子どものココロのトラブルにどう漢方を適用するか・・・今まで試行錯誤してきました。最近、中高生の起立性調節障害患者さんと話をしていると、気分の浮き沈みとか、気分の不調を訴える人が多いことに気づきました。
そして、気分による漢方薬の使い分けを提唱している大澤稔先生(東北大学産婦人科)のセミナーを思い出しました。講義メモから、役立ちそうなポイントを拾ってみました。

▶ 日常的な「よくある気分の不調」
・ドキドキ:不安症、人前で緊張
・イライラ:苛立ち、落ち着きがない
・ウツウツ:抑うつ、元気がない

▶ 精神的不安定の分類

1.西洋医学の分類
非定型:不安症 → パニック症、予期不安
統合失調症:気分症 → うつ病、双極症

2.東洋医学の分類
急なドキドキがベースにあり、その先にウツウツ・ドキドキが存在する
急なドキドキ+ウツウツ
急なドキドキ+イライラ

▶ 精神的動揺のイメージ
(興奮)
 ↑ 病的興奮状態(イライラ)
   → 向精神薬(メジャートランキライザー)がよく効く
 ↑ 軽い興奮状態(イライラ反応)
   → 向精神薬は効きすぎて副作用の方が目立つ
(正常域)不安発作(急なドキドキ)
 ↓ 軽いうつ状態(抑うつ反応)
   → 抗うつ薬は効きすぎて副作用の方が目立つ
 ↓ 病的うつ状態(ウツウツ)
   → 抗うつ薬がよく効く
(うつ)

▶ 急にドキドキする方(不安症・神経症)への漢方
・すでに安定剤を飲んでいる方へ投与可能
・ひきつけを起こしそうなくらいつらい
・第一選択薬は甘麦大棗湯(72)・・・こみ上げてくる焦燥感(ドキドキ)を抑えてくれる

※ 追加症状には追加処方を;

桂枝加竜骨牡蛎湯(26)
・抑うつ傾向(神経衰弱)あり
・精神的に落ちている

苓桂朮甘湯(39)
・ふらつき(めまい)、立ちくらみ(起立性調節障害)
・自律神経調節障害
・不安で生じる自律神経の変動(ふらつき)を鎮めてくれる
・単独でも不安(ノイローゼ)軽減効果あり

▶ 不安発作のひどい方(不安症・神経症)への漢方
・パニック症・過呼吸などのエピソードのある方へ
 → 甘麦大棗湯苓桂朮甘湯(苓桂甘棗湯の方意)

▶ イライラ(いら立ち)している方への処方
・話の端々に気の高ぶりを感じる、いら立ち、不眠、物音に敏感な人には冷え・のぼせの有無を確認

Q. 冷え・のぼせがありますか?
 No → 動悸が強いですか? 感覚過敏(音・ニオイ・光)がありますか?
 Yes → 柴胡加竜骨牡蛎湯(12)
 No  → 愁訴が多い → 加味逍遥散(24)
    愁訴が多くない → 抑肝散(54)、抑肝散加陳皮半夏(83)
 Yes → 頭汗多く神経過敏柴胡加竜骨牡蛎湯(12)
   → 強いのぼせ・便秘・月経困難 → 桃核承気湯(61)
   → 軽いのぼせ・便秘・月経困難 → 加味逍遥散(24)

※ 柴胡加竜骨牡蛎湯は不眠にも有効
※ 抑肝散加陳皮半夏は「抑圧された怒り」に効く・・・何か我慢をしていることが多く、原因のよく分からない特定の身体症状が出ることがある(心身症・神経症)。

以上を別の視点からまとめると、

イライラ+動悸(+感覚過敏) → 柴胡加竜骨牡蛎湯(12)
イライラ+多愁訴 → 加味逍遥散(24)
イライラ+少愁訴 → 抑肝散(54)、抑肝散加陳皮半夏(83)
イライラ+頭汗多い(+神経過敏) → 柴胡加竜骨牡蛎湯(12)
イライラ+強い(のぼせ・便秘・月経困難) → 桃核承気湯(61)
イライラ+弱い(のぼせ・便秘・月経困難) → 加味逍遥散(24)

▶ ウツウツ(抑うつ)患者さんへの処方
・ウツウツ(神経衰弱)していて、外来に入ってくるときから元気がない。
 → 桂枝加竜骨牡蛎湯(26)
・さらに気分がふさいでのどが苦しい(息がしづらい)。
 → 半夏厚朴湯(16)を併用 

▶ 竜骨牡蛎を含む薬について
・・・ココロの病気は大きく「イライラ」と「ウツウツ」で鑑別可能

柴胡加竜骨牡蛎湯(12)
・キーワードは「イライラ
・神経性心悸亢進、ヒステリーに対応・ココロの高ぶりを抑える
・甘草を含まない

桂枝加竜骨牡蛎湯(26)
・キーワードは「ウツウツ
・性的神経衰弱、陰萎、遺精
・甘草を含む


<参考>
・Rp.+(レシピプラス)2026年冬号 Vol.25 No.1「使える漢方薬ABC