B型肝炎について


 B型肝炎はウイルスが悪さして肝臓に炎症が起きる病気です。感染経路が特殊で症状が出ないこともあるため話題になりにくいのですが、知らぬ間に体に侵入して感染が成立すると、一生悩まされるやっかいな感染症です。
 小児科医は長年、B型肝炎を予防するワクチンの重要性を訴えてきましたが、ようやく2016年10月に定期接種として公費で接種できるようになりました(対象は2016年8月以降に生まれた子ども)。残念ながらそれ以前に生まれたお子さんは任意接種(自費)となります。
 自費になるとしても、病気とワクチンの効果を知っている医師の立場からは、お子さんを生涯にわたりB型肝炎ウイルスから守るために接種を強くお勧めしたいワクチンです。
 興味のある方は、以下の説明をお読みいただき、接種をご検討ください。 


感染経路

 B型肝炎ウイルスを含む血液・体液を介して感染し、2つの経路があります;

垂直感染)母子

水平感染)父親、集団生活、ピアスや刺青、性行為、針刺し事故など

 

ウイルス亜型(ジェノタイプ、genotype)

 A-Hまであります。日本では従来、BとCが多くを占めましたが、近年は若年者を中心に慢性化しやすいジェノタイプA(欧米型)が増加し問題視されています。

 

経過一過性と持続感染の二つに分けられ、その比率は年齢により異なります;

 

1.一過性感染

(70-80%)不顕性感染 ・・・無症状

(20-30%)急性感染を発症 → その一部はまれながら劇症肝炎へ進行

 

★ 一過性感染例は治癒後健康に戻ったのちも、少数のウイルスが肝細胞内に潜伏し、中年以降に免疫抑制状態(抗がん剤使用など)になると再活性化して劇症肝炎de novo B型肝炎)を発症し、命に関わることがあります。

 

2.持続感染キャリア

(90%)無症候性キャリア ・・・無症状 → ごく一部は肝癌

(10%)慢性肝炎を発症 → ゆっくり進行して肝硬変~最終的に肝癌

 

子どもの感染

・母子感染は1986年開始の「母子感染予防事業」(ワクチン+免疫グロブリン)により減少しましたが、水平感染は減らないままでした。それを解消すべく、2016年にようやくワクチン定期接種化に至りました。

・感染時期が早いほど高率に持続感染・キャリア化しやすいことがわかっています(例:0歳で95%、1歳で50%、2-4歳で25%、18-19歳では数%)。

・小児期感染例から、成人前に肝癌を発症する例も報告されています。
 

B型肝炎ワクチンをお勧めします

 

 B型肝炎ウイルス感染を予防するワクチンがあります。世界的には以前からすべての子どもを接種対象としたユニバーサルワクチネーション(UV)が一般的でしたが、日本でもようやく2016年に0歳を対象に定期接種化しました。

 それ以前に生まれたお子さんは、有料の任意接種になりますが、それでも私はこのワクチンの接種を強くお勧めします。将来、絶対感謝されます。


院長からのメッセージ

・B型肝炎ウイルスは一度体に入って感染を起こすと、人体は排除することができません。小児期に感染して持続感染化すると将来肝硬変肝癌のリスクを、持続感染を逃れても将来抗がん剤や免疫抑制剤を使用した際に劇症肝炎を発症するリスクを抱えることになります。

・ワクチンは低年齢ほど有効で、20歳未満ならほぼ100%免疫がつきます(20歳台では90%、30歳以降では70%まで効果が落ちてしまいます)。

・B型肝炎ワクチンは元祖“ガン予防ワクチンです。お子さんの命を守る“一生涯の贈り物”としてぜひ接種をご検討ください。


ワクチン接種スケジュール母子感染予防・定期接種以外

■ 3回接種で完了

 ① 初回 → ②1ヶ月後 → ③ 初回から6ヶ月後

 (10歳未満:0.25mlを皮下注射)
 (10歳以上:0.5mlを皮下または筋肉注射)

※ 感染のリスクが高い方(家族がキャリアなど)は希望により3回目の接種終了後から1-2ヶ月後に免疫ができたかHBs抗体検査で確認します(自費)。

 

★ 医療関係者には必須のB型肝炎ワクチン

 血液を扱う、あるいは触れる可能性のある医療関係者(医師、歯科医師、看護師、薬剤師、理学療法士、作業療法士、言語療法師、歯科衛生士、視機能訓練士、放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士など)は「医療関係者のためのワクチンガイドライン」において「B型肝炎ワクチンは必須」と記載されています。

 しかし、成人になってから接種すると抗体獲得率が低下するため、将来上記の職業を目指している方には小児期に接種しておくことが推奨されます。