カラダだけではなくココロの不調も見え隠れする起立性調節障害。
西洋医学の薬だけではなかなかコントロールが難しいのが現状です。
専門医の中には循環器内科で使用する薬物を複数使い分け、さじ加減を調整してよい成績を得ているという報告もありますが、一般小児科医には敷居の高い分野です。
さて、漢方医学は“心身一如”という概念のもと、カラダの不調はこころの不調とリンクしている考えます。
起立性調節障害に見られる症状を、漢方医学はどのように捉えるのか見てみましょう。
漢方医学は人体の働き・体調不良を「気・血・水」という概念で説明します。
細かいことを言うとキリがないので究極的単純化をすると、
・“気”は元気の気
・“血”は血液
・“水”は体液
と考えてください。
あなた自身はどうでしょうか?
自分の気血水のタイプを知ることができるチェックシートがありますので、興味のある方は試してみてください。
▶ 未病チェックシート(元慶応大学教授:渡辺賢治Dr.監修)
▶ 気血水チェック(千福貞博Dr.監修)
▶ クラシエの漢方診断(クラシエ)
また、気血水の異常の概要はこちらを参照してください。
日本語には“気”の付く単語がたくさんありますね。
元気、やる気、気持ち、気分、強気、弱気、内気、・・・挙げるとキリがありません。
これはすべて漢方医学の概念である“気”が語源であり、西洋医学で検査異常がないと「気のせいでしょう」と言われてガッカリする患者さん、
実はそれは「“気”のせい=“気”の異常」なんです。つまり、漢方薬の出番です!
起立性調節障害は漢方医学的に分析するとメインは気と水の異常、長期にわたると血の異常を伴うと捉えられることが多いので、ここでは簡単に気と水について説明します。
“気”の異常は気虚・気うつ・気逆に分けられます。単純化すると、
・“気虚” → 元気がないこと
・“気うつ” → 気持ちが沈んでウツウツしていること
・“気逆” → 気持ちが逆上してイライラすること
ということになります。
漢方的診察法に「腹診」といってお腹を触る方法があるのですが、おへその周囲を触れたときに心臓の拍動が腹部大動脈を介して触れることがあり、これは“気逆”の所見とされています。
“水”の異常は水毒(あるいは水滞)と表現され、体の水分のアンバランスな分布を意味します。
前述の腹診の際、胃の辺りを軽く指で叩くとポチャポチャ音がすることがあります。
胃の中の水はけが悪い状態を反映しており、このような所見が慢性的にある人は車酔いしやすく、天気痛(低気圧が近づくと頭痛が出る)持ちの傾向があります。
これが“水毒”の所見です。
いかがでしょう。すこし漢方を身近に感じてもらえたでしょうか。
起立性調節障害の診断基準を再掲します;
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1、2、11に対して:五苓散、苓桂朮甘湯、半夏白朮天麻湯
4、5、9に対して:補中益気湯
3、9、10に対して:柴胡桂枝湯、四逆散、小建中湯
反復性腹痛(8)に対して:小建中湯、黄耆建中湯、当帰建中湯、柴胡桂枝湯、安中散
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人間の一生を五行説でみると、
出生から小児期を経て思春期までは腎の機能が旺盛な腎旺期と呼ばれ、生命力と活動力に富んでいる。
ただ、思春期は肝の機能が十分にないと精神活動が低下し、精神障害や心身症をきたしやすい。
ODは小児期・思春期心身症の一つで、この時期には珍しい虚証を表す疾患である。
・漢方臨床では“気虚”と見なされ、補気剤が用いられる。
・気虚には“脾胃虚”がベースにあるため、最適薬は補中益気湯(41)である。
・めまいや立ちくらみは“水毒”であり、苓桂朮甘湯(39)、半夏白朮天麻湯(37)、五苓散(17)が用いられる。
・虚弱なタイプには小建中湯が適している。
・精神・神経症状を有する患者には柴胡加竜骨牡蛎湯(12)あるいは桂枝加竜骨牡蛎湯(26)が用いられる。
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大澤先生は漢方専門用語を使わずに漢方を使いこなす達人です。
彼の著書に起立性調節障害の項目はありませんが、症状から拾ってみました。
・めまい・ふらつき(1、2)
→ 五苓散(17)が第一選択
回転性めまい+冷え → あり:半夏白朮天麻湯(37)、真武湯(30)
→ なし:五苓散(17)
宙に浮いたような感覚+冷え → あり:苓桂朮甘湯(39)+四物湯(71)
→ なし:苓桂朮甘湯(39)
・なんとなくだるい(5、9)
→ 補中益気湯(41)が第一選択
+貧血 → なし:六君子湯(43)
→ あり:十全大補湯(48)
・食欲がない(7)
→ 六君子湯(43)が第一選択
+お腹の調子が悪い → なし:茯苓飲(69)
→ あり:人参湯(32)、半夏瀉心湯(14)
大澤先生のフローチャートの読み方にはちょっとした秘密があり、「なし」の矢印は「あってもなくてもよい」と読みます。
すると、症状と方剤の対応を書き換えると以下のようになります;
・めまい(回転性)+ふらつき(+冷え) → 五苓散
・めまい(回転性)+ふらつき+冷え → 半夏白朮天麻湯(37)、真武湯(30)
・めまい(宙に浮いたような感覚)(+冷え) → 苓桂朮甘湯(39)
・めまい(宙に浮いたような感覚)+冷え → 苓桂朮甘湯(39)+四物湯(71)
・なんとなくだるい → 補中益気湯(41)
・なんとなくだるい(+貧血) → 六君子湯(43)
各先生の記述は微妙に異なりますが、気血水の中の“気”と“水”の異常の併存した病態と捉えているのは共通しています。
“自律神経の異常・アンバランス”と言われても、わかったような、わからないような、ですが、漢方医学はそれを抽象的な概念・理論に高めてアンバランスを評価し、それを補正する薬を開発してきた、と考えると、使わない手はないと思います。
西洋医学の薬(メトリジン®)では解決できない場合、ぜひご相談ください。
一緒に体に合う漢方薬を探しましょう。
<参考>
登場した漢方製剤の性質・特徴をまとめておきます。
全ての方剤に共通するのが“虚証”(体力が消耗した状態)です。
エネルギーの固まりというイメージの思春期なのに、消耗・憔悴しきっている中高生たちの姿が垣間見えるようです。
・補中益気湯(41):裏寒虚証:脾胃虚・気虚
・苓桂朮甘湯(39):裏寒虚証:水毒・気逆
・半夏白朮天麻湯(37):裏寒虚証:水毒・脾虚
・五苓散(17):裏熱虚証:水毒
・小建中湯(99):裏寒虚証:脾虚(+気虚・血虚)
・柴胡加竜骨牡蛎湯(12):裏熱虚証:気うつ
・桂枝加竜骨牡蛎湯(26):裏寒虚証:桂枝湯証(+気虚・血虚)
<追加ブログ>
・起立性調節障害の漢方(その2)
・
西洋医学の薬だけではなかなかコントロールが難しいのが現状です。
専門医の中には循環器内科で使用する薬物を複数使い分け、さじ加減を調整してよい成績を得ているという報告もありますが、一般小児科医には敷居の高い分野です。
さて、漢方医学は“心身一如”という概念のもと、カラダの不調はこころの不調とリンクしている考えます。
起立性調節障害に見られる症状を、漢方医学はどのように捉えるのか見てみましょう。
漢方医学は人体の働き・体調不良を「気・血・水」という概念で説明します。
細かいことを言うとキリがないので究極的単純化をすると、
・“気”は元気の気
・“血”は血液
・“水”は体液
と考えてください。
あなた自身はどうでしょうか?
自分の気血水のタイプを知ることができるチェックシートがありますので、興味のある方は試してみてください。
▶ 未病チェックシート(元慶応大学教授:渡辺賢治Dr.監修)
▶ 気血水チェック(千福貞博Dr.監修)
▶ クラシエの漢方診断(クラシエ)
また、気血水の異常の概要はこちらを参照してください。
日本語には“気”の付く単語がたくさんありますね。
元気、やる気、気持ち、気分、強気、弱気、内気、・・・挙げるとキリがありません。
これはすべて漢方医学の概念である“気”が語源であり、西洋医学で検査異常がないと「気のせいでしょう」と言われてガッカリする患者さん、
実はそれは「“気”のせい=“気”の異常」なんです。つまり、漢方薬の出番です!
起立性調節障害は漢方医学的に分析するとメインは気と水の異常、長期にわたると血の異常を伴うと捉えられることが多いので、ここでは簡単に気と水について説明します。
“気”の異常は気虚・気うつ・気逆に分けられます。単純化すると、
・“気虚” → 元気がないこと
・“気うつ” → 気持ちが沈んでウツウツしていること
・“気逆” → 気持ちが逆上してイライラすること
ということになります。
漢方的診察法に「腹診」といってお腹を触る方法があるのですが、おへその周囲を触れたときに心臓の拍動が腹部大動脈を介して触れることがあり、これは“気逆”の所見とされています。
“水”の異常は水毒(あるいは水滞)と表現され、体の水分のアンバランスな分布を意味します。
前述の腹診の際、胃の辺りを軽く指で叩くとポチャポチャ音がすることがあります。
胃の中の水はけが悪い状態を反映しており、このような所見が慢性的にある人は車酔いしやすく、天気痛(低気圧が近づくと頭痛が出る)持ちの傾向があります。
これが“水毒”の所見です。
いかがでしょう。すこし漢方を身近に感じてもらえたでしょうか。
起立性調節障害の診断基準を再掲します;
| 1. | 立ちくらみ、あるいはめまいを起こしやすい |
| 2. | 立っていると気分が悪くなる。ひどくなると倒れる |
| 3. | 入浴時あるいは嫌なことを見聞きすると気持ちが悪くなる |
| 4. | 少し動くと動機あるいは息切れがする |
| 5. | 朝なかなか起きられず午前中調子が悪い |
| 6. | 顔色が青白い |
| 7. | 食欲不振 |
| 8. | 臍疝痛をときどき訴える |
| 9. | 倦怠あるいは疲れやすい |
| 10. | 頭痛 |
| 11. | 乗り物に酔いやすい |
これらの症状を漢方的にとらえた専門家による記述をいくつか紹介します。
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気虚と捉えられるもの:5、6、7、8、9
気逆と捉えられるもの:1、2
水毒と捉えられるもの:10
気逆と捉えられるもの:1、2
水毒と捉えられるもの:10
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ODは全体的に気虚の傾向があり、気逆・気うつを伴っている。
・腹部症状が強いときは、痛みを目標とするような方剤である安中散(5)や柴胡桂枝湯(10)が第一選択になる。
・めまいや立ちくらみが強い場合は気逆を治す苓桂朮甘湯(39)が第一選択になるが、胃腸症状(脾虚)を伴う場合は半夏白朮天麻湯(37)を考慮する。
・腹部症状が強いときは、痛みを目標とするような方剤である安中散(5)や柴胡桂枝湯(10)が第一選択になる。
・めまいや立ちくらみが強い場合は気逆を治す苓桂朮甘湯(39)が第一選択になるが、胃腸症状(脾虚)を伴う場合は半夏白朮天麻湯(37)を考慮する。
1、2、11に対して:五苓散、苓桂朮甘湯、半夏白朮天麻湯
4、5、9に対して:補中益気湯
3、9、10に対して:柴胡桂枝湯、四逆散、小建中湯
反復性腹痛(8)に対して:小建中湯、黄耆建中湯、当帰建中湯、柴胡桂枝湯、安中散
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人間の一生を五行説でみると、
出生から小児期を経て思春期までは腎の機能が旺盛な腎旺期と呼ばれ、生命力と活動力に富んでいる。
ただ、思春期は肝の機能が十分にないと精神活動が低下し、精神障害や心身症をきたしやすい。
ODは小児期・思春期心身症の一つで、この時期には珍しい虚証を表す疾患である。
・漢方臨床では“気虚”と見なされ、補気剤が用いられる。
・気虚には“脾胃虚”がベースにあるため、最適薬は補中益気湯(41)である。
・めまいや立ちくらみは“水毒”であり、苓桂朮甘湯(39)、半夏白朮天麻湯(37)、五苓散(17)が用いられる。
・虚弱なタイプには小建中湯が適している。
・精神・神経症状を有する患者には柴胡加竜骨牡蛎湯(12)あるいは桂枝加竜骨牡蛎湯(26)が用いられる。
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大澤先生は漢方専門用語を使わずに漢方を使いこなす達人です。
彼の著書に起立性調節障害の項目はありませんが、症状から拾ってみました。
・めまい・ふらつき(1、2)
→ 五苓散(17)が第一選択
回転性めまい+冷え → あり:半夏白朮天麻湯(37)、真武湯(30)
→ なし:五苓散(17)
宙に浮いたような感覚+冷え → あり:苓桂朮甘湯(39)+四物湯(71)
→ なし:苓桂朮甘湯(39)
・なんとなくだるい(5、9)
→ 補中益気湯(41)が第一選択
+貧血 → なし:六君子湯(43)
→ あり:十全大補湯(48)
・食欲がない(7)
→ 六君子湯(43)が第一選択
+お腹の調子が悪い → なし:茯苓飲(69)
→ あり:人参湯(32)、半夏瀉心湯(14)
大澤先生のフローチャートの読み方にはちょっとした秘密があり、「なし」の矢印は「あってもなくてもよい」と読みます。
すると、症状と方剤の対応を書き換えると以下のようになります;
・めまい(回転性)+ふらつき(+冷え) → 五苓散
・めまい(回転性)+ふらつき+冷え → 半夏白朮天麻湯(37)、真武湯(30)
・めまい(宙に浮いたような感覚)(+冷え) → 苓桂朮甘湯(39)
・めまい(宙に浮いたような感覚)+冷え → 苓桂朮甘湯(39)+四物湯(71)
・なんとなくだるい → 補中益気湯(41)
・なんとなくだるい(+貧血) → 六君子湯(43)
・なんとなくだるい+貧血 → 十全大補湯(48)
・食欲がない → 六君子湯(43)
・食欲がない(+お腹の調子が悪い) → 茯苓飲(69)
・食欲がない+お腹の調子が悪い → 人参湯(32)、半夏瀉心湯(14)
・食欲がない → 六君子湯(43)
・食欲がない(+お腹の調子が悪い) → 茯苓飲(69)
・食欲がない+お腹の調子が悪い → 人参湯(32)、半夏瀉心湯(14)
各先生の記述は微妙に異なりますが、気血水の中の“気”と“水”の異常の併存した病態と捉えているのは共通しています。
“自律神経の異常・アンバランス”と言われても、わかったような、わからないような、ですが、漢方医学はそれを抽象的な概念・理論に高めてアンバランスを評価し、それを補正する薬を開発してきた、と考えると、使わない手はないと思います。
西洋医学の薬(メトリジン®)では解決できない場合、ぜひご相談ください。
一緒に体に合う漢方薬を探しましょう。
<参考>
登場した漢方製剤の性質・特徴をまとめておきます。
全ての方剤に共通するのが“虚証”(体力が消耗した状態)です。
エネルギーの固まりというイメージの思春期なのに、消耗・憔悴しきっている中高生たちの姿が垣間見えるようです。
・補中益気湯(41):裏寒虚証:脾胃虚・気虚
・苓桂朮甘湯(39):裏寒虚証:水毒・気逆
・半夏白朮天麻湯(37):裏寒虚証:水毒・脾虚
・五苓散(17):裏熱虚証:水毒
・小建中湯(99):裏寒虚証:脾虚(+気虚・血虚)
・柴胡加竜骨牡蛎湯(12):裏熱虚証:気うつ
・桂枝加竜骨牡蛎湯(26):裏寒虚証:桂枝湯証(+気虚・血虚)
<追加ブログ>
・起立性調節障害の漢方(その2)
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