参考にした本には、2剤併用による増強効果の例が掲載されており、
単剤で効果が今ひとつだった場合の“次の一手”として利用可能で助かります。
小児科医にとって悪心・嘔吐は患者さんから毎日のように訴えられる症状です。
主に胃腸炎(嘔吐下痢症)ですが、
中には溶連菌性咽頭炎の場合もあります。
喉に強い炎症が起きて痛くなる感染症であるものの、
なぜか気持ち悪くなりおなかが痛くなります(下痢はない)。
さらに、思春期の自律神経失調症(起立性調節障害)で悪心・嘔吐が現れることも。
このような症状に対して、西洋医学ではドンペリドン(商品名ナウゼリン®)一択です。
いわゆる“対症療法”ですね。
漢方ではどうでしょうか。
実は色々な薬を、患者さんの体質や体調により使い分けています。
私は胃腸炎(嘔吐下痢症)には、
水毒(水の体内バランスが崩れた状態)と考えて五苓散を処方、
このくすりは車酔いの吐き気の特効薬でもあります。
激しい嘔吐ではなく、気持ち悪い、食欲がない、胃がもたれる・・・
こんな時は六君子湯。
喉のつかえ感(気分的なものも含めて)には半夏厚朴湯を処方することが多いですね。
この薬の不思議なところは、
喉の炎症(いわゆる“かぜ”)による喉の違和感にも、
ストレスによる喉のつかえ感にも、
さらに高齢者のむせ込み(気道に誤嚥して咳き込む)にも効いてしまうのです。
このような薬効を持つ西洋薬はありません。
■ 2剤併用による効果増強レシピ
小半夏加茯苓湯2包+二陳湯2包/日
・・・小半夏加茯苓湯単独では効果不十分で制吐作用を増強したいときに併用
五苓散+半夏瀉心湯
五苓散+黄連解毒湯
・・・二日酔の悪心・嘔吐に有効
茯苓飲3包+補中益気湯3包/日
・・・胃切除後の悪心・嘔吐・食欲不振に有効
半夏厚朴湯+小柴胡湯 → 柴朴湯
・・・ストレスや不安が原因で起こる喉のつかえ感に柴胡剤と併用して効果増強
■ 悪心・嘔吐に対する基本漢方薬
小半夏加茯苓湯《金匱要略》:
▶ 半夏5-8;ヒネショウガ5-8(生姜を用いる場合1.5-3);茯苓3-8
(キーワード)制吐薬の基本、つわり、嘔吐の対症療法
二陳湯《和剤局方》:
▶ 半夏5-7;茯苓3.5-5;陳皮3.5-4;生姜1-1.5;甘草1-2
(キーワード)小半夏加茯苓湯より重症例に
五苓散《傷寒論》:
▶ 沢瀉4-6;猪苓3-4.5;茯苓3-4.5;蒼朮3-4.5(白朮も可);桂皮2-3
(キーワード)嘔吐、めまい、下痢、二日酔、乗り物酔い
茯苓飲《金匱要略》:
▶ 茯苓2.4-5;白朮2.4-4(蒼朮も可);人参2.4-3;生姜1-1.5;陳皮2.5-3;枳実1-2
(キーワード)突然起こる嘔吐(腹痛はない)
茯苓飲合半夏厚朴湯《本朝経験方》:
▶ 茯苓4-6;白朮3-4(蒼朮も可);人参3;生姜1-1.5;陳皮3;枳実1.5-2;半夏6-10;厚朴3;蘇葉2
(キーワード)喉のつかえ感、心窩部のつかえ感
半夏厚朴湯《金匱要略》:
▶ 半夏6-8;茯苓5;厚朴3;蘇葉2-3;生姜1-2
(キーワード)喉のつかえ、不安感、ストレス
六君子湯《医学正伝》:
▶ 人参2-4;白朮3-4(蒼朮も可);茯苓3-4;半夏3-4;陳皮2-4;大棗2;甘草1-1.5;生姜0.5-1
(キーワード)胃腸症状、胃もたれ、食欲不振、抗がん剤の副作用
呉茱萸湯《傷寒論》:
▶ 呉茱萸3-4;大棗2-4;人参2-3;生姜1-2
(キーワード)吃逆、冷たいものの摂り過ぎ、悪心・嘔吐
半夏瀉心湯《傷寒論》:
▶ 半夏4-6;黄芩2.5-3;乾姜2-3;人参2.5-3;甘草2.5-3;大棗2.5-3;黄連1
(キーワード)吃逆、食べ過ぎ、飲み過ぎ
<各方剤の解説>
▢ 小半夏加茯苓湯(21)
・悪心・嘔吐があるときは原因を問わず使用可能。
・つわりに有効。
・少量ずつ冷服するとよい。
▢ 二陳湯(81)
・小半夏加茯苓湯+陳皮、甘草
・小半夏加茯苓湯よりも症状が強いときに有効
・中医学では「痰飲を除く基本薬」
※ 痰飲・・・何らかの原因により水分の吸収・排泄が障害され、気道の粘液分泌亢進(痰)や胃液の貯留(飲)が生じたもの。
▢ 五苓散(17)
・小児の下痢・嘔吐に有効。
・小児には湯に溶いて冷ましたものを、スプーンで一口ずつ服用するとよい。
・吐き気があるときは、吐いても一口、吐いても一口と粘り強く繰り返す。一口ずつ4回、5回と飲み続けると吐き気が止まることが多い。
・乗り物酔いの予防として事前服用。
・めまい+嘔吐に有効。
▢ 茯苓飲(69)
・枳実は幽門の緊張を改善し、胃内容物の十二指腸への排出を促進する。
・GERDに伴う悪心・嘔吐に有効。PPIと併用可。
・幽門側胃切除、胃全摘術後の通過障害を緩和し、悪心・嘔吐を改善する。
・甘草を含まないため、他剤との併用が容易。
▢ 茯苓飲合半夏厚朴湯(116)
・胃のつかえと喉のつかえ(咽頭不快感)に有効。
・GERDによる咳にも有効。
・ストレスによる上腹部症状に幅広く使用可能で応用範囲が広い。
▢ 半夏厚朴湯(16)
・小半夏加茯苓湯+厚朴、蘇葉
・ストレスや不安が原因で起こる心窩部の不快感や、咽喉頭のつかえ感と不快感(咽中炙臠、梅核気)に有効。
・つわりの悪心・嘔吐にも有効。
▢ 六君子湯(43)
・四君子湯(補気薬)+半夏、陳皮
・四君子湯+二陳湯、と捉えることもできる。
・抗がん剤の副作用による悪心・嘔吐によい。
▢ 呉茱萸湯(31)
・胃の冷えを改善する(すべて温める生薬)。
・苦みが強い(えぐみ?)ので、処方時にあらかじめ「苦い薬ですよ」と十分に説明をしておくとよい。
・偏頭痛に伴う悪心・嘔吐に有効。
・かき氷やアイスクリームなど冷たいものを食べたり飲んだりした後など、胃が冷えて起きた吃逆に即効性がある。
▢ 半夏瀉心湯(14)
・黄連+黄岑で消炎作用、胃粘膜の充血びらんを改善する。
・ストレス性胃炎の悪心・嘔吐に有効。
・食べ過ぎや飲み過ぎで起きた吃逆に即効性あり。
・肝臓の量が多いので、継続使用する際は偽アルドステロン症に注意。
<参考>
・(安斎圭一著、羊土社)
単剤で効果が今ひとつだった場合の“次の一手”として利用可能で助かります。
小児科医にとって悪心・嘔吐は患者さんから毎日のように訴えられる症状です。
主に胃腸炎(嘔吐下痢症)ですが、
中には溶連菌性咽頭炎の場合もあります。
喉に強い炎症が起きて痛くなる感染症であるものの、
なぜか気持ち悪くなりおなかが痛くなります(下痢はない)。
さらに、思春期の自律神経失調症(起立性調節障害)で悪心・嘔吐が現れることも。
このような症状に対して、西洋医学ではドンペリドン(商品名ナウゼリン®)一択です。
いわゆる“対症療法”ですね。
漢方ではどうでしょうか。
実は色々な薬を、患者さんの体質や体調により使い分けています。
私は胃腸炎(嘔吐下痢症)には、
水毒(水の体内バランスが崩れた状態)と考えて五苓散を処方、
このくすりは車酔いの吐き気の特効薬でもあります。
激しい嘔吐ではなく、気持ち悪い、食欲がない、胃がもたれる・・・
こんな時は六君子湯。
喉のつかえ感(気分的なものも含めて)には半夏厚朴湯を処方することが多いですね。
この薬の不思議なところは、
喉の炎症(いわゆる“かぜ”)による喉の違和感にも、
ストレスによる喉のつかえ感にも、
さらに高齢者のむせ込み(気道に誤嚥して咳き込む)にも効いてしまうのです。
このような薬効を持つ西洋薬はありません。
■ 2剤併用による効果増強レシピ
小半夏加茯苓湯2包+二陳湯2包/日
・・・小半夏加茯苓湯単独では効果不十分で制吐作用を増強したいときに併用
五苓散+半夏瀉心湯
五苓散+黄連解毒湯
・・・二日酔の悪心・嘔吐に有効
茯苓飲3包+補中益気湯3包/日
・・・胃切除後の悪心・嘔吐・食欲不振に有効
半夏厚朴湯+小柴胡湯 → 柴朴湯
・・・ストレスや不安が原因で起こる喉のつかえ感に柴胡剤と併用して効果増強
■ 悪心・嘔吐に対する基本漢方薬
小半夏加茯苓湯《金匱要略》:
▶ 半夏5-8;ヒネショウガ5-8(生姜を用いる場合1.5-3);茯苓3-8
(キーワード)制吐薬の基本、つわり、嘔吐の対症療法
二陳湯《和剤局方》:
▶ 半夏5-7;茯苓3.5-5;陳皮3.5-4;生姜1-1.5;甘草1-2
(キーワード)小半夏加茯苓湯より重症例に
五苓散《傷寒論》:
▶ 沢瀉4-6;猪苓3-4.5;茯苓3-4.5;蒼朮3-4.5(白朮も可);桂皮2-3
(キーワード)嘔吐、めまい、下痢、二日酔、乗り物酔い
茯苓飲《金匱要略》:
▶ 茯苓2.4-5;白朮2.4-4(蒼朮も可);人参2.4-3;生姜1-1.5;陳皮2.5-3;枳実1-2
(キーワード)突然起こる嘔吐(腹痛はない)
茯苓飲合半夏厚朴湯《本朝経験方》:
▶ 茯苓4-6;白朮3-4(蒼朮も可);人参3;生姜1-1.5;陳皮3;枳実1.5-2;半夏6-10;厚朴3;蘇葉2
(キーワード)喉のつかえ感、心窩部のつかえ感
半夏厚朴湯《金匱要略》:
▶ 半夏6-8;茯苓5;厚朴3;蘇葉2-3;生姜1-2
(キーワード)喉のつかえ、不安感、ストレス
六君子湯《医学正伝》:
▶ 人参2-4;白朮3-4(蒼朮も可);茯苓3-4;半夏3-4;陳皮2-4;大棗2;甘草1-1.5;生姜0.5-1
(キーワード)胃腸症状、胃もたれ、食欲不振、抗がん剤の副作用
呉茱萸湯《傷寒論》:
▶ 呉茱萸3-4;大棗2-4;人参2-3;生姜1-2
(キーワード)吃逆、冷たいものの摂り過ぎ、悪心・嘔吐
半夏瀉心湯《傷寒論》:
▶ 半夏4-6;黄芩2.5-3;乾姜2-3;人参2.5-3;甘草2.5-3;大棗2.5-3;黄連1
(キーワード)吃逆、食べ過ぎ、飲み過ぎ
<各方剤の解説>
▢ 小半夏加茯苓湯(21)
・悪心・嘔吐があるときは原因を問わず使用可能。
・つわりに有効。
・少量ずつ冷服するとよい。
▢ 二陳湯(81)
・小半夏加茯苓湯+陳皮、甘草
・小半夏加茯苓湯よりも症状が強いときに有効
・中医学では「痰飲を除く基本薬」
※ 痰飲・・・何らかの原因により水分の吸収・排泄が障害され、気道の粘液分泌亢進(痰)や胃液の貯留(飲)が生じたもの。
▢ 五苓散(17)
・小児の下痢・嘔吐に有効。
・小児には湯に溶いて冷ましたものを、スプーンで一口ずつ服用するとよい。
・吐き気があるときは、吐いても一口、吐いても一口と粘り強く繰り返す。一口ずつ4回、5回と飲み続けると吐き気が止まることが多い。
・乗り物酔いの予防として事前服用。
・めまい+嘔吐に有効。
▢ 茯苓飲(69)
・枳実は幽門の緊張を改善し、胃内容物の十二指腸への排出を促進する。
・GERDに伴う悪心・嘔吐に有効。PPIと併用可。
・幽門側胃切除、胃全摘術後の通過障害を緩和し、悪心・嘔吐を改善する。
・甘草を含まないため、他剤との併用が容易。
▢ 茯苓飲合半夏厚朴湯(116)
・胃のつかえと喉のつかえ(咽頭不快感)に有効。
・GERDによる咳にも有効。
・ストレスによる上腹部症状に幅広く使用可能で応用範囲が広い。
▢ 半夏厚朴湯(16)
・小半夏加茯苓湯+厚朴、蘇葉
・ストレスや不安が原因で起こる心窩部の不快感や、咽喉頭のつかえ感と不快感(咽中炙臠、梅核気)に有効。
・つわりの悪心・嘔吐にも有効。
▢ 六君子湯(43)
・四君子湯(補気薬)+半夏、陳皮
・四君子湯+二陳湯、と捉えることもできる。
・抗がん剤の副作用による悪心・嘔吐によい。
▢ 呉茱萸湯(31)
・胃の冷えを改善する(すべて温める生薬)。
・苦みが強い(えぐみ?)ので、処方時にあらかじめ「苦い薬ですよ」と十分に説明をしておくとよい。
・偏頭痛に伴う悪心・嘔吐に有効。
・かき氷やアイスクリームなど冷たいものを食べたり飲んだりした後など、胃が冷えて起きた吃逆に即効性がある。
▢ 半夏瀉心湯(14)
・黄連+黄岑で消炎作用、胃粘膜の充血びらんを改善する。
・ストレス性胃炎の悪心・嘔吐に有効。
・食べ過ぎや飲み過ぎで起きた吃逆に即効性あり。
・肝臓の量が多いので、継続使用する際は偽アルドステロン症に注意。
<参考>
・(安斎圭一著、羊土社)
コメント