カテゴリ: 育児

<方剤解説>

※ 芍薬+甘草 → 鎮痙・鎮痛作用
※ 柴胡+芍薬 → 抗ストレス作用、自律神経調節作用

10柴胡桂枝湯
● 構成生薬:小柴胡湯+桂枝湯
 桂皮・芍薬・甘草・大棗・生姜 → 桂枝湯
 柴胡・黄岑・半夏・人参・甘草・大棗・生姜 → 小柴胡湯
● 臨床応用:
・頭痛・腹痛などいろいろな症状
・ストレスがありそう
・自律神経失調症
・風邪の亜急性期
・反復性感染症
● こんな症状・体質に(広瀬滋之Dr):
・神経質・几帳面、不安傾向、ストレスに過敏
・ふだんから過緊張傾向(手掌発汗、肩こり、体が硬い)
・痛み(頭痛、腹痛、関節痛等)をよく訴える
・OD傾向あり(小症状>大症状・・・疼痛型)
・心身症に罹りやすい
・けいれん体質、周期性嘔吐症、夜尿症、チック、成長痛、不定愁訴、風邪をひきやすい
→「困ったときの柴胡桂枝湯」(新見正則Dr)

12柴胡加竜骨牡蛎湯
● 構成生薬:(小柴胡湯-甘草)+竜骨・牡蛎+α
 柴胡・黄岑・半夏・人参・大棗・生姜 →(小柴胡湯-甘草)
 桂皮
 竜骨・牡蛎(精神安定、抗動悸)
 茯苓(精神安定)
● 効能効果:
比較的体力があり、動悸、不眠、いらだちなどの精神症状のあるものの次の諸症:
・高血圧
・動脈硬化
・慢性腎臓病
・てんかん
・ヒステリー
・小児夜驚症
・陰萎
● こんな症状・所見に:
・体力中等度
・ストレスに立ち向かっている
・臍上悸(腹部大動脈拍動著明)
・胸脇苦満(心か部から右脇にかけて抵抗)
・脈:やや沈・実、舌苔:乾燥傾向、白、腹力3₋4

16半夏厚朴湯〜やや実証
● 構成生薬:小半夏加茯苓湯+厚朴・蘇葉
 半夏・茯苓(気をめぐらす)
 生姜
 厚朴・蘇葉(気をめぐらす)
● こんな症状・所見に:
・精神症状+喉のつまり感・つかえ感
・咽頭や食道部の違和感(梅核気、ヒステリー球、咽中炙臠)
・神経質、几帳面、用意周到、メモ魔
・予期不安(救急車で運ばれた経験がある、いつも異常なし)
・+胃腸症状 → 茯苓飲合半夏厚朴湯(116)
● 効能効果:
・不安神経症
・神経性胃炎
・つわり
・咳
・神経性食道狭窄症
・不眠症

17五苓散
● 構成生薬:
 桂皮(温める、抗炎症作用)
 蒼朮・沢瀉・猪苓・茯苓(水分代謝調節)
● 特徴:
・利水剤:脱水の時には水を保持、浮腫の時には水を排泄。
・水チャンネルであるアクアポリンに作用し水分代謝調節を行う。
● 臨床応用:
・ウイルス性胃腸炎
・頭痛(気象病・天気痛傾向)…アプリ「頭痛-る」の活用を
・乗り物酔い
・飛行機の離着時の症状
・熱中症
・二日酔い
・めまい

35四逆散
● 構成生薬
 柴胡
 芍薬
 甘草
 枳実

37半夏白朮天麻湯
● 構成生薬:
 天麻(頭痛・めまいを止める)
 黄耆・人参(元気にする)
 半夏・陳皮・生姜・茯苓・白朮 → 六君子湯
 茯苓・白朮・沢瀉(利水)
 麦芽・乾姜(健胃)
 黄ばく(清熱)
● 特徴:
・黄耆・人参入り → 参耆剤
・六君子湯の8つの構成生薬のうち、大棗・甘草以外が含まれている。
● こんな症状・所見に:
・日常的なめまい・頭痛・嘔気
・胃腸虚弱(お腹が冷えると下痢)、全身倦怠感
・冷え
・雨降りや過食で症状増悪
→胃腸虚弱で冷えを伴う頭痛・めまい

39苓桂朮甘湯
● 構成生薬:
 茯苓(水をめぐらせる、精神安定)
 桂皮(気をめぐらせる、温める)
 蒼朮(水をめぐらせる、胃腸を整える)
 甘草
● こんな症状・所見に:キーワードは「ドキドキ・チャポチャポ」(腹診所見)
・めまい、立ちくらみ
・頭痛、動悸
・臍上悸(ドキドキ)
・胃内停水音(チャポチャポ)

41補中益気湯
● 構成生薬:
 柴胡・升麻(下がったものを持ち上げる)
 (下がったものの例)食欲、気分、精神、内臓下垂
 人参・黄耆(元気にする)
 人参・蒼朮・陳皮・生姜・大棗・甘草(胃腸機能改善)
 当帰(血をめぐらせる)
● こんな症状・所見に:
・しんどくてやる気が出ない。
・食欲がない。
・疲れやすい。
・食後の眠気。
・風邪の回復が悪いとき。

54抑肝散〜虚証
● 原典:保嬰撮要(中国の明時代)
● 構成生薬:
 柴胡(理気、疎肝・清熱)
 釣藤鉤(降気、熄風:興奮を静める)
  釣藤鈎・柴胡(情緒安定)
 茯苓・蒼朮(利水)
 当帰・川芎(補血・活血)
 甘草
● 特徴:
・交感神経過緊張(怒りや筋緊張)を緩和
・効果は数日以内に感じられることが多い。 
● こんな症状・症状に:
・ストレスや交感神経過緊張による不眠
・子どもの夜泣きの薬
・神経質でイライラ、落ち着きがない。
・常に緊張を強いられている。
・やや興奮的な状態。
・どこかに怒りがある。
・診察室で打ち解けにくい印象(喜多Dr.)
※ 母親もイライラしているときは母子同服を。
● 効能効果:
・虚弱な体質で神経がたかぶるものの次の諸症:神経症、不眠症、小児夜泣き、小児癇症
● 臨床応用:
・イライラ
・夜泣き、疳の虫
・睡眠障害
・チック
・神経発達症
・泣き入りひきつけ
※ 怒りの急性期には抑肝散、
 長期化した怒りは、心身を損ね虚弱化させ胃腸を弱めるため、
 抑肝散化陳皮半夏がよい。

抑肝散有効例には「自分に対する怒り」が潜んでいる。 
・かんしゃくの根底に「自分の能力不足に対する怒り」、
「自分の理想像と実際の実力との乖離への怒り」がある場合に有効。
・逆に、抑肝散有効例には「自分自身への怒り」が存在している。
・そのような怒りの感情が出てくる発達段階以降から抑肝散の効果が出てくるため、
 甘麦大棗湯(72)と比較すると対象となる年齢は若干上がる
・対応としては、
✓ 自分の能力を向上させる(身体的成長や努力などを通じて)
✓ 自分の実力を受け入れて無理がかからないような環境調整をする
などを行うと、廃薬できる。
・抑肝散もしくは甘麦大棗湯単独で効果が頭打ちの場合は、
 併用するとよい場合が経験される。

72甘麦大棗湯
● 原典:金匱要略
「婦人のヒステリーで、悲しんで泣こうとし、
 モノノケが取り憑いたような動きをし、
 しばしばあくびをするようなときに使用」
● 構成生薬:
 甘草(緊張緩和・急迫症状抑制)
 浮小麦(情緒安定・鎮静作用)
 → トリプトファンを含み、セロトニンやメラトニンのもとになる。
 大棗(情緒安定・胃腸を整える)
● 特徴:
・すべてが食品としても使用される生薬で甘くて飲みやすい。
・有効例では数日以内に効果を実感する。 
● こんな症状・所見に:
・精神興奮がはなはだしく、不安・不眠・ひきつけなどのある子ども。
・「大丈夫、心配しないで」と声をかけたくなる子ども。
● 効能効果:
・夜泣き、ひきつけ(ツムラ)
・小児および婦人の神経症、不眠症(コタロー)
● 臨床応用
・不安が強い(母親分離不安も含む)
・夜泣き
・睡眠障害
・パニック、過換気
・チック
・神経発達症
・心因性頻尿
・涙があふれる
● 具体的な投与方法:
・パニック、不安予兆、過呼吸、涙があふれるとき → 頓用
・登校不安など → 朝、登校・登園前に
・夜泣き、夜驚症、怖い夢を見る → 夜、寝る前に
★ パニックに甘麦大棗湯(72)で効果が今一つの場合は、
 苓桂甘棗湯(奔豚湯):甘麦大棗湯(72)+苓桂朮甘湯(39)
 がおススメ。

83抑肝散化陳皮半夏
● 構成生薬:抑肝散+陳皮・半夏
 陳皮・半夏(胃腸機能調整・気のめぐり・水バランス調整)
● こんな症状・所見に:
・抑肝散より虚弱なタイプ。
・食が細い。
・怒りで心身が弱っている。

99小建中湯
● 原典:傷寒論・金匱要略(中国の後漢時代)
・虚弱な人で無理がたたっておなかが痛くなったときに使用
・体力が弱り腹直筋が緊張して動悸・鼻血・夢精・上下肢がだるくて疼く・手足が火照る・口やのどの乾燥感がある場合に使用
● 構成生薬:桂枝加芍薬湯+膠飴
 桂皮(気を巡らせて温める)
 芍薬(鎮痙・鎮痛)
 大棗・生姜・甘草(胃腸を整える)
 膠飴(滋養・潤す・気を補う)・・・麦芽糖(オリゴ糖)
● 特徴:
・虚弱児の体質改善
・腸を温めて腸蠕動を調節する
・緊張を緩和し情緒安定 → 体と心の緊張をゆるめて楽にしてくれる
・くすぐったがり屋で腹部診察困難、手足が温かく汗で湿っている場合はどんな症状でも有効。 
● こんな症状・所見に:
・食が細い、線が細い
・何となく顔色が悪い
・腹痛の訴えが多い
・目の下のクマ、まつげが長い
・偏食で甘いものが好き
・便秘したり下痢したり
・冷え症
・緊張しやすい
・汗をかきやすい(寝汗も)
・頻尿傾向
● 参考となる漢方的腹部診察(腹診)所見:
・お腹を触ると腹直筋が緊張(=交感神経過緊張)している
・くすぐったがる子ども
・「はい、力を抜いて~」と言っても抜けない人
● 効能効果:
・小児虚弱体質
・疲労倦怠
・神経質
・慢性胃腸炎
・小児夜尿症
・夜泣き
● 臨床応用:
・反復性腹痛、過敏性腸症候群
・虚弱児の体質改善
・周期性嘔吐症
・便秘症
・遷延性下痢症
・心因性頻尿
・アレルギー疾患の体質改善

137加味帰脾湯
● 構成生薬:帰脾湯+柴胡・山梔子
※ 帰脾湯には四君子湯が丸ごと入っている
 柴胡・山梔子(清熱)
 当帰・酸棗仁・竜眼肉・遠志・木香(血を補う、精神安定)
 黄耆・人参
 人参・茯苓・蒼朮・大棗・生姜・甘草
● 効能効果:
虚弱体質で血色の悪い人の次の諸症:
・貧血
・不眠症
・精神不安
・神経症
● こんな症状・所見に:
・顔色の悪い虚弱タイプ
・心配で思い悩んで疲れる
・オキシトシンとの関係(137はオキシトシンを増やす)


<参考>
・癇癪(上田晃三)小児内科 Vol.57 No.3 2025-3 

小児科医の私は、子どもの“こころのトラブル”の相談を時々受けます。

・乳幼児期の夜泣き
・幼児期のかんしゃく
・幼児・学童期の反復性腹痛(過敏性腸症候群)
等々。さらに近年は、年長児・思春期の
・眠らない・眠れない
・だるくてつらい・朝起きられない、学校へ行けない
などの相談も増えてきました。

どれも検査で異常が検出できない訴えです。
西洋医学では「ストレスを減らして様子を見ましょう」としか言えませんが、
漢方では対応する薬が用意されています。
なんと1800年前からあるのですよ(!)。
昔の人も同じようなことで悩んできたのですね。

それらを紹介したいと思います。
まず、子どもの成長とともに心の問題(小児心身症)の症状も変遷していきます。

(乳児期)夜泣き、憤怒けいれん(泣き入りひきつけ)
(幼児期)眠らない、夜驚症、反復性腹痛、かんしゃく
(学童期)眠らない、反復性腹痛・頭痛、チック、起立性調節障害
(思春期)眠れない、反復性腹痛・頭痛、摂食障害、起立性調節障害、過換気症候群・パニック

これらの症状は西洋医学の視点では以下の5つに分けられることに気づきます。
そして対応する代表的な漢方薬を列記しますと、
 
1.睡眠障害夜なき・眠らない・眠れない
 → 甘麦大棗湯(72)、抑肝散(54)
2.反復性腹痛(過敏性腸症候群)よくお腹を痛がる
 → 小建中湯(99)、桂枝加芍薬湯(60)、四逆散(35)
3.反復性頭痛(天気痛・片頭痛)よく頭を痛がる
 → 五苓散(17)、柴胡桂枝湯(10)
4.起立性調節障害だるい、朝起きられない、学校へ行けない
 → 補中益気湯(41)、苓桂朮甘湯(39)、柴胡桂枝湯(10)
5.過換気症候群・パニック・不安
 → 苓桂甘棗湯:苓桂朮甘湯(39)+甘麦大棗湯(72)
6.その他:かんしゃくチック 

となります。これらを中心に説明します。

 1.睡眠障害

(乳児期)夜泣き
・泣き虫、シクシク泣く、不安 → 甘麦大棗湯(72)
・怒りんぼ、ギャーギャー泣く、かんしゃくもち → 抑肝散(54)
★ 泣き入りひきつけ(憤怒けいれん) → 甘麦大棗湯(72) 
 
(幼児期・学童期)眠らない・眠れない
~子どもの4₋5人に1人に睡眠問題がある。
 夜10時以降に就寝する子どもの割合は1~3歳の半分以上。
・不安・泣き虫・あくび → 甘麦大棗湯(72)
・神経質・イライラ・多動 → 抑肝散(54)
・反復性腹痛・虚弱 → 小建中湯(99)
・鼻閉・口を開けて寝ている → 葛根湯加川芎辛夷(2)

(思春期)眠れない
・不安 → 甘麦大棗湯(72)
・イライラ・興奮 → 抑肝散(54)
・動悸・ストレス・恐怖 → 柴胡加竜骨牡蛎湯(12)
・うつうつ、不安だらけ → 加味帰脾湯(137)
・心身ともに疲れて眠れない → 酸棗仁湯(103)

 2.反復性腹痛(過敏性腸症候群)
基本編:小建中湯(99)
・虚弱体質で登園・登校前にお腹が痛くなる、
 イベントの前になるとおなかが痛くなるタイプに有効
・マンガ「ちびまる子ちゃん」のキャラクターの中では「山根君
応用編:
・桂枝加芍薬湯(60):(小学校高学年以降の)過敏性腸症候群
・柴胡桂枝湯(10):小中学生でストレスまみれ、他に頭痛やだるさも訴える
・四逆散(35):中高生でストレスが強く常に緊張、緊張で手が震える、手掌発汗
・芍薬甘草湯(68):頓服で使用

★ 番外編:のど・胸のつかえ感・違和感 → 半夏厚朴湯(16)

3.反復性頭痛(天気痛・緊張性頭痛・片頭痛)
・気圧変化(低気圧・悪天候)による → 五苓散(17)、苓桂朮甘湯(39)、半夏白朮天麻湯(37)
・筋緊張性頭痛 → 柴胡桂枝湯(10)
・スマホ・パソコンのやりすぎ → 治打撲一方(89)(※)(+川芎茶調散(124))
・神経質・イライラ・多動 → 抑肝散(54)
・嘔吐・冷房痛・胃腸虚弱 → 呉茱萸湯(31)
・虚弱体質(+腹直筋緊張)→ 小建中湯(99)
・月経関連頭痛 → 当帰芍薬散(23)、加味逍遥散(24)、桂枝茯苓丸(25)

※ 治打撲一方(89)の応用(井上博喜Dr)
 便秘なし → 桂枝茯苓丸へ変更
 瘀血 → 桂枝茯苓丸を追加
 臍痛点 → 葛根湯(あるいは葛根加伶朮附湯)追加
 天候で悪化 → 五苓散を追加
 慢性化 → 加附子 
 ストレス → 柴胡剤追加

4.起立性調節障害

●「朝起きられない」ときに考えるべき病気:
① 体を起こせない(起立性調節障害)
② 目が覚めない(睡眠覚醒リズム障害) → 睡眠の専門医へ
③ そもそも起きたくない(心理社会的要因) → カウンセリングへ
→ 以上を考慮し、①と判断したら漢方薬の出番

● 起立性調節障害の諸症状に合う漢方薬
・朝起きられない、だるい・しんどい  → 補中益気湯(41)
・朝起きられない、めまい・たちくらみ、車酔い → 苓桂朮甘湯(39)(※)
        +胃腸虚弱・頭痛・めまい  → 半夏白朮天麻湯
・おなかが痛い、虚弱        → 小建中湯(99)
・おなかが痛い・頭が痛い・ストレス → 柴胡桂枝湯(10)
・心身症(ストレスが主因)→ 抑肝散(54)、抑肝散加陳皮半夏(83)、柴胡加竜骨牡蛎湯(12)
・生理中に悪化傾向  → 当帰芍薬散(23)、加味逍遥散(24)、桂枝茯苓丸(25)
※ 苓桂朮甘湯の効果が今一つの場合は、+四物湯(71)(連珠飲の方意)
 連珠飲はめまいのみでなく、婦人病全般に有用です(浅田宗伯)。

● 倦怠感+α に効く漢方薬
・倦怠感(とにかくだるい) → 補中益気湯(41)
・倦怠感 + 貧血・皮膚乾燥  → 十全大補湯(48)
・倦怠感 + めまい・頭痛   → 半夏白朮天麻湯(37)
・倦怠感 + 不安・落ち込み  → 加味帰脾湯(137)
・倦怠感 + 胃もたれ・冷え  → 六君子湯(43)

★ フクロウ型体質(山本巌・惠紙英昭先生)
・自覚症状
 ✓ 午前中調子が悪い、15時ごろから元気になる
 ✓ 夜は早く眠ろうと思っても眠れない
 ✓ 朝食は欲しくない
 ✓ めまい、たちくらみがある
 ✓ 頭痛、肩こり、心悸亢進
・体質
 ✓ やせ型が多い
 ✓ 冷え症で手足が冷たい
 ✓ 暖かいところにいると気分が悪くなる
 ✓ 長湯はできない
・他覚的所見
 ✓ 顔色が青い、結膜や更新の色は紅い
 ✓ 舌は湿潤、脈は沈、腹壁は比較的薄く、心窩部浸水音あり

 → これらの症状に苓桂朮甘湯(39)が有効、
 倦怠感が強いときは苓桂朮甘湯(39)+補中益気湯(41)が有効

5.不安・パニック・過換気症候群

● 4の起立性調節障害の一部が不登校につながります。
不登校になる前の体の不調
・頭痛・腹痛
・疲れやすい
・眠れない
・朝起きられない
 → 以上がやがて、不安・抑うつ・不登校につながる。

● 近年の不登校の原因の第一位は「漠然とした不安」です。
不登校の要因ベスト5(令和4年、文科省)
① 無気力・不安(52%)
② 家庭の問題(13%)
③ 生活リズムの乱れ(11%)
④ 学校の問題(11%)
⑤ 友人関係(9%)

● 不安感に対する漢方薬
・悲しみ・パニック・感情失禁  → 甘麦大棗湯(72)
  単剤で効果不十分なら   → 苓桂甘棗湯:甘麦大棗湯(72)+苓桂朮甘湯(39)
  慢性期には        → 苓桂朮甘湯(39)+桂枝加竜骨牡蛎湯(26)
・喉のつまり          → 半夏厚朴湯(16)
・不安で心配でたまらない、体力なし、無気力 → 加味帰脾湯(137)
・ストレス、動悸、体力あり → 柴胡加竜骨牡蛎湯(12)

★「粉薬は飲めない!
〜という年長児には錠剤も:
・ストレスが強い・動悸・イライラ
 → 柴胡加竜骨牡蛎湯(12)(抑肝散、甘麦大棗湯の代わりに)
・過敏性腸症候群
 → 桂枝加芍薬湯(60)(小建中湯の代わりに)
・頭痛・腹痛・緊張が強い
 → 柴胡桂枝湯(10)
・だるい・疲れた
 → 補中益気湯(41)
・喉のつまり
 → 半夏厚朴湯(16)

6.その他:かんしゃくチック

かんしゃくこちらを参照)

チック(tic)
● 定義:
・チック:突発的・急速・反復性・非律動性の運動または発声
・チック症:チックを繰り返すことにより日常生活に支障をきたす状態
● 症状による分類:
・単純運動チック:まばたきなど目や顔に出る
・複雑運動チック:手でたたく、ジャンプ、触る、手のにおいを嗅ぐなど
・単純音声チック:声を出す、鼻をすする、鼻喉を鳴らす、咳払い、叫ぶなど
・複雑音声チック:他人の言葉をまねる(反響言語)、自分の言葉を繰り返す(反復言語)、社会的に不適切な罵倒する言葉や卑猥な言葉を発する(汚言症)など
● 経過による分類:
・暫定チック症:1年以内
・持続性(慢性)チック症:1年以上
・トゥレット症(Tourette syndrome):1年以上運動チックと音声チックが併存(※)
● 症状増悪の誘因:
・不安や緊張が増大、または消失したとき
・楽しくて気分が高揚し興奮したとき
・急にリラックスしたとき
・情動が大きく変化したとき
・疲労時、月経前
● 症状減少の誘因:
・一定の緊張度で安定しているとき
・集中して作業しているとき
・睡眠中
・発熱時
● 現況:
チックは子どもの10人に1〜2人が経験し、
従来、西洋医学ではチックは「様子を見ましょう」という病名でしたが、
近年、病態解明が進み、早期から積極的に介入すべき病態と捉え、
ようやく非薬物療法・心理療法(※)が導入されつつあります。
※ 行動療法(ハビットリバーサル)、チックのための包括的行動的介入(CBIT)、曝露反応妨害法など
まあ、漢方医学では昔々の500年前から対応する薬が用意されてきましたが。
● チックに用いられる漢方薬
・甘麦大棗湯(72):初発に対する第一選択薬、1ヶ月くらい試してみる
 → 効果不十分例には、
 ✓ 手掌発汗などの交感神経緊張所見あり
 → 小建中湯(99)、柴胡桂枝湯(10)、四逆散(35)を追加
 ✓ 不安や動悸 → 桂枝加竜骨牡蛎湯(26)、柴胡加竜骨牡蛎湯(12) を追加
  → 2剤併用でも効果不十分の場合は、 
・抑肝散(54)/抑肝散加陳皮半夏(83)に切り替える
 ✓ 鎮静効果が強く即効性がある
 ✓ 易怒性を伴い精神緊張や情緒不安を認める運動チックやトゥレット症、
  ADHDやOCD(強迫症)などの併存例への第一選択薬
 
・甘麦大棗湯・抑肝散併用でも無効の場合は、西洋薬(タンドスピロン、アリピプラゾール、グアンファシンなど)を考慮(小児精神科専門医の診療) 

トゥレット症(Tourette syndrome)
● 頻度:小児の3〜8人/1000人
● 典型的な経過:
・6歳頃に単純運動チックで発症
・1〜2年後に音声チックが加わる
・成長と共に複雑チックが増える
・10〜12歳で症状悪化のピーク
・青年期に軽減していく
・成人後も2割に残る
● 病態:
・発症年齢の4〜9歳頃の神経発達は、
 セロトニン神経・オキシトシン神経未熟
 → ドパミン神経・ノルアドレナリン神経が暴走
 → 小児疳症、夜驚症、感覚過敏などになりやすい
● 治療:
・抗ドパミン作用薬(リスペリドン、アリピプラゾール)が有効
 ✓ 中枢神経刺激薬(メチルフェニデートなど)で悪化
・漢方薬:有効44%、やや有効48%(岩間ら)
 
 
<参考>
方剤解説(この項目で紹介した漢方薬) 

食べる・食べないを巡って、食事時間は子どもと保護者のバトルが発生しがちです。
 ✓ 食卓で遊び出す
 ✓ 食べ物を投げる
 ✓ 食卓から逃げ出す
 ✓ 食べるのに時間がかかる
等々。
それをどううまく乗り切るか、専門家のアドバイスを聞いてみましょう。

基本は、
・子どもの行動の背景を理解する
・子どもの気持ちに共感し、望ましい行動を肯定文で提案する
・評価する言葉、質問形は使わない 
・大人がユーモア、遊び心のある態度を取る
等々。

そして、好ましくない行動が発生したとき、
保護者が取るべき行動にはポイントがあります。
それは「完全無視」。

★ 好ましくない行動(食べようとしない、食事中に立ち上がる、さわぐ・泣きわめく、食器で遊ぶ、食べ物で遊ぶ、食べ物を投げる)は完全無視
・好ましくない行動に、保護者が「ダメ!」と反応すると、
 注目されたと勘違いしてその行動を繰り返す。
(具体例)
✓ 「こら、またやってる!」
✓ 「いいかげんにしなさい!」
✓ 「お願いだからやめて!」
✓ 「もう、ちゃんとしなさい!」
・好ましくない行動が始まったら注目せずに完全に無視する。
(具体例)
✓ 好ましくない行動が始まったら「注目しない」を開始する。
 少しでも相手をすると子どもは「認められている」と感じる。
✓ 体の向きを変え、子どもと視線を合わせない。
 親が怒っている様子も見せない。
✓ 好ましくない行動がおさまるまで注目しないでおく。
 反応すると好ましくない行動がエスカレートする。
✓ 好ましい行動が出たらすぐにほめる。
 すると、好ましくない行動が自然に減っていく。

そして逆に、子どもが好ましい行動をしたときも、
保護者が取るべき行動のポイントがあります。

★ 子どもの好ましい行動は「まねる」「言語化する・実況中継する」
・口に入れるだけで大げさに「上手上手〜」とほめがちだが、
 何度も使っているうちに効果が薄れ、
 何をほめられているのかよくわからなくなり、
 うれしくなってそれ以上食べなくなることもあるのでお勧めできない。
・して欲しい行動が始まったらすぐに、
 その行動を(スポーツの実況中継のように)言葉にすると、
 子どもはその行動をさらにしたくなる。 

以上のことは、子育て本を読むと「応用行動分析」という心理学として説明されていることが多いですね。
私はこの手の本を読むといつも、
「動物の調教に似ている」
と感じてしまいます。
・・・では実例を見ていきましょう。


▶ 離乳食 → 取り分け食の頃から好き嫌い・偏食が目立ってきた
・されるがままであった乳児期を過ぎ、不快なことを拒絶するまで発達が進んだ証拠。
・まだ言葉で表現できないので行動(顔を背ける、払いのける、怒る、泣く、逃げ出す)に出る。

▶ 「食べる」という言葉を嫌がる
・「ご飯だよ」「食べよう」の代わりに、
 「手を洗う人!」「座る人!」「座る時間だよ」と声をかける。

▶ 食べることに興味がない(乳児型食思不振症)
・特徴;
 ✓ 食べる品数は少なくない(ふつう20以上)
 ✓ 食べる量が少ない
 ✓ その日により食べる・食べないが予測できない
 ✓ 体格はほっそり・線が細い
 ✓ 一人っ子のことが多い
 ✓ 両親ともとても心配して子どもに干渉している
 ✓ 乳児期の哺乳もチビチビ飲み、眠いときに意識して飲ませていた
・食べるより遊びが好きな子ども。
・起きている限り動き回っている。
・遊びが大好きで常に交感神経緊張状態。
・副交感優位になる状況を退屈と感じ、遊び食べがなかなか治らない。

▶ 椅子に座りたがらない
・その椅子が子どもの年齢・発達にあったものか再確認する。
・あらかじめ、食事時間を予告する。
・時間が来たら家族が食卓に座って楽しそうに食事をはじめ、
 本人がやってくるのを待つ(無理強いはしない)。
・時間が来て家族が食べ終わったら、本人不参加でも食べ物を片付ける。

▶ 食べ物を食べる前に拒否る
・2〜3歳の頃は、食べ物を色と形で判断する。
・5〜7歳までは、味よりも手触りと見た目で判断する。
 → つまり、見ただけで食べないという行動は“あるある”。 

▶ 新しい食べ物(味や形)を拒否る
・新しい食べ物はモンスターに見える。
・新しい食べ物は(ストレスにならないように)2〜3日以上の間隔で最低10回以上出すべし。
 ✓ 5回くらいであきらめない!
・何回も出しているうちに慣れてきてお友達になれる可能性アップ。

▶ 母乳ばかり飲んで離乳食が進まない
・「おっぱいをいつまでも飲んでいるから離乳食が進まない」
 と考えがちであるが、これは正しくない。
● 対応
・生活リズムを年齢相当に整える。
・強制のない状態で食卓につく。
・保護者や家族が楽しく食べる様子を見せる。
・1歳を超えているなら、
 ✓ 1日3回は食卓につく。
 ✓ 母乳は食卓では与えない(寝室など、別の場所に決める)。
● ポイント
・母乳育児でも固形食の食べる能力の発達に差はない。
・食べない理由は母乳のせいではない。

▶ 好きなものがないと「〇〇が食べたい」とごねる、グズる
・ぐずっても希望通りのものは出さない。
・出してしまうと「ごねり勝ち」を学習して繰り返すことになる。
・結果的に、食べる品数が増えない、減っていく。
・食事のメニューを決めるのは「親の仕事」であり、
 子どもに主導権を渡すと問題が発生するパターン。 
(対応)
・子どもが食卓にない「〇〇が食べたい!」と言い出したら、
「ふ〜ん、〇〇が食べたいんだね」
「そうか、じゃあ〇〇は今度出すね」
・食事の時に遊んでいてあまり食べなかった子どもが1時間後に、
「お腹空いた、〇〇を食べたい!」と言い出しても出さない、
「さっき食べなかったからでしょ!」と叱るのもNG、
「ふ〜ん、〇〇を食べたいんだ」
「今度、✖️✖️の時に出すよ」と次の食事時間を知らせる。

▶ 手づかみ食べをさせると、グチャグチャにしたり投げたりする
・3歳までの子どもにとって、食べることと遊ぶことに違いはない。 
・この年齢の子どもに「食べ物を粗末にしてはいけません」は通用しない。
・初めてのものはモンスターに見える・・・見て、触って、ニオイを嗅ぎ、周りの大人がどう扱っているか観察し、大丈夫と判断した時点で始めて口にする。 

▶ 食べさせようとすると大人の口に入れてくる
・1歳台はものまねが大好き。大人が食べさせようとする動作をまねる行動。 
(対策)
・1回目は「ありがとう」と言って食べる。
・2回目も「ありがとう」と言ってひとくち食べ、食べ物を手に持つ。
・3回目は「ありがとう、今あるよ、はいどうぞ」と子どもに返す。
・4回目以降も「ありがとう、今あるよ、はいどうぞ」を繰り返す。
・繰り返すうちに子どもは飽きてゲームオーバー。

▶ 他人のお皿のものを取りに来る
・9歳までは、自分のお皿のものも隣のお皿のものも、違いがないと思っている。
・他人のお皿のものを取ることを「行儀が悪い」と遮っても子どもには理解できない。
(対策)
・大皿から小皿に取り分ける方法を選択する。

▶ 手づかみ品を出すと、一瞬で投げてしまう
・新しい食べ物はモンスターに見える。
・反射的に視線から外したくなり投げることが多い。
・3歳までは食べることと遊ぶことの違いがわからない。
・「投げちゃダメ!」と言い聞かせても理解できないので、怒るか泣くか。
・感覚遊びを取り入れながら、馴染みのない食べ物をモンスターから友だちにする。
(対策)
・問題行動(投げること)には注目しない:1歳前半の子どもの場合、親が注目をやめると比較的早期に飽きてやめる。
・子どもの気持ちにネーミングして対処する、約束を述べる:「食べ物さんはテーブルにいるよ、心配ならここに片付けてもいいよ」
・「〜してもいいね」フレーズで適応行動を提案する。
 ✓ 「ボールに入れてもいいね」
 ✓ 「テーブルの向こうに押してもいいね」
・食卓への出し方を変えてみる。
 ✓ 大人が美味しそうに食べているところ繰り返し見せ、興味を示したら、ちょっともったいぶって、ほんの少しだけ出す。
 
▶ 食べさせてもらいたがる(自分で食べられるけど)
・「スプーンにのせるところまでママね」「一回だけね」

▶ えずく、吐き出す(スプーン食べの場合)
・食べ物がのどの粘膜に当たりオエッとなったり、
 吐き出しそうになったりするのは生理的な防御反応(咽頭反射)。
・スプーン食べでは子どもが自ら食べ物を触って確認するステップがない。
・いきなり食形態の違うもの (ドロドロ〜固形物)が敏感な口の中に入ると、
 パニックになることがある。
・食形態を変える場合は少量から試し、唇に触れさせ、
 舌先で確認して慣れるようサポート。

▶ えずく、吐き出す(手づかみ食べの場合)
・手づかみ食べを始める際に、えずいたり、吐き出したりするのも生理的な防御反応。
・食べ物を見て、自分で触って、確認しても、
 口に入れたら「思うような味・食感ではなかった、処理できない」
 様な場合にえずいたり吐いたりすることがある。
・食べ物を細かくしないで手づかみサイズを長さ7〜8cmのスティック状にするとよい。
 これは万が一のとき、保護者が口から取り出しやすいサイズでもある。
・手づかみ品を自分から食べる方が、ドロドロやペーストで与えられるよりもえずき・嘔吐は少ない。
・手づかみ食べよりスプーンで与える方が、のどに詰まらせる頻度は高い。

★ 食べ物を吐き出した時の対応こちらも参照)
・呼吸をしておらず、顔色が悪いときは「窒息」 → 救急対応(日本小児科学会) 
・その時、呼吸をしていて顔色が悪くなければ問題ない。
・保護者があわてると、子どもはビックリしてパニックになるかもしれない。
・保護者は落ちついて笑顔で「オエッとなっちゃったんだね、出してごらん」と、
 前屈みになって吐き出す様子を見せてまねをさせる。
・吐き出せないようなら「お手伝いするね」と言ってから、
 口にあるものを取り出してあげる。

▶ 食べさせると口の中にため込む、丸呑みをする
・食べる機能(口腔機能)と食事形態のミスマッチがあると、
 飲み込めずに口の中にためたり、困って丸呑みすることがある。
 → こちらを参照

▶ 食事中に椅子から降りてリビングへ行こうとする
(対応)
・知らんぷりして保護者は食事を楽しそうに続ける。
・誰も相手をしないと大抵子どもは戻ってくる。
・戻ってきたらニコニコ笑顔で迎える。
 
▶ 母乳・ミルク以外は拒否るので保育園で預かってもらえない
・発達段階をチェック(小児科受診)
・強制(スプーンを含めすべての食べさせる行為)をやめる。
・同じ食卓で保護者・家族が楽しそうに食べる様子を見せて安心させる。
・手づかみ食べを導入。
  ✓ 家族が食べているものから一つ、トレイに出す
 ✓ それを見て、触り、ニオイを嗅ぎ、つかむ(投げる?)、
 などの過程を経て安心すれば、口につけるようになる可能性あり

▶ 園で水分を摂取したがらない(自宅では飲める)
● 対応
・容器を馴染みのもの(いつものコップ、あるいは水筒)にして、
 他の子どもたちと一緒の時間、一定の時間にそれを渡す。
・自宅でのタイムテーブルを園に合わせる。
(例)「〇〇で遊んだら次は水筒でゴクゴク」
(例)「〇〇のあとは水筒でゴクゴク」
・飲み物の味を徐々に変えて水に慣れさせる。
(例)自宅でジュースばかり飲んでいる場合、
 気づかれないくらい少しずつ水で薄めていって最後に水でも飲めるようにする。
・園全体の取り組みとして:
✓ 児童全員に対してあらかじめ設定した「水分摂取タイム」を見える化する。
✓ 「ゴクゴクの時間だよ」「まわりの友だちがゴクゴクしているよ」と知らせる。


・・・さて、上記の問題と対応をルール化できないものでしょうか。
大山牧子医師が上手にまとめていますので紹介します。
始めにこの文章を読んだときはピンときませんでしたが、
偏食について調べれば調べるほど、
このルールが正しいことがわかってきます。

<食卓での親子の役割分担>

● 保護者の役割は「いつ」「どこで」「なにを」食べるか決めること

(いつ) → 規則正しい食事とおやつを提供する
⭕️ 2歳まで:3食+軽食2回(朝食・午前軽食・昼食・午後軽食・夕食)
⭕️ 2歳以降:3食+軽食1回(朝食・昼食・午後軽食・夕食)
⭕️ 食事間隔を2.5〜3時間開ける
⭕️ 1回の食事時間を15〜30分
❌️ 1日3食
❌️ 食事と食事の間に欲しがったら与える(ダラダラ食べ)
❌️ 1回の食事時間が40分以上

(どこで) → 家族が食べる食卓で一緒に
⭕️ 座位保持から独步まで(6ヶ月〜1歳):ハイチェア
⭕️ 小走りし始めたら(1歳半〜2歳以降):ステップチェア
⭕️ 座卓の場合は豆椅子
 ✓ 1〜2歳:背もたれつき
 ✓ 3歳以降:円座(硬めの正座用クッション)
⭕️ 外出時は親が決めた場所
❌️ 親が食事の途中に離席する
 ✓ 離席した子どもの相手をするため
 ✓ 食卓にないものを取りに何度も立ち上がる
❌️ テレビやビデオ、YouTube、スマホ、タブレットを見せる
❌️ 親が食事中に食卓で授乳する

(なにを)
⭕️ 栄養バランスの取れたメニューを決めて出す
❌️ 何を食べたいか子どもに聞く
❌️ 出すつもりではなかった食べ物を出す
❌️ 食べる順番を決めて守らせる
❌️ 食べ物をごほうびにする

● 子どもの役割は「食べるかどうか」「どのくらい食べるか」を決めること
〜そのためには保護者は子どもを信頼する必要がある、すると・・・
⭕️ 食べる・食べない・食べ残すを決める
⭕️ 好きなものだけ食べる、嫌いなものは食べない
⭕️ その食卓のメニューのおかわりをする
❌️ その食卓のメニュー以外のものを要求する

● 上記の役割分担の境界線を越えると、摂食の問題が発生する
(例)子どもが何をどれだけ食べるかを保護者が決める・コントロールする
(例)子どもに献立を決めさせる
● 上記の役割分担を守ると子どもたちは食べることを楽しいと感じるようになる




<参考書籍>
食べない子が変わる魔法の言葉(山口健太著、辰巳出版、2020年発行) 
子どもの偏食外来(大山牧子著、診断と治療社、2023年発行)
子どもの偏食Q&A(大山牧子著、中外医学社、2024年発行)
子どもの偏食相談スキルアップ(大山牧子著、診断と治療社、2025年発行)
発達障害児の偏食改善マニュアル(山根希代子監修、藤井葉子著/編集、中央法規出版、2019年発行)

<参考サイト>
きゅうけん(月刊給食指導研究資料)
・(動画)食べない子ども・偏食への対処法(大山牧子)
・(動画)小児摂食障害(食物アレルギーを持つ子どもの場合を含む)(大山牧子)
発達障害の方の偏食・摂食のご相談(藤井葉子)
 
  

偏食について調べていると、
「この対応は〇〇の点でNG」
という表現に何回も出会いました。

どうやら、偏食になりにくい「理想の食習慣」「望ましい食事習慣」が存在するようなのです。
いくつかの書物から抜粋して要約しました。


▢ 子どもが楽しく食事するために必要なこと
● 適切な生活リズム
 ✓ 睡眠
 ✓ 便秘
● 適切な食事環境
● 適切な保護者のスタンス
● 適切な親子の役割分担

▶ 適切な生活リズム:睡眠
・眠る時間と起きる時間を決める。
・起きている間は、2.5〜3時間ごとに食事を取る。
・食事時間は15〜30分とする。
・夕食と風呂は眠る1時間前までに済ませる。
・眠る1時間前には激しい遊びをしない。
・眠る1時間前から部屋を暗くし、ブルーライトはオフにする。

▶ 適切な生活リズム:食事の時間枠
・2歳以降は3回食と1回の軽食で合計4回。
・保護者が食卓に座り一緒に食べる。
・食事の開始と終了を予告する。
・子どもが食卓に来なくても大人は食べはじめ、時間が来たら予告して終了する。
・片付けたら次の食事時間まで食べ物は出さない。
・食べる時間を子どもに合わせると時間の枠組みが作れない。
・いつ食べ物を出すかは保護者の仕事。
・大人によって態度が違う、同じ保護者でも気分によって態度が違う、はタブー。
・1回でも要求が通ると、子どもは「自分が欲しがったらいつでも食べ物が出てくる」と学習する。
・食事の場所と時間の枠組みを作るのは“しつけ”ではなく保護者の仕事。
・保護者の仕事を子どもにさせるとバトルが発生する。
・子どもの仕事は「決まった時間と場所で出されたものを、食べるか食べないか決める、食べる量を決める」こと。

▶ 適切な食事環境ー椅子と食卓の高さを調整
・子どもは少し姿勢が崩れたり、テーブルや椅子が体に合わないだけで食べられなくなる。
・食べるという微細運動を効率よく行うためには、粗大運動である座位を安定されることが重要。
・座位の安定のためには、足底で踏ん張って下腹部のコアマッスルに力が入ることが必要。 
・理想の姿勢(椅子とテーブル)のポイント:
(1歳まで)
 ✓ ハイチェア(座卓ではローチェア)では足がブラブラしないように、
 ✓ トレイの高さが子どもの乳頭とヘソの真ん中に来るように、
 ✓ 食卓に前腕をつけたとき、肘関節が90°になるくらいに、
  ・・・硬めのクッションやバスタオル、雑誌などで調整する
 ✓ 背当ては肩甲骨まで支える高さを
 ✓ 食卓と椅子に座った子どもとの間に子どものこぶし一つ分くらいのすき間があるように
(1歳以降)
 ✓ 足・膝・股関節が90°になるように調整
 ✓ 足底全体が床・足台に乗っているかを確認 
 ✓ 椅子の座面が広すぎず、子どもの横幅に合っている
・NGな椅子たち
 ✓ 簡易椅子(折りたたみ式で机にガチャンとはめ込むタイプ)
  → 子どもの足がブラブラする、座面が布で沈みやすく座位が安定しない
 ✓ バンボ®、バウンサー
  → 足が安定しない

神奈川県立こども医療センター偏食外来パンフレットより)
スクリーンショット 2025-03-17 10.52.18

▶ 座卓の場合の調整法
・体幹を安定させるため、座卓の高さが子どものおへそと乳頭の真ん中くらいになるような座面の椅子を用意する。
・股関節・膝関節・足関節が90°になるように調節する。
・足底が床につかない場合は足台を使う。
・背当ては必須で肩甲骨まで支えられるようにする。
・3〜4歳以降になると、座卓によっては子どもの太ももが座卓の下面にあたり窮屈になる。その場合は正座やあぐら姿勢をとり、硬めの座卓用クッション当てるなどの工夫をする。
・座卓の場合、子どもと大人で座り方が異なるので、大人のまねをしたい子どもは落ちつかず大人の膝に乗りたがることがある。思い切って高い食卓にして、家族みんな椅子に座るよう切り替えることも検討すべし。

▶ 適切な食事環境ー気が散らない環境を提供
● 食べることに関係のないものを子どもの視野に入れないようにする
・乳幼児(就学前まで)は二つのことを同時に行うことができない。
・子どもは大人より視覚による情報をたくさん得る傾向がある。
・気が散るものが食卓にあると食べ物に集中できない。
・食事の時は、食べ物と食器・食具以外のものは食卓から片付ける。
● “ながら食べ”ではいつまで経っても食べるようにならない。
・食事中にテレビ、ビデオ、YouTubeを見せたり、おもちゃで遊ばせたりすると、
 強制栄養されるだけで食べることを学習できない。
・おもちゃにこだわる場合は、
「食事が終わったら一緒に〇〇しようね、〇〇を見ようね」
と肯定文・提案型で言う(どうしてもグズったら、小さなおもちゃを一つだけ食卓において食事中は触らない約束をする)。
● 空腹過ぎると食卓に座らない傾向がある
・授乳から1〜2時間後に食事時間となるよう調整する。
・1歳以降は食卓では授乳はしない(「授乳は寝室で」などと決めておく)。

▶ 保護者のスタンス
● 楽しい食事の基本はストレスなく食卓に座っていられること
・家族がゆったりと落ちついて座って美味しそうに食べていること、
 その様子を子どもが座って見ていられることから始まる。
・保護者は無意識のうちに「早く座って」「急いで食べなさい」と指示しがち。
 ✓ 「座る」「食べる」は子どもの役割で、保護者の仕事ではない。
 ✓ 保護者は「座ろう」「食べよう」という気持ちになるよう促す係。
 ✓ 相撲の土俵入りをイメージしてゆっくりと。
・子どもが眠いときや体調不良の時以外は、
 一切の強制をやめることで食事に向き合えることが多い。
● 食卓でのしつけや強制圧があると食が進まない
・食べることを強制しない。
・「なんとか食べさせなければ」という保護者の行動には“強制”圧が発生しやすい。
・ストレス下、交感神経緊張状態では食欲が低下する。
・して欲しくない行動には「知らんぷり」して完全無視、
 して欲しい行動にはただちに「ニコ」「いいね」、しかし大げさにはほめない。
・評価する言葉を避ける。
・叱るとかえって注目を浴びたと勘違いして、その行動を助長しがち。
● 強制をやめると・・・
・強制をやめると、親子が一緒に食卓について同じものを食べる余裕が生まれる。
・強制されない安心・安全を感じる食卓で、子どもは初めて新しい食べ物に挑戦できる。
 → 「偏食に一番効果があるのは“強制”をやめること!」

★ “負のスパイラル”と“正のスパイラル”

(負のスパイラル)
 子どもが食べない
  ⇩
 強制する  →  食卓に座らない(家族の食べ方を学ぶチャンスがない)
  ⇩                  ⇩
 泣く・顔をそむける       食べる機能が発達しない
  ⇩
 テレビを見せながら食べさせる(ながら食べ)
  ⇩
 テレビがないと食べない
  ⇩
 食べる機能が発達しない
  ⇩
 食べさせるのに時間がかかる
  ⇩
 親子ともイライラ・疲れる

(正のスパイラル)
 子どもが食べない
  ⇩
 強制しない  → 食卓に座る(家族の食べ方を学ぶチャンス)
  ⇩            ⇩
 親が美味しそうに食べる   ⇩
  ⇩            ⇩
 食べ物に興味を示す・まねをして食べる
  ⇩
 食べる機能が発達する
  ⇩
 家族と同じくらいに食べ終わる
  ⇩
 楽しく食べる

● 保護者は無意識のうちに強制していることに気づいていない
・保護者は子どもに食べさせる際の行動に“強制”の要素があることに気づいていない。
・具体例;
(スプーンの使用)
 ✓ 顔を背ける
 ✓ 手で払いのける
(言葉や態度)
 ✓ ひとくちだけ食べよう
 ✓ おいしいよ〜
 ✓ せっかく作ったのに〜
 ✓ なんで食べないの?
 ✓ お腹が空いているはずだよね?
 ✓ 食べるかどうかみんな見てる
(食べ物で)
 ✓ 食べないものを必ず置く
 ✓ 食べきれないくらいの量を置く

▶ 何を食べるか
・基本は“家族と同じもの”
・2歳未満では生もの以外はOK
・塩分濃度6〜7g/日(WHO基準)で家族全員の食事を用意する。
・月齢6ヶ月以降は取り分け食を手づかみで食べる練習を始められる。


<食卓での親子の役割分担>

● 保護者の役割は「いつ」「どこで」「なにを」食べるか決めること

(いつ) → 規則正しい食事とおやつを提供する
⭕️ 2歳まで:3食+軽食2回(朝食・午前軽食・昼食・午後軽食・夕食)
⭕️ 2歳以降:3食+軽食1回(朝食・昼食・午後軽食・夕食)
⭕️ 食事間隔を2.5〜3時間開ける
⭕️ 1回の食事時間を15〜30分
⭕️ 家族の食事が終わる5分前に「あと5分だよ」と予告する
⭕️ 終了時に「さあ片付けする人」と声がけして一緒に片付ける
❌️ 1日3食
❌️ 食事と食事の間に欲しがったら与える(ダラダラ食べ)
❌️ 1回の食事時間が40分以上

(どこで) → 家族が食べる食卓で一緒に
⭕️ 座位保持から独步まで(6ヶ月〜1歳):ハイチェア
⭕️ 小走りし始めたら(1歳半〜2歳以降):ステップチェア
⭕️ 座卓の場合は豆椅子
 ✓ 1〜2歳:背もたれつき
 ✓ 3歳以降:円座(硬めの正座用クッション)
⭕️ 外出時は親が決めた場所
❌️ 親が食事の途中に離席する
 ✓ 離席した子どもの相手をするため
 ✓ 食卓にないものを取りに何度も立ち上がる
❌️ テレビやビデオ、YouTube、スマホ、タブレットを見せる
❌️ 親が食事中に食卓で授乳する

(なにを)
⭕️ 栄養バランスの取れたメニューを決めて出す
❌️ 何を食べたいか子どもに聞く
❌️ 出すつもりではなかった食べ物を出す
❌️ 食べる順番を決めて守らせる
❌️ 食べ物をごほうびにする

● 子どもの役割は「食べる・食べない」「どのくらい食べるか」を決めること
・子どもは家族の食べる様子を見て、
 自分が食べるべきもの、食べる量を、
 だんだん調節できるようになる能力を持っている。
・家族がバランス良く健康的な食べ物を心から楽しんでいる様子を見せる。
・あとは、保護者は腹をくくって子どもを信頼する。
⭕️ 食べる・食べない・食べ残すを決める
⭕️ 好きなものだけ食べる、嫌いなものは食べない
⭕️ その食卓のメニューのおかわりをする
❌️ その食卓のメニュー以外のものを要求する

● 上記の役割分担の境界線を越えると、摂食の問題が発生する
(例)子どもが何をどれだけ食べるかを保護者が決める・コントロールする
(例)子どもに献立を決めさせる
● 上記の役割分担を守ると子どもたちは食べることを楽しいと感じるようになる

 


<参考書籍>
食べない子が変わる魔法の言葉(山口健太著、辰巳出版、2020年発行) 
子どもの偏食外来(大山牧子著、診断と治療社、2023年発行)
子どもの偏食Q&A(大山牧子著、中外医学社、2024年発行)
子どもの偏食相談スキルアップ(大山牧子著、診断と治療社、2025年発行)
発達障害児の偏食改善マニュアル(山根希代子監修、藤井葉子著/編集、中央法規出版、2019年発行)

<参考サイト>
きゅうけん(月刊給食指導研究資料)
・(動画)食べない子ども・偏食への対処法(大山牧子)
・(動画)小児摂食障害(食物アレルギーを持つ子どもの場合を含む)(大山牧子)
発達障害の方の偏食・摂食のご相談(藤井葉子)
 
 

自閉症スペクトラム(以下ASD)児はこだわりが強い傾向があり、
その6〜9割に偏食があるといわれています。

その特性を理解し、対応を考えましょう。
偏食の解説でも「感覚の問題」として取りあげていますが、
この項目ではASD児の特性という視点から説明します。

子どもの特性は変化しません。
感覚過敏、こだわりは特性・性格の一部なので消えることはありません。
またこの特性は、本人がストレスを感じる場面(まさに食事場面)で出やすい傾向があります。
でも工夫により、少しずつ食を拡げることは可能です。
ポイントは、

 ❌️ 苦手なものに慣れる
 ⇩
 ⭕️ 好きなものから拡げる

に尽きます。
「今、食べられているもの」の特徴(色、形、食感)をつかみ、
その感覚的特徴をもとに、よく似た食材・料理へ拡げていくのです。
ただ、少しの変化にも敏感なので、
本人がわからないレベルでの「顕微鏡的変化」を、
粘り強く、繰り返し試していく忍耐力が必要です。

さらにそれを実行していくベースに、
ストレスなく座れる食卓環境を整えることが必要です。
安心・安全な食事環境ではリラックスできるので、
感覚過敏やこだわりが軽減していくことが期待できます。


▶ 食に関する特徴
・食事拒否が多く食事のレパートリーが少ない
・各栄養素の摂取が少ない
 ✓ ビタミン類(A、C、D)
 ✓ 亜鉛、カルシウム
 ✓ 食物線維
・便通異常が多い:慢性便秘(80%)、慢性下痢(56%) 
・食事不耐症、食物アレルギーが多い

▶ ASD児が抱える様々な問題・課題

● 摂食スキルの課題

・口腔運動の遅れを含む発達遅滞が多い(64%)
 ✓ 食品のタイプまたは食感によるえり好み(94%)
 ✓ 口腔運動の遅れ(15%)
 ✓ 嚥下障害(12%)

● 感覚の課題(姿勢の不安定さを含む運動関連の感覚)
・手の複雑な触覚を使う作業が苦手、複雑な触覚刺激を嫌う
・体の認知能力が低い
・跳躍や飛びつきを好み、自己調整能力が低い
・聴覚過敏
・回る、駆け上がるなどの迷路刺激を好む
・特定の食品の食感やにおいを避ける
・味覚の特性
 ✓ 甘味と塩味はふつう
 ✓ 酸味に鈍い
 ✓ 苦味に鈍い
・乾いた食感(カリカリ、サクサクなど)を好む
・ASD児の食事選択と栄養の適切さの研究からわかったこと:
 ✓ 触感、温度、見た目に対する許容度が狭い
 ✓ ピューレ状のような食感の低い食べ物を受け入れやすい
 ✓ 食感の問題は0歳から始まる
 ✓ 口腔過敏は進行する

● 食事に関連した学習の特徴
・顕微鏡的学習:対象の細かい部分を詳しく見てわずかな違いも新しいものと捉える
 → 確実に同じものでないと同じ食品と思えない、食べ物そのものと容器・パッケージとの分別がつかず、パッケージがわずかでも違うとまったく違う食べ物と思ってしまう
・グループ化が苦手:食べ物の詳細な部分に注目し、全体として捉えられない
 → パッケージを食品の一部として捉えられない

● 行動の特徴
・ほとんどの適応できない特徴は感覚の問題に根ざしている
・コミュニケーションの90%は視覚、10%は聴覚が担当する 
・情報を解読するまで時間がかかる
  → メッセージを受け取れるまで長時間出し続ける必要がある

▶ ASD児の感覚・行動特性を踏まえた食事対応
・感覚過敏だけに注目してもうまくいかない。
・多方面から評価をして理由を探る。
・強制をやめ、ストレスなく座れる食卓にする。
・食事時間に「安心・安全」を感じられるように。
・ASD児にとって、食べることは最も困難な行動の一つ。
 ✓ 不安が強い:食卓についていられない、集中できない。
 ✓ 新しい食べ物はモンスターに見える。
 → 極めて細かいスモールステップ根気よく反復する。
・ユーモアを持って根気強く寄り添って支援する(行動実況放送賞賛法など)、遊び感覚で子どもが食べ物と友だちになるチャンスを与える。
・治療可能な病態(上気道閉塞、便秘、睡眠障害、栄養評価)を見落とさない。

★ 感覚的な課題と口腔運動機能を促進する目的で食卓で食べ物を使った遊びをする方法 (SOS aproach to feeding
<参考サイト>
・子ども偏食少食ネットワーク:摂食のためのSOSアプローチの基本原則
・子ども偏食少食ネットワーク:MISSIONとCONCEPT



<ASD児への食事対策> 

● 保護者の基本姿勢
・多方面から評価をして理由を探る
・強制をやめる
・食卓でのストレスを極力減らす
 ✓ 子どもの気持ちに共感する
 ✓ 望ましい行動を肯定文で提案する
 ✓ 評価する言葉、質問形は使わない
 ✓ ユーモア、遊び心のある態度を取る

● 誰が、どこで、何をするかを視覚化
 → 安心と安定が与えられる
・食事時間のスケジュールを一定にする
・食事開始を一定の行動に:手洗い、行進、着席 
・座っている時間を見える化する:タイマー、イラスト、表など
・食事終了を一定の行動に:あと〇分だよ、一緒に片付け開始、食卓を拭く、ごちそうさま、手洗い
・食事の環境を整備:決まった場所、気が散るものを排除、視覚的に食べ物に集中できるようにする
・食事中の環境を整備:食べ物以外の視覚・聴覚の妨害を最小限にする(ビデオ、テレビ、おもちゃで気をそらさない)
 ✓ ランチョンマットで子どものエリアを見える化
 ✓ 食器を置く位置を固定
 ✓ キャラクターのない無地の食器を使用
 ✓ 子どもの視野に食べ物以外の気になるものが入らないように
 ✓ おもちゃは持ち込まない約束を
 ✓ 食品をパッケージから出して提供する(パッケージではなく食べ物に注目するために)
・一度決めた食事環境は変えない 

● 段階的に食事のバラエティを増やしていく 
・子どもが新しい食べ物を、見る、ニオイを嗅ぐ、触る、味わう、という一つ一つの感覚ステップを踏めるよう、急がせず、穏やかな状況で提供する。
・口に入れることを決して強要せず、 家族自ら楽しく食べている様子を何度もゆっくりやってみせる。
・子どもをばっかり食べ(まったく同じ食品のみを毎食食べ続けること)に陥らせないように、子どもの好きな食品にごくわずかな変化(顕微鏡的変化)をつける。
・1日1回、好きな食品と家族のお皿にある新しい食品を一緒に与え、新しい食品になじむようにする。
・新しい食品を与えるときは、以前は好きで食べていたけれど今は食べない食品と混ぜ、好きな食品からわずかに感覚特性をシフトさせる。混ぜ合わせがうまくいかなかったら、好きな食べ物をほんの少し変える。
・子どもが自ら変化をつけることを促す。
・子どもが食べている最中に食品の違いについて話し合う。
・子どもが親に食品を手渡すことで、食品に触れたり関係を持ったりすることになる。
・食べ物、特に甘いものをご褒美にしない。

なぎさ園給食の食形態の作り方(動画「カリカリ食の作り方」)

▶ 苦手な食材をわからないように混ぜるのはタブー
・食材を混ぜても食べるようにはならない。ごまかしは効かない。
・3歳以降はごまかすとかえって信頼関係が失われ、疑心暗鬼になる。
・苦手な食材はルーに混ぜたり刻み込んだりしない。
(例)カレーはルーとは別に小皿に素材別に置き、
   食べるかどうかは本人に決めさせる。

▶ 栄養素別メニューリスト作成のススメ
・現在食べたり飲んだりできるものをすべて書き出す。
・子どもが自分から少なくとも2〜3口を3回以上食べられる食べ物または飲み物を、主な栄養に分けて具体的にメニューで書く。
・メニューリストから毎食、それぞれの栄養素別に1品目だけ出すようにする。
・丸3日、違うメニューが望ましいが、最低でも2日間はわずかでも(顕微鏡的にでも)違うメニューを出す。
・家族の食事に興味を示したら、「単独の食材で作ったもの」を「小さすぎず、かじったり噛んだりできるサイズ」で「少量」ずつ出す。



<参考書籍>
食べない子が変わる魔法の言葉(山口健太著、辰巳出版、2020年発行) 
子どもの偏食外来(大山牧子著、診断と治療社、2023年発行)
子どもの偏食Q&A(大山牧子著、中外医学社、2024年発行)
子どもの偏食相談スキルアップ(大山牧子著、診断と治療社、2025年発行)
発達障害児の偏食改善マニュアル(山根希代子監修、藤井葉子著/編集、中央法規出版、2019年発行)

<参考サイト>
自閉症の偏食対応レシピ(広島市西部こども療育センター給食研究部)
発達障害の方の偏食・摂食のご相談(藤井葉子)
発達障害児の偏食改善(藤井葉子)きゅうけん(月刊給食指導研究資料)
・(動画)食べない子ども・偏食への対処法(大山牧子)
・(動画)小児摂食障害(食物アレルギーを持つ子どもの場合を含む)(大山牧子)
 

入学前の説明会や面談で「好き嫌いをなるべくなくしてきてくださいね」と言われると、とても不安になります。

私自身、幼少期は肉が苦手だったので、
学校給食があまり好きではありませんでした。

その頃はまだ「完食主義」があり、
「残さず食べなさい」という指導があったのです。 
私はイヤイヤながらも食べられましたが、
友だちの中には吐いてしまった人もいました。
その人にとってトラウマになりそうです。 

保護者・子ども自身・学校(担任の先生)が対立していがみ合うのではなく、
三者が同じ方向を目指して解決していける雰囲気が作れるとよい結果が期待できます。

大切な我が子のことで保護者は胸を痛めて心配しますが、
担任の先生にとっては数十人の生徒のうちの一人であり、
十分な時間とエネルギーをかけて対応するの困難であることを認識しましょう。

ですから「うちの子は偏食なので、こうしてください」と依頼するのではなく、
「うちの子は偏食があります、
 自宅ではこんな風にしていて、
 少しずつ食べられるようになっています」
という状況報告、提案レベルがうまくいくようです。

まず、保護者ができることや担当する役割を紹介します。


▶ 近年は「完食主義」は減少
・昔あった「居残り給食」で子どもが苦痛を感じることは体罰に相当する、という考え方もある。 
・とくに小学校の給食で「無理に食べさせないこと」が大切にされつつある。
・苦手な食べ物は事前に減らせるようになっている学校が多い。 

▶ 学校の先生に「食べられない理由と対応」を求めるのは難しい
・一人一人の生徒に対して「食べられない理由は何?」と把握するのは困難。
・自分の子どもが食べられない理由を各保護者が担任の先生に伝えて根回しすることが必要。

▶ 担任の先生に伝えること5つ
1.食べられない理由 
2.家庭でしている工夫 
3.本人の気持ち
4.これまでの経験や体験
5.(お願いではなく)お助け情報として
ーなどを伝える 。

▶ 「食べられない理由」を伝える 
・食べないことが“子どものワガママ”と誤認されないように理由をしっかり伝える。
(例)
✓ 少食:元々からだが小さくて、食べられる量が少ない。
✓ 食べる機能(口腔機能)が未発達:咀しゃく・嚥下が難しく、苦手な食材がある。
✓ 感覚過敏:受けつけられない感覚が多い。 

▶ 「家庭でしている工夫」を伝える
・具体的に話し、工夫した結果、少しずつ食が広がっている現状を伝える。
(例)
✓ 苦手なものでも食卓に並べるようにしている。
✓ 間食の食べ過ぎに注意している。
✓ 食べるために、調理を工夫している。
 
▶ 「本人の気持ち」を伝える
(例)
・「食べなさい!」と言われると気持ちが萎縮して食欲がなくなる。

▶ 「これまでの経験・体験」を伝える
(例)
・「食べなくても大丈夫」という雰囲気なら食べられる。

▶ 「依頼」ではなく「お助け情報として」伝える
・“依頼” は担任の先生にとって肩の荷が重くなりがち。
・「こうすると指導の助けになると思い伝えました」というスタンスがベター。
・先生 vs. 家族、という構図になるのではなく、 同じゴールを目指すチームをイメージ。

▶ 食べられるものを持参してよいかを確認する
・食べられるものが少なくて体力面が心配なレベル、
 あるいは先生が不安を持っている場合は、
 子どもが食べられるものを持参してよいかどうかを相談すべし。 

▶ 担任の先生と上手くいかない場合は?
・担任以外の先生(養護教諭、園長、教頭・校長先生など) に相談し、
 間接的に担任の先生に伝えてもらう。
・資料を提供する。 
(例)「食に関する指導の手引きー第二次改訂版ー」(文部科学省)
    第6章第1節第3項「指導上の留意点」


3 指導上の留意点

個別的な相談指導を行うに当たって、次の点に注意が必要です。

① 対象児童生徒の過大な重荷にならないようにすること。

② 対象児童生徒以外からのいじめのきっかけになったりしないように、対象児童生徒の周囲の実態を踏まえた指導を行うこと。

③ 指導者として、高い倫理観とスキルをもって指導を行うこと。

④ 指導上得られた個人情報の保護を徹底すること。

⑤ 指導者側のプライバシーや個人情報の提供についても、十分注意して指導を行うこと。

⑥ 保護者を始め関係者の理解を得て、密に連携を取りながら指導を進めること。

⑦ 成果にとらわれ、対象児童生徒に過度なプレッシャーをかけないこと。

⑧ 確実に行動変容を促すことができるよう計画的に指導すること。

⑨ 安易な計画での指導は、心身の発育に支障をきたす重大な事態になる可能性があることを認識すること。 


次に、子ども自身ができることの提案です。

▶ 友だちから「どうして食べないの?」と聞かれたら
・いろいろ言われるのが嫌だから、みんなと一緒に給食を食べたくない
  → 給食が嫌
  → 給食の時間がつらいから学校へ行きたくない、
 というパターンもある。
・「食べられない理由」を子ども自身が友だちに伝えることができると、
 ほとんどのケースでそれ以上何も言われなくなることが多い。
・言いにくい場合は、家庭で練習する(ロールプレイング)。
 (例)お父さん・お母さんが友だち役になり「どうして食べないの?」と子どもに聞く、
 そして子どもが答える、という練習。返答の例として、
 「給食だと緊張して一杯食べられないんだ、心配してくれてありがとう」
 「上手に噛む練習中で、早く食べられないんだよね」
 「苦手なものが多くて、食べられないんだよね」

▶  “食べられたもの”を給食の献立表に⭕️を付ける
・少しずつ増えていくと励み・自信になる。 


最後に、担任の先生ができることを提案します。
 
▶ 給食で対応できることには限界があることを認識
・偏食改善には「その子に合わせた個別対応」が必要であり、給食では個別対応は難しい。
・個別対応にこだわる前に「楽しい給食時間」の演出を心がける。
 
▶ 給食が食べられない子、の理由を把握する
・機能的なものか、感覚的なものか、知らないから・見慣れていないからなのか・・・
・第四の視点として「精神的に給食が嫌になっている」ことをチェック(⇩)。

▶ 「精神的に給食が嫌」になっているサイン 
食べることに対する不安や緊張感が強いと嚥下ができなくなり、あるいは無意識に空気を吸い込む量が増えるため、以下の行動が観察される。
✓ 口にため込む:ずっとモグモグしている状態。
✓ 水分をよく取る:食べ物を流しこもうとして水分を取る回数が増える。
✓ ゲップやオナラをする:呑気症(空気嚥下症)緊張のため空気を吸い込む・飲み込む量が増える
✓ 口数が減る:緊張のため
✓ 無表情になる:緊張のため
 
▶ 「精神的に給食が嫌」な子どもへの対応
1.子どもの気持ちを認める
2.食べられない理由を聞く
3.どうしたいかを本人に聞いて、一緒に対応する
(例)
「保育園・学校には来たい?」 
「教室ではなく、別室だったら食べられる?」
「給食ではなく、お弁当だったら食べられる?」
「教室で食べないことをクラスメートにどう伝える?」
「自分で伝える?それとも先生が伝える?」
 
▶ 保護者と担任の先生とのすれ違いへの対応
1.なぜ給食への要望が出ているのか、背景を考える 
・完食主義が問題になっていることが多い。
2.園や学校でできることと家庭でできることを分ける
・「ここまでは園・学校でできるが、ここからは家庭でしかできない」線引きを保護者に伝える。



<参考書籍>
食べない子が変わる魔法の言葉(山口健太著、辰巳出版、2020年発行) 
子どもの偏食外来(大山牧子著、診断と治療社、2023年発行)
子どもの偏食Q&A(大山牧子著、中外医学社、2024年発行)
子どもの偏食相談スキルアップ(大山牧子著、診断と治療社、2024年発行)
発達障害児の偏食改善マニュアル(山根希代子監修、藤井葉子著/編集、中央法規出版、2019年発行)

<参考サイト>
きゅうけん(月刊給食指導研究資料)
・(動画)食べない子ども・偏食への対処法(大山牧子)
・(動画)小児摂食障害(食物アレルギーを持つ子どもの場合を含む)(大山牧子)
発達障害の方の偏食・摂食のご相談(藤井葉子)
  

よくある偏食相談例と対応方法を提示します。
ポイントは、
食べられるものから拡げる>食べられないものに慣れる
です。
食べられる食材・料理の特徴(形・味・食感・温感)を捉え、
それに似せるよう苦手な食材の調理方法を工夫し、
少しずつ、少しずつ、進めましょう。
半年〜数年先に達成できればよい、くらいのスタンスで。

それから「食べる以前の生活・環境整備」も大切です。
・十分な睡眠は取れているか?
・便秘はないか?
・食卓の設定(椅子など)は適切か?
・食事環境(気が散るものがたくさんある?)は適切か?
・しつけや強制圧がないか?
等々、心当たりがあれば改善してください。

そして、これは偏食外来の書籍を読んで、
家族が楽しく健康的な食事をするためには、
食卓での親子の役割分担
という視点を持つとよいことを知り、目からうろこが落ちました。
具体的には以下の通り(Satterの「摂食における役割分担」より);

● 保護者の役割は「いつ」「どこで」「なにを」食べるか決めること

(いつ) → 規則正しい食事とおやつを提供する
⭕️ 2歳まで:3食+軽食2回(朝食・午前軽食・昼食・午後軽食・夕食)
⭕️ 2歳以降:3食+軽食1回(朝食・昼食・午後軽食・夕食)
⭕️ 食事間隔を2.5〜3時間開ける
⭕️ 1回の食事時間を15〜30分
❌️ 1日3食
❌️ 食事と食事の間に欲しがったら与える(ダラダラ食べ)
❌️ 1回の食事時間が40分以上

(どこで) → 家族が食べる食卓で一緒に
⭕️ 座位保持から独步まで(6ヶ月〜1歳):ハイチェア
⭕️ 小走りし始めたら(1歳半〜2歳以降):ステップチェア
⭕️ 座卓の場合は豆椅子
 ✓ 1〜2歳:背もたれつき
 ✓ 3歳以降:円座(硬めの正座用クッション)
⭕️ 外出時は親が決めた場所
❌️ 親が食事の途中に離席する
 ✓ 離席した子どもの相手をするため
 ✓ 食卓にないものを取りに何度も立ち上がる
❌️ テレビやビデオ、YouTube、スマホ、タブレットを見せる
❌️ 親が食事中に食卓で授乳する

(なにを)
⭕️ 栄養バランスの取れたメニューを決めて出す
❌️ 何を食べたいか子どもに聞く
❌️ 出すつもりではなかった食べ物を出す
❌️ 食べる順番を決めて守らせる
❌️ 食べ物をごほうびにする

● 子どもの役割は「食べるかどうか」「どのくらい食べるか」を決めること
〜そのためには保護者は子どもを信頼する必要がある、すると・・・
⭕️ 食べる・食べない・食べ残すを決める
⭕️ 好きなものだけ食べる、嫌いなものは食べない
⭕️ その食卓のメニューのおかわりをする
❌️ その食卓のメニュー以外のものを要求する

● 上記の役割分担の境界線を越えると、摂食の問題が発生する
(例)子どもが何をどれだけ食べるかを保護者が決める・コントロールする
(例)子どもに献立を決めさせる

● 上記の役割分担を守ると子どもたちは食べることを楽しいと感じるようになる


では、具体的な相談を例示します。


▶ 離乳食に興味を示さない
● 対応
・発達段階にあった椅子を用意する(歩き始めるまではローチェア)。
・保護者が一緒に食事をしてお手本を示す。
・食べさせない、食べることを強制しない。
・子どもが興味を示したら、その食べ物を自分から食べるよう支援する、手づかみでもOK。
・飽きたら次の食べ物を出す。
・飽きていやがる前に椅子から下ろす。
● ポイント
・「乳児型食思不振症」タイプで、哺乳時期から始まることが多い。
・哺乳歴を聞くと「母乳でもミルクでもチビチビ飲みで、眠いときに意識して飲ませていた」というのが典型例(覚醒レベルの調節不全)。
・このタイプの子どもは、起きている限り動き回り、遊びが大好きで交感神経優位。
・座って食べるという副交感神経優位にする状況を退屈と感じ、遊び食べがなかなか治らない。

▶ 離乳食が思うように進まない、食事中も母乳をせがむ子ども
・生後6ヶ月〜1歳までは成長曲線に沿って健康であれば、
 食べる量が少なくても気にせず、欲しがるままに母乳を与えて良い。
・1歳以降になっても食べる量が少なく、すぐに授乳をせがむ場合の対処法は以下の通り:
● 対応
・空腹過ぎるときは食卓に座らないことが多いので、
 授乳時間と食事時間を調整し、
 授乳から1〜2時間後に食事時間を設定する。
・1歳以降は嘱託で子どもが授乳をせがんでも、
「ママは今、食べているよう」「ママが食べ終わってからね」
 と言って相手にしない。
・1歳以降は「授乳は寝室で」などと決めて、昼間はできるだけその場所に行かないようにする。
・朝起きてすぐ、昼寝前、夜寝る前はたっぷり授乳、また、疲れた時は安心のための授乳を。
● ポイント
・食事量が少ないことを心配して母乳の量を減らしたりやめたりしても、
 食べるようにはならないため、母乳はそのまま続けるべし。
・食卓に座ることがストレスになっていると、子どもは授乳をせがむ傾向がある。
・空腹すぎるとき、眠いとき、体調が悪いときは食卓に座っているのは難しいので、
 無理に食べさせずに寝かせる。

▶ ベビーフードばかり食べる
・ベビーフードばかり食べて、家族の食べるものに興味を示さない。
● 対応
・家族と一緒に食卓を囲み、家族が一緒に楽しそうに美味しそうに食べる様子を見せる。
(もしかしたら食べさせることに注力しすぎて保護者は食べていないかもしれない)
・すると子どもは興味を示して自分から手を出してくるかもしれない。
● ポイント
・ベビーフード自体は悪くない。
・ただ、家族と同じものを食べていないという点で、食が広がりにくいデメリットがある。
 
▶ 牛乳を飲めない(牛乳アレルギーと乳糖不耐症を除く)
● 対応
・好きな感覚を手がかりに少しずつ飲めるよう工夫していく。
・ 牛乳と親和性のある飲み物(お茶、飲むヨーグルト、カルピス、ココアなど)はキーアイテム。
・上記のうち今、子どもが飲めるものに、牛乳を少しだけ追加して飲ませることから始める。飲めたら牛乳を入れる量を少しずつ増やし、徐々に100%の牛乳に近づけていく。急ぐと失敗する。
● ポイント(こちらも参考に)
・ 上記の方法で牛乳をある程度飲めるようになったら、100%牛乳にトライする前に、「牛乳パックから牛乳をコップに注ぐ様子を子どもに見せる」ことが重要。これをやらないと、コップに入った牛乳は飲めるけど、パックから出てきた液体は別のものだから飲めない、という事態になりかねません。

▶「吸い食べ」のクセがある
・決まったものしか食べない、チューチュー吸うような食べ方をする子ども。
・食事の形態が広がりにくい。
● 対応
・スプーンで与えることを嫌がらず、食べ物が口に入った後に唇を閉じて横に引き延ばす動きがあれば、以下のことを試す。
✓ 食事の形態を変えるときは、好みの味のペーストの中にやわらかいつぶがほんの少し混じるようにする。
✓ ペーストで食べていた量より少な目のひとくち量を、スプーンの先端で下唇にのせるように置く。
✓ 「〇〇のつぶつぶさんだよ、モグモグね」などと言いながら、子どもの表情を見る。
✓ 子どもが嫌がらず上顎と舌でモグモグし始めたら大丈夫、少しずつ粒の量を増やしていく。
・スプーンで与えられることを嫌がり、かつ走れるようになっても吸い食べをするようなら、好きなフレーバーの下腿ものを噛む練習を保護者が一緒にしながら、前歯で噛んで歯ぐきに持っていく遊びを提案する。
● ポイント
・スプーンで粒のあるものを与え始めた頃に舌を左右に動かして食べ物を左右の歯ぐきに持っていって噛むことを学んでいない可能性がある。
・椅子とテーブルのセッティングが適切でないことがある。
・いろいろ試しても改善がないなら、口腔機能を評価できる歯科医の受診を提案する。

▶ 野菜嫌い
・就学前〜小学校低学年までは「野菜は体にいいから食べなさい」を理解して食べることは難しい。
・食物線維が取れないことを心配している保護者には、キノコ類、海藻(ワカメ、海苔)などを提案する。
・「苦手な野菜を食べさせる」から「野菜と友だちになる」という発想への転換が必要。
● 対応
・親子の役割分担を再確認する。
✓ 食べる・食べないは子どもが決める → 食卓で強制することをやめる。 
✓ 食卓で大人が美味しそうに食べる要する見せる。

 ▶ 野菜嫌い&フライドポテトが好き
〜毎日の食事が数種類に固定化され、肉・魚・野菜類をほとんど食べない幼児

● 対応
・まず保護者が楽しく食事し、それを子どもに見せること。
・ファストフードのフライドポテトが食べられることに注目し、そこから食を拡げていく。
・食べられない食材の「ささみ」「ほうれん草」をフライドポテト の形状・味に近づけて調理。それぞれ細長い形に切って小麦粉をつけて揚げ、濃いめの塩味に仕立てる。
・空腹は最高の調味料・・・ 間食を減らしてお腹を空かせたり、好きなものを出し過ぎないよう食事全体の量の調整を並行して行う。
・食べてくれたら、以下のことを少しずつ進めて食を拡げる;
 ✓ 形を大きくしていく:千切り → 細切り → 短冊切り →  → 一口大
 ✓ 衣の量を減らしていく:最初は多め → 次第に素揚げに近い形へ
 ✓ 塩味を薄くしていく:少しずつ気づかない程度に
・揚げたものをある程度食べられるようになったら他の調理法にも挑戦;
 ✓ カリカリ感を減らしていく:揚げたもの → しっかりと硬く焼いたもの
  → 柔らかな食感に焼いたもの → 煮物
・食べられるものが増えてきたら、見た目・形状もアレンジしていく。
・食材に慣れてきたら、「調理を工夫したもの」と「同じ食材を少量、ふつうに料理したもの」を並べて「同じ食べ物なんだよ」を伝える。
 ● ポイント(こちらも参考に)
・子どもに人気の「フライドポテト」・・・小麦粉をつけて揚げる調理法は比較的子どもが口にしやすい。カリカリした食感が好きな子どもの場合、厚切りより千切りの方がお勧め。 
・食を拡げていく際に、見た目・形状はできるだけ変化させないことがコツ。
 
▶ 手作りのものを食べない(スーパーの惣菜、特定のメーカー・お店の食品は食べる)
● 対応
・手作りコロッケは食べないけど、スーパーの惣菜コロッケは食べられる子の場合、食感の違いがあるなら、惣菜の食感に似せる工夫をする。味の濃さ、温度、油っぽさ・・・を意識して調理する。
・食べられたら徐々に受け入れられる間隔を広げていく。濃い味 → 少しずつ薄味へ。
● ポイント(こちらも参考に)
・大人にとっては同じ食品・料理でも、子どもにとっては「見た目・味・食感・風味」から別物に見えていることがある。特に感覚が過敏な子は、本当に小さな違いも察知する。
・スーパーの惣菜やインスタント食品は、家庭料理より塩味が強く、味が常に一定という特徴がある。子どもは安心して口にすることができる。
・感覚過敏系の子どもには、今の感覚に合うものを提供しながら、少しずつグラデーション状に 食べられるものを拡げていく。
・ 子どもの偏食改善には、
①「見た目」
②「味や食感」
の2つを両立するのが大切で、
「口すらつけてくれない」 → ① がクリアできていない、
「ひとくち食べても、ふたくち目は食べてくれない」 → ① はクリア、② がクリアできていない
と考えて対応する。

▶ ふりかけ類がないとお米が食べられない
● 対応
・ ご飯にかけるふりかけ類の量を大人が調整し、半年〜年単位で少しずつ減らしていく。
・すると少しずつふりかけ以外のおかずに手を伸ばすことが増えるはず。

▶ 鮭フレークは食べられても焼き魚の鮭の切り身は食べられない
● 対応
・少なめの① 鮭フレークと② 焼き鮭の切り身をフレーク状にほぐしたものを用意する。
・① を食べた子どもが「もっと欲しい!」と言い出したときに ② を与えると、口をつける可能性がある。
・② が食べられるようになったら、子どもの目の前で「焼き鮭の切り身をほぐす様子」を見せ、「これとこれが一緒なら切り身も食べられるかもしれない」ことを覚えてもらう。これを繰り返す。

▶ 調理方法が変わると食べられない
● 対応
・調理方法が変わると、それらを同じ食材だと認識できない子どもは少なくない。
(例)フライドポテトとジャガイモは同じもの?
・形が変わる様子や、容器へうつす様子を繰り返し見せて「同じもの」という事実を子どもにインプットする作業が必要。
・いつも食べているものと「同じ」ということがわかれば、それが「安心」につながり、
次第に違う料理法のものでも口をつけられるようになっていく。

<参考>
・「はじめてのずかん たべもの」(高橋書店、2022年発行) 


▶ 苦手なものを食卓に出すと怒る
● 対応1:感覚過敏系
・基本的には(食べなくても)苦手なものも食卓に並べた方が食が広がりやすい。
・しかし程度が強いときは、子どもに感覚過敏(ニオイに敏感、など)があるかもしれない。そのような例では「安心できて楽しい食卓」を優先して並べるのを控える。
・対策としては、子どもの好きなものに似ていて、かつ、ニオイの薄いもの・弱いものから食卓に並べていくことも選択枝。
● 対応2:完食圧系
・「食卓に並んでいるものは食べなければいけない」と叱られた経験や、苦手なものを毎食「ひとくち食べてみたら?」と言われた経験がある、つまり嫌な記憶があると拒否することがある。 

 苦手なものは食べたくない
  ⇩
 食卓に並んでいるものは食べなくてはいけない
  ⇩
 最初から並べないで欲しい
  ⇩
 拒否!

・子どもから離れた場所に苦手な食べ物を置き、食べることを勧めない。
・食卓に並んでいても無理に食べされられないことがわかるとだんだん怒らなくなっていく。

▶ 食材が混ざると食べられない
(例1)焼きそばは食べられないけど、麺・人参・モヤシを単独で焼いたものなら食べられる
(例2)牛丼は食べられないけど、白いご飯と牛肉の煮込みなら食べられる
● 対応 
・感覚の問題が多い。 
① 視覚:混ざっている状態が(子ども本人には)グロテスクに見えたり、まずそうに見えたり、食材がなんなのかよくわからず手をつけにくかったり。
② 食感や味覚:牛丼の汁でご飯が軟らかく湿った状態が気持ち悪く感じたり。
・好きな感覚からはじめて拡げていく・・・混ざったものを分ける。
・分けた状態で、好きなものは食べるけど、苦手なものを食べないときは、
「苦手なもの“ひとかけら”を好きなものと一緒に食べてみることを提案し、
 もし食べられたら「〇〇(苦手なもの)を食べられたね」と認める言葉をかける。
 
▶ お弁当に何を入れたらいいのか(苦手なものを入れるべきか)わからない
● 対応
・お弁当では食を拡げるよりも、子どもがお弁当を楽しめることを優先すべし。
・お弁当の中身は「好きなもの多めの法則(⇩)」を守らなくてよい、
好きなもの:ふつう(食べたことがある):嫌い(苦手・はじめて)=3:5:2
 “好きなもの多め”、“チャレンジメニューは少な目”でいこう。
・お弁当はできたてで食べられないので、味・食感・温感・においを再現できないため、感覚が敏感の子には難しい。
・もし苦手メニューも少し入れたいときは、メインの弁当箱と別の小さな箱に入れて持たせるとよい。
・お弁当箱の中で、おかず同士が混ざらないよう注意して詰め、さらに汁漏れがないよう工夫することが大切。一つのお弁当箱ではなく、小さいタッパーにおかずを分けて持たせるのもよい。
・園や学校の先生に根回しをしておく;
✓「おかずが残っていても、無理に食べさせようとしなくて大丈夫です」
✓「家ではひとくち食べてみたら?ではなくペロッとなめてみたら?というと口をつけることが多いので、そのように声かけしていただけると助かります」

▶ 食べられるものが少なく、栄養面が心配
● 対応 
・偏食の子どもは炭水化物を好んで食べることが多く、他の栄養素(とくにミネラル、ビタミン)を補うことを考える。
・栄養補助食品やサプリを使用してもよいが、それに頼りすぎないようにする。特定の栄養素だけ摂取できるものより、いろいろなビタミン・ミネラル類が入ったのものがベター。
(例)ゼリーやプロテインばかり飲み続け、噛むものを食べなくなった。
(例)ある栄養素だけを強化したものを毎日摂取すると、その栄養素の過剰摂取になり好ましくない。
・子どもの栄養素が心配なら「食事管理アプリ」を利用する方法もある。中には食事の写真をスマホde撮影するだけでAIが解析してくれるタイプもある。
● ポイント;
・子どもに与える栄養素の優先順位は、
① 炭水化物・脂質・一部のタンパク質:筋肉・骨・血液・内臓などを作り、体の熱やエネルギーになるもの 
② タンパク質・ミネラル(カルシウムなど):筋肉や神経の伝達に関わり、骨や歯を作るもの
③ ミネラル・ビタミン:体の調子を整えるもの

▶ なかなか「卒乳」できない
・卒乳の前提は「成長に十分な栄養を固形食から取れていること」。
・卒乳すれば栄養状態が改善するわけではない。食べる技能・スキルを獲得していないと、母乳をやめても食べるようにはならない。 
● 対応
・食べる技能・スキルを獲得するためのヒント;
✓ 子どもと大人の仕事を分けて考える:「食べる・食べない・食べる量」は子どもが決める、大人は「いつ、何を、どこで出すか」だけを決める。
✓ 3食と哺乳をセットにしない。哺乳・授乳は食卓以外の場所(寝室など)で行う。
● ポイント
・全体の摂取カロリーに占める、乳汁からの栄養は、1歳で約半分、2歳で約1/4。

▶ 3歳でバナナしか食べない
・栄養評価と発達の問題の有無の確認目的で小児科受診が必要。
● 対応
・発達段階は年齢相当か。
・家庭で食卓での様子を動画撮影してもらう。
✓ 食べることを強制していないか( → ほぼ全例で強制の要素が見られる)
✓ 摂食機能の確認
✓ 本人の表情(他人が食べているものに興味を持っているか)
・一切の強制をやめる。
・子どもが食卓に楽しく座ることから始める。
・食卓での親子の役割分担を徹底する。
・子どもが食べられるもの、自分から喜んで食べるものから、
 わずかに色・におい・形を変えたものに移行していく(顕微鏡的変化)

▶ 5歳になっても決まったものしか食べない
● 対応
・まずは状態把握を
 ✓ 認知機能・発達は年齢相当か
 ✓ 摂食スキルが年齢相当か
・食べられるもので一番固いものは何か、そこから摂食スキルが未熟かどうかがわかる
(例)唐揚げはそのままかじる、ピザやフランスパンはかじる → 年齢相当
(例)肉はひき肉料理だけ → 1歳過ぎ相当の摂食スキル
● 対策
・子ども自身が納得して、自分から取り組めるような対応を心がける。
・この年齢では「食べなくても食卓に出しましょう」は意味がない。食卓の雰囲気が悪くなるだけ。
・摂食スキルが未熟な場合、好きな味のもので少しずつ硬さのあるものを家族でゲーム的にチャレンジする。
・今食べているもので、好きな色や食感・ニオイがほんの少し違う食品を試す。
・食べられるものが限られる場合、食べ物に顕微鏡的変化(本人が気づかない程度の変化:メーカー、買う店、形など)をつけて食べ飽きないようにしていく。
・身長体重が成長曲線に沿っていても、微量元素欠乏のリスクがあるため小児科でスクリーニング検査を。
● ポイント:
・年齢相当の発達を理解する。
・3〜4歳以降の子どもは食べない理由を言葉で表現し始める。
 → 食卓で親子バトルが発生する。
・質問しない、できそうにない目標を作らないことがポイント。
・人は圧・報酬より、自分の興味・関心に基づいて行動する。
・保護者は子どもの応援団!
・食卓における親子の役割分担を守る。



<参考書籍>
食べない子が変わる魔法の言葉(山口健太著、辰巳出版、2020年発行) 
子どもの偏食外来(大山牧子著、診断と治療社、2023年発行)
子どもの偏食Q&A(大山牧子著、中外医学社、2024年発行)
子どもの偏食相談スキルアップ(大山牧子著、診断と治療社、2025年発行)
発達障害児の偏食改善マニュアル(山根希代子監修、藤井葉子著/編集、中央法規出版、2019年発行)

<参考サイト>
きゅうけん(月刊給食指導研究資料)
・(動画)食べない子ども・偏食への対処法(大山牧子)
・(動画)小児摂食障害(食物アレルギーを持つ子どもの場合を含む)(大山牧子)
発達障害の方の偏食・摂食のご相談(藤井葉子)
  

よかれと思ってやったことが逆効果、なNG集。
NGが存在するということは、“正しい食生活”が存在するということ。

では“正しい食生活”って何?

・・・偏食外来の書籍に答えが書いてありました。
子どもが楽しく食事するために必要なことは、
・適切な生活リズム
・適切な食事環境
・適切な保護者のスタンス
・適切な親子の役割分担
などが揃って初めて実現できることなんですね。

****************************

食べる以前の生活・環境整備」が大切です。

・生活リズムを整える
 ✓ 十分な睡眠は取れているか?
 ✓ 便秘はないか?
・食卓の設定(椅子など)は適切か?
・食事環境は適切か?
 ✓ 気が散るものがたくさんある?
・食卓でのしつけや強制圧がないか?
 → ストレス下、交感神経緊張状態では食欲が低下する

また、家族が楽しく健康的な食事をするためには、
食卓での親子の役割分担」が大切です。

● 保護者の役割は「いつ」「どこで」「なにを」食べるか決めること

(いつ) → 規則正しい食事とおやつを提供する
⭕️ 2歳まで:3食+軽食2回(朝食・午前軽食・昼食・午後軽食・夕食)
⭕️ 2歳以降:3食+軽食1回(朝食・昼食・午後軽食・夕食)
⭕️ 食事間隔を2.5〜3時間開ける
⭕️ 1回の食事時間を15〜30分
❌️ 1日3食
❌️ 食事と食事の間に欲しがったら与える(ダラダラ食べ)
❌️ 1回の食事時間が40分以上

(どこで) → 家族が食べる食卓で一緒に
⭕️ 座位保持から独步まで(6ヶ月〜1歳):ハイチェア
⭕️ 小走りし始めたら(1歳半〜2歳以降):ステップチェア
⭕️ 座卓の場合は豆椅子
 ✓ 1〜2歳:背もたれつき
 ✓ 3歳以降:円座(硬めの正座用クッション)
⭕️ 外出時は親が決めた場所
❌️ 親が食事の途中に離席する
 ✓ 離席した子どもの相手をするため
 ✓ 食卓にないものを取りに何度も立ち上がる
❌️ テレビやビデオ、YouTube、スマホ、タブレットを見せる
❌️ 親が食事中に食卓で授乳する

(なにを)
⭕️ 栄養バランスの取れたメニューを決めて出す
❌️ 何を食べたいか子どもに聞く
❌️ 出すつもりではなかった食べ物を出す
❌️ 食べる順番を決めて守らせる
❌️ 食べ物をごほうびにする

● 子どもの役割は「食べるかどうか」「どのくらい食べるか」を決めること
〜そのためには保護者は子どもを信頼する必要がある、すると・・・
⭕️ 食べる・食べない・食べ残すを決める
⭕️ 好きなものだけ食べる、嫌いなものは食べない
⭕️ その食卓のメニューのおかわりをする
❌️ その食卓のメニュー以外のものを要求する

● 上記の役割分担の境界線を越えると、摂食の問題が発生する
(例)子どもが何をどれだけ食べるかを保護者が決める・コントロールする
(例)子どもに献立を決めさせる
● 上記の役割分担を守ると子どもたちは食べることを楽しいと感じるようになる


*****************************

対応に悩んだら、どうすべきか迷ったら、
上記の基本に立ち戻って組み立てるとよさそうです。


▶ 「子ども主体」はNG
・子どもの要求通りに食事を用意することを続ける(奴隷化)と、保護者は疲れていく。
・最終的に食べる・食べないは子どもが決めること、しかし食事のメニュー決めなどの主導権は保護者が握るべきである。 
・食べられるものだけを食卓に並べ続けると、子どもの食は広がらない。
・子どもが食べられないものでも、同じ食卓で保護者が好きなものを美味しそうに食べているのを見ていると、子どもはその食べ物に興味を持ち前向きになれる。

▶ 「食べてみたら?」という圧はNG
・毎食のように苦手な食べ物を「食べてみたら?」と誘うと子どもは疲れてくる。
・「言われて食べる」より「自分から食べる」ことを目標にすべし。

▶ 連日同じものを出すのはNG
・「工夫をしたら苦手なものを食べてくれた!」とうれしくても、それを連日出すのはNG。
・同じメニューが何日も続くと、さすがに食べる意欲は落ちてくる。
・同じものを出す場合、最短でも3日、できれば1週間くらいはあけるべし。
・飽きてしまって食べなくなったものでも、1か月くらいあけると秋が解消されてまた食べるようになる。

▶ 子どもの口に食べ物を運ぶことはNG
・保護者はスプーンで「はい、ア〜ン」と食べ物を子どもの口元に運びがち。
・よかれと思ってやる対応だが、すでに自分で食べられる年齢の子であれば、この対応はお勧めできない。
・これが集感づくと保育園など家庭以外の場面でも自分から食べなくなることがある。
・「口の近くにあるから食べる」ではなく「自分でどんな物か認識した上で食べる」方が食が広がりやすい。

▶ 後出し(食べなかったら好きなものが出てくる)はNG
・食卓に出したものを食べなかったら、別の食べ物を出しても良いか?
・「何を出すか決めるのは保護者の役割」だから「これは嫌だからアレが食べたい」はNG。
・もし子どもの言いなりになり出してしまうと、子どもは「ごねれば自分の好きなものが出てくる」ことを学習する。
・これを繰り返すと、ばっかり食べ → 食べ飽きる → 品が図がさらに減る → 栄養失調、につながる



<参考書籍>
食べない子が変わる魔法の言葉(山口健太著、辰巳出版、2020年発行) 
子どもの偏食外来(大山牧子著、診断と治療社、2023年発行)
子どもの偏食Q&A(大山牧子著、中外医学社、2024年発行)
子どもの偏食相談スキルアップ(大山牧子著、診断と治療社、2024年発行)
発達障害児の偏食改善マニュアル(山根希代子監修、藤井葉子著/編集、中央法規出版、2019年発行)

<参考サイト>
きゅうけん(月刊給食指導研究資料)
・(動画)食べない子ども・偏食への対処法(大山牧子)
・(動画)小児摂食障害(食物アレルギーを持つ子どもの場合を含む)(大山牧子)
発達障害の方の偏食・摂食のご相談(藤井葉子)
 

子どもの偏食、「食べないのには理由があります」の解説編です。

▢ 食べない理由4つ
1.食べる機能の問題:噛む・飲み込む動作の発達には個人差がある
2.時間と量の問題:食事の時間設定、食卓に並べる量が適切かどうか
3.感覚の問題:こだわりが強いと偏食につながる
4.知らない(未知)という問題:はじめての食品・食材・料理は“知らないから恐い”と拒否るかも

の中の「4」を説明します。 

【知らないという問題】
 
・子どもが初めての食材を食べるまでには次の5つのステップがあり、いずれのステップも省略することができない。
 ① 知らない
 ② 知る
 ③ 興味を持つ
 ④ 触れる
 ⑤ 食べる
・手の込んだ料理、珍しい料理を子どもが食べたがらない理由も「はじめてだから不安、知らないから心配」という気持ちが原因で、お母さんが新しいレシピに挑戦しても苦労が報われない。 
・大人でも海外旅行へ行って見たことのない料理が出てくると警戒するはず、子どもは日々それと同じ気持ちを経験していることを イメージすべし。
 
【知らない問題への具体的対応】

▶ 「興味を持つ」きっかけ作り
・一緒に買い物をして料理に使う食材を見て触って選んでもらい、購入する
・一緒に料理をして新たな食材(苦手な食材)に触れる
・食べ物の話を親子でしてみる(どんな栄養があるか、どんな食べ物か、など)
・食べなかったとしても、食卓に並べてみせる
※ 「はじめての食材」だけでなく「一度食べられたけど苦手になっている食材」にも役立つ方法。

▶ 食の広がりには時間がかかり、波があることを知っておく
・適切な対応をしていたとしても、苦手な食材を食べられるようになるまでに半年〜数年かかる場合もある。
・食べられたり食べられなかったり・・・食の広がりには波があるので粘り強く。 



<参考書籍>
食べない子が変わる魔法の言葉(山口健太著、辰巳出版、2020年発行) 
子どもの偏食外来(大山牧子著、診断と治療社、2023年発行)
子どもの偏食Q&A(大山牧子著、中外医学社、2024年発行)
子どもの偏食相談スキルアップ(大山牧子著、診断と治療社、2024年発行)
発達障害児の偏食改善マニュアル(山根希代子監修、藤井葉子著/編集、中央法規出版、2019年発行)

<参考サイト>
きゅうけん(月刊給食指導研究資料)
・(動画)食べない子ども・偏食への対処法(大山牧子)
・(動画)小児摂食障害(食物アレルギーを持つ子どもの場合を含む)(大山牧子)
発達障害の方の偏食・摂食のご相談(藤井葉子)
 

子どもの偏食、「食べないのには理由があります」の解説編です。

▢ 食べない理由4つ
1.食べる機能の問題:噛む・飲み込む動作の発達には個人差がある
2.時間と量の問題:食事の時間設定、食卓に並べる量が適切かどうか
3.感覚の問題:こだわりが強いと偏食につながる
4.知らないという問題:はじめての食品・食材・料理は“知らないから恐い”と拒否るかも

の中の「3」を説明します。

【感覚の問題】
・極端に食べられるものが少なかったり、本当に“これしか食べない”とか、食へのこだわりが強くある場合は感覚の問題が大きいことが多い。
・感覚の問題の例;
 ✓ 味を強く感じる
 ✓ 味を薄く感じる
 ✓ 衣が口の中で刺さる感じがして痛い
 ✓ もっちりした食感が気持ち悪い
 ✓ 料理の見た目がグロテスクに見える
 ✓ 少しの音が気になって集中して食べられない
 ✓ 哺乳瓶、スプーンなど、食器類の触った感じが気持ち悪い
 ✓ 口周りを触られると強い嫌悪感がある
 ✓ 内臓の感覚が鈍麻で空腹を感じない
・感覚の問題は神経発達症の一つである自閉症スペクトラム(ASD)傾向のある子に多く見られ、偏食につながることがある。
・たとえ神経発達症と診断されていなくても、感覚の鋭さには個人差があるので偏食になる可能性は誰にでもある。
・偏食で悩む子は、受け入れられる感覚が他の子と比べて狭い傾向にある。  
感覚の問題による偏食対策のポイントは「好きな感覚」から拡げること。しかし多くの人がやりがちなのがその反対で「苦手な感覚」に慣れさせようとすること(「ひとくち食べてみる?」など)。 

▶ 感覚特性の経過(改善が期待できるもの)
● 色
・1〜2歳は、乳汁に近い白・薄黄色・薄茶色の食べ物に親しみを感じやすい。
・色からいろいろな食感、食べ物の幅が広がる可能性がある。
(例)白いご飯、豆腐
● 形
・丸いもの、小さいものの方が友だちになりやすい。


【感覚の問題への具体的対応】参考サイト

▶ 好きな感覚から拡げる
・・・がんばって苦手な感覚になれさせようとすると、嫌な記憶を重ねるだけで、偏食の改善にはつながらない。
1)今、食べられるものを把握する
2)5つの視点で「好きな感覚」を見つける
3)好きな感覚を軸に調理の工夫をする

1)今、食べられるものを把握する
・食べられるものを分類項目別(※)にリストアップする
※ ご飯類、麺類、パン類、魚類、肉類、卵類、野菜類、イモ類、その他・・・
・食材だけでなく、どんな調理法なら食べられるかも記載する
・苦手な食材や苦手な調理法などもリストアップする

2)5つの視点で「好きな感覚」を見つける
・・・以下の子どもが好きな感覚は?
ア)どんな形?
イ)どんな色?
ウ)どんな調理方法?
エ)どんな温感?
オ)どんな食感?

(例)好きな(よく食べる)感覚
 ア)薄切り、千切り
 イ)白色、黄色、茶色
 ウ)揚げたもの
 エ)温かいもの
 オ)カリッ、サクッとした食感

(例)嫌いな(食べられない)感覚
 ア)厚切り
 イ)赤、緑
 ウ)煮たもの
 エ)冷たいもの
 オ)もちっとしたもの、ぐにゃっとしたもの

▶ 好きな感覚を軸に調理の工夫をする
好きな感覚 → 苦手な感覚に少しずつ近づけるイメージで。
・1〜2週間で改善するのは無理、半年〜2年をかけて焦らずゆっくりと食べるものを増やしていく。
・濃いめの塩味(ファストフード店のフライドポテトのような)が食べはじめるキッカケになることも多い。その後、大人が塩分量をコントロールして時間をかけて味を薄くしていけば問題ない。

(例)フライドポテトが好きな子どもに、苦手なほうれん草を食べさせたい
 a)フライドポテトみたいに細長く切って揚げたほうれん草
 ⇩
 b)細切りにし、好きな調味料で味付けして炒めたほうれん草
 ⇩
 c)ほうれん草の炒め物の料理
 ⇩
 d)煮たほうれん草

▶ 感覚過敏・こだわり特性のある子どもへの支援
・発達段階は年齢相当か、影響状態の評価を(医療機関受診)。
・家庭で食卓での様子を動画撮影してもらう。
✓ 食べることを強制していないか( → ほぼ全例で強制の要素が見られる)
✓ 摂食機能の確認
✓ 本人の表情(他人が食べているものに興味を持っているか)
・一切の強制をやめる。
・子どもが食卓に楽しく座ることから始める。
・食卓での親子の役割分担を徹底する。
・子どもが食べられるもの、自分から喜んで食べるものから、
 わずかに色・におい・形を変えたものに移行していく(顕微鏡的変化)

▶ 感覚過敏・こだわり特性のある子どもへの対応の実践
・「さあ、お椅子タイムだよ、座ろう」と声をかける。
 ✓ 食卓では他の場面より認知・情緒が幼くなる傾向がある。
 ✓ 本人が安心安全に感じる食卓を心がける。
・「座ったね」と笑顔を見せる。
 ✓ 子どもに食べるよう促さない。
・保護者が機嫌良く自分の食事を楽しむ。
 ✓ 強制のない環境でリラックスして座れると、
  家族が楽しく食事をしている様子を見るチャンスが生まれる。
・食べられるものは一品を少量ずつ出す。
 ✓ その子なりのステップでモンスターであった食べ物がお友達になっていく。


 
<参考書籍>
食べない子が変わる魔法の言葉(山口健太著、辰巳出版、2020年発行) 
子どもの偏食外来(大山牧子著、診断と治療社、2023年発行)
子どもの偏食Q&A(大山牧子著、中外医学社、2024年発行)
子どもの偏食相談スキルアップ(大山牧子著、診断と治療社、2024年発行)
発達障害児の偏食改善マニュアル(山根希代子監修、藤井葉子著/編集、中央法規出版、2019年発行)

<参考サイト>
きゅうけん(月刊給食指導研究資料)
・(動画)食べない子ども・偏食への対処法(大山牧子)
・(動画)小児摂食障害(食物アレルギーを持つ子どもの場合を含む)(大山牧子)
発達障害の方の偏食・摂食のご相談(藤井葉子)
 

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