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子どもがゼーゼーすると喘息が心配になりますが、(ゼーゼー)=(喘息)とは限りません。とくに乳幼児ではウイルス感染症による気管支炎の方が多いです。
■ 喘息の診断
私が喘息を疑う症状・所見は以下の通り(①~③)です;
① 風邪を引くとゼーゼーしやすい。
・風邪の原因の9割はウイルス感染症と言われています。ウイルスの種類により、気管支炎を起こしやすいタイプがあります。例えばRSウイルスやヒトメタニューモウイルスは乳幼児に気管支炎を起こしやすいウイルスです。
・一方で、風邪を引くとゼーゼーしやすいお子さんがいます。兄弟が順番に同じ風邪を引いたのに、この子だけゼーゼー苦しそうになる・・・この場合は風邪をきっかけに喘息発作が出た可能性が高くなります。
・しかし外見上も、診察所見でもウイルス性気管支炎によるゼーゼーと、喘息によるゼーゼーの区別は困難です。
② そのゼーゼーが医療機関で行う「吸入」治療で改善した経験がある。
・ウイルス性気管支炎によるゼーゼーと、喘息発作のゼーゼーを区別する方法として、吸入治療が挙げられます。気管支拡張薬を吸入することによりゼーゼー/呼吸困難が改善すれば喘息発作、変化がなければウイルス性気管支炎です。
・吸入治療が有効なら、処方する内服薬も抗喘息薬を選択します。
③ ふだんから咳が出やすい、とくに運動時・はしゃいだとき。
・喘息児は運動時、それも息づかいが長時間荒くなるタイプの運動(ジョギングやマラソン)は苦手です。乾いた空気が起動を出入りすると、気管支の筋肉がキュッと締まって細くなる結果、息が苦しくなるイメージです。
・冷たい空気(夏のエアコン)を吸ったり、ホコリっぽい場所で活動したり(掃除)しても咳が出やすいです。
・このように喘息児はいろいろな刺激で咳が出やすい傾向があります。これを「気道過敏性」と呼びます。喘息の病態は「気道炎症」とされており、喘息発作以外の時でも炎症のくすぶりがあるため、咳が出やすいのです。
以上をまとめると、
・ゼーゼーを繰り返す児が、
・気管支拡張剤吸入で明らかに改善
した場合は喘息と診断し、抗喘息薬を処方しています。
■ 喘息の治療
風邪を引いたときだけ喘息発作が出るタイプでは、その時だけしっかり気管支拡張剤で治療し、
ひと月に複数回喘息発作が出て苦しい思いをする、ふだんから咳が出やすくて体育の授業に支障がある、等の場合は定期的な予防治療を開始します。
予防治療は以下の二つが代表的です;
① 抗ロイコトリエン薬(内服薬):オノン/プランルカスト、キプレス/モンテルカスト
② 吸入ステロイド薬(吸入薬):キュバール、フルタイド、アドエア
吸入薬は正しい方法で行わないと効果が発揮できないため、当院では処方した次の受診日に吸入手技チェック(キュバール、フルタイド/アドエアディスカス)を行っています。
一度始めた予防治療は最低3ヶ月継続します。その間の様子を観察し、風邪を引いても苦しくならない、はしゃいでも咳が気にならないなど、発作が抑制できていれば減量中止を検討します。
小学生以上では症状だけで判断せず、検査を行い、その結果で判断しています。
検査とは、
① 肺機能検査(フロー・ボリューム曲線):息を大きく吸ったり吐いたりして肺活量他を計測
→ 末梢気道が狭くなっているかどうかがわかります。
② 呼気一酸化窒素(FeNO)検査:息を一定速度でゆっくり吸ったり吐いたり、吐いた息の中の一酸化窒素を計測
→ 気道炎症があると一酸化窒素値が高くなります。
なぜ検査を併用するかというと、小学生以上では自分で喘息発作が起こらないようにコントロールできるようになる、あるいは無意識のうちにコントロールするようになるからです。
そのため、親にはわからなくなるので「最近調子いい」「もう治った」と勘違いしがち。
運動していて「これ以上走ると苦しくなりそうだからやめておこう」と自覚することを繰り返していると、スポーツをしていても楽しくなくなる、あるいは実力を発揮できなくなることが考えられます。
私は定期治療の積極的でない小学生に対して「フ〜ン、サッカーをやってるんだ、すごいね。この吸入をしっかり続けるともっと実力を発揮できると思うよ」と説明しています。
さらに発作回避状態が続くと、自分で運動をセーブしている感覚もなくなり、「運動が苦手」というさみしい状態でガマンすることもあり得ます。
■ 喘息の予後
小児喘息の6-7割は「寛解」が期待できます。これは日常生活では無治療で発作なしで生活できる状態です。
しっかり治療して発作を予防すると、「寛解」率が1割ほどアップすることが期待できます。
しかし大人になってから激しい運動をしたり、ホコリまみれの部屋や職場で生活するようになると、また喘息発作が顔を出す可能性があります。
それから、タバコを吸うと喘息が明らかに悪化しますので、手を出さないようにしてください。
定期的に正しく吸入できているかどうか、チェックしましょう。
今日は9点中、何点でしたか?
※ 「エアゾール缶」とは吸入薬本体のことです。
【準備】
□ キュバールは1本に100回分入っています。今、使用中のキュバールが何回目なのか、確認しましょう。
□ エアゾール缶とアダプターをしっかり接続します。エアロチャンバーとエアゾール缶を接続します(アルミ容器の底が上になるようにセットします)。
【実施】
□ 背筋をしっかり伸ばします。
□ 空気が漏れないよう、マスクをしっかり顔に当てます。
□ エアゾール缶を1プッシュします。
□ エアロチャンバーのフローインジケーターの動き(パタパタ)で呼吸回数を5~6回、数えます。
※ 数えにくい場合は、15秒くらいすき間ができないよう当てておきます。
※ 音が鳴るのは、呼吸が速すぎるサインです。
【片付け】
□ 吸入後、のどについた薬を流すために3回うがいをします(できない乳幼児は、飲水・飲食・歯磨きでも可)。
□ エアロチャンバーを1週間に1回洗い(食器用洗剤でOK)、静電気が発生しないよう自然乾燥させます。
定期的に正しく吸入できているかどうか、チェックしましょう。
今日は11点中、何点でしたか?
※ 「ディスカス」とは吸入薬本体の円盤のことです。
【準備】
□ 十分に吸入する力があるか、練習用トレーナーで確認します。「プー」 という音が1秒以上鳴てばOKです。
□ ディスカスの残量をカウンターで確認します。
□カバーを開け、レバーを止まるところまで引きます(カチリと音が出る)。この時、薬剤がセットされます。
【実施】
□ ディスカスを水平に保ち持ちます。
□ 背筋をしっかり伸ばします。
□ ディスカスに口をつける前に、息を吐き出します(ディスカスに息を吹き込まないよう注意)。
□ 息を吐いた後、ディスカスの吸入口に口をつけ、速く深く(2秒ほど)吸入します。
□ そのまま3~5秒ほど息を止めます。
□ 息止めをした後は、鼻から息を吐はき、これで終わりです。
【片付け】
□ ディスカスのカバーを閉じます。
□ 吸入後、のどについた薬を流すために3回うがいをします(できない乳幼児は、飲水・飲食・歯磨きでも可)。