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西洋医学ではまだこの「天気痛・気象病」の病態を捉えきれず、一方の漢方医学では「水毒」という概念が合致し、水毒に対する漢方薬が見事に効くという現実があります。

私も風邪で受診した患者さんを診察しているとき、水毒・水滞徴候(※)が目立つと、
「もしかして車酔いしやすいですか?」
と聞きます。ご家族は、

「なぜわかるんですか?」
と不思議がりますが、舌を診ると一目瞭然なのです。

そのような例には、ご希望により、五苓散を頓服薬として処方することがあります。


※ 水毒・水滞徴候:
✓ 胖大舌:舌がボテッとしてむくんでいる
✓ 歯痕:舌辺縁に歯形がある
✓ 振水音:上腹部を軽く叩くとポチャポチャ音がする


久手堅司先生の講義メモから、ポイントと感じた箇所を引用・抜粋させていただきます。


<ポイント>


▶ 治療の柱は以下の3つ:

① 投薬治療:漢方薬中心

② セルフケア指導:生活習慣の工夫、ストレッチや呼吸法の指導

③ 骨格の歪みを改善:パーソナルトレーニングやヨガ・ピラティスなど背骨の動きをよくする運動療法や、整体・鍼灸などを提案


▶ 第一選択薬は五苓散

✓ 水毒の徴候に気象病の症状が合致している。

✓ 五苓散は水毒を改善する利水剤の基本薬。体内の水分代謝異常を調整し、正常に戻す。

✓ 約70%に有効

✓ 肩こりを伴う例では筋弛緩薬を併用すると効果が出やすいが、副作用(眠気・筋力低下)もあるため、できれば単独投与する。

✓ 過去に五苓散の投薬歴があり無効例でも、1日3回服用してもらうと改善する例もある。最低2週間投与し、できれば4週間投与する。3〜4週から効果が出始める症例も多く、また、休薬後に「効いていた」と実感する患者さんもいる。


▶ 水毒でよくみられる症候

✓ 浮腫(水腫)

✓ 車酔い、悪酔い、嘔吐、下痢しやすい

✓ めまい、耳鳴、頭痛

✓ 冷え症

✓ 症状が季節と天候の影響を受ける


▶ 五苓散単独で手応えがない場合


五苓散+西洋薬

 ⇨ 緊張型頭痛:エペリゾン(ミオナール®)、チザニジン(テルネリン®)等

 ⇨ 片頭痛:バルプロ酸(デパケン®)、ロメリジン(ミグシス®)、プロプラノロール(インデラル®)、トリプタノール、等

 ⇨ めまい:ベタヒスチンメシル(メリスロン®)、ジフェニドール(セファドール®)等

 ⇨ 低血圧・起立性調節障害:ミドドリン(メトリジン®)、アメジニウム(リズミック®)等

※ CGRP関連抗体薬使用例では、五苓散は補足的な立場になる。ただし、五苓散が有効な場合が多く、CGRP関連抗体薬導入に至る例は少ない。

五苓散+漢方薬

 ⇨ 緊張性頭痛:葛根湯(1)

 ⇨ 片頭痛:呉茱萸湯(31)

 ⇨ めまい:半夏白朮天麻湯(37)、苓桂朮甘湯(39)

 ⇨ 低血圧・起立性調節障害:苓桂朮甘湯(39)、麻黄附子細辛湯(127)

 ⇨ 全身倦怠感・だるさ:補中益気湯(41)

 ⇨ 不眠:抑肝散(54)

 ⇨ 生理不順:当帰芍薬散(23)

 ⇨ 胃腸不良:六君子湯(43)


▶ 五苓散からの切り替え

・半夏白朮天麻湯(37):めまい、頭痛

・苓桂朮甘湯(39):めまい

・葛根湯(1):肩こり・頭痛

・呉茱萸湯(31):片頭痛・冷え

・抑肝散(54):不眠

・補中益気湯(41):倦怠感・虚弱体質

・六君子湯(43):胃の不調、食欲低下、易疲労


<方剤解説>

※ 芍薬+甘草 → 鎮痙・鎮痛作用
※ 柴胡+芍薬 → 抗ストレス作用、自律神経調節作用

10柴胡桂枝湯
● 構成生薬:小柴胡湯+桂枝湯
 桂皮・芍薬・甘草・大棗・生姜 → 桂枝湯
 柴胡・黄岑・半夏・人参・甘草・大棗・生姜 → 小柴胡湯
● 臨床応用:
・頭痛・腹痛などいろいろな症状
・ストレスがありそう
・自律神経失調症
・風邪の亜急性期
・反復性感染症
● こんな症状・体質に(広瀬滋之Dr):
・神経質・几帳面、不安傾向、ストレスに過敏
・ふだんから過緊張傾向(手掌発汗、肩こり、体が硬い)
・痛み(頭痛、腹痛、関節痛等)をよく訴える
・OD傾向あり(小症状>大症状・・・疼痛型)
・心身症に罹りやすい
・けいれん体質、周期性嘔吐症、夜尿症、チック、成長痛、不定愁訴、風邪をひきやすい
→「困ったときの柴胡桂枝湯」(新見正則Dr)

12柴胡加竜骨牡蛎湯
● 構成生薬:(小柴胡湯-甘草)+竜骨・牡蛎+α
 柴胡・黄岑・半夏・人参・大棗・生姜 →(小柴胡湯-甘草)
 桂皮
 竜骨・牡蛎(精神安定、抗動悸)
 茯苓(精神安定)
● 効能効果:
比較的体力があり、動悸、不眠、いらだちなどの精神症状のあるものの次の諸症:
・高血圧
・動脈硬化
・慢性腎臓病
・てんかん
・ヒステリー
・小児夜驚症
・陰萎
● こんな症状・所見に:
・体力中等度
・ストレスに立ち向かっている
・臍上悸(腹部大動脈拍動著明)
・胸脇苦満(心か部から右脇にかけて抵抗)
・脈:やや沈・実、舌苔:乾燥傾向、白、腹力3₋4

16半夏厚朴湯〜やや実証
● 構成生薬:小半夏加茯苓湯+厚朴・蘇葉
 半夏・茯苓(気をめぐらす)
 生姜
 厚朴・蘇葉(気をめぐらす)
● こんな症状・所見に:
・精神症状+喉のつまり感・つかえ感
・咽頭や食道部の違和感(梅核気、ヒステリー球、咽中炙臠)
・神経質、几帳面、用意周到、メモ魔
・予期不安(救急車で運ばれた経験がある、いつも異常なし)
・+胃腸症状 → 茯苓飲合半夏厚朴湯(116)
● 効能効果:
・不安神経症
・神経性胃炎
・つわり
・咳
・神経性食道狭窄症
・不眠症

17五苓散
● 構成生薬:
 桂皮(温める、抗炎症作用)
 蒼朮・沢瀉・猪苓・茯苓(水分代謝調節)
● 特徴:
・利水剤:脱水の時には水を保持、浮腫の時には水を排泄。
・水チャンネルであるアクアポリンに作用し水分代謝調節を行う。
● 臨床応用:
・ウイルス性胃腸炎
・頭痛(気象病・天気痛傾向)…アプリ「頭痛-る」の活用を
・乗り物酔い
・飛行機の離着時の症状
・熱中症
・二日酔い
・めまい

35四逆散
● 構成生薬
 柴胡
 芍薬
 甘草
 枳実

37半夏白朮天麻湯
● 構成生薬:
 天麻(頭痛・めまいを止める)
 黄耆・人参(元気にする)
 半夏・陳皮・生姜・茯苓・白朮 → 六君子湯
 茯苓・白朮・沢瀉(利水)
 麦芽・乾姜(健胃)
 黄ばく(清熱)
● 特徴:
・黄耆・人参入り → 参耆剤
・六君子湯の8つの構成生薬のうち、大棗・甘草以外が含まれている。
● こんな症状・所見に:
・日常的なめまい・頭痛・嘔気
・胃腸虚弱(お腹が冷えると下痢)、全身倦怠感
・冷え
・雨降りや過食で症状増悪
→胃腸虚弱で冷えを伴う頭痛・めまい

39苓桂朮甘湯
● 構成生薬:
 茯苓(水をめぐらせる、精神安定)
 桂皮(気をめぐらせる、温める)
 蒼朮(水をめぐらせる、胃腸を整える)
 甘草
● こんな症状・所見に:キーワードは「ドキドキ・チャポチャポ」(腹診所見)
・めまい、立ちくらみ
・頭痛、動悸
・臍上悸(ドキドキ)
・胃内停水音(チャポチャポ)

41補中益気湯
● 構成生薬:
 柴胡・升麻(下がったものを持ち上げる)
 (下がったものの例)食欲、気分、精神、内臓下垂
 人参・黄耆(元気にする)
 人参・蒼朮・陳皮・生姜・大棗・甘草(胃腸機能改善)
 当帰(血をめぐらせる)
● こんな症状・所見に:
・しんどくてやる気が出ない。
・食欲がない。
・疲れやすい。
・食後の眠気。
・風邪の回復が悪いとき。

54抑肝散〜虚証
● 原典:保嬰撮要(中国の明時代)
● 構成生薬:
 柴胡(理気、疎肝・清熱)
 釣藤鉤(降気、熄風:興奮を静める)
  釣藤鈎・柴胡(情緒安定)
 茯苓・蒼朮(利水)
 当帰・川芎(補血・活血)
 甘草
● 特徴:
・交感神経過緊張(怒りや筋緊張)を緩和
・効果は数日以内に感じられることが多い。 
● こんな症状・症状に:
・ストレスや交感神経過緊張による不眠
・子どもの夜泣きの薬
・神経質でイライラ、落ち着きがない。
・常に緊張を強いられている。
・やや興奮的な状態。
・どこかに怒りがある。
・診察室で打ち解けにくい印象(喜多Dr.)
※ 母親もイライラしているときは母子同服を。
● 効能効果:
・虚弱な体質で神経がたかぶるものの次の諸症:神経症、不眠症、小児夜泣き、小児癇症
● 臨床応用:
・イライラ
・夜泣き、疳の虫
・睡眠障害
・チック
・神経発達症
・泣き入りひきつけ
※ 怒りの急性期には抑肝散、
 長期化した怒りは、心身を損ね虚弱化させ胃腸を弱めるため、
 抑肝散化陳皮半夏がよい。

抑肝散有効例には「自分に対する怒り」が潜んでいる。 
・かんしゃくの根底に「自分の能力不足に対する怒り」、
「自分の理想像と実際の実力との乖離への怒り」がある場合に有効。
・逆に、抑肝散有効例には「自分自身への怒り」が存在している。
・そのような怒りの感情が出てくる発達段階以降から抑肝散の効果が出てくるため、
 甘麦大棗湯(72)と比較すると対象となる年齢は若干上がる
・対応としては、
✓ 自分の能力を向上させる(身体的成長や努力などを通じて)
✓ 自分の実力を受け入れて無理がかからないような環境調整をする
などを行うと、廃薬できる。
・抑肝散もしくは甘麦大棗湯単独で効果が頭打ちの場合は、
 併用するとよい場合が経験される。

72甘麦大棗湯
● 原典:金匱要略
「婦人のヒステリーで、悲しんで泣こうとし、
 モノノケが取り憑いたような動きをし、
 しばしばあくびをするようなときに使用」
● 構成生薬:
 甘草(緊張緩和・急迫症状抑制)
 浮小麦(情緒安定・鎮静作用)
 → トリプトファンを含み、セロトニンやメラトニンのもとになる。
 大棗(情緒安定・胃腸を整える)
● 特徴:
・すべてが食品としても使用される生薬で甘くて飲みやすい。
・有効例では数日以内に効果を実感する。 
● こんな症状・所見に:
・精神興奮がはなはだしく、不安・不眠・ひきつけなどのある子ども。
・「大丈夫、心配しないで」と声をかけたくなる子ども。
● 効能効果:
・夜泣き、ひきつけ(ツムラ)
・小児および婦人の神経症、不眠症(コタロー)
● 臨床応用
・不安が強い(母親分離不安も含む)
・夜泣き
・睡眠障害
・パニック、過換気
・チック
・神経発達症
・心因性頻尿
・涙があふれる
● 具体的な投与方法:
・パニック、不安予兆、過呼吸、涙があふれるとき → 頓用
・登校不安など → 朝、登校・登園前に
・夜泣き、夜驚症、怖い夢を見る → 夜、寝る前に
★ パニックに甘麦大棗湯(72)で効果が今一つの場合は、
 苓桂甘棗湯(奔豚湯):甘麦大棗湯(72)+苓桂朮甘湯(39)
 がおススメ。

83抑肝散化陳皮半夏
● 構成生薬:抑肝散+陳皮・半夏
 陳皮・半夏(胃腸機能調整・気のめぐり・水バランス調整)
● こんな症状・所見に:
・抑肝散より虚弱なタイプ。
・食が細い。
・怒りで心身が弱っている。

99小建中湯
● 原典:傷寒論・金匱要略(中国の後漢時代)
・虚弱な人で無理がたたっておなかが痛くなったときに使用
・体力が弱り腹直筋が緊張して動悸・鼻血・夢精・上下肢がだるくて疼く・手足が火照る・口やのどの乾燥感がある場合に使用
● 構成生薬:桂枝加芍薬湯+膠飴
 桂皮(気を巡らせて温める)
 芍薬(鎮痙・鎮痛)
 大棗・生姜・甘草(胃腸を整える)
 膠飴(滋養・潤す・気を補う)・・・麦芽糖(オリゴ糖)
● 特徴:
・虚弱児の体質改善
・腸を温めて腸蠕動を調節する
・緊張を緩和し情緒安定 → 体と心の緊張をゆるめて楽にしてくれる
・くすぐったがり屋で腹部診察困難、手足が温かく汗で湿っている場合はどんな症状でも有効。 
● こんな症状・所見に:
・食が細い、線が細い
・何となく顔色が悪い
・腹痛の訴えが多い
・目の下のクマ、まつげが長い
・偏食で甘いものが好き
・便秘したり下痢したり
・冷え症
・緊張しやすい
・汗をかきやすい(寝汗も)
・頻尿傾向
● 参考となる漢方的腹部診察(腹診)所見:
・お腹を触ると腹直筋が緊張(=交感神経過緊張)している
・くすぐったがる子ども
・「はい、力を抜いて~」と言っても抜けない人
● 効能効果:
・小児虚弱体質
・疲労倦怠
・神経質
・慢性胃腸炎
・小児夜尿症
・夜泣き
● 臨床応用:
・反復性腹痛、過敏性腸症候群
・虚弱児の体質改善
・周期性嘔吐症
・便秘症
・遷延性下痢症
・心因性頻尿
・アレルギー疾患の体質改善

137加味帰脾湯
● 構成生薬:帰脾湯+柴胡・山梔子
※ 帰脾湯には四君子湯が丸ごと入っている
 柴胡・山梔子(清熱)
 当帰・酸棗仁・竜眼肉・遠志・木香(血を補う、精神安定)
 黄耆・人参
 人参・茯苓・蒼朮・大棗・生姜・甘草
● 効能効果:
虚弱体質で血色の悪い人の次の諸症:
・貧血
・不眠症
・精神不安
・神経症
● こんな症状・所見に:
・顔色の悪い虚弱タイプ
・心配で思い悩んで疲れる
・オキシトシンとの関係(137はオキシトシンを増やす)


<参考>
・癇癪(上田晃三)小児内科 Vol.57 No.3 2025-3 

参考にした本には、2剤併用による増強効果の例が掲載されており、
単剤で効果が今ひとつだった場合の“次の一手”として利用可能で助かります。

小児科医にとって悪心・嘔吐は患者さんから毎日のように訴えられる症状です。
主に胃腸炎(嘔吐下痢症)ですが、
中には溶連菌性咽頭炎の場合もあります。
喉に強い炎症が起きて痛くなる感染症であるものの、
なぜか気持ち悪くなりおなかが痛くなります(下痢はない)。

さらに、思春期の自律神経失調症(起立性調節障害)で悪心・嘔吐が現れることも。

このような症状に対して、西洋医学ではドンペリドン(商品名ナウゼリン®)一択です。
いわゆる“対症療法”ですね。

漢方ではどうでしょうか。
実は色々な薬を、患者さんの体質や体調により使い分けています。

私は胃腸炎(嘔吐下痢症)には、
水毒(水の体内バランスが崩れた状態)と考えて五苓散を処方、
このくすりは車酔いの吐き気の特効薬でもあります。

激しい嘔吐ではなく、気持ち悪い、食欲がない、胃がもたれる・・・
こんな時は六君子湯

喉のつかえ感(気分的なものも含めて)には半夏厚朴湯を処方することが多いですね。
この薬の不思議なところは、
喉の炎症(いわゆる“かぜ”)による喉の違和感にも、
ストレスによる喉のつかえ感にも、
さらに高齢者のむせ込み(気道に誤嚥して咳き込む)にも効いてしまうのです。
このような薬効を持つ西洋薬はありません。


■ 2剤併用による効果増強レシピ

小半夏加茯苓湯2包+二陳湯2包/日
・・・小半夏加茯苓湯単独では効果不十分で制吐作用を増強したいときに併用

五苓散半夏瀉心湯
五苓散
黄連解毒湯
・・・二日酔の悪心・嘔吐に有効

茯苓飲3包+補中益気湯3包/日
・・・胃切除後の悪心・嘔吐・食欲不振に有効

半夏厚朴湯小柴胡湯柴朴湯
・・・ストレスや不安が原因で起こる喉のつかえ感に柴胡剤と併用して効果増強


■ 悪心・嘔吐に対する基本漢方薬

小半夏加茯苓湯《金匱要略》:
▶ 半夏5-8;ヒネショウガ5-8(生姜を用いる場合1.5-3);茯苓3-8
(キーワード)制吐薬の基本、つわり、嘔吐の対症療法

二陳湯《和剤局方》:
▶ 半夏5-7;茯苓3.5-5;陳皮3.5-4;生姜1-1.5;甘草1-2
(キーワード)小半夏加茯苓湯より重症例に

五苓散《傷寒論》:
▶ 沢瀉4-6;猪苓3-4.5;茯苓3-4.5;蒼朮3-4.5(白朮も可);桂皮2-3
(キーワード)嘔吐、めまい、下痢、二日酔、乗り物酔い

茯苓飲《金匱要略》:
▶ 茯苓2.4-5;白朮2.4-4(蒼朮も可);人参2.4-3;生姜1-1.5;陳皮2.5-3;枳実1-2
(キーワード)突然起こる嘔吐(腹痛はない)

茯苓飲合半夏厚朴湯《本朝経験方》:
▶ 茯苓4-6;白朮3-4(蒼朮も可);人参3;生姜1-1.5;陳皮3;枳実1.5-2;半夏6-10;厚朴3;蘇葉2
(キーワード)喉のつかえ感、心窩部のつかえ感

半夏厚朴湯《金匱要略》:
▶ 半夏6-8;茯苓5;厚朴3;蘇葉2-3;生姜1-2
(キーワード)喉のつかえ、不安感、ストレス

六君子湯《医学正伝》:
▶ 人参2-4;白朮3-4(蒼朮も可);茯苓3-4;半夏3-4;陳皮2-4;大棗2;甘草1-1.5;生姜0.5-1
(キーワード)胃腸症状、胃もたれ、食欲不振、抗がん剤の副作用

呉茱萸湯《傷寒論》:
▶ 呉茱萸3-4;大棗2-4;人参2-3;生姜1-2
(キーワード)吃逆、冷たいものの摂り過ぎ、悪心・嘔吐

半夏瀉心湯《傷寒論》:
▶ 半夏4-6;黄芩2.5-3;乾姜2-3;人参2.5-3;甘草2.5-3;大棗2.5-3;黄連1
(キーワード)吃逆、食べ過ぎ、飲み過ぎ


<各方剤の解説>

▢ 小半夏加茯苓湯(21)
・悪心・嘔吐があるときは原因を問わず使用可能。
・つわりに有効。
・少量ずつ冷服するとよい。

▢ 二陳湯(81)
・小半夏加茯苓湯+陳皮、甘草
・小半夏加茯苓湯よりも症状が強いときに有効
・中医学では「痰飲を除く基本薬」
痰飲・・・何らかの原因により水分の吸収・排泄が障害され、気道の粘液分泌亢進(痰)や胃液の貯留(飲)が生じたもの。

五苓散(17)
・小児の下痢・嘔吐に有効。
・小児には湯に溶いて冷ましたものを、スプーンで一口ずつ服用するとよい。
吐き気があるときは、吐いても一口、吐いても一口と粘り強く繰り返す。一口ずつ4回、5回と飲み続けると吐き気が止まることが多い。
・乗り物酔いの予防として事前服用。
・めまい+嘔吐に有効。

茯苓飲(69)
・枳実は幽門の緊張を改善し、胃内容物の十二指腸への排出を促進する。
・GERDに伴う悪心・嘔吐に有効。PPIと併用可。
・幽門側胃切除、胃全摘術後の通過障害を緩和し、悪心・嘔吐を改善する。
・甘草を含まないため、他剤との併用が容易。

茯苓飲合半夏厚朴湯(116)
・胃のつかえと喉のつかえ(咽頭不快感)に有効。
・GERDによる咳にも有効。
・ストレスによる上腹部症状に幅広く使用可能で応用範囲が広い。

半夏厚朴湯(16)
・小半夏加茯苓湯+厚朴、蘇葉
・ストレスや不安が原因で起こる心窩部の不快感や、咽喉頭のつかえ感と不快感(咽中炙臠、梅核気)に有効。
・つわりの悪心・嘔吐にも有効。

六君子湯(43)
・四君子湯(補気薬)+半夏、陳皮
・四君子湯+二陳湯、と捉えることもできる。
・抗がん剤の副作用による悪心・嘔吐によい。

呉茱萸湯(31)
・胃の冷えを改善する(すべて温める生薬)。
・苦みが強い(えぐみ?)ので、処方時にあらかじめ「苦い薬ですよ」と十分に説明をしておくとよい。
・偏頭痛に伴う悪心・嘔吐に有効。
・かき氷やアイスクリームなど冷たいものを食べたり飲んだりした後など、胃が冷えて起きた吃逆に即効性がある。

半夏瀉心湯(14)
・黄連+黄岑で消炎作用、胃粘膜の充血びらんを改善する。
・ストレス性胃炎の悪心・嘔吐に有効。
・食べ過ぎや飲み過ぎで起きた吃逆に即効性あり。
・肝臓の量が多いので、継続使用する際は偽アルドステロン症に注意。


<参考>

すべての臨床医が知っておきたい漢方薬の使い方(安斎圭一著、羊土社) 

参考にした本には、2剤併用による増強効果の例が掲載されており、
単剤で効果が今ひとつだった場合の“次の一手”として利用可能で助かります。


小児科医の私が下痢で来院した子どもに処方する薬は、
整腸剤が中心です。
私が医師になった30数年前は、ロペラミド(ロペミン®)が多用されていました。
強力に腸のぜん動運動を止める薬です。
下痢は止まり、腹痛も和らぎ、効果は抜群でした。

しかし腸麻痺(イレウス)状態を悪化させることが判明し、
また毒素産生菌(出血性大腸菌など)の毒素排泄を妨げるため、
重要化のリスクが存在することもあり、
ロペミンは使用されなくなりました。

そう、出血性大腸菌が登場してから、
急性胃腸炎の治療は変わったのです。

「下痢の急性期は止めてはいけない」
という概念が定着し、
「下痢の初期は整腸剤、長引いたら止痢剤」
という方針が現在はスタンダードです。

さて、漢方薬ではどうでしょう。

私は止痢剤として半夏瀉心湯をよく処方します。
苦い薬ですが、手応え十分で、
私は自分が下痢をしたときもこの薬を飲みます。

お腹が痛くてつらいときは、
昔はブスコパン®という、やはり腸のぜん動運動を止める薬が多用されていましたが、
近年はロペミン®と同じ理由で使わなくなりました。

私は桂枝加芍薬湯(幼児には小建中湯)という漢方を処方しています。
ブスコパンほど強力にぜん動運動を止めませんが、
いい具合に痛みをやわらげてくれます。
この方剤は過敏性腸症候群の薬としても有名です。

桂枝加芍薬湯に水飴の原料である麦芽糖をたくさん追加した薬が小建中湯です。
麦芽糖はオリゴ糖で、腸内細菌のエサとなり善玉菌を増やして整腸作用を発揮します。

500年以上前から使用されてきた漢方薬の効果のメカニズムを、
現代科学が証明してくれました。

それから、不思議なことに漢方では下痢と便秘に同じ薬を使うこともあります。
建中湯類(大建中湯、小建中湯など)がその代表です。
どちらに転んでいても、よい状態(中庸)に戻してくれるという、
漢方独特の効果ですね。

さらに漢方では、下痢の原因により方剤を使い分けます。
・炎症(急性胃腸炎)による下痢 → 炎症の熱を冷ます方剤
・冷えによる下痢        → 温めて回復を促進する方剤
という風に。

では、下痢に用いる漢方を見ていきましょう。


■ 2剤併用による効果増強レシピ

胃苓湯3包/日+芍薬甘草湯1包(腹痛時頓用)
・・・胃苓湯証で腹痛が強い場合に併用

葛根湯3包+小半夏加茯苓湯3包/日
・・・葛根湯証で、悪心・嘔吐が強いときに併用(葛根加半夏湯の方意)

半夏瀉心湯3包+五苓散3包/日
・・・下痢が激しいときに併用
半夏瀉心湯3包+芍薬甘草湯1包(頓用)
・・・下痢・腹鳴が強いときに併用

黄芩湯3包+小半夏加茯苓湯3包/日
・・・下痢とともに悪心・嘔吐があるとき併用

桂枝加芍薬湯3包+附子末1.5g/日
・・・お腹の痛みが強いとき、冷えがあるときは附子を併用する

人参湯3包+附子末0.5〜1.5g/日
・・・人参湯証で冷えが強いときに附子を追加する

真武湯3包+人参湯3包/日
・・・真武湯証で単独では下痢に効果不十分の時に併用、長期にわたり水様下痢が治らないときに使用してみるとよい。


■ 下痢に対する基本漢方薬 

五苓散《傷寒論》:
▶ 沢瀉4-6;猪苓3-4.5;茯苓3-4.5;蒼朮3-4.5(白朮も可);桂皮2-3
(キーワード)口渇、脱水、尿量低下、嘔吐、水様下痢(発症直後)

胃苓湯1《万病回春》:
▶ 蒼朮2.5-3;厚朴2.5-3;陳皮2.5-3;猪苓2.5-3;沢瀉2.5-3;芍薬2.5-3;
(キーワード)水様下痢、食べ過ぎ、食あたり、感染性下痢

柴苓湯1《世医得効方》:
▶ 柴胡4-7;半夏4-5;生姜1(ヒネショウガを使用する場合3-4);
(キーワード)水様下痢、炎症性腸疾患、感染性下痢(発症から数日経過)

葛根湯《傷寒論》:
▶ 葛根4-8;麻黄3-4;大棗3-4;桂皮2-3;芍薬2-3;甘草2;生姜1-1.5
(キーワード)胃腸の風邪、感冒症状(悪寒)を伴う下痢(発症直後)

半夏瀉心湯《傷寒論》:
▶ 半夏4-6;黄芩2.5-3;乾姜2-3;人参2.5-3;甘草2.5-3;大棗2.5-3;黄連1
(キーワード)ゴロゴロと腹鳴のある下痢、軟便・泥状便、下痢型過敏性腸症候群

黄芩湯《傷寒論》:
▶ 黄芩4-9;芍薬2-8;甘草2-6;大棗4-9
(キーワード)高熱、強い腹痛、激しい下痢、ノロウイルス感染症、裏急後重(しぶり腹)

桂枝加芍薬湯《傷寒論》:
▶ 桂皮3-4;芍薬6;大棗3-4;生姜1-1.5(ヒネショウガを使用する場合3-4);甘草2
(キーワード)過敏性腸症候群、裏急後重

小建中湯《傷寒論》:
▶ 桂皮3-4;生姜1-1.5;大棗3-4;芍薬6;甘草2-3;膠飴20(マルツエキス;滋養糖可;水飴の場合40)
(キーワード)子どもの下痢・腹痛

人参湯《金匱要略》:
▶ 人参3;甘草3;白朮3(蒼朮も可);乾姜2-3
(キーワード)冷えによる慢性下痢

真武湯《傷寒論》:
▶ 茯苓3-5;芍薬3-3.6;白朮2-3(蒼朮も可);生姜1;加工ブシ0.3-1.5
(キーワード)冷えによる慢性下痢

大建中湯《金匱要略》:
▶ 山椒1-2;人参2-3;乾姜3-5;膠飴20-64
(キーワード)腹部膨満、腸管ガスの貯留、冷えのある下痢


<各方剤の解説>

五苓散(17)
・小児の嘔吐下痢症に有効。
・水様下痢に対して、初日は1日5〜6回服用すると効果的。
・服用するとすぐに嘔吐する場合は、湯に溶いて冷ましてから、スプーンで一口ずつゆっくり服用するとよい。

胃苓湯(115)
・平胃散+五苓散の構成・・・平胃散単独よりも効果が強い。
平胃散(79)は食べ過ぎて下痢したときに使用する。
・消化不良や食中毒、水あたりなどの水様下痢に有効。

柴苓湯(114)
・五苓散+小柴胡湯の構成。
・小柴胡湯は強い消炎作用を有し、炎症性腸疾患や感染性胃腸炎による下痢に有効。
・ノロウイルス感染症にも使用できる。

葛根湯(1)
・感冒の下痢、胃腸の風邪に有効。
・温服すると効果的。

半夏瀉心湯(14)
・黄連+黄岑で消炎作用を持ち、粘膜の充血・びらんを改善する。
・胃痛と下痢の両方に有効。
・下痢型過敏性腸症候群の第一選択薬。
・水様便ではなく、軟便〜泥状便に有効。
・胃苓湯同様、食べ過ぎ・飲みすぎの下痢に有効
・甘草の含有量が多いため、継続使用の際は偽アルドステロン症に注意。

黄芩湯
・黄岑で炎症を改善し、芍薬+甘草で腹痛を軽減する。
・ノロウイルス感染症で見られるような、高熱・強い腹痛・激しい下痢に有効。

桂枝加芍薬湯
・芍薬+甘草で筋組織(横紋筋と平滑筋の両方)の異常収縮を緩和して痛みを取る。
 → 蠕動亢進、腹痛のある下痢に有効。
・裏急後重(頻回に便意を催すが排便量が少なく、排便後にすぐにトイレに行きたくなる)に有効
・過敏性腸症候群に有効

小建中湯(99)
・子どもの下痢に使う。便秘にも使用可能。
・子どもに呑ませるときは、少量のお湯に溶いて服用させる。
・嘔吐のあるときは使用しない、嘔吐を伴う水様下痢は五苓散を使用する。

人参湯(32)
・「お腹が冷える」と訴えるときに有効。
・外部からの冷え(下肢の冷え)と内部の冷え(冷たいものの摂り過ぎ)が原因で起こる慢性下痢に有効。
・冷たいもの(アイスクリームやビール)、寒性の果物(みかん、バナナなど)を摂り過ぎない内容に指導することも重要。

真武湯(30)
・冷えによる下痢に有効
・“ゆらゆらと揺れて倒れそうな人”に有効
・下痢は1日2〜5回程度で、腹痛は少なく、排便後はスッキリしている場合に有効なことが多い。
・早朝に起きる下痢(鶏鳴下痢)に有効。

大建中湯(100)
・熱湯に溶いて温服すると効果的。


<参考>

すべての臨床医が知っておきたい漢方薬の使い方(安斎圭一著、羊土社) 

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