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かぜを引いて小児科・耳鼻科を受診すると当たり前のように処方されるかぜ薬・・・果たして、どれくらい有効なのでしょう。
考えてみると、かぜの症状は「侵入してきた病原体(主にウイルス)を追い出す行動」であることがわかります。咳は気道に侵入した病原体を、鼻水は鼻腔に浸入してきた病原体を追い出す防衛反応。胃腸炎でも、嘔吐・下痢ともに消化管から病原体を追い出す行動ですね。発熱についても、ウイルスは38℃以上では失活することがわかっており、病原体にやられたダメージではなく、本来はウイルスをやっつける生体反応です。
すると、かぜ症状を完全に抑え込むことはいいことなの?という素朴な疑問が生まれてきます。そうです、過剰に押さえ込むと病原体を追い出せなくなるので、かえって病気が長引くことが報告されています。
ではかぜ薬の役割は?
防衛反応(=風邪症状)が激しいと本人もつらいため、それをやわらげるのが目的です。あとは自分の免疫力頼み。
しかし、かぜ薬の歴史を紐解くと、日本では西洋医学が入ってくる以前は(今で言う)漢方薬を使用していました。実は漢方薬、すごいことをやっていて、体の免疫力を高めて病原体を追い出すという働きを強化するのです。こちらの方が本来の“かぜ薬”かもしれません。しかし西洋医学に偏った現在、ただ症状を押さえ込む薬が中心となってしまいました。残念ですね。

耳鼻科の元大学教授の講演で「現在のかぜ薬がいかに効かないか」を解説していました。処方される咳止めも鼻水止めもどれも効かない・・・効くのは解熱鎮痛剤(アセトアミノフェン)と去痰薬のみ、という内容です。備忘録として講義メモをここに残しておきます。

▶ かぜ薬
・古くから葛根湯などの漢方薬が用いられてきた。漢方薬は生体の防衛反応を高める方向に作用する。
・大正時代から生薬(漢方の原料)と西洋薬との配合剤に移行。西洋薬は症状を抑える対症療法にすぎない
・1950年代から西洋薬を配合した総合感冒薬へ移行。対症療法としては優れるものの、治癒期間を遅らせ、場合によると副作用も生じるといった問題点も抱えた。
・小児用製剤では安全面から解熱成分としてアセトアミノフェンのみを含む製剤がほとんど。それ以外に、抗ヒスタミン薬、鎮咳薬、カフェイン、ビタミン、生薬などを含有。

▶ 小児の鼻汁・咳嗽への処方の現実
・抗ヒスタミン薬、鎮咳薬、粘液融解薬/粘膜繊毛機能改善薬(去痰薬)などをセットにして処方しているケースは少なくない。

▶ 感冒に対する治療法の推奨(EPOS, European Position Paper on Rhinosinusitis and Nasal Polyps, 2020)
・抗菌薬(1a) → 推奨しない(有用性、副作用ともになし)
・ステロイド鼻噴霧(1a) → 推奨しない
抗ヒスタミン薬(1a) → 推奨しない(有用性なし
・血管収縮薬(1a) → (小児には使用しない)
アセトアミノフェン(1a) → 鼻閉鼻漏に有効
NSAIDs(1a) → 疼痛と倦怠感に有効
生食洗浄(1b) → 症状を抑制

▶ 子どもの風邪に抗ヒスタミン薬は有効か?
・Cochrane review での2つのランダム化比較試験では抗ヒスタミン薬のプラセボに対する咳嗽への効果に有意差は出ていない。
・抗ヒスタミン薬はヒスタミン由来の腺分泌に有効。
古典的な鎮静性抗ヒスタミン薬は併せ持つ抗コリン効果でウイルス感染による鼻汁分泌を25-30%抑制(Turner, Heyden)。
・脳内ヒスタミン神経系がH1受容体を介してけいれん抑制系として作動しているため、抗ヒスタミン薬により作用が阻害されて痙攣が誘発される。
・EPOSでは有用性な市としてガイドラインでは推奨されていない。

▶ 抗ヒスタミン薬の痙攣誘発効果
・ヒスタミンの作用 
 ✓ 覚醒
 ✓ 認知機能増加
 ✓ 自発運動量増加
 ✓ 摂食行動抑制
 ✓ けいれん抑制
 ✓ ストレスによる興奮抑制
・抗ヒスタミン薬により「けいれん抑制」系のヒスタミン作用が阻害されてけいれんを誘発する。
・特に小児ではGABAによる中枢神経の抑制系が発達していないため、けいれん誘発の可能性が高くなる。
・要注意:2歳以下、けいれんの既往
・使用する場合は非鎮静性抗ヒスタミン薬を。ただし、非鎮静性抗ヒスタミン薬の中ではセチリジンとロラタジンにはけいれんの記載あり。

▶ 子どものかぜに鎮咳薬は有効か
・2007年3月に Baltimore市が「6歳未満の小児へのOTC鎮咳薬やかぜ薬の使用は安全性と有効性に懸念がある」とする誓願書を提出した。FDAは2007年10月に6歳未満にかぜ薬を、2008年1月に2歳未満の乳児にOTD咳止め・かぜ薬を使用しないよう勧告した。
・2008年秋に製薬会社が自主的に「4歳未満の小児には使用しないこと」と変更した。これを受けて、同年中にイギリス、オーストラリア、カナダでは6歳未満のOTC咳止め・かぜ薬は使用すべきではないと勧告した。
・Dextromethorphan(メジコン®)を用いた cohort 研究では、夜間の咳やQOLにおいてプラセボと有意差がなかったと結論づけられている。
感冒時の咳嗽はむしろ後鼻漏の影響が大きく、鎮咳薬使用は勧められない

▶ 感冒に対する処方の是非
(抗ヒスタミン薬)
鎮静性のものは鼻汁を減らすがけいれんや眠気を誘発し、分泌物を粘稠化する
非鎮静性のものは副作用は少ないが、鼻水・鼻閉には無効
(鎮咳薬)
・感冒の咳嗽の軽減効果なし。
・呼吸抑制や咳嗽の遷延化もある。
(去痰薬)
・湿性咳嗽に有効、副作用もない。

今から20年以上前にも、かぜ薬について調べたことがありました。当時はアメリカをはじめ諸外国で「市販のかぜ薬(OTC薬)を乳幼児に使わないように」というムーブが起きてきた頃です。アメリカでは大瓶で販売されているため、一度に大量を飲んで中毒症状で医療機関に運ばれる、という事情もあったようです。

そして現在、私はかぜ症状にふつうの西洋医学の薬が今ひとつ効かない場合は漢方薬をお勧めしています。明らかに手応えがあるため、「苦い薬を飲む」というハードルを越えた患者さんはリピーターになりますね。

〜繰り返す、治りにくい、鼻づまりがつらい〜

集団生活が始まると、
乳幼児は風邪の洗礼を受けます。

中には「治る&もらう」を繰り返し、
「うちの子、免疫力が弱いのかしら」
と家族が不安になるケースも。
基本的に風邪を引いても、治って一旦元気になって、またもらうパターンは心配ありません。ただ、風邪の原因ウイルスは200種類もあるのでエンドレスです。

日々の診療では、

 「入園してからずっと風邪を引いてます」

 「かぜ薬を飲んでいるけどなかなか治りません」

 「鼻水・鼻づまりがつらそうで、夜眠れません」

 「咳止めを使っているのに夜中に咳き込んで目が覚めます」

等の悩みを、保護者の方からよく聞きます。
 

西洋薬で解決できないこのような悩みを、漢方薬が改善・解決してくれる可能性があり、当院では漢方薬の併用をオススメしています。

お役立ちケースを紹介します;

▶ 風邪を繰り返す、ずっと風邪を引いている

 → 漢方薬で風邪の回数と程度が軽くなることが期待できます。
 体力を底上げして健康になる薬、
 風邪を予防する薬、
 慢性の炎症を抑える薬、
 などがあります。

(例)小建中湯(99)、黄耆建中湯(98)、補中益気湯(41)

  柴胡清肝湯(80)、柴胡桂枝湯(10)

▶ 鼻水・鼻づまりが治りきらない、夜がつらそう

 → 鼻汁・鼻づまりは漢方の得意分野、西洋薬よりも明らかに効きます。
 透明な水様鼻汁、にごった白色鼻汁、青っぱなが止まらない・・・
 など、鼻水の様子で使い分けます。

 (例)小青竜湯(19)、葛根湯加川芎辛夷(2)、辛夷清肺湯(104)

  上記薬剤に小柴胡湯(9)/小柴胡湯加桔梗石膏(109)併用で効果アップ


▶ 薬を飲んでいるのに咳が止まらない

 → 西洋薬で改善しない咳にも漢方が有効です。乾いた咳、湿った咳、エヘン虫の咳、後鼻漏による咳、などで使い分けます。咳払いのクセにも効果が期待できます。

(例)麦門冬湯(29)、五虎湯(95)、半夏厚朴湯(16)、柴朴湯(96)、

   葛根湯加川芎辛夷(2)、辛夷清肺湯(104)


■ 咽頭痛に対する漢方

急性炎症
 → 甘草湯(401)・・・咽頭炎の超初期(発熱なし、一過性の乾燥による痛みや発赤がなくとも、少し痛みを伴う) 
 → 桔梗湯(138)・・・発熱がなく、胃腸が弱めで、発赤を伴う咽頭痛以外の症状があまりないphase(あっても軽度の咳や痰)。
 → 桔梗石膏(324)・・・腸が弱くなく、発赤を伴う咽頭痛以外の症状があまりないphase(あってもたまにむせ込む咳がある程度) 
 → 小柴胡湯加桔梗石膏(109)・・・胃腸が弱くなく、咽頭痛や喉以外の症状があまりない、口渇があり、症状が長引いてきているとき(あってもたまにむせ込む咳がある程度)
 → 麻黄附子細辛湯(127):疲労などで体力が低下している人や高齢者で、発汗の程度に関係なく、水溶性鼻汁や寒気、倦怠感があり、咽頭痛があるとき。
 → 越婢加朮湯(28)+桂枝湯(45)・・・軽度の寒気、倦怠感、熱感と口渇(冷たいものを好む)があり、咽頭痛があるとき

慢性反復炎症
 → 小柴胡湯(9)・・・乳幼児で慢性扁桃炎、繰り返す扁桃炎やPFAPA症候群(周期性発熱症候群)などの慢性化phase。
 → 柴胡清肝湯(80)・・・学童期〜成人で、慢性扁桃炎、繰り返す扁桃炎やPFAPA症候群(周期性発熱症候群)などの慢性化phase。 
 → +補中益気湯(41)・・・慢性反復炎症の上記2剤を使用しても繰り返す例には、
 乳幼児:小柴胡湯+補中益気湯
 学童期〜:柴胡清肝湯+補中益気湯 
 
・・・上記各方剤に小柴胡湯を併用するとより効果が上がり、かつ胃腸障害予防&軽減効果も期待できる。


<各方剤の解説>

小柴胡湯加桔梗石膏《本朝経験方》:
▶ 柴胡7;半夏5;生姜1-1.5(ヒネショウガを使用する場合4);黄芩3;大棗3;人参3;甘草2;桔梗3;石膏10 
・咳には基本、用いない。
 

<参考>
・「Phase で見極める!小児と成人の風邪の診かた&治しかた」 
(永田理希、日本医事新報社、2021年発行)   

■ 発熱症状の漢方治療のトリビア

・発汗がなく発熱している状態を葛根湯や麻黄湯を服用することでさらに発熱させて、汗をかかせることにより治癒力を高めるのが漢方治療のキモである。この際に解熱剤を安易に使用すると、狙った効果が発揮できなくなるため、昭和時代の解熱剤の慣習的処方はしてはならない。
・各方剤に小柴胡湯を併用すると、より効果も上がり、かつ胃腸障害予防&軽減効果も期待できる。
・顔面や口唇の紅潮を伴う発熱・熱感に口渇を伴う場合に白虎加人参湯(34)をさらに併用すると、脱水予防効果が期待できる。
・高齢者や過労で体力が低下している場合のカゼには、麻黄附子細辛湯(127)、桂枝湯(45)、香蘇散(70)を使用するとよい。

 ■ 発熱のphaseと適応する漢方

急性期)罹患1〜3日目
かつ「麻黄〇」タイプ 
 → 葛根湯(1)・・・多量の発汗がない発熱+ 寒気+軽度の悪寒+肩こり・全身の筋緊張 
 → 麻黄湯(26)・・・多量の発汗がない発熱+強い悪寒+全身筋肉痛・関節痛
 → 麻杏甘石湯(55)・・・多量の発汗がなく、軽度悪寒、強い熱感と黄色痰が絡み、喘鳴を伴う湿性咳嗽
かつ 「麻黄△」タイプ
 → 麻黄附子細辛湯(127)・・・発汗の程度・有無に関係なし+水溶性鼻汁+悪寒+咽頭痛
かつ「麻黄✖️」タイプ
 → 桂枝湯(45)・・・微熱+軽度発汗+軽度悪寒
 → 香蘇散(70)・・・胃腸も精神的にも弱っているような人の風邪の引き始めや治りかけに。

亜急性期)罹患3〜5日目以降
 → 参蘇飲(66)・・・胃腸症状があり、風邪を引いて数日経過し、香蘇散(70)を服用しても今ひとつスッキリしない場合。
 → 小柴胡湯(9)・・・舌苔が生え、口内に苦みを感じ、胃酸の逆流症状もあり、食欲が低下し、悪寒と熱感を繰り返したり、時に微熱もあるphaseに。
 → 柴胡桂枝湯(10)・・・軽度の発汗や背中のコリや頭痛、胃腸症状などがあり、小柴胡湯(9)よりもう少し炎症を抑えたいphaseに。
 → 白虎加人参湯(34)・・・発熱が続くも悪寒がなく、発汗はしている状態で口渇があるとき。
 
・・・上記各方剤に小柴胡湯を併用するとより効果が上がり、かつ胃腸障害予防&軽減効果も期待できる。


<各方剤の解説>

▢ 葛根湯《傷寒論》:
▶ 葛根4-8;麻黄3-4;大棗3-4;桂皮2-3;芍薬2-3;甘草2;生姜1-1.5
・服用してしっかり汗が出たら葛根湯の役目もそこで終了、中止する。
・効果を最大限に発揮させるには、初回2包内服、以降発汗するまで2〜3時間ごとに追加内服、発刊後は漢方薬を変更する。
・葛根湯により発汗するまでの1〜2日は、安易に解熱剤を使用しない。
・芍薬は麻黄+桂皮による過度の発汗をやわらげる効果がある(麻黄湯には芍薬は入っていない)。 

▢ 麻黄湯《傷寒論》:
▶ 麻黄3-5;桂皮2-4;杏仁4-5;甘草1-1.5
・麻黄で体温をぐっと上げて免疫を上げてウイルスをやっつけ、その後に桂皮で発汗させて解熱させるイメージ。 
・高熱のみで、強い悪寒や寒気、全身の筋肉痛や関節痛などがない場合は麻黄湯は適さない。その場合は葛根湯の方がよい。

 麻黄附子細辛湯《傷寒論》:
▶ 麻黄2-4;細辛2-3;加工ブシ0.3-1
・体温を上げる力のない人に附子で体温を上げる能力をアップさせようという方剤。
 
▢ 桂枝湯《傷寒論》:
▶ 桂皮3-4;芍薬3-4;大棗3-4;生姜1-1.5;甘草2
・風邪の基本漢方薬。あくまで軽症の初期症状が適応で、強い症状を抑える力はない。
・麻黄もなく、桂皮のみの発汗作用に、さらにその効果をやわらげる芍薬も入っており、非常にマイルド。 

▢ 香蘇散《和剤局方》:
▶ 香附子3.5-4.5;蘇葉1-3;陳皮2-3;甘草1-1.5;生姜1-2
・発熱・発汗作用のある麻黄・桂皮が入っていない、長マイルドなかぜ薬。
 
▢ 小柴胡湯《傷寒論》:
▶ 柴胡5-8;半夏3.5-8;生姜1-2;黄芩2.5-3;大棗2.5-3;人参2.5-3;甘草1-3
・・・(柴胡+黄岑)抗炎症・解熱効果
・・・(半夏)鎮吐効果
・・・(人参・大棗・甘草・生姜)健胃効果 
・胃腸障害を軽減する効果の高い方剤。
・柴胡は亜急性期〜慢性期の状態に効果がある。
・通常の倍量を投与すると効果が上がる。 

▢ 白虎加人参湯《傷寒論》:
▶ 知母5-6;石膏15-16;甘草2;粳米8-20;人参1.5-3
・高齢者の口腔乾燥症や口内不快感、乳児の突発性発疹を疑う皮疹出現前などにも使える。
・他の発熱時に使う漢方薬の処方時に、効果付与する目的で追加投与して使うとよい。
・慢性の場合にはアトピー性皮膚炎や皮膚掻痒症などにも使われる。

銀翹散(市販薬)
・急性期に寒気がなく、熱感が強い場合に適応。逆に寒気が強く全身関節痛&筋肉痛がある場合は麻黄湯が適し、それより症状がマイルドの時は葛根湯が良い。
麻黄湯+桂枝湯のような漢方(桂麻各半湯類似の方意)。
・生薬の構成的には、葛根湯+小柴胡湯加桔梗石膏、もしくは清上防風湯倍量に近似。
 

■ 回復期の風邪症状の漢方

 → 補中益気湯(41)・・・風邪症状の後の倦怠感が強く、回復しきれておらず、食欲もいまいちで元気も出ないとき。
 → 十全大補湯(48)・・・風邪症状の後に倦怠感があり、食欲もいまいちな上に、手足の冷え、皮膚や口腔内乾燥がある場合。
 → 人参養栄湯(108)・・・咳や痰が微妙にスッキリしないような呼吸器疾患が背景にあり、食欲・気力ともにスッキリしない場合。

 

<各方剤の解説>

▢ 補中益気湯《弁惑論》:
▶ 人参3-4;白朮3-4(蒼朮も可);黄耆3-4.5;当帰3;陳皮2-3;大棗1.5-3;柴胡1-2;甘草1-2;生姜0.5;升麻0.5-2
・中(体の中の消化吸収能)を補い、気を益す(元気を出す)回復剤。
・気虚を補う生薬である人参・朮・甘草・黄耆は風邪回復3剤の共通生薬であるが、補中益気湯だけに茯苓が入っていない。

 十全大補湯《和剤局方》:
▶ 人参2.5-3;黄耆2.5-3;白朮3-4(蒼朮も可);茯苓3-4;当帰3-4;芍薬3;地黄3-4;川芎3;桂皮3;甘草1-2
・気血の双方を補う。
・血虚を補う生薬(地黄、当帰、川芎、芍薬)入り。

▢ 人参養栄湯《和剤局方》:
▶ 人参3;当帰4;芍薬2-4;地黄4;白朮4(蒼朮も可);茯苓4;桂皮2-2.5;黄耆1.5-2.5;陳皮(橘皮も可)2-2.5;遠志1-2;五味子1-1.5;甘草1-1.5
・人参を主薬とし、全身的にさまざまな機能低下と栄養状態を改善、つまり「養栄」する方剤。 
・血虚を補う生薬(地黄、当帰、芍薬)が入っている。
・十全大補湯のほとんどが人参養栄湯に入っており、さらに遠志、五味子、陳皮の鎮咳効果のある生薬を足したもの。そのため、COPD等の慢性呼吸器疾患の患者にも効果が期待できる。


<参考>
・「Phase で見極める!小児と成人の風邪の診かた&治しかた」 
(永田理希、日本医事新報社、2021年発行)  

■ 咳症状の漢方

(乾性咳嗽)
 → 麦門冬湯(29)・・・乾いた咳で、痰があっても少なく、喉や気管にへばりつき、出そうにも出せない、咳が出だしたら止まらないようなに。
 → 滋陰降火湯(93)・・・乾いた咳で、粘性の強い痰が奥に絡み、寝ているとむせ込むような咳が余計にひどくなるに。

(湿性咳嗽)
 → 竹筎温胆湯(91)・・・黄色〜緑色の痰が絡み、夜間の咳込みが続き、気分がスッキリせず不眠傾向に。

(湿性咳嗽+喘鳴)
 → 麻杏甘石湯(55)・・・多量の発汗がなく、軽度悪寒、強い熱感と黄色痰が絡み、喘鳴(+)を伴う湿性咳嗽に。
 → 五虎湯(95)・・・黄色痰が絡み、ひどい喘鳴(2+)を伴う湿性咳嗽に。

(湿性咳嗽+後鼻漏)
 → 小青竜湯(19)・・・(麻黄〇)水溶性鼻汁、水様性痰が多く、後鼻漏による咳込みに。
 → 苓甘姜味辛夏仁湯(119)・・・(麻黄✖️)同上。
 → 辛夷清肺湯(104)・・・鼻閉が強く、粘性の強い黄白色鼻汁の後鼻漏による咳込みに。

(長引く湿性咳嗽)
 → 清肺湯(90)・・・慢性的な痰がゴロゴロした状態でのしつこい咳に。

 
・・・上記各方剤に小柴胡湯を併用するとより効果が上がり、かつ胃腸障害予防&軽減効果も期待できる。


<各方剤の解説>

▢ 麦門冬湯《金匱要略》:
▶ 麦門冬8-10;半夏5;粳米5-10;大棗2-3;人参2;甘草2 
・咽喉頭〜気管にうるおいを与えることでむせ込むような咳を鎮める。 
・起床時に喉がカラカラ・イガイガ。
・痰が多い場合にはかえって悪化する可能性がある。痰が多い → 麻杏甘石湯(55)や五虎湯(95)がよい。
百日咳による亜急性〜慢性咳嗽にも効果が期待できる。
・効果が不十分な場合には、抗炎症効果がある柴胡桂枝湯を併用(麦門冬湯+柴胡桂枝湯)するとより効果的。 

▢ 滋陰降火湯1《万病回春》:
▶ 当帰2.5;芍薬2.5;地黄2.5;天門冬2.5;麦門冬2.5;陳皮2.5;白朮あるいは蒼朮3;知母1-1.5;
・喫煙車の咳にも効果的。 

▢ 竹茹温胆湯《寿世保元》:
▶ 柴胡3-6;竹茹3;茯苓3;麦門冬3-4;陳皮2-3;枳実1-3;黄連1-4.5;甘草1;半夏3-5;香附子2-2.5;生姜1;桔梗2-3;人参1-2
・インフルエンザや風邪、肺炎などの回復期に、痰が多く咳がひどくて眠れない時に使用する。

▢ 麻杏甘石湯《傷寒論》:
▶ 麻黄4;杏仁4;甘草2;石膏10
・急性期というよりも、亜急性期の喘鳴を伴うかぜ症候群において効果を期待でき、発汗しても治らず咳が続くような例によい。 
・ 単剤で効果が不十分で黄色痰が絡む場合には柴陥湯(73)を併用(麻杏甘石湯+柴陥湯)する。

▢ 五虎湯《万病回春》:
▶ 麻黄4;杏仁4;甘草2;石膏10;桑白皮1-3
・急性期より、亜急性期の喘鳴を伴うかぜ症候群で効果が期待しやすい。
・五虎湯単剤では効果不十分で吐く食痰が多い場合は二陳湯(81)を併用(五虎二陳湯)するとより効果的。 

▢ 清肺湯1《万病回春》:
▶ 黄芩2-2.5;桔梗2-2.5;桑白皮2-2.5;杏仁2-2.5;山梔子2-2.5;
・慢性的な粘性の強い痰がゴロゴロした状態でのしつこい咳に(COPDにもよい)。
・急性期の無色透明な水様性痰による咳には使用しない。 


<参考>
・「Phase で見極める!小児と成人の風邪の診かた&治しかた」 
(永田理希、日本医事新報社、2021年発行)  

風邪の漢方に関しては、今までも扱ってきました。
咳の漢方
風邪の引きはじめの漢方
風邪を引いて数日経過したときの漢方

今回は、
Phase で見極める!小児と成人の風邪の診かた&治しかた」 
(永田理希、日本医事新報社、2021年発行) 
という本の内容を紹介するかたちで記述します。

風邪に使う漢方薬を【カゼ漢方薬30+1】と銘打って紹介しています。
つまり、30種類以上の薬を、
その患者さんの状態により使い分けなくてはいけないのです。

患者さんの状態を「証」と呼びます。
それは、患者さんの体質、体力、病気の状態をすべて加味して総合的に判断して初めて決まるもの。
もし「漢方薬を飲んだけど効かない」と感じている方、
それはあなたの「証」にあっていない可能性が大です。
この項目では鼻症状を扱います。


■ 急性鼻副鼻腔炎

(水溶性鼻汁) → 小青竜湯(19)、麻黄が合わない人は苓甘姜味辛夏仁湯(119)

(水溶性鼻汁+悪寒+咽頭痛) → 麻黄附子細辛湯(127)

(黄白色鼻汁+鼻閉強) → 葛根湯加川芎辛夷(2)、麻黄が合わない人は辛夷清肺湯(104)

(乳児で鼻閉強) → 飲食困難なら麻黄湯(26)、睡眠困難なら越婢加朮湯(28)


・・・上記各方剤に小柴胡湯を併用するとより効果が上がり、かつ胃腸障害予防&軽減効果も期待できる。

 
<各方剤の解説>

小青竜湯《傷寒論》:
▶ 麻黄2-3.5;芍薬2-3.5;乾姜2-3.5;甘草2-3.5;桂皮2-3.5;細辛2-3.5;五味子1-3;半夏3-8
・水溶性鼻汁、くしゃみや水様性痰による咳症状に。
・膿性鼻汁には適さない。
・アレルギー性鼻炎にも効果がある。

苓甘姜味辛夏仁湯《金匱要略》:
▶ 茯苓1.6-4;甘草1.2-3;半夏2.4-5;乾姜1.2-3(生姜2でも可);杏仁2.4-4;五味子1.5-3;細辛1.2-3
・水溶性鼻汁、くしゃみ、や水様性痰による咳症状に。膿性鼻汁には適さない。
・“麻黄を含まない小青竜湯”と呼ばれ、麻黄入り方剤で動悸や不眠、胃腸症状が出て飲めない人に適応。
・アレルギー性鼻炎にも効果がある。
 
麻黄附子細辛湯《傷寒論》:
▶ 麻黄2-4;細辛2-3;加工ブシ0.3-1
・発汗の程度・有無に関係なく、水溶性鼻汁や悪寒があり、喉がチクチク痛むphaseに。
・麻黄の強い作用を、細辛と附子で抑制してくれるやさしい麻黄剤。 
・鼻汁が多く、鼻閉が強いときは桂枝湯を併用する(麻黄附子細辛湯+桂枝湯)とよい。

葛根湯加川芎辛夷
▶ 葛根4-8;麻黄3-4;大棗3-4;桂皮2-3;芍薬2-3;甘草2;生姜1-1.5;川芎2-3;辛夷2-3
・鼻閉が強く、粘性の強い黄白色鼻汁の急性鼻副鼻腔炎phaseに。
・副鼻腔排膿作用や頭痛軽減作用のある川芎と辛夷が入っているので、まさに急性鼻副鼻腔炎に適した方剤である。
・鼻汁が黄色かつ粘稠で鼻閉が強いときは桔梗石膏を併用(葛根湯加川芎辛夷+桔梗石膏)するとより効果的である。 
 
辛夷清肺湯《外科正宗》:
▶ 辛夷2-3;知母3;百合3;黄芩3;山梔子1.5-3;麦門冬5-6;石膏5-6;升麻1-1.5;枇杷葉1-3
・鼻閉が強く、粘性の強い黄白色鼻汁の急性鼻副鼻腔炎に。
・慢性や鼻茸でも使える。
・鼻副鼻腔粘液繊毛輸送運動正常化作用あり。

麻黄湯《傷寒論》:
▶ 麻黄3-5;桂皮2-4;杏仁4-5;甘草1-1.5
・鼻閉のために飲食がしにくいphase(乳児)。
・発熱の急性期で、発汗がなく、水分が取れるphase。
・麻黄湯の桂皮を石膏に変えたものが麻杏甘石湯。 

越婢加朮湯《金匱要略》:
▶ 麻黄4-6;石膏8-10;生姜1;大棗3-5;甘草1.5-2;白朮3-4(蒼朮も可)
・鼻閉のため眠りにくい乳児に適応


 ■ 慢性鼻副鼻腔炎
(慢性・単回の感染症) →  辛夷清肺湯(104)、排膿散及湯(122)
(慢性・反復性感染症) → 成人:荊芥連翹湯(50)、小児:柴胡清肝湯(80)

※ 荊芥連翹湯はアレルギー性鼻炎や好酸球性鼻副鼻腔炎にも効果が期待できる。
※ 西洋医学ではクラリスロマイシン(CAM)長期投与が頻用されるが、細菌性慢性鼻副鼻腔炎には有効であるが、好酸球性鼻副鼻腔炎には効果が期待できない。
★ 上記漢方薬に柴胡剤(小柴胡湯、柴胡桂枝湯、補中益気湯、十全大補湯など)を追加すると、抗炎症効果や体力回復効果、胃腸障害予防・軽減効果が期待できる。
 
<各方剤の解説>

排膿散及湯《金匱要略》:
▶ 桔梗3-4;甘草3;大棗3-6;芍薬3;生姜0.5-1;枳実2-3
・好酸球性ではなく、細菌性・炎症性の慢性鼻副鼻腔炎で副鼻腔内に膿が貯留しスッキリしないphaseに。
・鼻副鼻腔だけではなく、皮膚や口腔内、麦粒腫などの体表面の化膿症に効果がある。
・単独処方で効果が不十分な場合は、ヨクイニンを併用(排膿散及湯+ヨクイニン)すると効果が高まる。

荊芥連翹湯1《万病回春》:
▶ 当帰1.5;芍薬1.5;川芎1.5;地黄1.5;黄連1.5;黄芩1.5;黄柏1.5;山梔子1.5;連翹1.5;
・体表の抗炎症効果を示す荊芥と、上気道の閉鎖部位の抗炎症効果による排膿効果のある連翹。
・粘性の強い黄色鼻汁の慢性&反復性鼻副鼻腔炎phaseで効果が期待できる。
・アレルギー性鼻炎や好酸球性鼻副鼻腔炎に効果 が期待できる。
 
柴胡清肝湯《一貫堂》:
▶ 柴胡2;当帰・芍薬・川芎・地黄・連翹・桔梗・牛蒡子・栝楼根・薄荷葉・甘草各2.5;黄連・黄芩・黄柏・山梔子各1.5
・荊芥連翹湯が苦すぎて飲めない乳幼児&小児の慢性鼻副鼻腔炎に。
・小児&成人の慢性扁桃炎、繰り返す扁桃炎やPFAPA症候群(周期性発熱症候群)、慢性蕁麻疹、アトピー性皮膚炎の慢性期に。
・荊芥連翹湯の枳実が牛蒡子に置き換わり、荊芥と白芷と防風がなく、柴胡と甘草が少し増量した方剤。
・・・(牛蒡子+桔梗)去痰作用、咽頭痛軽減作用 
 
 

現在、漢方の啓蒙書籍はたくさん出ていますが、
“これは役に立つ”というものにめったに出会えません。

何年か前に読んだ、
Phase で見極める!小児と成人の風邪の診かた&治しかた」 
(永田理希、日本医事新報社、2021年発行) 
は漢方の本ではありませんが、目からうろこがぽろぽろ落ちる内容でした。 

それは、風邪の経過(phase)に伴い、
適応する漢方薬が次々変わる様を解説しているのです。
「これぞ私が知りたかったこと!」と夢中で読みました。
 
まず、「風邪を引くとなぜ風邪症状が出るのか?」の説明から始まります。
ひとことで言うと「体に入ってきたウイルスを排除する免疫反応」なのですが、
一つ一つ、見ていきましょう。

■ 風邪を引くとなぜ、鼻水が出るのか?
・上気道へのウイルスの付着により感染が起こり、自然免疫が反応し自己防衛を行う。
・鼻粘膜内に侵入したウイルスがmast cellに作用してヒスタミンが遊離する。
 そのヒスタミンがH1受容体に結合し、鼻炎症状が惹起される。

■ 風邪を引くとなぜ、咳が出るのか?
・咳嗽は、気道内に貯留した分泌物や異物を気道害に排除するための「生体防御反応」である。
・咳反射は本来、抑制すべきものではない。
 特に上気道・下気道感染症などによる痰が多く出る湿性咳嗽では、
 咳を抑えてしまうと痰の排出が妨げられ、原因疾患が悪化することになるため、
 理屈上は禁忌と言ってもよい。
・持続的な咳により、睡眠障害や食事摂取困難となる場合には、
 リスクと天秤にかけつつ、鎮咳剤を用いることもある。

■ 風邪を引くとなぜ、熱が出るのか?
・病原体(ウイルスや細菌など)が体内に侵入、感染すると、
 サイトカイン(内因性発熱物質)が放出される。
 それが視床下部の体温中枢に働き、
 サーモスタット(体温の設定温度)が高く設定され、体温が上昇する。 
・体温を上げるためには、皮膚の血管を拡張したり、
 汗腺を閉じることにより熱放散を抑え、
 筋肉を震えさせることにより熱産生を促す反応を起こす。
・発熱することにより、好中球やリンパ球などの免疫細胞の活動が活発になり、
 治癒能力を高めている。
・風邪などの感染症の場合には、感染が落ちつき、発熱させる必要がないと体が判断すれば、 
 サイトカインが減少し、視床下部の体温中枢のサーモスタットが通常に設定し直され、解熱する。

 
 ・・・ちょっと言葉は硬いですが、まあそういうことです。
そして“風邪薬”とは“症状をやわらげて治るのを待つ” 薬です。
決して“症状を止める薬”ではありません。
免疫反応として出ている症状を完全に抑えてしまうと、風邪の治癒が遅くなるからです。
 
さて次は、“風邪のphase”について。
一般に風邪は、

・くしゃみ鼻水ではじまり、
・痰が絡んで咳が出るようになり、
・1〜2週間で落ちつく、
・時に発熱を伴う

というイメージですね。 
もう少し詳しく見ていきましょう。

■ 風邪のPhase
・風邪は、ウイルスが体に感染し、免疫応答にて排除し治癒する過程で、
 闘病反応としてさまざまな症状を呈する。
鼻炎・くしゃみ症状により、ウイルスを体外に排出する。
 その鼻汁内には、免疫細胞が大量に存在している。
・多くの免疫細胞とウイルスが闘い、貪食細胞などの免疫反応の結果として、
 膿性鼻汁(膿汁鼻炎)となり、 線毛細胞も活発化し、排膿活動が起こる。
・大漁の鼻汁が後鼻漏となると、嚥下しきれないものが気管内に誤嚥し、
 むせるような咳込み症状を呈する。 
発熱反応は、ウイルスの活動を下げ免疫細胞を活発にする。
 そして倦怠感を上げることによりヒトの活動力を低下させ、
 安静にさせるように仕向ける。
 ・二次感染として細菌感染を起こし、体が排除できないまでに菌量が増えると、
 治癒能力の限界を超えた状態となり、症状が悪化する(double sickinig)。
 こうなると抗菌薬が必要になる。

■ 風邪症状で受診した患者さんに医師ができること
 ・風邪症状で医療機関を受診した患者さんに対する医師の一番重要な仕事は、
✓ その症状が「風邪なのか、風邪以外なのか?」
✓ 抗菌薬処方が必要な phase なのか?
 を見極めることである。 
・本来、風邪とは免疫反応で自然治癒するものであり、
 対症療法薬や予防のための抗菌薬投与はデメリットが勝ると明らかになっている。
・患者さんに薬を処方するときは漢方薬がよい。
 漢方薬は「症状を抑える」のではなく「治癒を促進する」からである。


・・・「対症療法薬はデメリットが勝る」と断言していますね。
 そして「漢方薬は治癒促進をするのでメリットがある」とも。

 というわけで、私は風邪症状で受診された患者さんに漢方治療を提案し、
 希望者に処方してきました。
 処方する側から見ると、漢方薬は「手応え」があり、
 苦い薬を頑張って呑んでもらう価値があると感じています。

 その結果、現在は外来患者さんの5割が漢方を希望され、
 その恩恵を受けています。
 
■ 風邪に漢方?
・漢方薬は風邪の経過(phase)に合わせて使用することで、
 生体防御能を高めて治癒を促進することができる。
・エキス剤は単剤ではしっかりとした効果が出にくいとされ、
 状態に応じて足りない生薬を補う2剤(以上)の併用が必要と言われる。
・保険診療的には、1日8包内服まで問題ないことが多い。

■ 風邪の経過と適応する漢方薬
(急性期) 罹患1〜3日:桂麻剤 ・・・麻黄や桂枝を含む方剤
(亜急性期)罹患3〜5日:柴胡剤 ・・・柴胡を含む方剤
(回復期) 罹患5日〜  :参耆剤 ・・・人参や黄耆を含む方剤 

参考にした本には、2剤併用による増強効果の例が掲載されており、
単剤で効果が今ひとつだった場合の“次の一手”として利用可能で助かります。

前項で扱った「風邪の引き始めの漢方」の続編です。
前述のように、漢方薬は風邪の経過に伴い次々と適応する方剤がかわり、
効果的に治療するには、それに合わせて処方を替える必要があります。

この項目では「風邪を引いた数日経過したとき」の漢方を扱います。
つまり、初期治療で治癒しないでスルーした場合です。

高熱が続いていたものが、
朝は下がるけど夕方からまた熱が上がる時期(往来寒熱)です。
漢方医学ではこの時期を「少陽病期」と呼び、
柴胡という生薬が入った薬(柴胡剤)を中心に用います。


■ 2剤併用による効果増強レシピ

小柴胡湯3包+麦門冬湯(あるいは麻杏甘石湯)3包/日
・・・小柴胡湯証で咳嗽がある場合に併用

参蘇飲3包+柴胡桂枝湯3包/日
・・・多愁訴の感冒には柴胡桂枝湯と併用して諸症状(発熱・咳嗽・咽頭痛・食欲不振)に対応可能

大柴胡湯3包+麦門冬湯3包/日
・・・肥満傾向のある患者で長引く咳嗽がある場合には麦門冬湯と併用してみる。


■ 感冒中期の基本漢方薬

・発症から3日ほど経過しても体調が回復せず、発熱・倦怠感・食欲不振・嘔吐・下痢などが残り、口の苦みや胸脇苦満(季肋部のつかえ感や痛み)、往来寒熱を訴えるときに柴胡の入った下記4剤の中から選択する。
・体力が充実している方から、大柴胡湯(8)>小柴胡湯(9)>柴胡桂枝湯(10)>柴胡桂枝乾姜湯(11)となる。

小柴胡湯《傷寒論》:柴胡5-8;半夏3.5-8;生姜1-2(ヒネショウガを使用する場合3-4);黄芩2.5-3;大棗2.5-3;人参2.5-3;甘草1-3
(キーワード)消化器症状、食欲不振、往来寒熱、体力中等度
・・・炎症が強い場合、頻回(1日3〜6回)の服用が効果的。
・・・咳嗽がある場合、麦門冬湯や麻杏甘石湯などと併用すると効果的。

柴胡桂枝湯《傷寒論》:柴胡4-5;半夏4;桂皮1.5-2.5;芍薬1.5-2.5;黄芩1.5-2;人参1.5-2;大棗1.5-2;甘草1-1.5;生姜1(ヒネショウガを使用する場合2)
(キーワード)市販のかぜ薬を服用しても症状が緩和しないときに選択、往来寒熱、体力中等度
・・・桂枝湯(太陽病)+小柴胡湯(少陽病)の組み合わせ
・・・感冒初期から数日経過した状態まで幅広く使用可能。
・・・市販のかぜ薬を数日服用したがよくならないと訴え受診したときの第一選択薬。
・・・上半身(とくに頭頸部)の発汗が選択の目安となる

大柴胡湯《傷寒論》:柴胡6-8;半夏2.5-8;生姜1-2(ヒネショウガを使用する場合4-5);黄芩3;芍薬3;大棗3-4;枳実2-3;大黄1-2
(キーワード)往来寒熱、体力充実
・・・腹部が充実肥満しているとき(固太り)には小柴胡湯では高価不十分であり、大柴胡湯を選択する。

柴胡桂枝乾姜湯《傷寒論》:柴胡6-8;桂皮3;栝楼根3-4;黄芩3;牡蛎3;乾姜2;甘草2
(キーワード)往来寒熱、体力低下
・・・やせ型で体質虚弱で風邪が長引いているときに選択する。


 <参考>
すべての臨床医が知っておきたい漢方薬の使い方(安斎圭一著、羊土社)     

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