スギ花粉症は、日本人の3〜4割が患者である国民病です。
また、一年中鼻が出たりつまったりの患者さんは、アレルギー検査を行うとダニが陽性に出ることが多く、「ダニによる通年性アレルギー性鼻炎」と診断されます。
従来その治療法は「抗アレルギー薬による対症療法」しかありませんでしたが、近年自宅で可能な「舌下免疫療法」が登場し、高い有効率が確認されていますので、ここに紹介させていただきます。

当院では、
・スギ花粉症に対する「シダキュア®
・ダニアレルギーに対する「ミティキュア®
を採用しています。

舌下免疫療法とは
アレルギー疾患の原因となるアレルゲンを患者さんの体に吸収させて体質改善を期待する治療を「
アレルゲン免疫療法」(=「減感作」あるいは「脱感作療法」)と呼びます。

近年、従来の皮下注射法の欠点を改善した「舌下免疫療法」という方法が開発されて、スギ花粉とダニのアレルギーに対して使用できるようになりました。これはアレルゲン・エキスを舌の下にしばらく保持し、その後に飲み込むという簡単な方法です。

初回は病院で行いますが、それ以降は自宅で可能になり、月に1回の通院で済みます。痛くありませんし、強い副反応が出るリスクも従来の皮下注射より低く安全です。ただし最低2年間は続ける必要がありますので、これを読んでご検討ください。 

 

対象疾患と製剤と対象年齢

スギ花粉症」(注意:スギ以外の花粉症には効きません)
シダキュア® (錠剤)年齢制限なし(*)


ダニによるアレルギー性鼻炎
ミティキュア® (錠剤)年齢制限なし(*)

 

* 目安は「5歳以上で“舌下投与”を理解し安全に行うことができる人

 

有効率8割に有効(見方を変えると2割には無効)

 著効:約2割 ・・・ 薬がいらなくなる

 有効:約6割 ・・・ 薬を減らせる、軽くなる

 無効:約2割 ・・・ 数年間がんばったのに、変わりなし

 

※ 即効性はなく、効果が出始めるまでに数ヶ月を要します。効果判定は年単位です。

※ 他にもいろいろなアレルゲンに反応しやすい人は効果を実感しづらい傾向があります。
※ 治療終了後、一定期間を過ぎると効果が弱くなることがあります。



<舌下免疫療法の実際>

 

使用禁忌者 ・・・希望されても以下に当てはまる人はこの治療を受けられません。

① β-阻害薬(高血圧・不整脈の薬)を使用している方

② 妊娠されている方(および、近いうちに妊娠希望のかた)

③ 重症の気管支喘息の方(1秒率が70%未満)

④ 重篤な全身疾患の方(悪性腫瘍、自己免疫疾患、免疫不全症、重症心疾患など)

⑤ 全身ステロイド薬の連用や抗癌剤・免疫抑制剤を使用している方

 

方法の概要と注意点

・薬を舌下に置き、数分間保持し、その後飲み込む(すぐに飲み込んではいけません)。

・舌下への投与後、5分間はうがいや飲食を避ける。

・舌下への投与前、投与後2時間は激しい運動や入浴などは避ける。投与後2時間以降も運動・入浴する際は副反応の出現に注意する。

※ 中高生で朝練のあるスポーツ系の部活動に参加している人はご注意ください。投与前は2時間という縛りがないので、タイミングとして運動や入浴後に落ち着いたら舌下することをお勧めします。

・増量期と維持期がある。

 

治療期間

・症状の有無にかかわらず毎日服用し、2年間継続(効果があれば3~5年を推奨)

※ スギ花粉での開始は、花粉飛散期間とその前後(12月~5月)を避ける。

 

副反応

 アレルゲンを体に吸収させるのでアレルギー反応(副反応)が出る可能性があります。 
局所的副反応(多い)→  継続可能

「口の中がピリピリしたり、かゆくなる」
「舌がしびれた感じがする」
「顔が痒くなる」
「口の中や舌が少し腫れる」
「のどや耳がかゆくなる」
「口内炎ができる」


全身的副反応(まれ)→  減量・中止

「体がかゆくなる」
「のどがつかえる感じがする」
「体がだるくなる」
「おなかが痛くなる」
「吐き気がする」
「苦しくなる」

 

①の局所反応は珍しくありません。開始してから1ヶ月以内に多く、重症化のリスクは少なく、継続していると1週間ほどで消えていく例がほとんどです。


②の全身反応はまれですが、より強いアナフィラキシー(※)につながる可能性があるので、減量・中止を検討する必要があります。

いずれにしても、気になる症状が出たら主治医に相談してください。

 

※ 当院ではアナフィラキシー対策として、救急指定病院(太田記念病院、足利赤十字病院など)と病診連携することにより対応しています。