カテゴリ: くすり

赤ちゃんの場合

人工栄養(粉ミルク)児:哺乳直前に20ml程度の湯冷ましに溶いてほ乳瓶の乳首部分に入れて飲ませ、飲みきった後にミルク本体を与えましょう。
母乳栄養児:粉薬は小さい器か手の平にとり、少量の水分を加えてペースト状とし、これをお母さんの人差し指に付け、赤ちゃんの口の中(ほっぺの内側)に塗りつけ、直後に母乳を飲ませましょう。舌の上に乗せると嫌がって吐き出しがち、ポイントは「舌とできるだけ接触させないこと」です。
 シロップの場合は、スポイトで少しずつ流し込んで飲ませましょう。 


幼児の場合

・粉薬はスプーンに乗せてパクリと食べさせ、水を飲ませます(基本はジュースではなく水)。
ストローを使用:薬の味が口に広がりません。
・飲めたらご褒美をあげることがポイント、「ほめる」ことは“無料のご褒美”ですからどんどん使いましょう。「飲めなくても怒らない、飲めたら必ずほめる」が原則です。

・薬を飲んだらシールを貼って、枚数が集まればご褒美をあげるなどの動機づけも有効です。
・薬をなぜ飲むのか繰り返し繰り返し説明しましょう。お母さんの真剣な表情から、いつかはわかってくれます。

Q. 処方された薬の賞味期限(有効期限・使用期限)はどのくらいですか?

A. 一般に薬は製造されてから3年くらいで設定されているそうですが、患者さんの手元に届くまでタイムラグがあります。

 当院では以下のように説明しています;


<処方された薬の使用期限>(原則として飲み残しは破棄すべし
・錠剤は1年(花粉症など、診断・症状が決まっている場合に限る)
・粉薬は半年(ただし湿気で固まったものはダメ)
・風邪薬のシロップはその時の風邪だけ、保存して次の風邪で使用するのはダメ

<参考>
子どもの薬に関する疑問に小児科医が答えます(当院ブログ)

<基本>

1.溶かす

 50ml程度の液体(水・お湯・ジュースなど)にエキス剤顆粒を入れて5分間静置後、かき混ぜると溶けます。1日分を100mlで溶かして冷蔵庫保存してもOKです。

2.混ぜる

 ヨーグルトやアイスにはエキス剤顆粒をそのまま混ぜ込んで食べさせます。ツブツブ感を嫌がるなら、あらかじめスプーンの裏側を使ってつぶしておきましょう。


<年齢別飲ませ方>

■ 乳児 
① 口内なすりつけ
② 味をごまかす(ヨーグルト、マルツエキス他)

口内なすりつけ

 乳児期前半(離乳食開始頃まで)はエキス剤の粉を少量の水で練ったものをお母さんの指先に付けてほっぺの内側になすりつけ、直後に母乳・ミルク・水分などを飲ませましょう。処方箋は「1日2回食前」と書かれていますが、哺乳前に毎回少量ずつでもOKです。

ヨーグルト

 乳児期後半(7ヶ月~)からはヨーグルトも使用できます。少しずつ混ぜながら食べさせると、エキス剤をコーティングしてくれるのでザラザラ・つぶつぶ感がわかりにくくなります。数あるヨーグルトの中でも、ほどよい固さと量のベビーダノン/プチダノンがお勧めです。

マルツエキス®】(処方薬なのでご希望の方は声をかけてください)

 昔から赤ちゃんの便秘薬として伝わる麦芽糖(マルツエキス®)も利用できます。そのもの(水あめ状)に混ぜ込んで食べさせてもよし、湯冷ましで薄めたものに溶かして飲ませるのもよし。

 幼児・学童

① 粉をそのまま
② 味をごまかす
③ 錠剤(※)

  錠剤があるのは一部のみ(例:小青竜湯、葛根湯加川芎辛夷、五苓散、柴胡桂枝湯など)で、対象は「小学生以上」

粉をそのまま 下記のどちらでもOKです。

・エキス剤を舌の上にのせて、液体(水/お茶/ジュース)を流し込んで飲み込む。

・先に液体(水/お茶/ジュース)を口に含んで、後からエキス剤を入れて飲み込む。

味をごまかす

 子どもの好きな食べ物や飲み物と混ぜて(あるいは溶かして)味をわからなくする方法です。

 ただ、何でもよいわけではなく、飲み合わせによっては、かえって苦味が強く出ることも。

 次のページの「飲み合わせ表」(混ぜる食品と漢方エキス剤の相性)をご参照ください;


★ エキス剤と食品の飲み合わせ


 漢方薬はみんな同じ味ではありません。苦くて飲みにくいものもあれば、子どもでも抵抗なく飲めてしまうものもあります。当院スタッフが実際に漢方エキス剤をいろんな食品と合わせ飲みして味を評価した結果を表にしました。ひとつの目安として参考にしてください。



小青竜湯

葛根湯加川辛夷

辛夷清肺湯

小柴胡湯加桔梗石膏

五虎湯

麦門冬湯

五苓散

半夏瀉心湯

小建中湯

黄耆建中湯

桂枝加黄耆湯

温清飲

甘麦大棗湯

抑肝散

柴胡加竜骨牡蛎湯


オレンジJ

×

×

×

×

×

×

×


リンゴJ

×

×

×

×


牛乳

×

×

×

×


コーヒー牛乳

×

×

×


カルピス

×

×

×

×

×

×


マミー



×








×

×



ココア/ミロ


野菜ジュース・黄

×

×


チョコアイス

×

×


バニラアイス

×

×


クッキー&クリーム

×

×


※ コーヒー牛乳欄の灰色部分はミルメーク・コーヒー


ポイント>

・困ったときの「ココア&ミロ」。1歳半くらいから使用できます。この二つは万能で、苦い味も酸っぱい味もわかりにくくしてくれます(苦い抗生物質にも応用可能)。

混ぜているところを絶対に見られてはいけませんお母さんも味見してくださいね(うちの子は飲めません、と言い張る親御さんは、ご自身が飲めないことが多いですね)

冷やした方が味覚が麻痺してごまかしやすい傾向あり。

・主食(育児用ミルク、ご飯)に混ぜると嫌いになり困ることがあるので避けましょう。

・同じ種類の食品でも濃い味の方がごまかしやすいことは共通しています。

アイスには上に乗せるのではなくサンドするかよく混ぜるのがこつ。味の濃いハーゲンダッツがお勧めです。

・市販の「お薬ゼリー」は一通り当院スタッフで試したのですが、薄味のものが多く、漢方の味をごまかしにくいため省略しました。

・苦い後味を経験すると次回拒否されますので、最後に水分を飲ませて後味を消しましょう。


 「夜泣き」は生後3週頃から始まり、6ヶ月~1歳半がピークで、3歳頃には80%消失する生理現象です。

 夜間、それも結構決まった時間帯に赤ちゃんは泣いてぐずります。病気ではありませんが、これが連日続くとお母さん、お父さんは参ってしまいます。

 一般的な対策としては、まず赤ちゃんが不快となることをチェック!

・お腹がすいた

・おむつが汚れた

・暑いあるいは寒い

 などなど。

 一通り対応しても泣きやまないときは「抱っこ」。

 「私がいるから大丈夫」と安心させる気持ちで抱っこしたり子守歌を歌ったり。

 お母さん一人では大変ですから、疲れがたまってくるようであればお父さんにも是非協力してもらって下さい。お母さんが幸せでなければ赤ちゃんも幸せになれません。

 

 ポイントは「赤ちゃんの感情をしっかり受け止めてあげること」だと思います。「泣く」という行為は数少ない赤ちゃんの意思表示の方法です。それを繰り返し受け止めてあげることにより「自分は大切にされている」と感じるようになり、「生きてるって幸せなことだ」「ヒトと触れ合うって気持ちの良いことだ」と広がっていきます。赤ちゃんが初めて育むヒトとヒトの間の信頼関係です。これが将来豊かな人間関係を築く土台になっていくのです。

 

 その昔、アメリカの有名な「スポック博士の育児書」には子どもを乳児期から一人で別室で寝かせ、自立心を養う旨の記述がありました。日本でも「抱き癖がつくから放っておきなさい」とする風潮が一時ありました。

 しかし、現在は前述のように赤ちゃんが泣いたらしっかり抱きしめてあげることが推奨されています。アフリカのある部族では、ぐずってなく赤ちゃんが少ないことが観察され、日本人が不思議に思ってなぜかと問うと「日本人は服の上から赤ちゃんを抱いていませんか?」「母親の肌と赤ちゃんの肌を直接合わせると落ちついて泣き止みます」という目からウロコのコメント映像を見たことがあります。

 

 もし、泣いている赤ちゃんを放っておいたらどうなるのでしょう。より激しく泣き、最後には疲れ果てて寝てしまいます。これが繰り返されるとだんだん泣かない赤ちゃんになっていきます。

 これは決して「がまん強くなった」訳ではありません。「自分がつらくて泣いていても誰も助けてくれないんだ」とあきらめてしまうのです。それが続くと、「自分は大切にされない存在」「生きていたってしょうがないんだ」と自己評価の低い子どもになっていく可能性があります。

 現在社会問題になっている子どもの「不登校」「引きこもり」「摂食障害(拒食症、過食症)」「切れやすい」などを扱っている専門家は、それらに陥る子どもの共通点として「自己評価の低さ」を挙げています。


 いろいろやってみたけどやはり大変、というときは漢方薬をお勧めしています。日本の伝統的な医学である漢方には夜泣きの薬が複数用意されています(⇩)。

 お母さんも「もう限界!」とつらいときには赤ちゃんと同じ薬をお母さんにも飲んでいただきます。すると母子ともに気分が楽になるのです。これは「母子同服」といって、500年も昔から行われてきたことです。みんな夜なきに悩んで、解決方法を模索してきたのですね。


<夜なきに使われる漢方薬>

 抑肝散(54)   → 怒りんぼ系の赤ちゃんに

 甘麦大棗湯(72) → 泣き虫系の赤ちゃんに

 小建中湯(99)  → ぐずりがちや突然泣き出す赤ちゃん、泣き入りひきつけに

抑肝散の母子同服;夜、赤ちゃんに一袋の1/3を飲ませ、残りの2/3をお母さんが飲んでみてください。



<当院で赤ちゃんによく処方している漢方薬>

 当院は小児科医には珍しく、漢方を多用しています。
「子ども、それも赤ちゃんに漢方?」と驚かれるかもしれませんが、
漢方薬の歴史は1800年もあり、ある意味人体実験を繰り返し有益かつ無害な薬だけが生き残っているため、利用しない手はありません。
私は西洋薬ではうまくコントロールできない風邪症状や湿疹等にも頻用しています。
その一部を紹介します;

(症状改善)

 麻黄湯(26)  → 生後数ヶ月以内の赤ちゃんのはなづまりに

 小青竜湯(19) → 鼻風邪の初期(水っぱな)に。アレルギー性鼻炎にも有効。

 葛根湯加川芎辛夷(2) → 鼻風邪が長引いてにごった鼻水になったら

 五虎湯(95)  → 風邪を引くとゼーゼーする赤ちゃんに

(体質改善)

 小建中湯(99)  → お腹の調子が安定しない虚弱児に

 黄耆建中湯(98) → 虚弱&乾燥肌でかゆがる赤ちゃんに

 人参湯(32)  → よだれが多くよだれかぶれが続く赤ちゃんに


などなど。飲ませ方のコツも伝授しますので、試したい方は声をかけてください。

当院かかりつけ患者さんの約3割がリピーターです。

漢方薬はお年寄りの薬」「苦いから子どもに飲ませるのは無理」と思い込んでいませんか?

当院では一般な西洋薬でよくならないとき、漢方薬の併用をお勧めし処方しています。
飲ませ方のコツ」もアドバイスします。「漢方薬を飲む」というハードルを越えると、効果を実感してリピーターになるお子さんが多く、結果として約3割の患者さんに処方しています。


風邪を引きやすい
◆ 入園してから風邪の引きっぱなし。うちの子、どこか悪いんじゃ?

→ こどもの体力を底上げしてくれる漢方薬があります。食欲が出て元気になり、風邪の回数も減り、罹ったときの治りがよくなります。
(例)小建中湯、小柴胡湯


副鼻腔炎・ちくのう症になりやすい
◆ 風邪をひくと「あおっぱな」がずっとつづき、耳鼻科通院、治ってもまたすぐに鼻が出て・・・エンドレス。

→ 鼻づまりを楽にする漢方薬があります。のどの炎症を鎮め、奥に溜まっている膿性鼻汁を出し切ってよくなるイメージです。

私の処方をご紹介します;
・カゼの初期(くしゃみ、水っぱな) → 小青竜湯
・カゼの中期(濁った鼻水、黄色鼻汁) → 葛根湯加川芎辛夷
・カゼの後期(青っぱなが長引くちくのう症) → 辛夷清肺湯
効きが悪いときは、小柴胡湯を併用します。


虚弱系です
◆ 食が細い、線が細い、よくお腹を痛がり、朝登園を渋る・・・心配です。

→ 漢方には虚弱なこどもを元気にしてくれる薬があります。他に「不安」「緊張」「興奮・怒り」を和らげて気持ちが落ち着く薬もあります。
(例)
小建中湯、甘麦大棗湯、抑肝散


夜なき
◆ 夜泣きがひどくて親も寝不足でヘトヘト・・・もう限界です。

→ 「夜泣き」や「寝ぼけ」に効く漢方薬があります。お母さんも同じ薬を一緒に飲んで気持ちを和らげる方法(母子同服)が古くから伝わっています。
(例)甘麦大棗湯、抑肝散、柴胡加竜骨牡蛎湯、桂枝加芍薬大黄湯


花粉症・アレルギー性鼻炎
◆ 花粉症のくすりを飲むと眠くてたまらず、飲まずに我慢しています。

→ 花粉症に使う漢方薬は眠くなりません。鼻づまりや目のかゆみにも効きます。(例)小青竜湯、葛根湯加川芎辛夷、越婢加朮湯、苓甘姜味辛夏仁湯


便秘症
◆ 便秘がちだけど、浣腸に頼るのは心配、下剤を飲むとお腹を痛がって・・・

→ 漢方には「緊張」や「冷え」を改善して便通をよくする薬があります。
(例)小建中湯、大建中湯、小柴胡湯


湿疹/アトピー性皮膚炎・水いぼ
皮膚科に通っているけどなかなかよくなりません。痛いので嫌がった大泣きするし・・・先が見えなくて不安。

漢方には皮膚を引き締めて丈夫にする、ドライスキンを潤す、炎症の熱を冷ます効果などが期待できます。 
(例)黄耆建中湯、桂枝加黄耆湯、十味敗毒湯、治頭瘡一方、消風散、(ヨクイニン)

漢方薬を飲ませる際に、マルツエキスを使う方法を紹介します。

マルツエキスはサツマイモを原料とした麦芽糖(マルトース)です。

生後1ヶ月から使用可能で、見た目は水あめ状です。 

赤ちゃんの便秘対策や栄養補給目的で使用されてきた歴史の長い、食品に近い薬です。

砂糖に比べて3割程度の甘さしかなく、歯のケアを行えば虫歯になる可能性は低く、またカロリーも低いため、続けて服用しても肥満になる心配はありません。

副作用はほとんど報告されていませんが、お腹が張ったり便が緩くなりすぎるときは一旦中止してご相談ください。


<具体的な方法>

推奨順→

1

2

3

月齢・年齢

(↓)

マルツエキスと漢方薬をそのまま練り混ぜて飲ませる(★)

マルツエキスと漢方薬を少量ので溶かして飲ませる

マルツエキスと漢方薬をお湯で溶かし、ひと肌に冷ましてから飲ませる

1~3ヶ月


小さじ1杯程度のお湯で溶かし、スポイトなるべく口の奥にたらす。

お湯20-50mlで溶かし、哺乳瓶で。


★ 一度に飲めないときは数回に分けて飲ませましょう。1回分をそのたびにお湯で溶かしてもよし、1日分をまとめて溶かして2回に分けて飲ませてもよし

冷蔵庫保存すれば1日は大丈夫です。

3~6ヶ月

練り混ぜたもの少量を小さなスプーンに乗せてほっぺたの内側奥のほう、あるいは上あごになすり付ける。

6ヶ月

~1歳


1~3歳

練り混ぜてスプーンで与える。

お湯50~100mlに溶かし哺乳瓶マグで。

 

(★)漢方薬のツブツブ感を嫌がるようなら、混ぜる前にスプーンの裏やすりこぎでつぶしましょう。ただし、エキス剤にコーティングされている乳糖がはがれるので味が強くなる欠点があります。
 

漢方薬は本来、自然界の草根木皮を煎じた液体で味もにおいも強烈です。
現在日本で頻用されているのは“エキス剤”と呼ばれる代物で、これは煎じ薬をインスタントコーヒーのようにフリーズドライ方式で粒状化したものです。
におい・香りは弱くなりアロマテラピー的要素は減っていますが、まあ仕方ないでしょう。
しかし甘く味付けされた西洋薬に慣れ親しんでいる日本の子どもに飲ませるのは至難の業。
そこでいろいろな論考を参考に、当院スタッフがすべて味見をしてまとめたのが以下の文章です。どうぞご参照ください。

<基本>

1.溶かす

50ml程度の液体(水・お湯・ジュースなど)にエキス剤顆粒を入れて5分間静置後、かき混ぜると溶けます。1日分を100mlで溶かして冷蔵庫保存してもOKです。

2.混ぜる

ヨーグルトやアイスにはエキス剤顆粒をそのまま混ぜ込んで食べさせます。ツブツブ感を嫌がるなら、あらかじめスプーンの裏側を使ってつぶしておきましょう。


<年齢別飲ませ方>

[ 乳児 ]
① 口内なすりつけ
② 味をごまかす(ヨーグルト、マルツエキス他)

口内なすりつけ

乳児期前半(離乳食開始頃まで)はエキス剤の粉を少量の水で練ったものをお母さんの指先に付けてほっぺの内側になすりつけ、直後に母乳・ミルク・水分などを飲ませましょう。処方箋は「1日2回食前」と書かれていますが、哺乳前に毎回少量ずつでもOKです。

ヨーグルト

乳児期後半(7ヶ月~)からはヨーグルトも使用できます。少しずつ混ぜながら食べさせると、エキス剤をコーティングしてくれるのでザラザラ・つぶつぶ感がわかりにくくなります。
数あるヨーグルトの中でも、ほどよい固さと量のベビーダノン/プチダノンがお勧めです。

マルツエキス®】(処方薬なのでご希望の方は声をかけてください)

昔から赤ちゃんの便秘薬として伝わる麦芽糖マルツエキス®)も利用できます。そのもの(水あめ状)に混ぜ込んで食べさせてもよし、湯冷ましで薄めたものに溶かして飲ませるのもよし。

[ 幼児・学童 ]
① 粉をそのまま
② 味をごまかす
③ 錠剤(※)


錠剤があるのは一部のみ(例:小青竜湯、葛根湯加川芎辛夷、五苓散、柴胡桂枝湯など)で、対象は「小学生以上」としています。


粉をそのまま】 下記のどちらでもOKです。

① エキス剤を舌の上にのせて、液体(水/お茶/ジュース)を流し込んで飲み込む

② 先に液体(水/お茶/ジュース)を口に含んで、後からエキス剤を入れて飲み込む


味をごまかす

子どもの好きな食べ物や飲み物と混ぜて(あるいは溶かして)味をわからなくする方法です。

ただ、何でもよいわけではなく、飲み合わせによっては、かえって苦味が強く出ることもあります。

飲み合わせ表」(⇩)をご参照ください;


<エキス剤と食品の飲み合わせ>

漢方薬はみんな同じ味ではありません。苦くて飲みにくいものもあれば、子どもでも抵抗なく飲めてしまうものもあります。当院スタッフが実際に漢方エキス剤をいろんな食品と合わせ飲みして味を評価した結果を表にしました。ひとつの目安として参考にしてください。



小青竜湯

葛根湯加川辛夷

辛夷清肺湯

小柴胡湯加桔梗石膏

五虎湯

麦門冬湯

五苓散

半夏瀉心湯

小建中湯

黄耆建中湯

桂枝加黄耆湯

温清飲

甘麦大棗湯

抑肝散

柴胡加竜骨牡蛎湯


オレンジJ

×

×

×

×

×

×

×


リンゴJ

×

×

×

×


牛乳

×

×

×

×


コーヒー牛乳

×

×

×


カルピス

×

×

×

×

×

×


マミー



×








×

×



ココア/ミロ


野菜ジュース・黄

×

×


チョコアイス

×

×


バニラアイス

×

×


クッキー&クリーム

×

×


※ コーヒー牛乳欄の灰色部分はミルメーク・コーヒー


ポイント>

・困ったときの「ココア&ミロ」。1歳半くらいから使用できます。この二つは万能で、苦い味も酸っぱい味もわかりにくくしてくれます(苦い抗生物質にも応用可能)。ココア原末はとても苦いモノですが、その油分が漢方の粒子を包み込んでくれるそうです。

混ぜているところを絶対に見られてはいけませんお母さんも味見してくださいね。

冷やした方が味覚が麻痺してごまかしやすい傾向があります。

・主食(育児用ミルク、ご飯)に混ぜると嫌いになり困ることがあるので避けましょう。

・同じ種類の食品でも濃い味の方がごまかしやすいことは共通しています。

アイスには上に乗せるのではなくよく混ぜるのがこつ。味の濃いハーゲンダッツがお勧めです。

・市販の「お薬ゼリー」は薄味のものが多く、漢方の味をごまかしにくいため省略しました。

・苦い後味を経験すると次回拒否されますので、最後に水分を飲ませて後味を消しましょう


<参考>
この項目にまとめたことは、私と当院スタッフが実際に自分たちで味見して出した答えです。その試行錯誤の過程は以下のブログで振り返ることができます;
漢方味見表作成過程その1(2012年)
漢方味見表作成過程その2(2013年)
漢方味見表作成過程その3(2014年) 

私が小児科医になった四半世紀以上前は「カゼ薬=抗生物質(*)」という雰囲気がありました。
* 「抗生物質」は近年「抗菌薬」(細菌をやっつける薬という意味)と言い換えられることが多くなりました。
確かに抗生物質の内服薬の開発と普及は、一部のカゼ(溶連菌や副鼻腔炎、中耳炎など)には有意義でした。
しかし常在菌(腸内細菌)をも退治して下痢したり、過剰使用により耐性菌の出現を招くことが問題視されるようになりました。もし命に関わる感染症の原因が耐性菌であると、治療薬がないという事態が発生することが現実に起きています。 
そのため、近年「抗生物質の適正使用」(必要なときは使用、必要のないときは不使用とメリハリを付ける)が叫ばれるようになりました。
治療を受ける皆さんも、どんな時に抗生物質が必要なのか理解していただきたいと思い、この文章を書きました。
どうぞご参照ください。

 
急性気道感染症

■ かぜの原因の9割はウイルスであり、抗菌薬(抗生物質)は効きません

「かぜ」を医学的には急性気道感染症と呼び、下表のように細かく分類されます。

病型

鼻汁・鼻閉

咽頭痛

咳・痰

感冒

急性鼻副鼻腔炎

×

×

急性咽頭炎

×

×

急性気管支炎

×

×

◎:主要症状
△:際立っていない程度で他症状と併存
×:症状なし~軽度

カゼの原因の9割はウイルス感染症です。

一方、抗菌薬(=抗生物質)は細菌を退治する薬剤であり、ウイルスには効きません。つまり、カゼの9割は抗菌薬を投与しても経過は変わらないのです。

カゼと抗菌薬の三段論法
・カゼの原因の9割はウイルス
・ウイルスに
抗菌薬は効かない
・カゼの9割は抗菌薬が効かない


残念ながらウイルスを退治する薬剤(抗ウイルス薬)は、抗インフルエンザ薬等ほんの一部しかありません。「かぜ」の治療は症状を和らげて回復を待つのが基本です。 


■ 抗菌薬(=抗生物質)が必要なのはどんなとき?

では、かぜ関連の病態で、抗菌薬が必要とされるのはどんなときでしょう。

一部を以下に列挙します;
 急性鼻副鼻腔炎(中等症以上):発熱遷延、鼻汁・鼻閉、顔面痛
 溶連菌性咽頭炎:強いのどの痛み、頚部リンパ節の腫れ、細かくてかゆい皮疹
 急性中耳炎:耳の痛み(ただし、ウイルス性の中耳炎も存在します)
 扁桃周囲膿瘍、咽後膿瘍:強いのどの痛みと腫れ、痛くて首が曲げられない
 急性喉頭蓋炎:我慢できないほど強いのどの痛みでつばも飲み込めない、口を開けられない、かすれ声/含み声で呼吸が苦しい
 気管支肺炎:発熱遷延、咳嗽による睡眠障害

■ 急性気道感染症における、抗菌薬(=抗生物質)の適正使用とは?

上記の病態をしっかり診断し、必要と判断した場合は一定期間必要十分な抗菌薬治療をするのが「適正使用」です。
必要でない病態に抗菌薬を使用すると、耐性菌発生リスクが増したり、本来は経験しなくてよいはずの下痢や薬疹などの副作用でつらい思いをすることがあるなど、デメリットが指摘されています。



急性下痢症

急性下痢症は胃腸炎や腸炎とも呼ばれ、嘔吐・下痢が主症状の急性感染症です。

その原因は大きくウイルス性と細菌性に分けられます。

■ ウイルス性胃腸炎には抗菌薬(=抗生物質)は無効 

ウイルス性胃腸炎は冬を中心に発生します。

(例)ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスなど

ウイルス性胃腸炎では、下痢便の色が薄く白っぽくなる(クリーム色、レモンイエロー)ことが観察されます。ただし、全員がそうなるわけではありません。

胃腸炎の原因になるウイルスを退治する薬剤は、残念ながら現在はありません。

抗菌薬(=抗生物質)は細菌を退治する薬剤です。ウイルスには効かないため、投与しても経過は変わりません。

急性期に心配すべきは脱水症であり、それを予防するために頻回の水分摂取(経口補液)を行うことが基本です。それでも病勢が強くて間に合わず、脱水症に陥った場合は点滴(経静脈輸液)が考慮されます。

■ 細菌性腸炎には抗菌薬(=抗生物質)が有効

細菌性腸炎は夏を中心に発生します。

(例)病原性大腸菌、サルモネラ、キャンピロバクター(カンピロバクター)など

細菌性腸炎には、細菌を退治する薬剤である抗菌薬(=抗生物質)が有効です。

抗菌薬を必要とする場合は、血便(血性下痢)がみられたり、重症感(表)を認めた場合であり、医師が総合的に判断します。

 

重症サイン(Red flag)

血圧低下、悪寒戦慄 → 菌血症を疑う場合

脱水、ショック状態 → 入院加療が必要な場合

免疫不全状態

合併症リスクが高い場合(50歳以上、人工血管・人工弁・人工関節など)

 

また、海外渡航から帰ってきた患者さんでは、コレラ赤痢、腸チフスなどを疑う必要があります。この二つの細菌性腸炎にも抗菌薬投与が考慮されます。

急性下痢症における、抗菌薬(=抗生物質)の適正使用とは?

症状があれば即抗菌薬投与ではなく、上記のウイルス性腸炎と細菌性腸炎の鑑別をして、必要十分な抗菌薬治療をすることが「適正使用」です。

アトピー性皮膚炎(かゆみのある乾燥性湿疹)の治療の基本はステロイド軟膏です。
しかし数十年前から“恐いくすり”というイメージができあがり、処方しても患者さんはなかなか十分量を塗ってくれません。
すると効果が十分でないので「ステロイド軟膏は効かない」と思い込み、ここから悪循環がはじまって、アトピービジネス(アトピー性皮膚炎患者相手に詐欺行為に近い治療を行う業者)や民間療法の泥沼にはまってしまいます。
現在、一部の重症例を除いて、約9割のアトピー性皮膚炎患者さんはステロイド軟膏でコントロールできることがわかっています。
ステロイド軟膏に関する不安・疑問を少しでも減らすべく、ここに多い質問を書き出し、小児科医の私の意見も添えましたのでご参照ください。

Q. 「ステロイド」とはどんな薬ですか?

A. 人の体内で造られる「ステロイドホルモン」をお手本に、その作用を治療に応用する目的で開発・合成された薬です。

腎臓の上にある小さな臓器「副腎」で作られる副腎皮質ホルモンの一つ「糖質コルチコイド」には免疫抑制作用、血管収縮作用、抗炎症作用などがあり、これがお手本です。

アレルギー疾患に対しては「抗炎症作用」を期待して広く用いられています。皮膚の炎症(アトピー性皮膚炎)にはステロイド軟膏、気道の炎症(気管支喘息)には吸入ステロイド、鼻粘膜の炎症(アレルギー性鼻炎)にはステロイド点鼻が主役です。


Q. ステロイド軟膏はこわい薬ですか?

A. 正しく使えば、良い薬です。

皮膚疾患の治療において、これほど頼りになる薬は他にありません。効く薬には副作用もあるのがふつうで、逆に副作用のないの薬はあまり効かないと言ってもよいでしょう。医者にはこれを使いこなす“さじ加減”が求められます(適正使用)。

この質問は「ハサミは危ない道具ですか?」という質問に似ています。ハサミは日常生活に不可欠の便利な道具ですが、刃物であることに変わりなく、使い方を間違えれば凶器になり得ます。「ステロイド軟膏は怖いから使わない」という考えは「ハサミは怖いから使わない」というのと同じかもしれません。


Q. アトピー性皮膚炎にステロイド軟膏は必要ですか?

A. はい。

アトピー性皮膚炎で皮膚が赤くなったり、ジュクジュクしたり、かゆみが出るのは皮膚表面で炎症が起こっているためであり、ステロイド軟膏にはこの炎症を鎮める作用(抗炎症作用)があります。同様の効果のある他薬はプロトピック軟膏のみです(2歳以上)。

ステロイド軟膏にはたくさんの種類がありますが、炎症を抑える強さにより5段階に分類されており、実際には皮膚からの吸収率を考慮して複数の軟膏を使い分けます。


I群)Strongest:デルモベート

II群)Very strong:アンテベート、マイザー、ネリゾナ、パンデル

III群)Strong:エクラー、メサデルム、リンデロンVリドメックス

IV群)Medium:ロコイド、アルメタ、キンダベート

V群)Weak:プレドニン(眼軟膏)


当院での基本的な使い分けは、皮膚の薄さと吸収度を考慮し、
・顔と首はロコイド(IV群)
・体と手足はリンデロンV(III群)
・頭皮はリドメックスローション(III群)
・目の周りはプレドニン眼軟膏(V群)
とし、治療への反応を観察しながらアレンジしています。


(注意!)ステロイド軟膏は皮膚の炎症を治しますが、炎症を起こしやすい乾燥肌まで治すことはできません炎症が落ち着いたらゆっくりと保湿剤に置き換えて炎症が再燃するのをずっと予防する必要があります
 

Q. ステロイド軟膏は一度使うとやめられなくなりますか?
A. 重症度によります。
ちなみに当院で治療した赤ちゃん(軽症〜中等症の一部)では半年後に9割がやめられています。

当院ではかゆみを伴う乳児湿疹(≒アトピー性皮膚炎)に対して、積極的にステロイド軟膏で治療しています。通院を続けてしっかり治療した赤ちゃんは約9割で通院を卒業、つまりステロイド軟膏をやめられて保湿剤中心のケアに落ち着いています。

残りの1割は、通院が途切れた詳細不明例や、当院で使う強さの軟膏ではコントロールしきれない中等症~重症例ため皮膚科専門医へ誘導・紹介した例です。

皮膚科専門医によると、大人ではさらに強力な軟膏療法を行ってもコントロールできない重症例が約5%存在し、近年、分子標的薬が使用されはじめました。


Q. ステロイド軟膏をやめると“リバウンド”が起きますか?

A. ステロイド軟膏をやめると湿疹が悪化することがありますが、これを“リバウンド”と医学的には呼びません。

湿疹・アトピー性皮膚炎は慢性の病気であり、症状が落ち着いているように見えても、程度の差はあれ、炎症のくすぶりがずっと続いています。
自己判断で不適切に塗るのをやめたために、病気が再び勢いを増して湿疹が悪化しただけなので、ステロイドを使ったからひどくなったわけではありません


Q. ステロイド軟膏を塗り続けると皮膚に蓄積しますか?

A. 蓄積することはありません。

仮に皮膚や体の中に薬が蓄積すると仮定すると、軟膏の効果が続くはずです。
でも塗るのをやめると湿疹は悪化することを皆さん経験していると思われ、実際にはそうではないことをご存知のはずです。


Q. ステロイド軟膏を塗った場所に日光が当たるとダメですか?
A. 問題ありません。

ステロイド軟膏を塗った後に日光に当たると強い色素沈着が起こるという現象(いわゆる“ステロイド焼け”)に医学的根拠はありません。また、ステロイド軟膏により色素沈着が生じることを示した医学論文も存在しません。

Q. ステロイド軟膏の副作用について教えてください。
A. ステロイド軟膏の副作用は塗った場所、すなわち皮膚に出ます。不適切に長期使用していると、細胞増殖抑制作用により皮膚が薄く弱くなります。

よく話題になる全身性副作用は、基本的に全身投与(飲み薬や注射)の場合です。

ステロイド軟膏による副作用

ステロイド全身投与による副作用

(皮膚)皮膚萎縮、毛細血管拡張、酒皶様皮膚炎、色素脱失、多毛、ニキビ、皮膚の真菌感染症、皮膚線条、等

(皮膚以外)緑内障

易感染性、骨粗鬆症、糖尿病、消化性潰瘍、血栓症、満月様顔貌・中心性肥満、動脈硬化・高脂血症、高血圧症、白内障・緑内障、副腎不全、ニキビ、大腿骨頭壊死、等

 

皮膚萎縮】(高齢者で多い)
(strong以上を数ヶ月毎日塗布で注意)

・皮膚が薄く弱くなります(傷つきやすくなります)。


毛細血管拡張】(中高年で多い)
(strong以上を数ヶ月毎日塗布で注意)

・皮膚の毛細血管が目立ち、透けて見えたり、周囲と比べて赤く見えるようになります。

・顔に出るといわゆる“赤ら顔”。その初期症状は、出たり消えたりする赤み(潮紅発作)で、温度差な
どの軽い刺激で顔が赤くなりますので、この症状が見られたら要注意です。


酒さ様皮膚炎】(中年女性で多い)
(strongでは数ヶ月、very strongでは1ヶ月毎日塗布で注意)

・顔面に皮膚萎縮・毛細血管拡張・ざ瘡(=ニキビ)様発疹がそろって生じたものです。


多毛】(子どもに多い
(手足にstrong以上を数ヶ月毎日塗布で注意)

・ステロイドの男性ホルモン作用によります。大人にはほとんど見られません。


皮膚線条】(思春期に多い

・皮膚の亀裂による線条。皮膚が急速に引き延ばされることで、真皮のコラーゲン・弾力線維に亀裂が入ることにより生じます。

※ ステロイド軟膏の副作用以外にも、体が急に成長する時期、急に体重が増えたとき、妊娠したとき(妊娠線として有名)などにも出現します。


緑内障】(全年齢で起こり得ます)

・目の周りにステロイド軟膏を毎日長期に塗ると、副作用として眼圧が上がる「緑内障」の発症リスクがあります。軽症の場合は無症状ですが、重症では失明に至ることが報告されています。
・体質により、眼圧が上がりやすい人(responder)と上がりにくい人(non-responder)がいるようです。子どもの発症報告は多くはありませんが、大人より眼圧が上昇しやすいため、注意が必要です。

・当院では一番弱いweakからはじめ、治療効果が乏しいときはmediumに変更し、毎日塗る期間は1~2週間に限定し、その後は減量(間欠塗布)しています。
 

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