思春期に多い起立性調節障害(以下OD、orthostatic dysregulation)は、
大人で言う起立性低血圧の思春期版です。

アメリカでは循環器疾患という位置づけですが、
日本の診断基準には「こころ」の要素も入れてしまったので、
様々な疾患のゴミ箱的な診断名になっていると批判されています。
なぜかというと、「こころ」に効く薬が用意されていないので、
臨床現場で困ってしまうのですね。

しかし心身一如(※)という漢方的捉え方からすると当たり前の病態、
つまり漢方薬の得意分野とも言えます。
※ 体と心は切り離せない、連動しているという考え方

漢方的にどんな捉え方をして、どんな風に治療を組み立てるのか、
これまでも繰り返し学習してきましたが、今一度整理してみます。

今回参考にしたのは、漢方薬局のHPで、
主に薬剤師さん&一般患者さん向けですが、
医師にとっても分かり易く、以前から参考にさせてもらっています。

■ ODという病気
・ODは起立時に立ちくらみ、めまい、動悸などの循環器症状や、
 倦怠感、頭重、腹痛などの不定愁訴が生じる疾病。
・女性に多く、5-6月と夏休み明けの9-10月に相談が増える。

■ ODの漢方的病態
・めまい、立ちくらみ → 水毒(=水滞、痰飲)
・胃腸虚弱、疲労倦怠感、根気が続かない → 気虚、血虚、気滞(=気鬱)

■ ODの漢方的病態と対応する生薬
(水毒)茯苓
(痰飲)半夏
(気虚)人参
(気滞)柴胡
(血虚)当帰、芍薬

■ ODの病期と対応する方剤
1)症状の顕著な状態→ 薬味が少なく即効性のある方剤を選択
苓桂朮甘湯半夏白朮天麻湯
2)症状が落ち着けば背景の病態を整えて寛解維持を目指す
柴胡桂枝湯(腹痛)、小建中湯(腹痛、倦怠感)、補中益気湯(だるさ)

■ ODに用いる三大漢方薬
苓桂朮甘湯 ・・・症状の顕著な時期に:めまい、立ちくらみ、動悸、頭痛
半夏白朮天麻湯・・・初期〜亜急性期に:めまい、頭痛、吐き気
補中益気湯 ・・・寛解期の体調管理に:倦怠感、だるさ、筋緊張低下

▢ 苓桂朮甘湯
・動揺性のめまい、立ちくらみ、動悸、頭痛に頻用される。
・古典には「起則頭眩」と記載。
・冷え傾向、頭痛やのぼせ、冷や汗が発作的に現れる病態に適応。
・吐き気が顕著なときは五苓散を併用。
フクロウ症候群(午前中の体調がよくない傾向のヒト)に適応。
・即効性あり、味も悪くないので小児に投与する第一選択薬。

▢ 半夏白朮天麻湯
・めまい、立ちくらみに使用される。
・胃腸虚弱、吐き気、食後の眠気、冷え症に適応。
低気圧頭痛(悪天候で頭痛が悪化する)に適応。
・甘草を含まないので苓桂朮甘湯より長期服用に適する。

■ 苓桂朮甘湯(降起利水補気)と半夏白朮天麻湯(補気化痰熄風)の比較
・共通生薬:白朮、茯苓・・・補気利水
・共通症状:めまい、立ちくらみ、頭痛、乗り物酔い
・苓桂朮甘湯のポイント:桂枝・甘草(降気・・・動悸、息切れ)
 → (発作的な)のぼせ、動悸、頭痛
 → 半夏白朮天麻湯より神経質
・半夏白朮天麻湯のポイント:六君子湯(補気化痰)の6生薬入り+天麻(熄風・・・めまい、頭痛)
 → 胃もたれ、食欲不振、低気圧頭痛
 → 苓桂朮甘湯より胃腸虚弱、冷え傾向

▢ 補中益気湯
めまいが主たる適応ではない
・OD患者の虚弱状態を改善して寛解維持目的の方剤。
・全身倦怠感、手足のだるさ、声や目に力がない、易感染性に適応。
・苓桂朮甘湯に初期から眠前1包を併用する方法もある。

■ 全身病態を調整するその他の方剤

▢ 柴胡桂枝湯(10)、小建中湯(99)
・・・OD患者の胃腸症状と倦怠感などに用いる。

▢ 六君子湯(43)
・・・胃腸虚弱者の食欲不振、食後の胃もたれを軽減する第一選択薬。
 体力維持のための食事療法を支援する方剤。
 本方は、香蘇散(抑うつ、頭重)、半夏厚朴湯(不安、抑うつ)、
四逆散(抑うつ、苛立ち、腹痛)などと併用して臨床領域を広げる工夫がされる。

▢ 当帰芍薬散(23)
・・・顔色不良、冷え傾向(血虚)と性周期と関連するめまいなどに適する。
 本方は、理気薬の四逆散(35)と組み合わせて、
 潜在的鉄欠乏に対する鉄剤と食事指導を併用して、
 女性の起床困難、手足の冷え、ODに用いられる。

▢ 連珠飲
・・・四物湯(補血活血剤)と苓桂朮甘湯の合方。
 桂皮と甘草を含むので、当帰芍薬散(23)より発作性の動悸、のぼせ、頭痛のあるときに適する。
 連珠飲を服用して熟地黄による胃もたれや食欲不振が出たときには、
 当帰芍薬散(23)へ変更するか、人参湯を併用する。

▢ 十全大補湯(48)
・・・連珠飲と補気薬の人参、黄耆を含む。連珠飲の適応病態で、胃腸虚弱や倦怠感を伴うときに適する。


<参考>
・漢方の気ぐすりき.com〜漢方を知る〜病気の悩みを漢方で〜起立性調節障害の漢方