では、アタッチメントはどのような概念なのでしょう。NHKで取りあげられた番組(すくすく子育て、NHKスペシャル、あさいち、等)をいくつか視聴し、ポイントと感じた箇所を引用・抜粋させていただきます。
「ウォッチ・ミー・プレイ」は衝撃的でしたね。いろんな育児番組や子育て啓蒙書に書かれている「子どもの“コッチ見て”行動、“私をかまって”行動」が5分間の観察だけで解決するなんて、驚きです。
親が心がけたい声がけで登場した、3つのネガティブトーク「命令・質問・批判」を減らし、3つのポジティブトーク「ほめる・くり返す・行動を言葉にする」を増やす、この効果はマジック! 〜このスキルは親子関係にとどまらず、夫婦関係・友人関係・すべての人間関係に当てはまることだと思いました。実行するのはなかなか難しいけれど。
海外で流行(?)している「アタッチメントスタイル」も興味深い。回避型・不安・安定型・・・私も質問票で自分のスタイルを確認してみましたが、思った通りの結果でした。
▢ アタッチメント(=愛着)とは
・特定の人との間にできる気持ちのつながり。
・不安をやわらげて安心したい、という本能的欲求。
・不安を感じたときに、自分を守ってくれる人に物理的にくっついて(近づいて)安心感を得る、身の安全を守る。
・不安を感じたときに“くっついて安心したい”気持ち。子どもが満たされ、親子関係も改善する。
・アタッチメントは信頼感・自己肯定感を育む。
・アタッチメントは一生涯にわたる幸せの形成に影響する。
・見知らぬ人では安心感を取り戻せない。
・自分を守ってくれる人との間にある気持ち的なつながりであり、誰でもいいというわけではない。
・保護されているという安心感を得たとき、外の世界を探索することができる。
・次の挑戦へとつながる。
・幼少期のアタッチメントは、その後の人間関係に影響する。
▢ アタッチメント理論(安心の輪)と注意点
・子どもは安心感があると、探索や挑戦ができる。
(子どもの気持ち)「見ていてね」
・不安になると養育者の元に戻ってくる。
(子どもの気持ち)「守ってね」「なぐさめてね」「気持ちを落ち着かせてね」
・養育者に抱かれて安心感を得る。
・再度探索に向かう。
★ 注意点:先回りに注意。不安と安心を繰り返し、不快にこたえてもらう経験が大切。
▢ 愛着障害
・「愛情不足」と同義ではなく、深刻な環境に置かれた子どもの危機的状況を専門家が診断するレベルの話。
・養育者との愛着形成がうまくいかず、子どもの情緒や対人関係に問題が生じること。
▢ 政策として「アタッチメント」を採用した日本政府
・「子ども大綱」(2023閣議決定)・・・子ども施策において、アタッチメントの重要性を打ち出した。
・「社会的養護を必要とするすべての子どもが、養育者との愛着関係を形成し、心身ともに健やかに養育される」
▢ 遠藤利彦先生(東京大学)の解説
自分の気持ちを打ち明けて誰かから受け入れてもらえる、わかってもらえる、そして助けてもらえるという経験を積み重ねる中で、自分は愛してもらえる価値がある、人は信じていいんだという感覚をもう一回作り直すことができれば、その人、その個人というのは、その後生涯、健全に生きていける確率は高くなる。
幸せの根幹に関わるものとしての自己信頼・他者信頼の重要性、その自己信頼・他者信頼に最も深く関わるアタッチメントに注目が集まっている。
▢ 理想の親とは?
・温かみ+適切な指示が出せる親(難しい・・・)
・命令・質問・批判をやめ、ほめる・くり返す・行動を言葉にする。1日5分でOK、何歳から始めても遅いことはない。
▢ 温かく、適切な指示が出せる親になる4つの方法
① “声かけ”の黄金ルール:3つのネガティブトーク「命令・質問・批判」を減らし、3つのポジティブトーク「ほめる・くり返す・行動を言葉にする」を増やす。
(命令)親が会話の主導権を握り、子どもは支配された気分になる。
(質問)否定(あるいは命令・批判)のニュアンスが含まれることが多く、大人が主導権を握ることになりがち。
(批判)子どもの自尊心を傷つけ摩擦を増やす。特に7歳以降は批判に敏感になる。
例)「宿題はやった?」・・・(早くやりなさい、まだやっていないなんてどういうこと)
(行動を言葉にする)親の注目が伝わる。
★ 無視のスキル:望ましくない行動には、怒らず無視してやり過ごす。
② 伝わる確率7割アップの指示法
・適切な「禁止」の言い方:子どもの“行動”を批判するだけにとどめる。どうして欲しいか言った方が耳にも残る。
・適切な「命令」の言い方:中立的な声で、5秒おいて繰り返し3回まで言う。直接的命令は必要最低限に絞って使う(1日5回くらいまで)。絶対に聞いて欲しい場合はハッキリ伝え、選択肢を残さない。
・思春期は親は誘導するより見守るスタンスで、子どもがリードする関係性の方がよい。
例)進路の話題は親が誘導するより、子どもが持ちかけるタイミングを計る。時間の猶予がないときは、何かのついでではなく、話す時間をしっかりと作る・・・ハッキリ「明日の〇時から進路について話し合いたい」と伝える。
③ 遊びの中で“ひたすら注目”(ウォッチ・ミー・プレイ, “Watch me play!” by ジェニファー・ウェイクリン:心理療法士)⇩
④ 親の感情をコントロール
・子どもがかんしゃくを起こしたら、イラッとさせる行動を起こして冷静に対応できなくなったら「シャーク・ミュージック」(映画「ジョーズ」でサメが登場するときの音楽)と客観的に捉える。
・「タイムアウト」という方法で、冷静になって何が起こったのかを考える。
例)家を出る、トイレに行く、目を閉じる、等
▢ “ Watch me play!” 〜家庭でのアタッチメントの実践〜
・世界の15か国で活用されているスキル(基本的に8歳まで)。
・「気持ちの安定・衝動的な行動が減る」と報告されている。
・1回5〜20分、子どもを自由に遊ばせ、養育者は側にいて注目するだけ。
・注目された子どもは“親との直接的なつながり”を感じることができる。
・すると子どもは(親を引きつけるために)戦う必要がなくなる。
・親から「注目される」と感情爆発が減り、親子関係も改善する。
・2〜3か月で効果が出やすい。
▢ Watch me play!を行うときのポイント
・子どもが自由に表現できるおもちゃを選ぶ。電池式のものはただ見ているだけで(時間が)過ぎてしまうので、シンプルで年齢相応のおもちゃが良い。
・この時間の主導権は子ども。親は誘導せず、遊びを言葉で表現する程度にとどめる。親が関心を寄せるだけで子どもは安心する。
▢ 厳しく叱ってしまったときの親子関係修復のコツ
・厳しすぎるのも、弱すぎるのもNG。
(厳しすぎる言い方)
「さっきの言い方は誤るけど、怒らせたのはあなたよ。ゲームをやめない際と言ったときにすぐに聞くべきだったのよ」
(弱すぎる言い方)
「ゴメンね、さっきの言い方はダメだったね、許してくれる? ゲームをしたいなら続けてもいいよ、もう泣かないで」
(理想的な言い方)
「ゴメンね、今の言い方はダメだったね。私は怒っていたの、あなたは嫌な気持ちになったでしょうね」
▢ 児童養護施設で物を壊す男の子の叫び
・事情により親が養育できない子どもたちが集まる施設にはアタッチメント不足の子どもが多い。
・毎日何かを壊し、職員を困らせて手を焼いた男の子、そして彼は最後に泣きながら「だって、何か悪いことをしないと、先生はオレを見てくれないじゃないか」と叫んだ。
▢ アタッチメントが必要なのは子どもだけではない
・子どもは“物理的なくっつき”が中心。
・成長すると“精神的なくっつき”で安心感を得るようになる。
▢ ジョン・ボウルビィ(1907-1990)が提唱した「アタッチメント理論」
・「安心感の輪」を構成する要素は「安心の基地=安全な避難所」と「探索」
・安心の基地で安心感を得ると人は探索に出かける。
・不安になると人は安全な避難所に戻ってくる。
・上記の流れを安心の輪と呼ぶ。
・安心の輪の行き来を繰り返すことで、安心の輪は大きくなる。
・安心の輪が大きくなると、一人でいられる力が身につく。
・アタッチメント対象(安心の基地)は成長とともに変わっていく、広がっていく。
(例)養育者 → 祖父母、先生、友人、・・・
▢ 安全基地としての大人(養育者)の役割
・変わらずに“いつもそこにあり続ける”こと。
・いつも“何気ない話”(ダル絡み?)ができることが最高の安心材料になる。
▢ 3つのアタッチメントスタイル
(回避型)自分のことを隠す傾向、他者と距離を置こうとする。
(不安型)人間関係にとても敏感、相手にどう思われているのか常に気がかり。
(安定型)人と親密に関わることが容易、信頼を心地よく感じる。
▢ “アタッチメント”を有名にした専門家(アミール・レバイン:コロンビア大学医学部)の言葉
・信頼できる人とつながり合うことほど、人の心を落ち着かせてくれるものはない。
・アタッチメントスタイルは人間関係において、どのように安心感を得られるのかという尺度である。
・アタッチメントスタイルは優劣ではなく、自分の“人間関係のクセ”がわかるものさし。
▢ アタッチメントスタイルの誤用が氾濫している現状
・その人に寄り添うために使うものであり、区別するために使うものではない(トレイ・タッカー:公認心理士)。
・一歩下がって“人間とはそういうものだ”と考えることが重要(ケイト・スピアー:インフルエンサー)
・正しい情報へのアクセスが不十分であると、健康状態が悪化する(アマンダ・ヤーネル:ハーバード大学)
<参考>
▢ 子育てで大切な“アタッチメント”って?(すくすく子育て、2024年放送)
▢ こころの土台を育てる関わり方 アタッチメント実践編(すくすく子育て、2025年放送)
▢ 【あさイチ】子どもが伸びる!言葉がけのスキル♡(①〜⑤まであります)(2024年放送)
▢ 愛着スタイル診断テスト(回避性愛着障害~絆が稀薄な人たち~ (光文社新書) を基にした質問票)
▢ 愛着(アタッチメント)スタイル診断(公認心理師監修、BCC)
▢ 遠藤利彦先生講義動画集(保育 is オンライン研修)