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宮内倫也先生による神経発達症と漢方の公園を視聴しました。
西洋医学的知識と漢方医学的解説の両方が出てきて役に立ちました。
漢方薬を考える際は、やはりここでも「五臓論」が登場します。

ASDの発症因子の解説を興味深く聴きました。
リスクが2倍以上になる因子は、
① 出生時の要因:早産、新生児仮死、妊娠感覚が1年未満
② 両親の年齢:母>40歳、父>50歳
・・・私が常々感じてきたことと一致しました。

メンタル不調を訴える思春期の患者さんを診療していると、とにかく「不安」が強いことが印象的です。ASDの子どもたちも、コミュニケーションが苦手で社会参加が十分にできないことから、さらに不安が増すことが考えられます。

一方、ADHDの併存症はASDと少し異なります。生活上のストレスにより自己評価が低下し、それをきっかけに悪循環、それが・・・
(内在化)うつ病、双極症、不安症
(中間)複雑型PTSD、ボーダーラインパーソナリティ症
(外在化)物質使用症、反抗挑戦症、素行症、反社会性パーソナリティ症
と、一部は精神疾患につながるとのこと。

また、神経発達症を五臓論で解釈すると、ADHDとASDは異なる捉え方をしていました。

・ADHD

腎:腎精不足

肝:肝陽上亢・肝風内動

心:心火偏亢・心神不安

・ASD

脾:脾胃虚弱・痰迷心竅

肺:肺虚熱・肺失粛降
ASD/ADHD併存

気血両虚による心血/肝血不足(虚熱)

肺失粛降による肝火/心火



▶ 脳内のシナプスの刈り込みと疾患

・小児期はシナプス形成が盛んで、思春期以降に刈り込みが行われ、成人期に安定する。

(ASD:自閉スペクトラム症)シナプス形成が過剰、刈り込みが不十分

(SZ:統合失調症)シナプス形成はふつう、刈り込みが早期で過剰

(AD:アルツハイマー病)シナプス形成はふつう、老年期に刈り込みが過剰


▶ ASD(自閉症スペクトラム)の因子(Odds/relatibe risk ratio)

・新生児仮死(低酸素血症) → 1~8

・妊娠糖尿病 → 1.5

・妊娠中のバルプロ酸 → 1.5

・妊娠間隔が1年未満 → 2

・高齢出産(>40歳) → 1~2

・父が高齢(>50歳) → 1~3

・兄弟がASD → 8~10

・早産 → 1~4

・母の肥満 → 1~1.5

・葉酸摂取 → <1


▶ ASDの特性(Nat Rev Dis Primers. 2020 Jan 16;6(1):5)

神経生物学的な特性(脳機能・神経発達の違い)

・知的障害、非定型的な対人交流(対人コミュニケーションの特性)

   ⇩

・学業達成の制限、限定的・制限された社会経験

  ⇩

・社会的・経済的機会の減少


ASDの併存症(Nat Rev Dis Primers. 2020 Jan 16;6(1):5)

【幼児期】~6歳頃

不安症(50%)

ADHD(40%)

・限局性恐怖症(40%)

・反抗挑戦症/素行症(20%)

【小児期~思春期】~12歳頃

不安症(30%)

ADHD(30%)

・反抗挑戦症/素行症(15%)

【成人期】

不安症・社交不安症(30%)

・うつ病(20%)

・強迫症・強迫性障害(20%)


▶ ADHDと睡眠の問題

ADHDが主体:ADHD症状が睡眠問題をもたらす/増悪させる

相互作用:相互因果関係/共通の病因

睡眠の問題が主体:睡眠の問題がADHDをもたらす/ADHDをミミックする


ADHDの併存症

一押しとなる要因

・自己評価低下

・心的外傷

・低IQ

・人格形成への影響

以上により、

 → 内在化すると・・・うつ病、双極症、不安症

 内在化と外在化の中間・・・複雑型PTSD、ボーダーラインパーソナリティ症

 → 外在化すると・・・物質使用症、反抗挑戦症、素行症、反社会性パーソナリティ症


▶ ASDに併存するADHDはADHDなのか?

ASD:コミュニケーションの症状

ASD/ADHD合併症:認知の不安定性の症状、FPNの乱れ

ADHD:認知の不安定性の症状、DANの乱れ

※ FPN:frontoparietal network,  DAN:default mode network


▶ 神経発達症では正気(気血津液)+「精」が重要

先天の精

・両親から受け継いだ生命の基礎物質(気血津液の源)

・成長、発育、生殖のベースとなる。

・絶えず後天の精の補充を受け、腎で腎精として蓄えられる。

後天の精

・後天的に飲食(水穀)を脾胃が消化吸収して得られる栄養物質

・全身の臓腑組織へ運ばれ、それぞれの生理機能の働きを果たす上で基本物質となる。

・絶えず腎に集まり、先天の精の働きを補う。

腎精と気血津液のイメージ

・腎精:ダムにたまった水

・気:その水が流れ落ちて発生する電気

・血:水が運び出す養分

・津液:水が周囲を湿らせるうるおい


▶ 知的発達症を含む神経発達症

・先天の精の不足(腎精不足)と考えられている。

五遅五軟

 五遅:立遅、行遅、髪遅、歯遅、語遅

 五軟:頭軟、項軟、手軟、足軟、口軟


▶ “虚熱”を理解する

腎精不足により“水不足”となることで、大地は干上がって温暖化が進んでしまう。

・一時的な熱は「実熱」、二次的な熱は「虚熱」

・虚熱は冷ますだけでは解決しない。

① 水不足 → 水を補う

② 温暖化 → 熱を冷ます


▶ 熱により生まれる痰

津液により煮詰まってドロドロになる。

・さらに熱により脾や肺の水分代謝バランスが崩れ、が持続的に生まれる。

・脾胃は生痰の源、肺は貯痰の器

・この痰が様々な症状につながり、張景岳が「怪病気病は痰に属す」と述べるほど。


▶ 生津と化痰のバランス

・虚熱では水不足を想定するため生津作用を意識する。

・痰がたまることに対しては化痰作用(水を散らす)を意識する。

(例)麦門冬湯・・・半夏と麦門冬

(例)柴胡桂枝乾姜湯・・・乾姜と栝楼根


▶ 神経発達症は腎が基盤となる

1.腎

・生命の貯蔵庫

・発達の土台

・脳の成長

2.肝

・情緒の交通整理

・感情やそれに基づく行動の制御

3.心

・精神の司令塔

・精神、意識、睡眠、言葉

4.脾

・エネルギー工場

・思考の整理、脳への栄養補給

5.肺

・バリア

・感覚フィルター、呼吸


▶ ADHDと五臓

1.腎 ・・・腎精不足

2.肝 ・・・肝陽上亢・肝風内動

3.心 ・・・心火偏亢・心神不安


▶ ASDと五臓

4.脾 ・・・脾胃虚弱・痰迷心竅

5.肺 ・・・肺虚熱・肺失粛降


▶ ASD/ADHD併存と五臓

・気血両虚による心血/肝血不足(虚熱)

・肺失粛降による肝火/心火

▶ 神経発達症の症状と五臓

2.肝 → 多動性・衝動性

2&3 → 焦燥・てんかん発作

3.心 → 不安・不眠・不注意

4.脾 → こだわり・疲労

5.肺 → 感覚過敏


▶ 神経発達症に対する漢方薬


心・肝の問題が大きい場合

大柴胡湯(8)+抑肝散(54)・・・飯田処方

柴胡加竜骨牡蛎湯(12)+抑肝散(54)・・・飯田処方変法


突発的な症状が大きい場合

大柴胡湯(8)+甘麦大棗湯(72)・・・甘麦大棗湯は養心安神作用や補気健脾作用(肺虚熱も静まる)で様々なASD症状への配慮あり、ただし甘草が多いので注意。

柴胡加竜骨牡蛎湯(12)+甘麦大棗湯(72)・・・大柴胡湯と柴胡加竜骨牡蛎湯は甘草を含まない点で合方しやすい。


フラッシュバックの場合:心血の著しい虚のことが多いと理解されている

四物湯(71)+桂枝加芍薬湯(60)・・・神田橋処方

十全大補湯(48)+小建中湯(99)・・・神田橋処方変法

フラッシュバック怒りを伴う場合

温清飲(57)+桂枝加芍薬湯(60)・・・神田橋処方に清熱を噛ませる。

脳波異常がある場合

柴胡桂枝湯(10)+桂枝加芍薬湯(60)・・・相見処方。「脾胃は生痰の源、肺は貯痰の器」。てんかんは痰迷心竅や風痰が原因、桂枝湯成分でしっかりと痰を捌いている。

感覚過敏からの易刺激性がある場合

人参養栄湯(108)・・・遠志による開竅作用や五味子によるの生津作用もあり、五臓をカバーしたマルチプレイヤー。気血両虚が目立つ場合はASDの一時的な病態に伴う諸症状に対して気長に使いたい方剤(人参養栄湯+大柴胡湯など)。

竹筎温胆湯(91)・・・竹筎によるの清熱化痰作用が特徴であり、人参や茯苓による補気健脾作用も期待できる。長期の使用で清熱化痰が気になるときは、帰脾湯や人参養栄湯との合方で使用する。

天候に左右される場合

茵蔯五苓散(117)・・・清熱利湿作用を持つので、天候に左右されやすい諸症状や口渇やイライラなどを併せ持つときに有効(化痰作用は弱い)。長期の使用で清熱利湿が気になるときは、帰脾湯(65)や人参養栄湯(108)との合方で使用する(人参養栄湯との合方は神田橋処方2号

血虚・虚熱が目立つ場合

六味丸(87)・・・腎陰虚に特化している。気虚がなく血虚が目立つ場合はASDの一時的な病態に伴う諸症状に対して気長に使いたい方剤(六味丸合柴胡加竜骨牡蛎湯など)


▶ 状況に合わせてアレンジする

イライラが強い
・まず肝の問題を収めてから脾や肺や腎の長期カバーに入るか
・両方への配慮をした処方を最初から行うか。

疲労や感覚過敏が大きい
・まず脾や肺を立て直す。



1歳半健診で神経発達症の診断は可能なのか?
調べてみました。

▢ 発達障害への対応
・発達障害は単独の診断名ではなく一つ以上の特性を示すことが多い(ASD+ADHD+DSD・・・)
・発達障害の大多数に併存精神障害を認める→ 支援は一律ではなく個別の特性に応じて行うべき
・発達障害の症状/特性は早期に始まり、ライフコースに渡る。
・対応はまず、養育者の理解を促すこと(育児支援、心理教育)
・そして自己理解へ(上手につき合う)

本来「病名」とは、それをつけることにより治療や生活指導に役立つもの。いくつも病名がつくような病態なら、その付け方が適切ではないのでは?と思ってしまいます。

現在の精神疾患は「DSM-5」に基づいて分類・診断されていますが、これは症状を集めて診断するアナログ的手法です。
その背景として、遺伝子診断が日進月歩の現代医学を以てしても、精神疾患は分類しきれない・整理できないのが現状、と耳にしたことがあります。

いずれにしても、発達障害を含めて精神疾患の病名は、遺伝子異常による分類が確立するまでは、これからもコロコロ変わることが予想されます。

▢ ASD早期療育の中長期的なメリット
・一部(25%)にASD症状の著明な改善を認めた(改善群)。
・改善群全員が3歳までに療育を受けていた。
・一般的に開始が早いほうが効果が大きい。
・複雑化してからだと回復に時間がかかる。
・良好なメンタルヘルス(併存障害なし、服薬治療なし)。
・良好なQOL。

早期発見・早期療育が有効であることを強調されていました。「早期薬物治療開始」ではありません。

▢ ASDはいつからわかるか?
・1歳前ではまだわからない。
・0歳からよく知っているからといって後の発達障害診断を否定できない。
1歳6ヶ月〜2歳で十分な情報があればわかる
・全般的な発達の遅れがあればわかりやすい。
・わかりにくい子どももいる(女児、こわがり、発達の良好な子)
・家族歴があればハイリスク。

最近、1歳半検診と3歳児健診を担当するようになったので、発達障害について基本的なことを勉強中の私です。
1歳半検診でグレーゾーンの子どもを拾い上げ、保険相談〜療育につなげることの重要性を再認識させていただきました。 

▢ 幼児期の主なASD症状

A. 社会的コミュニケーションおよび対人的相互交流の障害
・“共同注意”が少ない。
・非言語的コミュニケーション(アイコンタクト、身振り、表情)が少ない。
・言葉の後れ、会話にならない、同じ言葉を繰り返す。
・友だちをつくれない、ごっこ遊びをしない、ひとり遊び。

B. パターン化した行動、興味の限局、感覚過敏
・行動の切り替えの困難、初めての場所、ものへの不安、抵抗。
・新しいことを嫌がる、特定のもの、話題への没頭、興味
・聴覚、触覚などの感覚過敏

今まではなんとなくチェックしていた“指差し”が、これほど重要であるとは・・・。
 
▢ 1歳時のASDスクリーニング
〜社会性をチェックし「出現しているはずの行動が出現していないこと」を問題視する。

(通常は1歳になるまでに出現している行動)
・アイコンタクト
・他児(兄弟以外)への関心
・微笑み返し
・呼名反応
・人見知り

(通常は1歳6ヶ月までに出現している行動)
共同注意行動
・身近な大人の動作や言語の模倣

(あればASDを疑うべき行動)
・感覚的な遊びに没頭する
・音や触覚に過敏

▢ “共同注意”の概念
他者とモノ・コトに向ける注意をシェアすること
・自分の気持ちを他者の気持ちに重ねることの始まり。
・生後10ヶ月頃からみられるようになる。
 10ヶ月児の通過率:約50%
 1歳6ヶ月児の通過率:100%

▢ 実際の共同注意に関する質問項目

(質問)あなたが部屋の中の離れたところにあるおもちゃを指さすと、お子さんはその方向を見ますか?
※ 質問の意図:指差し追従(他人の指差しに応答する)できるかどうか

 → PASS例:
・指でさされたモノを見る。
・自分もそれを指でさす。
・それを見て、何かそれについて言う。
・もしお母さんがそれを指さして「ほら!」と言えば見る。

 → FAIL例:
・無視する。
・部屋中をキョロキョロ見回す。
・(モノではなく)お母さんの指を見る

(質問)◯◯ちゃんは、興味を持ったモノを指をさして伝えますか?
※ 質問の意図:興味の指差し:要求の指差しではなく、興味を持っていることを表現するために指差しをするかどうか。1歳6ヶ月児の通過率100%。応答の指差しと区別する必要あり。

 → PASS例:
・自分にとって面白いモノを指さして教える。
・お母さんの注意を興味あるモノに引くために指差しする。
例)空を飛んでいる飛行機、道路を通っている大きなトラック、地面の上を這っている虫など

 → FAIL例:
・指差ししない、または、時々しか指差ししない。
要求の指差しはするが、興味を指し示す指差しはしない

(質問)◯◯ちゃんは、お母さんに何かを見てもらおうとして、モノを見せに持ってきますか?
※ 質問の意図:要求ではなく、共有目的でモノを見せに持ってくるかどうか。1歳6ヶ月児の通過率:92.9%。

 → PASS例:◯◯ちゃんはお母さんに見せようとして、
・**を持ってくる。
例)絵やオモチャ、自分が描いた絵、自分が摘んだ花、自分が見つけた虫など

 → FAIL例:
・・・モノを持ってくるが、見せるためかどうかは分からない。
例)本(読んでもらうため)、オモチャ(動かす、修復のため)、お菓子(袋を開けて欲しいなど)

“共同注意”の概念は、「興味のあること・モノを他人と共有することが楽しい、うれしい」という「人間関係を気づく基本となる感情」なのですね。
 
▢ 日本語版「M-CHAT
・乳幼児期自閉症チェックリスト修正版。
・H30年度診療報酬改定により、検査D283:発達及び知能検査の「操作が容易なもの」(80点)として保険収載。
・対象年齢:16〜30ヶ月
・23項目 親記入式質問紙(はい・いいえ)
・日本語版の特徴:イラストの説明あり
・国内外の大規模研究で、健診場面での有用性が実証済み
 2段階(質問紙→ フォローアップ面接)>質問紙のみ・・・擬陽性例が減る
 2段階 陽性的中率 43〜46%(日本)、54%(アメリカ)
・海外の主要なガイドラインで推奨されている。

A. 社会的障害(M-CHAT)
(園での友達関係)
・ひとり遊びを好む(周囲に子どもがいてもお構いなし、あるいは、周囲に子どもがいる場を避ける)
・自分からは仲間に入らないが、誘われると受け身的に参加する。おとなしい子や年下の子となら遊べる。
・自分から仲間に参加するが、自分のやり方を強要するのでケンカとなり、嫌がられる。
(情緒的反応性)
・他者に無頓着(マイペース)
・他者の気持ちに敏感だが(こわがり?)、意図は分からない。
(言葉の理解)
・言語理解は言語表出と比べて悪い(しゃべるけれども言われたことは理解できない)
・自分の関心のあることしか話さない。
・要求と関連して話しかける(質問に答えることもある)
・言語理解はしているが、答えられない。
・やりとりが目的の会話はできない。

B. 限局・反復的様式と感覚反応(M-CHAT)
・苦手な感覚(聴覚・触覚・視覚・味覚・嗅覚)のために苦手な場面、活動がある。
・今している活動を止めることの抵抗、あるいは新しい活動への切り替えの困難・不安のために、集団生活がストレスになる。 


<まとめ>
・発達障害は一つの診断名で済むことは少なく、いくつかの要素を持っていることが多い。
・療育開始が早いほど予後がよい。
・1歳半頃に徴候が現れるので、1歳半検診は重要。
・“共同注意”という概念を理解しチェックの際に用いるべし。

 

神経発達症(ASD、ADHDなど)の診療には3つの柱があります。
1.療養
2.環境整備
3.医療的介入

1の「療養」は発達の特性・凸凹を認識・自覚して生活に支障がないよう工夫すること。
2の「環境整備」は集団生活(園や学校)と連絡を取り合いながら本人がさらされるストレスを減らすこと。
3の「医療的介入」は投薬により症状をコントロールすること。

しかし、6歳未満の神経発達症に使用できる西洋薬(※)はありません。そして自閉症スペクトラム(以後ASDと表記)の特性に効く西洋薬は存在しません。

※ 神経発達症に使用される薬と年齢制限
・コンサータ:6歳から(医師登録&患者登録必要)
・ストラテラ:6歳から
・インチュニブ:6歳から
・ビバンセ:6〜18歳(医師登録&患者登録必要)
・メラトニン受容体作動性入眠改善薬
 ✓ メラトニン(メラトベル®):6〜15歳 ・・・こども用粉薬
 ✓ ラメルテオン(ロゼレム®):15歳から・・・大人用錠剤


※ モノアミン系神経伝達物質に作用する西洋薬
・SSRI(抗うつ薬):セロトニン⇧
・コンサータ®:ドーパミン⇧、ノルアドレナリン⇧
・インチュニブ®:ノルアドレナリン⇧


私が処方している漢方薬もASDの特性を治すことはできません。でも、その特性に由来する“困りごと”に対応することは可能です。また、まだ診断されていない幼児期のグレーゾーンのお子さんにも対応可能です。

私は小児神経専門医ではありませんので、神経発達症に関する厳密な診断はしておらず、コンサータやビバンセなども処方しておりません。

ただ、以前から夜なき・かんしゃくなどの困りごとの相談を受けると、漢方薬の使用を提案し、希望があれば処方してきました。気がつくと、そのようなお子さん達が神経発達症と診断されていることが多いことがわかりました。

漢方薬を飲んでもらうと、驚くほど効果があることを何回も経験しています。
しかし、はじめに処方した方剤が全員に有効というわけではなく、いくつか方剤を試していくうちにそのお子さんに合った方剤が見つかる、というパターンが多いです。
最終的な有効率は7割くらいでしょうか。

残念ながら、困りごとが10 → 0 になるわけではありません。
困りごとのレベルが10 → 5 程度に減るくらい(たまに10 → 2-3も)、それでも生活の質がグンと上がりますので、ご家族は継続を希望されます。

「いつまで使用するか?」については、数ヶ月〜半年の安定期を経た後、希望により減量・休薬を試みます。その過程で症状が再度目立ってきたら元に戻して継続しています。
一旦落ちついて休薬できたけど、進級など環境が変わってまた症状がひどくなり再開する子どももいます。

今回、神経発達症に関するWEBセミナーを視聴したところ、役に立つ情報がたくさんありましたので、備忘録として残しておきます。
(鈴村水鳥先生の講義「漢方薬で支援する自閉症スペクトラム(ASD)」(2025.2.9)メモより)

▶ ASD・ADHDに効果が期待できる漢方

(ココロの症状・困りごと)
・怒りんぼ、かんしゃく、チック  → 抑肝散(54)・抑肝散加陳皮半夏(83)
・衝動性、易刺激性、多動・興奮  → 黄連解毒湯(15)
・こだわりが強い、落ち着きがない → 大柴胡湯去大黄
・抑うつ傾向、不安感、不眠    → 加味帰脾湯(137)
・不安感、言語発達遅滞      → 甘麦大棗湯(72)

(カラダの症状・困りごと)
・元気がない、食欲不振   → 六君子湯(43)
・嘔気、胃もたれ、食欲不振 → 平胃散(79)+香蘇散(70)
・過敏性腸症候群、腹痛   → 小建中湯(99)、桂枝加芍薬湯(60)
・心窩部痛、腹痛、月経痛  → 安中散(5)
・めまい、起立性調節障害  → 半夏白朮天麻湯(37)

▶ ASDに対する漢方治療の有効性
・効果が高い
 ✓ パニック・かんしゃく
 ✓ 睡眠障害
 ✓ イライラ
 ✓ 落ち着きのなさ
 ✓ 怯え・怖がり
 ✓ チック(初期)
 ✓ 便秘・偏食などの消化器症状
・効果あり
 ✓ 社会性やコミュニケーション障害
 ✓ 自傷行為
 ✓ フラッシュバック
 ✓ 月経前症候群
 ✓ 言葉の遅れ
・効果が薄い
 ✓ チック(長期化)
 ✓ 多動
 ✓ 暴言・暴力
 ✓ 成人例

▶ 漢方医学の“こころ”の捉え方

1.怯え・不安状態(心神不寧証)
・心配性・不安・悲哀感・怖がり(ビクビク)など
・存在が脅かされているような感情が主体
(処方)甘麦大棗湯(72)、帰脾湯(65)、酸棗仁湯(103)、桂枝加竜骨牡蛎湯(26)、

2.緊張・易変動状態(肝気鬱結証)
・憂鬱・不安・イライラ・ヒステリック
・身体の緊張が強く、気分が変動しやすい。
(処方)四逆散(35)、柴朴湯(96)、加味逍遥散(24)、香蘇散(70)

3.興奮・怒り状態(化火証)
・イライラ・怒りっぽい・落ち着きがない・焦燥感など
・主に興奮的な症状が主体
(処方)黄連解毒湯(15)、三黄瀉心湯(113)

(1+2)不安+緊張 → 柴胡加竜骨牡蛎湯(12)
(2+3)緊張>怒り → 大柴胡湯(8)・大柴胡湯去大黄
(3+2)怒り>緊張 → 抑肝散(54)・抑肝散加陳皮半夏(83)

▶ 多様な症状には2剤併用が有効

・化火証:黄連解毒湯(15)+抑肝散加陳皮半夏(83)
 ✓ かんしゃく
 ✓ パニック
 ✓ 易怒
 ✓ 多動
 ✓ 衝動性
 ✓ 自傷行為
 ✓ 他害行為
 ✓ 落ち着きのなさ

・心神不寧証:甘麦大棗湯(72)+柴胡加竜骨牡蛎湯(12)
 ✓ 落ち着きのなさ
 ✓ 不安
 ✓ 自信のなさ
 ✓ 怯え

・肝気鬱結証:大柴胡湯去大黄+四逆散(35)
 ✓ 過緊張
 ✓ 不機嫌
 ✓ イライラ
 ✓ チック


<方剤解説>
▢ 甘麦大棗湯(72)
(構成生薬)《金匱要略》:甘草3-5;大棗2.5-6;小麦14-20
(証)気血水:気虚・血虚、五臓:心
・心血虚:心の血が不足し、安心できず神経が高ぶり、不眠や不安などの精神症状や動悸を起こす証 → 投与により血を増やし、心を安定させる
(適応の目安)
・望診(診察室での様子):
 ✓ 神経過敏
 ✓ なんとなく不安そうでそわそわしている
 ✓ 医師を見ると大声で泣く
 ✓ 母親との分離不安が強い
 ✓ あくびが多い
・脈:平または数
・舌:淡紅舌
・腹:軟〜中等度、腹直筋攣急
(特徴)
・一次障害(対人関係・コミュニケーション・こだわり)の改善が期待できる。
・一次障害の改善例は乳幼児に多く、5歳以前のできるだけ早期に開始すべき。
・小麦蛋白にはトリプトファンが含まれ、セロトニンやメラトニンの原料となる。
・ASD児ではセロトニン合成能発達プロセスが阻害されているため、セロトニンの補充が有効。

▢ 抑肝散(54)・抑肝散加陳皮半夏(83)
(構成生薬)《保嬰撮要》:当帰3;釣藤鈎3;川芎3;白朮4(蒼朮);茯苓4;柴胡2-5;甘草1.5(+陳皮・半夏)
(証)気血水:気鬱・血虚・水滞、五臓:肝・脾(83)
・肝気鬱結:肝の疏泄作用が失調し、精神症状と気滞の症状を起こす証。精神的な緊張と抑うつ、自律神経の緊張、怒りやすくイライラしやすい、ヒステリックになる、胸腹の痛み、等
・肝火上炎:感情の抑うつや怒りから肝を損傷し、肝気鬱が火に変化し、気と火が上逆したために起きる頭痛・めまい・顔面と目の紅潮、等
・肝風内動:肝の証から内風を生じて、痙攣・振戦・意識障害などを起こす証。頭痛、ふらつき、めまい、手足の震え、四肢のしびれ、筋肉の引きつり、等
 → 投与により肝の流れを整え、痙攣など(内風)を鎮め、脾を守り(83)水を捌く。
(適応の目安)
・望診(診察室での様子):
 ✓ イライラしやすい
 ✓ 落ち着きがない
 ✓ 親も困っていて矢継ぎ早に話す
・脈:数
・舌:紅舌、白苔、白膩苔
・腹:腹力は軟〜中等度、腹直筋攣急
※ 83は左の腹部大動脈の動悸が亢進している時(臍上悸・臍下悸)に使用する
(特徴)
・易刺激性・多動性の改善
 ✓ 広汎性発達障害の前向き非盲検試験
 ✓ グルタミン酸ニューロンの抑制による興奮の抑制
・攻撃性・自傷行為・かんしゃくの軽減
 ✓ 広汎性発達障害・アスペルガー障害の後向き非盲検試験

▢ 大柴胡湯(8)・大柴胡湯去大黄
(生薬構成)《傷寒論》:柴胡6-8;半夏2.5-8;生姜1-2;黄芩3;芍薬3;大棗3-4;枳実2-3(+大黄1-2)
(証)気血水:気鬱>血虚>水滞、五臓:肝
・肝鬱化熱:肝気鬱結が高じると、停滞した気から内熱を生じ、その熱が顔面部に昇って、強い焦燥とのぼせなどを起こす証。強い焦燥、抑うつ、のぼせ、頭痛。
(適応の目安)
・望診(診察室での様子):
 ✓ 体力がある。
 ✓ 落ち着きがない。
 ✓ 胸や脇腹に圧迫感や痛みを訴える。
 ✓ 肥満傾向を認めることもある。
・脈:実
・舌:紅舌、白苔〜黄苔
・腹:腹力あり、胸脇苦満、心下痞硬、時に腹直筋攣急
 〜心窩部に厚みがあって堅く緊張し、季肋下部を圧迫するも凹まないほどのもの。
(特徴)
・13歳以下の古典的ASDに対して6ヶ月以上投与したところ、睡眠障害・多動・かんしゃく・パニック・自傷・同一性保持・脅迫的行動などが改善した。
・大柴胡湯は柴胡剤の中で、体力の充実した者、季肋部の苦満感・肋骨弓下部に抵抗・圧痛(胸脇苦満)・腹部は硬く緊張している。
・小柴胡湯証にして、腹満拘攣し嘔劇しき者を治す。
・柴胡・芍薬・枳実が肝気鬱結を改善、黄岑で清熱。

▶ “かんしゃく”を治すには心身の土台(睡眠・食事・排泄)を整えることが必要
・不調・症状はピラミッドのてっぺん
・ピラミッドの土台は「眠る力」
・不調と眠る力の間に「おいしく食べる・排泄する力」がある。
・治す順番は、睡眠 → 食事(偏食)・便秘/軟便 → かんしゃく・パニック、の順がよい。
・これは他の“困りごと”の対応にも当てはまる。

▶ 基本は「寝る子は育つ」
・ASD児・青年の44〜93%に睡眠障害があり、持続する。
・患児に「入眠障害・中途覚醒・夜驚症」などの睡眠の問題がある場合は、まず眠りから治す。
・眠れるようになると子どもたちのかんしゃくが減り、落ちついて物事に取り組めるようになり、言葉や運動発達が伸びる。

  睡眠障害
   ↓  ← 漢方薬
  眠れるようになる
   ↓
  かんしゃくが減る
   ↓
  物事に落ちついて取り組める
   ↓
  言葉や運動発達が伸びる

・学童期では、起床困難からの不登校の改善などにもつながる。

▶ 乳幼児の睡眠障害への対応
・大柴胡湯去大黄+甘麦大棗湯の組み合わせが第一選択。
・困っている相談があればすぐに開始する。基本は就寝前に内服。
・昼寝をしない子どもは“過覚醒”が疑われるため「分2:昼食前・就寝前」を指示する。
・症状が安定後、3〜6ヶ月を目安に減薬する。

▶ 偏食など“食べることに関する困りごと”への対応
・眠れない → 昼間寝ている → 昼間の活動量減少 → 疲れていないので眠れない → ・・・
 の悪循環を断ち切るためには、まず「眠れること」を治療目標に設定する。
・甘くて飲みやすい甘麦大棗湯(72)から始める。
・ストレス反応+食が細い → 抑肝散加陳皮半夏(83)
・大柴胡湯去大黄は補脾(脾虚を治す)
・食が細い、軟便あるいは硬便傾向 → 小建中湯(99)

▶ “かんしゃく”への対応
・大柴胡湯去大黄+抑肝散加陳皮半夏(83)がベスト
(柴胡剤を2剤併用することにより強い“肝鬱”に対応)

▶ 初期の不登校への対応
・完全に行けなくなる前からスタートする。
・漢方薬はメインの症状に合わせて調節する。
・症状安定後、3〜6ヶ月ほど継続し、減量・休薬を試みる。

▶ 服薬の工夫
・漢方薬に不安を持っている患者さんには「合わなかったらいつでも止められる」ことを説明する。
・睡眠障害に対して抑肝散(54)を処方する際には「分2:朝・就寝前」を指示する。
・減量する際は、一度に休薬するのではなく回数・量を漸減していく。
・減量する際、複数の方剤を併用しているときは1剤ずつ減らす。
・学童期以降でコンサータなどを内服していても漢方薬は併用可能。

▶ ASDの症状と対応する脳機能・担当部位
・多様な症状と脳機能担当部位が存在し、
 それらが年齢と共に変化する複雑な病態
 ✓ 対人機能 → 中枢神経
 ✓ 感情コントロール → 大脳皮質
 ✓ 社会的行動 → 内側前頭内皮質
 ✓ 睡眠リズム、姿勢運動 → 脳幹
 ✓ 自律神経、感覚 → 帯状回、視床、辺縁系

▶ ASDと神経伝達物質
・オキシトシン:関与している・関与していないと両方の論文があり、結論は出ていない。
 → 漢方方剤では加味逍遥散(24)がオキシトシン分泌を増加させるという報告があるが、頻用はされていない。
・セロトニン:5歳以下のASD児の髄液セロトニン濃度は低い、セロトニン取込み合成能の異常、という報告がある。
 → 甘麦大棗湯(72)
・グルタミン酸:興奮性グルタミン酸と抑制性GABAの不均衡説がある。
 → 抑肝散(54)

当院では西洋医学を基本に診療していますが、西洋医学では手が届かない病態や悩みには、漢方薬の使用を提案しています。
“漢方を飲む”というハードルを越えるとたいてい手応えがあるので、飲めたお子さんはリピーターになります。

約2000年の歴史がある漢方薬は、歴史の荒波にさらされても残ってきました。そしてあらゆる症状に対応できます。
カラダとココロの不調に悩んでいる方、一緒にあなたに合う漢方薬を探しませんか。 


▶ 子どもに漢方?

▶ 漢方薬の上手な飲ませ方

▶ マルツエキスで漢方薬を飲ませる方法

▶ 水いぼ(伝染性軟属腫)のお話

▶ 頭痛(天気痛)

▶ 発達症(ADHDやASD)の“困りごと”に漢方を試してみませんか

▶ 自閉症スペクトラム(ASD)の漢方治療〜その1 

自閉症スペクトラム(ASD)の漢方治療〜その2
 

近年、社会的に認知され、増えてきた発達症。
残念ながら、それを根本的に治す薬はありません。
症状をやわらげる治療薬も増えてきましたが、使用できるのは6歳以上です。 

しかし発達症やグレーゾーンの子どもたちは、乳幼児期から日常生活の中でいろいろ困りごとがあり、本人と家族を悩ませています。

たとえば、かんしゃく
たとえば、夜なき・夜驚症
たとえば、チック
たとえば、偏食
たとえば、多動
・・・挙げればキリがありません。

年齢別に考えると、以下のようになるでしょうか。

(乳児期)夜なき
(幼児期)睡眠障害、かんしゃく・こだわり、パニック、落ち着きのなさ
(学童期)対人トラブル、不登校
(思春期)不登校、自傷行為、月経前症候群(PMS)

当院は小児科にもかかわらず、漢方薬を多用しています。
漢方は「心身一如」といって、心と体を分けません。
心とからだは独立したものではなく互いに影響を受け合いながら存在していると考え、漢方エキス剤のどれをとっても、その中には必ずと言ってよいほど「気持ち」「こころ」に作用する生薬が含まれています。

漢方薬の教科書が中国でつくられたのは、今から1800年前の大昔。
当然、その時代は発達障害という病名はありませんでした。
でも、子どもの成長に伴う困りごと・問題行動はありました。
つまり、発達障害があってもなくても、その子どもに合う漢方薬が見つかれば、一定の効果が期待できます。

では、具体的に困りごととそれに対応する漢方薬を提示します。

<基礎編>

 かんしゃく
 パニック
 不機嫌
 多動
 衝動性
 自傷行為
 他害行為
 易怒

  ⇩ 
 大柴胡湯大柴胡去大黄湯
 黄連解毒湯

 落ち着きのなさ
 不安
 自信のなさ
 怯え

  
 甘麦大棗湯
 柴胡加竜骨牡蛎湯
 酸棗仁湯
 四物湯

 過緊張
 不機嫌
 落ち着きのなさ
 チック

  
 大柴胡湯大柴胡去大黄湯
 抑肝散抑肝散加陳皮半夏


<応用編>

かんしゃく・パニック・睡眠障害などに対して、上記1剤では効果が不十分なときは、

 大柴胡湯甘麦大棗湯
 
それでも効果不十分なときは、

 大柴胡湯抑肝散加陳皮半夏、さらに黄連解毒湯を少量追加

怯え・不安が強いときは、

 甘麦大棗湯柴胡加竜骨牡蛎湯四物湯を追加
 
★ ただし群馬県では、3剤併用は保険診療で認められていません。

<発展編>

お子さんが発達障害と診断された方へ。
基礎薬として、飲んでいただく薬は、

 大柴胡湯あるいは大柴胡去大黄湯

効果が不十分な場合、以下のように2つ目の漢方薬を追加していきます。

✓ 低年齢の自閉症スペクトラムや怯える様子が目立つ → +甘麦大棗湯

不安感怯える症状が強い → +柴胡加竜骨牡蛎湯

かんしゃく易怒性が強い → +抑肝散加陳皮半夏

興奮性が強い → +黄連解毒湯

発達障害をベースとした睡眠障害は、単剤では効きにくい傾向があります。

まずは、甘麦大棗湯あるいは、抑肝散加陳皮半夏
 ⇩
効きが悪いときはこの2剤を併用
 ⇩
それでも効かないときは、甘麦大棗湯大柴胡湯・大柴胡去大黄湯

 副作用チェック
以下の漢方薬(柴胡剤)を長期内服する際は、投与開始1ヶ月以内とそれ以降も年に1回ペースで、定期的に血液検査をして副作用をチェックする必要があります。
 抑肝散(54)
 小柴胡湯(9)
 小柴胡湯加桔梗石膏(109)
 大柴胡湯(8)
 大柴胡去大黄湯
 柴胡加竜骨牡蛎湯(12)
・・・注射を嫌がり興奮する小学生以上のお子さんは、残念ながらお勧めできかねます。
採血が無理な場合は、以下の症状に気をつけて継続する方法もあります。

● 抑肝散(54)
  • 発熱、から咳、息切れ、呼吸困難[間質性肺炎]
  • 尿量が減少する、顔や手足がむくむ、まぶたが重くなる、手がこわばる[偽アルドステロン症]
  • どうき、息切れ、体がだるい、めまい[心不全]
  • 体がだるくて手足に力が入らない、手足がひきつる、手足がしびれる、筋肉痛[ミオパチー、横紋筋融解症]
  • 体がだるい、皮膚や白目が黄色くなる[肝機能障害]

● 大柴胡湯(8)/大柴胡湯去大黄
  • 発熱、から咳、息切れ、呼吸困難[間質性肺炎]
  • 体がだるい、皮膚や白目が黄色くなる[肝機能障害]

● 柴胡加竜骨牡蛎湯(12)
  • 発熱、から咳、息切れ、呼吸困難[間質性肺炎]
  • 体がだるい、皮膚や白目が黄色くなる[肝機能障害]

● 小柴胡湯(9)/小柴胡湯加桔梗石膏(109)
  • 発熱、から咳、息切れ、呼吸困難[間質性肺炎]
  • 尿量が減少する、顔や手足がむくむ、まぶたが重くなる、手がこわばる[偽アルドステロン症]
  • 体がだるくて手足に力が入らない、手足がひきつる、手足がしびれる、筋肉痛[ミオパチー、横紋筋融解症]
  • 体がだるい、皮膚や白目が黄色くなる[肝機能障害]


<参考>

漢方エキス剤のツムラ番号;
 大柴胡湯(8)
 柴胡加竜骨牡蛎湯(12)
 黄連解毒湯(15)
 抑肝散(54)
 四物湯(71)
 甘麦大棗湯(72)
 抑肝散加陳皮半夏(83)
 酸棗仁湯(103)


西洋医学にASD(自閉症スペクトラム)に対する根本的な治療法は存在しません。療育により、社会生活に適応できるよう訓練していきます。

漢方医学ではどうでしょうか。

それを説明する前に、まずASDの病態の大まかな捉え方を提示します。

ASD児がもともと有する性質を「一次障害」、環境により強い不安・緊張の反復・持続すると、その結果「二次障害」が発生すると考えられます。

(川嶋浩一郎先生のレクチャーのメモより)

ASDの一次障害:対人関係、コミュニケーション、想像力、変化適応能力の障害
  ↓
(環境による)強い不安・緊張の反復・持続
  ↓
ASDの二次障害:興奮、易怒性、パニック


小児漢方界では、環境による強い不安・緊張の反復・持続をやわらげることにより、二次障害には予防と対応ができるのではないか、と考えて診療に取り入れています。

ここで紹介する川嶋浩一郎先生、山口英明先生ともに、こころの不調・メンタルの不調を「不安」「緊張」「怒り」に分け、それに対応する漢方薬を提案しています。

ただ、私が実際に患者さんの話を聞いていると、「不安」と「緊張」は切り離せないのではないかと感じることがしばしばあります。

私の診療スタイルは、
「この薬から使ってみましょうか」
「これは今ひとつ手応えがなかったからこちらの方がいいかも」
などと患者さんに提案し、一緒に考えながら、体に合う漢方薬を探すというものです。

近年、川嶋浩一郎先生は、
「甘麦大棗湯(72)や十全大補湯(48)は一次障害にも効果を期待できる漢方薬」
と発言し、注目されています。ただし、講演では「短期間ではなく年単位で長く服用することが必要」と話されていました。

私が参加した講演やWEB配信セミナーから、ASD関連のメモをまとめてみました;


山口英明先生

<ASD治療に有効とされる漢方薬>

1.怯え・不安
2.緊張・不安定変動
3.怒り・興奮

1  :甘麦大棗湯(72)
2+1:柴胡加竜骨牡蛎湯(12)、大柴胡湯(去大黄)(8)
3  :黄連解毒湯(15)、三黄瀉心湯(113)
3+2:抑肝散(54)、抑肝散加陳皮半夏(83)


山口先生の解説では、不安・緊張・怒りが並列で扱われています。
ただ前述のように、不安と緊張が切り離せないことがままあるので迷います。


川嶋浩一郎先生

<ASDに対する漢方薬>

・ASDの一次障害に対する漢方:一次障害改善による二次障害軽減
 甘麦大棗湯(72)、十全大補湯(48)

・ASDの二次障害に対する漢方:扁桃体の鎮静や交感神経を抑制する漢方薬
※ 中止するともとに戻ることがある
芍薬甘草群)小建中湯(99)、桂枝加竜骨牡蛎湯(26)、大柴胡湯(8)、柴胡桂枝湯(10)、四逆散(35)など
柴胡剤群)小柴胡湯(8)、柴胡桂枝湯(10)、大柴胡湯(8)、柴胡加竜骨牡蛎湯(12)、抑肝散(54)・抑肝散加陳皮半夏(83)


▢ こどもの漢方的特徴は「二余三不足
・肝(自律神経系)と心(循環系)が機能亢進
・消化系、呼吸系、腎泌尿・内分泌系が機能不足、すなわち脾(水穀)・肺(宗気)・腎(精気)の不足 → 血の生成不足
・“血は気の母”だから、気の生成不足に及ぶ
 ↓
・“肝”が亢進:怒りっぽい
・“心”が亢進:情緒不安定
・“脾”が不足:意欲が続かない
・“肺”が不足:本能的欲望に流されやすい
・“腎”が不足:夢や希望、志が続かない

<子どものこころの不調に使える抗不安薬>

(西洋薬)
・セロトニン作動性不安薬:クエン酸タンドスピロン(セディール®)
 ・・・小学生にはセディール錠5mgを2-3錠/日

(漢方薬)
1.不安
・甘麦大棗湯(72)が第一選択

2.緊張
・小建中湯(99)が第一選択
・四逆散(35)が第二選択
(鑑別処方)
 実証:大柴胡湯(8)、
 虚証:香蘇散(70)(不安が強いとき)
    柴胡疏肝散 ≒ 香蘇散+四逆散

1+2.緊張を伴う不安
・半夏厚朴湯(16)
・桂枝加竜骨牡蛎湯(26)
・柴胡加竜骨牡蛎湯(12)

3.怒り
・抑肝散(54)
・抑肝散加陳皮半夏(83)
・柴胡剤群

<方剤解説>

【甘麦大棗湯】
ASDの本治が期待できる方剤で、精神的な視野狭窄を改善させる(オキシトシン様作用)
こんな方へ:
・不安で悲しくなり涙が止まらない
・不安で過呼吸発作が止まらない
・不安でチック発作が止まらない
★ 甘麦大棗湯が効果不十分のADには、セロトニンの上流にあるエストロゲンを増やす四物湯や十全大補湯(48)を試す価値あり。

【半夏厚朴湯】
こんな方へ:吐き気や梅核気(ヒステリー球)、胃腸症状を伴う不安

【桂枝加竜骨牡蛎湯】
こんな方へ:桂枝湯証(軽い頭痛、自汗、悪風、鼻鳴、乾嘔)+動悸を伴う不安

【柴胡加竜骨牡蛎湯】(大黄を含まないTJ12)
こんな方へ:柴胡証(胸満・胸脇苦満)、煩驚(動悸不安+神経過敏・易怒性)

【抑肝散・抑肝散加陳皮半夏】
・小児の“ひきつけ”のために作られた処方なので、青筋を立てて憤怒しやすく、舌が震えて前方に出しにくい人に著効する。
・浅田宗伯の見解は四逆散(35)の変方:四逆散の芍薬(補血)・枳実(行気)が当帰(補血)・川芎(行血)に置き換わり、白朮茯苓の補脾利水と釣藤鉤の鎮痙が加わった処方。
・こんな方へ:神経質で感が強く興奮しやすく怒りっぽいが、自虐的でくよくよして、親子間や家庭内でストレスがぶつけることがあっても、他人に八つ当たりして責めることがない。

ストレス反応十全大補湯(48)
・現代医学の考え方:交感神経(ノルアドレナリン系)を抑えて副交感神経(セロトニン系)活性化、
※ 副交感神経=胃腸機能(漢方的には補脾)
・漢方診断:脾腎両虚
・漢方治療:補脾・補腎  → 十全大補湯(48)など


<参考>
・書評「自閉症は漢方でよくなる」(飯田誠著)

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