風邪の漢方に関しては、今までも扱ってきました。
咳の漢方
風邪の引きはじめの漢方
風邪を引いて数日経過したときの漢方

今回は、
Phase で見極める!小児と成人の風邪の診かた&治しかた」 
(永田理希、日本医事新報社、2021年発行) 
という本の内容を紹介するかたちで記述します。

風邪に使う漢方薬を【カゼ漢方薬30+1】と銘打って紹介しています。
つまり、30種類以上の薬を、
その患者さんの状態により使い分けなくてはいけないのです。

患者さんの状態を「証」と呼びます。
それは、患者さんの体質、体力、病気の状態をすべて加味して総合的に判断して初めて決まるもの。
もし「漢方薬を飲んだけど効かない」と感じている方、
それはあなたの「証」にあっていない可能性が大です。
この項目では鼻症状を扱います。


■ 急性鼻副鼻腔炎

(水溶性鼻汁) → 小青竜湯(19)、麻黄が合わない人は苓甘姜味辛夏仁湯(119)

(水溶性鼻汁+悪寒+咽頭痛) → 麻黄附子細辛湯(127)

(黄白色鼻汁+鼻閉強) → 葛根湯加川芎辛夷(2)、麻黄が合わない人は辛夷清肺湯(104)

(乳児で鼻閉強) → 飲食困難なら麻黄湯(26)、睡眠困難なら越婢加朮湯(28)


・・・上記各方剤に小柴胡湯を併用するとより効果が上がり、かつ胃腸障害予防&軽減効果も期待できる。

 
<各方剤の解説>

小青竜湯《傷寒論》:
▶ 麻黄2-3.5;芍薬2-3.5;乾姜2-3.5;甘草2-3.5;桂皮2-3.5;細辛2-3.5;五味子1-3;半夏3-8
・水溶性鼻汁、くしゃみや水様性痰による咳症状に。
・膿性鼻汁には適さない。
・アレルギー性鼻炎にも効果がある。

苓甘姜味辛夏仁湯《金匱要略》:
▶ 茯苓1.6-4;甘草1.2-3;半夏2.4-5;乾姜1.2-3(生姜2でも可);杏仁2.4-4;五味子1.5-3;細辛1.2-3
・水溶性鼻汁、くしゃみ、や水様性痰による咳症状に。膿性鼻汁には適さない。
・“麻黄を含まない小青竜湯”と呼ばれ、麻黄入り方剤で動悸や不眠、胃腸症状が出て飲めない人に適応。
・アレルギー性鼻炎にも効果がある。
 
麻黄附子細辛湯《傷寒論》:
▶ 麻黄2-4;細辛2-3;加工ブシ0.3-1
・発汗の程度・有無に関係なく、水溶性鼻汁や悪寒があり、喉がチクチク痛むphaseに。
・麻黄の強い作用を、細辛と附子で抑制してくれるやさしい麻黄剤。 
・鼻汁が多く、鼻閉が強いときは桂枝湯を併用する(麻黄附子細辛湯+桂枝湯)とよい。

葛根湯加川芎辛夷
▶ 葛根4-8;麻黄3-4;大棗3-4;桂皮2-3;芍薬2-3;甘草2;生姜1-1.5;川芎2-3;辛夷2-3
・鼻閉が強く、粘性の強い黄白色鼻汁の急性鼻副鼻腔炎phaseに。
・副鼻腔排膿作用や頭痛軽減作用のある川芎と辛夷が入っているので、まさに急性鼻副鼻腔炎に適した方剤である。
・鼻汁が黄色かつ粘稠で鼻閉が強いときは桔梗石膏を併用(葛根湯加川芎辛夷+桔梗石膏)するとより効果的である。 
 
辛夷清肺湯《外科正宗》:
▶ 辛夷2-3;知母3;百合3;黄芩3;山梔子1.5-3;麦門冬5-6;石膏5-6;升麻1-1.5;枇杷葉1-3
・鼻閉が強く、粘性の強い黄白色鼻汁の急性鼻副鼻腔炎に。
・慢性や鼻茸でも使える。
・鼻副鼻腔粘液繊毛輸送運動正常化作用あり。

麻黄湯《傷寒論》:
▶ 麻黄3-5;桂皮2-4;杏仁4-5;甘草1-1.5
・鼻閉のために飲食がしにくいphase(乳児)。
・発熱の急性期で、発汗がなく、水分が取れるphase。
・麻黄湯の桂皮を石膏に変えたものが麻杏甘石湯。 

越婢加朮湯《金匱要略》:
▶ 麻黄4-6;石膏8-10;生姜1;大棗3-5;甘草1.5-2;白朮3-4(蒼朮も可)
・鼻閉のため眠りにくい乳児に適応


 ■ 慢性鼻副鼻腔炎
(慢性・単回の感染症) →  辛夷清肺湯(104)、排膿散及湯(122)
(慢性・反復性感染症) → 成人:荊芥連翹湯(50)、小児:柴胡清肝湯(80)

※ 荊芥連翹湯はアレルギー性鼻炎や好酸球性鼻副鼻腔炎にも効果が期待できる。
※ 西洋医学ではクラリスロマイシン(CAM)長期投与が頻用されるが、細菌性慢性鼻副鼻腔炎には有効であるが、好酸球性鼻副鼻腔炎には効果が期待できない。
★ 上記漢方薬に柴胡剤(小柴胡湯、柴胡桂枝湯、補中益気湯、十全大補湯など)を追加すると、抗炎症効果や体力回復効果、胃腸障害予防・軽減効果が期待できる。
 
<各方剤の解説>

排膿散及湯《金匱要略》:
▶ 桔梗3-4;甘草3;大棗3-6;芍薬3;生姜0.5-1;枳実2-3
・好酸球性ではなく、細菌性・炎症性の慢性鼻副鼻腔炎で副鼻腔内に膿が貯留しスッキリしないphaseに。
・鼻副鼻腔だけではなく、皮膚や口腔内、麦粒腫などの体表面の化膿症に効果がある。
・単独処方で効果が不十分な場合は、ヨクイニンを併用(排膿散及湯+ヨクイニン)すると効果が高まる。

荊芥連翹湯1《万病回春》:
▶ 当帰1.5;芍薬1.5;川芎1.5;地黄1.5;黄連1.5;黄芩1.5;黄柏1.5;山梔子1.5;連翹1.5;
・体表の抗炎症効果を示す荊芥と、上気道の閉鎖部位の抗炎症効果による排膿効果のある連翹。
・粘性の強い黄色鼻汁の慢性&反復性鼻副鼻腔炎phaseで効果が期待できる。
・アレルギー性鼻炎や好酸球性鼻副鼻腔炎に効果 が期待できる。
 
柴胡清肝湯《一貫堂》:
▶ 柴胡2;当帰・芍薬・川芎・地黄・連翹・桔梗・牛蒡子・栝楼根・薄荷葉・甘草各2.5;黄連・黄芩・黄柏・山梔子各1.5
・荊芥連翹湯が苦すぎて飲めない乳幼児&小児の慢性鼻副鼻腔炎に。
・小児&成人の慢性扁桃炎、繰り返す扁桃炎やPFAPA症候群(周期性発熱症候群)、慢性蕁麻疹、アトピー性皮膚炎の慢性期に。
・荊芥連翹湯の枳実が牛蒡子に置き換わり、荊芥と白芷と防風がなく、柴胡と甘草が少し増量した方剤。
・・・(牛蒡子+桔梗)去痰作用、咽頭痛軽減作用