリプタン製剤(内服薬)
・頭痛のメカニズムに沿って作られた薬(血管の拡張と炎症を抑える)。
・これまでの鎮痛薬(NSAIDs)で効かない人にも効果が期待できる。
・種類;
 スマトリプタン(イミグラン®)点鼻あり、ジェネリックあり
 ゾルミトリプタン(ゾーミッグ®)ジェネリックあり
 エレトリプタン(レルパックス®)ジェネリックあり
 リザトリプタン(マクサルト®)速く効く、ジェネリックあり
 ナラトリプタン(アマージ®)効果が長い、ジェネリックあり
・副作用;
 のどが締めつけられるような感じ
 だるくなる
 眠くなる、等
・服用日数:ひと月に10日以内
・服用できない人(禁忌):血管を収縮させるため、以下の病気の人は服用できない。
 ❌️ 脳梗塞
 ❌️ 心筋梗塞
 ❌️ 重い高血圧
 ❌️ 肝障害

▢ 「薬剤の使用過多による頭痛」
・トリプタン製剤でも市販薬でも起こりうる。
・使用頻度が月に10日間(※)以上、それを3か月以上続けていると脳が痛みに過敏になってしまい、わずかな刺激でも頭痛が起きやすくなる。
※)非オピオイド系鎮痛薬は15日。
・週1回以上鎮痛薬を服用している人は医療機関を受診し予防薬による治療の検討が必要

▢ トリプタン製剤が使えない人へ
・ラスミジタン(レイボー®、2022年承認):血管収縮作用がない。
 
▢ CGRP関連抗体薬(予防薬)
・頭痛のメカニズムに焦点を当てた新たな予防薬。
・月に1回自己注射をして片頭痛の発生を抑える効果がある。
・三叉神経末端から分泌されるCGRPが血管のレセプターに結合して作用し血管が拡張&炎症を起こすが、CGRP関連抗体薬はCGRPが受容体に結合する前にトラップして持ち去ってくれる。
・薬剤;
 ガルカネズマブ(エムガルティ®)
 フレマネズマブ(アジョビ®)
 エレヌマブ(アイモビーグ®)
※)費用:保険適用あり、3割負担の場合1本12,000円程度。


【群発頭痛】

▢ 群発頭痛の疫学
・患者数:約10万人
・男性に多く、20〜40歳で発症(近年は女性も増えている)

▢ 群発頭痛の症状
・片側の目の奥やこめかみが痛くなる。
・短時間で痛みがピークになる。
・15分〜3時間続く(終わると通常に戻る)。
・1日のうち短時間だけ痛みが起こる。治まるが毎日起こる。
・痛む側の目が充血し涙が出る、鼻水が出る。
・群発期がある。毎日数時間頭痛が起きる、数週間〜2か月ほど続く。
・群発期以外は頭痛は起こらない。
・群発期は半年〜数年おきに来る。

▢ 群発頭痛の治療
(発作用)
・トリプタン製剤(イミグランキット皮下注®、自己注射薬)(2007年承認):効果が出るまで数十分(内服薬では1〜2時間)、1日2回まで使用可能
・在宅酸素療法:高濃度の酸素を15分間吸入すると、群発頭痛の症状改善が期待できる。なお、酸素は登山用などではなく医療用酸素。
(予防薬)群発期のみ服用し、痛みの程度や頻度を減らすことができる。
・カルシウム拮抗薬
・ステロイド


<参考>
・チョイス@病気になったとき「頭痛〜治療と予防の最新情報」(NHK Eテレ、2026年5月3日放送)
頭痛専門医検索(日本頭痛学会HP)

<追加>
 最初に書いたように、トリプタン製剤は添付文書上、小児に適応がありません。しかし、適応がない中でも安全に使える可能性が高いことが「頭痛ガイドライン」にも記載されている、という宙ぶらりん状態が現状です。製薬会社さん、小児適応取得をお願いします。

小児に使用が許可されているトリプタン製剤
(12歳以上、体重40kg以上)スマトリプタン(イミグラン®)点鼻
・・・ほかのトリプタン製剤は小児に対する有効性が証明されていない。もし使用する場合は、説明と同意の上、年令12才以上・体重40kg以上は成人と同じ量、年令8才以上~12才未満・体重25kg以上~40kg未満は、成人の半量が処方量の目安。

正式に認可されていないが、説明と同意の上、小児使用可能なトリプタン製剤例
(6〜12歳)
 スマトリプタン(イミグラン®)点鼻あり
 リザトリプタン(マクサルト®)速く効く
(13〜17歳)
 スマトリプタン(イミグラン®)点鼻あり
 リザトリプタン(マクサルト®)速く効く
 ゾルミトリプタン(ゾーミッグ®)
 エレトリプタン(レルパックス®)
 ナラトリプタン(アマージ®)効果が長い

頭痛ガイドラインでは・・・
頭痛ガイドラインでは、カロナールでコントロールできない頭痛はトリプタン製剤(リザトリプタン、マクサルト®が推奨されている。体重によって40kg以上は10mgで40kg未満は5mgが推奨されている。

 もちろん、ガンコな頭痛、鎮痛薬抵抗性の頭痛の際は、二次性頭痛の可能性を検査で除外しなくてはなりません。実際に、頭痛を主訴に受診された小学生に「頻度・程度が悪化傾向なら脳神経外科で検査が必要です」と説明したところ、その半年後に脳神経外科で「もやもや病」と診断されたお子さんがいました。

 子どもたちの心の問題を追及していると、生きることの基本に立ち返ります。それは、食事・運動・睡眠。いくら薬を使っても、この3つがボロボロだったら立て直せません。
NHKで睡眠障害を扱った番組を視聴したところ、わかりやすい説明だったので備忘録としてポイントを書き残しておきます。
 睡眠医学は、メラトニンやオレキシンという物質の発見で飛躍的に進歩し、それが治療薬の開発につながっています。しかし、子どもに使用できる薬は限られています。
 さらに一番最後に出てきた「子どもの睡眠障害の原因」には環境(塾やスマホ)と心の問題(悩み・ストレス)が挙げられており、これを紐解いていくには心理士の介入も必要になりそうです。私は漢方薬の内服を提案しています(子どもの睡眠の悩みに漢方を)。

▢ 睡眠・覚醒障害とは
・夜中の睡眠の質が悪い、量が足りない。
・寝不足により日中の活動に支障がある。
・約70種類の病気が含まれる。

▢ 睡眠不足と睡眠障害の違い
・睡眠不足:眠ない(睡眠習慣の問題)
・睡眠障害:眠ない(日常生活に困りごとがある状態)

▢ 患者さんの生の声

▶ ナルコレプシー1型:日中に過剰な眠気があり、夜はグッスリ眠れない病気。
・情動脱力発作(突然、体の力が抜けて倒れてしまう症状):感情の動きが大きいときに全身の力が一気に抜けてしまう。
・「倒れ方が気持ち悪い」と言われた。自分でこらえよう・戻そうとする動きも加わるので、バタッではなくガクガクガクッと倒れ込む。倒れたあと眠ってはいるけど耳は聞こえる。

▶ むずむず脚症候群:夕方から夜に欠けて足の不快感が悪化して睡眠の妨げになる病気
・足が気になって、ほてって眠れない。
・「脚の中に虫が這うような感じ」とか「じっとしていられない、マッサージし続けないといけない、じゃないと気持ち悪くていられない」
・脚のむずむずの不快感は、なぜか明け方くらいになるとちょっと症状が治まる。2〜3時くらいにはうとうとして少し眠れる。
・でも夜になると、また寝られない戦いをしなければならないとため息が出る。

▶ 睡眠・覚醒相後退障害:脳の体内時計のリズムが乱れて睡眠時間が後ろにずれる病気
・超夜型で、みんなが眠る0時頃になっても眠気が来ない、眠りたいのに眠れない。
・定時制高校に通うようになり、登校時間が自分のリズムに合うようになり、困りごとが解消した。
・社会全体が朝型の生活でまわっている、社会に合わせに行くのではなく、自分に合った生活リズムを見つけるという考え方も大切だと思う。

▢ 睡眠・覚醒障害の分類
1.不眠
・慢性不眠障害
・短期不眠障害、等
2.睡眠リズムの異常
・睡眠・覚醒相後退障害
・非24時間睡眠・覚醒リズム障害、等
3.過眠
・ナルコレプシー
・反復性過眠症、等
4.睡眠中の異常現象
・むずむず脚症候群
・睡眠時無呼吸症候群、等

▢ オレキシンの発見(1998年、柳沢正史)
・人の覚醒を促す脳内物質。
・ナルコレプシーの治療薬開発につながった。

▢ 子どもの睡眠問題
・日本国内の子どもの3〜4人に1人が睡眠問題を抱えている。
・寝付きが悪い、夜中に動く、朝目が覚めないなど睡眠問題で「ほぼ毎日困っている」親が約30%。

▢ 年齢による体内時計の変化
・幼児期〜学童期は朝型
・思春期〜20代は夜型に傾く
・中高年になると再び朝型へ

▢ 子どもの睡眠障害の原因
・体質:生まれつき寝るのが苦手、等
・環境:塾や習い事で多忙、スマホ・ゲーム、等
・心:悩みやストレス、等


<参考>
▢ フクチッチ「睡眠障害・前編/後編」(NHK・Eテレ、2025年)

 近年、よく耳にする言葉です。日本語訳は「愛着」ですが、専門家によると「愛着≠愛情」であり、愛着障害と愛情不足が区別されずに用いられて混乱している、とのこと。
 では、アタッチメントはどのような概念なのでしょう。NHKで取りあげられた番組(すくすく子育て、NHKスペシャル、あさいち、等)をいくつか視聴し、ポイントと感じた箇所を引用・抜粋させていただきます。

 「ウォッチ・ミー・プレイ」は衝撃的でしたね。いろんな育児番組や子育て啓蒙書に書かれている「子どもの“コッチ見て”行動、“私をかまって”行動」が5分間の観察だけで解決するなんて、驚きです。
 親が心がけたい声がけで登場した、3つのネガティブトーク「命令・質問・批判」を減らし、3つのポジティブトーク「ほめる・くり返す・行動を言葉にする」を増やす、この効果はマジック! 〜このスキルは親子関係にとどまらず、夫婦関係・友人関係・すべての人間関係に当てはまることだと思いました。実行するのはなかなか難しいけれど。
 海外で流行(?)している「アタッチメントスタイル」も興味深い。回避型・不安・安定型・・・私も質問票で自分のスタイルを確認してみましたが、思った通りの結果でした。


▢ アタッチメント(=愛着)とは
・特定の人との間にできる気持ちのつながり。
・不安をやわらげて安心したい、という本能的欲求。
・不安を感じたときに、自分を守ってくれる人に物理的にくっついて(近づいて)安心感を得る、身の安全を守る。
・不安を感じたときに“くっついて安心したい”気持ち。子どもが満たされ、親子関係も改善する。
・アタッチメントは信頼感・自己肯定感を育む。
・アタッチメントは一生涯にわたる幸せの形成に影響する。
・見知らぬ人では安心感を取り戻せない。
・自分を守ってくれる人との間にある気持ち的なつながりであり、誰でもいいというわけではない。
・保護されているという安心感を得たとき、外の世界を探索することができる。
・次の挑戦へとつながる。
・幼少期のアタッチメントは、その後の人間関係に影響する。

▢ アタッチメント理論(安心の輪)と注意点
・子どもは安心感があると、探索や挑戦ができる。
(子どもの気持ち)「見ていてね」
・不安になると養育者の元に戻ってくる。
(子どもの気持ち)「守ってね」「なぐさめてね」「気持ちを落ち着かせてね」
・養育者に抱かれて安心感を得る。
・再度探索に向かう。

★ 注意点:先回りに注意。不安と安心を繰り返し、不快にこたえてもらう経験が大切。

▢ 愛着障害
・「愛情不足」と同義ではなく、深刻な環境に置かれた子どもの危機的状況を専門家が診断するレベルの話。
・養育者との愛着形成がうまくいかず、子どもの情緒や対人関係に問題が生じること。

▢ 政策として「アタッチメント」を採用した日本政府
・「子ども大綱」(2023閣議決定)・・・子ども施策において、アタッチメントの重要性を打ち出した。
・「社会的養護を必要とするすべての子どもが、養育者との愛着関係を形成し、心身ともに健やかに養育される」

▢ 遠藤利彦先生(東京大学)の解説
 自分の気持ちを打ち明けて誰かから受け入れてもらえる、わかってもらえる、そして助けてもらえるという経験を積み重ねる中で、自分は愛してもらえる価値がある、人は信じていいんだという感覚をもう一回作り直すことができれば、その人、その個人というのは、その後生涯、健全に生きていける確率は高くなる。
 幸せの根幹に関わるものとしての自己信頼・他者信頼の重要性、その自己信頼・他者信頼に最も深く関わるアタッチメントに注目が集まっている。

▢ 理想の親とは?
温かみ+適切な指示が出せる親(難しい・・・)
・命令・質問・批判をやめ、ほめる・くり返す・行動を言葉にする。1日5分でOK、何歳から始めても遅いことはない。

▢ 温かく、適切な指示が出せる親になる4つの方法
“声かけ”の黄金ルール:3つのネガティブトーク「命令・質問・批判」を減らし、3つのポジティブトーク「ほめる・くり返す・行動を言葉にする」を増やす。
(命令)親が会話の主導権を握り、子どもは支配された気分になる。
(質問)否定(あるいは命令・批判)のニュアンスが含まれることが多く、大人が主導権を握ることになりがち。
(批判)子どもの自尊心を傷つけ摩擦を増やす。特に7歳以降は批判に敏感になる。
例)「宿題はやった?」・・・(早くやりなさい、まだやっていないなんてどういうこと)
(行動を言葉にする)親の注目が伝わる。
無視のスキル望ましくない行動には、怒らず無視してやり過ごす
伝わる確率7割アップの指示法
・適切な「禁止」の言い方:子どもの“行動”を批判するだけにとどめる。どうして欲しいか言った方が耳にも残る。
・適切な「命令」の言い方:中立的な声で、5秒おいて繰り返し3回まで言う。直接的命令は必要最低限に絞って使う(1日5回くらいまで)。絶対に聞いて欲しい場合はハッキリ伝え、選択肢を残さない。
・思春期は親は誘導するより見守るスタンスで、子どもがリードする関係性の方がよい。
例)進路の話題は親が誘導するより、子どもが持ちかけるタイミングを計る。時間の猶予がないときは、何かのついでではなく、話す時間をしっかりと作る・・・ハッキリ「明日の〇時から進路について話し合いたい」と伝える。
遊びの中で“ひたすら注目”ウォッチ・ミー・プレイ, “Watch me play!” by ジェニファー・ウェイクリン:心理療法士)⇩
親の感情をコントロール
・子どもがかんしゃくを起こしたら、イラッとさせる行動を起こして冷静に対応できなくなったら「シャーク・ミュージック」(映画「ジョーズ」でサメが登場するときの音楽)と客観的に捉える。
・「タイムアウト」という方法で、冷静になって何が起こったのかを考える。
例)家を出る、トイレに行く、目を閉じる、等

▢ “ Watch me play!” 〜家庭でのアタッチメントの実践
・世界の15か国で活用されているスキル(基本的に8歳まで)。
・「気持ちの安定・衝動的な行動が減る」と報告されている。
・1回5〜20分、子どもを自由に遊ばせ、養育者は側にいて注目するだけ。
・注目された子どもは“親との直接的なつながり”を感じることができる。
・すると子どもは(親を引きつけるために)戦う必要がなくなる。
・親から「注目される」と感情爆発が減り、親子関係も改善する。
・2〜3か月で効果が出やすい。

▢ Watch me play!を行うときのポイント
・子どもが自由に表現できるおもちゃを選ぶ。電池式のものはただ見ているだけで(時間が)過ぎてしまうので、シンプルで年齢相応のおもちゃが良い。
・この時間の主導権は子ども。親は誘導せず、遊びを言葉で表現する程度にとどめる。親が関心を寄せるだけで子どもは安心する。

▢ 厳しく叱ってしまったときの親子関係修復のコツ
厳しすぎるのも、弱すぎるのもNG
(厳しすぎる言い方)
「さっきの言い方は誤るけど、怒らせたのはあなたよ。ゲームをやめない際と言ったときにすぐに聞くべきだったのよ」
(弱すぎる言い方)
「ゴメンね、さっきの言い方はダメだったね、許してくれる? ゲームをしたいなら続けてもいいよ、もう泣かないで」
(理想的な言い方)
「ゴメンね、今の言い方はダメだったね。私は怒っていたの、あなたは嫌な気持ちになったでしょうね」

▢ 児童養護施設で物を壊す男の子の叫び
・事情により親が養育できない子どもたちが集まる施設にはアタッチメント不足の子どもが多い。
・毎日何かを壊し、職員を困らせて手を焼いた男の子、そして彼は最後に泣きながら「だって、何か悪いことをしないと、先生はオレを見てくれないじゃないか」と叫んだ。

▢ アタッチメントが必要なのは子どもだけではない
・子どもは“物理的なくっつき”が中心。
・成長すると“精神的なくっつき”で安心感を得るようになる。

▢ ジョン・ボウルビィ(1907-1990)が提唱した「アタッチメント理論」
・「安心感の輪」を構成する要素は「安心の基地安全な避難所」と「探索
・安心の基地で安心感を得ると人は探索に出かける。
・不安になると人は安全な避難所に戻ってくる。
・上記の流れを安心の輪と呼ぶ。
・安心の輪の行き来を繰り返すことで、安心の輪は大きくなる。
・安心の輪が大きくなると、一人でいられる力が身につく。
・アタッチメント対象(安心の基地)は成長とともに変わっていく、広がっていく。
(例)養育者 → 祖父母、先生、友人、・・・

▢ 安全基地としての大人(養育者)の役割
・変わらずに“いつもそこにあり続ける”こと。
・いつも“何気ない話”(ダル絡み?)ができることが最高の安心材料になる。

▢ 3つのアタッチメントスタイル
回避型)自分のことを隠す傾向、他者と距離を置こうとする。
不安型)人間関係にとても敏感、相手にどう思われているのか常に気がかり。
安定型)人と親密に関わることが容易、信頼を心地よく感じる。

▢ “アタッチメント”を有名にした専門家(アミール・レバイン:コロンビア大学医学部)の言葉
・信頼できる人とつながり合うことほど、人の心を落ち着かせてくれるものはない。
・アタッチメントスタイルは人間関係において、どのように安心感を得られるのかという尺度である。
・アタッチメントスタイルは優劣ではなく、自分の“人間関係のクセ”がわかるものさし。

▢ アタッチメントスタイルの誤用が氾濫している現状
・その人に寄り添うために使うものであり、区別するために使うものではない(トレイ・タッカー:公認心理士)。
・一歩下がって“人間とはそういうものだ”と考えることが重要(ケイト・スピアー:インフルエンサー)
・正しい情報へのアクセスが不十分であると、健康状態が悪化する(アマンダ・ヤーネル:ハーバード大学)


<参考>
子育てで大切な“アタッチメント”って?(すくすく子育て、2024年放送)
▢ こころの土台を育てる関わり方 アタッチメント実践編(すくすく子育て、2025年放送)
▢ 【あさイチ】子どもが伸びる!言葉がけのスキル♡(①〜⑤まであります)(2024年放送)
愛着スタイル診断テスト回避性愛着障害~絆が稀薄な人たち~ (光文社新書) を基にした質問票)
▢ 愛着(アタッチメント)スタイル診断公認心理師監修、BCC)
遠藤利彦先生講義動画集(保育 is オンライン研修)

 私が子どもの頃(50年前)は家庭用ゲームは存在せず、繁華街にあるゲームセンターでしかできませんでした。魅力的で楽しそうだけど学校から「行ってはいけない」という禁断の場所。そしてそこに通う子どもは「不良」と呼ばれる、ごく一部の生徒でした。その他大勢の子どもたちには、そこで使うお金の持ち合わせがありませんでした。
 ファミコンが普及し始めたのはそれから約10年後、私が大学生の時でした。想像通り、一気にゲーム人口が増えました。それも爆発的に。
 そして現在、ゲームは小型化してポータブル機器も登場し「持っていて当たり前」の子どもの遊び道具になりました。
 ゲーム会社は競って楽しいソフトを開発・提供し続け、子どもたちはそれに夢中になります。中にはやめられなくて日常生活に支障をきたす「依存」状態におちいる子どもも出てきました。あんなに楽しく魅力的なものが手元にあれば、なかなか自分で律するのが難しいのは自明のこと。一定のルールの必要性を唱える声も生まれました。

 動画を提供してくれるスマホも同様、依存対象です。
 うまくつき合えば、この上ない便利な機器ですが、ヒトはこの魅力的な機器を使いこなせるのでしょうか・・・どうやらそうでもなさそうです。診察中もスマホ動画から目が離せない子どもを時々見かけるようになりました。親が取りあげるとかんしゃくを起こして修羅場になります。
 世界を見渡すと、SNS関連機器の使用制限を子どもにかける国が増えてきています。私には人類がデジタル機器(制作会社)に白旗を揚げたようにも見えます。つまり、「リアルワールドよりゲーム・動画の方が楽しく魅力的」という構図です。

 ここでは読みやすいように対策のみ提示しました。基本的な知識を知りたい方はこちらもご覧ください。
なお、ゲーム依存とゲーム障害はほぼ同じ意味として扱います。

▢ ゲーム・ネットについての教育
・ 現代社会に必要不可欠のものでもあり、禁止するのではなく適切な使い方を教えるべき
・いつから教えるのが適切か、乳幼児にスマホで動画を見せること、簡単なゲームで遊ばせることが良いのかどうかに関しては、明確な研究結果は存在しない。
・親としては連絡や居場所の確認目的にスマホを考えるが、子ども自身はスマホを持ったらいろいろやりたいことがある。ゲームをやりたい、動画を見たい、友達とLINEでやり取りをしたい、など子どもの要望を聞いた上で、それぞれのアプリの可否や条件など、家庭内ルールを話し合う。
・子どもが社会のルールを覚え始めるのが2歳頃、しかし小学校高学年になると、親に反抗したり、素直に学べなくなる傾向が出てくる。以上を考慮すると、5〜10歳くらいの間に、ゲーム・ネットの適切な使い方を教え始め、約束・ルールを作り、守らせることが望ましい

▢ 機種選定の際の注意点
・親が管理することが難しい場合は、安心機能が搭載されているキッズケータイがお勧め(カメラやメッセージ機能あり)。
・親の古いスマホを渡すことになったら、可能なら初期化して子どものアカウントを作成すべし(親の決済情報などは消しておく)。子どものアカウントなら、年齢に併せたコンテンツが表示される。

▢ スマホを使う時間・時間帯の設定
・時間:小学生では1日30分〜1時間が目安
(例)「平日は30分、休日前は1時間、休日は2時間」
   「30分使ったら10分休む」
・時間帯:
(例)
「夜は21時まで、塾の日は30分延長」
   「寝る1時間前までに終了」
・アプリごとの制限:
(例)「1回30分のゲームなら1日2ゲーム」
   「ゲーム40分、動画20分」
・Wi-Fiルータで端末ごとの時間設定も可能。

▢ スマホを使う場所と保管場所の設定
自室への持ち込みNG、リビングのみ利用OK
寝るときはリビングで充電する。

▢ ペナルティも一緒に決めてリビングに貼っておく
・ルールを破ったときのペナルティ:
(例)「翌日の使用時間を30分減らす」
   「3回破ったら1日使用禁止」
完成したルールはリビングや冷蔵庫に貼っておき、いつでも確認できるようにする。
・学年が変わるときや習い事の時間が変わるときは見直すタイミング。
・子どもの成長に合わせて「もう自分でコントロールできそう」と感じたら、ルールを弛めてITスキルを上げられるよう誘導する。

▢ ネットのルール作りのポイント
親が買い、子どもには貸し出す(所有権は親に)。
・使用する時間・場所・金額を指定する。
(例)午後10時まで、居間でのみ使用し自分の部屋に持ち込まない、等
・決めたら書面にして目につくところに貼る。
・親子が一緒にルールを作り、親もルールを守る

▢ 親子の「約束」を作るコツ
1.「約束」についての話し合いは、機器を買う前、サービスを使い始める前がよい。

2.所有権は大人に。
3.上手な「おしまい」を身につける。
(例)子どもが見通しをつけられるように、タイマーを利用したり、上手におしまいできたら報酬を与えたり。
4.「やるべきことをやってからゲーム」はうまくいかないことが多い。
(例)宿題が終わったらゲームしていいよ、とすると、宿題に取りかかってもゲームのことが頭から離れず進まないのでいつまで経っても宿題が終わらない。
5.ゲームができる時間は短すぎる設定にしない。
(例)15分だけ・・・では短すぎてトラブルの素になる。
6.次にいつ使えるのかを明確にする。
(例)「今日はおしまいだけど、明日になればまた〇時間できるよ」と言うと納得しやすい。
7.ゲームの時間を「交換可能財」にする。
(例)お手伝いをしたらゲームの時間が少し増えるなど。
8.機器を取りあげる方法をひと工夫。
・物理的に奪う方法はトラブルの元。
(例)Wi-Fi が時間で自動的に切れるなど。
9.子どもはネットから離れていたいときもある。
(例)LINEのやり取りから離れられず長時間使用してしまう子どもがいる、苦痛でも離れられないタイプもいる。時間を区切るルールを作り、やり取りから離脱するきっかけを作ってあげる。
10.睡眠時間の確保。
・生活リズムを崩すような時間設定はしない。
(例)「ちゃんと寝た方がゲームの能力がアップするよ」などとアドバイス。

▢ 他の依存対策のポイント
・子どもだけにルールを押しつけるのではなく、家族みんなでルールを守るべし。
親がゲームに興味を持つと、子どもが教えてくれる。親も子どもの考えを理解しやすくなる。親の方がゲームが上手、ネットに詳しいと、子どもは親を尊敬して言うことを聞きやすくなる。

▢ 具体的な項目
・夫婦で異なる考えだと子どもは混乱するため、家族みんなで話し合い、決める。
・ペアレンタルコントロール機能のフィルタリングなどの設定で時間制限を。
・家庭内のルール作り(時間と場所)や親からの声かけでリテラシーを育てる。
★ 子どもにスマホを与えると、子どもは親のアカウントを探し、誰をフォローしているのか、どんな投稿と返信をしているのかを見る可能性があることを覚悟する。大人はSNSで子どものお手本になるような振る舞いを心がけるべし。

▢ 使いすぎ予防のポイントは「日中活動の充実」
・日中活動が充実していると、前述の約束事のポイントを子どもに守らせることが簡単になる。
ゲームよりリアルワールドが楽しければゲーム依存は発生しないはずだが、現実は逆になりがち。
・日中活動を子ども本人が楽しみにしていたら、子どもは朝起きようと努力する。逆に言えば、日中活動がつらい、怖い、不安、退屈な状況では、生活リズムが崩れやすくなる。

▢ 思春期例の問題点・注意点
・ゲームの制限・禁止は回復につながらない。
・ゲーム依存は氷山の一角で、その下には本人が悩んでいる家庭や学校、社会生活の問題が隠れている。
・子どもはゲームをすることにより安らぎを得ている面がある。
・ゲームをしている・していないではなく、ゲーム依存の原因となることに目を向けることが大切。
・思春期の子どもは反抗期でもあり、両価性(アンビバレンツ)状態。ゲームをやりたくて仕方ないけど、やめられない現状に不安を持っていることも多い。本人が困っている要素(睡眠問題・食欲不振など)をきっかけにして相談に乗り受診につなげる。最初は抵抗するかもしれないが、何回も何回もくり返し話していくことが大切。本人が怒っているときは避け、話を聞いてくれそうなときにわかりやすく説明していく。
・治療の結果、ゲーム使用時間が少しでも減れば(例:10時間 → 8時間)、それを評価することが大切。

★ ニール・イヤール氏(作家・コンサルタント)のコメント
・スマホやアプリ開発の裏側;
✓ 魅力的で習慣性が高いものが「優秀なスマホ製品」とされる。
✓ 習慣的に使用してもらうためにユーザーの不快な感情(退屈、孤独、疲労、不確実性、ストレス、不安、等)に入り込み「気晴らし」を展開させる。
✓ 不確実性で変わりやすいものにヒトは注意深くなり集中する傾向があり、それがあると習慣化しやすい。予測可能なものには誰も興味を示さない。

樋口進氏(久里浜病院名誉院長)のコメント
・ゲームに勝ち続けると依存性はなくなるが、ときどき負けるという不確実性があるため習慣化する。
・仲間とやり取りしていて、自分だけ置いてきぼりになることを皆とても怖がる。イヤだけど見ざるを得ない状況になっていることが多い。
・依存患者に「見るのはいいけど、書き込むのはしばらくやめよう」と提案している。書き込むと必ず反応を見たくなるため。
・依存性のあるゲームやネットは、早い年齢から始めると依存のリスクが高くなることがわかっている。国がガイドラインを作成すべき時に来ている。
・スマホ・ネットを使わない時間を家族で設定・共有することを提案したい。
(例)夜の7〜8時は家族全員で使わない時間を作る( → 会話が増えるかもしれない)。

★ スティーブ・クレイン氏(スタンフォード大学 行動デザインラボ)の提案
・使いやすく便利に作られているスマホを自分で使いにくく楽しめないようにするくする工夫が必要。
・人間は3つの要素「やりたい・できる・きっかけ」がそろったときに行動する。
1.「きっかけ」を減らす:
(例)お休みモードをオンにして通知が来ないようにする。
2.「できる」を減らす:
(例)パスワードは長いものにして保存しない( → 精神的な負担が増える)。指紋認証や顔認証も使わない。
3.「やりたい」を減らす:
(例)画面の色を変える(赤一色にするとずっと画面を見たくなくなる、白黒にすると魅力が半減する)。


<参考>
・「ゲーム・ネットの世界から離れられない子どもたち」(吉川徹著、合同出版)
・「思春期の「つながる気持ち」はどこへ行く?」(関正樹著、日本評論社)
・「子育て支援者応援チャンネル」(YouTube動画 by 木下直俊先生)
・「思春期 心と体の不調 ゲーム依存」(NHK-Eテレ きょう
の健康、2025年)
・「ゲームネット依存」(NHKサイエンスZERO、2022年)
・「
子どものスマホ、いつから持たせる?(AERA Kids+、2026.4.8)

<相談窓口>
エンジェルアイズHP
全国精神保健福祉センター(厚生労働省)
保健所検索(厚生労働省)

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