カテゴリ:育児 > 偏食

偏食対策は、やみくもに保護者ががんばるよりも、
まず“食べない理由”を探り、
それが判明したら対応を考えることが大切です。 

そのためには知識とスキルが必要です。
偏食問題に取り組んでいる専門家達(※)の 意見を参考に、
どう対応すべきかを考えてみました。
※ )山口健太氏・藤井葉子医師・大山牧子医師

ひと通り資料に目を通して感じたことは、
・偏食だけに注目しても解決しにくい
・その前に考えるべきことがある;
 ✓ 適切な生活リズム
 ✓ 適切な食事環境
 ✓ 適切な親子の役割分担
等々。

偏食を紐解いていくと、
 生活リズムの乱れ
 食事環境の乱れ
 親子関係の乱れ
の結果として増えてきている、
という社会現象と捉えることもできそうです。

逆に言うと、上記チェック項目を見直すことができれば、
偏食は発生しにくい、治りやすい、と考えられます。

資料をたくさん読んでまとめたので、
膨大な量になってしまいました。

まず本編「偏食の理解と対応」に目を通していただき、
あとは興味のある項目を参考にしていただければ幸いです。


▶ 解説編

偏食の理解と対応

● 
食べる機能の発達

望ましい食事習慣


▶ 対応編

● 偏食の理由と対策

 1.食べる機能の問題

困った食行動への対応

● 
偏食個別相談例

● 
給食・学校生活への対応

● 自閉症スペクトラム(ASD)児への対応

▶ 番外編

NG集



<参考書籍>
食べない子が変わる魔法の言葉(山口健太著、辰巳出版、2020年発行) 
子どもの偏食外来(大山牧子著、診断と治療社、2023年発行)
子どもの偏食Q&A(大山牧子著、中外医学社、2024年発行)
子どもの偏食相談スキルアップ(大山牧子著、診断と治療社、2025年発行)
発達障害児の偏食改善マニュアル(山根希代子監修、藤井葉子著/編集、中央法規出版、2019年発行)

<参考サイト>
きゅうけん(月刊給食指導研究資料)
・(動画)食べない子ども・偏食への対処法(大山牧子)
・(動画)小児摂食障害(食物アレルギーを持つ子どもの場合を含む)(大山牧子)
発達障害の方の偏食・摂食のご相談(藤井葉子)
 

子どもの偏食に悩む保護者はどうしても、
「私の育て方が悪いのかも・・・」
と自分を責めがちです。

お母さん、お父さん、自分を責めないでください。

偏食には子どもなりの理由があります。
もともとは、「食べる機能の問題」や「感覚の問題」がベースにあることが多いのです。
そのために起こる偏食に対して「なんとか食べさせなければ・・・」と保護者が奮闘するあまり、
食卓に座っているのがストレスになり、偏食が二次的に増強されがちなのが現実です。
誰でも緊張していると食欲がなくなりますよね。

まずは偏食の基礎知識を得て、
自分の子どもの偏食の理由を探り、
その上で対応を考えましょう。

さて、“正しい食生活”って何でしょう?
私も具体的に説明できません。
偏食外来の書籍に答えが書いてありました。

子どもが楽しく食事するために必要なことは、
・適切な生活リズム
・適切な食事環境
・適切な保護者のスタンス
・適切な親子の役割分担
などが揃って初めて実現できることなんですね。


▶ 偏食と好き嫌いの違い(大山牧子Dr.の定義)
【好き嫌い】食べられるものが20品目以上あり、栄養面で問題がない場合
【偏食】食べられるものが20品目未満である場合

▶ 食べることは「学んで獲得するスキル」
・生まれてから半年くらいまでは反射的に飲む・食べることができる。
・それ以降、食べることは「学んで獲得する技能」であり、3歳までに獲得する。
・「お腹が空けば食べるでしょ」では解決しない。
・食べる技能を獲得していない体重増加不良の子どもを空腹にしても食べる量は増えない。

▶ 偏食は子どもの問題?それとも保護者の問題?
・食べない原因は複数の要素が絡んでいることが多い。
・子どもの行動の問題(=ワガママ)は5%、保護者の問題は10%程度。
・多くの子どもは医学的または口腔機能・感覚処理の問題を抱えている。

▶ 睡眠調整
・夜間熟睡できず、朝起き不良がある偏食児はまず睡眠を整える。
・眠い状態では食卓についてもグズりがちで食が広がりにくい。
・2歳以降なら21時までに眠り、朝7時までに起きる。
・就寝の1時間前までに夕食と入浴をすます。
・入眠1時間前は部屋を暗くし、
 ブルーライト(テレビ、ビデオ、YouTubeなど)をオフにする。
・昼寝は15時まで(遅くとも17時まで)、
 睡眠調整を生活年齢相当にすることで、
 食事のスケジュールが作りやすくなる。
・現在、夜寝る時間が遅い場合は、15分ずつ早くして慣れさせる。
・起床時間が遅い場合は、集団生活に向けて15分ずつ早起きさせていく。

▶ 乳児型食思不振症(Chatoorによる)
・「お腹が空くはずの時間になっても泣かない」「指しゃぶりが多い」子ども。
・食事時間になっても遊びに夢中で空腹を訴えない子ども。
・常に交感神経緊張状態(テンションが高い)。
・線が細くやせ型が多い。

▶ 偏食による体への影響
・2歳未満:鉄、亜鉛、ビタミンD欠乏の可能性
・2歳以降:鉄、亜鉛、ビタミンA・B1・C・D欠乏の可能性

▶ 目の前のものを食べるまでの動作
・・・この過程のどこかに理由が隠れているはず
① 食べ物を目で見て確認する、手を使い箸などを動かし、食べ物をつかむ
② 前歯でかじり取る、口へ取り込む
③ 舌を使って奥歯へ食べ物を移動させる、奥歯で食べ物をすりつぶす
④ 舌を使って喉元へ送り込む、嚥下する(飲み込む)  

以上を言い換えると・・・
i )食べ物の存在を知る
ii )食べ物を見る
iii)ニオイを嗅ぐ
iv)触る
v )味わう
vi)食べる
という“五感”を駆使する作業になります。 

▶ 「好き嫌い・偏食=こどものワガママ」ではありません
・好き嫌い・偏食には理由がある。
・その理由を突き止めて対策を取れば解決につながる。
・“こどものワガママ”と決めつけると解決しない。

▶ 食べない理由4つ
・・・その子がなぜ食べないのか、理由を正しく分析し、それぞれに適切な対応をすることが「偏食改善における最善の方法」
1.食べる機能の問題
  → 噛む・飲み込む動作の発達には個人差がある
2.食べる環境(時間・食卓・量)の問題
  → 食事の時間設定、食卓の環境、並べる量が適切かどうか
3.感覚の問題
  → こだわりが強いと偏食につながる
4.知らない(未知)という問題
  → はじめての食品・食材・料理は“知らないから恐い”と拒否るかも

▶ 偏食対応で最初にやることは「理由探し」チェックリストを利用)。 
・子どもが何をどれくらい食べているか、何を残しているか。
・スムーズに食べられるメニューは何か。
・時間がかかるメニューは何か。
 ・食べる機能の問題、時間と量の問題、感覚の問題、知らないという問題、のどれに当てはまるか(理由は一つとは限らず複数のこともある)。

チェックリスト
機能的な問題
 ✓ 噛まずに丸呑みしてしまう
 ✓ 食べ物をベーッと外に吐き出す
 ✓ 骨格や歯列などに問題がありそう
 ✓ 片方の口角がねじれ上がる形で食べられていない
 ✓ 食事中に姿勢が崩れやすい
感覚的な問題
 ✓ 食べられる品目が20未満
 ✓ 同じ食材でも少し見た目が変わるだけで食べられない
 ✓ 何年経っても食が広がらない
 ✓ 食感により食べる・食べないがはっきりしている
 ✓ 特定の好きな味付け以外は食べられない
精神的な問題
 ✓ 食事の時間になると口数が減る
 ✓ おならやゲップをよくする
 ✓ 食事の進みは遅いが水分をよく飲む
 ✓ 食事中は表情が硬い
 ✓ 家では食べるが給食は食べない

▶ 偏食の理由と具体的な対策は別項目で解説(項目をクリックするとリンク先へ飛びます)

▶ 偏食改善の土台・家族の基本姿勢は「安心できる食卓環境」
・食事時間を「しつけの時間」にしてしまうと、食卓がストレスの多い場所になってしまう。
・食べることを「楽しい」と感じられなければ、食を拡げるのは難しい。
・まずは保護者が食事を楽しむこと、そしてそれを子どもに見せることが基本。 
・「楽しい」の土台には「安心」が必要。
・一切の強制をやめる。 
・「食べないと叱られるかも・・・」という不安があると安心できず、楽しくもない。
・自分から食べたいという気持ちを引き出すことが大切。
・「食べてみたら?」といわなくても子どもが自分から食べることを目指す。
・食事を楽しみ、前向きになれれば、「食べたことのない食材」にも挑戦する可能性が高くなる。

▶ ストレス回避は食欲より優先される
・人間の三大欲求は、食欲・睡眠欲・性欲であり、食べることは本能だから自然にできることと思いがち。
・しかし人間には「食べること」よりも「苦痛回避」の方が本能的な優先順位が高い。
・ストレス感知 → 交感神経優位 → 血糖値上昇 → 満腹中枢刺激 → 食欲抑制・嚥下抑制・消化器機能抑制
 → ストレスを感じると、自分の意志とは関係なく、食べる機能や食べる意欲が低下する。
・健全な食欲には空腹だけではなく「リラックスしている状態」が重要。
 
▶ “間違った偏食対策“あるある
・子どもが食べない理由を理解していないため、やらなくてもいいことに労力を無駄遣いしがち。
・よかれと思って「やらない方がいいこと」をする(結果的に逆効果になることも)。
・やるべきことが抜け落ちているために、いつまでも偏食の悩みから抜け出せない。

▶「偏食=少食」ではない
・偏食は「特定のものしか食べない」という性質を持つ。
・「特定のものだけ食べすぎる」偏食の子どももいる。ある食品でお腹いっぱいになれば、結果的に他のものを食べられなくなる。
・偏食の子は炭水化物類(ご飯やパンなど)、高カロリーのもの(お菓子やジュースなど)を好んで食べることが多いため、肥満傾向のことがある。肥満児にも偏食の問題が潜んでいることがある。
・高カロリー食品は、少し食べただけで満足感が得られるため、食べられる種類が増えにくい傾向がある。これが続くと、食べられる食品が減ってしまうこともある。

▶ 食事中のTVや動画をみることは・・・
・昨今の保護者は、子どもがなかなか食卓に着かないので食事中に動画を見せてしまいがち。
・年齢が小さいほどテレビや動画を見ながらの食事は避けた方がよい。就学前までは子どもは一つのことにしか集中できないため、動画に集中すると食事がはかどらない。
・それよりも食事のリズムを整えることを優先すべき。間食をコントロールするなどして「お腹が空いた」「ご飯食べたい」という気持ちを引き出すことが大切。
・すでに動画を見る習慣になってしまっていたら、今日から“我が家のルール”として見ないことにすべし。1週間くらいは「動画を見たい」とグズるかもしれないが、それを耐えればその後はいわなくなることが多く、親も楽になれる。 

▶ 親子対立ではなく一緒に目標へ
・食べさせたい大人 vs 食べない子ども、で対立するのではなく、一緒に「食を拡げる」という目的を目指していくこと。  

▶ 完食主義の功罪
・「残さず食べなさい」と言われると緊張して食べられなくなる子どももいる。
・「全部食べられなかったら残していいよ。無理しなくても大丈夫。」というスタンスがベター。

▶ なかなか改善しない場合の解きほぐし方
〜問題点を再度あぶり出し、適切な対応ができているかどうかを再チェック
● 発達状況、コミュニケーション力を評価
・発達検査を行う(やってあれば再確認)
● 栄養評価
・食べられるメニューが20品目以下の場合は微量元素欠乏チェック
● 自律神経を整える
・睡眠調整ができているか
・便秘がないか
・日常生活リズムは年齢発達相当か:就寝時間、起床時間、昼寝時間を確認
● 食卓で「強制」がないか
・保護者は自分たちが強制していないと思い込んでいることが多い
・食事中の動画を5分くらい撮影してもらい、診察時に一緒に確認する
● 食材を混ぜてごまかしていないか
・ごまかしでは解決しない
・3歳以降はごまかすとかえって疑心暗鬼になる
・野菜にかかわらず、苦手な食材をルーに混ぜたり刻み込んだりしない、小皿に素材別において、食べるかどうかは子どもが決められるようにする


・・・たくさん書いてきましたが、これらの根底にあるルールはないものか?
と考えていたところに、大山牧子医師が上手にまとめている文章に出会いました。
偏食対応の壁にぶつかったら、下記のルールに立ち戻って再確認し、
できていないところを修正することを繰り返せば、何とかなりそうな気がします。

家族が楽しく健康的な食事をするためには、
食卓での親子の役割分担」が大切です。

● 保護者の役割は「いつ」「どこで」「なにを」食べるか決めること

(いつ) → 規則正しい食事とおやつを提供する
⭕️ 2歳まで:3食+軽食2回(朝食・午前軽食・昼食・午後軽食・夕食)
⭕️ 2歳以降:3食+軽食1回(朝食・昼食・午後軽食・夕食)
⭕️ 食事間隔を2.5〜3時間開ける
⭕️ 1回の食事時間を15〜30分
❌️ 1日3食と決めつける
❌️ 食事と食事の間に欲しがったら与える(ダラダラ食べ)
❌️ 1回の食事時間が40分以上

(どこで) → 家族が食べる食卓で一緒に
⭕️ 座位保持から独步まで(6ヶ月〜1歳):ハイチェア
⭕️ 小走りし始めたら(1歳半〜2歳以降):ステップチェア
⭕️ 座卓の場合は豆椅子
 ✓ 1〜2歳:背もたれつき
 ✓ 3歳以降:円座(硬めの正座用クッション)
⭕️ 外出時は親が決めた場所
❌️ 親が食事の途中に離席する
 ✓ 離席した子どもの相手をするため
 ✓ 食卓にないものを取りに何度も立ち上がる
❌️ テレビやビデオ、YouTube、スマホ、タブレットを見せる
❌️ 親が食事中に食卓で授乳する

(なにを)
⭕️ 栄養バランスの取れたメニューを決めて出す
❌️ 何を食べたいか子どもに聞く
❌️ 出すつもりではなかった食べ物を出す
❌️ 食べる順番を決めて守らせる
❌️ 食べ物をごほうびにする

● 子どもの役割は「食べるかどうか」「どのくらい食べるか」を決めること
〜そのためには保護者は子どもを信頼する必要がある、すると・・・
⭕️ 食べる・食べない・食べ残すを決める
⭕️ 好きなものだけ食べる、嫌いなものは食べない
⭕️ その食卓のメニューのおかわりをする
❌️ その食卓のメニュー以外のものを要求する

● 上記の役割分担の境界線を越えると、摂食の問題が発生する
(例)子どもが何をどれだけ食べるかを保護者が決める・コントロールする
(例)子どもに献立を決めさせる
● 上記の役割分担を守ると子どもたちは食べることを楽しいと感じるようになる



<参考書籍>
食べない子が変わる魔法の言葉(山口健太著、辰巳出版、2020年発行) 
子どもの偏食外来(大山牧子著、診断と治療社、2023年発行)
子どもの偏食Q&A(大山牧子著、中外医学社、2024年発行)
子どもの偏食相談スキルアップ(大山牧子著、診断と治療社、2024年発行)
発達障害児の偏食改善マニュアル(山根希代子監修、藤井葉子著/編集、中央法規出版、2019年発行)

<参考サイト>
きゅうけん(月刊給食指導研究資料)
・(動画)食べない子ども・偏食への対処法(大山牧子)
・(動画)小児摂食障害(食物アレルギーを持つ子どもの場合を含む)(大山牧子)
発達障害の方の偏食・摂食のご相談(藤井葉子)

大人と同じように食べるために、
乳幼児期は成長・発達していろんな機能を獲得していきます。

その過程は結構複雑ですべて理解することは難しいですが、
ざっと読んでみると「なるほど!」「あるある!」という箇所があるはず。
少し、覗いてみましょう。

▢ 食べる機能・スキルの発達

【乳児期】0歳〜1歳前後
・食べるために必要な機能をこれから獲得する時期。
・“機能的な問題”で食べられないことが出てきやすい時期。
・哺乳瓶から飲むことは4〜6ヶ月以降下手になる。 
・首が据わり、支えると座っていられる状態にまで発達が進むと、連動して手指の微細運動も発達し、離乳食開始が可能になる。 
・感覚的な拒否として、口の周りや口の中を触ると極端に嫌がる「過敏」が見られることもある。
・ミルクから離乳食に移り、様々な味、粒や粘り、ザラつきなどがあるものを口にすることで、それらを嫌がることがある。
・本能的に甘味は好まれるが、苦味や酸味は苦手になることもある。
・「食べるとはどんなことか?」を少しずつ学ぶ生後6か月あたりから、食に何かしらの“苦痛”や“ストレス”を伴うと“食べないこと”も学び始める。

▶ スプーンで食べさせる場合と、手づかみ食べの場合では、
 食べる機能・技能の発達が違うため、離乳の進め方も違う。

● スプーン食べ;
・スプーンで食べさせると嫌がるのに、自分で手に持ったものは口に入れることはよくみる風景。 
・スプーンで食べさせる場合は、口腔機能の発達に注目して食べ物の形態を選ぶ必要がある。
● 手づかみ食べ:
・手づかみ食べの場合は、ペーストではなく手に持ちやすいものからスタートする。
 ✓ 4〜5ヶ月からクッキーやビスケットを持って口に入れる(デンバーの発達検査項目)
 ✓ 5〜6ヶ月からクッキーやビスケットを自分で手に持って食べる(遠城寺式発達検査項目)
・支えて座れるようになったら、硬くて噛めないほどのスティック状の食べ物(人参スティック、筋つきセロリ、生のキャベツやブロッコリーの芯など)を座らせた子どもの前のトレイに置いて、子どもが自ら“見て・触って・遊んで・口に入れる”ことから始める(Toomey)。
※ 日本の「授乳・離乳の支援ガイド2019」はスプーンで食べさせる場合を想定して書かれていることに注意。

【幼児期】1歳〜6歳前後
・味覚も含む感覚が育つ時期。
・“感覚の問題”が出てきやすい時期。
・乳児期はよく食べていたのに、離乳食が終わった後から偏食になることもよくある。2歳前後からこれまで食べたものを食べなくなることもある。
3歳くらいから「これは好き、これは嫌い」など自分で認識し、“好きなものだけ食べたいという欲求”がだんだん始まり、年齢を重ねるごとに固定化されていく。
・離乳食が終わる頃から食習慣が少しずつできてくるので、時間と量の問題も出てくる。
・この年代は、食べるために必要な口腔機能も獲得途上であり、口腔機能が未発達のために食べられない子もいる。
・保護者は偏食の我が子と周りの子達との“食の広がりの差”に焦りを覚える頃。

【児童期】7歳〜
・乳幼児期に機能的な問題・感覚の問題から始まった偏食が、時間と量の問題により固定化されてしまう時期。
・どうしたらよいかかわらず、お手上げ状態になっている保護者をよく見かける。
・大きくなればなるほど偏食改善には時間がかかる。


▶ 適切な食事回数と時間
・食事間隔は2.5〜3時間ごとにするのが適切。
・就寝時刻から起床時刻を引いた時間を2.5で割って、食事(3食+軽食)回数を決める。
(例)2歳未満:3食+2回の軽食 → 合計5回(※)
(例)2歳以降:3食+1回の軽食 → 合計4回
※ 2歳未満で乳汁を飲んでいる場合は、乳汁摂取はカウントしない。
・乳幼児の1回の平均食事時間は15〜20分(これ以上座り続けるのは難しい)
→ 「15〜30分」と設定するのが適切。
・決めた食事時間以外は、乳汁以外のカロリーのあるものは与えない。ダラダラ食べはNG。
(例)3食と軽食の時間以外には、お菓子・スナック・甘いジュースは与えない。
・ミルクや母乳を与えたあと1時間もすれば食事にできる。

★ 世界の乳幼児の標準的な食事回数(WHOの調査)
・補完食(≒離乳食)開始は5〜6ヶ月
 生後7ヶ月:3回
 生後9ヶ月:4回
 生後14〜24ヶ月:5回
・食事+哺乳の合計回数
 〜12ヶ月頃:3〜5回(+哺乳で合計11回)
 〜24か月頃:5回(+哺乳で合計7回)
・1歳台の子どもは、5回くらい食べて、母乳を2〜3回飲んでいる。
 → 3食と午前・午後に軽食+3回授乳(夜寝る前・朝起きたとき・昼寝の前)



<参考書籍>
食べない子が変わる魔法の言葉(山口健太著、辰巳出版、2020年発行) 
子どもの偏食外来(大山牧子著、診断と治療社、2023年発行)
子どもの偏食Q&A(大山牧子著、中外医学社、2024年発行)
子どもの偏食相談スキルアップ(大山牧子著、診断と治療社、2024年発行)
発達障害児の偏食改善マニュアル(山根希代子監修、藤井葉子著/編集、中央法規出版、2019年発行)

<参考サイト>
きゅうけん(月刊給食指導研究資料)
・(動画)食べない子ども・偏食への対処法(大山牧子)
・(動画)小児摂食障害(食物アレルギーを持つ子どもの場合を含む)(大山牧子)
発達障害の方の偏食・摂食のご相談(藤井葉子)
 

子どもの偏食「食べないのには理由があります」の解説編です。
総論で出てきた食べない理由4つを再度提示します;

▢ 食べない理由4つ
1.食べる機能の問題:噛む・飲み込む動作の発達には個人差がある
2.時間と量の問題:食事の時間設定、食卓に並べる量が適切かどうか
3.感覚の問題:こだわりが強いと偏食につながる
4.知らないという問題:はじめての食品・食材・料理は“知らないから恐い”と拒否るかも

のうちの「1」を説明します。
食べる機能は成長過程で獲得していくスキルで個人差があります。
子どもが「〇〇を食べられない」場合、
それが今の子どもの食べる機能の発達段階に合っているかチェックしましょう。

合っていないと吐き出してしまうこともあります。
吐くことは当たり前」と考えて対応しましょう。

「まだ〇〇は早かった」と判断できたら、
子どもの発達段階に合う食事を用意しましょう。
 
 
【食べる機能の問題】
・「食べる機能」とは「歯や歯周囲の組織、舌、くちびるなどの口腔の機能」のこと(口腔機能とも呼ぶ)。
・咀嚼(かむこと)や嚥下(飲み込むこと)に関わる食べる機能に問題があり、食べ物を上手く噛めなかったり、上手く飲み込めなかったりすると、食べられないものがある。
・子どもの「今現在の食べる機能」で食べられないものを無理に食べさせると、子どもはその食べ物を上手く処理できず、口から外に食べ物を吐き出してしまう。
・吐き出すと大人に叱られる → 「食べられないと、吐き出すとまた叱られる」と思うと、食べ物を口に入れること自体に消極的になってしまう。
・「姿勢」も大切で、椅子やテーブルが体に合わないと姿勢が安定せず、食が進まない。

▶ 食べる機能のチェックポイント:唇の動きに注目!
(Step1)唇を閉じることができる
 → 「ゴックン期」嚥下ができるようになる。
(Step2)口角が左右に動いている
 → 「モグモグ期」舌が上下に動く証拠で、舌と上顎で食べ物を押しつぶすことができる。
(Step3)口角の片方がねじれるように動く
 → 「カミカミ期」舌を左右に動かしている証拠、奥歯での咀しゃくができる。 

▶ 食べる機能獲得のステップと適切な食事形態
 
(Step1:ゴックン期)
:口を閉じて飲む、口角は動かない
:前後に動く
できること:ミルクやペースト状の食べ物などを飲み込むこと
できないこと:舌と上顎で食べ物を押しつぶすこと、下顎を動かして噛むこと
適切な食事形態:なめらかにすりつぶした状態のもの(はじめての食材は、舐めるくらいから少しずつ増やし、無理なく進める)
食事のポイント
・汁気が多いメニュー(煮物、具だくさんのスープなど)をすり鉢ですってみる、ミキサー・フードプロセッサーなどでペースト状にするなど、できるだけペースト状に近い形の食べ物を。
・トロトロしたヨーグルト、パン粥、おかゆ、すりつぶした果物など、噛まずに飲み込める状態の食べ物がベスト。
・家族の食事の一部をペースト状にする・すりつぶすことができれば、手間や負担を抑えることができる。はじめて口にする食品は、アレルギーがないか確認する意味で、少量から始める。
食べ物の例:トロッとしたヨーグルト、パン粥、おかゆ、すりつぶした・ペースト状にした野菜料理・魚料理・肉料理など

(Step2:モグモグ期)
:口角が左右に引かれる、下顎が下がる
:上下に動く
できること:舌と上顎で食べ物を押しつぶすこと
できないこと:舌で食べ物を歯の方に寄せて噛むこと
適切な食事形態:舌で押しつぶせる硬さのもの、舌で送り込んで飲み込めるまとまったもの
食事のポイント
・舌で潰せるくらいのやわらかさに食材を煮たり、蒸したりして提供する。その際、野菜はできるだけ線維芽少ない物を選び、圧力鍋を使って調理すると短時間でつくることができる。多めに作って冷凍保存することもできる。
・家族の食事の一部をすり鉢などで、少しつぶが残るくらいすりつぶして提供してもよい。
食べ物の例:湯豆腐、茶碗蒸し、少し硬めにしたパン粥・おかゆ、すりつぶした野菜料理、肉料理、舌で潰せる程度に煮た根菜類、等

(Step3:カミカミ期)
:咀嚼している側の口角が引かれる
:左右に動く
できること:舌で食べ物を歯に寄せて歯で噛みつぶして食べ物を細かくすること
できないこと:パサついたものや繊維の強い物をすりつぶして噛むこと
適切な食事形態:歯ぐきで潰せるくらいの硬さのもの → 子どもの様子を見ながら徐々に硬いものを増やしていく
食事のポイント
・はじめは箸で切れるくらいの硬さのものから、徐々に食べ物を硬くし、繊維が多い野菜なども子どもの様子を見ながら取り入れる。
・家族の食事の一部を細かく切って提供することも可能。ただし細かすぎる野菜・ひき肉などは、気管に入ってしまうこともあるので要注意。
・この段階に口腔機能は移行しているのに、噛まなくても飲み込めるものばかり提供していると口腔機能発達にとってよくないので要注意。
食べ物の例:状況に応じて、少しずつ「やわらかい食べ物」から「硬めの食べ物」への移行にトライ。


【対応方法】
・現在の子どもの「食べる機能の発達段階」を確認する(チェックリスト対応方法)。
・食べる機能には、
 ✓ 唇を閉じる
 ✓ 舌を上下左右前後に自在に動かす
 ✓ 奥歯を使ってすりつぶす
ーなど、様々な動きがある。
・食べる機能は段階的に獲得していくものであり、飛び級はできない。
・ふだんの献立における食事の形状、硬さ、触感などがその子の食べる機能の発達段階に合っているかどうかを確認する → 合っていなければ食べられない。
・食べる機能の未獲得は、窒息などの事故を招くことがある。
・基本的には「今の食べる機能の発達段階」を考えて、無理はさせず、
 ✓ 今食べられる食事形態のものを8-9割
 ✓ 今よりほんの少しステップアップした食事形態のものを1-2割
ーなど、食べられなくてもいいという前提で、食卓に並べていく。  

▶ 食べる機能を獲得する工夫
・口を閉じることができない
 → ストローを使って、好きな形に切った折り紙を吸い上げる、おもちゃの笛を思いっきり吹く、等
・舌を上手く動かせない
 → 唇にジャムなどを塗り、それを舐め取る

▶ 食事の形態、5つのポイント
・子どもの今の食べる機能に対して、食事の形態が合っていないと「食べられない」事態が発生する。
・以下の5つが“極端に”偏っている場合は、食べにくさや偏食につながる。

1)大きさ:大きすぎる、小さすぎる(細かすぎる)
(細かすぎる例)みじん切りの野菜、ひき肉

2)硬さ:硬すぎる、柔らかすぎる
(硬すぎの例)繊維質の野菜、肉、キノコ、魚介(タコ、イカなど)

3)粘り
(強い粘り例)餅、団子、イモ類

4)繊維

5)水分:少なすぎてパサパサ、多すぎて口の中でばらける
(水分少の例)パン、カステラ、焼き魚
(水分多の例)かまぼこ、こんにゃく、リンゴなどの果物、等

▶ 「吐き出しても大丈夫だよ」という環境作り参考サイト
・子どもは口に入れたものが食べられないときは吐き出してしまう。それをしにくい環境(責められる、叱られる)は不安が強くなり、食べなくなることがある。
・舐めるだけでもOK、吐き出してしまっても「口に入れられたね」と言える雰囲気が必要。
・吐き出してもいい容器(ボウル、お皿など)を用意して「食べられそうになかったら、ここに出してね」と声をかける。
・子どもは「吐き出しても大丈夫」という前提があれば、安心して食べ物を口に入れらる。

▶ よい姿勢が食べる力を高める参考サイト
・子どもは少し姿勢が崩れたり、テーブルや椅子が体に合わないだけで食べられなくなる。
・理想の姿勢(椅子とテーブル)のポイント:
 ✓ テーブルの上に肘・手をおける
 ✓ 猫背にならない
 ✓ 膝が90度に曲がる
 ✓ 椅子の座面が広すぎず、子どもの横幅に合っている
 ✓ 足が床板に着く 

(神奈川県立こども医療センター偏食外来パンフレットより)
スクリーンショット 2025-03-17 10.52.18


 
<参考書籍>
食べない子が変わる魔法の言葉(山口健太著、辰巳出版、2020年発行) 
子どもの偏食外来(大山牧子著、診断と治療社、2023年発行)
子どもの偏食Q&A(大山牧子著、中外医学社、2024年発行)
子どもの偏食相談スキルアップ(大山牧子著、診断と治療社、2024年発行)
発達障害児の偏食改善マニュアル(山根希代子監修、藤井葉子著/編集、中央法規出版、2019年発行)

<参考サイト>
きゅうけん(月刊給食指導研究資料)
・(動画)食べない子ども・偏食への対処法(大山牧子)
・(動画)小児摂食障害(食物アレルギーを持つ子どもの場合を含む)(大山牧子)
発達障害の方の偏食・摂食のご相談(藤井葉子)
 

子どもの偏食「食べないのには理由があります」の解説編です。

▢ 食べない理由4つ
1.食べる機能の問題:噛む・飲み込む動作の発達には個人差がある
2.時間と量の問題:食事の時間設定、食卓に並べる量が適切かどうか
3.感覚の問題:こだわりが強いと偏食につながる
4.知らないという問題:はじめての食品・食材・料理は“知らないから恐い”と拒否るかも

の中の「2」を説明します。 


▢ 時間の問題
・「いつでも食べられる」のはよい習慣とは言えない。
・「いつでも好きなときに食べられる」という環境にいる子どもは「朝・昼・晩ご飯」に食事をしっかり食べなくなる。
・食べる時間と食べない時間を明確に設定すべし。
 
▢ 量の問題
・偏食改善のポイントは “引き算”。「好きなもの」でお腹が満たされている子どもは「それ以外のものを食べる理由」がない。
・今食べられるものの提供量を減らした上で、食べてほしいものを与えなければいけない。 


【具体的な対応方法】

▢ 時間の問題

▶ 「食べる時間」と「食べない時間」を明確に区別する
・食べたい気持ちを引き出すには「時間設定」が効果的。
・「いつでも食べられる状況」「今食べなくても、あとでいくらでも食べられる状況」では食事の時間に食べる必要がなくなる。
・園や学校では給食・おやつの時間が決まっていて、それ以外の時間には食べられないから子どもは食べる。
・家庭でも食事の時間を明確に決める。「一定の時間」より「明確であること」が重要

▶ 「食べ終わる時間」もはっきり決める
・保護者の悩みの一つに「ダラダラ食べる子どもにつき合うのが苦痛」がある。
食事時間を30分に設定すべし。終わりの時間が明確であると、子どももそれを意識する。
・子どもが食べきっていないのに食事を切り上げることに抵抗がある方は、子どもに「まだたべたいか?」と聞いて確認すべし。「まだ食べたい」と言う場合は10分追加するのはOK、しかし延長は1回だけ
・時間を延ばしてまで何とか食べさせようとしてもよいことはない。時間をかけて食べることが習慣になってしまうだけ。
・毎回食べるのに極端に時間がかかる場合は食べる機能に問題がある可能性がある。チェックリストを利用して確認すべし。

▶ お菓子やジュースをいつでも好きなだけ食べられるという習慣はやめる
・子ども時代は大人が間食・おやつをしっかりコントロールすべし。
・まず「おやつの時間」を決める。
 → 時間が明確であることがおやつの欲求を抑えることにつながっている。
・お菓子の“袋出し”は避け、お皿に出すことで食べ過ぎを避けられる。
・お菓子は子どもの手に届かない場所に保管する、必要以上に買い置きをしない。
・子どもがある程度大きくなったら「お菓子の食べ過ぎが体の成長にはよくない」ことを伝える。
・おやつ以外の方法で「楽しい」と感じる時間を増やす。

▢ 量の問題
 
▶ 偏食の“悪循環”を知る
・好きなもの(大抵甘いもの)はお腹がいっぱいでも食べられてしまう(デザートは別腹?)が、それ以外は、ある程度お腹が空いていないと食べたくならない。
・子どもが食べてくれないと保護者はつい子どもの要求をかなえて“好きなもの”を与えがち。
・好きなものでお腹がいっぱいなら、それ以外のものは食べない。
・「ごねれば好きなものが食べられる」ことを学習すると偏食が固定化していく。

▶ 偏食の悪循環を「好きな食べ物の量を減らす」で断ち切る
・食べられるものを増やすためには「好きなものを減らす」ことが必要。
・偏食児は炭水化物類(ご飯、パン、イモなど)や高カロリーのもの(お菓子、ジュースなど)を好む傾向にあり、このような食品を食べると脳では報酬系のホルモン(ドーパミンやセロトニン)が生まれて満足感が得られるため、他のものを食べる気持ちが起きにくくなる。

▶ “減らすと心配”な保護者のためのチェックリスト
・・・仮に少食だとしても、以下の項目に一つも該当しなければ大丈夫。
✓ 成長曲線(母子手帳にあります)をプロットすると、ここ数ヵ月間の身長と体重の伸びが極端に悪い。
✓ 成長曲線の平均値と比べて、身長に比べて体重の値が極端に低い。
✓ 食べ物をのどに詰まらせたり、吐いてしまったりしたことで、一時的に食べることが恐い状態になってしまっている。

▶ 「お腹がすく」とは?
・消費エネルギーが摂取エネルギーを上回り続け、体内のエネルギー貯金が減れば、お腹が空く。
・お腹が空いているタイミングで苦手なものを食べると“おいしい”と認識が改まることがあり、偏食が改善することがある。
・食べない子どもは空腹や満腹という臓器感覚が鈍いという意見もある。 

▶ 食卓に着いた子どもの頭の中の“食べる順番”を覗いてみると・・・
① 好きなものから食べる
 ⇩ まだ満足しない
② 「これなら食べられそう」と感じるものを食べる
 ⇩ まだ満足しない
③ それ以外(嫌い・はじめて・食べ馴染みがない)気になるものに触れる
 ⇩
④ 気になるものを口に入れる
 ⇩ それで満足すると
⑤ 触っても口をつけず、遊んだり、立ち歩いたりする(※)
 
※ 幼児期くらいまでは食べることと遊ぶことはあまり区別していないと言われている。

▶ “食べる順番”を想定した偏食対策の食卓
・好きでないものを食べるタイミングは上記の②以降であり、①で満足してしまうと進まない。
・まず “好きなもの” の量を減らして「好きなものは食卓にあるけど多すぎない」ようにする。
・子どもの食卓に並べるものは、
好きなもの:ふつう(食べたことがある):嫌い(苦手・はじめて)=3:5:2
ーくらいをイメージ。
・「どうせ食卓に並べても食べないだろう・・・」と好きなものだけ出すと、食べる以前の「触れる」機会すらなくなるので、食べなくても並べた方がよい。




<参考書籍>
食べない子が変わる魔法の言葉(山口健太著、辰巳出版、2020年発行) 
子どもの偏食外来(大山牧子著、診断と治療社、2023年発行)
子どもの偏食Q&A(大山牧子著、中外医学社、2024年発行)
子どもの偏食相談スキルアップ(大山牧子著、診断と治療社、2025年発行)
発達障害児の偏食改善マニュアル(山根希代子監修、藤井葉子著/編集、中央法規出版、2019年発行)

<参考サイト>
きゅうけん(月刊給食指導研究資料)
・(動画)食べない子ども・偏食への対処法(大山牧子)
・(動画)小児摂食障害(食物アレルギーを持つ子どもの場合を含む)(大山牧子)
発達障害の方の偏食・摂食のご相談(藤井葉子) 

子どもの偏食、「食べないのには理由があります」の解説編です。

▢ 食べない理由4つ
1.食べる機能の問題:噛む・飲み込む動作の発達には個人差がある
2.時間と量の問題:食事の時間設定、食卓に並べる量が適切かどうか
3.感覚の問題:こだわりが強いと偏食につながる
4.知らないという問題:はじめての食品・食材・料理は“知らないから恐い”と拒否るかも

の中の「3」を説明します。

【感覚の問題】
・極端に食べられるものが少なかったり、本当に“これしか食べない”とか、食へのこだわりが強くある場合は感覚の問題が大きいことが多い。
・感覚の問題の例;
 ✓ 味を強く感じる
 ✓ 味を薄く感じる
 ✓ 衣が口の中で刺さる感じがして痛い
 ✓ もっちりした食感が気持ち悪い
 ✓ 料理の見た目がグロテスクに見える
 ✓ 少しの音が気になって集中して食べられない
 ✓ 哺乳瓶、スプーンなど、食器類の触った感じが気持ち悪い
 ✓ 口周りを触られると強い嫌悪感がある
 ✓ 内臓の感覚が鈍麻で空腹を感じない
・感覚の問題は神経発達症の一つである自閉症スペクトラム(ASD)傾向のある子に多く見られ、偏食につながることがある。
・たとえ神経発達症と診断されていなくても、感覚の鋭さには個人差があるので偏食になる可能性は誰にでもある。
・偏食で悩む子は、受け入れられる感覚が他の子と比べて狭い傾向にある。  
感覚の問題による偏食対策のポイントは「好きな感覚」から拡げること。しかし多くの人がやりがちなのがその反対で「苦手な感覚」に慣れさせようとすること(「ひとくち食べてみる?」など)。 

▶ 感覚特性の経過(改善が期待できるもの)
● 色
・1〜2歳は、乳汁に近い白・薄黄色・薄茶色の食べ物に親しみを感じやすい。
・色からいろいろな食感、食べ物の幅が広がる可能性がある。
(例)白いご飯、豆腐
● 形
・丸いもの、小さいものの方が友だちになりやすい。


【感覚の問題への具体的対応】参考サイト

▶ 好きな感覚から拡げる
・・・がんばって苦手な感覚になれさせようとすると、嫌な記憶を重ねるだけで、偏食の改善にはつながらない。
1)今、食べられるものを把握する
2)5つの視点で「好きな感覚」を見つける
3)好きな感覚を軸に調理の工夫をする

1)今、食べられるものを把握する
・食べられるものを分類項目別(※)にリストアップする
※ ご飯類、麺類、パン類、魚類、肉類、卵類、野菜類、イモ類、その他・・・
・食材だけでなく、どんな調理法なら食べられるかも記載する
・苦手な食材や苦手な調理法などもリストアップする

2)5つの視点で「好きな感覚」を見つける
・・・以下の子どもが好きな感覚は?
ア)どんな形?
イ)どんな色?
ウ)どんな調理方法?
エ)どんな温感?
オ)どんな食感?

(例)好きな(よく食べる)感覚
 ア)薄切り、千切り
 イ)白色、黄色、茶色
 ウ)揚げたもの
 エ)温かいもの
 オ)カリッ、サクッとした食感

(例)嫌いな(食べられない)感覚
 ア)厚切り
 イ)赤、緑
 ウ)煮たもの
 エ)冷たいもの
 オ)もちっとしたもの、ぐにゃっとしたもの

▶ 好きな感覚を軸に調理の工夫をする
好きな感覚 → 苦手な感覚に少しずつ近づけるイメージで。
・1〜2週間で改善するのは無理、半年〜2年をかけて焦らずゆっくりと食べるものを増やしていく。
・濃いめの塩味(ファストフード店のフライドポテトのような)が食べはじめるキッカケになることも多い。その後、大人が塩分量をコントロールして時間をかけて味を薄くしていけば問題ない。

(例)フライドポテトが好きな子どもに、苦手なほうれん草を食べさせたい
 a)フライドポテトみたいに細長く切って揚げたほうれん草
 ⇩
 b)細切りにし、好きな調味料で味付けして炒めたほうれん草
 ⇩
 c)ほうれん草の炒め物の料理
 ⇩
 d)煮たほうれん草

▶ 感覚過敏・こだわり特性のある子どもへの支援
・発達段階は年齢相当か、影響状態の評価を(医療機関受診)。
・家庭で食卓での様子を動画撮影してもらう。
✓ 食べることを強制していないか( → ほぼ全例で強制の要素が見られる)
✓ 摂食機能の確認
✓ 本人の表情(他人が食べているものに興味を持っているか)
・一切の強制をやめる。
・子どもが食卓に楽しく座ることから始める。
・食卓での親子の役割分担を徹底する。
・子どもが食べられるもの、自分から喜んで食べるものから、
 わずかに色・におい・形を変えたものに移行していく(顕微鏡的変化)

▶ 感覚過敏・こだわり特性のある子どもへの対応の実践
・「さあ、お椅子タイムだよ、座ろう」と声をかける。
 ✓ 食卓では他の場面より認知・情緒が幼くなる傾向がある。
 ✓ 本人が安心安全に感じる食卓を心がける。
・「座ったね」と笑顔を見せる。
 ✓ 子どもに食べるよう促さない。
・保護者が機嫌良く自分の食事を楽しむ。
 ✓ 強制のない環境でリラックスして座れると、
  家族が楽しく食事をしている様子を見るチャンスが生まれる。
・食べられるものは一品を少量ずつ出す。
 ✓ その子なりのステップでモンスターであった食べ物がお友達になっていく。


 
<参考書籍>
食べない子が変わる魔法の言葉(山口健太著、辰巳出版、2020年発行) 
子どもの偏食外来(大山牧子著、診断と治療社、2023年発行)
子どもの偏食Q&A(大山牧子著、中外医学社、2024年発行)
子どもの偏食相談スキルアップ(大山牧子著、診断と治療社、2024年発行)
発達障害児の偏食改善マニュアル(山根希代子監修、藤井葉子著/編集、中央法規出版、2019年発行)

<参考サイト>
きゅうけん(月刊給食指導研究資料)
・(動画)食べない子ども・偏食への対処法(大山牧子)
・(動画)小児摂食障害(食物アレルギーを持つ子どもの場合を含む)(大山牧子)
発達障害の方の偏食・摂食のご相談(藤井葉子)
 

子どもの偏食、「食べないのには理由があります」の解説編です。

▢ 食べない理由4つ
1.食べる機能の問題:噛む・飲み込む動作の発達には個人差がある
2.時間と量の問題:食事の時間設定、食卓に並べる量が適切かどうか
3.感覚の問題:こだわりが強いと偏食につながる
4.知らない(未知)という問題:はじめての食品・食材・料理は“知らないから恐い”と拒否るかも

の中の「4」を説明します。 

【知らないという問題】
 
・子どもが初めての食材を食べるまでには次の5つのステップがあり、いずれのステップも省略することができない。
 ① 知らない
 ② 知る
 ③ 興味を持つ
 ④ 触れる
 ⑤ 食べる
・手の込んだ料理、珍しい料理を子どもが食べたがらない理由も「はじめてだから不安、知らないから心配」という気持ちが原因で、お母さんが新しいレシピに挑戦しても苦労が報われない。 
・大人でも海外旅行へ行って見たことのない料理が出てくると警戒するはず、子どもは日々それと同じ気持ちを経験していることを イメージすべし。
 
【知らない問題への具体的対応】

▶ 「興味を持つ」きっかけ作り
・一緒に買い物をして料理に使う食材を見て触って選んでもらい、購入する
・一緒に料理をして新たな食材(苦手な食材)に触れる
・食べ物の話を親子でしてみる(どんな栄養があるか、どんな食べ物か、など)
・食べなかったとしても、食卓に並べてみせる
※ 「はじめての食材」だけでなく「一度食べられたけど苦手になっている食材」にも役立つ方法。

▶ 食の広がりには時間がかかり、波があることを知っておく
・適切な対応をしていたとしても、苦手な食材を食べられるようになるまでに半年〜数年かかる場合もある。
・食べられたり食べられなかったり・・・食の広がりには波があるので粘り強く。 



<参考書籍>
食べない子が変わる魔法の言葉(山口健太著、辰巳出版、2020年発行) 
子どもの偏食外来(大山牧子著、診断と治療社、2023年発行)
子どもの偏食Q&A(大山牧子著、中外医学社、2024年発行)
子どもの偏食相談スキルアップ(大山牧子著、診断と治療社、2024年発行)
発達障害児の偏食改善マニュアル(山根希代子監修、藤井葉子著/編集、中央法規出版、2019年発行)

<参考サイト>
きゅうけん(月刊給食指導研究資料)
・(動画)食べない子ども・偏食への対処法(大山牧子)
・(動画)小児摂食障害(食物アレルギーを持つ子どもの場合を含む)(大山牧子)
発達障害の方の偏食・摂食のご相談(藤井葉子)
 

よかれと思ってやったことが逆効果、なNG集。
NGが存在するということは、“正しい食生活”が存在するということ。

では“正しい食生活”って何?

・・・偏食外来の書籍に答えが書いてありました。
子どもが楽しく食事するために必要なことは、
・適切な生活リズム
・適切な食事環境
・適切な保護者のスタンス
・適切な親子の役割分担
などが揃って初めて実現できることなんですね。

****************************

食べる以前の生活・環境整備」が大切です。

・生活リズムを整える
 ✓ 十分な睡眠は取れているか?
 ✓ 便秘はないか?
・食卓の設定(椅子など)は適切か?
・食事環境は適切か?
 ✓ 気が散るものがたくさんある?
・食卓でのしつけや強制圧がないか?
 → ストレス下、交感神経緊張状態では食欲が低下する

また、家族が楽しく健康的な食事をするためには、
食卓での親子の役割分担」が大切です。

● 保護者の役割は「いつ」「どこで」「なにを」食べるか決めること

(いつ) → 規則正しい食事とおやつを提供する
⭕️ 2歳まで:3食+軽食2回(朝食・午前軽食・昼食・午後軽食・夕食)
⭕️ 2歳以降:3食+軽食1回(朝食・昼食・午後軽食・夕食)
⭕️ 食事間隔を2.5〜3時間開ける
⭕️ 1回の食事時間を15〜30分
❌️ 1日3食
❌️ 食事と食事の間に欲しがったら与える(ダラダラ食べ)
❌️ 1回の食事時間が40分以上

(どこで) → 家族が食べる食卓で一緒に
⭕️ 座位保持から独步まで(6ヶ月〜1歳):ハイチェア
⭕️ 小走りし始めたら(1歳半〜2歳以降):ステップチェア
⭕️ 座卓の場合は豆椅子
 ✓ 1〜2歳:背もたれつき
 ✓ 3歳以降:円座(硬めの正座用クッション)
⭕️ 外出時は親が決めた場所
❌️ 親が食事の途中に離席する
 ✓ 離席した子どもの相手をするため
 ✓ 食卓にないものを取りに何度も立ち上がる
❌️ テレビやビデオ、YouTube、スマホ、タブレットを見せる
❌️ 親が食事中に食卓で授乳する

(なにを)
⭕️ 栄養バランスの取れたメニューを決めて出す
❌️ 何を食べたいか子どもに聞く
❌️ 出すつもりではなかった食べ物を出す
❌️ 食べる順番を決めて守らせる
❌️ 食べ物をごほうびにする

● 子どもの役割は「食べるかどうか」「どのくらい食べるか」を決めること
〜そのためには保護者は子どもを信頼する必要がある、すると・・・
⭕️ 食べる・食べない・食べ残すを決める
⭕️ 好きなものだけ食べる、嫌いなものは食べない
⭕️ その食卓のメニューのおかわりをする
❌️ その食卓のメニュー以外のものを要求する

● 上記の役割分担の境界線を越えると、摂食の問題が発生する
(例)子どもが何をどれだけ食べるかを保護者が決める・コントロールする
(例)子どもに献立を決めさせる
● 上記の役割分担を守ると子どもたちは食べることを楽しいと感じるようになる


*****************************

対応に悩んだら、どうすべきか迷ったら、
上記の基本に立ち戻って組み立てるとよさそうです。


▶ 「子ども主体」はNG
・子どもの要求通りに食事を用意することを続ける(奴隷化)と、保護者は疲れていく。
・最終的に食べる・食べないは子どもが決めること、しかし食事のメニュー決めなどの主導権は保護者が握るべきである。 
・食べられるものだけを食卓に並べ続けると、子どもの食は広がらない。
・子どもが食べられないものでも、同じ食卓で保護者が好きなものを美味しそうに食べているのを見ていると、子どもはその食べ物に興味を持ち前向きになれる。

▶ 「食べてみたら?」という圧はNG
・毎食のように苦手な食べ物を「食べてみたら?」と誘うと子どもは疲れてくる。
・「言われて食べる」より「自分から食べる」ことを目標にすべし。

▶ 連日同じものを出すのはNG
・「工夫をしたら苦手なものを食べてくれた!」とうれしくても、それを連日出すのはNG。
・同じメニューが何日も続くと、さすがに食べる意欲は落ちてくる。
・同じものを出す場合、最短でも3日、できれば1週間くらいはあけるべし。
・飽きてしまって食べなくなったものでも、1か月くらいあけると秋が解消されてまた食べるようになる。

▶ 子どもの口に食べ物を運ぶことはNG
・保護者はスプーンで「はい、ア〜ン」と食べ物を子どもの口元に運びがち。
・よかれと思ってやる対応だが、すでに自分で食べられる年齢の子であれば、この対応はお勧めできない。
・これが集感づくと保育園など家庭以外の場面でも自分から食べなくなることがある。
・「口の近くにあるから食べる」ではなく「自分でどんな物か認識した上で食べる」方が食が広がりやすい。

▶ 後出し(食べなかったら好きなものが出てくる)はNG
・食卓に出したものを食べなかったら、別の食べ物を出しても良いか?
・「何を出すか決めるのは保護者の役割」だから「これは嫌だからアレが食べたい」はNG。
・もし子どもの言いなりになり出してしまうと、子どもは「ごねれば自分の好きなものが出てくる」ことを学習する。
・これを繰り返すと、ばっかり食べ → 食べ飽きる → 品が図がさらに減る → 栄養失調、につながる



<参考書籍>
食べない子が変わる魔法の言葉(山口健太著、辰巳出版、2020年発行) 
子どもの偏食外来(大山牧子著、診断と治療社、2023年発行)
子どもの偏食Q&A(大山牧子著、中外医学社、2024年発行)
子どもの偏食相談スキルアップ(大山牧子著、診断と治療社、2024年発行)
発達障害児の偏食改善マニュアル(山根希代子監修、藤井葉子著/編集、中央法規出版、2019年発行)

<参考サイト>
きゅうけん(月刊給食指導研究資料)
・(動画)食べない子ども・偏食への対処法(大山牧子)
・(動画)小児摂食障害(食物アレルギーを持つ子どもの場合を含む)(大山牧子)
発達障害の方の偏食・摂食のご相談(藤井葉子)
 

よくある偏食相談例と対応方法を提示します。
ポイントは、
食べられるものから拡げる>食べられないものに慣れる
です。
食べられる食材・料理の特徴(形・味・食感・温感)を捉え、
それに似せるよう苦手な食材の調理方法を工夫し、
少しずつ、少しずつ、進めましょう。
半年〜数年先に達成できればよい、くらいのスタンスで。

それから「食べる以前の生活・環境整備」も大切です。
・十分な睡眠は取れているか?
・便秘はないか?
・食卓の設定(椅子など)は適切か?
・食事環境(気が散るものがたくさんある?)は適切か?
・しつけや強制圧がないか?
等々、心当たりがあれば改善してください。

そして、これは偏食外来の書籍を読んで、
家族が楽しく健康的な食事をするためには、
食卓での親子の役割分担
という視点を持つとよいことを知り、目からうろこが落ちました。
具体的には以下の通り(Satterの「摂食における役割分担」より);

● 保護者の役割は「いつ」「どこで」「なにを」食べるか決めること

(いつ) → 規則正しい食事とおやつを提供する
⭕️ 2歳まで:3食+軽食2回(朝食・午前軽食・昼食・午後軽食・夕食)
⭕️ 2歳以降:3食+軽食1回(朝食・昼食・午後軽食・夕食)
⭕️ 食事間隔を2.5〜3時間開ける
⭕️ 1回の食事時間を15〜30分
❌️ 1日3食
❌️ 食事と食事の間に欲しがったら与える(ダラダラ食べ)
❌️ 1回の食事時間が40分以上

(どこで) → 家族が食べる食卓で一緒に
⭕️ 座位保持から独步まで(6ヶ月〜1歳):ハイチェア
⭕️ 小走りし始めたら(1歳半〜2歳以降):ステップチェア
⭕️ 座卓の場合は豆椅子
 ✓ 1〜2歳:背もたれつき
 ✓ 3歳以降:円座(硬めの正座用クッション)
⭕️ 外出時は親が決めた場所
❌️ 親が食事の途中に離席する
 ✓ 離席した子どもの相手をするため
 ✓ 食卓にないものを取りに何度も立ち上がる
❌️ テレビやビデオ、YouTube、スマホ、タブレットを見せる
❌️ 親が食事中に食卓で授乳する

(なにを)
⭕️ 栄養バランスの取れたメニューを決めて出す
❌️ 何を食べたいか子どもに聞く
❌️ 出すつもりではなかった食べ物を出す
❌️ 食べる順番を決めて守らせる
❌️ 食べ物をごほうびにする

● 子どもの役割は「食べるかどうか」「どのくらい食べるか」を決めること
〜そのためには保護者は子どもを信頼する必要がある、すると・・・
⭕️ 食べる・食べない・食べ残すを決める
⭕️ 好きなものだけ食べる、嫌いなものは食べない
⭕️ その食卓のメニューのおかわりをする
❌️ その食卓のメニュー以外のものを要求する

● 上記の役割分担の境界線を越えると、摂食の問題が発生する
(例)子どもが何をどれだけ食べるかを保護者が決める・コントロールする
(例)子どもに献立を決めさせる

● 上記の役割分担を守ると子どもたちは食べることを楽しいと感じるようになる


では、具体的な相談を例示します。


▶ 離乳食に興味を示さない
● 対応
・発達段階にあった椅子を用意する(歩き始めるまではローチェア)。
・保護者が一緒に食事をしてお手本を示す。
・食べさせない、食べることを強制しない。
・子どもが興味を示したら、その食べ物を自分から食べるよう支援する、手づかみでもOK。
・飽きたら次の食べ物を出す。
・飽きていやがる前に椅子から下ろす。
● ポイント
・「乳児型食思不振症」タイプで、哺乳時期から始まることが多い。
・哺乳歴を聞くと「母乳でもミルクでもチビチビ飲みで、眠いときに意識して飲ませていた」というのが典型例(覚醒レベルの調節不全)。
・このタイプの子どもは、起きている限り動き回り、遊びが大好きで交感神経優位。
・座って食べるという副交感神経優位にする状況を退屈と感じ、遊び食べがなかなか治らない。

▶ 離乳食が思うように進まない、食事中も母乳をせがむ子ども
・生後6ヶ月〜1歳までは成長曲線に沿って健康であれば、
 食べる量が少なくても気にせず、欲しがるままに母乳を与えて良い。
・1歳以降になっても食べる量が少なく、すぐに授乳をせがむ場合の対処法は以下の通り:
● 対応
・空腹過ぎるときは食卓に座らないことが多いので、
 授乳時間と食事時間を調整し、
 授乳から1〜2時間後に食事時間を設定する。
・1歳以降は嘱託で子どもが授乳をせがんでも、
「ママは今、食べているよう」「ママが食べ終わってからね」
 と言って相手にしない。
・1歳以降は「授乳は寝室で」などと決めて、昼間はできるだけその場所に行かないようにする。
・朝起きてすぐ、昼寝前、夜寝る前はたっぷり授乳、また、疲れた時は安心のための授乳を。
● ポイント
・食事量が少ないことを心配して母乳の量を減らしたりやめたりしても、
 食べるようにはならないため、母乳はそのまま続けるべし。
・食卓に座ることがストレスになっていると、子どもは授乳をせがむ傾向がある。
・空腹すぎるとき、眠いとき、体調が悪いときは食卓に座っているのは難しいので、
 無理に食べさせずに寝かせる。

▶ ベビーフードばかり食べる
・ベビーフードばかり食べて、家族の食べるものに興味を示さない。
● 対応
・家族と一緒に食卓を囲み、家族が一緒に楽しそうに美味しそうに食べる様子を見せる。
(もしかしたら食べさせることに注力しすぎて保護者は食べていないかもしれない)
・すると子どもは興味を示して自分から手を出してくるかもしれない。
● ポイント
・ベビーフード自体は悪くない。
・ただ、家族と同じものを食べていないという点で、食が広がりにくいデメリットがある。
 
▶ 牛乳を飲めない(牛乳アレルギーと乳糖不耐症を除く)
● 対応
・好きな感覚を手がかりに少しずつ飲めるよう工夫していく。
・ 牛乳と親和性のある飲み物(お茶、飲むヨーグルト、カルピス、ココアなど)はキーアイテム。
・上記のうち今、子どもが飲めるものに、牛乳を少しだけ追加して飲ませることから始める。飲めたら牛乳を入れる量を少しずつ増やし、徐々に100%の牛乳に近づけていく。急ぐと失敗する。
● ポイント(こちらも参考に)
・ 上記の方法で牛乳をある程度飲めるようになったら、100%牛乳にトライする前に、「牛乳パックから牛乳をコップに注ぐ様子を子どもに見せる」ことが重要。これをやらないと、コップに入った牛乳は飲めるけど、パックから出てきた液体は別のものだから飲めない、という事態になりかねません。

▶「吸い食べ」のクセがある
・決まったものしか食べない、チューチュー吸うような食べ方をする子ども。
・食事の形態が広がりにくい。
● 対応
・スプーンで与えることを嫌がらず、食べ物が口に入った後に唇を閉じて横に引き延ばす動きがあれば、以下のことを試す。
✓ 食事の形態を変えるときは、好みの味のペーストの中にやわらかいつぶがほんの少し混じるようにする。
✓ ペーストで食べていた量より少な目のひとくち量を、スプーンの先端で下唇にのせるように置く。
✓ 「〇〇のつぶつぶさんだよ、モグモグね」などと言いながら、子どもの表情を見る。
✓ 子どもが嫌がらず上顎と舌でモグモグし始めたら大丈夫、少しずつ粒の量を増やしていく。
・スプーンで与えられることを嫌がり、かつ走れるようになっても吸い食べをするようなら、好きなフレーバーの下腿ものを噛む練習を保護者が一緒にしながら、前歯で噛んで歯ぐきに持っていく遊びを提案する。
● ポイント
・スプーンで粒のあるものを与え始めた頃に舌を左右に動かして食べ物を左右の歯ぐきに持っていって噛むことを学んでいない可能性がある。
・椅子とテーブルのセッティングが適切でないことがある。
・いろいろ試しても改善がないなら、口腔機能を評価できる歯科医の受診を提案する。

▶ 野菜嫌い
・就学前〜小学校低学年までは「野菜は体にいいから食べなさい」を理解して食べることは難しい。
・食物線維が取れないことを心配している保護者には、キノコ類、海藻(ワカメ、海苔)などを提案する。
・「苦手な野菜を食べさせる」から「野菜と友だちになる」という発想への転換が必要。
● 対応
・親子の役割分担を再確認する。
✓ 食べる・食べないは子どもが決める → 食卓で強制することをやめる。 
✓ 食卓で大人が美味しそうに食べる要する見せる。

 ▶ 野菜嫌い&フライドポテトが好き
〜毎日の食事が数種類に固定化され、肉・魚・野菜類をほとんど食べない幼児

● 対応
・まず保護者が楽しく食事し、それを子どもに見せること。
・ファストフードのフライドポテトが食べられることに注目し、そこから食を拡げていく。
・食べられない食材の「ささみ」「ほうれん草」をフライドポテト の形状・味に近づけて調理。それぞれ細長い形に切って小麦粉をつけて揚げ、濃いめの塩味に仕立てる。
・空腹は最高の調味料・・・ 間食を減らしてお腹を空かせたり、好きなものを出し過ぎないよう食事全体の量の調整を並行して行う。
・食べてくれたら、以下のことを少しずつ進めて食を拡げる;
 ✓ 形を大きくしていく:千切り → 細切り → 短冊切り →  → 一口大
 ✓ 衣の量を減らしていく:最初は多め → 次第に素揚げに近い形へ
 ✓ 塩味を薄くしていく:少しずつ気づかない程度に
・揚げたものをある程度食べられるようになったら他の調理法にも挑戦;
 ✓ カリカリ感を減らしていく:揚げたもの → しっかりと硬く焼いたもの
  → 柔らかな食感に焼いたもの → 煮物
・食べられるものが増えてきたら、見た目・形状もアレンジしていく。
・食材に慣れてきたら、「調理を工夫したもの」と「同じ食材を少量、ふつうに料理したもの」を並べて「同じ食べ物なんだよ」を伝える。
 ● ポイント(こちらも参考に)
・子どもに人気の「フライドポテト」・・・小麦粉をつけて揚げる調理法は比較的子どもが口にしやすい。カリカリした食感が好きな子どもの場合、厚切りより千切りの方がお勧め。 
・食を拡げていく際に、見た目・形状はできるだけ変化させないことがコツ。
 
▶ 手作りのものを食べない(スーパーの惣菜、特定のメーカー・お店の食品は食べる)
● 対応
・手作りコロッケは食べないけど、スーパーの惣菜コロッケは食べられる子の場合、食感の違いがあるなら、惣菜の食感に似せる工夫をする。味の濃さ、温度、油っぽさ・・・を意識して調理する。
・食べられたら徐々に受け入れられる間隔を広げていく。濃い味 → 少しずつ薄味へ。
● ポイント(こちらも参考に)
・大人にとっては同じ食品・料理でも、子どもにとっては「見た目・味・食感・風味」から別物に見えていることがある。特に感覚が過敏な子は、本当に小さな違いも察知する。
・スーパーの惣菜やインスタント食品は、家庭料理より塩味が強く、味が常に一定という特徴がある。子どもは安心して口にすることができる。
・感覚過敏系の子どもには、今の感覚に合うものを提供しながら、少しずつグラデーション状に 食べられるものを拡げていく。
・ 子どもの偏食改善には、
①「見た目」
②「味や食感」
の2つを両立するのが大切で、
「口すらつけてくれない」 → ① がクリアできていない、
「ひとくち食べても、ふたくち目は食べてくれない」 → ① はクリア、② がクリアできていない
と考えて対応する。

▶ ふりかけ類がないとお米が食べられない
● 対応
・ ご飯にかけるふりかけ類の量を大人が調整し、半年〜年単位で少しずつ減らしていく。
・すると少しずつふりかけ以外のおかずに手を伸ばすことが増えるはず。

▶ 鮭フレークは食べられても焼き魚の鮭の切り身は食べられない
● 対応
・少なめの① 鮭フレークと② 焼き鮭の切り身をフレーク状にほぐしたものを用意する。
・① を食べた子どもが「もっと欲しい!」と言い出したときに ② を与えると、口をつける可能性がある。
・② が食べられるようになったら、子どもの目の前で「焼き鮭の切り身をほぐす様子」を見せ、「これとこれが一緒なら切り身も食べられるかもしれない」ことを覚えてもらう。これを繰り返す。

▶ 調理方法が変わると食べられない
● 対応
・調理方法が変わると、それらを同じ食材だと認識できない子どもは少なくない。
(例)フライドポテトとジャガイモは同じもの?
・形が変わる様子や、容器へうつす様子を繰り返し見せて「同じもの」という事実を子どもにインプットする作業が必要。
・いつも食べているものと「同じ」ということがわかれば、それが「安心」につながり、
次第に違う料理法のものでも口をつけられるようになっていく。

<参考>
・「はじめてのずかん たべもの」(高橋書店、2022年発行) 


▶ 苦手なものを食卓に出すと怒る
● 対応1:感覚過敏系
・基本的には(食べなくても)苦手なものも食卓に並べた方が食が広がりやすい。
・しかし程度が強いときは、子どもに感覚過敏(ニオイに敏感、など)があるかもしれない。そのような例では「安心できて楽しい食卓」を優先して並べるのを控える。
・対策としては、子どもの好きなものに似ていて、かつ、ニオイの薄いもの・弱いものから食卓に並べていくことも選択枝。
● 対応2:完食圧系
・「食卓に並んでいるものは食べなければいけない」と叱られた経験や、苦手なものを毎食「ひとくち食べてみたら?」と言われた経験がある、つまり嫌な記憶があると拒否することがある。 

 苦手なものは食べたくない
  ⇩
 食卓に並んでいるものは食べなくてはいけない
  ⇩
 最初から並べないで欲しい
  ⇩
 拒否!

・子どもから離れた場所に苦手な食べ物を置き、食べることを勧めない。
・食卓に並んでいても無理に食べされられないことがわかるとだんだん怒らなくなっていく。

▶ 食材が混ざると食べられない
(例1)焼きそばは食べられないけど、麺・人参・モヤシを単独で焼いたものなら食べられる
(例2)牛丼は食べられないけど、白いご飯と牛肉の煮込みなら食べられる
● 対応 
・感覚の問題が多い。 
① 視覚:混ざっている状態が(子ども本人には)グロテスクに見えたり、まずそうに見えたり、食材がなんなのかよくわからず手をつけにくかったり。
② 食感や味覚:牛丼の汁でご飯が軟らかく湿った状態が気持ち悪く感じたり。
・好きな感覚からはじめて拡げていく・・・混ざったものを分ける。
・分けた状態で、好きなものは食べるけど、苦手なものを食べないときは、
「苦手なもの“ひとかけら”を好きなものと一緒に食べてみることを提案し、
 もし食べられたら「〇〇(苦手なもの)を食べられたね」と認める言葉をかける。
 
▶ お弁当に何を入れたらいいのか(苦手なものを入れるべきか)わからない
● 対応
・お弁当では食を拡げるよりも、子どもがお弁当を楽しめることを優先すべし。
・お弁当の中身は「好きなもの多めの法則(⇩)」を守らなくてよい、
好きなもの:ふつう(食べたことがある):嫌い(苦手・はじめて)=3:5:2
 “好きなもの多め”、“チャレンジメニューは少な目”でいこう。
・お弁当はできたてで食べられないので、味・食感・温感・においを再現できないため、感覚が敏感の子には難しい。
・もし苦手メニューも少し入れたいときは、メインの弁当箱と別の小さな箱に入れて持たせるとよい。
・お弁当箱の中で、おかず同士が混ざらないよう注意して詰め、さらに汁漏れがないよう工夫することが大切。一つのお弁当箱ではなく、小さいタッパーにおかずを分けて持たせるのもよい。
・園や学校の先生に根回しをしておく;
✓「おかずが残っていても、無理に食べさせようとしなくて大丈夫です」
✓「家ではひとくち食べてみたら?ではなくペロッとなめてみたら?というと口をつけることが多いので、そのように声かけしていただけると助かります」

▶ 食べられるものが少なく、栄養面が心配
● 対応 
・偏食の子どもは炭水化物を好んで食べることが多く、他の栄養素(とくにミネラル、ビタミン)を補うことを考える。
・栄養補助食品やサプリを使用してもよいが、それに頼りすぎないようにする。特定の栄養素だけ摂取できるものより、いろいろなビタミン・ミネラル類が入ったのものがベター。
(例)ゼリーやプロテインばかり飲み続け、噛むものを食べなくなった。
(例)ある栄養素だけを強化したものを毎日摂取すると、その栄養素の過剰摂取になり好ましくない。
・子どもの栄養素が心配なら「食事管理アプリ」を利用する方法もある。中には食事の写真をスマホde撮影するだけでAIが解析してくれるタイプもある。
● ポイント;
・子どもに与える栄養素の優先順位は、
① 炭水化物・脂質・一部のタンパク質:筋肉・骨・血液・内臓などを作り、体の熱やエネルギーになるもの 
② タンパク質・ミネラル(カルシウムなど):筋肉や神経の伝達に関わり、骨や歯を作るもの
③ ミネラル・ビタミン:体の調子を整えるもの

▶ なかなか「卒乳」できない
・卒乳の前提は「成長に十分な栄養を固形食から取れていること」。
・卒乳すれば栄養状態が改善するわけではない。食べる技能・スキルを獲得していないと、母乳をやめても食べるようにはならない。 
● 対応
・食べる技能・スキルを獲得するためのヒント;
✓ 子どもと大人の仕事を分けて考える:「食べる・食べない・食べる量」は子どもが決める、大人は「いつ、何を、どこで出すか」だけを決める。
✓ 3食と哺乳をセットにしない。哺乳・授乳は食卓以外の場所(寝室など)で行う。
● ポイント
・全体の摂取カロリーに占める、乳汁からの栄養は、1歳で約半分、2歳で約1/4。

▶ 3歳でバナナしか食べない
・栄養評価と発達の問題の有無の確認目的で小児科受診が必要。
● 対応
・発達段階は年齢相当か。
・家庭で食卓での様子を動画撮影してもらう。
✓ 食べることを強制していないか( → ほぼ全例で強制の要素が見られる)
✓ 摂食機能の確認
✓ 本人の表情(他人が食べているものに興味を持っているか)
・一切の強制をやめる。
・子どもが食卓に楽しく座ることから始める。
・食卓での親子の役割分担を徹底する。
・子どもが食べられるもの、自分から喜んで食べるものから、
 わずかに色・におい・形を変えたものに移行していく(顕微鏡的変化)

▶ 5歳になっても決まったものしか食べない
● 対応
・まずは状態把握を
 ✓ 認知機能・発達は年齢相当か
 ✓ 摂食スキルが年齢相当か
・食べられるもので一番固いものは何か、そこから摂食スキルが未熟かどうかがわかる
(例)唐揚げはそのままかじる、ピザやフランスパンはかじる → 年齢相当
(例)肉はひき肉料理だけ → 1歳過ぎ相当の摂食スキル
● 対策
・子ども自身が納得して、自分から取り組めるような対応を心がける。
・この年齢では「食べなくても食卓に出しましょう」は意味がない。食卓の雰囲気が悪くなるだけ。
・摂食スキルが未熟な場合、好きな味のもので少しずつ硬さのあるものを家族でゲーム的にチャレンジする。
・今食べているもので、好きな色や食感・ニオイがほんの少し違う食品を試す。
・食べられるものが限られる場合、食べ物に顕微鏡的変化(本人が気づかない程度の変化:メーカー、買う店、形など)をつけて食べ飽きないようにしていく。
・身長体重が成長曲線に沿っていても、微量元素欠乏のリスクがあるため小児科でスクリーニング検査を。
● ポイント:
・年齢相当の発達を理解する。
・3〜4歳以降の子どもは食べない理由を言葉で表現し始める。
 → 食卓で親子バトルが発生する。
・質問しない、できそうにない目標を作らないことがポイント。
・人は圧・報酬より、自分の興味・関心に基づいて行動する。
・保護者は子どもの応援団!
・食卓における親子の役割分担を守る。



<参考書籍>
食べない子が変わる魔法の言葉(山口健太著、辰巳出版、2020年発行) 
子どもの偏食外来(大山牧子著、診断と治療社、2023年発行)
子どもの偏食Q&A(大山牧子著、中外医学社、2024年発行)
子どもの偏食相談スキルアップ(大山牧子著、診断と治療社、2025年発行)
発達障害児の偏食改善マニュアル(山根希代子監修、藤井葉子著/編集、中央法規出版、2019年発行)

<参考サイト>
きゅうけん(月刊給食指導研究資料)
・(動画)食べない子ども・偏食への対処法(大山牧子)
・(動画)小児摂食障害(食物アレルギーを持つ子どもの場合を含む)(大山牧子)
発達障害の方の偏食・摂食のご相談(藤井葉子)
  

入学前の説明会や面談で「好き嫌いをなるべくなくしてきてくださいね」と言われると、とても不安になります。

私自身、幼少期は肉が苦手だったので、
学校給食があまり好きではありませんでした。

その頃はまだ「完食主義」があり、
「残さず食べなさい」という指導があったのです。 
私はイヤイヤながらも食べられましたが、
友だちの中には吐いてしまった人もいました。
その人にとってトラウマになりそうです。 

保護者・子ども自身・学校(担任の先生)が対立していがみ合うのではなく、
三者が同じ方向を目指して解決していける雰囲気が作れるとよい結果が期待できます。

大切な我が子のことで保護者は胸を痛めて心配しますが、
担任の先生にとっては数十人の生徒のうちの一人であり、
十分な時間とエネルギーをかけて対応するの困難であることを認識しましょう。

ですから「うちの子は偏食なので、こうしてください」と依頼するのではなく、
「うちの子は偏食があります、
 自宅ではこんな風にしていて、
 少しずつ食べられるようになっています」
という状況報告、提案レベルがうまくいくようです。

まず、保護者ができることや担当する役割を紹介します。


▶ 近年は「完食主義」は減少
・昔あった「居残り給食」で子どもが苦痛を感じることは体罰に相当する、という考え方もある。 
・とくに小学校の給食で「無理に食べさせないこと」が大切にされつつある。
・苦手な食べ物は事前に減らせるようになっている学校が多い。 

▶ 学校の先生に「食べられない理由と対応」を求めるのは難しい
・一人一人の生徒に対して「食べられない理由は何?」と把握するのは困難。
・自分の子どもが食べられない理由を各保護者が担任の先生に伝えて根回しすることが必要。

▶ 担任の先生に伝えること5つ
1.食べられない理由 
2.家庭でしている工夫 
3.本人の気持ち
4.これまでの経験や体験
5.(お願いではなく)お助け情報として
ーなどを伝える 。

▶ 「食べられない理由」を伝える 
・食べないことが“子どものワガママ”と誤認されないように理由をしっかり伝える。
(例)
✓ 少食:元々からだが小さくて、食べられる量が少ない。
✓ 食べる機能(口腔機能)が未発達:咀しゃく・嚥下が難しく、苦手な食材がある。
✓ 感覚過敏:受けつけられない感覚が多い。 

▶ 「家庭でしている工夫」を伝える
・具体的に話し、工夫した結果、少しずつ食が広がっている現状を伝える。
(例)
✓ 苦手なものでも食卓に並べるようにしている。
✓ 間食の食べ過ぎに注意している。
✓ 食べるために、調理を工夫している。
 
▶ 「本人の気持ち」を伝える
(例)
・「食べなさい!」と言われると気持ちが萎縮して食欲がなくなる。

▶ 「これまでの経験・体験」を伝える
(例)
・「食べなくても大丈夫」という雰囲気なら食べられる。

▶ 「依頼」ではなく「お助け情報として」伝える
・“依頼” は担任の先生にとって肩の荷が重くなりがち。
・「こうすると指導の助けになると思い伝えました」というスタンスがベター。
・先生 vs. 家族、という構図になるのではなく、 同じゴールを目指すチームをイメージ。

▶ 食べられるものを持参してよいかを確認する
・食べられるものが少なくて体力面が心配なレベル、
 あるいは先生が不安を持っている場合は、
 子どもが食べられるものを持参してよいかどうかを相談すべし。 

▶ 担任の先生と上手くいかない場合は?
・担任以外の先生(養護教諭、園長、教頭・校長先生など) に相談し、
 間接的に担任の先生に伝えてもらう。
・資料を提供する。 
(例)「食に関する指導の手引きー第二次改訂版ー」(文部科学省)
    第6章第1節第3項「指導上の留意点」


3 指導上の留意点

個別的な相談指導を行うに当たって、次の点に注意が必要です。

① 対象児童生徒の過大な重荷にならないようにすること。

② 対象児童生徒以外からのいじめのきっかけになったりしないように、対象児童生徒の周囲の実態を踏まえた指導を行うこと。

③ 指導者として、高い倫理観とスキルをもって指導を行うこと。

④ 指導上得られた個人情報の保護を徹底すること。

⑤ 指導者側のプライバシーや個人情報の提供についても、十分注意して指導を行うこと。

⑥ 保護者を始め関係者の理解を得て、密に連携を取りながら指導を進めること。

⑦ 成果にとらわれ、対象児童生徒に過度なプレッシャーをかけないこと。

⑧ 確実に行動変容を促すことができるよう計画的に指導すること。

⑨ 安易な計画での指導は、心身の発育に支障をきたす重大な事態になる可能性があることを認識すること。 


次に、子ども自身ができることの提案です。

▶ 友だちから「どうして食べないの?」と聞かれたら
・いろいろ言われるのが嫌だから、みんなと一緒に給食を食べたくない
  → 給食が嫌
  → 給食の時間がつらいから学校へ行きたくない、
 というパターンもある。
・「食べられない理由」を子ども自身が友だちに伝えることができると、
 ほとんどのケースでそれ以上何も言われなくなることが多い。
・言いにくい場合は、家庭で練習する(ロールプレイング)。
 (例)お父さん・お母さんが友だち役になり「どうして食べないの?」と子どもに聞く、
 そして子どもが答える、という練習。返答の例として、
 「給食だと緊張して一杯食べられないんだ、心配してくれてありがとう」
 「上手に噛む練習中で、早く食べられないんだよね」
 「苦手なものが多くて、食べられないんだよね」

▶  “食べられたもの”を給食の献立表に⭕️を付ける
・少しずつ増えていくと励み・自信になる。 


最後に、担任の先生ができることを提案します。
 
▶ 給食で対応できることには限界があることを認識
・偏食改善には「その子に合わせた個別対応」が必要であり、給食では個別対応は難しい。
・個別対応にこだわる前に「楽しい給食時間」の演出を心がける。
 
▶ 給食が食べられない子、の理由を把握する
・機能的なものか、感覚的なものか、知らないから・見慣れていないからなのか・・・
・第四の視点として「精神的に給食が嫌になっている」ことをチェック(⇩)。

▶ 「精神的に給食が嫌」になっているサイン 
食べることに対する不安や緊張感が強いと嚥下ができなくなり、あるいは無意識に空気を吸い込む量が増えるため、以下の行動が観察される。
✓ 口にため込む:ずっとモグモグしている状態。
✓ 水分をよく取る:食べ物を流しこもうとして水分を取る回数が増える。
✓ ゲップやオナラをする:呑気症(空気嚥下症)緊張のため空気を吸い込む・飲み込む量が増える
✓ 口数が減る:緊張のため
✓ 無表情になる:緊張のため
 
▶ 「精神的に給食が嫌」な子どもへの対応
1.子どもの気持ちを認める
2.食べられない理由を聞く
3.どうしたいかを本人に聞いて、一緒に対応する
(例)
「保育園・学校には来たい?」 
「教室ではなく、別室だったら食べられる?」
「給食ではなく、お弁当だったら食べられる?」
「教室で食べないことをクラスメートにどう伝える?」
「自分で伝える?それとも先生が伝える?」
 
▶ 保護者と担任の先生とのすれ違いへの対応
1.なぜ給食への要望が出ているのか、背景を考える 
・完食主義が問題になっていることが多い。
2.園や学校でできることと家庭でできることを分ける
・「ここまでは園・学校でできるが、ここからは家庭でしかできない」線引きを保護者に伝える。



<参考書籍>
食べない子が変わる魔法の言葉(山口健太著、辰巳出版、2020年発行) 
子どもの偏食外来(大山牧子著、診断と治療社、2023年発行)
子どもの偏食Q&A(大山牧子著、中外医学社、2024年発行)
子どもの偏食相談スキルアップ(大山牧子著、診断と治療社、2024年発行)
発達障害児の偏食改善マニュアル(山根希代子監修、藤井葉子著/編集、中央法規出版、2019年発行)

<参考サイト>
きゅうけん(月刊給食指導研究資料)
・(動画)食べない子ども・偏食への対処法(大山牧子)
・(動画)小児摂食障害(食物アレルギーを持つ子どもの場合を含む)(大山牧子)
発達障害の方の偏食・摂食のご相談(藤井葉子)
  

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