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月経不順で婦人科を受診すると、
たいていピル(経口避妊薬様女性ホルモン配合剤)が処方されます。
月経サイクルをある程度コントロールすることが可能になるそうです。

ピルは専門医の管理下で服用すると、とてもよい薬です。
しかし、婦人科以外ではピルを処方することができません。
また、若い未婚女性にとって婦人科の敷居は高いと思われます。

そこで漢方薬の出番です。
漢方薬は婦人科以外でも処方できます。
当院は小児科ですが、
小さい頃から通院してきた患者さんから、
「生理が始まったのですが、間隔が一定しなくて心配」
「生理痛がつらくて痛み止めが欠かせません」
という相談を受けることがあり、
漢方薬を処方することがあります。

月経異常の中で、月経不順は最もストレスが関与していると言われています。
西洋医学では、月経コントロールの薬とストレス対策の薬は別に処方されますが、
漢方医学では、一つの薬で済むことが多いことが違うところ。
なぜかといえば、月経不順がストレスに関係していることを2000年前から認識して治療してきたからです。

すごいですね。

では漢方専門家による治療法解説を紹介します。
各先生により解説が微妙に異なりますが、
原典は約2000年前の中国の書物『傷寒論』『金匱要略』であることは共通しており、
そこに師匠の流派や個人の臨床経験が加わったものとご理解ください。

私はシンプルな大澤先生の解説が好きですが、
理論的な後山先生の解説にも肯けます。
お二人とも、温経湯を第一選択に挙げていますね。

当院でも処方可能ですので、試してみたい方はご相談ください。
あなたに合った漢方薬を、一緒に探しましょう。


産婦人科医:大澤稔先生

月経不順
くちびるが渇いている
 → はい → 温経湯(106)
 → いいえ → 当帰芍薬散(23)


産婦人科医:後山尚久先生

月経不順
瘀血・血虚桂枝茯苓丸(25)、当帰芍薬散(23)、温経湯(106)
気虚・気滞十全大補湯(48)、六君子湯(43)、通導散(105)

この中で、温経湯(106)が第一選択となる。

<解説>
・月経不順のうち、排卵障害患者に対しては、西洋医学では種々の治療法が施される。
・排卵障害や月経異常は心身症としての一面も有しており、画一的な西洋医学的治療では限界がある。
・若年者では未婚者の月経不順の治療目的は、決して定期的な月経ではなく、自分の力で排卵できるようになることである。
・漢方医学的には、生殖機能は五臓の「腎」機能に最も関与しており、月経周期異常の病態は「腎虚」と捉える。この「腎虚」には「脾胃虚(気虚)」「血虚」が関与すると言われ、月経異常には「瘀血」と「気滞」も原因として挙げられる。
・どの漢方薬を用いるかの決定は、実際には即断が難しい。
・月経異常の本態が「下焦の虚寒」と「瘀血」であることから、温経湯(106)の証と一致する例が多いため、この方剤が第1選択薬として用いられることが多く、効果も得られる。
・最近の若年女性の食生活や生活パターンは「瘀血」と「気滞」を起こしやすい。
・ダイエットで無理矢理体重を落とした場合は、「血虚」やさらには「気虚」状態が生じることがある。
・精神ストレスの強い毎日を送っている場合には「気虚」「気滞」が病態の中心となる。

<方剤解説>

温経湯】(106):虚証・寒:血虚・瘀血・気虚
服用方法:1回1包、1日3回服用
効果発現:早ければ次の月経時に効果発現
腹証:特徴的なものはない(腹壁軟弱でときに下腹部の不快感や瘀血点圧痛)
こんな人に:
・下半身の冷えが強い(+上肢のほてり、のぼせ)
・手の平・足の裏がほてる
・乾燥しやすい体質

当帰芍薬散】(23):虚証・寒:血虚・水毒
服用方法:1回1包、1日3回服用
効果発現:早ければ次の月経時に効果発現
腹証:軟弱で軽度〜中等度の小腹急結
こんな人に:
・色白で貧血気味
・なで肩・細身
・四肢の冷えがあり、むくみやすい体質
・めまい、頭痛

桂枝茯苓丸】(25):瘀血
腹証:少腹瘀血圧痛、左腹皮拘急
こんな人に:
・肩こり、頭痛、めまい
・紅潮を伴うのぼせ、月経痛

桃核承気湯】(61):実証・熱:瘀血
腹証:著明な小腹急結
こんな人に:
・便秘
・肩こり、頭痛
・月経前症候群(月経前にのぼせ、頭痛、めまい、肩こり、精神症状)

四物湯】(71):血虚
服用:温経湯(106)との併用で効果向上
腹証:軟弱、臍上悸
こんな人に:
・貧血・色白
・皮膚乾燥気味


小児外科医:小川恵子先生

瘀血剤(当帰芍薬散、桂枝茯苓丸、桃核承気湯)に加えて、
下記のような方剤を併用する。

六君子湯(43):気うつ傾向、消化管が弱い
柴胡桂枝湯(10):緊張しやすい、胃が痛くなりやすい
四逆散(35):緊張が非常に強い
加味逍遥散(24):落ち込みやすく、イライラしやすい
十全大補湯(48):疲れと肌のかさつき
補中益気湯(41):食後に眠くなりやすい


三宅和久先生

・漢方概念の「血」は血管内の液体を意味する。
・昼間体を動かし消費して減っていき、夜に再生産される性質がある。
・寝ている間に脾(現代医学の胃腸)が血を再生産するので、寝る時間が短いと作る時間が短く、血が減ってしまう。
・月経が遅れる理由は3つある。

1.血虚(血の不足)
血が十分にあると順調に子宮に血を貯めて、28日でいっぱいになり月経が始まる。血が不足していると貯まるまで時間がかかるので月経が遅れがちになる。
治療:養血薬:四物湯(71)、当帰芍薬散(23)、六味丸(87)、牛車腎気丸(107)

2.肝気鬱結(ストレス)
ストレスがあかり肝の気がうっ滞して止まると血を順調に動かせず、子宮に血を貯めるのに時間がかかり、月経が遅れる。
治療:疏肝理気薬:柴胡加竜骨牡蛎湯(12)、四逆散(35)、加味逍遥散(24)、抑肝散(54)

3.瘀血(血の停滞)
血が止まった状態を瘀血と言い、血が子宮に届きにくくなり月経が遅れる。
治療:活血化瘀薬:桂枝茯苓丸(25)、疎経活血湯(53)


谷川聖明Dr

4つの方剤の使い分けを漢方概念の“虚実”で表すと…
(実)
 ↓ 桃核承気湯
 ↓ 桂枝茯苓丸
 ↓ 当帰芍薬散
 ↓ 温経湯
(虚)

4つの方剤の使い分けを漢方概念の“陰陽”で表すと…
(陽)
 ↓ 桃核承気湯
 ↓ 桂枝茯苓丸
 ↓ 温経湯(半陰半陽)
 ↓ 当帰芍薬散
(陰)

【方剤解説】
桃核承気湯)お血・気逆4、気滞1
温経湯)血虚4、お血・気逆3、気滞・気虚・水毒2
桂枝茯苓丸)お血5、気逆3、気滞・血虚・水毒2、気虚1
加味逍遙散)お血4、気逆3、血虚・気滞・気虚・水毒2
当帰芍薬散)血虚・水毒4、お血3、気虚・気滞2、気逆1

★達人の名言:寺澤捷年Dr
「当帰芍薬散は春の田んぼ」(みずみずしい)
「温経湯は秋の田んぼ」(乾いている)


<参考>
▢ 女性の健康推進室・ヘルスケアラボ「月経不順・無月経」(厚生労働省)

 初経年齢が低下してきた現在、小学4年生女子で約1割が経験するそうです。
それとともに、生理痛(=月経痛、医学的には月経困難症)とお友達になります。
中高生で薬を使いたくなるレベルの生理痛のある女子は、約5割もいるそうです。
市販の痛み止めでガマンしている、なんとかしのいでいるという人がほとんどだと思われます。

病院へ行くほどじゃないけど、やはりつらい、
産婦人科は敷居が高いし、
行ったことがわかるといろいろうわさされるのが嫌、
ピルという薬があることは知っているけど、
これも副作用とか、周りの反応とかが怖い・・・
という方へ、漢方薬をお勧めします。

漢方薬の特徴として、
痛みが強いときに頓服でのむ薬もありますが、
その場限り・一時しのぎの西洋医学の鎮痛剤と異なり、
生理のない日も含めて毎日服用することにより、
生理痛が軽くなる体質改善効果を期待できる薬もあります。

さらに生理中の痛み以外のつらい症状(冷え、頭痛、便秘など → 月経困難症)を同時に改善でき、
服用を続けているうちに月経困難症そのものが出現しなくなり、
休薬できる場合も多いのです。

漢方医学では、生理痛は“血の巡りが悪い”と捉え、
“瘀血”(おけつ)と表現します。
その瘀血を治す薬を“駆於血剤”と呼び、 
その人の体力・体調により複数の薬剤が用意されているのです。
自分に合った駆於血剤を見つけられると、ハッピーになれますよ。

近年、漢方薬の薬効が科学的に解析されるようになり、
駆瘀血薬は体の組織の血液微小循環を改善させることがわかってきました。
静脈系の微小循環障害に効く薬は西洋医学では乏しいので、貴重な存在です。

ここでは複数の漢方専門家による生理痛の治療を紹介します。
読んでみて、「私にはこの漢方が合いそう」と感じたらぜひご相談ください。

小児科である当院でも処方できます。
あなたに合った漢方薬を一緒に探しましょう。

ただし、日常生活に支障が出るほど重い人は、
ベースに病気が隠れていないかどうか確認する目的で、
まず婦人科受診をお勧めします。


産婦人科医:大澤稔先生

■ 月経痛の種類
1.収縮過剰型:子宮の筋肉が収縮して古い血液を排出するとき、収縮が強すぎて痛みを覚える。
2.病気合併型:子宮筋腫や子宮内膜症などの病気が原因で痛む
3.冷え誘発型 :冷え症(冷えると痛む)、鎮痛剤が体の冷えを助長する悪循環もある。

<月経痛の漢方治療フロー>

(頓服)
急性月経痛の第1選択薬 →
芍薬甘草湯(68)

(定期内服)
冷え症がありますか?  

→ あり → 唇の乾き、足の裏のほてりは?
      → あり:温経湯(106)
      → なし:当帰芍薬散(23)、当帰建中湯(123)

→ なし  → 子宮筋腫・子宮内膜症は? 
      → あり → 便秘 → あり:桃核承気湯(61)
              → なし:桂枝茯苓丸(25) 
      → なし:芍薬甘草湯(68)

■ 飲むタイミング
① 頓服(痛みがひどいときの緊急避難):芍薬甘草湯(68)
② 定期内服(生理中だけではなく毎日服用):桂枝茯苓丸(25)、桃核承気湯(61)、温経湯(106)、当帰芍薬散(23)
③ 生理中のみ内服:当帰建中湯(123)(月経以外の日は当帰芍薬散を毎日服用)

<方剤解説>
芍薬甘草湯(68):5-6分で痛みが和らぐ超即効薬。生理痛がひどいときに1(〜2)包頓服する。鎮痛剤(NSAIDs)と併用可能。
桂枝茯苓丸(25):子宮筋腫・子宮内膜症のヒトの第一選択。 微小循環改善作用あり。1回1包、1日3回継続服用。鎮痛剤(NSAIDs)と併用可能。
桃核承気湯(61):子宮筋腫・子宮内膜症+便秘があるヒト向け。微小循環改善作用あり。1回1包、1日1回からはじめて、便の状態をみながら増やしていく(いきなり1日3回ではじめると下痢するかも)。 鎮痛剤(NSAIDs)と併用可能。
温経湯(106):下半身の冷えが強いのに、手の平・足の裏は火照っていて、唇が乾き、月経不順などに悩んでいるヒト向け。1回1包、1日3回継続内服。鎮痛剤(NSAIDs)と併用可能。
当帰芍薬散(23):冷え・むくみ・頭痛があり、色白で貧血気味のヒト用。 1回1包、1日3回定期内服。
当帰建中湯(123):疲れやすく、血色が悪い、冷え、(生理中の)下痢に悩んでいるヒト向け。 生理中の7日間、1回1包、1日3回服用(月経以外の日は当帰芍薬散を服用)。


小児外科医小川恵子先生) 

■ 月経痛の種類
1.機能性月経困難症:ベースに病気がない・・・90%以上を占める
2.器質的月経困難症:ベースに病気がある

■ 月経困難症における漢方薬の位置づけ
・機能性月経困難症において、鎮痛剤(NSAIDs)や低用量ピルと並ぶ選択枝の一つ。

<生理痛の漢方治療フロー>

月経時に塊が出ますか、月経血が暗赤色ですか?

 → はい →
便秘は? → あり:通導散(105)、桃核承気湯(61)
           → なし:
桂枝茯苓丸(25)、桂枝茯苓丸加薏苡仁(125)

 → いいえ →
むくみやすい? → はい:当帰芍薬散(23)
              → いいえ:
当帰建中湯(123)
  
月経血が多い(
月経過多)→ 芎帰膠艾湯(77)

<方剤解説>
芍薬甘草湯(68):痛みが強いときに頓服(1回1包、1日4回まで可)、あるいは月経中2包分2で使用可能。
当帰建中湯(123):血虚(当帰)+気虚(大棗・甘草・生姜)に対応。 
当帰芍薬散(23):血虚+水毒に対応。
桃核承気湯(61):気逆(+便秘)に対応。 
通導散(105):気うつ(+便秘)に対応。
桂枝茯苓丸(25)、桂枝茯苓丸加薏苡仁(125):臍周囲の圧痛を目標とする。 

月経過多の治療フロー>

月経過多肌荒れ、爪が割れやすい(血虚)?

 → はい → 不眠傾向? → はい:帰脾湯(65)、加味帰脾湯(137)
           → いいえ → 出血が長く続く:芎帰膠艾湯(77)
                 → 手足のほてり、口唇の荒れ:温経湯(106)

 → いいえ → 便秘傾向?
      → はい →
下腹部の圧痛は? → あり:桃核承気湯(61)、通導散(105)
                    → なし:三黄瀉心湯(113)
       → いいえ → 桂枝茯苓丸加薏苡仁(125)、桂枝茯苓丸(25)


産婦人科医:後山尚久先生

・月経困難症、月経前症候群(緊張症)は“瘀血”と“水毒”がその病態の中心をなす。その基盤に“気の異常”(気虚、気うつ)が存在している。

<月経困難症への治療>

月経痛中心(10代女性の軽度の月経困難症)
当帰芍薬散(23)を継続投与 ・・・有効率5〜8割
月経中は鎮痛剤頓服、
芍薬甘草湯(68)頓服可

月経痛+瘀血(肩こり、ほてり、冷えなど)
月経前7日から終了まで:
芍薬甘草湯(68)
月経終了から月経前7日まで:
桂枝茯苓丸(25)、加味逍遥散(24)、当帰芍薬散(23)、桃核承気湯(61)、通導散(105)

月経痛+水毒(めまい、頭痛、嘔吐など)
月経前7日から終了まで:
芍薬甘草湯(68)
月経終了から月経前7日まで:
苓桂朮甘湯(39)、五苓散(17)、半夏白朮天麻湯(37)、当帰芍薬散(23)

<方剤解説>
当帰芍薬散(23):虚証・寒:血虚・水毒
芍薬甘草湯(68):虚証・寒熱
温経湯106):虚証・寒:血虚・瘀血
温清飲(57):虚証・熱:血虚・血熱
加味逍遥散(24):虚〜中間証・熱:気血両虚、胸脇苦満、瘀血
桂枝茯苓丸(25):中間〜実証:瘀血
大黄牡丹皮湯(33):実証・熱:瘀血、便秘
桃核承気湯(61):実証・熱:瘀血、便秘、精神不安定



谷川聖明Dr.)

4つの漢方薬の使い分けは“陰陽”概念を使う。

(陽)
 ↓ 桂枝茯苓丸
 ↓ 加味逍遙散
 ↓ 当帰芍薬散
 ↓ 当帰建中湯
(陰)

【方剤解説】
各方剤に含まれる生薬の担当病態の強さを数字(1~5)で表した:
桂枝茯苓丸)お血5、気逆3、気滞・血虚・水毒2、気虚1
加味逍遙散)お血4、気逆3、血虚・気滞・気虚・水毒2
当帰芍薬散)血虚・水毒4、お血3、気虚・気滞2、気逆1
当帰建中湯)お血3、血虚3、気逆1


以上、4名の漢方専門医による解説を並べてみました。
やはり微妙に異なりますが、共通しているのは、

“瘀血”がベース、
+“水毒”
+“さまざまな気の異常(気虚/気鬱/気逆)”

という捉え方ですね。
水毒や気の異常は各患者さんにより異なるため、
オーダーメイドの治療薬選択が必要になるという流れです。

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