生理痛がつらくても市販の鎮痛剤で様子を見ている方が多いと思います。
よほどつらければ婦人科を受診、
すると“低用量ピル”を勧められ躊躇・・・
というパターンもよく耳にします。

鎮痛剤が手放せない、
日常生活に支障が出る、
婦人科のホルモン剤は不安・・・

そんな方には漢方薬をオススメします。
体に合う漢方薬が見つかると、
生理痛だけではなく、他の症状(※)の改善も期待できます。
※ 冷えや頭痛、イライラなど

当院は小児科ですが、
院長は「性教育認定講師」(日本思春期学会公認)の資格もあります。

以下に女性の月経関連症状に使用される漢方薬をまとめました。

★ 重症例、あるいは漢方治療に手応えがない場合は、
 婦人科受診をお勧めします。

 

▶ 月経トラブルに継続内服する漢方薬

↓ 当帰芍薬散(23):月経トラブル + めまい、貧血
↓ 加味逍遥散(24):月経トラブル + 不定愁訴、神経質
↓ 桂枝茯苓丸(25):月経トラブル + 冷えのぼせ
↓ 桃核承気湯(61):月経トラブル + 便秘

その他の候補:

女神散(67)
 加味逍遥散(24)の裏処方
 同じ症状・不調を繰り返し訴える
 のぼせとめまいが口訣

温経湯(106)
 当帰芍薬散(23)一部類似
  → +腹部を温め、乾燥も治す
 当帰四逆加呉茱萸生姜湯(38)と類似
  → しもやけや手荒れを改善

▶ 月経痛・生理痛に対する頓服用漢方薬

芍薬甘草湯(68)
・筋肉の痛み全般に有効
安中散(5)
・胃痛に有効だが、生理痛にも有効
・腹痛一般に有効なことがある。
・カプセルあり
芍薬甘草湯(68)+安中散(5)
・両方を併用するとより効果的
・大正漢方胃腸薬と同じ成分構成になる
 

<参考>

▶ 女性の「冷え」について


★ 現代人の生活には冷えの原因が多く存在する
・冷房
・ダイエット(皮下脂肪不足)
・ファッション(薄着)
・運動不足・筋肉不足
・陰性食品の摂取
・ストレス(→ 交感神経緊張)
→ しかし西洋医学では対応していない。

★ 女性の冷えに対する漢方薬
・四肢末端の冷え・しもやけ → 当帰四逆加呉茱萸生姜湯(38)
・腹部の冷え + 胃もたれ       → 六君子湯(43)
       + 腹痛・おなかゴロゴロ → 大建中湯(100)
       + めまい・倦怠感・下痢 → 真武湯(30)
・月経関連トラブル
       + 浮腫・貧血     → 当帰芍薬散(23)
       + 冷えのぼせ     → 桂枝茯苓丸(25)
       + 冷えのぼせ・神経質 → 加味逍遥散(24)
上記でも改善が悪い場合の最終手段は、
茯苓しぎゃく湯(人参湯+真武湯)
 ✓居ても立っても居られないつらさ(煩躁)
 ✓手足が冷たい、脈が細くて弱い(伸びたそうめん)
 ✓座りたい、横になりたい倦怠感

★ 冷えを改善する生薬
● 附子
・新陳代謝低下による冷え
・ガスバーナーで温める感じ
・冷えを改善して疼痛を緩和する作用
● 乾姜
・電球で温める感じ
・元気をつけながら温める
● その他の冷えを改善する生薬
・桂皮、当帰、人参、細辛、呉茱萸、生姜


<方剤解説>

23【当帰芍薬散】〜やや陰虚証
● 構成生薬:
 当帰・芍薬・川芎(血を補う)→(四物湯ー地黄)
 蒼朮・茯苓・沢瀉(水をめぐらせる)→(五苓散ー桂皮・猪苓)
● こんな症状・所見に:
・華奢な色白タイプ
・めまい・むくみ
・冷え症
・貧血

24【加味逍遥散】〜やや陽虚証
● 構成生薬:逍遥散+山梔子・牡丹皮
 柴胡・山梔子・薄荷(清熱・精神安定)(理気・降気)
 当帰・芍薬(血を補う)
 牡丹皮(血をめぐらせる)
 茯苓・蒼朮(水をめぐらせる)
 生姜・甘草(胃腸機能改善)
● こんな症状・所見に:
・更年期障害
・不定愁訴が多い(受診のたびに相談事が異なる、愁訴が移ろいやすい)
・冷えのぼせ
・便秘や肩こりにも有効
※ 気血水の異常をバランスよく治す
※ 肌荒れがあれば四物湯を加える
● 効能効果:
体質虚弱な婦人で、肩が凝り、疲れやすく、精神不安などの精神症状、
ときに便秘傾向のある次の諸症:
冷え症、虚弱体質、月経不順、更年期障害、血の道症

※ 山梔子(5000g以上)になると腸間膜静脈硬化症のリスクあり、
代わりとなる方剤候補:
 女神散(67)
 当帰芍薬散(23)+柴胡桂枝乾姜湯(11)

25【桂枝茯苓丸】〜やや陽実証
● 構成生薬:
 桂皮(気をめぐらせる)
 茯苓(精神安定、利水)
  桂皮+茯苓 → のぼせとめまいに対応
 桃仁・牡丹皮(血をめぐらせる)
  桃仁+牡丹皮 → 瘀血による腹痛に対応
 芍薬(止痛・鎮痙)
● こんな症状・所見に:
・体力あり
・月経関連トラブル
・冷えのぼせ・赤ら顔のことが多い。
・打撲による腫脹や痔にも有効。
● 効能効果:
体力がしっかりしていて赤ら顔が多く、下腹部に抵抗のあるものの次の諸症:
・月経不順
・月経困難
・更年期障害
・冷え症
・腹膜炎
・打撲症
・痔疾患
・睾丸炎

38【当帰四逆加呉茱萸生姜湯
● 構成生薬:桂枝湯+当帰・呉茱萸・細辛・木通
 当帰・芍薬(血をめぐらせる)
 桂皮・芍薬・大棗・甘草・生姜(=桂枝湯)
 桂皮・大棗・甘草・生姜(気をめぐらせ温める)
 呉茱萸・細辛(温める、止痛)
 木通(利水)
● こんな症状・所見に:
・手足の冷え
・しもやけ
・寒冷により増悪する痛み(頭痛・腰痛・下肢痛、等)

61【桃核承気湯】〜陽実証
● 構成生薬:
 桃仁・大黄(血をめぐらせる)
 大黄・芒硝(瀉下)=承気湯(気分を安定させる、余った気を承る)
 桂皮(気をめぐらせる、降気)
 甘草(緩和)
  桂皮+甘草 → ヒステリーに対応(例:苓桂朮甘湯(39))
● こんな症状・所見に:
・体力がある
・月経関連トラブル(月経時狂状)
・女性の頑固な便秘
・イライラ(精神症状)
※ 桂枝茯苓丸タイプ+便秘、のイメージ
● 効能効果:
比較的体力があり、のぼせて便秘しがちなものの次の諸症:
・月経不順
・月経困難症
・月経時や産後の精神不安
・腰痛
・便秘
・高血圧の随伴症状(頭痛、めまい、肩こり)

67【女神散】〜やや陽虚証
● 構成生薬:
 当帰・川芎(補血)
 蒼朮(利水)
 桂枝・黄連・黄岑(降気)
 香附子・丁子・木香・檳榔子(理気)
 人参・甘草(補気)
● こんな症状・所見に:
・加味逍遥散(24)の裏処方
・同じ症状・不調を繰り返し訴える
・のぼせとめまいが口訣

106【温経湯】〜陰虚証
● 生薬構成:
 当帰・芍薬・川芎(補血)
 桂枝(冷えのぼせ)
 呉茱萸(胃腸を温めて痛みや嘔気を治す)
 牡丹皮(血を巡らせる)
 半夏(湿を除いて嘔気を止める)
 麦門冬・阿膠(滋潤)
 生姜・甘草(胃薬)
● 特徴:
・当帰芍薬散(23)と一部似ているが、腹部も温め、乾燥も治す
・当帰四逆加呉茱萸生姜湯(38)と類似
  → しもやけや手荒れを改善
● こんな症状・所見に:陰虚証
・冷えのぼせ、手掌のほてり、口唇乾燥が目標
 ・・・ハンドクリーム・リップクリーム愛用者
・冷えによる下腹部痛
・無排卵症に効果が期待できるとの報告あり

127【麻黄附子細辛湯
● 生薬構成:
 麻黄
 附子(強力に温める)
 細辛
● こんな症状・所見に:
・悪寒が強い
・沈脈
・寒さで悪化する関節痛
・喉チク風邪