Q. 予防接種を予約していたのに、風邪を引いちゃって・・・ 治ってからどれくらい開ければいいんですか?

 

という質問をよく受けます。「予防接種ガイドライン」には次のように書かれています:

・「重篤な急性疾患にかかっていることが明らかなものは接種不適当者」

・「急性疾患であっても軽症と判断できる場合には接種を行うことができる」


この文章を私なりに解釈し、当院では次のような方針で接種しています;

・軽い鼻風邪や風邪の治り際で診察所見に問題がなければ可。 

・高熱(38℃以上)が出た場合は、解熱後1週間を過ぎ体力が戻れば可。


一方、「風邪薬を飲んでいる間はやらない」という医師もいらっしゃいますが、これは「重篤」はさておき「急性疾患は避ける」という文言を重視しているものと思われます。どちらが正しい・間違いというわけではありません。その医師のスタンスということで、ご理解ください。


<諸外国の考え方>
海外では風邪はどう扱われているのでしょうか。
いくつかご紹介します;

国名

風邪をひいたときの予防接種

アメリカ

有熱・無熱にかかわらず下痢症や上気道炎罹患、急性疾患の回復期は禁忌ではない。

カナダ

上気道炎、かぜ、中耳炎、下痢症などはワクチンの免疫反応に干渉せず禁忌とはいえない。感染症回復期や39.5℃以上の熱を伴う急性期であってもワクチン応答への影響もワクチン後の副反応のリスク増大もない。

イギリス

38.0℃または38.5℃を超える発熱時は解熱するまで延期する。

というわけで、日本より接種に積極的な国が多い様子がうかがわれます。


(参考)予防接種ガイドラインによると、各種感染症に罹った時、次のワクチンまで開ける期間は以下の通りです;

開ける期間(治癒後

病名

4週間

麻疹

2~4週間

風疹・水痘・おたふくかぜ

1~2週間

突発性発疹・手足口病・伝染性紅斑



予防接種後の発熱

予防接種の副反応で一番多いのは「接種部位の腫れ」、次がこの「発熱」です。

ほとんどの不活化ワクチンの添付文書(説明書)には以下の記載があります:

 発熱、不機嫌等を認めることがあるが、いずれも一過性で 2~ 3日中に消失する


基本的に一過性の発熱のみであれば心配ありません。

ただし、ワクチン接種後に熱が出た場合は、必ず接種医に相談してください。同じワクチンの接種がまだ残っている場合は必須です。その発熱がワクチンの副反応なのか、たまたま合併した風邪なのか判断する必要があります。一緒に風邪症状(咳・鼻水、嘔吐・下痢など)が認められる場合は、副反応より風邪の可能性が大です。

生ワクチンの副反応は自然感染した症状が軽く出るパターンであり、自然感染同様、潜伏期があります。当日/翌日に発熱することはまれです。


<諸外国の考え方> 

ワクチン後の発熱について、外国の考え方は日本と少し違うようです。

例えばアメリカでは乳児期から同時接種中心のスケジュールが組まれていて、実際に30%以上のお子さんが発熱するため、あらかじめ解熱剤を渡されることもあると聞いています。ワクチン後に発熱しても「接種した証拠、免疫反応が起きている証拠」くらいの感覚なのですね。
近年、日本でも肺炎球菌ワクチン新型コロナワクチン接種後に、
一過性に発熱するけど問題ないことが広く知られるようになりました。



(参考)ワクチンの副反応としての発熱の頻度

ワクチン名

製薬会社

頻度(○数字は「○回目」という意味)

四種混合

テトラビック®

①9.3%、②20.2%、③11.3%、④16.0%

クアトロバック®

46.7%(1回目~4回目の合計)

スクエアキッズ®

26.2%

B型肝炎

ヘプタバックスII®

0.1~5%

ビームゲン

0.1~5%

ヒブ

アクトヒブ®

①1.6%、②2.5%、③4.1%、④1.7% ・・・合計2.5%

肺炎球菌

プレベナー13®

(37.5℃以上)①31.1%、②30.8%、③31.9%、④40.0%

日本脳炎

ジェービック®

18.7%

エンセバック®

21.5%

インフルエンザ

北里第一三共

(1~3歳)12.5%、(3~12歳)13.9%

阪大微研(田辺三菱)

(年齢に関係なく)0.1~5%未満

化血研(アステラス)

(6ヶ月~3歳)5%以上、(3~12歳)0.1~5%未満

(各ワクチンの添付文書より抜粋)