★ この項目は、群馬県医師会作成の「学校医Q&A」をもとに、
生徒・保護者向けにわかりやすく説明を試みたものです。

日本人小児の約10%が肥満であると報告されています。
 
ところで、肥満ってどこから病気なのでしょうか。
近年は「ポッチャリ系」という言葉も生まれ、
以前より否定的な雰囲気はなくなりましたが・・・。

肥満の定義は「肥満度が20%以上、かつ体脂肪率が有意に増加した状態」です。
★ 肥満の評価方法(実は複雑です)については最後【備考】(1)に記載しました(⇩)。
★ 「有意な体脂肪の増加」は以下の通り;
・男児:年齢を問わず体脂肪率25%以上
・女児:体脂肪率30%以上(11歳未満)、35%以上(11歳以上)


「脂肪」には内臓脂肪と皮下脂肪があり、以下の特徴があります;
内臓脂肪)比較的容易にたまり、容易に燃焼することが可能。
皮下脂肪)いざという時のため(飢餓など)にエネルギーを備蓄。

皮下脂肪型肥満 → “洋なし形体型”、
内臓脂肪型肥満 → “リンゴ型体型”、
となることが知られています。

学校健診では「肥満度」を計算して、以下のように分類しています;
 肥満度20%以上 →  軽度肥満 
 肥満度30%以上 → 中等度肥満
 肥満度50%以上 →  高度肥満


医学的には「肥満=病気」ではありません。
(肥満)+(それによる健康障害・医学的異常)
を「肥満症」と呼び、治療が必要な病気として扱います。

「肥満症」の怖いところは、
「今つらい症状がないのに、将来の病気に確実につながっていく」
ことです。
症状がないので本人・家族に病識が乏しく、
「肥満の基準に当てはまりますので医療機関を受診してください」
という書類を学校からもらっても、
スルーしてしまう方が少なからず存在します。

しかし多くの大人が苦しんでいる心筋梗塞脳卒中高血圧
その原因となる生活習慣病(2型糖尿病など)、メタボリック症候群
などは、そのルーツを探すと「小児期の肥満」がもとであることが判明しており、
そのリスクは「大人になってからの肥満」より「小児期・思春期の肥満」の方が、
強く関連していると報告されています。

学齢期では、肥満により生じる合併症はまれであり、
外見や運動能力低下などによる心理社会的問題と、
引き続いて起きる自立の障害がみられることが多く、
「こころとからだ」の健康障害を引き起こすため、
明らかな合併症がなくても小児肥満の改善は必要です。

学校健診における肥満児の抽出は、
小児期に病的な肥満を解消することにより、
将来の命に関わる病気を予防しようという試みなのです。
肥満児の将来の病気のリスクを減らすのは、指摘された今です!
必ず医療機関を受診してください。

小児科開業医の当院では「軽度〜中等度肥満」を診療しています。
「高度肥満」は以下の目的で総合病院へ紹介しています;
・「肥満症」の有無の検索(血液検査、エコー検査)
・管理栄養士による食事指導

近隣の中学校では「肥満度50%」の生徒に医療機関受診を指示します。
このレベルでは自覚症状がなくても、
血液検査の異常をすでに示していることが多いためです。
そして「小児肥満症」は以下の基準で診断されます。

<小児肥満症の診断基準>

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(「高度肥満児対策の手引き」群馬県医師会、2017年発行より)

内臓脂肪型肥満によりさまざまな病気が引き起こされやすくなった状態を、
「メタボリック・シンドローム」と呼び、治療の対象になります。
小児肥満の10〜20%がメタボリック・シンドロームと診断されます。
★ 診断基準はこの項目の最後【備考】(2)に提示しました(⇩)。

▢ 医療機関を受診する目安
・学童期の軽度〜中等度肥満 → 学校での保険指導
・学童期の高度肥満、保険指導が効果的でない中等度肥満
→ 学校医やかかりつけ医を受診して原因を調べ、
 原因により生活習慣の見直しを行います。
・学校医やかかりつけ医の介入が効果的でない例は、高次医療機関への紹介が必要です。
★ この項目の最後【備考】(3)に記載しました(⇩)。

ほかに、高次医療機関での診療が必要な病態に、
症候性肥満と発達障害と伴う肥満があります。

▢ 症候性肥満
・肥満のほとんどは食べ過ぎが原因(原発性肥満)ですが、
まれに体重が増える病気が隠れている(症候性肥満)ことがあり、
その病気に対する治療が必要です。
(例)内分泌異常、視床下部異常、遺伝子異常、等
・症候性肥満は身長の伸びが悪いことが多いのが特徴です。

▢ 発達障害を伴う肥満
・発達障害児の多くは環境への適応障害があり、
その結果として不安の増加、自己評価の低下、運動の減少に加え、
食べることに満足を見いだすようになると肥満につながります。
・発達障害の正しい診断と支援が必要です。


では「肥満度>50%」の生徒への診療・指導内容を書いてみます。

▢ 肥満診療の目標
肥満度をそれ以上増加させないこと。
(思春期前・思春期)現在の体重を維持します。
(最終身長到達後)減量が必要です。
肥満度を中等度(<50%)にすること。
※ 柔道や相撲など、体重増加が必須であるスポーツを行っている場合は、定期的にフォローし、血液検査異常や呼吸器症状を認めない限り体重増加を許容します。

▢ 診療内容と通院の目安
・食事指導・運動指導でエネルギー収支のアンバランスを修正します。
・体格の評価:成長曲線を利用します。
・目標達成困難な場合は達成できない要因を探ります。
・児が自分の問題として取り組めるように支援します。
・はじめは1か月に1回、効果が現れたら2〜3か月に1回、通院します。
・体重を毎日測定して「体重測定表」に記入し、受診の際に医師に見せてください。

▢ 食事療法
・肥満は食事・おやつ・ジュースなどの過剰摂取と、
運動不足により起こるものがほとんどです。

 (消費エネルギー)<(摂取エネルギー)
          ⇩
 (消費エネルギー)>(摂取エネルギー)

へ持っていけば解消します(単純ですが難しい)。
・成長期においては摂取エネルギーを極端に減らすと危険です。

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・実際の食事内容や食習慣を把握して見直し、
そこから改善できる点・難しい点などをあぶりだして一つ一つ対応していきましょう。

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▢ 運動療法
・肥満児は運動が苦手なことが多いので、
まずは体を楽しく動かすことから始めましょう。
・関節痛や腰痛が現れた場合は、運動を中止して整形外科を受診しましょう。
運動は“ほんのり汗を掻く程度”(心拍数120〜140拍/分)が適切です。
・1日10〜15分ではじめ、徐々に増やして、
最終的には1日60分程度の運動を目標にしましょう。

▢ 行動療法
・毎日の体重記録・運動記録・生活習慣記録はモチベーションを維持するのに役立ちます。
・「肥満は体質」から「肥満は習慣」と意識を修正しましょう。
・「できなかったことを叱る」のではなく、
「できたことを褒める」スタンスが望まれます。


▢ ライフステージに応じた、肥満対策

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【備考】(1)
<肥満の評価方法>

肥満の評価方法は以下の種類があります;

1)肥満度
2)BMI(Body Mass Index)
3)ローレル指数
4)腹囲

学校健診では「1)肥満度」が採用されています。
成人領域で用いられるBMIは、海外では用いられているようですが、
日本の学校健診では使用されません。

肥満度は以下の計算式で求められます;

(肥満度%)=[(実測体重ー標準体重)/標準体重 ] × 100 

学童期以降は、
 肥満度20%以上 → 軽度肥満 
 肥満度30%以上 → 中等度肥満
 肥満度50%以上 → 高度肥満
と診断します。

なんだ、結構単純・・・と思いきや「標準体重」がくせ者で、
計算式で求めるのです。
その計算方法も、実は2種類あります:

①その1;係数 a と b は下表を使います。 

(標準体重)= a × 身長(cm)ー b 
 
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学校健診で使われている計算式です。
ただし、年齢毎に係数が異なるので、同じ身長体重であっても、
誕生日を挟んで年齢が増えると肥満度が変わってしまう欠点があります。
とくに身長が−2SD以下の低身長時では肥満度の評価が正しくない可能性があります。

②その2;

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 個人の肥満度の変化の評価には、
この方法を用いた肥満度はグラフ化すると視覚的に判定しやすく、
縦断的な評価を行いやすいとされています。
ただし、思春期発達段階の違いなどに基づく、年齢による体型の差は考慮されません。
 
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2)BMI=体重(kg)/(身長(m)×身長(m))
日本人の成人では25以上を肥満としています。
小児では年齢とともに変動するため、
パーセンタイル基準値と比較し、
90および95パーセンタイルを超えていれば肥満と診断します。

3)ローレル指数=体重(kg)/(身長(m)×身長(m)×身長(m))×10
160以上:肥満
180以上:中等度肥満
200以上:高度肥満
低学年の場合、身長によって補正する必要があります。
身長110〜129cm:180以上が肥満
身長130〜149cm:170以上が肥満

4)腹囲(臍高囲)
日本人の小児メタボリックシンドローム診断基準(6〜15歳)によれば、
小学生:75cm以上が内臓脂肪量増加
中学生:80cm以上、または腹囲/身長が0.5以上で内臓脂肪量増加
と判断します。


【備考】(2)
<メタボリック・シンドロームの診断基準>(6〜15歳)

① 腹囲の増加:
・中学生:80cm以上
・小学生:75cm以上ないし腹囲÷身長が0.5以上
② 中性脂肪が120mg/dl以上、ないしHDLコレステロールが40mg/dl未満
③ 収縮期血圧125mmHg以上、ないし拡張期圧70mmHg以上
④ 空腹時血糖100mg/dl以上

注)採血が食後2時間以降である場合は、
中性脂肪150mg/dl以上、血糖100mg/dl以上を基準としてスクリーニングを行います。
この食後基準値を超えている場合には空腹時採血により確定します。 

 → 腹囲の基準①を満たした上で②〜④のうち2つを含む場合が、
「小児メタボリックシンドローム」と診断されます。


【備考】(3)
<高次医療機関への紹介が必要な場合>
 

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上記以外でも、以下の場合は高次医療機関へ紹介されます。
・睡眠時無呼吸や発達障害がある場合
・関節痛などで運動制限を要すると考えられる場合