■ 発熱症状の漢方治療のトリビア
・発汗がなく発熱している状態を葛根湯や麻黄湯を服用することでさらに発熱させて、汗をかかせることにより治癒力を高めるのが漢方治療のキモである。この際に解熱剤を安易に使用すると、狙った効果が発揮できなくなるため、昭和時代の解熱剤の慣習的処方はしてはならない。
・各方剤に小柴胡湯を併用すると、より効果も上がり、かつ胃腸障害予防&軽減効果も期待できる。
・顔面や口唇の紅潮を伴う発熱・熱感に口渇を伴う場合に白虎加人参湯(34)をさらに併用すると、脱水予防効果が期待できる。
・高齢者や過労で体力が低下している場合のカゼには、麻黄附子細辛湯(127)、桂枝湯(45)、香蘇散(70)を使用するとよい。
■ 発熱のphaseと適応する漢方
(急性期)罹患1〜3日目
かつ「麻黄〇」タイプ
→ 葛根湯(1)・・・多量の発汗がない発熱+ 寒気+軽度の悪寒+肩こり・全身の筋緊張
→ 麻黄湯(26)・・・多量の発汗がない発熱+強い悪寒+全身筋肉痛・関節痛
→ 麻杏甘石湯(55)・・・多量の発汗がなく、軽度悪寒、強い熱感と黄色痰が絡み、喘鳴を伴う湿性咳嗽
かつ 「麻黄△」タイプ
→ 麻黄附子細辛湯(127)・・・発汗の程度・有無に関係なし+水溶性鼻汁+悪寒+咽頭痛
かつ「麻黄✖️」タイプ
→ 桂枝湯(45)・・・微熱+軽度発汗+軽度悪寒
→ 香蘇散(70)・・・胃腸も精神的にも弱っているような人の風邪の引き始めや治りかけに。
(亜急性期)罹患3〜5日目以降
→ 参蘇飲(66)・・・胃腸症状があり、風邪を引いて数日経過し、香蘇散(70)を服用しても今ひとつスッキリしない場合。
→ 小柴胡湯(9)・・・舌苔が生え、口内に苦みを感じ、胃酸の逆流症状もあり、食欲が低下し、悪寒と熱感を繰り返したり、時に微熱もあるphaseに。
→ 柴胡桂枝湯(10)・・・軽度の発汗や背中のコリや頭痛、胃腸症状などがあり、小柴胡湯(9)よりもう少し炎症を抑えたいphaseに。
→ 白虎加人参湯(34)・・・発熱が続くも悪寒がなく、発汗はしている状態で口渇があるとき。
・・・上記各方剤に小柴胡湯を併用するとより効果が上がり、かつ胃腸障害予防&軽減効果も期待できる。
<各方剤の解説>
▢ 葛根湯《傷寒論》:
▶ 葛根4-8;麻黄3-4;大棗3-4;桂皮2-3;芍薬2-3;甘草2;生姜1-1.5
・服用してしっかり汗が出たら葛根湯の役目もそこで終了、中止する。
・効果を最大限に発揮させるには、初回2包内服、以降発汗するまで2〜3時間ごとに追加内服、発刊後は漢方薬を変更する。
・葛根湯により発汗するまでの1〜2日は、安易に解熱剤を使用しない。
・芍薬は麻黄+桂皮による過度の発汗をやわらげる効果がある(麻黄湯には芍薬は入っていない)。
▢ 麻黄湯《傷寒論》:
▶ 麻黄3-5;桂皮2-4;杏仁4-5;甘草1-1.5
・麻黄で体温をぐっと上げて免疫を上げてウイルスをやっつけ、その後に桂皮で発汗させて解熱させるイメージ。
・高熱のみで、強い悪寒や寒気、全身の筋肉痛や関節痛などがない場合は麻黄湯は適さない。その場合は葛根湯の方がよい。
▢ 麻黄附子細辛湯《傷寒論》:
▶ 麻黄2-4;細辛2-3;加工ブシ0.3-1
・体温を上げる力のない人に附子で体温を上げる能力をアップさせようという方剤。
▢ 桂枝湯《傷寒論》:
▶ 桂皮3-4;芍薬3-4;大棗3-4;生姜1-1.5;甘草2
・風邪の基本漢方薬。あくまで軽症の初期症状が適応で、強い症状を抑える力はない。
・麻黄もなく、桂皮のみの発汗作用に、さらにその効果をやわらげる芍薬も入っており、非常にマイルド。
▢ 香蘇散《和剤局方》:
▶ 香附子3.5-4.5;蘇葉1-3;陳皮2-3;甘草1-1.5;生姜1-2
・発熱・発汗作用のある麻黄・桂皮が入っていない、長マイルドなかぜ薬。
▢ 小柴胡湯《傷寒論》:
▶ 柴胡5-8;半夏3.5-8;生姜1-2;黄芩2.5-3;大棗2.5-3;人参2.5-3;甘草1-3
・・・(柴胡+黄岑)抗炎症・解熱効果
・・・(半夏)鎮吐効果
・・・(人参・大棗・甘草・生姜)健胃効果
・胃腸障害を軽減する効果の高い方剤。
・柴胡は亜急性期〜慢性期の状態に効果がある。
・通常の倍量を投与すると効果が上がる。
▢ 白虎加人参湯《傷寒論》:
▶ 知母5-6;石膏15-16;甘草2;粳米8-20;人参1.5-3
・高齢者の口腔乾燥症や口内不快感、乳児の突発性発疹を疑う皮疹出現前などにも使える。
・他の発熱時に使う漢方薬の処方時に、効果付与する目的で追加投与して使うとよい。
・慢性の場合にはアトピー性皮膚炎や皮膚掻痒症などにも使われる。
★ 銀翹散(市販薬)
・急性期に寒気がなく、熱感が強い場合に適応。逆に寒気が強く全身関節痛&筋肉痛がある場合は麻黄湯が適し、それより症状がマイルドの時は葛根湯が良い。
・麻黄湯+桂枝湯のような漢方(桂麻各半湯類似の方意)。
・生薬の構成的には、葛根湯+小柴胡湯加桔梗石膏、もしくは清上防風湯倍量に近似。
■ 回復期の風邪症状の漢方
→ 補中益気湯(41)・・・風邪症状の後の倦怠感が強く、回復しきれておらず、食欲もいまいちで元気も出ないとき。
→ 十全大補湯(48)・・・風邪症状の後に倦怠感があり、食欲もいまいちな上に、手足の冷え、皮膚や口腔内乾燥がある場合。
→ 人参養栄湯(108)・・・咳や痰が微妙にスッキリしないような呼吸器疾患が背景にあり、食欲・気力ともにスッキリしない場合。
<各方剤の解説>
▢ 補中益気湯《弁惑論》:
▶ 人参3-4;白朮3-4(蒼朮も可);黄耆3-4.5;当帰3;陳皮2-3;大棗1.5-3;柴胡1-2;甘草1-2;生姜0.5;升麻0.5-2
・中(体の中の消化吸収能)を補い、気を益す(元気を出す)回復剤。
・気虚を補う生薬である人参・朮・甘草・黄耆は風邪回復3剤の共通生薬であるが、補中益気湯だけに茯苓が入っていない。
▢ 十全大補湯《和剤局方》:
▶ 人参2.5-3;黄耆2.5-3;白朮3-4(蒼朮も可);茯苓3-4;当帰3-4;芍薬3;地黄3-4;川芎3;桂皮3;甘草1-2
・気血の双方を補う。
・血虚を補う生薬(地黄、当帰、川芎、芍薬)入り。
▢ 人参養栄湯《和剤局方》:
▶ 人参3;当帰4;芍薬2-4;地黄4;白朮4(蒼朮も可);茯苓4;桂皮2-2.5;黄耆1.5-2.5;陳皮(橘皮も可)2-2.5;遠志1-2;五味子1-1.5;甘草1-1.5
・人参を主薬とし、全身的にさまざまな機能低下と栄養状態を改善、つまり「養栄」する方剤。
・血虚を補う生薬(地黄、当帰、芍薬)が入っている。
・十全大補湯のほとんどが人参養栄湯に入っており、さらに遠志、五味子、陳皮の鎮咳効果のある生薬を足したもの。そのため、COPD等の慢性呼吸器疾患の患者にも効果が期待できる。
<参考>
・「Phase で見極める!小児と成人の風邪の診かた&治しかた」
(永田理希、日本医事新報社、2021年発行)
・発汗がなく発熱している状態を葛根湯や麻黄湯を服用することでさらに発熱させて、汗をかかせることにより治癒力を高めるのが漢方治療のキモである。この際に解熱剤を安易に使用すると、狙った効果が発揮できなくなるため、昭和時代の解熱剤の慣習的処方はしてはならない。
・各方剤に小柴胡湯を併用すると、より効果も上がり、かつ胃腸障害予防&軽減効果も期待できる。
・顔面や口唇の紅潮を伴う発熱・熱感に口渇を伴う場合に白虎加人参湯(34)をさらに併用すると、脱水予防効果が期待できる。
・高齢者や過労で体力が低下している場合のカゼには、麻黄附子細辛湯(127)、桂枝湯(45)、香蘇散(70)を使用するとよい。
■ 発熱のphaseと適応する漢方
(急性期)罹患1〜3日目
かつ「麻黄〇」タイプ
→ 葛根湯(1)・・・多量の発汗がない発熱+ 寒気+軽度の悪寒+肩こり・全身の筋緊張
→ 麻黄湯(26)・・・多量の発汗がない発熱+強い悪寒+全身筋肉痛・関節痛
→ 麻杏甘石湯(55)・・・多量の発汗がなく、軽度悪寒、強い熱感と黄色痰が絡み、喘鳴を伴う湿性咳嗽
かつ 「麻黄△」タイプ
→ 麻黄附子細辛湯(127)・・・発汗の程度・有無に関係なし+水溶性鼻汁+悪寒+咽頭痛
かつ「麻黄✖️」タイプ
→ 桂枝湯(45)・・・微熱+軽度発汗+軽度悪寒
→ 香蘇散(70)・・・胃腸も精神的にも弱っているような人の風邪の引き始めや治りかけに。
(亜急性期)罹患3〜5日目以降
→ 参蘇飲(66)・・・胃腸症状があり、風邪を引いて数日経過し、香蘇散(70)を服用しても今ひとつスッキリしない場合。
→ 小柴胡湯(9)・・・舌苔が生え、口内に苦みを感じ、胃酸の逆流症状もあり、食欲が低下し、悪寒と熱感を繰り返したり、時に微熱もあるphaseに。
→ 柴胡桂枝湯(10)・・・軽度の発汗や背中のコリや頭痛、胃腸症状などがあり、小柴胡湯(9)よりもう少し炎症を抑えたいphaseに。
→ 白虎加人参湯(34)・・・発熱が続くも悪寒がなく、発汗はしている状態で口渇があるとき。
・・・上記各方剤に小柴胡湯を併用するとより効果が上がり、かつ胃腸障害予防&軽減効果も期待できる。
<各方剤の解説>
▢ 葛根湯《傷寒論》:
▶ 葛根4-8;麻黄3-4;大棗3-4;桂皮2-3;芍薬2-3;甘草2;生姜1-1.5
・服用してしっかり汗が出たら葛根湯の役目もそこで終了、中止する。
・効果を最大限に発揮させるには、初回2包内服、以降発汗するまで2〜3時間ごとに追加内服、発刊後は漢方薬を変更する。
・葛根湯により発汗するまでの1〜2日は、安易に解熱剤を使用しない。
・芍薬は麻黄+桂皮による過度の発汗をやわらげる効果がある(麻黄湯には芍薬は入っていない)。
▢ 麻黄湯《傷寒論》:
▶ 麻黄3-5;桂皮2-4;杏仁4-5;甘草1-1.5
・麻黄で体温をぐっと上げて免疫を上げてウイルスをやっつけ、その後に桂皮で発汗させて解熱させるイメージ。
・高熱のみで、強い悪寒や寒気、全身の筋肉痛や関節痛などがない場合は麻黄湯は適さない。その場合は葛根湯の方がよい。
▢ 麻黄附子細辛湯《傷寒論》:
▶ 麻黄2-4;細辛2-3;加工ブシ0.3-1
・体温を上げる力のない人に附子で体温を上げる能力をアップさせようという方剤。
▢ 桂枝湯《傷寒論》:
▶ 桂皮3-4;芍薬3-4;大棗3-4;生姜1-1.5;甘草2
・風邪の基本漢方薬。あくまで軽症の初期症状が適応で、強い症状を抑える力はない。
・麻黄もなく、桂皮のみの発汗作用に、さらにその効果をやわらげる芍薬も入っており、非常にマイルド。
▢ 香蘇散《和剤局方》:
▶ 香附子3.5-4.5;蘇葉1-3;陳皮2-3;甘草1-1.5;生姜1-2
・発熱・発汗作用のある麻黄・桂皮が入っていない、長マイルドなかぜ薬。
▢ 小柴胡湯《傷寒論》:
▶ 柴胡5-8;半夏3.5-8;生姜1-2;黄芩2.5-3;大棗2.5-3;人参2.5-3;甘草1-3
・・・(柴胡+黄岑)抗炎症・解熱効果
・・・(半夏)鎮吐効果
・・・(人参・大棗・甘草・生姜)健胃効果
・胃腸障害を軽減する効果の高い方剤。
・柴胡は亜急性期〜慢性期の状態に効果がある。
・通常の倍量を投与すると効果が上がる。
▢ 白虎加人参湯《傷寒論》:
▶ 知母5-6;石膏15-16;甘草2;粳米8-20;人参1.5-3
・高齢者の口腔乾燥症や口内不快感、乳児の突発性発疹を疑う皮疹出現前などにも使える。
・他の発熱時に使う漢方薬の処方時に、効果付与する目的で追加投与して使うとよい。
・慢性の場合にはアトピー性皮膚炎や皮膚掻痒症などにも使われる。
★ 銀翹散(市販薬)
・急性期に寒気がなく、熱感が強い場合に適応。逆に寒気が強く全身関節痛&筋肉痛がある場合は麻黄湯が適し、それより症状がマイルドの時は葛根湯が良い。
・麻黄湯+桂枝湯のような漢方(桂麻各半湯類似の方意)。
・生薬の構成的には、葛根湯+小柴胡湯加桔梗石膏、もしくは清上防風湯倍量に近似。
■ 回復期の風邪症状の漢方
→ 補中益気湯(41)・・・風邪症状の後の倦怠感が強く、回復しきれておらず、食欲もいまいちで元気も出ないとき。
→ 十全大補湯(48)・・・風邪症状の後に倦怠感があり、食欲もいまいちな上に、手足の冷え、皮膚や口腔内乾燥がある場合。
→ 人参養栄湯(108)・・・咳や痰が微妙にスッキリしないような呼吸器疾患が背景にあり、食欲・気力ともにスッキリしない場合。
<各方剤の解説>
▢ 補中益気湯《弁惑論》:
▶ 人参3-4;白朮3-4(蒼朮も可);黄耆3-4.5;当帰3;陳皮2-3;大棗1.5-3;柴胡1-2;甘草1-2;生姜0.5;升麻0.5-2
・中(体の中の消化吸収能)を補い、気を益す(元気を出す)回復剤。
・気虚を補う生薬である人参・朮・甘草・黄耆は風邪回復3剤の共通生薬であるが、補中益気湯だけに茯苓が入っていない。
▢ 十全大補湯《和剤局方》:
▶ 人参2.5-3;黄耆2.5-3;白朮3-4(蒼朮も可);茯苓3-4;当帰3-4;芍薬3;地黄3-4;川芎3;桂皮3;甘草1-2
・気血の双方を補う。
・血虚を補う生薬(地黄、当帰、川芎、芍薬)入り。
▢ 人参養栄湯《和剤局方》:
▶ 人参3;当帰4;芍薬2-4;地黄4;白朮4(蒼朮も可);茯苓4;桂皮2-2.5;黄耆1.5-2.5;陳皮(橘皮も可)2-2.5;遠志1-2;五味子1-1.5;甘草1-1.5
・人参を主薬とし、全身的にさまざまな機能低下と栄養状態を改善、つまり「養栄」する方剤。
・血虚を補う生薬(地黄、当帰、芍薬)が入っている。
・十全大補湯のほとんどが人参養栄湯に入っており、さらに遠志、五味子、陳皮の鎮咳効果のある生薬を足したもの。そのため、COPD等の慢性呼吸器疾患の患者にも効果が期待できる。
<参考>
・「Phase で見極める!小児と成人の風邪の診かた&治しかた」
(永田理希、日本医事新報社、2021年発行)
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