カテゴリ: 育児

 この問題を扱ったNHKの番組(ハートネットTV、NHKスペシャル、あさいち、等)や書籍を見つけましたので、ポイントを引用・抜粋させていただきます。とくに「親子の約束を作るコツ」はすべての親に知っておいて欲しい内容だと思いました。
 そして子どもを律するには「親自身が自分を律する覚悟」が必要であることをヒシヒシと感じました。

<基礎知識>

▢ 子どものスマホ所有の実態(2025年)
・スマホ所有率が過半数を超えるのは小学5年生。
・スマホを持ち始める時期は、女子平均9.9歳、男子平均10.4歳、最も多いのは12歳。

▢ ネット依存の実態
・内訳:
(7〜8割)ゲーム
(2〜3割)SNS、掲示板、動画サイト
・ゲーム依存患者は世界の人口の、男性:3%、女性:1%
・日本では100万人以上いると推定される。

▢ オンラインゲームの特徴と依存しやすい要因
・インターネットを通じて、複数の人が同時に参加するゲーム。
・メッセージ・会話機能がある。
・深夜でも誰かがいてつながれる。

▢ ネット依存の徴候
・使用時間がかなり長くなった。
・夜中まで続ける。
・朝起きられない。
・他のことに興味を示さない。
・絶えず気にする。
・注意すると激しく怒る。
・使用時間や内容などについてウソをつく。
・ネットにより成績が下がった。

▢ 脳で何が起きているのか
1.ドーパミン活性異常(覚醒剤などの薬物依存症と同じメカニズム
・ゲームをしていると楽しい
 → ドーパミン(幸福感・やる気の元)が放出される
  ⇩
・長時間ゲームを続ける
 → (線条体にある)ドーパミン受容体活性が低下する
   受容体数も減少し、やがて枯渇する
   ⇩
・幸せ気分が憂うつ気分に変わる
 → 本来のドーパミン効果が得られない状態
2.ブドウ糖代謝が低下する
3.セロトニン受容体機能低下

▢ ゲーム依存は脳の発達にブレーキをかける(川島隆太氏、東北大学)
・ヒトがものを考えたり記憶したり相手とコミュニケーションしたりする働きは脳の前頭葉の前頭前野が担当している。
・前頭前野は0歳〜5歳までの間に急速に発達し、その後穏やかな発達ペースとなり、思春期に再び爆発的に発達する。つまり2回、発達のチャンスがある。
・思春期の子どもを対象にゲームの頻度と前頭前野容積の増加量を3年間追跡調査したところ、ゲームをする頻度が高いと増加量が少ないことが判明した。これは神経細胞間をつなぐネットワークが弱いまま3年間が過ぎてしまったことを意味し、非常に深刻な問題である。

<診療>

▢ ゲーム依存の定義・診断(WHO、2019年)
1.ゲームの使用時間や頻度をコントロールできない。
2.ほかの楽しみよりもゲームが一番。
3.ゲームにより社会生活に著しく支障が出る。
 → 上記3つの項目が12か月続く場合に「ゲーム依存」と診断する。

▢ “社会生活に支障”の内容(アンケート調査)
(76%)朝起床できない
(60%)昼夜逆転
(59%)欠席・欠勤
(51%)物にあたる・壊す
(49%)食事を摂らない
(33%)ひきこもり
(32%)睡眠時間が短い
(27%)家族に対する暴力
(15%)過剰な課金

▢ “やめられない”要因
① ゲームで得られる快感はアルコール・薬物に匹敵する。
② 常にアップデートされ終わりがない。
③ ガチャ(課金システム)
★ ゲーム依存にはADHD(神経発達症の一つ)と伴うケースが存在する。

▢ 治療対象
・ネットの過剰使用+明確な体や心の問題(※1)
・ネットの過剰使用+明確な家族的・社会的問題(※2)

※1)低栄養、体力低下、骨密度低下、睡眠障害、感情をコントロールできない、うつ状態
※2)家族関係の悪化、遅刻、不登校、成績不振、退学

▢ 診療内容
・診察
(身体検査)血液検査、肺機能、骨密度、体力測定、等
(心理検査)ネット依存傾向(※)、精神疾患、等
・カウンセリング
・デイケア
・入院:危機的な状況の時・・・ネットから離れられない、過剰な課金、健康状態の異常、家族関係の極端な悪化、等

※)インターネット依存度テスト(IAT)

▢ 認知行動療法
・問題が発生しているにもかかわらずゲームを続けているのは、考え方に問題があると捉え、その考え方の歪みを補正する手法。
(例)「ゲームのメリットとデメリットを一緒に考えよう」「今までゲームに何時間費やしてきたか、その時間を勉強に費やしたら将来どんなことができるか」

▢ 治療のゴール
・インターネットとうまく付き合えるようになる。
・依存しているコンテンツだけをやめる。
・利用時間を減らす。
★ アルコールや薬物依存では完全にやめ続けることが治療の目標となるが、ゲームの場合はそれは困難なため、「減らす」という現実的なゴールを設定することになる。ゲーム依存患者は子どもが多いので「やめる」という選択は非常に難しく、まずは減らすというソフトランディングを選択する。

▢ 思春期例の問題点・注意点
・ゲームの制限・禁止は回復につながらない。
・ゲーム依存は氷山の一角で、その下には本人が悩んでいる家庭や学校、社会生活の問題が隠れている。
・子どもはゲームをすることにより安らぎを得ている面がある。
・ゲームをしている・していないではなく、ゲーム依存の原因となることに目を向けることが大切。
・思春期の子どもは反抗期でもあり、両価性(アンビバレンツ)状態。ゲームをやりたくて仕方ないけど、やめられない現状に不安を持っていることも多い。本人が困っている要素(睡眠問題・食欲不振など)をきっかけにして相談に乗り受診につなげる。最初は抵抗するかもしれないが、何回も何回もくり返し話していくことが大切。本人が怒っているときは避け、話を聞いてくれそうなときにわかりやすく説明していく。
・治療の結果、ゲーム使用時間が少しでも減れば(例:10時間 → 8時間)、それを評価することが大切。

<対策>

▢ ゲーム・ネットについての教育
・ 現代社会に必要不可欠のものでもあり、禁止するのではなく適切な使い方を教えるべき。
・いつから教えるのが適切か、乳幼児にスマホで動画を見せること、簡単なゲームで遊ばせることが良いのかどうかに関しては、明確な研究結果は存在しない。
・親としては連絡や居場所の確認目的にスマホを考えるが、子ども自身はスマホを持ったらいろいろやりたいことがある。ゲームをやりたい、動画を見たい、友達とLINEでやり取りをしたい、など子どもの要望を聞いた上で、それぞれのアプリの可否や条件など、家庭内ルールを話し合う。
・子どもが社会のルールを覚え始めるのが2歳頃、しかし小学校高学年になると、親に反抗したり、素直に学べなくなる傾向が出てくる。以上を考慮すると、5〜10歳くらいの間に、ゲーム・ネットの適切な使い方を教え始め、約束・ルールを作り、守らせることが望ましい

▢ 機種選定の際の注意点
・親が管理することが難しい場合は、安心機能が搭載されているキッズケータイがお勧め(カメラやメッセージ機能あり)。
・親の古いスマホを渡すことになったら、可能なら初期化して子どものアカウントを作成すべし(親の決済情報などは消しておく)。子どものアカウントなら、年齢に併せたコンテンツが表示される。

▢ スマホを使う時間・時間帯の設定
・時間:小学生では1日30分〜1時間が目安
(例)「平日は30分、休日前は1時間、休日は2時間」
   「30分使ったら10分休む」
・時間帯:
(例)
「夜は21時まで、塾の日は30分延長」
   「寝る1時間前までに終了」
・アプリごとの制限:
(例)「1回30分のゲームなら1日2ゲーム」
   「ゲーム40分、動画20分」
・Wi-Fiルータで端末ごとの時間設定も可能。

▢ スマホを使う場所と保管場所の設定
・自室への持ち込みNG、リビングのみ利用OK。
・寝るときはリビングで充電する。

▢ ペナルティも一緒に決めてリビングに貼っておく
・ルールを破ったときのペナルティ:
(例)「翌日の使用時間を30分減らす」
   「3回破ったら1日使用禁止」
・完成したルールはリビングや冷蔵庫に貼っておき、いつでも確認できるようにする。
・学年が変わるときや習い事の時間が変わるときは見直すタイミング。
・子どもの成長に合わせて「もう自分でコントロールできそう」と感じたら、ルールを弛めてITスキルを上げられるよう誘導する。

▢ 親子の「約束」を作るコツ
1.「約束」についての話し合いは、機器を買う前、サービスを使い始める前がよい。

2.所有権は大人に。
3.上手な「おしまい」を身につける。
(例)子どもが見通しをつけられるように、タイマーを利用したり、上手におしまいできたら報酬を与えたり。
4.「やるべきことをやってからゲーム」はうまくいかないことが多い。
(例)宿題が終わったらゲームしていいよ、とすると、宿題に取りかかってもゲームのことが頭から離れず進まないのでいつまで経っても宿題が終わらない。
5.ゲームができる時間は短すぎる設定にしない。
(例)15分だけ・・・では短すぎてトラブルの素になる。
6.次にいつ使えるのかを明確にする。
(例)「今日はおしまいだけど、明日になればまた〇時間できるよ」と言うと納得しやすい。
7.ゲームの時間を「交換可能財」にする。
(例)お手伝いをしたらゲームの時間が少し増えるなど。
8.機器を取りあげる方法をひと工夫。
・物理的に奪う方法はトラブルの元。
(例)Wi-Fi が時間で自動的に切れるなど。
9.子どもはネットから離れていたいときもある。
(例)LINEのやり取りから離れられず長時間使用してしまう子どもがいる、苦痛でも離れられないタイプもいる。時間を区切るルールを作り、やり取りから離脱するきっかけを作ってあげる。
10.睡眠時間の確保。
・生活リズムを崩すような時間設定はしない。
(例)「ちゃんと寝た方がゲームの能力がアップするよ」などとアドバイス。

▢ ネットのルール作りのポイント
・親が買い、子どもには貸し出す。
・使用する時間・場所・金額を指定する。
(例)午後10時まで、居間でのみ使用し自分の部屋に持ち込まない、等
・決めたら書面にして目につくところに貼る。
・親子が一緒にルールを作る。
親も守る

▢ 他の依存対策のポイント
・子どもだけにルールを押しつけるのではなく、家族みんなでルールを守るべし。
親がゲームに興味を持つと、子どもが教えてくれる。親も子どもの考えを理解しやすくなる。親の方がゲームが上手、ネットに詳しいと、子どもは親を尊敬して言うことを聞きやすくなる。

▢ 具体的な項目
・夫婦で異なる考えだと子どもは混乱するため、家族みんなで話し合い、決める。
・ペアレンタルコントロール機能のフィルタリングなどの設定で時間制限を。
・家庭内のルール作り(時間と場所)や親からの声かけでリテラシーを育てる。
★ 子どもにスマホを与えると、子どもは親のアカウントを探し、誰をフォローしているのか、どんな投稿と返信をしているのかを見る可能性があることを覚悟する。大人はSNSで子どものお手本になるような振る舞いを心がけるべし。

▢ 使いすぎ予防のポイントは「日中活動の充実」
・日中活動が充実していると、前述の約束事のポイントを子どもに守らせることが簡単になる。
ゲームよりリアルワールドが楽しければゲーム依存は発生しないはずだが、現実は逆になりがち。
・日中活動を子ども本人が楽しみにしていたら、子どもは朝起きようと努力する。逆に言えば、日中活動がつらい、怖い、不安、退屈な状況では、生活リズムが崩れやすくなる。

▢ 無駄に見える時間も必要
・ストレスのかかる活動、努力が必要な活動をしたあと、ストレスを発散できる楽しい時間(ゲームに夢中)や、一見無駄に見えるボーッとした時間(スマホをなんとなく眺める)は必要なもの。
・ボーッとした時間もストレス発散に役立っているが、それを理解できない親と葛藤を引き起こしがち。
例)試験前・発表会前などストレスが高まる。熱中して取り組む活動は維持される。
   ⇩
  この無駄に見える時間が長くなる。
   ⇩
  睡眠時間が短くなる。
   ⇩
  昼間眠くて、努力ができなくなる。熱中して取り組めなくなる。
   ⇩
  親がイライラする。

★ ニール・イヤール氏(作家・コンサルタント)のコメント
・スマホやアプリ開発の裏側を知る
✓ 魅力的で習慣性が高いものが「優秀なスマホ製品」とされる。
✓ 習慣的に使用してもらうためにユーザーの不快な感情(退屈、孤独、疲労、不確実性、ストレス、不安、等)に入り込み「気晴らし」を展開させる。
✓ 不確実性で変わりやすいものにヒトは注意深くなり集中する傾向があり、それがあると習慣化しやすい。予測可能なものには誰も興味を示さない。

★ 樋口進氏(久里浜病院名誉院長)のコメント
・ゲームに勝ち続けると依存性はなくなるが、ときどき負けるという不確実性があるため習慣化する。
・仲間とやり取りしていて、自分だけ置いてきぼりになることを皆とても怖がる。イヤだけど見ざるを得ない状況になっていることが多い。
・依存患者に「見るのはいいけど、書き込むのはしばらくやめよう」と提案している。書き込むと必ず反応を見たくなるため。
・依存性のあるゲームやネットは、早い年齢から始めると依存のリスクが高くなることがわかっている。国がガイドラインを作成すべき時に来ている。
・スマホ・ネットを使わない時間を家族で設定・共有することを提案したい。
(例)夜の7〜8時は家族全員で使わない時間を作る( → 会話が増えるかもしれない)。

★ スティーブン・クレイン氏(スタンフォード大学 行動デザインラボ)の提案
・使いやすく便利に作られているスマホを自分で使いにくく楽しめないようにするくする工夫が必要。
・人間は3つの要素「やりたい・できる・きっかけ」がそろったときに行動する。
1.「きっかけ」を減らす:
(例)お休みモードをオンにして通知が来ないようにする。
2.「できる」を減らす:
(例)パスワードは長いものにして保存しない( → 精神的な負担が増える)。指紋認証や顔認証も使わない。
3.「やりたい」を減らす:
(例)画面の色を変える(赤一色にするとずっと画面を見たくなくなる、白黒にすると魅力が半減する)。


<参考>
・「ゲーム・ネットの世界から離れられない子どもたち」(吉川徹著、合同出版)
・「思春期の「つながる気持ち」はどこへ行く?」(関正樹著、日本評論社)
・「子育て支援者応援チャンネル」(YouTube動画 by 木下直俊先生)
・「思春期 心と体の不調 ゲーム依存」(NHK-Eテレ きょう
の健康、2025年)
・「ゲームネット依存」(NHKサイエンスZERO、2022年)
・「
子どものスマホ、いつから持たせる?(AERA Kids+、2026.4.8)

<相談窓口>
エンジェルアイズHP
全国精神保健福祉センター(厚生労働省)
保健所検索(厚生労働省)

 子どもたちの心の問題を追及していると、生きることの基本に立ち返ります。それは、食事・運動・睡眠。いくら薬を使っても、この3つがボロボロだったら立て直せません。
NHKで睡眠障害を扱った番組を視聴したところ、わかりやすい説明だったので備忘録としてポイントを書き残しておきます。
 睡眠医学は、メラトニンやオレキシンという物質の発見で飛躍的に進歩し、それが治療薬の開発につながっています。しかし、子どもに使用できる薬は限られています。
 さらに一番最後に出てきた「子どもの睡眠障害の原因」には環境(塾やスマホ)と心の問題(悩み・ストレス)が挙げられており、これを紐解いていくには心理士の介入も必要になりそうです。私は漢方薬の内服を提案しています(子どもの睡眠の悩みに漢方を)。

▢ 睡眠・覚醒障害とは
・夜中の睡眠の質が悪い、量が足りない。
・寝不足により日中の活動に支障がある。
・約70種類の病気が含まれる。

▢ 睡眠不足と睡眠障害の違い
・睡眠不足:眠ない(睡眠習慣の問題)
・睡眠障害:眠ない(日常生活に困りごとがある状態)

▢ 患者さんの生の声

▶ ナルコレプシー1型:日中に過剰な眠気があり、夜はグッスリ眠れない病気。
・情動脱力発作(突然、体の力が抜けて倒れてしまう症状):感情の動きが大きいときに全身の力が一気に抜けてしまう。
・「倒れ方が気持ち悪い」と言われた。自分でこらえよう・戻そうとする動きも加わるので、バタッではなくガクガクガクッと倒れ込む。倒れたあと眠ってはいるけど耳は聞こえる。

▶ むずむず脚症候群:夕方から夜に欠けて足の不快感が悪化して睡眠の妨げになる病気
・足が気になって、ほてって眠れない。
・「脚の中に虫が這うような感じ」とか「じっとしていられない、マッサージし続けないといけない、じゃないと気持ち悪くていられない」
・脚のむずむずの不快感は、なぜか明け方くらいになるとちょっと症状が治まる。2〜3時くらいにはうとうとして少し眠れる。
・でも夜になると、また寝られない戦いをしなければならないとため息が出る。

▶ 睡眠・覚醒相後退障害:脳の体内時計のリズムが乱れて睡眠時間が後ろにずれる病気
・超夜型で、みんなが眠る0時頃になっても眠気が来ない、眠りたいのに眠れない。
・定時制高校に通うようになり、登校時間が自分のリズムに合うようになり、困りごとが解消した。
・社会全体が朝型の生活でまわっている、社会に合わせに行くのではなく、自分に合った生活リズムを見つけるという考え方も大切だと思う。

▢ 睡眠・覚醒障害の分類
1.不眠
・慢性不眠障害
・短期不眠障害、等
2.睡眠リズムの異常
・睡眠・覚醒相後退障害
・非24時間睡眠・覚醒リズム障害、等
3.過眠
・ナルコレプシー
・反復性過眠症、等
4.睡眠中の異常現象
・むずむず脚症候群
・睡眠時無呼吸症候群、等

▢ オレキシンの発見(1998年、柳沢正史)
・人の覚醒を促す脳内物質。
・ナルコレプシーの治療薬開発につながった。

▢ 子どもの睡眠問題
・日本国内の子どもの3〜4人に1人が睡眠問題を抱えている。
・寝付きが悪い、夜中に動く、朝目が覚めないなど睡眠問題で「ほぼ毎日困っている」親が約30%。

▢ 年齢による体内時計の変化
・幼児期〜学童期は朝型
・思春期〜20代は夜型に傾く
・中高年になると再び朝型へ

▢ 子どもの睡眠障害の原因
・体質:生まれつき寝るのが苦手、等
・環境:塾や習い事で多忙、スマホ・ゲーム、等
・心:悩みやストレス、等


<参考>
▢ フクチッチ「睡眠障害・前編/後編」(NHK・Eテレ、2025年)

 近年、よく耳にする言葉です。日本語訳は「愛着」ですが、専門家によると「愛着≠愛情」であり、愛着障害と愛情不足が区別されずに用いられて混乱している、とのこと。
 では、アタッチメントはどのような概念なのでしょう。NHKで取りあげられた番組(すくすく子育て、NHKスペシャル、あさいち、等)をいくつか視聴し、ポイントと感じた箇所を引用・抜粋させていただきます。

 「ウォッチ・ミー・プレイ」は衝撃的でしたね。いろんな育児番組や子育て啓蒙書に書かれている「子どもの“コッチ見て”行動、“私をかまって”行動」が5分間の観察だけで解決するなんて、驚きです。
 親が心がけたい声がけで登場した、3つのネガティブトーク「命令・質問・批判」を減らし、3つのポジティブトーク「ほめる・くり返す・行動を言葉にする」を増やす、この効果はマジック! 〜このスキルは親子関係にとどまらず、夫婦関係・友人関係・すべての人間関係に当てはまることだと思いました。実行するのはなかなか難しいけれど。
 海外で流行(?)している「アタッチメントスタイル」も興味深い。回避型・不安・安定型・・・私も質問票で自分のスタイルを確認してみましたが、思った通りの結果でした。


▢ アタッチメント(=愛着)とは
・特定の人との間にできる気持ちのつながり。
・不安をやわらげて安心したい、という本能的欲求。
・不安を感じたときに、自分を守ってくれる人に物理的にくっついて(近づいて)安心感を得る、身の安全を守る。
・不安を感じたときに“くっついて安心したい”気持ち。子どもが満たされ、親子関係も改善する。
・アタッチメントは信頼感・自己肯定感を育む。
・アタッチメントは一生涯にわたる幸せの形成に影響する。
・見知らぬ人では安心感を取り戻せない。
・自分を守ってくれる人との間にある気持ち的なつながりであり、誰でもいいというわけではない。
・保護されているという安心感を得たとき、外の世界を探索することができる。
・次の挑戦へとつながる。
・幼少期のアタッチメントは、その後の人間関係に影響する。

▢ アタッチメント理論(安心の輪)と注意点
・子どもは安心感があると、探索や挑戦ができる。
(子どもの気持ち)「見ていてね」
・不安になると養育者の元に戻ってくる。
(子どもの気持ち)「守ってね」「なぐさめてね」「気持ちを落ち着かせてね」
・養育者に抱かれて安心感を得る。
・再度探索に向かう。

★ 注意点:先回りに注意。不安と安心を繰り返し、不快にこたえてもらう経験が大切。

▢ 愛着障害
・「愛情不足」と同義ではなく、深刻な環境に置かれた子どもの危機的状況を専門家が診断するレベルの話。
・養育者との愛着形成がうまくいかず、子どもの情緒や対人関係に問題が生じること。

▢ 政策として「アタッチメント」を採用した日本政府
・「子ども大綱」(2023閣議決定)・・・子ども施策において、アタッチメントの重要性を打ち出した。
・「社会的養護を必要とするすべての子どもが、養育者との愛着関係を形成し、心身ともに健やかに養育される」

▢ 遠藤利彦先生(東京大学)の解説
 自分の気持ちを打ち明けて誰かから受け入れてもらえる、わかってもらえる、そして助けてもらえるという経験を積み重ねる中で、自分は愛してもらえる価値がある、人は信じていいんだという感覚をもう一回作り直すことができれば、その人、その個人というのは、その後生涯、健全に生きていける確率は高くなる。
 幸せの根幹に関わるものとしての自己信頼・他者信頼の重要性、その自己信頼・他者信頼に最も深く関わるアタッチメントに注目が集まっている。

▢ 理想の親とは?
温かみ+適切な指示が出せる親(難しい・・・)
・命令・質問・批判をやめ、ほめる・くり返す・行動を言葉にする。1日5分でOK、何歳から始めても遅いことはない。

▢ 温かく、適切な指示が出せる親になる4つの方法
“声かけ”の黄金ルール:3つのネガティブトーク「命令・質問・批判」を減らし、3つのポジティブトーク「ほめる・くり返す・行動を言葉にする」を増やす。
(命令)親が会話の主導権を握り、子どもは支配された気分になる。
(質問)否定(あるいは命令・批判)のニュアンスが含まれることが多く、大人が主導権を握ることになりがち。
(批判)子どもの自尊心を傷つけ摩擦を増やす。特に7歳以降は批判に敏感になる。
例)「宿題はやった?」・・・(早くやりなさい、まだやっていないなんてどういうこと)
(行動を言葉にする)親の注目が伝わる。
無視のスキル望ましくない行動には、怒らず無視してやり過ごす
伝わる確率7割アップの指示法
・適切な「禁止」の言い方:子どもの“行動”を批判するだけにとどめる。どうして欲しいか言った方が耳にも残る。
・適切な「命令」の言い方:中立的な声で、5秒おいて繰り返し3回まで言う。直接的命令は必要最低限に絞って使う(1日5回くらいまで)。絶対に聞いて欲しい場合はハッキリ伝え、選択肢を残さない。
・思春期は親は誘導するより見守るスタンスで、子どもがリードする関係性の方がよい。
例)進路の話題は親が誘導するより、子どもが持ちかけるタイミングを計る。時間の猶予がないときは、何かのついでではなく、話す時間をしっかりと作る・・・ハッキリ「明日の〇時から進路について話し合いたい」と伝える。
遊びの中で“ひたすら注目”ウォッチ・ミー・プレイ, “Watch me play!” by ジェニファー・ウェイクリン:心理療法士)⇩
親の感情をコントロール
・子どもがかんしゃくを起こしたら、イラッとさせる行動を起こして冷静に対応できなくなったら「シャーク・ミュージック」(映画「ジョーズ」でサメが登場するときの音楽)と客観的に捉える。
・「タイムアウト」という方法で、冷静になって何が起こったのかを考える。
例)家を出る、トイレに行く、目を閉じる、等

▢ “ Watch me play!” 〜家庭でのアタッチメントの実践
・世界の15か国で活用されているスキル(基本的に8歳まで)。
・「気持ちの安定・衝動的な行動が減る」と報告されている。
・1回5〜20分、子どもを自由に遊ばせ、養育者は側にいて注目するだけ。
・注目された子どもは“親との直接的なつながり”を感じることができる。
・すると子どもは(親を引きつけるために)戦う必要がなくなる。
・親から「注目される」と感情爆発が減り、親子関係も改善する。
・2〜3か月で効果が出やすい。

▢ Watch me play!を行うときのポイント
・子どもが自由に表現できるおもちゃを選ぶ。電池式のものはただ見ているだけで(時間が)過ぎてしまうので、シンプルで年齢相応のおもちゃが良い。
・この時間の主導権は子ども。親は誘導せず、遊びを言葉で表現する程度にとどめる。親が関心を寄せるだけで子どもは安心する。

▢ 厳しく叱ってしまったときの親子関係修復のコツ
厳しすぎるのも、弱すぎるのもNG
(厳しすぎる言い方)
「さっきの言い方は誤るけど、怒らせたのはあなたよ。ゲームをやめない際と言ったときにすぐに聞くべきだったのよ」
(弱すぎる言い方)
「ゴメンね、さっきの言い方はダメだったね、許してくれる? ゲームをしたいなら続けてもいいよ、もう泣かないで」
(理想的な言い方)
「ゴメンね、今の言い方はダメだったね。私は怒っていたの、あなたは嫌な気持ちになったでしょうね」

▢ 児童養護施設で物を壊す男の子の叫び
・事情により親が養育できない子どもたちが集まる施設にはアタッチメント不足の子どもが多い。
・毎日何かを壊し、職員を困らせて手を焼いた男の子、そして彼は最後に泣きながら「だって、何か悪いことをしないと、先生はオレを見てくれないじゃないか」と叫んだ。

▢ アタッチメントが必要なのは子どもだけではない
・子どもは“物理的なくっつき”が中心。
・成長すると“精神的なくっつき”で安心感を得るようになる。

▢ ジョン・ボウルビィ(1907-1990)が提唱した「アタッチメント理論」
・「安心感の輪」を構成する要素は「安心の基地安全な避難所」と「探索
・安心の基地で安心感を得ると人は探索に出かける。
・不安になると人は安全な避難所に戻ってくる。
・上記の流れを安心の輪と呼ぶ。
・安心の輪の行き来を繰り返すことで、安心の輪は大きくなる。
・安心の輪が大きくなると、一人でいられる力が身につく。
・アタッチメント対象(安心の基地)は成長とともに変わっていく、広がっていく。
(例)養育者 → 祖父母、先生、友人、・・・

▢ 安全基地としての大人(養育者)の役割
・変わらずに“いつもそこにあり続ける”こと。
・いつも“何気ない話”(ダル絡み?)ができることが最高の安心材料になる。

▢ 3つのアタッチメントスタイル
回避型)自分のことを隠す傾向、他者と距離を置こうとする。
不安型)人間関係にとても敏感、相手にどう思われているのか常に気がかり。
安定型)人と親密に関わることが容易、信頼を心地よく感じる。

▢ “アタッチメント”を有名にした専門家(アミール・レバイン:コロンビア大学医学部)の言葉
・信頼できる人とつながり合うことほど、人の心を落ち着かせてくれるものはない。
・アタッチメントスタイルは人間関係において、どのように安心感を得られるのかという尺度である。
・アタッチメントスタイルは優劣ではなく、自分の“人間関係のクセ”がわかるものさし。

▢ アタッチメントスタイルの誤用が氾濫している現状
・その人に寄り添うために使うものであり、区別するために使うものではない(トレイ・タッカー:公認心理士)。
・一歩下がって“人間とはそういうものだ”と考えることが重要(ケイト・スピアー:インフルエンサー)
・正しい情報へのアクセスが不十分であると、健康状態が悪化する(アマンダ・ヤーネル:ハーバード大学)


<参考>
子育てで大切な“アタッチメント”って?(すくすく子育て、2024年放送)
▢ こころの土台を育てる関わり方 アタッチメント実践編(すくすく子育て、2025年放送)
▢ 【あさイチ】子どもが伸びる!言葉がけのスキル♡(①〜⑤まであります)(2024年放送)
愛着スタイル診断テスト回避性愛着障害~絆が稀薄な人たち~ (光文社新書) を基にした質問票)
▢ 愛着(アタッチメント)スタイル診断公認心理師監修、BCC)
遠藤利彦先生講義動画集(保育 is オンライン研修)

 私が子どもの頃(50年前)は家庭用ゲームは存在せず、繁華街にあるゲームセンターでしかできませんでした。魅力的で楽しそうだけど学校から「行ってはいけない」という禁断の場所。そしてそこに通う子どもは「不良」と呼ばれる、ごく一部の生徒でした。その他大勢の子どもたちには、そこで使うお金の持ち合わせがありませんでした。
 ファミコンが普及し始めたのはそれから約10年後、私が大学生の時でした。想像通り、一気にゲーム人口が増えました。それも爆発的に。
 そして現在、ゲームは小型化してポータブル機器も登場し「持っていて当たり前」の子どもの遊び道具になりました。
 ゲーム会社は競って楽しいソフトを開発・提供し続け、子どもたちはそれに夢中になります。中にはやめられなくて日常生活に支障をきたす「依存」状態におちいる子どもも出てきました。あんなに楽しく魅力的なものが手元にあれば、なかなか自分で律するのが難しいのは自明のこと。一定のルールの必要性を唱える声も生まれました。

 動画を提供してくれるスマホも同様、依存対象です。
 うまくつき合えば、この上ない便利な機器ですが、ヒトはこの魅力的な機器を使いこなせるのでしょうか・・・どうやらそうでもなさそうです。診察中もスマホ動画から目が離せない子どもを時々見かけるようになりました。親が取りあげるとかんしゃくを起こして修羅場になります。
 世界を見渡すと、SNS関連機器の使用制限を子どもにかける国が増えてきています。私には人類がデジタル機器(制作会社)に白旗を揚げたようにも見えます。つまり、「リアルワールドよりゲーム・動画の方が楽しく魅力的」という構図です。

 ここでは読みやすいように対策のみ提示しました。基本的な知識を知りたい方はこちらもご覧ください。
なお、ゲーム依存とゲーム障害はほぼ同じ意味として扱います。

▢ ゲーム・ネットについての教育
・ 現代社会に必要不可欠のものでもあり、禁止するのではなく適切な使い方を教えるべき
・いつから教えるのが適切か、乳幼児にスマホで動画を見せること、簡単なゲームで遊ばせることが良いのかどうかに関しては、明確な研究結果は存在しない。
・親としては連絡や居場所の確認目的にスマホを考えるが、子ども自身はスマホを持ったらいろいろやりたいことがある。ゲームをやりたい、動画を見たい、友達とLINEでやり取りをしたい、など子どもの要望を聞いた上で、それぞれのアプリの可否や条件など、家庭内ルールを話し合う。
・子どもが社会のルールを覚え始めるのが2歳頃、しかし小学校高学年になると、親に反抗したり、素直に学べなくなる傾向が出てくる。以上を考慮すると、5〜10歳くらいの間に、ゲーム・ネットの適切な使い方を教え始め、約束・ルールを作り、守らせることが望ましい

▢ 機種選定の際の注意点
・親が管理することが難しい場合は、安心機能が搭載されているキッズケータイがお勧め(カメラやメッセージ機能あり)。
・親の古いスマホを渡すことになったら、可能なら初期化して子どものアカウントを作成すべし(親の決済情報などは消しておく)。子どものアカウントなら、年齢に併せたコンテンツが表示される。

▢ スマホを使う時間・時間帯の設定
・時間:小学生では1日30分〜1時間が目安
(例)「平日は30分、休日前は1時間、休日は2時間」
   「30分使ったら10分休む」
・時間帯:
(例)
「夜は21時まで、塾の日は30分延長」
   「寝る1時間前までに終了」
・アプリごとの制限:
(例)「1回30分のゲームなら1日2ゲーム」
   「ゲーム40分、動画20分」
・Wi-Fiルータで端末ごとの時間設定も可能。

▢ スマホを使う場所と保管場所の設定
自室への持ち込みNG、リビングのみ利用OK
寝るときはリビングで充電する。

▢ ペナルティも一緒に決めてリビングに貼っておく
・ルールを破ったときのペナルティ:
(例)「翌日の使用時間を30分減らす」
   「3回破ったら1日使用禁止」
完成したルールはリビングや冷蔵庫に貼っておき、いつでも確認できるようにする。
・学年が変わるときや習い事の時間が変わるときは見直すタイミング。
・子どもの成長に合わせて「もう自分でコントロールできそう」と感じたら、ルールを弛めてITスキルを上げられるよう誘導する。

▢ ネットのルール作りのポイント
親が買い、子どもには貸し出す(所有権は親に)。
・使用する時間・場所・金額を指定する。
(例)午後10時まで、居間でのみ使用し自分の部屋に持ち込まない、等
・決めたら書面にして目につくところに貼る。
・親子が一緒にルールを作り、親もルールを守る

▢ 親子の「約束」を作るコツ
1.「約束」についての話し合いは、機器を買う前、サービスを使い始める前がよい。

2.所有権は大人に。
3.上手な「おしまい」を身につける。
(例)子どもが見通しをつけられるように、タイマーを利用したり、上手におしまいできたら報酬を与えたり。
4.「やるべきことをやってからゲーム」はうまくいかないことが多い。
(例)宿題が終わったらゲームしていいよ、とすると、宿題に取りかかってもゲームのことが頭から離れず進まないのでいつまで経っても宿題が終わらない。
5.ゲームができる時間は短すぎる設定にしない。
(例)15分だけ・・・では短すぎてトラブルの素になる。
6.次にいつ使えるのかを明確にする。
(例)「今日はおしまいだけど、明日になればまた〇時間できるよ」と言うと納得しやすい。
7.ゲームの時間を「交換可能財」にする。
(例)お手伝いをしたらゲームの時間が少し増えるなど。
8.機器を取りあげる方法をひと工夫。
・物理的に奪う方法はトラブルの元。
(例)Wi-Fi が時間で自動的に切れるなど。
9.子どもはネットから離れていたいときもある。
(例)LINEのやり取りから離れられず長時間使用してしまう子どもがいる、苦痛でも離れられないタイプもいる。時間を区切るルールを作り、やり取りから離脱するきっかけを作ってあげる。
10.睡眠時間の確保。
・生活リズムを崩すような時間設定はしない。
(例)「ちゃんと寝た方がゲームの能力がアップするよ」などとアドバイス。

▢ 他の依存対策のポイント
・子どもだけにルールを押しつけるのではなく、家族みんなでルールを守るべし。
親がゲームに興味を持つと、子どもが教えてくれる。親も子どもの考えを理解しやすくなる。親の方がゲームが上手、ネットに詳しいと、子どもは親を尊敬して言うことを聞きやすくなる。

▢ 具体的な項目
・夫婦で異なる考えだと子どもは混乱するため、家族みんなで話し合い、決める。
・ペアレンタルコントロール機能のフィルタリングなどの設定で時間制限を。
・家庭内のルール作り(時間と場所)や親からの声かけでリテラシーを育てる。
★ 子どもにスマホを与えると、子どもは親のアカウントを探し、誰をフォローしているのか、どんな投稿と返信をしているのかを見る可能性があることを覚悟する。大人はSNSで子どものお手本になるような振る舞いを心がけるべし。

▢ 使いすぎ予防のポイントは「日中活動の充実」
・日中活動が充実していると、前述の約束事のポイントを子どもに守らせることが簡単になる。
ゲームよりリアルワールドが楽しければゲーム依存は発生しないはずだが、現実は逆になりがち。
・日中活動を子ども本人が楽しみにしていたら、子どもは朝起きようと努力する。逆に言えば、日中活動がつらい、怖い、不安、退屈な状況では、生活リズムが崩れやすくなる。

▢ 思春期例の問題点・注意点
・ゲームの制限・禁止は回復につながらない。
・ゲーム依存は氷山の一角で、その下には本人が悩んでいる家庭や学校、社会生活の問題が隠れている。
・子どもはゲームをすることにより安らぎを得ている面がある。
・ゲームをしている・していないではなく、ゲーム依存の原因となることに目を向けることが大切。
・思春期の子どもは反抗期でもあり、両価性(アンビバレンツ)状態。ゲームをやりたくて仕方ないけど、やめられない現状に不安を持っていることも多い。本人が困っている要素(睡眠問題・食欲不振など)をきっかけにして相談に乗り受診につなげる。最初は抵抗するかもしれないが、何回も何回もくり返し話していくことが大切。本人が怒っているときは避け、話を聞いてくれそうなときにわかりやすく説明していく。
・治療の結果、ゲーム使用時間が少しでも減れば(例:10時間 → 8時間)、それを評価することが大切。

★ ニール・イヤール氏(作家・コンサルタント)のコメント
・スマホやアプリ開発の裏側;
✓ 魅力的で習慣性が高いものが「優秀なスマホ製品」とされる。
✓ 習慣的に使用してもらうためにユーザーの不快な感情(退屈、孤独、疲労、不確実性、ストレス、不安、等)に入り込み「気晴らし」を展開させる。
✓ 不確実性で変わりやすいものにヒトは注意深くなり集中する傾向があり、それがあると習慣化しやすい。予測可能なものには誰も興味を示さない。

樋口進氏(久里浜病院名誉院長)のコメント
・ゲームに勝ち続けると依存性はなくなるが、ときどき負けるという不確実性があるため習慣化する。
・仲間とやり取りしていて、自分だけ置いてきぼりになることを皆とても怖がる。イヤだけど見ざるを得ない状況になっていることが多い。
・依存患者に「見るのはいいけど、書き込むのはしばらくやめよう」と提案している。書き込むと必ず反応を見たくなるため。
・依存性のあるゲームやネットは、早い年齢から始めると依存のリスクが高くなることがわかっている。国がガイドラインを作成すべき時に来ている。
・スマホ・ネットを使わない時間を家族で設定・共有することを提案したい。
(例)夜の7〜8時は家族全員で使わない時間を作る( → 会話が増えるかもしれない)。

★ スティーブ・クレイン氏(スタンフォード大学 行動デザインラボ)の提案
・使いやすく便利に作られているスマホを自分で使いにくく楽しめないようにするくする工夫が必要。
・人間は3つの要素「やりたい・できる・きっかけ」がそろったときに行動する。
1.「きっかけ」を減らす:
(例)お休みモードをオンにして通知が来ないようにする。
2.「できる」を減らす:
(例)パスワードは長いものにして保存しない( → 精神的な負担が増える)。指紋認証や顔認証も使わない。
3.「やりたい」を減らす:
(例)画面の色を変える(赤一色にするとずっと画面を見たくなくなる、白黒にすると魅力が半減する)。


<参考>
・「ゲーム・ネットの世界から離れられない子どもたち」(吉川徹著、合同出版)
・「思春期の「つながる気持ち」はどこへ行く?」(関正樹著、日本評論社)
・「子育て支援者応援チャンネル」(YouTube動画 by 木下直俊先生)
・「思春期 心と体の不調 ゲーム依存」(NHK-Eテレ きょう
の健康、2025年)
・「ゲームネット依存」(NHKサイエンスZERO、2022年)
・「
子どものスマホ、いつから持たせる?(AERA Kids+、2026.4.8)

<相談窓口>
エンジェルアイズHP
全国精神保健福祉センター(厚生労働省)
保健所検索(厚生労働省)

「赤ちゃんの便に血が混じっている!」と驚いて受診される方が時々います。
ほかの病気を除外することが優先されますが、元気で食欲・機嫌共に良好な場合は「リンパ濾胞増殖症」のことが多いです。
ちょっと聞き慣れない病名ですよね・・・。

生後6ヶ月までの赤ちゃんに認められ、便の中に線状または点状の新鮮血(赤い血)が混じり、その多くは直腸から出血する良性のものです。
出血量は少なく、貧血になることはありません。

赤ちゃんは基本的に元気(哺乳良好、体重増加良好、腹痛なし)です。
もし、哺乳量低下、体重増加不良、グズりがちの場合は、病気が隠れていないかどうか、検討が必要です。

母乳栄養の赤ちゃんに多いことから、以前は「母乳性血便」と呼ばれていました。
近年は病態解明が進み「リンパ濾胞増殖症」による直腸粘膜からの出血と考えられるようになりました。
しかし詳細なメカニズムはまだ不明であり、消化管アレルギーとの関連も議論されています(※)。
ただし、食物除去などの治療は必要なく、自然経過で数ヶ月以内に軽快します。

頻度は低いものの、鑑別が必要な病気として以下のものが挙げられます。
・メッケル憩室
・若年性ポリープ
・家族性大腸ポリポージス
・腸回転異常
・消化管穿孔
・腸重積症
・ヒルシュスプルング病
・壊死性腸炎
など。

新生児-乳児消化管アレルギー(新生児-乳児食物たんぱく誘発胃腸炎、FPIES)
・食物抗原が原因で消化器症状を認める疾患
・嘔吐、下痢、下血、腹部膨満、哺乳力減少、不活発、体重増加不良、イレウス、発育障害
・特異的IgE交代は必ずしも上昇しない。
・診断;
 治療乳への変更による症状消失
 食物負荷試験による症状誘発
 消化管組織検査、便粘膜細胞診、リンパ球刺激試験


<参考>
乳児にみられる血便(小林茂俊Dr.、帝京大学教授)小児科診療 UP-to DATE、2017年
赤ちゃんの血便とリンパ濾胞増殖症(御前崎総合病院) 

近年よく耳にするようになった「スマホ中毒」「ゲーム障害」。
スマホとゲーム、どちらも魅力的なデバイスです。
テレビがなくても好きな動画を見放題、
昔はゲームセンターにお金を払って通う必要があったゲームも、し放題。
子どもたちがそれらに振り回され、日常生活に支障が出るに至っています。

さて、子どもにおとなしくして欲しいとき、昔の親はどうしていたのでしょう。
私の世代は「テレビを見せていた」パターンですね。
ではテレビ登場以前の昔は?
・・・答えは「ヒト」です。
兄弟が多く、近所付き合いが濃厚だった時代は、
誰かしら子どもの相手をしてくれるヒトがいたのです。

オーストラリアでは、とうとう「子どもにSNS禁止」という法律が制定されました。
ただ、スマホを禁止する際にはその代わりを用意する必要があると思いますが、
オーストラリアではうまくいっているのかな?

<参考サイト>
オーストラリアで初の「子どものSNS禁止」法案可決(朝日新聞)
● オーストラリア16歳以下 SNS利用禁止のなぜ?(茂木健一郎)
日本も16歳未満の子どものSNS利用を禁止すべきなのか?(高須幹也)



これらのデバイスとうまくつき合っていく方法はあるのでしょうか。
てぃ先生(カリスマ保育士)と
樋口進先生(依存症専門医)のご意見を聞いてみましょう。


▢ てぃ先生

▶ 結論
・ルール決めを子どもにしてもらう。
・スマホを使って得た情報を子どもにアウトプットしてもらう。
・デジタルツールが必須の時代、子育ての中でスマホを活用することはOK。

▶ スマホ育児に賛成!
・眼科医が推奨する利用時間を守った上でのお話
・「スマホは悪いモノ」「使うのはよくないこと」というイメージを植え付けるのはもったいない。
・スマホに育児をさせるなんて・・・という批判は、昔、紙おむつが登場したときの議論「紙おむつを使う親なんて愛情がない」と似ている。
・しかし、スマホの使いすぎ、生活に支障が出るレベルまではまってしまうと・・・

▶ スマホ利用ルールを子どもに決めてもらう
・スマホに没頭して他のことができなくなった子どもには、親子で話し合ってルールを決めよう、そのルールは子どもに決めてもらおう。
・親からいわれた言葉「あと何分ね」「その動画でおしまいね」という約束は他人事、「自分事化」の方が守りやすい。
・「あと何分で終わりにする」「次の動画でおしまいにする」とスマホを置いた状態で、両親の顔を見ながら話すだけでも効果がある。

▶ ルールには例外を作らない、親も守る
・ルールを作ったら例外を作らないことが大切。「ルールが守れなかったらその日のスマホはもうおしまい」などのルールを作る。
・両親の都合でルールを破るのも禁(もう少し家事や仕事をしたいから延長、など)。
 → 解決法の例:動画チケット(⇩)
・例外を作ると、子どもは毎日例外を求めるようになる。

▶ 親子以外にもルールを共有して「大切なこと」に格上げ
・ルールは母親と子どもの2人だけではなく、父親や園の先生など3人以上で共有した方が効果的、「大切なこと」という意識が芽生える。

▶ 感想会を開こう
・受動的(罪悪感あり) → 能動的(得るものあり)なスマホの使用法
・スマホを使った後の感想会を開きましょう(30秒でもOK)。
 ✓ 「さっき見ていた動画、どんなお話だったの?」
 ✓ 「さっき見ていた動画の人、どんなこと言ってた?」
・スマホを使って子どもが得た情報をアウトプットしてもらう。
・すると「無駄な時間を過ごした」 → 「少し有意義な時間を過ごした」へ変化。

▶ お役立ちスキル&アイテム
動画チケット:親ぶ渡すと動画を見ることができるチケットを自作し、子どもに渡しておく。ただし、食事中は無効、チケット一枚で見ることのできる時間を予め決めておく。
 → 「チケットがないから止める」と視覚でわかるので子どもは納得しやすい。「動画を見るのを止めなさい!」と叱る回数が減る。
・テレビやスマホを擬人化して「もうテレビは寝る時間だよ」とスイッチを消す:0-1歳までは有効。
・時間で区切るのではなく「一話」区切りで。見ている途中に時間で消されるとかんしゃくの要因になる。


<参考>
子どもがスマホを使うのは悪くない(てぃ先生)
約束を守らない子どもが3日間で変わる方法(てぃ先生)
親子のスマホデビュー安心ガイド(ソフトバンク)


▢ 樋口進先生

▶ 危険要因から浮かび上がる予防対策
・ゲーム・スマホの使用開始年齢を遅らせる。
・ゲーム・スマホの使用時間を少なくさせる。
・本人・両親に対する予防教育。
・リアルの生活を豊かにする
 ✓ 家庭・学校生活
 ✓ 友人関係
・ネット・ゲームの規制
 ✓ 現在何もない(年齢制限、広告規制など)
 ✓ 国の規制が求められる

▶ ルール作りのポイント
1.使用時間を決める
・使用時間帯と使用終了の時間を決める。
・あまり細かく決めない。
2.使用場所を決める
・子ども部屋(自室)での使用は避け、リビングや家族の目の届くところで使用させる。
3.制限機能の使用
・アプリの制限とタイマー(ペアレンタルコントロール)(総務省作成動画
・本人の同意がないと、効果的でない。
4.使用金額について決める
・アプリのダウンロードや課金の限度額を決めておき、小遣いの範囲にとどめさせる。
・親に無断でオンラインショッピングや決済をさせない。
5.書面に残す
・守れなかったときにはどうするかまで決め、必ず書面に残しておく。
・冷蔵庫など目に付くところに貼っておく。
6.家族もルールを守る
・親がスマホ・ネット使用の規範を示す。
・その上で、子どもたちに対応する。
・家族や周りの人とのネットを介さないコミュニケーションを大切にする。


<参考>
・ゲーム障害にならないために(久里浜医療センター:樋口進先生)学校保健学会2024

<発達>
▢ 跳んだり、階段を1人で上がることができる。
▢ 閉じた丸を描ける
▢ 大小、長短、色がわかる
▢ 3語文以上を話し、自分の姓名・年齢を答えられる
▢ 同年齢の子どもたちと遊ぶことができる。

<概要>
・3歳は運動や社会性の発達の節目。
・発育面・発達面ともに個人差が大きくなる時期。
・食事・排泄などの基本的な生活習慣がほぼ自立する。
・単純なひとり遊びから複雑な小グループの遊びへ。
・自我が芽生えて「イヤ!」「自分でする!」といった自己主張をするようになる。
・身長は90cm越え。80cmで-2SD、100cmで+2SD。
粗大運動:走ったり跳んだり。片足立ちやケンケンといった平行感覚が身についてくる。
(他の例)三輪車をこげる。止まっているボールを蹴ることができる。
・微細運動:クレヨンを持って閉じた丸を書いたり、スプーンを上手に使ったり、ハサミを使うことができるようになる。
(他の例)衣服の着脱が自分でできる、紙を二つに折ることができる、箸が使える(子もいる)、こぼさずに食事ができる。
・言語能力:物の名前や動作に関する言葉以外にも、大小や色などの抽象的な言葉の理解も進み、多語文による会話が可能となる。
・認知能力:ままごとでお母さんのふりをしたり、積み木を車に見立てて押したりといったことが可能となる。

<チェックポイント>

▢ 母子手帳の確認
・胎児・新生児期の異常の有無
・成長曲線
・これまでの健診の問題点の有無
・予防接種歴

▢ 診察室での観察・反応
・姿勢:直立の姿勢
・運動機能:走行、両足跳び、手を使わずに階段上り
あいさつ(言葉と動作)・・・親より先に子どもに声がけ
・会話(名前年齢を聞く)
・体の部位(指さし)
・指示動作可能(お口を開けて)
・診療拒否、多動、親が制止不能、視線が合わない、奇声を出すなどに注目
→ ★ 問題行動の分類へ

▢ 一般診察
・顔面:顔貌(表情・反応)、眼(斜視、眼振、視線の合い方)、口腔(扁桃、歯の数、う蝕→ ★ う蝕へ)
・頚部:リンパ節、腫瘤、甲状腺
・胸部:胸部変形、心音(心雑音、不整脈)、呼吸音
・腹部:肝脾腫、腫瘤、ヘルニア
・皮膚:血色、緊張度、発疹、色素異常
・泌尿生殖器:ヘルニア、停留精巣
・四肢:O脚、X脚、反跳膝

★ 問題行動の分類
・正常な発達過程にみられる問題行動:攻撃性、反抗的行動、トイレトレーニング
・生活の尋常でないストレスによる問題行動:暴力行為の目撃、絶えず夫婦仲が悪い、自分の兄弟が慢性疾患を持っている、望まれずに生まれてきた子ども、悲劇的な出来事を経験したコミュニティの一員など
・生来の疾病により問題行動:注意欠陥・多動症、行為障害、うつ病、広汎性発達障害など

★ う蝕
・3歳は乳歯列が完成、安定していく時期であり、食事が多彩になる時期でもあるため、う蝕が発生しやすい。
・虐待や発達障害の発見の端緒となることがある。

★ 虐待
・複数あるいは不自然な傷やアザの有無について観察する。大きな傷にもかかわらず兄弟にされたというのは虐待を隠蔽する方便のことがある。
・行動の異常をきっかけとして虐待が見つかることがある(発達障害が原因のこともある)。

★ 発達障害
・強いこだわりや落ち着きのなさだけでなく、言葉の遅れや認知の発達の遅れを伴うなど、複数の逸脱が見られる場合に注意する。
・発達障害を1度の診察で確実に診断することは困難である。

<よくある質問>

Q. トイレトレーニングが思うように進まない
A. 個人差があること、失敗を怒らず成功を誉める対応の原則を説明する。

Q. 言葉の遅れ
A. 「言語理解の遅れ」「有意語が少なく2語文が出ない」「対人関係や行動面に異常がある」場合は専門家に紹介する。それらができているようなら次第に言葉が出てくることが多い。絵本の読み聞かせをする、子どもの目を見て優しくゆっくりと話しかけるようにするなどをアドバイスする。

Q. 落ち着きがない
A. 言葉の遅れがなく遊びに集中でき、指示を理解して完遂できる場合、特定の場面でのみ落ち着きがない場合は問題がない。それ以外は慎重に経過観察する。

Q. かんしゃく持ち
A. 発達過程で一過性にみられるものである。
 かんしゃくの程度が強く、特異なこだわりやささいな出来事で手のつけられないパニックを起こす場合は広汎性発達障害の可能性を疑う。
 → かんしゃくについてもっと知りたい方はこちらをご覧ください。 


<参考>
原朋邦:編集(南山堂、2018年発行)
(Youtube動画)けんいちろう准教授
3歳の乳児健診】小児科のチェックポイント
(Youtube動画)コアラ小児科チャンネル

 

1歳半健診で神経発達症の診断は可能なのか?
調べてみました。

▢ 発達障害への対応
・発達障害は単独の診断名ではなく一つ以上の特性を示すことが多い(ASD+ADHD+DSD・・・)
・発達障害の大多数に併存精神障害を認める→ 支援は一律ではなく個別の特性に応じて行うべき
・発達障害の症状/特性は早期に始まり、ライフコースに渡る。
・対応はまず、養育者の理解を促すこと(育児支援、心理教育)
・そして自己理解へ(上手につき合う)

本来「病名」とは、それをつけることにより治療や生活指導に役立つもの。いくつも病名がつくような病態なら、その付け方が適切ではないのでは?と思ってしまいます。

現在の精神疾患は「DSM-5」に基づいて分類・診断されていますが、これは症状を集めて診断するアナログ的手法です。
その背景として、遺伝子診断が日進月歩の現代医学を以てしても、精神疾患は分類しきれない・整理できないのが現状、と耳にしたことがあります。

いずれにしても、発達障害を含めて精神疾患の病名は、遺伝子異常による分類が確立するまでは、これからもコロコロ変わることが予想されます。

▢ ASD早期療育の中長期的なメリット
・一部(25%)にASD症状の著明な改善を認めた(改善群)。
・改善群全員が3歳までに療育を受けていた。
・一般的に開始が早いほうが効果が大きい。
・複雑化してからだと回復に時間がかかる。
・良好なメンタルヘルス(併存障害なし、服薬治療なし)。
・良好なQOL。

早期発見・早期療育が有効であることを強調されていました。「早期薬物治療開始」ではありません。

▢ ASDはいつからわかるか?
・1歳前ではまだわからない。
・0歳からよく知っているからといって後の発達障害診断を否定できない。
1歳6ヶ月〜2歳で十分な情報があればわかる
・全般的な発達の遅れがあればわかりやすい。
・わかりにくい子どももいる(女児、こわがり、発達の良好な子)
・家族歴があればハイリスク。

最近、1歳半検診と3歳児健診を担当するようになったので、発達障害について基本的なことを勉強中の私です。
1歳半検診でグレーゾーンの子どもを拾い上げ、保険相談〜療育につなげることの重要性を再認識させていただきました。 

▢ 幼児期の主なASD症状

A. 社会的コミュニケーションおよび対人的相互交流の障害
・“共同注意”が少ない。
・非言語的コミュニケーション(アイコンタクト、身振り、表情)が少ない。
・言葉の後れ、会話にならない、同じ言葉を繰り返す。
・友だちをつくれない、ごっこ遊びをしない、ひとり遊び。

B. パターン化した行動、興味の限局、感覚過敏
・行動の切り替えの困難、初めての場所、ものへの不安、抵抗。
・新しいことを嫌がる、特定のもの、話題への没頭、興味
・聴覚、触覚などの感覚過敏

今まではなんとなくチェックしていた“指差し”が、これほど重要であるとは・・・。
 
▢ 1歳時のASDスクリーニング
〜社会性をチェックし「出現しているはずの行動が出現していないこと」を問題視する。

(通常は1歳になるまでに出現している行動)
・アイコンタクト
・他児(兄弟以外)への関心
・微笑み返し
・呼名反応
・人見知り

(通常は1歳6ヶ月までに出現している行動)
共同注意行動
・身近な大人の動作や言語の模倣

(あればASDを疑うべき行動)
・感覚的な遊びに没頭する
・音や触覚に過敏

▢ “共同注意”の概念
他者とモノ・コトに向ける注意をシェアすること
・自分の気持ちを他者の気持ちに重ねることの始まり。
・生後10ヶ月頃からみられるようになる。
 10ヶ月児の通過率:約50%
 1歳6ヶ月児の通過率:100%

▢ 実際の共同注意に関する質問項目

(質問)あなたが部屋の中の離れたところにあるおもちゃを指さすと、お子さんはその方向を見ますか?
※ 質問の意図:指差し追従(他人の指差しに応答する)できるかどうか

 → PASS例:
・指でさされたモノを見る。
・自分もそれを指でさす。
・それを見て、何かそれについて言う。
・もしお母さんがそれを指さして「ほら!」と言えば見る。

 → FAIL例:
・無視する。
・部屋中をキョロキョロ見回す。
・(モノではなく)お母さんの指を見る

(質問)◯◯ちゃんは、興味を持ったモノを指をさして伝えますか?
※ 質問の意図:興味の指差し:要求の指差しではなく、興味を持っていることを表現するために指差しをするかどうか。1歳6ヶ月児の通過率100%。応答の指差しと区別する必要あり。

 → PASS例:
・自分にとって面白いモノを指さして教える。
・お母さんの注意を興味あるモノに引くために指差しする。
例)空を飛んでいる飛行機、道路を通っている大きなトラック、地面の上を這っている虫など

 → FAIL例:
・指差ししない、または、時々しか指差ししない。
要求の指差しはするが、興味を指し示す指差しはしない

(質問)◯◯ちゃんは、お母さんに何かを見てもらおうとして、モノを見せに持ってきますか?
※ 質問の意図:要求ではなく、共有目的でモノを見せに持ってくるかどうか。1歳6ヶ月児の通過率:92.9%。

 → PASS例:◯◯ちゃんはお母さんに見せようとして、
・**を持ってくる。
例)絵やオモチャ、自分が描いた絵、自分が摘んだ花、自分が見つけた虫など

 → FAIL例:
・・・モノを持ってくるが、見せるためかどうかは分からない。
例)本(読んでもらうため)、オモチャ(動かす、修復のため)、お菓子(袋を開けて欲しいなど)

“共同注意”の概念は、「興味のあること・モノを他人と共有することが楽しい、うれしい」という「人間関係を気づく基本となる感情」なのですね。
 
▢ 日本語版「M-CHAT
・乳幼児期自閉症チェックリスト修正版。
・H30年度診療報酬改定により、検査D283:発達及び知能検査の「操作が容易なもの」(80点)として保険収載。
・対象年齢:16〜30ヶ月
・23項目 親記入式質問紙(はい・いいえ)
・日本語版の特徴:イラストの説明あり
・国内外の大規模研究で、健診場面での有用性が実証済み
 2段階(質問紙→ フォローアップ面接)>質問紙のみ・・・擬陽性例が減る
 2段階 陽性的中率 43〜46%(日本)、54%(アメリカ)
・海外の主要なガイドラインで推奨されている。

A. 社会的障害(M-CHAT)
(園での友達関係)
・ひとり遊びを好む(周囲に子どもがいてもお構いなし、あるいは、周囲に子どもがいる場を避ける)
・自分からは仲間に入らないが、誘われると受け身的に参加する。おとなしい子や年下の子となら遊べる。
・自分から仲間に参加するが、自分のやり方を強要するのでケンカとなり、嫌がられる。
(情緒的反応性)
・他者に無頓着(マイペース)
・他者の気持ちに敏感だが(こわがり?)、意図は分からない。
(言葉の理解)
・言語理解は言語表出と比べて悪い(しゃべるけれども言われたことは理解できない)
・自分の関心のあることしか話さない。
・要求と関連して話しかける(質問に答えることもある)
・言語理解はしているが、答えられない。
・やりとりが目的の会話はできない。

B. 限局・反復的様式と感覚反応(M-CHAT)
・苦手な感覚(聴覚・触覚・視覚・味覚・嗅覚)のために苦手な場面、活動がある。
・今している活動を止めることの抵抗、あるいは新しい活動への切り替えの困難・不安のために、集団生活がストレスになる。 


<まとめ>
・発達障害は一つの診断名で済むことは少なく、いくつかの要素を持っていることが多い。
・療育開始が早いほど予後がよい。
・1歳半頃に徴候が現れるので、1歳半検診は重要。
・“共同注意”という概念を理解しチェックの際に用いるべし。

 

<チェックポイント>

▢ 一般診察
・大泉門:閉鎖していることを確認
・皮膚:母斑、白斑、カフェオレ斑、血管腫、毛巣洞
・体型:脊柱側弯、胸郭の異常
・胸部聴診:心雑音
・腹部:腹部腫瘤、鼠径ヘルニア、臍ヘルニア、停留精巣、外陰部異常
・眼:対光反射と眼球運動(斜視、網膜芽細胞腫など)

▢ 体格:成長曲線に沿って伸びている
・絶対値より伸び方が重要。

▢ 粗大運動:一人で上手に歩ける
・90%が一人で歩けるようになる時期(歩行できない子どもは全体の2%とも)。
・“上手に歩ける”とは10m以上転ばずに安定して歩けるという意味。
1歳頃の “high guard” 歩行から “low guard” 歩行へ
shuffling baby(いざりっこ):お座り→ ハイハイ→ つかまり立ち→ つたい歩き→ 歩行がふつうの発達だが、ハイハイをせずにいざり移動(座位のまま移動)から歩行にいたる場合は歩行開始が遅れることがある(1歳半で歩行不能でも2歳頃までに可能となる)。日本における頻度は約3%。
・環境因子により歩行が遅れる事例もある。
(例)歩くのが遅いと心配した保護者が歩行器を使用して無理に歩かせようとしている。
(例)自宅に捕まれる場所がなくつたい歩きがしっかりできていないため歩行ができない。
1歳6ヶ月で上手に歩けない児は専門機関へ紹介high guard 歩行の場合は経過観察

▢ 微細運動:小さいものを指でつまめる。積み木を2-3個積める。鉛筆で殴り書きをする。
・微細運動のチェックは軽度の脳障害の判定に有用である。

▢ 言語:意味のある言葉をいくつか話せる。簡単な指示を理解できる。
・「ママ」「ブーブー」など5つ程度の単語を話せるようになる。意味のある単語が出ない場合は、聴力障害、言語理解ができているかどうかについて評価する。
(例)「ポンポンどこ?」と聞いて腹部を指さしできれば、聴覚・言語理解・指示の理解ができていることがわかる。
(例)診察の終わりにこちらの「バイバイ」に「バイバイ」で返してくれば、身振りや動作の意味を理解し模倣する能力が確認できる。
・全く反応がない場合は、知的発達や聴覚の異常などの可能性を疑い、保護者の手に負えないほど無秩序に動き回って拒絶的だったり、験者と視線がほとんど合わないときなどは発達障害(自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症など)を考慮する。
・言葉は模倣により覚えるので、保護者がハッキリした大きな声でゆっくり話すようにする。

▢ 社会性:周囲への関心を持つ。興味のあるものを指さして示す模倣ができる
・要求の指さしや模倣は、ASD(autism spectrum disorder, 自閉症スペクトラム障害)の識別度が高い項目である(M-CHAT:modified checklist for autism in toddlers, 乳幼児期自閉症チェックリスト)。

▢ 事故予防:
・行動範囲が広くなるので事故が多くなる。
・喫煙者がいる場合、タバコ誤飲にリスク、受動喫煙の有害性を指導し、保護者の禁煙支援を提案。

▢ 予防接種:
・接種漏れの有無を確認し、有る場合は背景に有る保護者の事情に耳を傾ける。

▢ 虐待のサイン:
・複数の外傷の有無
・痩せ、無表情
・親の無関心、児への高圧的な態度
・親子の様子に違和感

▢ 「ちょっと気になる子」
・周産期既往歴:極低出生体重児、重症仮死、新生児けいれん、無呼吸
・粗大運動:歩行の遅れ、歩き方がおかしい、high guard歩行
・微細運動:スプーンを使おうとしない。積木で遊べない。
・言語発達:単語が出ない。
・診察所見:全体的に筋肉が柔らかい・硬い、頭が大きい・小さい(あらゆる年齢で頭囲の2SDは3cm)。
・社会性:応答の指さしが十分にできない。視線が合わない、落ち着きがない、周囲に無関心、など。
・生活習慣:離乳が未完了、摂食行動(噛む、飲み込む、吸うなど)が下手、偏食が著しい。

→ 上記が気になる場合は「経過観察健診」が必要となる。症状や所見によるが、2〜3ヶ月後、遅くとも6ヶ月後(2歳頃)に。


<健診結果と事後措置>

▢ 運動発達の遅れ → 保健機関や療育機関、病院に紹介
・言語理解の遅れに加え、運動発達の遅れ(歩行未開始)、微細運動の遅れ(積み木が積めない)、遊びや基本的な生活行動の発達の遅れ(おもちゃを用いて遊ぶことができない、スプーンを使って食べる・簡単なお手伝いをするなどの行動が見られない) があれば全般的な精神運動発達遅滞が疑われるので医療機関を紹介する。
・歩行開始の遅れのみで、言語理解が良く知的発達が良好である場合は追跡観察で粗大運動の発達を再評価する。

▢ 指示が入らない → 保健機関や療育機関、病院に紹介
応答の指差しがみられない絵を指差すことができない
→ 以下の可能性を考慮(1回の評価では不正確なこともあるので追跡観察を行い、言語発達の遅れが続く場 合は療育機関や医療機関を紹介する)
① 聴力障害
② 精神発達遅滞
③ コミュニケーションの発達の遅れ(自閉スペクトラム症)
④ 養育環境の問題

(アドバイス)
・やり取り遊びや関わり遊びを増やして「もっと」「もう1回」という要求を引き出す。
・生活リズムを一定にして生活の見通しを持たせ、要求を引き出す。
・「どっち?」と二者選択をさせ、手差しから指差しを教える。

▢ 指示は入るが言葉が少ない → 2歳児健診あるいは2歳時に電話でフォロー
・有意語が2語以下
→ 有意語がないあるいは 2 語以下であっても、言語理解が良く、社会性の発達が良好である(言葉は話さないが、応答の指差しが可能で、 視線がよく合い、言語のみの指示に的確に従うことができる)は表出性言語遅滞の可能性が高い。家族歴があればさらに可能性は高まる。通常3歳までに言葉表出が伸びることが多く、無理に言語表出を促す必要はないが、2歳時にフォローアップを行い、 ことばの発達を確認することが望ましい。

(アドバイス)
・動作に言葉を添える。「くっく、履こうね」など
・「〜とって」などお手伝いをさせながら単語のチェックをし、指差しして教える。

▢ 視聴覚などの理学的異常所見あり → 他機関紹介

▢ 社会性・行動の異常所見あり → 要再評価&保健機関や療育機関、病院に紹介
・名前を呼んであいさつをしても視線が合わない、物のみに注意が向き相手に注意を向ける様子(共同注意)が見られない、 言語指示のみでなくジェスチャーを交えたやりとりも全く成立しない場合は、コミュニケーションの発達の遅れ(自閉スペクトラム症)が疑われる。
・この年齢の子どもは緊張してやりとりに応じられないことが良くあるが、これらの様子が目立つ場合は再評価が必要である。フォローアップを行い、医療機関や療育機関へ紹介する。
・子どもが親の膝上でじっとしていることができず再々降りようとしたり、好き勝手に遊び回ったりする場合は多動と判定する。この時期の多くの子どもは多動であるが、明らかに場面に応じた行動抑制ができない場合、多動的行動特性の他に、知的発達のおくれ(状況判断ができていない)や自閉スペクトラム症(自己中心性、新規場面への不慣れ)の可能性を考慮する必要がある。

▢ 運動機能異常
<判定基準>
・歩容の異常:動揺歩行、墜下性歩行、尖足歩行など
・O脚:両足内踝をつけて膝部離開4横指以上 → 生理的なO脚が見られる時期であるが、両足内踝をつけて立位をとったときに膝部に3横指の離開がみられた例は、家庭で経過観察し増悪したら医療機関で精査するように指導する。膝部離開が 4 横指以上の例は二次健康診査へ紹介する。
・胸郭・脊柱の変形:強度の胸郭変形、明らかな側弯


<この時期に発見されやすい異常と疾病>

・知的能力障害
・自閉スペクトラム症
・言語発達遅滞
・構音障害
・斜視
・う蝕
・養育環境の不良に伴う発達の異常


<よくある質問>

Q. 食事に関する問題:手づかみ食べ、少食、偏食
A. 
・“手づかみ食べ”は感触を楽しんでいる状態と割り切る。いつまでも遊んでばかりで食べないときは無理強いせずに一旦食事を片付ける。
・少食・偏食対策:食材を細かく刻む、すりおろす、混ぜ込むなどの工夫で食べやすく調理する、新しい食材を食べられたときはしっかりほめる。

Q. かんしゃく、夜なきがひどい。
A. 自我が芽生えて自分の思い通りにならないために癇癪を起こすことは、順調に発達している証拠。不快な事の有無を確認し、いろいろ手を尽くしても泣き止まないときは忍耐強く見守る(いつかは泣き止む)。
★ 肌と肌が触れあうように抱くと泣き止むことが多い(アフリカのお母さんのつぶやき)。


<まとめ>

・1歳6ヶ月は“key age”「発達が質的に変化する時期」「赤ちゃんから人間へのダイナミックな変化を遂げる時期」「間脳支配から大脳皮質優位の支配へ
・成長曲線がなだらかになり(体重増加は月に100〜200gあればOK)、身長約75cm体重約10kg、体格はやや細身。
・乳歯が平均15本。
・一人で上手に歩けるようになる。
・指を使って小さいものをつまんだり、スプーンで食べたりすることができる。
・意味のある言葉「マンマ」「ブーブー」などを3語以上使えるようになり、指さしで周囲の人に要求をしたり周囲の人の指示を聞いたりという相互交流ができるようになってくる。
・早産児・低出生体重児では1歳6ヶ月までは修正月齢を考慮して身体発達や発達評価をすることが望ましい(平岩幹男Dr.)。

<参考>

原朋邦:編集(南山堂、2018年発行

▢ 乳幼児検診マニュアル第6版
福岡地区小児科医会乳幼児保健委員会:編集(医学書院、2019年

▢ 1歳6ヶ月検診:秋山千枝子(あきやま子どもクリニック)
(日本小児科学会)

(厚生労働省)

平岩幹男(国立研究開発法人国立成育医療研究センター)
小児保健研究 第76巻第6号、2017(527-531)

<方剤解説>

※ 芍薬+甘草 → 鎮痙・鎮痛作用
※ 柴胡+芍薬 → 抗ストレス作用、自律神経調節作用

10柴胡桂枝湯
● 構成生薬:小柴胡湯+桂枝湯
 桂皮・芍薬・甘草・大棗・生姜 → 桂枝湯
 柴胡・黄岑・半夏・人参・甘草・大棗・生姜 → 小柴胡湯
● 臨床応用:
・頭痛・腹痛などいろいろな症状
・ストレスがありそう
・自律神経失調症
・風邪の亜急性期
・反復性感染症
● こんな症状・体質に(広瀬滋之Dr):
・神経質・几帳面、不安傾向、ストレスに過敏
・ふだんから過緊張傾向(手掌発汗、肩こり、体が硬い)
・痛み(頭痛、腹痛、関節痛等)をよく訴える
・OD傾向あり(小症状>大症状・・・疼痛型)
・心身症に罹りやすい
・けいれん体質、周期性嘔吐症、夜尿症、チック、成長痛、不定愁訴、風邪をひきやすい
→「困ったときの柴胡桂枝湯」(新見正則Dr)

12柴胡加竜骨牡蛎湯
● 構成生薬:(小柴胡湯-甘草)+竜骨・牡蛎+α
 柴胡・黄岑・半夏・人参・大棗・生姜 →(小柴胡湯-甘草)
 桂皮
 竜骨・牡蛎(精神安定、抗動悸)
 茯苓(精神安定)
● 効能効果:
比較的体力があり、動悸、不眠、いらだちなどの精神症状のあるものの次の諸症:
・高血圧
・動脈硬化
・慢性腎臓病
・てんかん
・ヒステリー
・小児夜驚症
・陰萎
● こんな症状・所見に:
・体力中等度
・ストレスに立ち向かっている
・臍上悸(腹部大動脈拍動著明)
・胸脇苦満(心か部から右脇にかけて抵抗)
・脈:やや沈・実、舌苔:乾燥傾向、白、腹力3₋4

16半夏厚朴湯〜やや実証
● 構成生薬:小半夏加茯苓湯+厚朴・蘇葉
 半夏・茯苓(気をめぐらす)
 生姜
 厚朴・蘇葉(気をめぐらす)
● こんな症状・所見に:
・精神症状+喉のつまり感・つかえ感
・咽頭や食道部の違和感(梅核気、ヒステリー球、咽中炙臠)
・神経質、几帳面、用意周到、メモ魔
・予期不安(救急車で運ばれた経験がある、いつも異常なし)
・+胃腸症状 → 茯苓飲合半夏厚朴湯(116)
● 効能効果:
・不安神経症
・神経性胃炎
・つわり
・咳
・神経性食道狭窄症
・不眠症

17五苓散
● 構成生薬:
 桂皮(温める、抗炎症作用)
 蒼朮・沢瀉・猪苓・茯苓(水分代謝調節)
● 特徴:
・利水剤:脱水の時には水を保持、浮腫の時には水を排泄。
・水チャンネルであるアクアポリンに作用し水分代謝調節を行う。
● 臨床応用:
・ウイルス性胃腸炎
・頭痛(気象病・天気痛傾向)…アプリ「頭痛-る」の活用を
・乗り物酔い
・飛行機の離着時の症状
・熱中症
・二日酔い
・めまい

35四逆散
● 構成生薬
 柴胡
 芍薬
 甘草
 枳実

37半夏白朮天麻湯
● 構成生薬:
 天麻(頭痛・めまいを止める)
 黄耆・人参(元気にする)
 半夏・陳皮・生姜・茯苓・白朮 → 六君子湯
 茯苓・白朮・沢瀉(利水)
 麦芽・乾姜(健胃)
 黄ばく(清熱)
● 特徴:
・黄耆・人参入り → 参耆剤
・六君子湯の8つの構成生薬のうち、大棗・甘草以外が含まれている。
● こんな症状・所見に:
・日常的なめまい・頭痛・嘔気
・胃腸虚弱(お腹が冷えると下痢)、全身倦怠感
・冷え
・雨降りや過食で症状増悪
→胃腸虚弱で冷えを伴う頭痛・めまい

39苓桂朮甘湯
● 構成生薬:
 茯苓(水をめぐらせる、精神安定)
 桂皮(気をめぐらせる、温める)
 蒼朮(水をめぐらせる、胃腸を整える)
 甘草
● こんな症状・所見に:キーワードは「ドキドキ・チャポチャポ」(腹診所見)
・めまい、立ちくらみ
・頭痛、動悸
・臍上悸(ドキドキ)
・胃内停水音(チャポチャポ)

41補中益気湯
● 構成生薬:
 柴胡・升麻(下がったものを持ち上げる)
 (下がったものの例)食欲、気分、精神、内臓下垂
 人参・黄耆(元気にする)
 人参・蒼朮・陳皮・生姜・大棗・甘草(胃腸機能改善)
 当帰(血をめぐらせる)
● こんな症状・所見に:
・しんどくてやる気が出ない。
・食欲がない。
・疲れやすい。
・食後の眠気。
・風邪の回復が悪いとき。

54抑肝散〜虚証
● 原典:保嬰撮要(中国の明時代)
● 構成生薬:
 柴胡(理気、疎肝・清熱)
 釣藤鉤(降気、熄風:興奮を静める)
  釣藤鈎・柴胡(情緒安定)
 茯苓・蒼朮(利水)
 当帰・川芎(補血・活血)
 甘草
● 特徴:
・交感神経過緊張(怒りや筋緊張)を緩和
・効果は数日以内に感じられることが多い。 
● こんな症状・症状に:
・ストレスや交感神経過緊張による不眠
・子どもの夜泣きの薬
・神経質でイライラ、落ち着きがない。
・常に緊張を強いられている。
・やや興奮的な状態。
・どこかに怒りがある。
・診察室で打ち解けにくい印象(喜多Dr.)
※ 母親もイライラしているときは母子同服を。
● 効能効果:
・虚弱な体質で神経がたかぶるものの次の諸症:神経症、不眠症、小児夜泣き、小児癇症
● 臨床応用:
・イライラ
・夜泣き、疳の虫
・睡眠障害
・チック
・神経発達症
・泣き入りひきつけ
※ 怒りの急性期には抑肝散、
 長期化した怒りは、心身を損ね虚弱化させ胃腸を弱めるため、
 抑肝散化陳皮半夏がよい。

抑肝散有効例には「自分に対する怒り」が潜んでいる。 
・かんしゃくの根底に「自分の能力不足に対する怒り」、
「自分の理想像と実際の実力との乖離への怒り」がある場合に有効。
・逆に、抑肝散有効例には「自分自身への怒り」が存在している。
・そのような怒りの感情が出てくる発達段階以降から抑肝散の効果が出てくるため、
 甘麦大棗湯(72)と比較すると対象となる年齢は若干上がる
・対応としては、
✓ 自分の能力を向上させる(身体的成長や努力などを通じて)
✓ 自分の実力を受け入れて無理がかからないような環境調整をする
などを行うと、廃薬できる。
・抑肝散もしくは甘麦大棗湯単独で効果が頭打ちの場合は、
 併用するとよい場合が経験される。

72甘麦大棗湯
● 原典:金匱要略
「婦人のヒステリーで、悲しんで泣こうとし、
 モノノケが取り憑いたような動きをし、
 しばしばあくびをするようなときに使用」
● 構成生薬:
 甘草(緊張緩和・急迫症状抑制)
 浮小麦(情緒安定・鎮静作用)
 → トリプトファンを含み、セロトニンやメラトニンのもとになる。
 大棗(情緒安定・胃腸を整える)
● 特徴:
・すべてが食品としても使用される生薬で甘くて飲みやすい。
・有効例では数日以内に効果を実感する。 
● こんな症状・所見に:
・精神興奮がはなはだしく、不安・不眠・ひきつけなどのある子ども。
・「大丈夫、心配しないで」と声をかけたくなる子ども。
● 効能効果:
・夜泣き、ひきつけ(ツムラ)
・小児および婦人の神経症、不眠症(コタロー)
● 臨床応用
・不安が強い(母親分離不安も含む)
・夜泣き
・睡眠障害
・パニック、過換気
・チック
・神経発達症
・心因性頻尿
・涙があふれる
● 具体的な投与方法:
・パニック、不安予兆、過呼吸、涙があふれるとき → 頓用
・登校不安など → 朝、登校・登園前に
・夜泣き、夜驚症、怖い夢を見る → 夜、寝る前に
★ パニックに甘麦大棗湯(72)で効果が今一つの場合は、
 苓桂甘棗湯(奔豚湯):甘麦大棗湯(72)+苓桂朮甘湯(39)
 がおススメ。

83抑肝散化陳皮半夏
● 構成生薬:抑肝散+陳皮・半夏
 陳皮・半夏(胃腸機能調整・気のめぐり・水バランス調整)
● こんな症状・所見に:
・抑肝散より虚弱なタイプ。
・食が細い。
・怒りで心身が弱っている。

99小建中湯
● 原典:傷寒論・金匱要略(中国の後漢時代)
・虚弱な人で無理がたたっておなかが痛くなったときに使用
・体力が弱り腹直筋が緊張して動悸・鼻血・夢精・上下肢がだるくて疼く・手足が火照る・口やのどの乾燥感がある場合に使用
● 構成生薬:桂枝加芍薬湯+膠飴
 桂皮(気を巡らせて温める)
 芍薬(鎮痙・鎮痛)
 大棗・生姜・甘草(胃腸を整える)
 膠飴(滋養・潤す・気を補う)・・・麦芽糖(オリゴ糖)
● 特徴:
・虚弱児の体質改善
・腸を温めて腸蠕動を調節する
・緊張を緩和し情緒安定 → 体と心の緊張をゆるめて楽にしてくれる
・くすぐったがり屋で腹部診察困難、手足が温かく汗で湿っている場合はどんな症状でも有効。 
● こんな症状・所見に:
・食が細い、線が細い
・何となく顔色が悪い
・腹痛の訴えが多い
・目の下のクマ、まつげが長い
・偏食で甘いものが好き
・便秘したり下痢したり
・冷え症
・緊張しやすい
・汗をかきやすい(寝汗も)
・頻尿傾向
● 参考となる漢方的腹部診察(腹診)所見:
・お腹を触ると腹直筋が緊張(=交感神経過緊張)している
・くすぐったがる子ども
・「はい、力を抜いて~」と言っても抜けない人
● 効能効果:
・小児虚弱体質
・疲労倦怠
・神経質
・慢性胃腸炎
・小児夜尿症
・夜泣き
● 臨床応用:
・反復性腹痛、過敏性腸症候群
・虚弱児の体質改善
・周期性嘔吐症
・便秘症
・遷延性下痢症
・心因性頻尿
・アレルギー疾患の体質改善

137加味帰脾湯
● 構成生薬:帰脾湯+柴胡・山梔子
※ 帰脾湯には四君子湯が丸ごと入っている
 柴胡・山梔子(清熱)
 当帰・酸棗仁・竜眼肉・遠志・木香(血を補う、精神安定)
 黄耆・人参
 人参・茯苓・蒼朮・大棗・生姜・甘草
● 効能効果:
虚弱体質で血色の悪い人の次の諸症:
・貧血
・不眠症
・精神不安
・神経症
● こんな症状・所見に:
・顔色の悪い虚弱タイプ
・心配で思い悩んで疲れる
・オキシトシンとの関係(137はオキシトシンを増やす)


<参考>
・癇癪(上田晃三)小児内科 Vol.57 No.3 2025-3 

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