漢方診察法は四診「望聞問切」が基本です。
 望診
 聞診
 問診
 切診 
これらを総合的に判断して、患者さんの状態・病態を評価し、
それに合う漢方薬を決めるのです。

望診の中に「舌診」があり、
舌を観察することでたくさんの情報を得ることができます。 
概説します;

・正常な舌は淡紅色で湿潤、苔はなく、あっても薄く白い程度。
・舌は内臓病変だけでなく精神状態も反映する。
・舌診では「色」「形」「苔」の状態を観察する。
 【色】寒熱、瘀血
 【形】水滞、肝の異常、気血両虚
 【苔】脾虚、六病位、気血両虚、津液不足
 
▶ 舌の色
淡白)白っぽい:寒証・気虚・血虚 → 乾姜や附子といった体を温める作用のある生薬を用いる。
 (例)代表的な処方は人参湯、他にも四君子湯や
    六君子湯、補中益気湯、四物湯など補気剤や補血剤
)赤みが強い:熱証(熱証には実熱と虚熱がある)
 実熱(明るい色調)熱がこもる状態、口渇あり → 黄連、山梔子、石膏などの生薬を用いる。
 (例)黄連解毒湯や白虎加人参湯
 虚熱(暗い色調)体内の血不足、刺激不足により
  空焚きのような状態になり体表が熱くなる。口渇なし。
 (例)地黄などを含む六味丸や八味地黄丸など
暗紅)暗い赤みを呈する → 瘀血の中でも特にがこもったタイプ
 (例)駆瘀血剤の中でも加味逍遙散
冷えのある瘀血のタイプ
 (例)駆瘀血剤の中でも当帰四逆加呉茱萸生姜湯など、
    温めて血行を改善するような処方
 
瘀血の舌所見:瘀血の場合、暗紅、紫といった色の傾向のほかに、特徴的な所見が見られる。舌の縁に紫色の点が現れる「瘀点」や、まだらに紫色が浮かぶ「瘀斑」、舌下静脈怒張は瘀血の所見であり、血行不良や冷え、動脈硬化、女性であれば月経不順がある場合にこれらの所見を呈することがある。
 
▶ 舌の乾湿
乾いた舌熱証 → 白虎加人参湯などを選択。
      舌の乾きは「少陽病期」にも現れ、
      この場合は柴胡剤などを用いる。
湿った舌)湿っていても唾液が溜まってあふれるような状態は寒証
      人参湯などを用いる。
 
▶ 舌の形
胖大)大きい舌 → 水滞・気虚
 (例)五苓散などの利水剤または補気剤
痩薄(そうはく、舌が痩せた状態)・皺裂(すうれつ、縦じわが深く入る)
 → 体力が落ちている気血両虚津液不足であり、参耆剤や補血剤、滋潤剤を選択する。

歯痕水滞の所見。舌の縁に歯の痕が付く状態で、舌がむくんでいる場合は利水剤を。最近ではそれほど舌がむくんでいなくても、歯ぎしりや食いしばりなどにより歯痕がしっかりと残ることがある。この場合は、交感神経の過緊張など自律神経の異常、漢方医学では「肝の異常」と考えられ、抑肝散や柴胡加竜骨牡蛎湯などの柴胡剤を選択する。 
 
▶ 舌苔
厚い白苔)べったりと白苔が付いている
 → 胃腸が弱っている脾虚が考えられ、六君子湯など胃の動きを改善する処方を選択。
 少陽病期にも白苔は厚くなるため、この場合は柴胡剤。
黄苔)黄色みのある苔
 → 体の内部に熱が入り込み便秘になったり、慢性期の状態では体に熱がこもったりする
 「陽明病期」に起こりやすい
 → 白虎加人参湯や黄連解毒湯などの清熱剤、桃核承気湯や大黄牡丹皮湯などの大黄剤を。
黒苔)黒っぽい苔が現れる
→ 発熱極期、あるいは重篤な状態に起こりやすく、大黄剤や附子剤などを選択。
地図状舌)舌苔がまだらに剥がれている → 気虚に現れる異常で、参耆剤を処方する。臨床では抗うつ剤、ステロイドの長期服用患者によく見られる。
(鏡面舌)表面がてかてかと光る → 気血両虚津液不足と考えられ、十全大補湯や八味地黄丸を用いる。
 
▶ 味覚異常
(口の中がっぱく感じる)の異常と捉えて竜胆瀉肝湯。
(口の中がく感じる)柴胡剤のほかに、の異常と捉えて半夏瀉心湯を。
味がしないの異常と捉えて補中益気湯を。
(口の中がしょっぱく感じる)の異常と捉えて八味地黄丸を。 
 

他の漢方専門医の解説では表にまとめられていましたので引用・提示します。
上の説明と微妙に異なり、両方読むと頭の中が整理できなくなりますね。
下表は方剤と生薬が併記されているので、余計にわかりにくい(わかるヒトにはわかる?)。

スクリーンショット 2024-12-15 11.17.51

スクリーンショット 2024-12-15 11.18.04

スクリーンショット 2024-12-15 11.18.21

スクリーンショット 2024-12-15 11.18.57

<参考>
▢ 漢方医学の診察法~舌診について~
 五野 由佳理 先生(北里大学医学部 総合診療医学 診療講師・外来主任) 
▢ 舌診入門①「舌診をもっと身近に!