カテゴリ: 赤ちゃん

“赤ちゃんでべそ”(医学的には「臍ヘルニア」)の膨らみ・大きさが2cm以上を目安に、綿球圧迫療法を提案しています。
処置(
固定と交換)は医師が行います。


<圧迫固定の実際>

① 綿球で圧迫;

・でべそ部分(ヘルニア嚢)を押して凹ませます。
・おへその奥に触れる穴(ヘルニア門)に綿球をあてがい、お腹の中に反転するように綿球を押し込みます。

② フィルムで圧迫固定;
・綿球の上から透明なフィルム(サージンフィルム)を貼り付けて圧迫固定します。


上記を行った後、1週間後再診を基本とし、落ちつくまで数ヶ月間、通院していただきます。
フィルムは防水仕様なので入浴はOKです。 

受診前日夜入浴前に剥がし、臍部を洗浄し清潔にしてください。
フィルム貼付部位がかぶれて皮膚の発赤が目立つ場合は外用薬(ワセリンなど)を塗布し、赤みが引くまで再固定は延期しますので、電話でご相談ください。
綿球圧迫療法中に、ふだんと違い変にぐずったり、圧迫部位とその周辺が変色したら、電話でご相談ください。  

赤ちゃんの皮膚が黄色っぽい ・・・黄疸

 「黄疸」とは、皮膚の色が黄色くなることです。皮膚だけでなく白目が黄色くなるので目立ちます。強い・弱いの違いはありますが黄疸はすべての赤ちゃん(生後1ヶ月までの新生児)に見られる現象です。これは「生理的黄疸」と呼ばれており、生後3~4日頃から目立ち始め、約2週間で自然に消えていきます。

 また、母乳栄養の赤ちゃんでは生理的黄疸が長引く傾向があります。これを「母乳性黄疸」と呼びます。それも生後6週間には消えていきます。

 これらの黄疸は、機嫌が良く、食欲もあり、生後1週間頃がピークであとは徐々に薄くなっていく印象があれば心配ありません。様子を見て良いでしょう。

 希ながら、黄疸の裏に病気が隠れていることもあります。

 「大人の黄疸=肝臓の病気」というイメージがありますが、赤ちゃんの病的黄疸の原因は実に様々です。

 一番多い原因は生理的黄疸が強めに出た場合です。他に血液型不適合(有名なRh式以外にも、ABO式不適合もあります)、感染症、生まれつきの代謝異常などの病気のこともあります。

 また、産科に入院中は問題なかったけれど、退院してからだんだん黄疸が目立ってくるパターンもあります。

黄疸+元気がない」「黄疸+うんちが白っぽい」場合は重い病気が隠れていることがありますので、早めに小児科を受診して下さい。うんちの色については、現在母子手帳にカラースケールが載っています。

 余談ですが、幼児期に「皮膚が黄色い」と心配されて受診なさる方が時々います。たいてい「柑皮症」(医学名はカロチン血症)といってミカン、カボチャ、にんじんなどの黄色い食べ物をたくさん食べた結果黄色く見える現象です。他に海苔やトマトも原因になります。「黄疸」との違いは、白目が黄色くならないことです。微妙なときは血液検査で確認します。


アザ

 赤ちゃんの皮膚を全身くまなく観察すると、小さなアザ・シミがたいてい見つかります。
 おでこから鼻にかけての淡い赤アザは「サーモン・パッチ」と呼ばれ、病的ではありません。後述の「ウンナ母斑」同様、生理的なものです。

 それ以外の、生まれてから形・色・大きさの変化のないアザは小児科よりは皮膚科へ相談した方が良いと思います。その分野のレーザー治療は日進月歩で治療適応もかわっていくようなので。


だんだん盛り上がってくるブツブツした赤い斑点 ・・・イチゴ状血管腫

 生まれたときはそこに何もないか、少し色素が抜けて白っぽいこともあります。それが生後2週頃から赤みを帯びてきて、生後2~3ヶ月頃には急速に増大し(4ヶ月検診で結構見かけます)、赤くて表面がブツブツしているので「イチゴ状血管腫」という名前が付いています。生後6ヶ月~1歳頃に増大傾向は止まり、1歳以降は消退し始め、6~7歳で自然に消えていきます。

 という経過をたどるので、基本的に治療は必要ありません。

 ただし、何事にも例外はあるもので、大きさが巨大なとき、場所が良くないとき(目の回り、張力のかかる部位)などでは治療対象となる場合があります。皮膚科に相談してください。


うなじに赤い斑点が・・・ウンナ母斑

 前述の「サーモンパッチ」のある赤ちゃんのうなじを見てみると、たいていそこにも赤い斑点がいくつか見られます。

 これを医学用語で「ウンナ母斑」と言います。別名「ストークマーク(stork mark)」とも言い、コウノトリのが赤ちゃんをくわえて運んできた印と欧米では考えられてきました。なんだか、夢のある話ですね。

 赤ちゃんの約30%に見られます。そのまま様子を見ていると徐々に薄くなっていきますがサーモンパッチより消えにくく、大人になっても残っていることがあるようです。まあ、髪の毛で隠れてしまう場所なので審美上問題になることは少ないようですが。


日本人なら誰にもある蒙古斑

 言わずと知れたお尻の青あざ。日本人は誰でも(どんな美人でも、ハンサムでも)乳幼児期に持っていました。意外なことに、白人の1~20%、黒人の80~90%にも認められるそうです。

 4~5歳頃までに自然に消えます。当然、治療は必要ありません。しかし、異所性蒙古斑(お尻、背中以外の場所にある少し青みが濃い蒙古斑)は消えにくく、10歳時に残っているものは生涯残るとのことです。

※ 蒙古斑に対してレーザー治療を行っている医療機関がありますが、治療適応・治療時期に対する考え方は様々で、まだ確立された治療方針はないようです。ですから、受診した医療機関により「治療の必要なし」「いや、治療の必要あり」と異なった説明を受ける可能性があります。


赤ちゃんニキビ(新生児ざ瘡

 生後1ヶ月頃の顔の湿疹で一番多いのは「赤ちゃんニキビ」(医学用語では「新生児ざ瘡」)です。

 生後まもなくから2~3ヶ月頃に、額やほっぺたに多く見られるやや赤いブツブツです。かゆくはなさそう。

 赤ちゃんの肌はみずみずしいイメージがありますが、生後2~3ヶ月くらいまではオイリーで思春期と似た状態であり、「ニキビ」と呼ばれています。

 赤ちゃんニキビを見つけたとき、お母さんに「顔を洗うとき石けんを使ってますか?」と聞くと「No」の返事がほとんど。

 ここまで書けばおわかりかと思いますが、対策は「油を落とすスキンケア」。

 つまり、沐浴の時に顔も石けんを使って洗うことです。高級な香料入の石けんはかえって皮膚に刺激になることがありますので普通のベビー石けんを使ってください。具体的には、石けんをお母さんの手にとりよく泡立たせて、指のお腹の柔らかいところを使って「なでるように」または「マッサージするように」やさしく赤ちゃんの顔を洗い、その後にお湯でよくすすぎます。すすぐときはガーゼなど柔らかい布を使ってもかまいません。

 これを繰り返せば徐々によくなってきます。

 ただし、赤みが強く炎症を起こしているとき、ジクジク液が出てきているときは小児科あるいは皮膚科を受診してください。ぬり薬が処方されることでしょう。

 他に顔のブツブツには「あせも」もありますが、対策は同じく皮膚を清潔に保つスキンケアが基本です。


頭皮のかさぶた(乳児脂漏性湿疹

 前項の「赤ちゃんニキビ」がひどくなってくると、眉毛、頭の前の方、耳などに黄色いカサブタ(油の固まり)ができてきます。これを「乳児脂漏性湿疹」といいます。生後3~4週頃から目立ち始め、3ヶ月を過ぎると軽快へ向かいます。

 対策はやはり油をとるスキンケア。入浴1時間前にオリーブオイル(あるいは白色ワセリン)をカサブタに塗っておいてふやけさせ、入浴時は石けんあるいはシャンプーを使って洗い、その後クシで少しずつ削ると改善してきます。


★ 乳児脂漏性湿疹とアトピー性皮膚炎との違い

 「赤ちゃんの湿疹=アトピー性皮膚炎?」と心配されるお母さんが多いので違いを説明しておきましょう。

 アトピー性皮膚炎では痒みが強いですが、脂漏性湿疹では無いかあっても軽度。3ヶ月を過ぎても湿疹が治らず、痒みを伴って皮膚の引っかき傷のような変化が出てきたらアトピー性皮膚炎を疑います。また、生後1~2ヶ月の赤ちゃんはお母さんの服に顔をこすりつて間接的に掻くことがあります。さらに耳の付け根が赤くなって切れてしまう「耳切れ」はアトピー性皮膚炎に特徴的です。


★ 乳児アトピー性皮膚炎と食物アレルギーの関係

 生後数ヶ月で顔面頭部の湿疹が出てきてかゆがる様子があれば、積極的な治療が必要です。

 現在、食物アレルギーの原因は乳児期のアトピー性皮膚炎であることがわかっています。食物アレルギーの原因は、お母さんがたくさん食べたからではなく、赤ちゃんがたくさん食べたからでもなく、皮膚からアレルゲンが侵入を繰り返すためです(経皮感作)。

 湿疹がある場所は皮膚バリアが破壊されており、そこから目に見えない大きさのアレルゲンが侵入し、それを排除しようと免疫システムが働く・・・これを日々繰り返すことにより食物アレルギー体質が作られるのです。

 それを予防するには皮膚バリアを回復すること、すなわち湿疹をしっかり治療してすべすべの肌を取り戻し、維持することが大切です。

 乳児湿疹は「これくらいは大丈夫かな・・・」と放置せず、当院にご相談ください。

 アレルギー専門医の院長の他に、当院には小児アレルギーエデュケーター(PAE)の看護師も在籍しており、治療と看護の両面からサポートします。

赤ちゃんがいる部屋の冷暖房

 赤ちゃんのいる部屋の適温は以下の通り;

・夏:24~26(本によっては26~28)℃
・冬:20~22(本によっては18~22)℃

 まあ、調べれば調べるほど微妙に数字が異なりきりがありません。言い方を変えると、

・夏は25℃くらいで外気との差が5℃以内に、
・冬は20℃くらいで湿度を40~60%に保つ、


といったところでしょうか。さらに注意点を2つ。

・エアコン・扇風機を使う場合は、吹き出す風が赤ちゃんに直接当たらないように
・室温を考えるときは赤ちゃんの目線で。赤ちゃんのフトンかベッドに寝ており、大人の感じる高さの室温と異なります。



日焼け止めの上手な利用法は?

 日焼け止めは、紫外線吸収剤(塗り心地がよいが皮膚に刺激を与えやすい)と紫外線散乱剤(比較的皮膚への負担が少ない)の2種類に分けられます。 

 赤ちゃん用としては紫外線散乱剤で無香料・無着色・アルコールフリーがお勧め。 生後6ヶ月から使用可能、肌表面が乳白色になるくらい塗ると効果的です。 2~3時間以上経過したら効果が落ちてきますので塗り直しましょう。

 アトピー性皮膚炎などの治療として軟膏・クリームを塗っている場合は、治療薬・保湿剤の上に重ね塗りするのが基本です。 


日焼け止めの強さについては以下をご参照ください。 

SPF)紫外線B波の防止効果を示し、数値が大きいほど効果も大。
PA)紫外線A波の防止効果を示し、+が多いほど効果も大。 

  (SPF)     (PA)    (目安) 

 10前後   +     散歩や買い物などの外出 

 20前後   ++   公園での外遊びなど 

 30前後   +++   海水浴や登山などのアウトドア、スポーツ観戦など


 ご存知のように、おへそはお母さんと赤ちゃんをつないでいた「臍帯」(さいたい)の名残で、太い血管が通っていました。役割を終える過程でいろいろなトラブルに出会います。

 まずは正常なおへその経過を知りましょう。生まれたとき臍帯は1~2cmの太さの管状のものですが、赤ちゃん側に少し残してハサミで切られます。その後乾燥して小さくなっていき、生後7~10日でとれるのが普通です。とれた跡はしばらくジクジクしていますが、その後7~10日で乾いてすっきりします。おへそが乾くまでは自宅でアルコール消毒をするよう指導している産科が多いようです。


 次によくあるおへそのトラブルについて。

・おへそとその周りが赤くなって腫れている

・出血や分泌物がダラダラ続く

・塊が残り、ジクジクしている


・・・こんな時は小児科に相談して下さい。どんな病気があるかというと;


臍炎

 おへそに病原菌が入り、増殖して炎症を起こした状態です。治療は赤いだけならぬり薬を、周囲も腫れている場合はおへそを消毒し、抗生物質(菌をやっつける薬)を飲んでもらいます。それでもよくならず、熱も出てくるようなら入院して治療が必要になることも希ながらあります。


臍出血

 元々血管が通っていた場所ですから少しの出血は必ずしも異常ではありません。量が多く、長引くときは血が止まりにくい病気が隠れていることがあります。小児科に相談して下さい。


臍肉芽腫

 臍帯の脱落後に臍帯の一部が残っていて塊が作られ、いつもジュクジュクしている状態です。生後数週間しても治まる気配が無い場合は受診して下さい。薬で固めたり、大きい塊が残っている場合は病院に紹介して処置してもらいます。

 ただし、処置後もジュクジュクが続くときは希ながら解剖学的異常(卵黄嚢菅遺残尿膜管遺残など)が隠れていることがありますので再度診察を受けて下さい。


★ 赤ちゃんの出べそは病気?

 臍帯がとれたときは普通のおへそだったのに、それから数週間後(つまり生まれて1ヶ月)頃からおへそが膨らんで目立つことがあります。いつも膨らんでいるわけではなく、泣いたときやいきんでお腹に力が入ったときに目立ちます。

 これは「臍ヘルニア」と呼ばれるものです。小児期以降の「いわゆるでべそ」とはちょっと異なりますが、まあ「赤ちゃんのでべそ」と言ってもいいでしょう。

 原因はおへその周りの筋肉の発達が未熟でまだ閉じきっていないことです。腹圧がかかるとそのすき間から皮膚の下に腸が出てきてしまうのです。

 おへそが膨らんでいても赤ちゃんは泣き続けるわけではないので痛くはなさそうです(足の付け根がふくれる鼡径ヘルニアは痛がってずっと泣き続けます)。膨らんだおへそを触ってみると柔らかく、もんでみると“グジュグジュ”した感覚。そのうちに小さくなって無くなってしまうこともあります。これは皮膚の下に出てきていた腸管がお腹の中に戻ったのです。

 予定日より早く小さく産まれた赤ちゃん(早期産児・低出生体重児)に多く見られる傾向があります。満期産の成熟児では数%に頻度です。ほとんどが1歳までに目立たなくなってしまいますが、1歳になっても目立つようなら手術も検討します。ただし、膨らみが2cm以上で大きいときは下記の「綿球圧迫法」で早く治ることが期待できますので、生後3ヶ月くらいまでに小児科あるいは小児外科に一度相談されると良いでしょう。


<臍ヘルニア処置の変遷>

 昔はコインをおへそに当てて、ヒモで固定していた時期があったそうです。しかし、おへそがかぶれて炎症を起こすトラブルが多かったため、私が小児科医になった約30年前は「何もしないで様子観察」する時代でした。

 ところが10年くらい前から、一部の小児科医が「やはり固定した方が早く治る、皮膚のたるみも目立たない」と以前とは少し異なる固定法を採用し始めました。名付けて「綿球圧迫法」。これは綿球を出っ張るおへそにあてがい、テープで固定する方法です。自然経過より早く治り、皮膚のたるみを残さないことがメリットです。固定するテープの質がよくなり、かぶれにくくなったおかげでこの方法が可能になりました。

 当院でもご希望があれば「綿球圧迫法」を行っていますので、ご相談ください。ただし、1週間に一度のペースで数ヶ月通院していただく必要があります。

頭の中の出血、脳へのダメージが心配になります。やること・すべきことの順番は、

1.意識があるかを確認

2.ぶつけ方症状を確認


緊急性がある場合
→ 以下の一つでも当てはまるときは、救急車搬送

意識がない、ボーッとして反応が悪い

けいれんしている

おう吐が止まらない

歩き方が変・うまく話すことができない

・ガマンできないほど頭が痛い

出血が止まらない(傷が大きい、深い)


緊急受診すべきかどうか迷う場合

 → 以下の一つでも当てはまるときは、頭部CT検査可能な病院の救急外来へ

チェックポイント1頭のぶつけ方

高いところ2歳未満は90cm2歳以上は150cm)からの転落

・交通事故などの高速スピードで移動中(あるいは移動する物)に激しく頭をぶつけた

・誰かに突き倒された

チェックポイント2症状・様子

・(一瞬でも、一過性でも)意識消失があった

・強い頭痛乳児では強いグズリ

・おでこ以外のコブ(2歳未満)

・さわってわかる頭蓋骨骨折(凹みや溝)

様子がおかしい(眠りがち、元気がない、変におとなしい、遊ばない)

・パンダのように目の周りが紫色(眼底骨折の可能性)

鼻や耳から血や血液混じりの液体が出ている


緊急性がない場合
→ 小児科開業医を受診(当日あるいは翌日)

・足が地面や床についた状態からの転倒や、歩行中に止まっている物へ頭をぶつけた

・すぐ泣き、その後ふだんと変わりない

・頭をぶつけて4~6時間後も症状らしきものがない


* 頭をぶつけた直後は元気でも、最低48時間は慎重に様子観察してください。まれに、数日後~数ヶ月後に症状が出てくることもあります。 

 赤ちゃんは生後5-6ヶ月から何かを見つけるとまず触って確かめたくなります。さらに口に入れて確かめるクセがあり、時にはそれを飲み込んでしまうことがあります。

 赤ちゃんの口は最大直径4cmまで入ります。4cmはトイレットペーパーの芯とほぼ同じであり、確認の際に利用できます(下図「政府広報オンライン」より引用)。

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まわりの大人が赤ちゃんの口に入る大きさのものを手の届くところに置かないよう注意する必要があります。 

では、「子どもの手の届くところ」とは?

これは「手の届く範囲+台の高さ」で考えます。目安は以下の通りです;

1歳:約90cm

2歳:約110cm

3歳:約120cm

(下図も「政府広報オンライン」より)
 

スクリーンショット 2022-03-21 16.09.09


もし飲み込んでしまった場合は、喉につまって窒息する可能性があります。

この場合は、

・のどを気にする仕草

・突然咳込む、ゼーゼー息が苦しそう、

・顔色が悪い

等の症状が出ます。
そして完全に喉を塞いだ場合、

・3-4分で顔色が悪くなり、

・5-6分で呼吸が止まり、

命に関わります。
気づいたら救急車を呼ぶと共に、以下の応急処置
をしましょう。


<子どもが何かをのどにつまらせたときの応急処置>

  

背中を叩く1歳未満         

下図のように赤ちゃんを片腕にのせもう一方の手の平の付け根で背中をしっかり叩く(5-6回を1セット)。   

スクリーンショット 2022-03-21 16.09.24

腹部突き上げ法1歳以上

子どもの背後から腕を回して片方の手を握りこぶしにし、こどものみぞおちの下にあて、もう片方の手をその上に当てて両手で腹部を上に圧迫、これを反復。  

スクリーンショット 2022-03-21 16.09.33
★ 参考:
窒息事故から子どもを守る(政府インターネットテレビ)
気道異物除去の手順(日本医師会)


<飲み込むと危険なもの>

のどや気管ににつまらなくても、飲み込むと有害なものがあります;

(例)ボタン電池・パック型液体洗剤・漂白剤・除光液・灯油・くすり・タバコ・・・

危険かどうかの判断は難しいため、ただちに以下に電話相談してください;

小児救急電話相談#8000

日本中毒情報センター中毒110番(相談は無料ですが通話料がかかります)

 つくば029-852-9999(9~21時対応)

 大阪 072-727-2499(24時間対応)

 

<タバコの誤飲>

気づいた時点で上記「中毒110番」か下記に電話してください;
タバコ専用相談電話」;072-726-9922(24時間対応、テープ情報提供)

口の中のタバコの葉を取り除き吐かせるのが原則(水や牛乳は飲ませないでください)ですが、タバコが浸かった水を飲んだとき、2cm以上飲み込んだとき、症状(吐き気や嘔吐、ぐったりしている、顔色が悪い)等の場合はすぐに救急外来のある病院を受診してください。

「タマ」がない! → 【停留睾丸】

 タマ(睾丸)がふくろ(陰嚢)に降りていない状態です。片方のことが多いです。まず、病院へ行く前に、いつも無いのか、時々無いのか確認して下さい。お父さんに聞くとわかりますが、寒いときとか緊張しているときはふくろはキュッと縮んでタマも上がりますので。おむつを替えるときに触らなくても、お風呂に入っているときに触れれば、それは「移動性睾丸」ですので心配いりません。

 でも、いつも触れないとき、あるいはたまにしか触れないときは生後6ヶ月くらいを目安に小児科あるいは泌尿器科へ相談して下さい。一般的に1歳までに降りてこないときは手術を検討するようです(医療機関により多少異なります)。

 タマ(睾丸)は将来子どもの元になる精子を作る大切な臓器であり、別名「精巣」とも呼ばれます。

 精巣なぜ陰嚢の中でぶら下がっているか? 

 それは高温を避けるためです。タマがお腹の中にあると温度として約2℃高い環境にさらされることになり、これが長期間続くと精巣の変化が進み、将来男性不妊症の原因になると考えられています。また、思春期以降の腫瘍発生の頻度が高くなります。

 タマは涼しいところでブラブラしているのが好きなのです。


ふくろ(陰嚢)が妙に大きく膨らんでいる → 【陰のう水腫】

 袋の中に水がたまった状態です。90%以上は1歳前に自然に消失しますので治療の必要はありません。1歳を過ぎても消えない場合や、1歳以降で膨らんできた場合は手術の対象になることがあるようです。

 昔は、パンパンに膨れた場合に針を刺して水を抜いた時代があったそうですが、今はやりません。


おちんちんの横が時々腫れている → 【鼡径ヘルニア】

 おちんちんの横の体内の膜構造に穴が開いていて、腹圧がかかるとそこから腸が出てきて腫れているように見えます。本人は気にしていないときもありますが、痛がって泣きやまないこともあります。赤ちゃんが急に機嫌が悪くなって泣きやまず病院を受診した場合、小児科医は必ずこれをチェックします。

 頻度は1~4%。小さく産まれた赤ちゃんでは出やすい傾向があります。

 鼡径ヘルニアは「嵌頓」の危険があります。これは、膜に開いている穴が何かの拍子にキュッと締まって狭くなり、出ていた腸が元に戻れなくなった状態です。血流が悪くなりますので、放っておくと腸の組織が死んでしまいます(これを壊死と言います)。膨らんでいるところが紫色に変色してくるのが特徴です。

 つまり、

 子どもが泣き止まない+おちんちんの横が腫れていて紫色 → 緊急事態!

 このため、鼡径ヘルニアは「見つけたときが手術のタイミング」ですが、手術の危険性など諸条件を考慮し、嵌頓を起こさない限り、生後3ヶ月以降に手術を行う施設が多いようです。

 同じ「ヘルニア」の名前が付く「臍ヘルニア」(でべそ)はこの嵌頓の危険性がゼロに近いので、何もしないのが基本です。

 なお、鼡径ヘルニアは女の赤ちゃんにも起こります。出てくる内容は腸の他に「卵巣」のこともあり(卵巣ヘルニア)、元に戻そうとむやみにいじり回すのは卵巣を傷つける可能性がありますのでやってはいけません。早めに小児外科医の診察を受ける必要があります。

げっぷが出ない

 生後2~3ヶ月までの赤ちゃんは哺乳の際、空気も一緒に飲み込みやすい傾向があります。つまり、下手なんですね。お母さんのおっぱいから直接哺乳した方が、哺乳瓶を使った時より空気を飲みません。

 げっぷをさせようとしてもなかなか出ないときどうしたらよいか・・・

 育児書を何冊か読んでみたところ、様々なことが書いてあります。出るまでひたすらがんばる、ある程度粘ってダメだったらあきらめる、等々。

 最近の本では5~10分間経っても出ないときは無理にさせる必要はなく、一旦ベッドに寝かしましょう、そのときは側臥位(横を向かせて寝かせる)をとらせましょう、とする傾向がありました。横を向かせるのは乳を吐いたときにのどに詰まらせないためです。

 まあ、「これが正解!」というのは無いので、トライ&エラーでやってみるしかなさそうです。


吐きやすい赤ちゃん

 とにかく赤ちゃんは吐きやすい。病気でなくても、健康児でも吐きやすい。

 ある本には病気でなくても80%の赤ちゃんが嘔吐すると書いてありました。

 原因は胃の入口(噴門といいます)の締まりが悪いためです。そのため胃から食道・喉に逆流しやすいのです。吐くきっかけとしては、おっぱいの飲み過ぎ、げっぷが十分出なかった、服や姿勢により腹圧がかかった、など様々です。

 吐き方にもいろいろあります;

 「溢乳」・・・気がつくと口の端からダラダラとたれている。

 「吐乳」・・・ケポッ、あるいはカポッと吐く。

 「噴水状嘔吐」・・・勢いよく噴水状に吐く。

 吐いていても機嫌良く哺乳でき、体重が増えていればまず心配ありません。

 「嘔吐+機嫌が悪い」ときは病気が隠れている可能性がありますので、小児科医の診察を受けて下さい。

 何回吐いたら異常か?と聞かれても答えに困りますが、新生児期に哺乳のたびに噴水状嘔吐を繰り返す場合は「肥厚性幽門狭窄症」という病気が疑われます(→小児科受診)。

 また、吐いたものの色が黄色~緑、あるいは赤い場合も病気が隠れている可能性があります(→小児科受診)。

ミルク量はこれでいいの?

 これは母乳栄養ではなく、人工栄養の場合の話です。

 ミルクでは飲んだ量がわかってしまうので、一度気になり出すとその数字に振り回されてしまうお母さんがたまにいます。特にまじめで完璧主義の方が陥りやすい・・・。

 また、ミルクの缶に「生後何ヶ月で○○ccが適当です」と書いてあるのがいけません。この量はあくまでも参考程度とし基本は自律哺乳(欲しがるときに好きなだけ飲ませる)でよいのです。飲む量は赤ちゃんによって異なります。機嫌良く過ごし、体重増加が良ければ問題ありません。

 自宅用に精密な体重計は買わないで下さいね。以前、哺乳量と毎日の体重をパソコンに入力し、グラフにして受診された御両親にびっくりした経験があります。


 ただ、飲む量が数字の上で減ってくるとさすがに心配になります。実は、健康な赤ちゃんでもこれはあり得る話なのです。

 そのからくりは・・・赤ちゃんは生後1ヶ月まではあげればあげるだけ飲んでしまいます。ところが、生後1ヶ月を過ぎる頃から満腹感を感じるようになり「もういらない」と哺乳瓶を離してしまうことがあります。哺乳量は頭打ちとなり、むしろ減ってしまうこともたまにあります。この場合も、機嫌と体重増加がよければまず心配ありません。

 当然、機嫌が悪くて様子がヘンだったら小児科に相談して下さい。


 かつて「粉ミルクで育てると赤ちゃんは太る」といわれたことがありましたが、現在の粉ミルクは以前と比べて薄く作って飲ませるものとなっており、指定された割合で調乳すれば粉ミルクが理由で太ることはないとされています。


しゃっくりが多い

 しゃっくりとは胸とお腹の境界にある「横隔膜」のけいれん(ぴくつき)です。赤ちゃんではよくみられます。一過性であれば病気と考える必要はありません。

 特に哺乳直後に多い傾向があります。きっかけとしては、がっつき飲み、適温でないミルクなど。

 対策としては、ゆっくり哺乳させる、途中でげっぷをさせる、もう一度おっぱいを飲ませる、等々。

 成長につれて自然に消えていきます。

便が出にくい

赤ちゃんの排便習慣

 母乳栄養の赤ちゃんは生後2週間までは「哺乳→排便」という反射があり、ゆるいうんちを1日10回以上します。それ以降は1日1回とか、2~3日に1回へ減っていきます(本によっては生後1ヶ月までは1日2~5回との記載あり)。つまり直腸にうんちをためる機能が発達し、「うんちのまとめ出し」ができるようになるのです。

 生後3ヶ月頃までの母乳栄養の赤ちゃんののうんちはゆるめで、これが理想的というか本来のヒトの赤ちゃんのうんちです。育児用ミルク(ほぼ牛乳)を飲んでいる赤ちゃんのうんちはやや硬めで匂いも違いますね。


“便秘”とは

 一般に、便秘というのは排便回数が少ないだけではなく、便が硬いために排便に苦痛を伴う場合をいいます。

 離乳食開始前の赤ちゃんは「うんちは硬くないけど回数が少ない」ことが多く、これを大人の便秘と区別して「乳児排便困難症」と呼ぶことがあります。わたしは「赤ちゃん便秘」と呼んでます。お腹がパンパンに張ったりすることが無く、機嫌・体重増加が良ければその赤ちゃんのペースと言っても良いくらいです。でも何日も出なくていきんでいる様子があると、少し助けてあげたくなります。
 方法は以下の通り:


腸の動きを刺激するオリゴ糖を与える:薬店で売っているマルツエキス(麦芽糖)、処方薬のラクツロース(当院ではピアーレ®)など。

②「綿棒浣腸」:肛門に綿棒を入れて刺激してうんちを出す方法。

 具体的には綿棒の先にオリーブオイルかワセリンを塗って痛くないようにし、赤ちゃんの肛門にそっと挿入します。深さは綿棒の頭の部分が隠れる程度までにして下さい。そこでゆっくり小さな円を描くように綿棒を動かしたり、しばらく入れたまま様子を見たりしていると、ムニュムニュとうんちが出てきます。強く刺激するより時間をかけて刺激する方が効果的です。

本物の浣腸(イチジク浣腸の類):

 5日間以上うんちが出ないときの最終手段です。1日出ないからすぐ浣腸、というパターンを繰り返していると、かえって腸が怠けて働かなくなります。一方、うんちを5日間以上ためていると水分がどんどん吸収されて硬さが増すし、直腸が膨らみきった風船のように収縮力を無くしてしまう可能性があるので積極的に出す必要があります。 


いつもゼロゼロ・ゼーゼーしている

 いつもゼーゼーしていて息づかいが荒い場合は小児科医の診察を受けてください。喉頭軟化症などの生まれつきの病気が疑われます。

 ふだんは聞こえないけれど、授乳直後に一過性に聞こえるゼーゼーは、様子をみているといつの間にか消えてしまうことがほとんどです。

 これは、母乳やミルクのネバネバが喉の奥に絡まっているため聞こえるゼーゼーで、しばらくすると食道に流れて音も消えてしまいます。


向き癖

 「いつも同じ方ばかりを向いていて、頭の形が変形してきて心配で・・・」という相談は乳児検診ついでに聞かれることが多いです。

 まず「筋性斜頸」がないかどうか診察します。首にしこりを触れ、違う方向へ動かそうとしても抵抗があれば「筋性斜頸」です。抵抗なく違う方向へ首を動かせれば単なる「向き癖」です。


筋性斜頸】

 これは赤ちゃんが生まれるとき、産道を通る際に圧迫された結果、首の筋肉内に出血し、その後血腫(血のかたまり)になり筋肉が硬く縮まったものです。生後1週間頃から気づき、3週間くらいまで大きくなります。10ヶ月~1歳くらいまでにほとんど自然に治るので治療の必要はありません。ただし、生後6ヶ月を過ぎても改善傾向が見られない場合は整形外科へ相談することになっています。

 昔はマッサージとか、「徒手筋切術」といってエイヤッと引っ張って硬くなった筋肉を無理矢理伸ばした処置をしたそうです(痛そう・・・)。


向き癖】

 首が据わり、お座りができる頃になると徐々に目立たなくなっていきます、と本には書いてありますが、子どもの頭を触ると幼児期にも結構変形が残っている例に出会います。まあ、髪の毛で隠れるので目立ちませんが。

 さて、「向き癖」の対処法は・・・

・向きにくい側からあやす、授乳する。

・ドーナツ枕、砂嚢、巻タオルで調節する。

と本には書いてありますが、なかなかうまくいかないんですよねえ。


うつぶせ寝と仰向け寝

 うつぶせ寝と仰向け寝のどちらがよいのか?

 歴史的には頭の形が良くなるという理由でうつぶせ寝が推奨された時代もありましたが、現在は仰向け寝の方が安全とされています。

 その理由は、うつぶせ寝は乳児突然死症候群(Sudden Infant Death Syndrome:略してSIDS)の危険が増すと統計的に結論されたからです。

 日本における大規模な調査の結果、SIDSは「うつぶせ寝」「人工栄養」「母親あるいは同居者の喫煙」により3~5倍多く発生することがわかりました。

 皆様、ご注意下さい。

 でも、赤ちゃんはうつ伏せの方がよく寝てくれる傾向があります。仰向けではなかなか寝てくれない場合は硬めのマットを選び、6ヶ月未満の乳児では目を離すときは仰向けにするのが現実的です。



赤ちゃんの目やに

 目やにの相談も多いです。

 これは、赤ちゃんの涙の通り道が発達途上であることと、自分で涙を拭けないので乾けば目やにになってしまうからです。

 目と鼻はつながっているのをご存じですか?

 涙は上まぶたの外側半分に位置する涙腺から出てきます。そして下まぶたの内側の穴(涙点:鏡で見ることができます)から涙嚢を経由し鼻涙管という管を通って鼻の中に流れていきます。

 泣いたときに鼻水が出るのはこのためです。

 また、大人でも風邪を引いて鼻づまりがひどいと涙目になりますよね。

 奇人変人の瞬間芸で、鼻から入れた牛乳を目から出すのを見たことがありませんか?

 あれは鼻涙管を逆行させるという荒技だったのです。

 クリーム色の目やにがちょっと付くぐらいでしたら拭き取って様子を見て良いでしょう。大量の緑~黄色の目やにがある場合は眼科か小児科を受診しましょう。

 病気として多いのは:


鼻涙管閉鎖】

 前述の鼻涙管がつまっている状態です。涙が流れないためいつも涙目で、乾くとべっとりと目やにが・・・。「涙嚢炎」(涙嚢に炎症が起こること)を併発すると色の付いた汚い感じの目やにになります。次項の結膜炎とは白目が赤くならないことで区別可能です。

 眼科あるいは小児科を受診し、抗生物質入りの目薬と涙嚢マッサージで治療しますが、鼻涙管閉鎖状態が改善しないときは眼科で開通処置を行うことがあります。


結膜炎】

 「目やに+白目が赤くなる」状態です。ウイルス感染症に伴う場合は両目のことが多いです。眼科あるいは小児科を受診して下さい。


逆さまつげ】

 逆さまつげが目を刺激して目やにの原因になることがあります。実は逆さまつげは赤ちゃんの1/4~1/2に見られ、珍しいものではありません。

 赤ちゃんのまつげはまだ柔らかく角膜を傷つけて視力障害を起こすことはまれとされています。また、ぺちゃんこの鼻柱が高くなるにつれ、自然に治る傾向が強いため逆さまつげそのものに対して治療はしません。

 ただし、1歳頃になるとまつげもしっかりした剛毛になり角膜を傷つける可能性が出てくるので治療対象になります(→眼科受診)。


※ 処方される塗り薬は、少量なら目や口に入っても問題ありません。軟膏はほとんどがワセリンでできており、ワセリンの融点(溶ける温度)は約40℃なので、体内で溶けて吸収されることはふつうありません。


【おむつかぶれ】

汗やオシッコでふやけた肌に、ウンチの消化酵素やアンモニアが刺激となり赤くなったりブツブツができたりします。こまめにオムツを替え、ぬれタオルで押し拭きし、十分に乾かしましょう(ドライヤーは禁)。一旦赤くなってしまうと悪循環でなかなかよくなりません。毎回洗うのは大変ですから、霧吹きにぬるま湯を入れてシュッシュッと吹き付けて半洗いするのが手軽でお勧めです。

治療薬は、赤いだけなら保護作用のあるサトウザルベ、ただれて痛みがある(オムツ替えで拭くと泣く)場合は紫雲膏、それでも解決せず炎症が強い場合はエキザルベロコイド等ステロイド外用薬を使用します。

また、長引いてブツブツが目立つ場合は「カンジダ」というカビが悪さしている可能性あります。効く薬が違うので診察を受けましょう。

⇨ 処方される薬:サトウザルベ、エキザルベ、ロコイド、紫雲膏など

 

※ ベビーパウダー(シッカロール)はお勧めしません:汗で固まって逆に肌を刺激したり、吸い込むと肺炎を起こすことがあります。

サトウザルベは「蒸れてふやけて赤くなっている皮膚」に効きます。首まわりや手首足首のくびれ、脇の下、鼡径部(足の付け根)がしっとり赤くなっているときは使用できます。


【乳児脂漏性湿疹~赤ちゃんニキビ】

脂漏性湿疹というと“高齢者の皮膚の病気”というイメージがあるかもしれませんが、生後数ヶ月までの赤ちゃんにも頭部・顔面の脂っぽい湿疹が出ることがあります。

特に頭皮は黄色いフケ・カサブタがこびりつきます。ひどいときは入浴前にワセリンベビーオイル、オリーブ油を塗ってふやかし、入浴中にクシで少しずつ削りましょう。

顔の「Tゾーン」に脂っぽいブツブツができたら「赤ちゃんニキビ」です。顔も石けんを泡立ててマッサージするように洗いましょう。その後保湿ケアも忘れずに(脂っぽいから必要ないというわけではありません)。

⇨ 処方される薬:アズノール軟膏など

【乳児湿疹~アトピー性皮膚炎】

乳児期の湿疹はすべて乳児湿疹と呼びます。医師にとっては便利な病名で、その中にはあせもやかぶれ、湿疹などがごちゃごちゃに入っており、年齢でくくっているだけです。当然、様々な要因が考えられますが、一過性で消えれば問題ありません。
しかしかゆみを伴うと長引く傾向があります。「乾燥肌+かゆみ+赤み」がそろうとアトピー性皮膚炎に準じたステロイド軟膏による治療が必要になります。

 2000年代に入り、食物アレルギーやほかのアレルギー疾患の主な原因が、バリアの壊れた皮膚から繰り返しアレルゲンが侵入する現象(経皮感作)であることがわかってきました。乳児期の湿疹をしっかり治療することで食物アレルギーなどほかのアレルギー疾患を予防できる可能性が出てきたのです。これは画期的!

 当院ではかゆみを伴う乳児湿疹~アトピー性皮膚炎の治療に力を入れており、3~6ヶ月の通院で約8割の患者さんが卒業(定期通院終了)できています。

【あせも(汗疹)】

 赤いブツブツで、正体は汗腺がつまって炎症を起こしたもの。ぬれタオルで押し拭きして塩分を残さないようにしてください。軽いものは、スキンケアや昼間のシャワー追加、環境温度の調節などで改善しますが、掻き壊すと「とびひ」になることもあります。

⇨ 処方される薬:カラミンローション、アズノール軟膏など。


【とびひ(伝染性膿痂疹)】

 虫刺され痕や傷ついてバリア機能が落ちた肌に細菌(黄色ブドウ球菌・溶連菌)が繁殖し、ジクジクしたり、水ぶくれができて皮が剥けたり、カサブタがついたりします。スキンケア&抗生物質軟膏の塗布(広範囲の場合は+抗生物質内服)で治療します。

 保育園・幼稚園へ行っているお子さんは、治療開始しジクジクした部位をガーゼなどで覆えば登園できます。ただし治癒(皮疹が乾く)まではプールは控え、必要な場合は受診して医師に治癒確認をしてもらいましょう。

 なお、乾燥肌・アトピー性皮膚炎があると繰り返す傾向がありますので、そちらのスキンケア・治療も必要になります。

⇨ 処方される薬:

(ぬり薬)フシジンレオ軟膏、アクロマイシン軟膏、アクアチムクリーム

(飲み薬)セフゾン、ホスミシン、メイアクトなど。

日々のスキンケアがトラブル知らずの皮膚を造ります

 スキンケアとは「清潔&保湿」(汚れを落とし保湿剤で保護)すること。バリア機能が低下した乾燥肌に汚れ(=刺激物)が付くとトラブルの元です。胎脂がとれたあとから毎日のスキンケアを習慣づけましょう。もちろん、今からでもOK。 


赤ちゃんの皮膚の特徴 ~薄い・多汗・皮脂が少ない~

□ 皮膚の厚さ:大人の角質層の厚さは20ミクロン(ラップ1枚程度)、赤ちゃんはその半分しかありません。

□ 多汗傾向:赤ちゃんの皮膚の面積は大人の1/6程度、しかし汗腺の数は同じなので汗っかきです。

□ 乾燥肌:「赤ちゃんの肌はすべすべ」と思いがちですが、現実はそうでもなさそう。生後2ヶ月まではお母さんからもらったホルモンの関係で顔面・頭部の皮脂分泌量が多く(思春期並み)、それ以降は大人の1/3まで減少して乾燥しがち。


赤ちゃんの沐浴・入浴の注意点

□ お湯の温度

 ぬるめの38~39℃(本によっては37~38℃とも)が適切です。体を温めるより汚れを落とすことが目的なのです。

□ 湯船につかる時間

 3~5分が目安です。赤い斑点が出てくるようなら温めすぎと思ってください。

□ お勧めの洗浄剤:

 ベビー用石けん(泡タイプがお勧め)&ベビー用シャンプーを使用しましょう。「無添加」より「ベビー用」がベター。頭皮は全身用ボディーソープより、やはり頭皮用のシャンプーの方が皮脂が落ちます。

 近年、「沐浴剤は必要ない」という論調が増えてきました。「化学薬品を溶かしたお湯に赤ちゃんの体をつけ込むのは肌によくない」との考えです。

□ 洗い方

 ガーゼでゴシゴシこすらず、石けんをよく泡立ててお母さんの手でやさしくなでるように洗いましょう。顔や頭は皮脂の分泌が多いので泡でマッサージするように洗いましょう。

□ シャワーを使おう:

 すすぎはシャワーで念入りにしてください。ゆるめにすれば顔にかかっても大丈夫です(ずっと羊水の中に入っていたのですから)。

□ ふき方のコツ:

 入浴後はバスタオルで押し拭き(軽くおさえるように水分を拭き取る)しましょう。ゴシゴシこすらないように。

□ 出たらすばやく保湿ケア

 水分をふき取った後に保湿ケアをしましょう。しっとり感を保湿剤で封じ込めるイメージで。

※ 夏の暑い季節は、昼間たくさん汗をかいたらシャワー追加もOK。ただし、皮脂の落ちすぎを避けるため、石けんを使うのは1日1回までにしましょう。

※ 洗うときも拭くときも塗るときも 首や手足のくびれ部分、指の間も忘れずにケアしましょう。


保湿ケアの実際

保湿剤は油分+水分の乳液・クリームタイプが基本ですが、冬は軟膏、夏はローションという使い分けも可。

□ 保湿剤をたっぷり手に取り、体の各部分に点々と置き、赤ちゃんの肌に薄い膜を張るイメージで塗り広げましょう。熱心にすり込む・塗り込むのは赤ちゃんの肌に逆効果です。

□ 口の周りが荒れやすい赤ちゃんは食事前後の保湿ケアを習慣づけましょう。食前にはワセリンで膜を作り、食後はぬれタオル・ぬれティッシュで押し拭きをしましょう(乾いたものやティッシュでこすると肌が傷つき荒れます)。

※ 市販の保湿剤の選び方:「無添加」より「ベビー用」「低刺激性」がベター、かつ食物成分が入っているものは避けましょう。


日常生活での注意点

□ 薄着を心がけましょう:

 赤ちゃんの服は生後3ヶ月以降なら大人より1枚少なくするのが基本。赤ちゃんの背中に手を入れて汗をかいていたら暑がっている証拠です。調節してください。

□ ベビーカーは温室

 ベビーカーはアスファルトからの照り返し熱をまともに受け、内部温度は大人が感じる気温より3~5℃も高いそうです。ほろで日陰を作るなど工夫をしましょう。

□ 日焼け対策

 基本は直射日光を服で避ける工夫をすることですが、日焼け止め(生後6ヶ月以降)を使うときは保湿剤の上から重ね塗りし、数時間毎に塗り直しましょう。

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