西洋医学では、過緊張=交感神経緊張状態、ですね。
現代社会は交感神経緊張を強いられ続ける環境なので、それを解除するのが下手な人は病気になりがちです。
不安障害、パニック障害、不眠・・・。

さて、過緊張を中医学で捉えるとどうなるか・・・幸井俊高先生の解説を読んだところ、たくさんの証があり収拾が付かなくなりました。
ただし「不安」と同じように「肝」と「心」のアンバランスの範囲ということは分かりました。
そして、緊張症状をコントロールしたいときは西洋医学、緊張体質をコントロールしたいときは漢方医学が適していると指摘は、的を得ていると思います。

大まかなイメージとして緊張要因(交感神経系)とリラックス要因(副交感神経系)の相対関係で考える、以下の「ポイント」の記述が役に立ちました。

肝鬱気滞や心火:緊張要因が強くなっている状態に近いと思われる。強いストレスや大きな環境変化でみられる緊張
肝血虚や心血虚:リラックス要因が弱くなっている(抑制過程が低下している)ために緊張要因が相対的に亢進している状態と思われる。ちょっとした小さなことに対してもすぐに緊張してしまう、常に緊張感に脅かされているタイプ

これは、前項目の「不安」を考えた際の、外的要因(ストレス・刺激)と内的要因(消耗・体力低下)とオーバーラップしてきますね。
また、この項目では証とそれに対応する処方例(方剤名)が記述されていました。不安と絡めて理解したいと思います。


▶ 過緊張の症状

・のぼせ、不安感、いらいら、顔や手や脇の下に汗をかく、手が震える、寝つきが悪い、眠りが浅い、いやな夢をよくみる、胸苦しい、動悸、肩こり、頭痛、喉のつかえ感、冷え、口の中がねばねばする、など。

・自分は緊張しやすい、という思い込みがあるために、緊張する場面が近づくと思うだけで、動悸などの症状が現れる場合もある。

・心身をリラックスさせたい夜間や休息時にまで昼間や仕事中の緊張を引きずり込んでしまい、じゅうぶんな深い睡眠や休息がとれない場合も少なくない。

就寝中に過度の緊張が続くと、ちょっとした物音で目が覚める、朝起きたときから肩や身体全体がこっている、などの症状が生じる。毎朝目覚まし時計が鳴る前に目が覚めてしまう、という人もいる。

・過緊張が高じた結果として、自律神経失調症高血圧症不安神経症不眠症うつ病、パニック障害、総合失調症、胃・十二指腸潰瘍、動脈硬化、不整脈、甲状腺腫更年期障害慢性頭痛(緊張型頭痛)などの病気になる場合もある。

▶ 原因

・過緊張のおもな原因は、自律神経系のバランスが崩れて、交感神経が優位な状態が必要以上に長く続くことにある。交感神経は、活動や攻撃に向かう状態で機能が亢進し、心身が活動や攻撃に適した状態に調整されます。

・自律神経系のバランスが崩れてしまうと、活動や攻撃をする必要がないときでも交感神経が優位となり、過緊張状態になる。心や体は休みたがっているのに、興奮・緊張状態が続き、さまざまな不調が生じてしまう。

▶ 西洋医学治療

緊張や不安、不眠、発汗、動悸などの症状を薬でコントロールしたい場合は西洋医学緊張しやすい体質(緊張体質)を根本的に改善して症状の緩和を目指したい場合は漢方が適している。
・西洋医学では、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などの抗うつ薬や、抗不安薬、β遮断薬などを用い、症状を抑えてコントロールする。

▶ 漢方治療

・漢方では、過緊張は五臓の「」の機能不調が大きく影響していると考え、その肝の機能を漢方薬で調整することにより「緊張体質」を改善していきます。

・肝は身体の諸機能を調節し、情緒を安定させる臓腑で、自律神経や情緒の安定と深い関係がある。また筋肉や関節の運動を調整する役割なども担っている。この肝の機能が失調したり、過敏になったり、弱ったりすると、心身の調節がスムーズに働かなくなり、情緒が不安定になり、過度の緊張状態となります。

・もうひとつ、人間の意識や思惟など、高次の精神活動をつかさどる五臓の「」の機能が乱れて過緊張が生じる場合もある。この場合は心に働きかける漢方薬を用い、「緊張しにくい体質」に近づけていく。


▶ 体質別の漢方治療方針


*** 肝の不調による5つの過緊張タイプ ***

(1)「肝鬱気滞」証
肝の気(肝気)の流れが悪くなっている状態。刺激に対する反応が敏感になり、緊張が高まる。
→ 肝気の鬱結を和らげて、ストレス抵抗性を高める漢方薬を。

(2)「肝火」証
肝気の流れが鬱滞して熱を帯びた状態。強いストレスや激しい感情の起伏などが背景にある。過緊張に加え、いらいら、怒りっぽい、ヒステリー、不眠、顔面紅潮などがみられる。
→ 肝気の流れをよくして肝火を鎮める漢方薬を。

(3)「肝血虚」証
肝に必要な血液や栄養(肝血)が不足している体質。循環血液量の不足や栄養障害により、自律神経系が失調し、特に強い刺激がなくても緊張しやすくなっている。
→ 肝血を補う漢方薬を。

(4)「肝陽上亢」証
(3)の肝血虚がひどくなって肝のバランスが崩れ、熱が上昇した状態。頭痛、のぼせ、怒りっぽい、など熱証が現れる。
→ 肝陽を鎮める漢方薬を。

(5)「肝陽化風」証
(4)の肝陽上亢が進んで筋をつかさどる機能に影響した状態。震え、引きつり、めまい、ふらつきなどの症状があらわれる。
→ 肝陽を落ち着かせて内風を和らげる漢方薬を。

*** 心の不調による4つの過緊張タイプ ***

(6)「心火」証
精神をつかさどる心が過度の刺激を受けて亢進し、熱を帯びた状態。じっとしていられず、焦りを感じ、不安で落ち着きかない。悶々として目がさえて眠れない。
→ 心火を冷ます漢方薬を。

(7)「心腎不交」証
心火と同時に五臓の腎の陰液が消耗している証。生活の不摂生や過労、緊張する場面の継続などで、この証になる。(6)の心火の症状に加え、ほてりなどが強くなります。
→ 腎陰を潤しつつ心火を冷ます漢方薬を。

(8)「心血虚」証
心の機能を養う心血が不足している体質。過度の心労や、思い悩み過ぎ、過労が続くことにより心に負担がかかり、心血が消耗して精神が不安定になる。どきどきしやすく、驚きやすい。
→ 心血を潤す漢方薬を。

(9)「心陰虚」証
心の陰液が不足している体質で、心がじゅうぶん潤わされず、過度の緊張が生じていえる。些細なことでも緊張する。
→ 心の陰液を補う漢方薬を。


*** ポイント ***

・交感神経などの緊張要因と、副交感神経などのリラックス要因とのバランスで考えると、肝鬱気滞や心火などの証は、緊張要因が強くなっている状態に近いと思われる。強いストレスや大きな環境変化でみられる緊張
・逆に、肝血虚や心血虚などの証は、リラックス要因が弱くなっている(抑制過程が低下している)ために緊張要因が相対的に亢進している状態と思われる。ちょっとした小さなことに対してもすぐに緊張してしまう、常に緊張感に脅かされているタイプ

ほかにも過緊張にみられる証はたくさんある。証が違えば薬も変わる。

よく使われる漢方薬

肝鬱気滞:四逆散、加味逍遙散、大柴胡湯、半夏厚朴湯、柴胡桂枝湯、柴胡桂枝乾姜湯など

肝火:竜胆瀉肝湯、柴胡加竜骨牡蛎湯など

肝血虚:四物湯、補肝湯など

肝陽上亢:六味地黄丸、杞菊地黄丸など

肝陽化風:釣藤散、抑肝散など

心火:黄連解毒湯、三黄瀉心湯、清心蓮子飲など

心腎不交:知柏地黄丸、黄連阿膠湯など

心血虚:帰脾湯、甘麦大棗湯、酸棗仁湯、人参養栄湯、四君子湯、桂枝加竜骨牡蛎湯など

心陰虚:炙甘草湯、天王補心丹など



<参考>

過緊張(幸福薬局)