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<漢方関連記事の目次>

▢ 総論
子どもに漢方?
漢方薬の上手な飲ませ方
漢方の飲ませ方のコツ
マルツエキスで漢方を飲ませる方法
漢方の副作用

▢ かぜ
風邪の経過と漢方
 ・風邪のひき始め(2剤併用)
 ・風邪を引いて数日(2剤併用)
 ・風邪がよくならない
発熱
咽頭痛

咳(2剤併用)
鼻汁・鼻閉
鼻汁・鼻閉-1
鼻汁・鼻閉-2
副鼻腔炎(ちくのう症)

▢ お腹の症状
悪心・嘔吐(2剤併用)
食欲不振・倦怠感(2剤併用)
下痢(2剤併用)
便秘(2剤併用)
しゃっくり(2剤併用)

▢ いろいろな不調
夜なき
かんしゃく・夜なき
睡眠の悩み(夜なき・眠らない・眠れない)
不眠症
不眠症(2剤併用)
偏食
チック
熱中症
多汗症・寝汗
冷え性(2剤併用)

▢ 頭痛
頭痛
頭痛(2剤併用)
頭痛(天気痛)
天気痛・気象病

▢ 神経発達症(ASD/ADHD)関連
神経発達症の困りごと
自閉症スペクトラム-1
自閉症スペクトラム-2
神経発達症と五臓論
・神経発達症に使用される西洋薬・漢方薬(作成中)
・HSP(繊細さん)(作成中)

▢ 皮膚の病気
水いぼ
じんましん
じんましん(2剤併用)
ニキビ(総論)
ニキビ
ニキビ(2剤併用)
ニキビ
帯状疱疹(2剤併用)

▢ 思春期の心のトラブル&メンタルの不調
メンタルの不調
気分(ドキドキ、イライラ、ウツウツ)
不安
不安障害・パニック(2剤併用)
動悸(2剤併用)
ストレスによる体調不良
心のトラブル
心のトラブル(方剤解説)
のどの違和感(2剤併用)

▢ 起立性調節障害(OD)・自律神経失調症関連
起立性調節障害(病気の解説)
起立性調節障害(気ぐすり)
起立性調節障害-1
起立性調節障害
起立性調節障害-2(フクロウ型体質)
起立性調節障害-3(水毒)
自律神経失調症
OD漢方:基本処方
OD漢方:病態

▢ 月経関連
月経痛・生理痛
月経不順
月経関連のトラブル(月経痛/生理痛・生理不順)
月経関連トラブル(2剤併用)
PMS(月経前症候群)
PMS(月経前症候群)
・更年期障害(作成中)
更年期障害(2剤併用)

▢ 病態・理論
舌診
寺澤の気血水スコア
こどもの漢方医学的特徴は“二余三不足
「不安」を中医学で捉えると
「過緊張」を中医学で捉えると
「イライラ」を中医学で捉えると
・「パニック」を中医学で捉えると
メンタルの不調を「気」と「血」から捉えると
漢方医学における虚実概念の混乱
月経関連漢方を気血水理論から分析してみると

 この問題を扱ったNHKの番組(ハートネットTV、NHKスペシャル、あさいち、等)や書籍を見つけましたので、ポイントを引用・抜粋させていただきます。とくに「親子の約束を作るコツ」はすべての親に知っておいて欲しい内容だと思いました。
 そして子どもを律するには「親自身が自分を律する覚悟」が必要であることをヒシヒシと感じました。

<基礎知識>

▢ 子どものスマホ所有の実態(2025年)
・スマホ所有率が過半数を超えるのは小学5年生。
・スマホを持ち始める時期は、女子平均9.9歳、男子平均10.4歳、最も多いのは12歳。

▢ ネット依存の実態
・内訳:
(7〜8割)ゲーム
(2〜3割)SNS、掲示板、動画サイト
・ゲーム依存患者は世界の人口の、男性:3%、女性:1%
・日本では100万人以上いると推定される。

▢ オンラインゲームの特徴と依存しやすい要因
・インターネットを通じて、複数の人が同時に参加するゲーム。
・メッセージ・会話機能がある。
・深夜でも誰かがいてつながれる。

▢ ネット依存の徴候
・使用時間がかなり長くなった。
・夜中まで続ける。
・朝起きられない。
・他のことに興味を示さない。
・絶えず気にする。
・注意すると激しく怒る。
・使用時間や内容などについてウソをつく。
・ネットにより成績が下がった。

▢ 脳で何が起きているのか
1.ドーパミン活性異常(覚醒剤などの薬物依存症と同じメカニズム
・ゲームをしていると楽しい
 → ドーパミン(幸福感・やる気の元)が放出される
  ⇩
・長時間ゲームを続ける
 → (線条体にある)ドーパミン受容体活性が低下する
   受容体数も減少し、やがて枯渇する
   ⇩
・幸せ気分が憂うつ気分に変わる
 → 本来のドーパミン効果が得られない状態
2.ブドウ糖代謝が低下する
3.セロトニン受容体機能低下

▢ ゲーム依存は脳の発達にブレーキをかける(川島隆太氏、東北大学)
・ヒトがものを考えたり記憶したり相手とコミュニケーションしたりする働きは脳の前頭葉の前頭前野が担当している。
・前頭前野は0歳〜5歳までの間に急速に発達し、その後穏やかな発達ペースとなり、思春期に再び爆発的に発達する。つまり2回、発達のチャンスがある。
・思春期の子どもを対象にゲームの頻度と前頭前野容積の増加量を3年間追跡調査したところ、ゲームをする頻度が高いと増加量が少ないことが判明した。これは神経細胞間をつなぐネットワークが弱いまま3年間が過ぎてしまったことを意味し、非常に深刻な問題である。

<診療>

▢ ゲーム依存の定義・診断(WHO、2019年)
1.ゲームの使用時間や頻度をコントロールできない。
2.ほかの楽しみよりもゲームが一番。
3.ゲームにより社会生活に著しく支障が出る。
 → 上記3つの項目が12か月続く場合に「ゲーム依存」と診断する。

▢ “社会生活に支障”の内容(アンケート調査)
(76%)朝起床できない
(60%)昼夜逆転
(59%)欠席・欠勤
(51%)物にあたる・壊す
(49%)食事を摂らない
(33%)ひきこもり
(32%)睡眠時間が短い
(27%)家族に対する暴力
(15%)過剰な課金

▢ “やめられない”要因
① ゲームで得られる快感はアルコール・薬物に匹敵する。
② 常にアップデートされ終わりがない。
③ ガチャ(課金システム)
★ ゲーム依存にはADHD(神経発達症の一つ)と伴うケースが存在する。

▢ 治療対象
・ネットの過剰使用+明確な体や心の問題(※1)
・ネットの過剰使用+明確な家族的・社会的問題(※2)

※1)低栄養、体力低下、骨密度低下、睡眠障害、感情をコントロールできない、うつ状態
※2)家族関係の悪化、遅刻、不登校、成績不振、退学

▢ 診療内容
・診察
(身体検査)血液検査、肺機能、骨密度、体力測定、等
(心理検査)ネット依存傾向(※)、精神疾患、等
・カウンセリング
・デイケア
・入院:危機的な状況の時・・・ネットから離れられない、過剰な課金、健康状態の異常、家族関係の極端な悪化、等

※)インターネット依存度テスト(IAT)

▢ 認知行動療法
・問題が発生しているにもかかわらずゲームを続けているのは、考え方に問題があると捉え、その考え方の歪みを補正する手法。
(例)「ゲームのメリットとデメリットを一緒に考えよう」「今までゲームに何時間費やしてきたか、その時間を勉強に費やしたら将来どんなことができるか」

▢ 治療のゴール
・インターネットとうまく付き合えるようになる。
・依存しているコンテンツだけをやめる。
・利用時間を減らす。
★ アルコールや薬物依存では完全にやめ続けることが治療の目標となるが、ゲームの場合はそれは困難なため、「減らす」という現実的なゴールを設定することになる。ゲーム依存患者は子どもが多いので「やめる」という選択は非常に難しく、まずは減らすというソフトランディングを選択する。

▢ 思春期例の問題点・注意点
・ゲームの制限・禁止は回復につながらない。
・ゲーム依存は氷山の一角で、その下には本人が悩んでいる家庭や学校、社会生活の問題が隠れている。
・子どもはゲームをすることにより安らぎを得ている面がある。
・ゲームをしている・していないではなく、ゲーム依存の原因となることに目を向けることが大切。
・思春期の子どもは反抗期でもあり、両価性(アンビバレンツ)状態。ゲームをやりたくて仕方ないけど、やめられない現状に不安を持っていることも多い。本人が困っている要素(睡眠問題・食欲不振など)をきっかけにして相談に乗り受診につなげる。最初は抵抗するかもしれないが、何回も何回もくり返し話していくことが大切。本人が怒っているときは避け、話を聞いてくれそうなときにわかりやすく説明していく。
・治療の結果、ゲーム使用時間が少しでも減れば(例:10時間 → 8時間)、それを評価することが大切。

<対策>

▢ ゲーム・ネットについての教育
・ 現代社会に必要不可欠のものでもあり、禁止するのではなく適切な使い方を教えるべき。
・いつから教えるのが適切か、乳幼児にスマホで動画を見せること、簡単なゲームで遊ばせることが良いのかどうかに関しては、明確な研究結果は存在しない。
・親としては連絡や居場所の確認目的にスマホを考えるが、子ども自身はスマホを持ったらいろいろやりたいことがある。ゲームをやりたい、動画を見たい、友達とLINEでやり取りをしたい、など子どもの要望を聞いた上で、それぞれのアプリの可否や条件など、家庭内ルールを話し合う。
・子どもが社会のルールを覚え始めるのが2歳頃、しかし小学校高学年になると、親に反抗したり、素直に学べなくなる傾向が出てくる。以上を考慮すると、5〜10歳くらいの間に、ゲーム・ネットの適切な使い方を教え始め、約束・ルールを作り、守らせることが望ましい

▢ 機種選定の際の注意点
・親が管理することが難しい場合は、安心機能が搭載されているキッズケータイがお勧め(カメラやメッセージ機能あり)。
・親の古いスマホを渡すことになったら、可能なら初期化して子どものアカウントを作成すべし(親の決済情報などは消しておく)。子どものアカウントなら、年齢に併せたコンテンツが表示される。

▢ スマホを使う時間・時間帯の設定
・時間:小学生では1日30分〜1時間が目安
(例)「平日は30分、休日前は1時間、休日は2時間」
   「30分使ったら10分休む」
・時間帯:
(例)
「夜は21時まで、塾の日は30分延長」
   「寝る1時間前までに終了」
・アプリごとの制限:
(例)「1回30分のゲームなら1日2ゲーム」
   「ゲーム40分、動画20分」
・Wi-Fiルータで端末ごとの時間設定も可能。

▢ スマホを使う場所と保管場所の設定
・自室への持ち込みNG、リビングのみ利用OK。
・寝るときはリビングで充電する。

▢ ペナルティも一緒に決めてリビングに貼っておく
・ルールを破ったときのペナルティ:
(例)「翌日の使用時間を30分減らす」
   「3回破ったら1日使用禁止」
・完成したルールはリビングや冷蔵庫に貼っておき、いつでも確認できるようにする。
・学年が変わるときや習い事の時間が変わるときは見直すタイミング。
・子どもの成長に合わせて「もう自分でコントロールできそう」と感じたら、ルールを弛めてITスキルを上げられるよう誘導する。

▢ 親子の「約束」を作るコツ
1.「約束」についての話し合いは、機器を買う前、サービスを使い始める前がよい。

2.所有権は大人に。
3.上手な「おしまい」を身につける。
(例)子どもが見通しをつけられるように、タイマーを利用したり、上手におしまいできたら報酬を与えたり。
4.「やるべきことをやってからゲーム」はうまくいかないことが多い。
(例)宿題が終わったらゲームしていいよ、とすると、宿題に取りかかってもゲームのことが頭から離れず進まないのでいつまで経っても宿題が終わらない。
5.ゲームができる時間は短すぎる設定にしない。
(例)15分だけ・・・では短すぎてトラブルの素になる。
6.次にいつ使えるのかを明確にする。
(例)「今日はおしまいだけど、明日になればまた〇時間できるよ」と言うと納得しやすい。
7.ゲームの時間を「交換可能財」にする。
(例)お手伝いをしたらゲームの時間が少し増えるなど。
8.機器を取りあげる方法をひと工夫。
・物理的に奪う方法はトラブルの元。
(例)Wi-Fi が時間で自動的に切れるなど。
9.子どもはネットから離れていたいときもある。
(例)LINEのやり取りから離れられず長時間使用してしまう子どもがいる、苦痛でも離れられないタイプもいる。時間を区切るルールを作り、やり取りから離脱するきっかけを作ってあげる。
10.睡眠時間の確保。
・生活リズムを崩すような時間設定はしない。
(例)「ちゃんと寝た方がゲームの能力がアップするよ」などとアドバイス。

▢ ネットのルール作りのポイント
・親が買い、子どもには貸し出す。
・使用する時間・場所・金額を指定する。
(例)午後10時まで、居間でのみ使用し自分の部屋に持ち込まない、等
・決めたら書面にして目につくところに貼る。
・親子が一緒にルールを作る。
親も守る

▢ 他の依存対策のポイント
・子どもだけにルールを押しつけるのではなく、家族みんなでルールを守るべし。
親がゲームに興味を持つと、子どもが教えてくれる。親も子どもの考えを理解しやすくなる。親の方がゲームが上手、ネットに詳しいと、子どもは親を尊敬して言うことを聞きやすくなる。

▢ 具体的な項目
・夫婦で異なる考えだと子どもは混乱するため、家族みんなで話し合い、決める。
・ペアレンタルコントロール機能のフィルタリングなどの設定で時間制限を。
・家庭内のルール作り(時間と場所)や親からの声かけでリテラシーを育てる。
★ 子どもにスマホを与えると、子どもは親のアカウントを探し、誰をフォローしているのか、どんな投稿と返信をしているのかを見る可能性があることを覚悟する。大人はSNSで子どものお手本になるような振る舞いを心がけるべし。

▢ 使いすぎ予防のポイントは「日中活動の充実」
・日中活動が充実していると、前述の約束事のポイントを子どもに守らせることが簡単になる。
ゲームよりリアルワールドが楽しければゲーム依存は発生しないはずだが、現実は逆になりがち。
・日中活動を子ども本人が楽しみにしていたら、子どもは朝起きようと努力する。逆に言えば、日中活動がつらい、怖い、不安、退屈な状況では、生活リズムが崩れやすくなる。

▢ 無駄に見える時間も必要
・ストレスのかかる活動、努力が必要な活動をしたあと、ストレスを発散できる楽しい時間(ゲームに夢中)や、一見無駄に見えるボーッとした時間(スマホをなんとなく眺める)は必要なもの。
・ボーッとした時間もストレス発散に役立っているが、それを理解できない親と葛藤を引き起こしがち。
例)試験前・発表会前などストレスが高まる。熱中して取り組む活動は維持される。
   ⇩
  この無駄に見える時間が長くなる。
   ⇩
  睡眠時間が短くなる。
   ⇩
  昼間眠くて、努力ができなくなる。熱中して取り組めなくなる。
   ⇩
  親がイライラする。

★ ニール・イヤール氏(作家・コンサルタント)のコメント
・スマホやアプリ開発の裏側を知る
✓ 魅力的で習慣性が高いものが「優秀なスマホ製品」とされる。
✓ 習慣的に使用してもらうためにユーザーの不快な感情(退屈、孤独、疲労、不確実性、ストレス、不安、等)に入り込み「気晴らし」を展開させる。
✓ 不確実性で変わりやすいものにヒトは注意深くなり集中する傾向があり、それがあると習慣化しやすい。予測可能なものには誰も興味を示さない。

★ 樋口進氏(久里浜病院名誉院長)のコメント
・ゲームに勝ち続けると依存性はなくなるが、ときどき負けるという不確実性があるため習慣化する。
・仲間とやり取りしていて、自分だけ置いてきぼりになることを皆とても怖がる。イヤだけど見ざるを得ない状況になっていることが多い。
・依存患者に「見るのはいいけど、書き込むのはしばらくやめよう」と提案している。書き込むと必ず反応を見たくなるため。
・依存性のあるゲームやネットは、早い年齢から始めると依存のリスクが高くなることがわかっている。国がガイドラインを作成すべき時に来ている。
・スマホ・ネットを使わない時間を家族で設定・共有することを提案したい。
(例)夜の7〜8時は家族全員で使わない時間を作る( → 会話が増えるかもしれない)。

★ スティーブン・クレイン氏(スタンフォード大学 行動デザインラボ)の提案
・使いやすく便利に作られているスマホを自分で使いにくく楽しめないようにするくする工夫が必要。
・人間は3つの要素「やりたい・できる・きっかけ」がそろったときに行動する。
1.「きっかけ」を減らす:
(例)お休みモードをオンにして通知が来ないようにする。
2.「できる」を減らす:
(例)パスワードは長いものにして保存しない( → 精神的な負担が増える)。指紋認証や顔認証も使わない。
3.「やりたい」を減らす:
(例)画面の色を変える(赤一色にするとずっと画面を見たくなくなる、白黒にすると魅力が半減する)。


<参考>
・「ゲーム・ネットの世界から離れられない子どもたち」(吉川徹著、合同出版)
・「思春期の「つながる気持ち」はどこへ行く?」(関正樹著、日本評論社)
・「子育て支援者応援チャンネル」(YouTube動画 by 木下直俊先生)
・「思春期 心と体の不調 ゲーム依存」(NHK-Eテレ きょう
の健康、2025年)
・「ゲームネット依存」(NHKサイエンスZERO、2022年)
・「
子どものスマホ、いつから持たせる?(AERA Kids+、2026.4.8)

<相談窓口>
エンジェルアイズHP
全国精神保健福祉センター(厚生労働省)
保健所検索(厚生労働省)

 近年、よく耳にするようになった高次脳機能障害。ひとことで言えば、「高次脳機能を主る大脳皮質が障害された病態」ということになります。石原慎太郎元都知事もこの病気を指摘されていました。外見ではわからない障害なので、本人の困り感は大きいと思われます。
 少しでも理解をするため、録画してあったEテレの番組を視聴してみました。備忘録としてポイントを書き残しておきます。

▢ 大脳の働き(高次脳機能)
(前頭葉)話す、モノを作る、感情のコントロールをする、等
(頭頂葉)文字を書く、計算する、等
(側頭葉)人の話を理解する、等

▢ 高次脳機能障害の疫学
・日本国内で約50万人(2008年)

▢ 高次脳機能障害の歴史
〜当初は脳外傷の後遺症という位置づけ、しかし体のリハビリは行われるが脳機能のリハビリはなかった〜
(1997年)名古屋市総合リハビリテーションセンターの万歳登茂子医師らにより、名古屋「脳外傷友の会みずほ」が設立された。
(1998年)脳外傷交流シンポジウム開催、
 神奈川「脳外傷友の会ナナ」代表の東川悦子氏参加。
 北海道「脳外傷友の会コロポックル」の篠原節氏、中野匡子氏参加。
(2000年)「日本脳外傷友の会」設立
(2006年)政府が「高次脳機能障害」の診断基準を公表

▢ 高次脳機能障害の主な原因
・脳卒中(約80%):脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、等
・脳外傷(約10%):交通事故、転倒事故、スポーツ事故、等
・その他(約10%):感染症、低酸素脳症、脳腫瘍、等

▢ 高次脳機能障害の代表的な症状 〜 外見からは気づきにくい障害 〜
・注意障害:注意力が続かない、集中できない
・記憶障害
・失語症
・遂行機能障害:計画的な行動ができない
・社会的行動障害:イライラする、やる気が出ない
・半側空間無視
・地誌的障害:道に迷いやすい
・失行
・失認
・半側身体失認

▢ 高次脳機能障害で一番困っていること(患者さんの生の声)
・見た目がふつうなので「それって言い訳でしょ」と言われることが多い。
・内部障害と説明しても「そんなの言ったらみんなそうだよ」と言われてしまうが(イヤ、そうじゃないんだ)と心の中でつぶやく。
・見た目はふつうなんだけどいろいろ覚えることができなくて仕事に手間取ったりしていると、他のスタッフから「自分で工夫するのは当たり前でしょ」と批判されショックを受け、仕事を辞めようと思った。
・健康な人が考える以上にシビアな忘れ方とか失敗の仕方をするので、ものすごく深刻に考えていることを「言い訳している」と言われてしまい、なかなかそこは気持ちの整理がつかない。

▢ 高次脳機能障害は治るか
・早期診断・治療、適切なリハビリテーションの社会参加によって徐々に回復していく。
・完治ではないが、基本的には回復すると信じていただいてよい。

▢ 高次脳機能障害の支援機関
かけはしプロジェクト:高次脳機能障害のある女性たちが悩みを語り合うオンラインサークル
高次脳機能障害 情報・支援センター(国立障害者リハビリテーションセンターHP内)

▢ 子どもの高次脳機能障害の問題点
・成人では就労移行支援施設などを経て職場復帰をすることが多いが、子どもではそのようなシステムがなくいきなり学校に戻ることになり、学校生活・授業についていけなくて困ってしまう。
・学校・医療・当事者の三者が連携してサポート体制を構築する必要がある。

 片頭痛の治療薬は日進月歩で、近年、新薬が相次いで登場してきています。
 しかしこれは成人領域の話で、小児(特に小学生)への使用が正式に認められている新薬はほとんど存在せず、相変わらずアセトアミノフェンやイブプロフェンの頓服でしのいでいる旧態依然のまま。私は何とかならないかと漢方薬を提案しています。五苓散内服で5割、五苓散と呉茱萸湯を組み合わせると7割の患者さんに効果があると報告されています。
 さて、偏頭痛と群発頭痛を扱う番組を視聴し、わかりやすい説明だったので備忘録としてポイントを書き残しておきます。相変わらず小児には使えない薬の話ですが。

 いくつか記憶すべき数字が登場しました;
・鎮痛剤が有効かどうか → 内服2時間後に楽になっているかどうかで判断
・鎮痛薬は月に10回以内の使用にとどめる。月に10日間以上、それを3か月以上続けると「薬剤の使用過多による頭痛」のリスクが高くなる。
週1回以上鎮痛薬を服用している人は医療機関を受診し予防薬による治療の検討が必要。


<総論>

▢ 三大頭痛(頭痛そのものが病気)
・片頭痛
・緊張型頭痛
・群発頭痛

▢ 片頭痛の診断
(問診)約9割が診断される:頻度、起こり方、痛み方、服薬歴、等
(診察)神経系の診察
(検査)血液検査、MRIなどの画像検査を行うこともある。
・・・以上により二次性頭痛(ほかの病気が原因の頭痛)を除外する。

▢ 二次性頭痛の例
・脳梗塞
・脳出血
・くも膜下出血
・髄膜炎

▢ 危険な頭痛(二次性頭痛)の特徴
・突然の頭痛、今までにない激痛
・麻痺やしびれ、しゃべりにくい
・精神症状(厳格・妄想・幻聴、等)
・意識がぼんやりしている
・発熱
・視力低下を伴う
・50歳以上で新規発症
・頻度や程度が増えている、等

▢ 頭痛治療薬まとめ

1.片頭痛
(発作治療)
・トリプタン製剤(内服薬)
・ラスミジタン(レイボー®、内服薬)
(予防薬:毎日内服)・・・効果がない・副作用が出た場合は注射薬を試す
・カルシウム拮抗薬
・β-遮断薬
・抗てんかん薬
・抗うつ薬
(予防薬:月1回注射)
・CGRP関連抗体薬:少しでも効果があれば1年〜1年半ほど継続(痛み軽減作用もある)
(治療&予防薬)
・リメゲパント(ナルティーク®、2026年9月承認、12月販売):副作用が少ない、血管収縮作用がない。

2.群発頭痛
(発作治療)
・トリプタン製剤(自己注射薬)2007年承認
・在宅酸素療法
(予防薬)
・カルシウム拮抗薬
・ステロイド

<各論>

【片頭痛】

▢ 片頭痛について
・慢性頭痛の代表的な疾患の一つ。
・患者数は1000万人(推計)。
・女性に多く、女性:男性=3:1。
・頭の片側、もしくは両側が痛み、吐き気・嘔吐を伴うことがある。
・日常生活に非常に大きな支障をきたす疾患。

▢ 片頭痛が起きるメカニズム
・脳の視床下部で痛み物質が産生される。
・痛み物質は三叉神経を刺激する。
・三叉神経は脳の血管を拡張させるとともに炎症を起こす。
・血管拡張と炎症が痛みを発生させる。
・嘔吐中枢も活性化され、吐き気を催す。

▢ 片頭痛の特徴(セルフチェック)
① 動くと悪化する。
② 吐き気がある。
③ 光・音・においに過敏になる。
①②③の2つ以上該当する → 片頭痛の可能性あり

▢ 片頭痛の誘因(きっかけ)
(自己調節可能な誘因)
・まぶしい光
・強いニオイ
・飲酒
・睡眠不足
・寝過ぎ
・人混み
・騒音
(対人関係)
・ストレス
・ストレスからの解放
(自然現症)
・天候の変化
・温度の変化
・高い湿度
・月経
・更年期

▢ 市販の鎮痛薬の効果
・市販薬で痛みが改善し、支障なく過ごせているのであれば問題ない。
服用して2時間後に楽になっているかを確認すべし(本当に効いている?)。

▢ トリプタン製剤(内服薬)
・頭痛のメカニズムに沿って作られた薬(血管の拡張と炎症を抑える)。
・これまでの鎮痛薬(NSAIDs)で効かない人にも効果が期待できる。
・種類;
 スマトリプタン(イミグラン®)点鼻あり、ジェネリックあり
 ゾルミトリプタン(ゾーミッグ®)ジェネリックあり
 エレトリプタン(レルパックス®)ジェネリックあり
 リザトリプタン(マクサルト®)速く効く、ジェネリックあり
 ナラトリプタン(アマージ®)効果が長い、ジェネリックあり
・副作用;
 のどが締めつけられるような感じ
 だるくなる
 眠くなる、等
・服用日数:ひと月に10日以内
・服用できない人(禁忌):血管を収縮させるため、以下の病気の人は服用できない。
 ❌️ 脳梗塞
 ❌️ 心筋梗塞
 ❌️ 重い高血圧
 ❌️ 肝障害

▢ 「薬剤の使用過多による頭痛」
・トリプタン製剤でも市販薬でも起こりうる。
・使用頻度が月に10日間(※)以上、それを3か月以上続けていると脳が痛みに過敏になってしまい、わずかな刺激でも頭痛が起きやすくなる。
※)非オピオイド系鎮痛薬は15日。
・週1回以上鎮痛薬を服用している人は医療機関を受診し予防薬による治療の検討が必要

▢ トリプタン製剤が使えない人へ
・ラスミジタン(レイボー®、2022年承認):血管収縮作用がない。
 
▢ CGRP関連抗体薬(予防薬)
・頭痛のメカニズムに焦点を当てた新たな予防薬。
・月に1回自己注射をして片頭痛の発生を抑える効果がある。
・三叉神経末端から分泌されるCGRPが血管のレセプターに結合して作用し血管が拡張&炎症を起こすが、CGRP関連抗体薬はCGRPが受容体に結合する前にトラップして持ち去ってくれる。
・薬剤;
 ガルカネズマブ(エムガルティ®)
 フレマネズマブ(アジョビ®)
 エレヌマブ(アイモビーグ®)
※)費用:保険適用あり、3割負担の場合1本12,000円程度。


【群発頭痛】

▢ 群発頭痛の疫学
・患者数:約10万人
・男性に多く、20〜40歳で発症(近年は女性も増えている)

▢ 群発頭痛の症状
・片側の目の奥やこめかみが痛くなる。
・短時間で痛みがピークになる。
・15分〜3時間続く(終わると通常に戻る)。
・1日のうち短時間だけ痛みが起こる。治まるが毎日起こる。
・痛む側の目が充血し涙が出る、鼻水が出る。
・群発期がある。毎日数時間頭痛が起きる、数週間〜2か月ほど続く。
・群発期以外は頭痛は起こらない。
・群発期は半年〜数年おきに来る。

▢ 群発頭痛の治療
(発作用)
・トリプタン製剤(イミグランキット皮下注®、自己注射薬)(2007年承認):効果が出るまで数十分(内服薬では1〜2時間)、1日2回まで使用可能
・在宅酸素療法:高濃度の酸素を15分間吸入すると、群発頭痛の症状改善が期待できる。なお、酸素は登山用などではなく医療用酸素。
(予防薬)群発期のみ服用し、痛みの程度や頻度を減らすことができる。
・カルシウム拮抗薬
・ステロイド


<参考>
・チョイス@病気になったとき「頭痛〜治療と予防の最新情報」(NHK Eテレ、2026年5月3日放送)
頭痛専門医検索(日本頭痛学会HP)

<追加>
 最初に書いたように、トリプタン製剤は添付文書上、小児に適応がありません。しかし、適応がない中でも安全に使える可能性が高いことが「頭痛ガイドライン」にも記載されている、という宙ぶらりん状態が現状です。製薬会社さん、小児適応取得をお願いします。

小児に使用が許可されているトリプタン製剤
(12歳以上、体重40kg以上)スマトリプタン(イミグラン®)点鼻
・・・ほかのトリプタン製剤は小児に対する有効性が証明されていない。もし使用する場合は、説明と同意の上、年令12才以上・体重40kg以上は成人と同じ量、年令8才以上~12才未満・体重25kg以上~40kg未満は、成人の半量が処方量の目安。

正式に認可されていないが、説明と同意の上、小児使用可能なトリプタン製剤例
(6〜12歳)
 スマトリプタン(イミグラン®)点鼻あり
 リザトリプタン(マクサルト®)速く効く
(13〜17歳)
 スマトリプタン(イミグラン®)点鼻あり
 リザトリプタン(マクサルト®)速く効く
 ゾルミトリプタン(ゾーミッグ®)
 エレトリプタン(レルパックス®)
 ナラトリプタン(アマージ®)効果が長い

頭痛ガイドラインでは・・・
頭痛ガイドラインでは、カロナールでコントロールできない頭痛はトリプタン製剤(リザトリプタン、マクサルト®が推奨されている。体重によって40kg以上は10mgで40kg未満は5mgが推奨されている。

 もちろん、ガンコな頭痛、鎮痛薬抵抗性の頭痛の際は、二次性頭痛の可能性を検査で除外しなくてはなりません。実際に、頭痛を主訴に受診された小学生に「頻度・程度が悪化傾向なら脳神経外科で検査が必要です」と説明したところ、その半年後に脳神経外科で「もやもや病」と診断されたお子さんがいました。

 子どもたちの心の問題を追及していると、生きることの基本に立ち返ります。それは、食事・運動・睡眠。いくら薬を使っても、この3つがボロボロだったら立て直せません。
NHKで睡眠障害を扱った番組を視聴したところ、わかりやすい説明だったので備忘録としてポイントを書き残しておきます。
 睡眠医学は、メラトニンやオレキシンという物質の発見で飛躍的に進歩し、それが治療薬の開発につながっています。しかし、子どもに使用できる薬は限られています。
 さらに一番最後に出てきた「子どもの睡眠障害の原因」には環境(塾やスマホ)と心の問題(悩み・ストレス)が挙げられており、これを紐解いていくには心理士の介入も必要になりそうです。私は漢方薬の内服を提案しています(子どもの睡眠の悩みに漢方を)。

▢ 睡眠・覚醒障害とは
・夜中の睡眠の質が悪い、量が足りない。
・寝不足により日中の活動に支障がある。
・約70種類の病気が含まれる。

▢ 睡眠不足と睡眠障害の違い
・睡眠不足:眠ない(睡眠習慣の問題)
・睡眠障害:眠ない(日常生活に困りごとがある状態)

▢ 患者さんの生の声

▶ ナルコレプシー1型:日中に過剰な眠気があり、夜はグッスリ眠れない病気。
・情動脱力発作(突然、体の力が抜けて倒れてしまう症状):感情の動きが大きいときに全身の力が一気に抜けてしまう。
・「倒れ方が気持ち悪い」と言われた。自分でこらえよう・戻そうとする動きも加わるので、バタッではなくガクガクガクッと倒れ込む。倒れたあと眠ってはいるけど耳は聞こえる。

▶ むずむず脚症候群:夕方から夜に欠けて足の不快感が悪化して睡眠の妨げになる病気
・足が気になって、ほてって眠れない。
・「脚の中に虫が這うような感じ」とか「じっとしていられない、マッサージし続けないといけない、じゃないと気持ち悪くていられない」
・脚のむずむずの不快感は、なぜか明け方くらいになるとちょっと症状が治まる。2〜3時くらいにはうとうとして少し眠れる。
・でも夜になると、また寝られない戦いをしなければならないとため息が出る。

▶ 睡眠・覚醒相後退障害:脳の体内時計のリズムが乱れて睡眠時間が後ろにずれる病気
・超夜型で、みんなが眠る0時頃になっても眠気が来ない、眠りたいのに眠れない。
・定時制高校に通うようになり、登校時間が自分のリズムに合うようになり、困りごとが解消した。
・社会全体が朝型の生活でまわっている、社会に合わせに行くのではなく、自分に合った生活リズムを見つけるという考え方も大切だと思う。

▢ 睡眠・覚醒障害の分類
1.不眠
・慢性不眠障害
・短期不眠障害、等
2.睡眠リズムの異常
・睡眠・覚醒相後退障害
・非24時間睡眠・覚醒リズム障害、等
3.過眠
・ナルコレプシー
・反復性過眠症、等
4.睡眠中の異常現象
・むずむず脚症候群
・睡眠時無呼吸症候群、等

▢ オレキシンの発見(1998年、柳沢正史)
・人の覚醒を促す脳内物質。
・ナルコレプシーの治療薬開発につながった。

▢ 子どもの睡眠問題
・日本国内の子どもの3〜4人に1人が睡眠問題を抱えている。
・寝付きが悪い、夜中に動く、朝目が覚めないなど睡眠問題で「ほぼ毎日困っている」親が約30%。

▢ 年齢による体内時計の変化
・幼児期〜学童期は朝型
・思春期〜20代は夜型に傾く
・中高年になると再び朝型へ

▢ 子どもの睡眠障害の原因
・体質:生まれつき寝るのが苦手、等
・環境:塾や習い事で多忙、スマホ・ゲーム、等
・心:悩みやストレス、等


<参考>
▢ フクチッチ「睡眠障害・前編/後編」(NHK・Eテレ、2025年)

長年小児科医として夜尿症診療にたずさわってきましたが、正直に言いまして、薬物療法の手応えがない疾患の一つです。

夜尿症の薬物療法とはデスモプレシン(ミニリンメルト®)を指します。
これは抗利尿ホルモンといって、尿を濃縮させて量を少なくする働きがあります。
誰の体にも存在するホルモン(バゾプレシンあるいはバゾプレッシン)ですが、夜尿症児は相対的にそれが少ない、効きが悪いと考え、内服薬で補充するのですね。
抗利尿ホルモンであるバゾプレシンが欠乏する尿崩症という病気がありますが、この病気にもデスモプレシンが投与されます。不思議なのは、尿崩症に使用する量より、夜尿症に使用する量の方が多いこと。

夜尿症のすべてがデスモプレシン治療の対象になるわけではありません。
尿量を少なくする薬ですから、尿量が多いタイプ(多尿型、小児夜尿症の2/3はこのタイプ)に適応になり、有効率は60〜70%です。

一方、尿量は普通だけと膀胱が小さいために朝までに溢れて夜尿になるタイプ(膀胱型)もあります。
このタイプにデスモプレシンを投与しても、残念ながら効果はあまり期待できません。もともと多尿ではないので尿量減少効果が少ないですから。

膀胱型に有効な治療はアラーム療法で、有効率は70%程度。
こちらにまとめましたので興味のある方はお読みください。

多尿型と膀胱型、両方の要素があるタイプを混合型と呼び、予想される通り難治性です。このタイプにはデスモプレシンとアラームの療法を併用します。

また、有効性は低いものの、抗コリン薬や三環系抗うつ薬を併用することがあります。
今から30年前はこの二つの薬剤が夜尿症治療の中心でした。喘息などの病気と比べて、治療の手応えがなく、患者さんも通院に疲れてドロップアウトすることが多かったですね。

以上が一般論ですが、専門家による「難治性夜尿症」の記事が目に留まりましたので、備忘録としてポイントを引用させていただきます。

ポイントとして、
・多尿型と膀胱型を分けていない。
・国際ガイドラインでは薬物療法とアラーム療法を並列推奨されているが、著者はミニリンメルト®や抗コリン薬などの薬物療法を中心に、アラーム療法を補助として考えている様子。
・漢方(抑肝散)の効果に言及している。
などが挙げられます。

欧米では「とりあえず薬を試してみましょう」とミニリンメルトが処方されると耳にしたことがあります。日本のように、多尿型と膀胱型を分けて考えるという、繊細な作業はスルーしている様子。

さらに近年、難治性夜尿症例に神経発達症の合併が多いことが明らかになってきました。漢方の抑肝散は、私がふだんからかんしゃくの相談を受けると処方している方剤の一つです。ようやくこちらの面にも光が当てられてきた、という印象ですね。
神経発達症の漢方に興味のある方は、こちらをご参照ください。


▶ 排尿機能の発達
・3歳頃までに反射性排尿を抑制する脳の高位中枢が発達するため、誘導すれば排尿が可能になり、それ以前にみられていた反射的排尿が消失し、昼間の遺尿がみられなくなる。
・4歳頃には次第に夜間の不随意排尿も解消し、自律排尿が完成していく。
・5歳を過ぎても月に数回以上、夜間睡眠中に尿を漏らす例を「夜尿症」と定義している。
・日本における夜尿症の頻度は、5〜15歳では約6.4%(約80万人)である。

▶ 夜尿症の分類法は2つ
1.一次性(95%)と二次性(5%)
①一次性:生まれてからずっと夜尿が消えない
②二次性:夜尿が一旦、6ヶ月以上解消していたものが再燃
 → 尿路感染症、便秘症、脊髄疾患(脊髄炎、腫瘍など)を要チェック
2.単一症候性(60〜90%)と非単一症候性(10〜40%)
①夜尿のみ
②夜尿+昼間遺尿
 → 慢性便秘症、泌尿器科的疾患(尿路奇形、反復性尿路感染症など)、代謝・内分泌疾患(糖尿病、尿崩症など)、脊髄疾患(潜在性二分脊椎など)、神経発達症(ADHD児など)などの基礎疾患を有している可能性がある

★ 国際標準のチェック項目:ICCS,International
①昼間遺尿:3歳半以降も続く昼間遺尿の有無
②1日の排尿回数:3回以下、あるいは、8回以上は異常
③切迫性排尿の有無
④排尿をこらえている姿勢の有無
⑤下腹部を圧迫しての排尿の有無
⑥尿線を強く描けるか
⑦便秘の有無
⑧神経発達症(ADHD、ASD)合併の有無
⑨学習障害や発達障害の合併の有無

▶ 難治性夜尿症の治療

1.生活指導の徹底
・適切な水分摂取法:飲水の約2時間後に尿が生成されるので、夕食は就寝2時間前に済ませ、それ以降の飲水は極力控える(10mL/kg未満)
・塩分過剰摂取を控える
・就寝前に必ず排尿する習慣をつける

2.ミニリンメルト®(抗利尿ホルモン製剤、DDAVP)の適応
・多尿型
・60〜70%有効
・国際基準ICCSの推奨治療では第一選択薬
・120μgで開始し、効果不十分の場合は240μgへ増量する。
・OD錠は、従来のスプレー剤と比べて効果発現までのタイムラグを考慮し、就寝直前内服ではなく、就寝30分前に内服する。
・OD錠は、錠剤を口腔内で崩壊させ、口腔粘膜から吸収させることが重要である。口腔内で崩壊させずに嚥下したり、服用時に飲水すると十分な効果が得られない。内服前に歯みがきを済ませ、内服後は飲水を控え、口をゆすぐことを避けるなども重要である。

3.抗コリン薬(副交感神経遮断薬)
・上記DDAVPで効果不十分であった場合、機能的膀胱容量増加を目的として使用する。
・従来のオキシブチニン塩酸塩(ポラキス®)やプロピベリン塩酸塩(バップフォー®)に変わり、新しい世代のイミダフェナシン(ウトリス®、ステーブラ®)やコハク酸ソリフェナシン(ベシケア®)のそれぞれOD錠が汎用されている。
・昼間遺尿や過活動膀胱の症状を合併する児では、ウトリスかステーブラ2錠(0.2mg)を2回に分けて使用、体重35kgを超える児では、効果が不十分な場合は倍量まで増量する。
・夜尿のみで昼間遺尿を認めない児では、ベシケア2.5mgを就寝前に使用し、効果が不十分な場合は5mgに増量する。

4.アラーム療法
・薬物療法と並列した治療のオプション
・有効率:65〜70%、中止後の再発率:30〜60%
・作用機序:覚醒排尿を促すのではなく、膀胱の排尿抑制力を高め、膀胱容量を増加させることにある(詳細不明)。
・アラーム療法を成功させるためには、本人の努力のみならず家族の協力が極めて重要である。
・患児が家族と一緒に就寝し、アラームが作動した際、自力で起きることができなければ、親が起こす。
・開始2週間後に(主治医が)電話を入れるなどして治療継続の応援と技術的な問題を解決する。
・6〜8週間継続しても効果が得られなければ、一時中断する。
・(著者は)10歳以上の患児に対して薬物治療の補助療法としてアラーム療法を導入する。

5.睡眠問題への介入
・近年、夜尿症間寺における終夜脳波の検討から、多くが「浅くてクオリティーの低い睡眠が遷延している」ことが明らかになった。
・治療の一助として睡眠の改善が注目されてきており、欧米ではメラトニンの仕様の検討が行われている。

6.漢方による治療
・(著者ら)抑肝散を用いて良好な結果を得ている。使用量は、体重40kg未満に2.5g(夕食後)、体重40kg以上に2.5gで効果が乏しい場合は5gへ増量。
・抑肝散(54)は、漢方でいう「肝」の高ぶりを押さえ、興奮やイライラ、筋肉の緊張などを鎮める方剤であり、もともと小児の夜なき、疳の虫に使用されてきた。


<参考>
小児の難治性夜尿症への対応
 大友義之、順天堂大学小児科(日本医事新報社、最終更新日は2025.9.20)

21世紀となり、喘息の治療の中心は吸入ステロイドになりました。
20世紀に小児科医になった私は、それまでのテオフィリン製剤やDSCG吸入が懐かしい。

さて現在、吸入ステロイド製剤は百花繚乱状態で、次々に新しい製剤が登場しています。
しかし規格がバラバラで、吸入方法もバラバラ・・・混乱状態とも言えます。
 
小児科医の視点で、現在使用可能な吸入ステロイド製剤を一覧表に整理してみました。

 スクリーンショット 2025-10-26 15.04.36
当院使用の吸入ステロイド薬

子どもが体調不良を訴え病院を受診、しかし検査で異常は見つからず、
「気のせいでしょう」
と言われたり、ストレスの原因が判明した場合は、
「ストレスを減らして回復を待ちましょう」
などと言われることがあります。

これが西洋医学の限界です。
しかし漢方医学では「心身一如」と言って、
「カラダの問題はココロの問題、ココロの問題はカラダの問題」
とリンクして考え、それに対応する薬がたくさん用意されています。
ココロの負担をやわらげて、健康を底上げすることができるのです。

人がストレスにさらされたときの生体反応には一定の法則があります(セリエのストレス学説)。
それに沿って漢方薬適用を説明すると理解しやすいです。
最初に「まとめ」を提示しておきます;

▶ ストレス反応の経過図(Direct Communication より)
セリエのストレス図改訂-768x480

▶ 第一段階(警告反応期)→ 気逆
適応方剤;
苓桂甘棗湯:苓桂朮甘湯(39)+甘麦大棗湯(72)
・驚きやすく動悸がする
苓桂朮甘湯(39)
・立ちくらみ、めまい、動悸、頭冒感
黄連湯(120)  
・胃停滞・重圧感、胃痛、冷えのぼせ

▶ 第二段階(抵抗期)→ 気滞・気うつ
適応方剤;
(厚朴+杏仁)→ 桂枝加厚朴杏仁湯
・気逆による咳
(厚朴+蘇葉)→ 半夏厚朴湯柴朴湯茯苓飲合半夏厚朴湯
・梅核気、気逆・気滞を治す
(厚朴+蒼朮)→ 平胃散
・上腹部の膨満
(厚朴+枳実)→ 大承気湯、小承気湯、潤腸湯通導散麻子仁丸茯苓飲合半夏厚朴湯
・下腹部・腹部全体の膨満

▶ 第三段階(疲憊期)→ 気虚
適応方剤;
四君子湯(補気)…無気力、疲労感
六君子湯(補気+行気)…痰、胃もたれ、食欲不振
補中益気湯(補気+升堤)…胃腸虚弱、皮膚虚弱、微熱を伴う疲労
十全大補湯(補気+補血)…胃腸虚弱、皮膚虚弱、貧血、(硬便)
人参養栄湯(補気+補血+不安鎮静)…胃腸虚弱、肺虚弱、ストレス性不眠 


子どもでも日々の生活の中でストレスがたまります。
ただ、その解消法はどうでしょうか。
大人では運動したり、趣味に走ったり、瞑想したり、好きな物を食べたり・・・いろいろ思いつきますが、子どもにはあまり用意されていません。

子どもが大きなストレスを経験して受け止めきれず、逃れられなくなると、自罰的に受け入れて不安や恐怖を抱いて緊張する傾向があります。

それらの感情を言語化する能力も未発達のため、泣いたり怒りやすくなったりして感情が不安定になり、それがいろいろな症状として現れることがあります。

例えば・・・
 食欲不振、嘔気・嘔吐、腹痛、下痢、便秘、
 頭痛、めまい、失神、全身の振戦
 口渇、手掌・足底・腋窩の発汗、 
 頻尿、頻脈・動悸、過呼吸発作
等々。
周囲の大人は、これらの症状を「ストレスかも?」と周囲が気付くことが大切です。

さて、人がストレスにさらされたとき、どう反応するのでしょう。
人それぞれではありますが、そこに一定の法則を見いだせます。

以下に紹介するのは「セリエのストレス学説」として知られているものです。
これを漢方に応用することが以前から試みられてきました。

▶ ストレス症状の病態理解と漢方

● 第一段階(警告反応期)→ 気逆
・ストレッサーに襲われた時期
・カラダに不調が現れる
(体内変化)
・交感神経活性化

● 第二段階(抵抗期)→ 気滞・気うつ
・ストレスに抵抗している時期
・体の不調がなくなる
(体内変化)
・コルチゾール分泌亢進
・抗ストレス作用増強
・甘草がコルチゾール分解抑制

● 第三段階(疲憊期)→ 気虚
・ストレスに抵抗する力がなくなる
・このままストレッサーにさらされると病気などになってしまう
(体内変化)
・胸腺萎縮、リンパ球減少、易感染性
・脳神経細胞萎縮
・無気力、感情鈍麻、抑うつ状態

つまり、人がストレスにさらされた時の反応過程は、
気逆 → 気滞・気鬱 → 気虚
という経過を辿ると漢方学的に考えることができます。

では、それぞれに対する漢方治療を考えてみましょう。
気逆を評価をする際、その症状を点数化した「寺澤のスコア」が役に立ちます。

▶ 気逆スコア(寺澤捷年)
14:冷えのぼせ
14:臍上悸
10:努責を伴う咳嗽
10:顔面紅潮(足の冷えはない)
8:動悸発作
8:発作性の頭痛
8:嘔吐(悪心は少ない)
8:焦燥感に襲われる
6:腹痛発作
6:物事に驚きやすい
4:下肢・四肢の冷え
4:手掌・足蹠の発汗
…合計30点以上は「気逆」

主に上半身の症状が多いですね。
健康な状態では「気」は上から下へ流れるとされますが、それが下から上へ逆行する病態が「気逆」のイメージです。
そしてそれを解消するためには、気の逆流を下向きにする方剤が使われます。
キーとなる生薬は「桂皮+甘草」です。

▶ 警告反応期(気逆)の漢方薬
● 原則:桂枝+甘草で気の逆流を下向きに
● 生薬:桂枝、紫蘇葉、半夏、黄連
● 方剤:
苓桂甘棗湯
 ・驚きやすく動悸がする
 ・苓桂朮甘湯+甘麦大棗湯
苓桂朮甘湯
 ・立ちくらみ、めまい、動悸、頭冒感
黄連湯)  
 ・胃停滞・重圧感、胃痛、冷えのぼせ

気逆の症状の一つ「頭痛」に頻用される漢方薬に五苓散がありますが、ストレス性頭痛には苓桂朮甘湯(39)の方が有効であるという意見もあります。
二剤の使い分けは以下の通り:
・五苓散の使用目標:目眩と口渇を伴う頭痛(二日酔い)、ときに嘔吐
・苓桂朮甘湯の使用目標:動悸と不安を伴う頭痛(頭冒感)

また、不安・緊張に焦点を当てると、
芍薬+甘草
の組み合わせが重要です。この組み合わせにより、
・脊髄神経のアドレナリン抑制系の選択的活性化
が起こります。その結果、
・眠気をきたさずに、不安緊張、動悸、発汗などのストレス症状を改善することができます。
代表的な方剤は四逆散です。「手汗」が使用目標です。

四逆散…漢方の交感神経抑制の特効薬
● 生薬構成:柴胡2-5;芍薬2-4;枳実2;甘草1-2
● 特徴
・日頃から不安緊張しやすいタイプに
・日中に眠気が出ず、夜に安眠できる自律神経調整薬
● 適応症状・所見:
 胸脇苦満、肩背拘急、側胸部痛、心下痞硬
 手足厥冷、掌蹠自汗、入眠不良、神経過敏
 腹中痛、残便感、腹満、硬便傾向
● 鑑別処方
実証(緊張)→ 大柴胡湯
虚証(不安)→ 香蘇散
(不安+緊張)→ 柴胡疎肝散 ≒ 香蘇散+四逆散

次に、抵抗期(気滞・気鬱)相について考えてみます。
まさにストレスと闘っている真っ最中であり、セリエのストレス学説では「症状がない」ことになっています。

でも漢方では「戦う体力はあり負けてはいないが、勝てなくて苦しい戦いが続く」状態に薬が用意されています。
「気」が動かないため、痞えている・張っている、というイメージであり、具体的には「のどの痞え」「お腹の張り」と意識されます。
キーとなる生薬は「厚朴」です。

▶ 抵抗期(気滞・気うつ)の漢方薬
● 代表生薬:厚朴(ホウノキ樹皮)…胃腸代謝改善、下気、除湿、鎮咳去痰
● 応用
厚朴 + 杏仁 → 気逆による咳
(例)桂枝加厚朴杏仁湯
厚朴 + 蘇葉 → 梅核気、気逆・気滞を治す
(例)半夏厚朴湯柴朴湯茯苓飲合半夏厚朴湯
厚朴 + 蒼朮 → 上腹部の膨満
(例)平胃散
厚朴 + 枳実 → 下腹部・腹部全体の膨満
(例)大承気湯、小承気湯、潤腸湯通導散麻子仁丸
  茯苓飲合半夏厚朴湯

最後に気虚(ストレスと闘い気力を使い果たした状態)相です。
カラダに力が入らない、だるい、と疲れ果てたイメージですね。
キーとなる生薬は「人参+甘草」です。

▶ 気虚スコア(寺澤捷年)
…合計30点以上は「気虚
10:体がだるい
10:気力がない
10:疲れやすい
10:内臓のアトニー症状
8:かぜをひきやすい
8:舌が淡白紅、腫大
8:脈が弱い
8:腹力が軟弱
6:日中の眠気
6:眼光、音声に力がない
6:小腹不仁(下腹に力がなく感覚低下)
4:食欲不振
4:物事に驚きやすい
4:下痢傾向

▶ 疲憊期(気虚)の漢方薬
● 原則:人参+甘草で補気、抗うつ作用
● 生薬:人参、黄耆、白朮、甘草、大棗
● 方剤
四君子湯)胃腸虚弱、慢性胃炎、胃もたれ
六君子湯)胃炎、胃アトニー、胃下垂、食欲不振
補中益気湯)虚弱、疲労、食欲低下、胃下垂、寝汗
人参湯
● 気虚に対する漢方の使い分け
四君子湯(補気)…無気力、疲労感
六君子湯(補気+行気)…痰、胃もたれ、食欲不振
補中益気湯(補気+升堤)…胃腸虚弱、皮膚虚弱、微熱を伴う疲労
十全大補湯(補気+補血)…胃腸虚弱、皮膚虚弱、貧血、(硬便)
人参養栄湯(補気+補血+不安鎮静)…胃腸虚弱、肺虚弱、ストレス性不眠 

子ども体調不良の原因が、どうやらストレスによるものらしいと判明した際、どうしても「ストレス除去」に重きを置きがちです。
しかしそのストレスが除去しにくい環境である場合、周囲がまごまごしている間、子どもはストレスにさらされ続け、体調不良が継続・悪化する可能性があるという視点も必要です。

西洋医学の薬は、臓器や症状をピンポイントでターゲットにしており、その背景にあるストレスをカバーできません。
その点、漢方薬はココロに効く生薬が含まれているので、その子どもの状態に合う漢方が見つかれば手応えがあります。

▶ ストレス除去ばかりが優先されて気虚が放置され疲憊期が続くと生じる体の不調

・睡眠薬の効かない不眠症 → 不安の解消
(処方)鎮静生薬:竜骨牡蛎、柴胡芍薬、大棗甘草

・消化器薬が効かない消化器症状 → 参耆剤で捕脾
(処方)六君子湯半夏厚朴湯など

・抗炎症薬の効かない微熱 → 補気免疫調整
(処方)補中益気湯柴胡剤など

・いつも風邪気味で治りが悪い → 補陽、滋陰
(処方)建中湯類柴胡桂枝湯麦門冬湯滋陰至宝湯

・鎮痛剤の効かない痛み → 補血、行血薬、抗不安
(処方)芍薬製剤四物湯製剤十全大補湯など

・休養しても疲れが取れない慢性疲労
(処方)参耆剤、去痰飲剤、抗不安剤など

「セリエのストレス学説」には「気」の異常が当てはめると説明しやすいですが、漢方医学にはその先の病態も想定されています。「気虚」が長引くと「血虚」に陥るのです。
つまり、
「気力を使い果たした」 → 「身も心も疲れ果てた」
という phase です。
また、子どもは気虚 → 血虚に進行しやすいことも指摘されています。

▶ 小児は容易に気虚から血虚腎虚)になりやすい
・先天的な不足(成長障害)
・後天的な不足(栄養不良、吸収不良)…胃腸虚弱、強い偏食
・寒冷食品・飲料の食べ過ぎ、飲みすぎ
・長期の寒冷環境、冷房…寒冷ストレス
・深夜の不眠状態(夜遊び、徹夜)…睡眠(腎気補充)不足、メラトニン作用不足
・不安・恐怖、精神的ストレスの持続…疲弊期:脳萎縮
・気力、活力、精力、志が萎える…疲弊期:うつ状態
 

古来より小児の漢方医学的特徴は「二余三不足」とされてきました。
これは「五臓論」という漢方概念の中のお話で、
「五臓」とは、心・肝・脾・肺・腎を意味します。

この臓器の名前は、現在われわれがイメージする西洋医学の内臓とは少し異なります。
というか、もともとは漢方用語だったこれらの臓器名を、江戸時代に輸入された西洋医学(蘭学)の翻訳語として無理やり当てはめたのが始まりです。

漢方医学は解剖学が発達しなかったため、臓器名は物体というより機能的概念でした。
翻訳に当たった杉田玄白らは、西洋医学の「liver」に一番近い漢方医学の概念は「肝」だから、これを当てはめよう、と苦労の末に判断したのでしょう。

漢方医学における五臓の担当する働きを並べると、
 肝:自律神経系
 心:循環系・精神系
 脾:消化器・栄養代謝系
 肺:呼吸器・免疫系
 腎:生殖内分泌系
となります。

小児の「二余三不足」とは、
(二余)心と肝が過剰
(三不足)腎と肺と脾が不足
という意味です。

臓の働きを重ねると、
(二余)自律神経系、循環・精神系が活発に活動
(三不足)消化器(栄養代謝)、呼吸器(免疫系)、腎泌尿器(生殖内分泌系)が弱い
ということになります。

三不足は血の生成不足、気の生成不足をもたらし、程度が強いと体調不良を引き起こします。

また、五臓の概念は内臓としての働きだけではなく、精神的な要素も含むという特徴があります。

ここで素朴な疑問が生まれます。
西洋医学では「心」のコントロールセンターは「脳」ですよね。
ところが漢方医学の五臓概念には「脳」がありません。
なぜかは私には説明できませんが、西洋医学の「脳」の機能を、漢方医学では五臓に分配するという手法を採用しています。

漢方医学では「心身一如」といって「心と体はリンクする」と考えます。
そのエッセンスがここでも登場するわけです。
五臓にはそれぞれ、以下の感情が割り当てられています。

 肝 → 怒
 心 → 喜
 脾 → 憂
 肺 → 悲
 腎 → 恐

ここでも「二余り三不足」を当てはめると、
(二余)
 肝 → 怒りっぽい
 心 → 情緒不安定ではしゃぎやすい
(三不足)
 脾 → 心配性で意欲が続かない
 肺 → 泣き虫で本能欲望に流される
 腎 → 怖がりで夢や志が続かない
となり、見事に小児のココロの特徴をとらえていることがわかります。

以上のことから小児の漢方治療の目標は、
・肝と心の機能が亢進している → 抑制する
・脾・肺・腎の機能が低下している → 補う
ことになります。

代表的な方剤を上げると、
・肝の抑制 → 抑肝散
・心の抑制 → 甘麦大棗湯
・補脾 → 補中益気湯、小建中湯
・補肺 → 玉屏風散(肺気虚)、人参湯(肺陽虚)、麦門冬湯(肺陰虚)
・補腎 → 六味丸
等々。

子どものココロのトラブルに使う漢方薬として、
抑肝散や甘麦大棗湯が有名です。
上記のごとく「二余」対策ですね。

しかしそれだけで効果が得られないことがあります。
「二余り」だけに注目するのではなく、
「三不足」にも注目して、足りないものをゆっくりと補う方針に切り替える、あるいは閉口して行うと、カラダが徐々に元気になり、いずれココロも元気になることが期待できます。

付録として小児漢方を考える際に重要な「腎」の働きを記載しておきます。
「腎」はオキシトシンの働きと共通するものがあり、さらにオキシトシンはセロトニン活性を賦活し、セロトニンはドーパミンとノルアドレナリンのバランスを整えます。

つまり「腎」≒「オキシトシン産生系」が元気であれば体調がよくなります。
そして漢方薬の加味帰脾湯(その中でも大棗)は、オキシトシン分泌を促進することが判明しています。

小児の健康を支える漢方薬として大棗を中心に考えると、年齢別に次のようになります;

(乳幼児期)甘麦大棗湯(72)
(学童期) 補中益気湯(41)
(思春期) 加味帰脾湯(137)
(全年齢) 抑肝散(54)/抑肝散加陳皮半夏(83)


▶ 小児の成長に欠かせない腎の働き
● 生命の根源(先天の精)を内蔵する
・成長、発育、老化の各過程に関与、生命エネルギー(精)
・成長、加齢、生殖、細胞分裂、細胞性免疫、内分泌
 表皮の基底層
 毛髪の毛母細胞…腎の華は髪にあり
 骨の骨芽細胞…骨を主り、髄を生ず
 骨髄の造血幹細胞…髄を生ず
 脳脊髄の再生…脳髄を生ず
 細胞の核、DNA
● 神志を蔵す
・「作強の官、技巧出ず」→ 作業能力が強靭で、ち密さを出せるようになる
・すべての精神活動の根源、支えとなるもの、使命感、認知機能
・全身(五臓)の気を支えるバックボーンとなる臓器
…以上の働きすべてを「腎」という
・地黄(六味丸)が補腎の主薬

▶ 腎精(陰)の不足:六味丸証(小児薬証直訣)
● 腎陰虚の弁証(腎精の陰液不足):3項目以上で腎陰虚
・五心煩熱(手掌・足底・胸中の熱感)
・のぼせ・体の熱感
・頭部のふらつき・めまい感
・便秘傾向・尿が濃い
・夜間の口乾・口渇
・盗汗(寝汗)
・不眠

▶「腎」とオキシトシンとセロトニン・ドーパミン・ノルアドレナリン
● 腎とオキシトシンの作用は類似している
● 脳内セロトニン合成能の発達
・正常群:5歳で成人の200%以上(社会性が飛躍的に発達)、その後は低下して成人レベルに
・ASD群:幼児期は低値で、2₋15歳までに次第に150%まで上昇(思春期に社会性の初期発達)
● オキシトシンが上流にあって、セロトニン神経(縫線核)を賦活
● セロトニンはストレスの指揮者
・セロトニン:ドーパミンとノルアドレナリンのバランスを整える「指揮者」のような存在
・ドーパミン:報酬を求め、意欲を引き出す存在。食欲や性欲、金銭欲などを主る。
・ノルアドレナリン:危険を知らせる脳内の危機管理センターのような存在。集中力を主り、外からの刺激によって不安や緊張を感じさせる。

▶ 加味帰脾湯とオキシトシン
・加味帰脾湯はオキシトシンニューロンを活性化し、オキシトシン分泌促進
・構成生薬で関与していたのは、大棗、当帰、生姜
・とくに大棗は用量依存性に優位に活性化

▶ 大棗の含有量が多い方剤
6g:甘麦大棗湯
5g:当帰四逆加呉茱萸生姜湯
4g:桂枝加芍薬湯、桂枝加朮附湯、桂枝加竜骨牡蛎湯
  桂枝湯、呉茱萸湯、小建中湯、黄耆建中湯
3g:越婢加朮湯、黄連湯、葛根湯、葛根湯加川芎辛夷、
  小柴胡湯、大柴胡湯、大柴胡湯去大黄、柴陥湯、
  炙甘草湯、排膿散きゅう湯、麦門冬湯、防己黄耆湯
2.5g:柴胡加竜骨牡蛎湯、半夏瀉心湯
2g:柴胡桂枝湯、平胃散、六君子湯、補中益気湯、加味帰脾湯

▶ オキシトシンをターゲットにした小児心身症の漢方治療
● 乳幼児期の心身発達 → 甘麦大棗湯
・漢方製剤で大棗含有量が最も多い6g
・オキシトシンとセロトニン+不安・恐怖
● 学童期の心身発達 → 補中益気湯
・オキシトシンと気力アップ+疲労倦怠
● 思春期の心身発達 → 加味帰脾湯 
・オキシトシンと気力アップ+易怒性、ほてり、のぼせ、精神不安
● 全年齢の心身不調 → 抑肝散/抑肝散化陳皮半夏
・易怒性の鎮静は最高レベル
・気力はアップせず、ボーっとすることがある


<参考>
・小児の漢方的特徴と漢方(川嶋浩一郎)(2025小児漢方懇話会 in Tokyo)

 現在、日本では子どもの3人に1人が睡眠関連の悩みを抱えている、というデータがあります。もう、他人事ではありません。眠れないお子さんへの日常生活に関するアドバイスを以下に記載しました:


■ 睡眠のスケジュール

・ふとんに入る時間・起きる時間は、毎日ほぼ同じ時間になるようにしましょう。

・睡眠時間に週末と平日の差があっても、1時間以内になるようにしましょう。

・人間の体は“寝だめ”はできないしくみになっています。週末寝だめをして、睡眠不足を解消するのはやめましょう。

 

■ 日光を浴びる

・朝、日光を浴びることは、正常な睡眠覚醒の体内時計(サーカディアン・リズム)を維持することに役立ちます。

  

■ 定期的な運動

・毎日、日中は外で活動する時間を作りましょう。 

 

■ 昼寝の可否

・低年齢(3歳未満)の子どもには昼寝は必要であり、問題ありません。

・高年齢(5歳以降)の子どもでは、昼寝をすると夜の寝付きが悪くなるので長時間の昼寝は避けましょう。
※ ただし個人差があります。

 

■ 電子メディア

・テレビ、パソコン、スマホなどによる強い視覚刺激は、寝付きの妨げになるので、寝室には置かないようにしましょう。 

 

■ 夕方の活動

・ふとんに入るまでの時間は穏やかに静かに過ごすようにつとめ、テレビゲーム(スマホゲーム)のような興奮する活動は避けましょう。

 

■ カフェイン

・カフェインはふとんに入る前の3~4時間は避けましょう。
・カフェインは炭酸飲料、コーヒー、アイスティーなどに入ってます。
★ 麦茶、ルイボスティー、十六茶には入っていません。 


■ 規則正しい食事

・毎日決まった時間の食生活を心がけましょう。 

・ふとんに入る1~2時間前の食事は睡眠の妨げになります。

・お腹が空いたままでは眠れない、途中で目が覚めるため、その時間帯に食べることも仕方ない場合があります。ミルクやクッキーのような軽食ならよいでしょう。 

 

■ ふとんに入るときの習慣

・ふとんに入るときの20~30分間の習慣を作りましょう。

・本を読む、その日のことを話すなど、
 静かで楽しい活動を寝室で行いましょう。

 

■ 寝室の環境 

・暗くして、気持ちがよく快適な静かな環境にしましょう。

・部屋の温度は23~24℃以下で涼しめにしましょう。

・ふとんに入ったら、睡眠に関係のない勉強、電話などは控えましょう。 


・・・以上のことを試してみても、やはり眠れなくて昼間の生活に支障が出る場合、子どもには成人用の睡眠薬は使えないため、当院では漢方薬を提案しています。体質に合う漢方薬が見つかると、悩み軽減が期待できます。


▶ 睡眠の悩みに効く漢方薬 


(乳児期)夜泣き

 + 泣き虫、シクシク泣く、不安 → 甘麦大棗湯(72)

 + 怒りんぼ、ギャーギャー泣く、かんしゃくもち → 抑肝散(54)

 

(幼児期・学童期)眠らない・眠れない

 + 不安・泣き虫・あくび → 甘麦大棗湯(72)

 + 神経質・イライラ・多動 → 抑肝散(54)

 + 反復性腹痛・虚弱 → 小建中湯(99)

 + 鼻閉・口を開けて寝ている → 葛根湯加川芎辛夷(2)


(思春期)眠れない・朝起きられない

 + 不安 → 甘麦大棗湯(72)

 + イライラ・興奮 → 抑肝散(54)

 + 動悸・ストレス・恐怖 → 柴胡加竜骨牡蛎湯(12)

 + うつうつ、不安・心配だらけ → 加味帰脾湯(137)

 + 心身ともに疲れて眠れない → 酸棗仁湯(103)


・・・乳児期〜幼児期〜学童期〜思春期に共通して登場する抑肝散は「自律神経の日内リズムの狂い」、つまり「昼間の交感神経優位 → 夜間の副交感神経優位」への移行がうまくいかない状態を改善してくれます。交感神経亢進状態をやわらげることにより、緊張から解放されて眠りにつける、とされています。
  現代社会では大人も子どもも交感神経亢進状態を強いられ、それによる健康障害が発生しがちです。自律神経失調によるカラダの不調は“現代病” と言えるかもしれません。
 

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