私が子どもの頃(50年前)は家庭用ゲームは存在せず、繁華街にあるゲームセンターでしかできませんでした。魅力的で楽しそうだけど学校から「行ってはいけない」という禁断の場所。そしてそこに通う子どもは「不良」と呼ばれる、ごく一部の生徒でした。その他大勢の子どもたちには、そこで使うお金の持ち合わせがありませんでした。
 ファミコンが普及し始めたのはそれから約10年後、私が大学生の時でした。想像通り、一気にゲーム人口が増えました。それも爆発的に。
 そして現在、ゲームは小型化してポータブル機器も登場し「持っていて当たり前」の子どもの遊び道具になりました。
 ゲーム会社は競って楽しいソフトを開発・提供し続け、子どもたちはそれに夢中になります。中にはやめられなくて日常生活に支障をきたす「依存」状態におちいる子どもも出てきました。あんなに楽しく魅力的なものが手元にあれば、なかなか自分で律するのが難しいのは自明のこと。一定のルールの必要性を唱える声も生まれました。

 動画を提供してくれるスマホも同様、依存対象です。
 うまくつき合えば、この上ない便利な機器ですが、ヒトはこの魅力的な機器を使いこなせるのでしょうか・・・どうやらそうでもなさそうです。診察中もスマホ動画から目が離せない子どもを時々見かけるようになりました。親が取りあげるとかんしゃくを起こして修羅場になります。
 世界を見渡すと、SNS関連機器の使用制限を子どもにかける国が増えてきています。私には人類がデジタル機器(制作会社)に白旗を揚げたようにも見えます。つまり、「リアルワールドよりゲーム・動画の方が楽しく魅力的」という構図です。

 ここでは読みやすいように対策のみ提示しました。基本的な知識を知りたい方はこちらもご覧ください。
なお、ゲーム依存とゲーム障害はほぼ同じ意味として扱います。

▢ ゲーム・ネットについての教育
・ 現代社会に必要不可欠のものでもあり、禁止するのではなく適切な使い方を教えるべき
・いつから教えるのが適切か、乳幼児にスマホで動画を見せること、簡単なゲームで遊ばせることが良いのかどうかに関しては、明確な研究結果は存在しない。
・親としては連絡や居場所の確認目的にスマホを考えるが、子ども自身はスマホを持ったらいろいろやりたいことがある。ゲームをやりたい、動画を見たい、友達とLINEでやり取りをしたい、など子どもの要望を聞いた上で、それぞれのアプリの可否や条件など、家庭内ルールを話し合う。
・子どもが社会のルールを覚え始めるのが2歳頃、しかし小学校高学年になると、親に反抗したり、素直に学べなくなる傾向が出てくる。以上を考慮すると、5〜10歳くらいの間に、ゲーム・ネットの適切な使い方を教え始め、約束・ルールを作り、守らせることが望ましい

▢ 機種選定の際の注意点
・親が管理することが難しい場合は、安心機能が搭載されているキッズケータイがお勧め(カメラやメッセージ機能あり)。
・親の古いスマホを渡すことになったら、可能なら初期化して子どものアカウントを作成すべし(親の決済情報などは消しておく)。子どものアカウントなら、年齢に併せたコンテンツが表示される。

▢ スマホを使う時間・時間帯の設定
・時間:小学生では1日30分〜1時間が目安
(例)「平日は30分、休日前は1時間、休日は2時間」
   「30分使ったら10分休む」
・時間帯:
(例)
「夜は21時まで、塾の日は30分延長」
   「寝る1時間前までに終了」
・アプリごとの制限:
(例)「1回30分のゲームなら1日2ゲーム」
   「ゲーム40分、動画20分」
・Wi-Fiルータで端末ごとの時間設定も可能。

▢ スマホを使う場所と保管場所の設定
自室への持ち込みNG、リビングのみ利用OK
寝るときはリビングで充電する。

▢ ペナルティも一緒に決めてリビングに貼っておく
・ルールを破ったときのペナルティ:
(例)「翌日の使用時間を30分減らす」
   「3回破ったら1日使用禁止」
完成したルールはリビングや冷蔵庫に貼っておき、いつでも確認できるようにする。
・学年が変わるときや習い事の時間が変わるときは見直すタイミング。
・子どもの成長に合わせて「もう自分でコントロールできそう」と感じたら、ルールを弛めてITスキルを上げられるよう誘導する。

▢ ネットのルール作りのポイント
親が買い、子どもには貸し出す(所有権は親に)。
・使用する時間・場所・金額を指定する。
(例)午後10時まで、居間でのみ使用し自分の部屋に持ち込まない、等
・決めたら書面にして目につくところに貼る。
・親子が一緒にルールを作り、親もルールを守る

▢ 親子の「約束」を作るコツ
1.「約束」についての話し合いは、機器を買う前、サービスを使い始める前がよい。

2.所有権は大人に。
3.上手な「おしまい」を身につける。
(例)子どもが見通しをつけられるように、タイマーを利用したり、上手におしまいできたら報酬を与えたり。
4.「やるべきことをやってからゲーム」はうまくいかないことが多い。
(例)宿題が終わったらゲームしていいよ、とすると、宿題に取りかかってもゲームのことが頭から離れず進まないのでいつまで経っても宿題が終わらない。
5.ゲームができる時間は短すぎる設定にしない。
(例)15分だけ・・・では短すぎてトラブルの素になる。
6.次にいつ使えるのかを明確にする。
(例)「今日はおしまいだけど、明日になればまた〇時間できるよ」と言うと納得しやすい。
7.ゲームの時間を「交換可能財」にする。
(例)お手伝いをしたらゲームの時間が少し増えるなど。
8.機器を取りあげる方法をひと工夫。
・物理的に奪う方法はトラブルの元。
(例)Wi-Fi が時間で自動的に切れるなど。
9.子どもはネットから離れていたいときもある。
(例)LINEのやり取りから離れられず長時間使用してしまう子どもがいる、苦痛でも離れられないタイプもいる。時間を区切るルールを作り、やり取りから離脱するきっかけを作ってあげる。
10.睡眠時間の確保。
・生活リズムを崩すような時間設定はしない。
(例)「ちゃんと寝た方がゲームの能力がアップするよ」などとアドバイス。

▢ 他の依存対策のポイント
・子どもだけにルールを押しつけるのではなく、家族みんなでルールを守るべし。
親がゲームに興味を持つと、子どもが教えてくれる。親も子どもの考えを理解しやすくなる。親の方がゲームが上手、ネットに詳しいと、子どもは親を尊敬して言うことを聞きやすくなる。

▢ 具体的な項目
・夫婦で異なる考えだと子どもは混乱するため、家族みんなで話し合い、決める。
・ペアレンタルコントロール機能のフィルタリングなどの設定で時間制限を。
・家庭内のルール作り(時間と場所)や親からの声かけでリテラシーを育てる。
★ 子どもにスマホを与えると、子どもは親のアカウントを探し、誰をフォローしているのか、どんな投稿と返信をしているのかを見る可能性があることを覚悟する。大人はSNSで子どものお手本になるような振る舞いを心がけるべし。

▢ 使いすぎ予防のポイントは「日中活動の充実」
・日中活動が充実していると、前述の約束事のポイントを子どもに守らせることが簡単になる。
ゲームよりリアルワールドが楽しければゲーム依存は発生しないはずだが、現実は逆になりがち。
・日中活動を子ども本人が楽しみにしていたら、子どもは朝起きようと努力する。逆に言えば、日中活動がつらい、怖い、不安、退屈な状況では、生活リズムが崩れやすくなる。

▢ 思春期例の問題点・注意点
・ゲームの制限・禁止は回復につながらない。
・ゲーム依存は氷山の一角で、その下には本人が悩んでいる家庭や学校、社会生活の問題が隠れている。
・子どもはゲームをすることにより安らぎを得ている面がある。
・ゲームをしている・していないではなく、ゲーム依存の原因となることに目を向けることが大切。
・思春期の子どもは反抗期でもあり、両価性(アンビバレンツ)状態。ゲームをやりたくて仕方ないけど、やめられない現状に不安を持っていることも多い。本人が困っている要素(睡眠問題・食欲不振など)をきっかけにして相談に乗り受診につなげる。最初は抵抗するかもしれないが、何回も何回もくり返し話していくことが大切。本人が怒っているときは避け、話を聞いてくれそうなときにわかりやすく説明していく。
・治療の結果、ゲーム使用時間が少しでも減れば(例:10時間 → 8時間)、それを評価することが大切。

★ ニール・イヤール氏(作家・コンサルタント)のコメント
・スマホやアプリ開発の裏側;
✓ 魅力的で習慣性が高いものが「優秀なスマホ製品」とされる。
✓ 習慣的に使用してもらうためにユーザーの不快な感情(退屈、孤独、疲労、不確実性、ストレス、不安、等)に入り込み「気晴らし」を展開させる。
✓ 不確実性で変わりやすいものにヒトは注意深くなり集中する傾向があり、それがあると習慣化しやすい。予測可能なものには誰も興味を示さない。

樋口進氏(久里浜病院名誉院長)のコメント
・ゲームに勝ち続けると依存性はなくなるが、ときどき負けるという不確実性があるため習慣化する。
・仲間とやり取りしていて、自分だけ置いてきぼりになることを皆とても怖がる。イヤだけど見ざるを得ない状況になっていることが多い。
・依存患者に「見るのはいいけど、書き込むのはしばらくやめよう」と提案している。書き込むと必ず反応を見たくなるため。
・依存性のあるゲームやネットは、早い年齢から始めると依存のリスクが高くなることがわかっている。国がガイドラインを作成すべき時に来ている。
・スマホ・ネットを使わない時間を家族で設定・共有することを提案したい。
(例)夜の7〜8時は家族全員で使わない時間を作る( → 会話が増えるかもしれない)。

★ スティーブ・クレイン氏(スタンフォード大学 行動デザインラボ)の提案
・使いやすく便利に作られているスマホを自分で使いにくく楽しめないようにするくする工夫が必要。
・人間は3つの要素「やりたい・できる・きっかけ」がそろったときに行動する。
1.「きっかけ」を減らす:
(例)お休みモードをオンにして通知が来ないようにする。
2.「できる」を減らす:
(例)パスワードは長いものにして保存しない( → 精神的な負担が増える)。指紋認証や顔認証も使わない。
3.「やりたい」を減らす:
(例)画面の色を変える(赤一色にするとずっと画面を見たくなくなる、白黒にすると魅力が半減する)。


<参考>
・「ゲーム・ネットの世界から離れられない子どもたち」(吉川徹著、合同出版)
・「思春期の「つながる気持ち」はどこへ行く?」(関正樹著、日本評論社)
・「子育て支援者応援チャンネル」(YouTube動画 by 木下直俊先生)
・「思春期 心と体の不調 ゲーム依存」(NHK-Eテレ きょう
の健康、2025年)
・「ゲームネット依存」(NHKサイエンスZERO、2022年)
・「
子どものスマホ、いつから持たせる?(AERA Kids+、2026.4.8)

<相談窓口>
エンジェルアイズHP
全国精神保健福祉センター(厚生労働省)
保健所検索(厚生労働省)