以前書いた記事では、月経関連症状に使用する漢方薬を、虚実と随伴症状から選択する内容でした。
もう少し掘り下げて、気血水理論で使い分けるセミナーを視聴したので、備忘録としてポイントを書き残しておきます。
患者さんにとっては症状で選ぶ方がわかりやすいのですが、医師側から見ると理論から根拠を持って選択できた方が使い分けしやすい傾向がありますね。
気(生体エネルギー)を体内にまんべんなく行き渡らせる(血・水)状態を健康と捉え、各要素が不足したり、滞ったり、逆流したりすると病気が発生するというイメージです。
そして漢方薬はその偏り・歪みを補正する薬です。だから、その人の本来の健康な状態に戻す薬であり、それ以上のことはできません。過剰な期待は無意味です。


▶ 月経関連処方の気血水(まとめ)
当帰芍薬散(23) → 瘀血・血虚・水滞
加味逍遥散(24) → 瘀血・  ・  ・気鬱・気逆
桂枝茯苓丸(25) → 瘀血・  ・  ・  ・気逆


▶ 気血水とは
【気】
・目に見えない生命エネルギー
・生体における精神活動を含めた機能活動を統一的に制御する要素
【血】
・気の働きを担って生体を循行する赤色の液体
【水】
・気の働きを担って生体を滋潤し、栄養する無色の液体

▶ 気血水の病態
気 → 気虚・気滞・気逆
血 → 血虚・瘀血
水 → 水毒

▶ 瘀血と駆瘀血剤
・血の流れが滞っている状態
・瘀血スコア:瘀血スコア5点以上の項目をセレクト、21点以上で瘀血
(症状)
 ✓ 月経障害(10)
 ✓ 皮下溢血(10)
 ✓ 眼瞼部の色素沈着(10)
 ✓ 舌の暗赤紫化(10)
  ✓ 皮膚の甲錯(5)
  ✓ 歯肉の暗赤化(5)
  ✓ 細絡(5)
  ✓ 手掌紅斑(5)
  ✓ 痔疾(5)
(診察所見)
 ✓ 臍傍圧痛抵抗・右(10)
  ✓ 臍傍圧痛抵抗・左(5)
  ✓ 臍傍圧痛抵抗・正中(5)
  ✓ S状部圧痛抵抗(5)
  ✓ 季肋部圧痛抵抗(5)
★ 瘀血の腹候と圧痛点
(当帰芍薬散)右臍傍、軽いしこりのみ、硬結なし
(桂枝茯苓丸)左臍傍
(大黄牡丹皮湯)回盲部
(桃核承気湯)S状結腸部
・駆瘀血薬:血の巡りをよくする
(虚証)当帰・川芎
(虚実間証)芍薬
(実証)桃仁・牡丹皮(・冬瓜子・大黄)

▶ 血虚と補血剤
・血虚:
(身体症状)皮膚乾燥、あかぎれ、脱毛、爪のもろさ、手足のしびれ、めまい、こむら返り
(精神症状)不眠、集中力低下
(診察所見)腹直筋攣急
・補血薬:血を補う・栄養を隅々まで届ける
(生薬)芍薬、当帰、地黄、阿膠、酸棗仁、小麦、何首鳥
(方剤例)
 ✓ 四物湯《和剤局方》:当帰・芍薬・川芎・地黄
 ✓ 芍薬甘草湯《傷寒論》:芍薬・甘草
 ✓ 小建中湯《傷寒論》:桂皮・生姜・大棗・芍薬・甘草・膠飴

▶ 当帰芍薬散(23)
・気血水:瘀血・血虚・水滞
・症状:頭痛、めまい、吐き気、浮腫
・外見:なで肩、色白、当芍美人

当帰芍薬散の生薬構成 ≒ 四物湯+五苓散
 補血:当帰・芍薬・川芎
 駆瘀血:芍薬・川芎
 利水:茯苓・蒼朮・沢瀉
 順気(気鬱):川芎
 順気(気逆):なし

▶ 加味逍遥散(24)
・気血水:瘀血・気鬱・気逆
・症状:イライラ、のぼせ、便秘
・特徴:煩躁(気分が落ち着かず、イライラしてじっとしていられない)、逍遥(症状がコロコロ変わる)
・生薬説明
✓ 柴胡:清熱作用、抗ストレス作用
✓ 山梔子:清熱作用、煩躁改善作用

加味逍遥散の生薬構成
 補血:当帰・芍薬
 駆瘀血:当帰・芍薬・牡丹皮
 利水:茯苓・蒼朮
 順気(気鬱)柴胡・山梔子・薄荷
 順気(気逆)なし

▶ 桂枝茯苓丸(25)
・気血水:瘀血・気逆
・症状:のぼせ、赤ら顔
・所見:臍上悸、左臍傍圧痛

桂枝茯苓丸の生薬構成
 補血:芍薬
 駆瘀血:芍薬・牡丹皮・桃仁
 利水:茯苓
 順気(気鬱)なし
 順気(気逆)桂皮

▶ 柴胡剤のラインナップ
 実
 ⇧ 大柴胡湯(8)
 ⇧ 柴胡加竜骨牡蛎湯(12)
 ⇧ 四逆散(35)
   小柴胡湯(9)
 ⇩ 柴胡桂枝湯(10)
 ⇩ 加味逍遥散(24)
 ⇩ 柴胡桂枝乾姜湯(11)
 ⇩ 補中益気湯(41)
 虚

▶ 陰陽と月経関連処方
(陽証)桂枝茯苓丸(25)、加味逍遥散(24)
(陰証)当帰芍薬散(23)

▶ 六病位と月経関連処方
(少陽病期)桂枝茯苓丸(25)、加味逍遥散(24)
(太陰病期)当帰芍薬散(23)

▶ 冷えのタイプと月経関連処方
・四肢の冷え(血虚・瘀血) → 当帰芍薬散(23)
・上熱下寒タイプ(気逆)・・・手先足先の冷え+顔面紅潮 → 加味逍遥散(24)、桂枝茯苓丸(25)

▶ 月経関連処方の舌所見
当帰芍薬散(23)蛋白・腫大・歯根
加味逍遥散(24)舌尖赤い、しまった感じの形
桂枝茯苓丸(25)紫色、舌下静脈怒張


<参考>
・2026年3月にWEB配信された堀河漢方塾セミナー(谷口聖明Dr.、水澤理可Dr.)

・・・谷口先生のセミナーは何回も聞いていますが、理解しやすくて毎回楽しみです。処方に行き詰まったとき「陰陽」という視点を取り入れることを教えていただきました。
・・・水澤先生は気血水でキレイに分類してくれました。
一つ気づいたこと。以前から「加味逍遥散には気逆の生薬が入っていないのに、なぜ気逆の患者さんに使うんだろう?」と疑問に思ってきたのですが、キーとなる生薬は山梔子であることが判明しました。山梔子は煩躁(気分が落ち着かずイライラしてじっとしていられない状態)を緩和してくれるのですね。