現在、漢方の啓蒙書籍はたくさん出ていますが、
“これは役に立つ”というものにめったに出会えません。
何年か前に読んだ、
「Phase で見極める!小児と成人の風邪の診かた&治しかた」
(永田理希、日本医事新報社、2021年発行)
は漢方の本ではありませんが、目からうろこがぽろぽろ落ちる内容でした。
それは、風邪の経過(phase)に伴い、
適応する漢方薬が次々変わる様を解説しているのです。
「これぞ私が知りたかったこと!」と夢中で読みました。
まず、「風邪を引くとなぜ風邪症状が出るのか?」の説明から始まります。
ひとことで言うと「体に入ってきたウイルスを排除する免疫反応」なのですが、
一つ一つ、見ていきましょう。
■ 風邪を引くとなぜ、鼻水が出るのか?
・上気道へのウイルスの付着により感染が起こり、自然免疫が反応し自己防衛を行う。
・鼻粘膜内に侵入したウイルスがmast cellに作用してヒスタミンが遊離する。
そのヒスタミンがH1受容体に結合し、鼻炎症状が惹起される。
■ 風邪を引くとなぜ、咳が出るのか?
・咳嗽は、気道内に貯留した分泌物や異物を気道害に排除するための「生体防御反応」である。
・咳反射は本来、抑制すべきものではない。
特に上気道・下気道感染症などによる痰が多く出る湿性咳嗽では、
咳を抑えてしまうと痰の排出が妨げられ、原因疾患が悪化することになるため、
理屈上は禁忌と言ってもよい。
・持続的な咳により、睡眠障害や食事摂取困難となる場合には、
リスクと天秤にかけつつ、鎮咳剤を用いることもある。
■ 風邪を引くとなぜ、熱が出るのか?
・病原体(ウイルスや細菌など)が体内に侵入、感染すると、
サイトカイン(内因性発熱物質)が放出される。
それが視床下部の体温中枢に働き、
サーモスタット(体温の設定温度)が高く設定され、体温が上昇する。
・体温を上げるためには、皮膚の血管を拡張したり、
汗腺を閉じることにより熱放散を抑え、
筋肉を震えさせることにより熱産生を促す反応を起こす。
・発熱することにより、好中球やリンパ球などの免疫細胞の活動が活発になり、
治癒能力を高めている。
・風邪などの感染症の場合には、感染が落ちつき、発熱させる必要がないと体が判断すれば、
サイトカインが減少し、視床下部の体温中枢のサーモスタットが通常に設定し直され、解熱する。
・・・ちょっと言葉は硬いですが、まあそういうことです。
そして“風邪薬”とは“症状をやわらげて治るのを待つ” 薬です。
決して“症状を止める薬”ではありません。
免疫反応として出ている症状を完全に抑えてしまうと、風邪の治癒が遅くなるからです。
さて次は、“風邪のphase”について。
一般に風邪は、
・くしゃみ鼻水ではじまり、
・痰が絡んで咳が出るようになり、
・1〜2週間で落ちつく、
・時に発熱を伴う
というイメージですね。
もう少し詳しく見ていきましょう。
■ 風邪のPhase
・風邪は、ウイルスが体に感染し、免疫応答にて排除し治癒する過程で、
闘病反応としてさまざまな症状を呈する。
・鼻炎・くしゃみ症状により、ウイルスを体外に排出する。
その鼻汁内には、免疫細胞が大量に存在している。
・多くの免疫細胞とウイルスが闘い、貪食細胞などの免疫反応の結果として、
膿性鼻汁(膿汁鼻炎)となり、 線毛細胞も活発化し、排膿活動が起こる。
・大漁の鼻汁が後鼻漏となると、嚥下しきれないものが気管内に誤嚥し、
むせるような咳込み症状を呈する。
・発熱反応は、ウイルスの活動を下げ免疫細胞を活発にする。
そして倦怠感を上げることによりヒトの活動力を低下させ、
安静にさせるように仕向ける。
・二次感染として細菌感染を起こし、体が排除できないまでに菌量が増えると、
治癒能力の限界を超えた状態となり、症状が悪化する(double sickinig)。
こうなると抗菌薬が必要になる。
■ 風邪症状で受診した患者さんに医師ができること
・風邪症状で医療機関を受診した患者さんに対する医師の一番重要な仕事は、
✓ その症状が「風邪なのか、風邪以外なのか?」
✓ 抗菌薬処方が必要な phase なのか?
を見極めることである。
・本来、風邪とは免疫反応で自然治癒するものであり、
対症療法薬や予防のための抗菌薬投与はデメリットが勝ると明らかになっている。
・患者さんに薬を処方するときは漢方薬がよい。
漢方薬は「症状を抑える」のではなく「治癒を促進する」からである。
・・・「対症療法薬はデメリットが勝る」と断言していますね。
そして「漢方薬は治癒促進をするのでメリットがある」とも。
というわけで、私は風邪症状で受診された患者さんに漢方治療を提案し、
希望者に処方してきました。
処方する側から見ると、漢方薬は「手応え」があり、
苦い薬を頑張って呑んでもらう価値があると感じています。
その結果、現在は外来患者さんの5割が漢方を希望され、
その恩恵を受けています。
■ 風邪に漢方?
・漢方薬は風邪の経過(phase)に合わせて使用することで、
生体防御能を高めて治癒を促進することができる。
・エキス剤は単剤ではしっかりとした効果が出にくいとされ、
状態に応じて足りない生薬を補う2剤(以上)の併用が必要と言われる。
・保険診療的には、1日8包内服まで問題ないことが多い。
■ 風邪の経過と適応する漢方薬
(急性期) 罹患1〜3日:桂麻剤 ・・・麻黄や桂枝を含む方剤
(亜急性期)罹患3〜5日:柴胡剤 ・・・柴胡を含む方剤
(回復期) 罹患5日〜 :参耆剤 ・・・人参や黄耆を含む方剤
“これは役に立つ”というものにめったに出会えません。
何年か前に読んだ、
「Phase で見極める!小児と成人の風邪の診かた&治しかた」
(永田理希、日本医事新報社、2021年発行)
は漢方の本ではありませんが、目からうろこがぽろぽろ落ちる内容でした。
それは、風邪の経過(phase)に伴い、
適応する漢方薬が次々変わる様を解説しているのです。
「これぞ私が知りたかったこと!」と夢中で読みました。
まず、「風邪を引くとなぜ風邪症状が出るのか?」の説明から始まります。
ひとことで言うと「体に入ってきたウイルスを排除する免疫反応」なのですが、
一つ一つ、見ていきましょう。
■ 風邪を引くとなぜ、鼻水が出るのか?
・上気道へのウイルスの付着により感染が起こり、自然免疫が反応し自己防衛を行う。
・鼻粘膜内に侵入したウイルスがmast cellに作用してヒスタミンが遊離する。
そのヒスタミンがH1受容体に結合し、鼻炎症状が惹起される。
■ 風邪を引くとなぜ、咳が出るのか?
・咳嗽は、気道内に貯留した分泌物や異物を気道害に排除するための「生体防御反応」である。
・咳反射は本来、抑制すべきものではない。
特に上気道・下気道感染症などによる痰が多く出る湿性咳嗽では、
咳を抑えてしまうと痰の排出が妨げられ、原因疾患が悪化することになるため、
理屈上は禁忌と言ってもよい。
・持続的な咳により、睡眠障害や食事摂取困難となる場合には、
リスクと天秤にかけつつ、鎮咳剤を用いることもある。
■ 風邪を引くとなぜ、熱が出るのか?
・病原体(ウイルスや細菌など)が体内に侵入、感染すると、
サイトカイン(内因性発熱物質)が放出される。
それが視床下部の体温中枢に働き、
サーモスタット(体温の設定温度)が高く設定され、体温が上昇する。
・体温を上げるためには、皮膚の血管を拡張したり、
汗腺を閉じることにより熱放散を抑え、
筋肉を震えさせることにより熱産生を促す反応を起こす。
・発熱することにより、好中球やリンパ球などの免疫細胞の活動が活発になり、
治癒能力を高めている。
・風邪などの感染症の場合には、感染が落ちつき、発熱させる必要がないと体が判断すれば、
サイトカインが減少し、視床下部の体温中枢のサーモスタットが通常に設定し直され、解熱する。
・・・ちょっと言葉は硬いですが、まあそういうことです。
そして“風邪薬”とは“症状をやわらげて治るのを待つ” 薬です。
決して“症状を止める薬”ではありません。
免疫反応として出ている症状を完全に抑えてしまうと、風邪の治癒が遅くなるからです。
さて次は、“風邪のphase”について。
一般に風邪は、
・くしゃみ鼻水ではじまり、
・痰が絡んで咳が出るようになり、
・1〜2週間で落ちつく、
・時に発熱を伴う
というイメージですね。
もう少し詳しく見ていきましょう。
■ 風邪のPhase
・風邪は、ウイルスが体に感染し、免疫応答にて排除し治癒する過程で、
闘病反応としてさまざまな症状を呈する。
・鼻炎・くしゃみ症状により、ウイルスを体外に排出する。
その鼻汁内には、免疫細胞が大量に存在している。
・多くの免疫細胞とウイルスが闘い、貪食細胞などの免疫反応の結果として、
膿性鼻汁(膿汁鼻炎)となり、 線毛細胞も活発化し、排膿活動が起こる。
・大漁の鼻汁が後鼻漏となると、嚥下しきれないものが気管内に誤嚥し、
むせるような咳込み症状を呈する。
・発熱反応は、ウイルスの活動を下げ免疫細胞を活発にする。
そして倦怠感を上げることによりヒトの活動力を低下させ、
安静にさせるように仕向ける。
・二次感染として細菌感染を起こし、体が排除できないまでに菌量が増えると、
治癒能力の限界を超えた状態となり、症状が悪化する(double sickinig)。
こうなると抗菌薬が必要になる。
■ 風邪症状で受診した患者さんに医師ができること
・風邪症状で医療機関を受診した患者さんに対する医師の一番重要な仕事は、
✓ その症状が「風邪なのか、風邪以外なのか?」
✓ 抗菌薬処方が必要な phase なのか?
を見極めることである。
・本来、風邪とは免疫反応で自然治癒するものであり、
対症療法薬や予防のための抗菌薬投与はデメリットが勝ると明らかになっている。
・患者さんに薬を処方するときは漢方薬がよい。
漢方薬は「症状を抑える」のではなく「治癒を促進する」からである。
・・・「対症療法薬はデメリットが勝る」と断言していますね。
そして「漢方薬は治癒促進をするのでメリットがある」とも。
というわけで、私は風邪症状で受診された患者さんに漢方治療を提案し、
希望者に処方してきました。
処方する側から見ると、漢方薬は「手応え」があり、
苦い薬を頑張って呑んでもらう価値があると感じています。
その結果、現在は外来患者さんの5割が漢方を希望され、
その恩恵を受けています。
■ 風邪に漢方?
・漢方薬は風邪の経過(phase)に合わせて使用することで、
生体防御能を高めて治癒を促進することができる。
・エキス剤は単剤ではしっかりとした効果が出にくいとされ、
状態に応じて足りない生薬を補う2剤(以上)の併用が必要と言われる。
・保険診療的には、1日8包内服まで問題ないことが多い。
■ 風邪の経過と適応する漢方薬
(急性期) 罹患1〜3日:桂麻剤 ・・・麻黄や桂枝を含む方剤
(亜急性期)罹患3〜5日:柴胡剤 ・・・柴胡を含む方剤
(回復期) 罹患5日〜 :参耆剤 ・・・人参や黄耆を含む方剤
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