メタボが問題となる現代社会では「体重を減らす」ことが大きな課題ですが、
一方で「体重の減らしすぎ」も健康に良くありません。
近年、思春期でもダイエットが当たり前になり、
その結果「やせ過ぎ」て健康被害に陥る例もあります。

食行動異常により健康障害が発生する病態を、
医学的には「摂食障害」と呼びます。
日本の患者数は(通院している人だけでも)、
20万人以上とされています(2017年、厚生労働省資料)。

摂食障害は“女性の病気”というイメージがありますが、男性にもあります。
日本では95%が女性、残りの5%が男性です。

摂食障害の中でやせるタイプを「拒食症」と呼び、
大きく以下の二つに分けられます。
・摂食制限型:食べ物を極端に制限するタイプ
・過食・排出型:たくさん食べたあとに吐いたり下剤を使ったりするタイプ

どのように対応したら良いのか、探ってみましょう。

<参考>
摂食障害かなと思ったら(1) 摂食障害のある人に医療ができること記事公開日
摂食障害かなと思ったら(2) 摂食障害のある人に家族ができること
摂食障害かなと思ったら(3) 家族会ってどんなところ?
摂食障害かなと思ったら(4) 経験者に聞く回復までの道のり
子どもの拒食症について なりやすいタイプと原因・症状・治療法
2021年10月19日:NHK
女性の健康推進室・ヘルスケアラボ摂食障害(拒食・過食)」(厚生労働省)
女性の健康推進室・ヘルスケアラボ思春期のやせ(厚生労働省)

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摂食障害患者の心理
家族ができるサポート



▢ ダイエットと拒食症の違い

・拒食症の初期はダイエットと見分けることが困難です。
・やせるために食事量を減らす、運動をするのは通常のダイエットの範囲です。
・以下の要素が認められると、「拒食症」という病気として治療介入が必要になります。
 ✓ 体重が増えることに対する極端な恐怖
 ✓ 自分の体型を客観視できない
 ✓ 食事制限や過剰な運動をやめられない

(例)体重が100g増えただけで人生に絶望したり、
際限なく体重が増えて言ってしまうと錯覚する、など。

▢ 拒食症になりやすいタイプとキッカケ
・なりやすいタイプ
 ✓ 真面目でいい子
 ✓ 努力家
 ✓ 自己主張が苦手(不安や不満をため込みやすい)
・なりやすいキッカケ
 ✓ 進級・進学
 ✓ 受験の失敗
 ✓ いじめ
 ✓ 失恋

▢ 拒食症がからだ・こころに及ぼす影響
・“からだ”への影響
 ✓ 不整脈・突然死
 ✓ 低血糖・昏睡
 ✓ 貧血
 ✓ 無月経・不妊
 ✓ 低身長・骨粗鬆症
・“こころ”への影響
 ✓ 集中力・判断力の低下
 ✓ 睡眠障害
 ✓ うつ
 ✓ 自殺
・拒食症は命に関わる病気:一般女性と比べて、死亡リスクが約10倍。

▢ 拒食症の早期発見のサイン
 ✓ 家族と食事をしない
 ✓ 食べ物を細かく分ける
 ✓ 食べていないのに活発に活動・運動する
 ✓ 極端に体重が減ってきた、または体重の増え方が悪い

▢ 拒食症に伴う主な合併症
骨粗鬆症:骨のカルシウム量が減り、骨折しやすくなる。
無月経:女性の場合、生理が止まる(体脂肪率<10%、BMI<18%でハイリスク)
低身長:成長期の場合は低栄養から低身長につながる。
酸蝕歯(さんしょくし):胃酸で歯が溶けてしまう。嘔吐をする際の胃酸で歯や歯肉を痛め、歯を失うことにつながる。
逆流性食道炎:胃酸で食堂に炎症が起きて出血する(→ 嘔吐物に血が混じる)。

※ 酸蝕歯の予防法:
 ・嘔吐のあとは真水で30回くらいうがいをする。
 ・嘔吐後30分以上経過してから(口の中が酸性から中性になってから)、
  柔らかい歯ブラシと研磨剤の入っていない歯磨き粉を使って歯を磨く(特に裏側)。
 ・定期的な歯科医師によるチェック。

▢ 拒食症患者への医療関係者の接し方
・「食べるのが怖い」「体重が増えるのが怖い」という気持ちを受け入れる。
・「入院したくない」「学校へ行きたい」という気持ちが少しでもあれば、
それを元に少しずつ体重増加を確保する。
・「得意な食べ物は何ですか」「楽に食べられる、怖くないものは何ですか」など、
ちょっとしたキッカケからはじめる。
・心理療法は体重が増えて思考力が回復してから。
・拒食症の心理療法は特殊な治療ではなく、
ふつうにストレスに対処できるよう誘導し、
周囲の家族みんなで応援し、
「どうにかやれるかな」と本人が思えるよう似れば成功。

▢ 拒食症の治療
1.栄養療法
・まずは栄養状態を改善し、健康的な体重に戻す。
・体を守らなければ、次のステップ(カウンセリングや精神療法)に進めない。
・経鼻経管栄養(鼻から胃にチューブを入れて栄養剤を投与する方法、要入院)
・管理栄養士による栄養指導
2.心理療法
・人生とうまくつき合うためのノウハウや考え方を身につける。
・認知行動療法:極端な考え方や捉え方を修正する。
・家族療法:患児への接し方を学んで、一緒に良くなる方法を考えていく。
・ほか:対人関係療法・芸術療法など。

▢ 拒食症の認知行動療法
・認知行動療法とは「認識を変えると行動が変わる」というもの。
・例えば同じ物を見ても、すごく不安に思えば次の行動は萎縮するが、
同じ物をバランスよく見ることができれば平常心でいられる、等。
・患者は「やせていないと存在価値がない」「100g増えただけで際限なく太ってしまう」
といった極端な考え方や物事の捉え方を持っているので、その極端さに気づかせるトレーニング。
(例)食事日記をつけて、今より食べる量を増やしても際限なく太るわけではないことを体験させる。
・多くは公認心理師が担当する。

コーピング
・ストレスへの対処法のトレーニング。
・パーフェクトに対処するというわけではなくて、
70%どうにか対処することを身につける。
・対処法をたくさん用意して、場合によって使い分けらるスキル。
・摂食障害の患者はとても真面目なので、我慢するか頑張るか、
2つくらいしかコーピングスキルを持っていないことが多い。
・「逃げてもいいんですよ」「困ったら人に振ってもいいんですよ」
とスキルを増やすことをアドバイス。

▢ 家族療法
・家族が患児への接し方を学び、一緒に良くなる方法を考えていく。
・家族だけで不安を抱え込まずに、医療機関ほかを利用する。
・ポイント
 ✓「母親の育て方が悪い」という考えは間違い。
 ✓ 無理矢理食べさせない。
 ✓ 不安をぶつけない。
 ✓ 子どもをたくさん褒める。
 ✓ 食行動や体型にかかわらず、存在そのものを認め、愛する。



<備考>

▢ 過食症と大食いとの違い
・大食い:食べたあとは喜びと満足感がある。
・過食症:自分では抑えられない、食べたあとに自分を責めたり、罪の意識、とてもネガティブな気持ち、抑うつ気分になったりする。

▢ 過食症に有効な食事指導
・「脳を飢えさせない」ことが大切。太るのが怖くて、朝昼は絶食、夜に過食するのは「脳が飢えている」から当たり前。
・起きている間は4時間以上間を開けないで、脳の血糖値を下げすぎないような食事を心がける。
・まずは規則正しい時間に3食を食べる(十分な量でなくても良い)。

過食症への家族・保護者の対応
・過食の最中は患者自身が自分をコントロールできない状態になっており、
何を言ってもやっても無駄。
・過食していないとき、落ち着いている本人に「何かできることはない?」などと声がけして、保護者が管理することを申し出る。
・ただし、過食を手助けすること(食料を買ってくる、お金を渡す)は避ける。