★ この項目は、群馬県医師会作成の「学校医Q&A」をもとに、
生徒・保護者向けにわかりやすく説明を試みたものです。
 
私は小児科医なので関節の痛みは専門外であり、
相談を受けたら基本的に整形外科に紹介しています。

ただ、
 どんなスポーツで、
 どんな年齢で、
 どんな症状が出ると、
 どんな病気が疑われるのか・・・
基礎知識を整理しておきたいと思います。


スポーツ傷害とは?

・スポーツにより生じるすべての運動器の異常で、2つに分けられる;
1)スポーツ外傷(ケガ):1回の外力で生じる
2)スポーツ障害(故障):くり返し負荷で生じる

・スポーツ傷害の原因
 ✓ オーバーユース(使いすぎによる疲労の蓄積)
 ✓ 誤った練習方法
 ✓ 正しくないフォームや動作

・スポーツ障害の特徴
①体の一部にくり返しの負荷がかかることで生じる炎症が主体
②スポーツ種目やポジションに特異性が高い
③外科治療の対象になることは少なく、
多くは練習量のレベルダウンやフォームの矯正で快方に向かう。

・スポーツ障害の予防
① 練習は週3〜4日以内にする。
② 練習前に十分なウォーミングアップをする。
③ 正しいフォームと基本動作を身につける。
④ 無理のない正しい筋力トレーニングをする。
⑤ 同じ動作ばかりを繰り返さない。
⑥ 練習後はクーリングダウンを行う。
特に試合や練習でいじめた場所はアイシングする。


【サッカー】

<小学生>
・下肢の障害が多く、足部、とくに踵部(かかと)の障害が多い。
(例)踵骨骨端症外脛骨障害母趾種子骨障害など
・次に多いのが膝の障害。
(例)オスグッド病分裂膝蓋骨膝蓋靱帯炎など
・障害は練習の頻度や量に比例するため、
部活やクラブチーム以外に練習が重なっていないかどうかを、
確認することが必要です。

<中学生> 
・体の発育に個人差があることに注意。
・中学生の部活はほぼ毎日練習があるため、
同じ練習をしていても筋骨格系の発育がよい生徒は障害がなくても、
発育の遅い生徒は障害が起きやすい傾向があります。
・下肢のどこにも障害が出るが、 オスグッド病などが多く起こり、
中足骨疲労骨折もよく見られます。
・練習が過度になると、腰椎分離症も起こりえます。
 
 
【野球】

<小学生>
・上肢の障害が多く、ほとんどが肘の障害(いわゆる“野球肘”)。
・肘の障害には2種類あります;
①外側障害(上腕骨小頭離断性骨軟骨炎):重症化して野球を続けられなくなることもあるので要注意。
②内側障害(リトルリーグ肘など):軽症で治りやすい。
・野球肘は全力投球数に比例します。
・指導者や親が注意をしても、隠れて練習していることがあります。
野球肘予防のストレッチが推奨されます。

<中学生> 
・肘の障害に加え、肩関節の障害(野球肩リトルリーグ肩)も起こるようになります。 
・野球肘・野球肩は投球数、投球フォームに関連があり、肩障害予防のストレッチが推奨されます。
・小学生の時と比べて練習量が急に増えたり、硬式野球を始めて急にボールが重くなったりすることも原因として考えられます。

★ 「青少年の野球障害に対する提言
日本臨床スポーツ医学会が投球制限のルールを提唱(1994年)。
・小学生:週3日以内、1日2時間以内、1日50球以内、週200球以内
・中学生:週1日以上の休養日が必要、1日70球以内、週350球以内
・高校生:週1日以上の休養日が必要、1日100球以内、週500球以内
※ 1日2試合の登板は禁止。
※ 投手と捕手は2名以上育成しておく。

★ 「野球を楽しむための提言」(3・3・3のトリプルスリー)
・練習時間は3時間
・練習日数は週に3
・シーズンオフは3か月

【バレーボール】
・膝、、肩、腰椎の障害が起こります。
・膝では「ジャンパー膝」などの障害が多いです。
・肘・肩の障害は野球に比べると軽症です。
・腰椎の障害には腰椎分離症などもあり、
早期発見早期治療により完治しますが、
放置により一生分離症を抱えることもあり、要注意です。

【テニス】
・下肢、、肩の障害が起こりますが、比較的軽症です。

【陸上競技】
・ほとんどが下肢の障害です。
・関節部以外にも、筋肉部、腱部の障害も起こります。

【バスケットボール】
・膝、足部の障害が多くみられますが、比較的軽症です。

【水泳】
・スポーツ障害の頻度は少なめです。
・バタフライ選手の腰痛(腰椎分離症の可能性あり)、
平泳ぎ選手の膝痛が時々あります。


<疾患解説>

オスグッド・シュラッター病】Osgood-Schlatter Lesion
・若年男子の激しいスポーツ競技者に多い。
・脛骨粗面部の障害
・キック、ジャンプなどの激しい膝伸展の反復により、脛骨粗面の軟骨が牽引される。
・膝蓋靱帯の牽引による Overuse syndrome
 → 急激な成長による大腿四頭筋の相対的な過緊張+ジャンプ・ランニングのくり返し
・症状
 ✓ 脛骨粗面部の隆起
 ✓ 骨端線が閉鎖すると症状消失

リトルリーグ肩
・上腕骨近位骨端線離開
・十分な筋力がなく、過度の関節の柔軟性を認める小児期に、
間違った練習方法や練習のやり過ぎにより発生する。

野球肘
(内側の痛み)内側型:Tension overload
投球動作の加速期初期には肘関節は強く外側に曲げられ、
内側側副靱帯や手関節屈曲腱などの内側構成体が引っ張られ、炎症が起こる。
靭帯が引っ張られ、骨の一部が剥がれる。
例)内上顆裂離・骨端離開、内側側副靱帯(MCL)損傷、尺骨神経障害
(外側の痛み)外側型:compression injury
投球動作の加速期初期には肘関節は強く外側に曲げられ、
上腕骨小頭部(外側)の循環・栄養が障害される。
骨と軟骨がぶつかって破壊される。
離断性骨軟骨炎:プロ野球選手が軟骨摘出術を受けることになる障害)。
例)離断性骨軟骨炎(OCD)、滑膜ひだ障害
(後側の痛み)後方型:Extension injury
ボールを離したとき肘関節は過伸展され、遊離体を形成したり、
上腕三頭筋付着部に炎症を起こす。
例)肘頭骨端離開・骨端閉鎖不全、滑膜ひだ障害、骨棘骨折、肘頭疲労骨折(滑車・橈骨頭OCD)

腰椎分離症
・先天性と後天性(外傷性)がある。
・後天性(外傷性)では、
 発症のピーク:13-14歳
 スポーツ選手の20〜45%(全体としては6〜7%)
・スポーツ動作での屈伸-曲げ、ひねり運動の持続が、
関節突起間部に異常な応力の集中をもたらす結果生じる。
・分離部の動きにより痛みが発生する。
・分離型は3タイプ
 亀裂型:コルセットにより骨癒合可能
 偽関節型・欠損型:リハビリあるいは手術
・治療:
 陳旧性であれば、通常の腰痛に応じた治療
 新鮮骨折であればコルセットを4〜6か月装着しスポーツを禁止する。
 偽関節で骨癒合が無理な場合は伸展のみを制限する軟性コルセットを考慮する
・癒合率は初期>分離期なので、早期治療が望ましい。



 <参考>
運動器検診とスポーツ障害(福岡県医師会) 
・「スポーツ損傷シリーズ」(日本整形外科スポーツ医学会)
・「スポーツで起こりやすいケガと故障」(日本臨床整形外科学会)
・「
子供の運動スポーツ医学の立場から考える」(日本臨床スポーツ医学会